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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21S
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21S
管理番号 1304829
審判番号 不服2014-17489  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-03 
確定日 2015-08-27 
事件の表示 特願2009-175060号「蛍光灯互換性のLED照明灯」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月10日出願公開、特開2011- 29051号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年7月28日の出願であって、平成25年2月18日付けで拒絶理由が通知され、同年4月17日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月17日付けで拒絶理由が通知され、同年12月12日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年5月29日付けで、平成25年12月12日付け手続補正を却下するとともに拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成26年9月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年9月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本件発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1(平成25年4月17日付けの手続補正)について、
(1)「【請求項1】
多数のLEDを実装する長尺状基板と、これを覆う長尺状の照明カバーと、両端部に蛍光灯照明器具のソケットに装着するための口金とを有してなる、既存の蛍光灯照明器具に装着可能なLED照明灯であって、
前記照明カバーが、フィブリル形成能を有するフルオロポリマーを、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.001?1質量部含有するポリカーボネート樹脂成形体からなることを特徴とする蛍光灯互換性のLED照明灯。」
とあったものを
(2)「【請求項1】
多数のLEDを実装する長尺状基板と、これを覆う長尺状の照明カバーと、両端部に蛍光灯照明器具のソケットに装着するための口金とを有してなる、既存の蛍光灯照明器具に装着可能なLED照明灯であって、
前記照明カバーが、熱ダレ及び撓み防止のためのフィブリル形成能を有するフルオロポリマーを、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.001?1質量部含有するポリカーボネート樹脂成形体からなることを特徴とする蛍光灯互換性のLED照明灯。」
と補正することを含むものである。(下線は補正箇所を示すために審判請求人が付したものである。)

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「フィブリル形成能を有するフルオロポリマー」に関して、「熱ダレ及び撓み防止のための」との限定を付加したものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と、補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-335426号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「蛍光灯兌換型発光ダイオード灯」に関し、図面(特に【図1】及び【図2】 を参照。)と共に、以下の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。以下同様。)
(ア)「【0013】
図1乃至図6は、この発明に係る蛍光灯兌換型発光ダイオード灯1の第1実施例(直管型)を示すものであり、これらの図において、2は、棒状に形成した透明もしくは不透明パイプからなる合成樹脂外管体である。この棒状合成樹脂外管体2の直径および長さ寸法は、一般に使用されている既存の規格からなる直管型蛍光灯の直径および長さ寸法と同じである。3は、この棒状合成樹脂外管体2の開口両端部にそれぞれ調整可能に取り付けた口金(JISC7601,G13口金規格)である。4は、この口金3に絶縁材5を介して取り付けた電極ピン(JIS,G13口金規格)である。これら口金3および電極ピン4は、一般に使用されている既存の規格からなる直管型蛍光灯の口金および電極ピンと同じ形状、寸法である。」

(イ)「【0015】
6は、前記棒状合成樹脂外管体2の内部に取り付けた棒状配線基板である。7は、この棒状配線基板6の片面に固定した白色発光ダイオードである。8は、配線基板6の表面に配設した白色反射シートである。9は、この白色反射シート8の反対側の合成樹脂外管体2の外表面に配設した白色反射不透明シートである。10は、棒状配線基板6の表面に配設した白色反射シート8側の棒状合成樹脂外管体2の外表面に配設した拡散シートである。」

(ウ)「【0017】
図15は、第1実施例(直管型)にて構成した蛍光灯兌換型発光ダイオード灯1を、角型筐体内照標識装置59に使用した場合の外観斜視図であり、図中、図18に示す部分に付した符号と同じ部分には同じ符号を付してある。
この図において、支柱65に固着されている既存の角型筐体61内には、一般に使用されている既存の蛍光灯ソケット56が複数個並設されており、この蛍光灯ソケット56に、この発明に係る蛍光灯兌換型発光ダイオード灯1の電極ピン4を装着することによって複数個の蛍光灯兌換型発光ダイオード灯1が取り付けられる。」

以上の記載事項から、次の点が認定できる。
(エ)記載事項(イ)及び【図2】を参酌すると、棒状配線基板6は、多数の白色発光ダイオード7を固定するものといえる。

(オ)棒状合成樹脂外管体2は、その名称のとおり合成樹脂を材料とするものであり、合成樹脂成形体からなることは技術常識である。

これら記載事項、認定事項、及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに倣って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。

