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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1304922
審判番号 不服2014-10030  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-29 
確定日 2015-09-03 
事件の表示 特願2013-150347「CRシステムのCR/FPD混在方式の放射線画像撮影システムへの変更方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月5日出願公開、特開2013-240654〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成21年2月25日(優先権主張平成20年9月18日、日本国)を国際出願日とする特願2010-529659号の一部を平成24年12月4日に新たな特許出願とした特願2012-264847号の一部を平成25年7月19日に新たな特許出願としたものであって、平成25年11月11日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月8日付けで意見書が提出されたが、同年4月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月29日に拒絶査定不服審判が請求がされたものである。

2 本願発明
この出願の請求項1に係る発明は、平成25年7月19日付けの出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであると認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「複数の撮影室のそれぞれに配置される曝射開始用の操作ボタンを有する放射線照射装置と、前記複数の撮影室のそれぞれで使用可能な放射線画像データを記録可能なCRカセッテと、前記CRカセッテに記録された前記放射線画像データを読み取る放射線画像読取装置と、前記放射線画像読取装置により読み取られた前記放射線画像データを取得するコンソールと、を有するCRシステムのCR/FPD混在方式の放射線画像撮影システムへの変更方法であって、
前記複数の撮影室のそれぞれに配置された前記放射線照射装置からの放射線照射開始を自己で検出可能である可搬型FPDを前記CRシステムに導入する工程を含むことを特徴とするCRシステムのCR/FPD混在方式の放射線画像撮影システムへの変更方法。」

3 刊行物の記載事項
(1)本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2008-188330号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア 「【0002】
医療診断の場においては、放射線画像をデジタルデータとして取り扱うことのできるCR(Computed Radiography)システムが実用化されている。このCRシステムは、CRカセッテに内蔵された蛍光体プレートを励起光で走査することにより放射線画像データを読み取る読取装置と、当該読取装置で読み取られた放射線画像データを取得する制御装置(コンソールともいわれる)とが接続されて構成されている。そして、放射線撮影室で放射線が照射されたCRカセッテを読取装置で読み取り、得られた放射線画像データを制御装置に送信して表示することで、放射線技師は最適な放射線画像データが得られたか否かを確認することができる。
【0003】
また、複数の放射線撮影室を備える医療機関等での使用に対応するため、複数の読取装置と複数の制御装置とをネットワークで接続した大規模なCRシステムの導入が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載されるような大規模CRシステムにおいては、撮影する患者が一度に複数存在し、また撮影操作する放射線技師も複数存在するため、患者間で放射線画像データの取り違えが生じる恐れがある。そこで、予め、患者情報(患者の氏名、年齢など)や撮影情報(撮影日時、撮影部位、撮影方向など)などが含まれた撮影オーダ情報と呼ばれる指示情報を生成し、当該撮影オーダ情報とCRカセッテを識別するためのカセッテID(識別情報)とを対応付けて登録しておく方法がとられている。このように一の撮影オーダ情報と一のCRカセッテとを対応付けることにより、CRカセッテを読取装置により読み取って得られた放射線画像データは、CRカセッテのカセッテIDに基づいて撮影オーダ情報に対応付けられるので、放射線画像データの取り違えを防止することが可能となる。
【0004】
ところで、近年では、重症などの理由により放射線撮影室まで移動が困難な患者に対しても放射線撮影を可能とするため、移動型の回診用放射線照射装置が実現されており、この回診用放射線照射装置とともに携帯情報端末装置(PDA:Personal Digital Assistance)を携帯して回診することで、回診先での撮影作業を円滑に行う方法が提供されている(例えば、特許文献2参照)。一般的に、PDAを用いた回診撮影の方法は、まず、回診先で撮影予定の撮影オーダ情報を制御装置からPDAに送信し、当該撮影オーダ情報をPDAに記憶させた後、当該PDA、回診用放射線照射装置及び撮影枚数分のCRカセッテを回診先に運ぶ。そして、回診先において、撮影する撮影オーダ情報をPDAに表示させて、PDAに備えられたバーコードリーダでCRカセッテのバーコード(カセッテID)を読み取ることで、表示された撮影オーダ情報とカセッテIDとが対応付けられる。その後、撮影オーダ情報に基づいて回診用放射線照射装置を操作してCRカセッテに放射線画像を蓄積させ、当該CRカセッテを読取装置で読み取り、得られた放射線画像データを制御装置に送信する。また、PDAに記憶された撮影オーダ情報とカセッテIDとの対応関係を制御装置に送信し、制御装置で撮影オーダ情報と放射線画像データが対応付けられる。このように、PDAを回診先に携帯することにより、回診先で撮影オーダ情報を確認した後、当該撮影オーダ情報とCRカセッテとを対応付けて撮影を行うことができるので、放射線画像データの取り違えを確実に防止することができる。
【0005】
一方、上述したCRカセッテに代わり、基板上に2次元的に配列された放射線検出素子を内蔵し、当該放射線検出素子に照射された放射線量に応じた電気信号を出力することが可能なFPD(Flat Panel Detector)装置が放射線画像検出装置として提案されている(例えば、特許文献3参照)。このFPD装置を用いれば、励起光を照射して放射線画像を読み取る読取装置を必要とせず、直接的に放射線画像データを得ることができるので、CRカセッテを用いた場合よりもシステム自体を簡素化することが可能となり、撮影作業も円滑となる。また、FPD装置に内蔵された記憶部により複数の放射線画像データを記憶することができるので、一度に連続して複数の撮影を行うことが可能となり、撮影効率が向上する。」