「多数の白色発光ダイオード7を固定する棒状配線基板6と、内部に棒状配線基板6を取り付けた棒状に形成した透明もしくは不透明パイプからなる棒状合成樹脂外管体2と、開口両端部に蛍光灯ソケット56に装着するための口金3とを有してなる、既存の規格からなる直管型蛍光灯の口金および電極ピンと同じ形状、寸法である蛍光灯兌換型発光ダイオード灯1であって、
前記棒状合成樹脂外管体2が、合成樹脂成形体からなる蛍光灯兌換型発光ダイオード灯1。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-189804号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。

(カ)「【発明の効果】
【0021】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、優れた耐光性、全光線透過率、光拡散性及び熱安定性を有するので、導光板の他、各種照明用カバー、照明看板、光透過型スクリーン、信号機レンズ及びレンズカバー、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シート等の光拡散板として幅広く使用できる。」

(キ)「【0125】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に難燃剤(G)を配合する場合、溶融樹脂の滴下防止し、難燃性を向上させるためにポリフルオロエチレンを併用することが好ましい。ポリフルオロエチレンとしては、例えば、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが挙げられ、ポリテトラフルオロエチレンは樹脂組成物に容易に分散し、かつ樹脂同士を結合して繊維状構造を作る傾向を示すものである。
【0126】
フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは通常、ASTM規格でタイプ3に分類される。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、種々市販されており、具体的には例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)6J」や、ダイキン化学工業社製「ポリフロン(登録商標)」が挙げられる。
【0127】
・・・
【0128】
ポリカーボネート樹脂組成物中のポリテトラフルオロエチレンの配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.01?1重量部であることが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンの量が0.01重量部未満であると難燃剤が不十分となるおそれがあり、1重量部を越えると成形品外観が低下しやすい。より好ましくは、ポリテトラフルオロエチレンの量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.02?0.8重量部である。」

以上の記載事項からみて、刊行物2には、「フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01?1質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物」が記載されている。

(3)本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-305844号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(サ)〈2頁右上欄1行?14行〉
「このようなPTFEのフィブリルを樹脂中に含ませて該樹脂の種々の性質を改良する方法として、・・・およびイオン交換樹脂とPTFEを混合してPTFEをフィブリル化し製膜することにより膜の機械的強度を高める方法(特開昭53-149881)などが知られている。」

(シ)〈2頁右下欄14行?3頁左上欄8行〉
「(問題点を解決するための手段)
本発明はこれら軟質フッ素樹脂の高温における伸び特性を改良するため、特定繊維状の充填材を添加することによりこれらを改善するものである。
充填する材料としては、軟質フッ素樹脂の有する特長である耐酸、耐アルカリ性、耐油性、耐候性等を損なわずに高温における補強効果を発現しうる性質を持つことが必要である。本発明者らはかかる観点からガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維を含む種々の繊維状充填剤について検討した結果、PTFE粉末にセン断力をかけて得られるフィブリルがこの目的に合致することを見出し、本発明に到達したものである。」

(4)本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-179792号公報(以下、「刊行物4」という。)には、次の事項が記載されている。

(タ)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、機械的特性及び耐熱変形性に優れた合成樹脂製中空成形体を安価に製造し得る方法を提供し得ることにある。」

(チ)「【0042】また、本発明においては、必要に応じて、各種充填剤、抗酸化剤、顔料、難燃剤、造核剤などを上記混合物に添加してもよい。また、本発明に係る合成樹脂製中空成形体の製造方法においては、最終製品の用途や形状に応じて、2層以上の複層構造となるように成形を行ってもよい。
【0043】(作用)請求項1に記載の発明に係る製造方法では、液晶樹脂と、該液晶樹脂の液晶転移点よりも低い融点もしくは溶融温度を有する熱可塑性樹脂を含む混合物を、押出機にて液晶樹脂の液晶転移点以上で押し出すため、液晶樹脂がフィブリル状となって分散された押出混合物を得ることができ、該押出混合物を熱可塑性樹脂の融点もしくは溶融温度以上かつ液晶樹脂の液晶転移点未満の温度で押出しパリソンを得、該パリソンを用いてブロー成形するため、フィブリル状の液晶樹脂が分散されており、かつ高度に配向された中空成形体が得られる。従って、単に液晶樹脂による補強効果が得られるだけでなく、フィブリル状に分散されている液晶樹脂によりより一層大きな補強効果が得られ、耐熱変形性や耐薬品性が一層高められる。」

(5)本願の出願前に頒布された刊行物である特開平1-308443号公報(以下、「刊行物5」という。)には、次の事項が記載されている。

(ナ)〈3頁左上欄14行?19行〉
「このような成形時において、液晶ポリマーは、溶融状態で伸長流動や剪断流動を受けることにより容易にフィブリル形態を形成し、しかも実質的にその長軸が互いに平行に配列する場合が多い。このようなフィブリルの配向は、成形物の線膨張率を低減させるのに効果的である。」

(ニ)〈3頁左下欄4行?16行〉
「液晶ポリマーは、その長繊維がポリマー分子の最も高い配向状態にあるため、より大きい弾性率とより小さい線膨張率とを併せ持ち、液晶ポリマーを含有する成形物の線膨張率を低減するのに特に効果的であると考えられるからである。
・・・
本発明の成形物は、シート状、棒状、フィルム状、パイプ状、繊維状、塊状など所望の形状に成形される。」

3.対比
刊行物発明の「白色発光ダイオード7」は本願補正発明の「LED」に相当し、以下同様に、「多数の白色発光ダイオード7を固定する」「棒状配線基板6」は「多数のLEDを実装する」「長尺状基板」に、「内部に棒状配線基板6を取り付けた棒状に形成した透明もしくは不透明パイプからなる」「棒状合成樹脂外管体2」は「これを覆う長尺状の」「照明カバー」に、「蛍光灯ソケット56」は「蛍光灯照明器具のソケット」に、「開口両端部に蛍光灯ソケット56に装着するための」「口金3」は「両端部に蛍光灯照明器具のソケットに装着するための」「口金」に、「既存の規格からなる直管型蛍光灯の口金および電極ピンと同じ形状、寸法である」「蛍光灯兌換型発光ダイオード灯1」は「既存の蛍光灯照明器具に装着可能な」「LED照明灯」に、それぞれ相当する。

また、後者の「前記棒状合成樹脂外管体2が、合成樹脂成形体からなる」と前者の「前記照明カバーが、熱ダレ及び撓み防止のためのフィブリル形成能を有するフルオロポリマーを、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.001?1質量部含有するポリカーボネート樹脂成形体からなる」とは、「前記照明カバーが、合成樹脂成形体からなる」という限りにおいて共通する。

そうすると、両者は、本願補正発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「多数のLEDを実装する長尺状基板と、これを覆う長尺状の照明カバーと、両端部に蛍光灯照明器具のソケットに装着するための口金とを有してなる、既存の蛍光灯照明器具に装着可能なLED照明灯であって、
前記照明カバーが、合成樹脂成形体からなる蛍光灯互換性のLED照明灯。」
そして、両者は次の点で相違する。
[相違点]
本願補正発明は、「照明カバーの樹脂が、熱ダレ及び撓み防止のためのフィブリル形成能を有するフルオロポリマーを、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.001?1質量部含有するポリカーボネート樹脂成形体からなる」のに対し、
刊行物発明は、「棒状合成樹脂外管体2が、合成樹脂成形体からなる」ものであり、合成樹脂の具体的な組成材料及び、それぞれの組成材料の含有量が明らかでない点。

4.当審の判断
(1)上記相違点について検討する。
上述したように、刊行物2には、「フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01?1質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物」が記載されている。(以下、「刊行物2に記載されている事項」という。)

A)刊行物2に記載されている事項の「フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン」に関し、刊行物2の記載事項キ(段落【0126】)に、ポリテトラフルオロエチレンとして、同じく三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)6J」が挙げられている。他方、本願明細書の段落【0026】にフルオロポリマーとして三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)6J」が例示されており、それぞれ商標名が同じ材料が例示されている。

B)本願補正発明の「熱ダレ及び撓み防止」とは、本願明細書の段落【0007】に「ポリカーボネート樹脂と金属の熱による膨張の割合が著しく異なり、樹脂の膨張によって余計な応力が加わり、長尺状照明カバーが歪み、また撓みや熱ダレが生じやすい」と記載されているように、熱による樹脂の膨張を低減することと解される。すなわち、本願補正発明において、ポリカーボネート樹脂に対してフィブリル形成能を有するフルオロポリマーを含有するように構成することは、樹脂の熱的特性を改善するためと解される。
他方、刊行物2の記載事項キ(段落【0125】)の「本発明のポリカーボネート樹脂組成物に難燃剤(G)を配合する場合、溶融樹脂の滴下防止し、難燃性を向上させるためにポリフルオロエチレンを併用することが好ましい。ポリフルオロエチレンとしては、例えば、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが挙げられ、ポリテトラフルオロエチレンは樹脂組成物に容易に分散し、かつ樹脂同士を結合して繊維状構造を作る傾向を示すものである。」との記載に照らせば、刊行物2に記載されている事項の「フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01?1質量部を含有する」ことも樹脂の熱的特性を改善するためと解される。そして、樹脂内にフィブリルが形成された場合、形成されたフィブリルによって、樹脂の耐熱性が向上することに加え、樹脂の膨張率が低減され、耐熱変形性があり、補強効果を有することは、刊行物3ないし5に示されているように、技術常識として知られている。

C)以上 A)及びB)の説示により、刊行物2に記載されている事項である「フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01?1質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物」は、熱による樹脂の膨張を低減する機能をも有するものと捉えられるから、刊行物2に記載されている事項と本願補正発明の「熱ダレ及び撓み防止のためのフィブリル形成能を有するフルオロポリマーを、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.001?1質量部含有するポリカーボネート樹脂成形体」とは、「熱ダレ及び撓み防止のためのフィブリル形成能を有するフルオロポリマーを含有するポリカーボネート樹脂成形体」という限りで共通するといえる。

D)フルオロポリマーのポリカーボネート樹脂100質量部に対する含有量に関し、本願補正発明では、0.001?1質量部であるのに対し、刊行物2に記載されている事項では、0.01?1質量部であり、下限値が異なるが、本願明細書中に、0.01質量部より少ない範囲での有効性を示した記載及び0.001質量部が臨界値であることを示す記載もない。

E)刊行物2(上記記載事項カ.)には、該ポリカーボネート樹脂組成物を各種照明用カバーに使用することが示唆されていること、刊行物発明は、「多数の白色発光ダイオード7を固定する棒状配線基板6と棒状合成樹脂外管体2と」を有するものであるから、多数の白色発光ダイオード7から発生する熱を受けて棒状合成樹脂外管体2が熱膨張しないようにするという課題は内在していることから、刊行物発明に刊行物2に記載されている事項を適用する動機付けは存在する。

以上A)ないしE)を総合すると、刊行物1及び刊行物2に接した当業者であれば、刊行物発明の棒状合成樹脂外管体2を形成する合成樹脂成形体として、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを含有するポリカーボネート樹脂組成物の適用を試みることは容易であり、その際に、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01?1質量部を含有させることを参考として、「0.001?1質量部」の数値範囲とすることは当業者であれば適宜に設定し得る程度のものにすぎない。


よって、刊行物発明において、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)本願補正発明による効果も、刊行物発明、刊行物2に記載されている事項及び技術常識から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、刊行物発明、刊行物2に記載されている事項及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成25年4月17日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「第2.1.(1)」に記載したとおりである。

2.刊行物の記載事項
刊行物の記載事項は、前記「第2.2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、前記「第2.1.(2)」に記載した「フィブリル形成能を有するフルオロポリマー」に関して、「熱ダレ及び撓み防止のための」との限定事項を省くものである。そうすると、本願発明の発明特定事項を含み、さらに、前記「第2.1.(2)」の限定事項により減縮したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.3.及び4.」に記載したとおり、刊行物発明、刊行物2に記載されている事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、刊行物発明、刊行物2に記載されている事項、及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、刊行物発明、刊行物2に記載されている事項、及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-24 
結審通知日 2015-06-30 
審決日 2015-07-13 
出願番号 特願2009-175060(P2009-175060)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21S)
P 1 8・ 575- Z (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 栗山 卓也  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 島田 信一
出口 昌哉
発明の名称 蛍光灯互換性のLED照明灯  
代理人 増田 さやか  
代理人 河備 健二  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 小野 尚純  

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