イ 「【0007】
しかしながら、上述したようなPDAを用いた回診撮影において、CRカセッテの代わりにFPD装置を利用すると、撮影オーダ情報と放射線画像データとを誤って対応付けてしまう可能性があり、更にこの誤った対応付けに気づかないまま診察が進んでしまうという問題が発生する。」

ウ 「【0010】
そこで本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、放射線画像検出装置としてFPD装置を使用した場合であっても、撮影オーダ情報と放射線画像データとを正確に対応付けることが可能である放射線画像撮影システム及びその制御装置の提供を目的とする。」

エ 「【0031】
FPDカセッテ6は、回診用放射線照射装置4からの照射放射線量に対する検査対象(患者)の放射線透過率分布に従った放射線量を検出することにより、放射線画像データを取得するものであり、カセッテにフラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector:FPD)とも呼ばれる撮像パネルが収容されてなる可搬型のカセッテFPD装置である。」

オ 「【0064】
ここで、CRモードとは、CRカセッテ9を用いて回診撮影を行うモードであり、FPDモードとは、FPDカセッテ6を用いて回診撮影を行うモードである。操作者は、一度の回診で撮影する撮影枚数、撮影オーダ情報の患者情報や撮影情報、回診予定の患者がいる病室とカセッテの配置場所との位置関係などの基づいて、CRモードかFPDモードかを選択する。
【0065】
制御部14は、入力操作部18からの入力を受けて、以下の処理を行う。
〈CRモードの場合〉
制御部14は、操作入力部18からCRモードの入力を受けると(ステップS3でCRモード)、今回の撮影に対応する撮影オーダ情報を入力するための入力画面171を表示部17に表示する(ステップS10)。」

カ 「【0070】
そして、操作者は、表示部105に表示された撮影オーダ情報により患者の撮影部位や撮影方向などを確認した後、選択された一のCRカセッテ9を撮影部位に対応する箇所に設置する。その後、回診用放射線照射装置4を操作して放射線を照射し、CRカセッテ9に放射線画像に対応する放射線量を蓄積させる。
【0071】
上記の撮影を繰り返し、記憶部21に記憶された全ての撮影オーダ情報に対応する撮影が終了すると、操作者は、撮影枚数分のCRカセッテ9を読取装置3に挿入し、CRカセッテ9毎に放射線画像データとカセッテIDとを取得する。そして、放射線画像データとカセッテIDとを対応付けてコンソール7に送信する。また、PDA10aをクレードル10bに装着し、PDA10aの記憶部21に記憶された撮影オーダ情報とカセッテIDとの対応関係情報をコンソール7に送信する。
【0072】
そして、コンソール7において、CRカセッテ9のカセッテIDに基づいて、CRカセッテ9から送信された放射線画像データとPDA10aから送信された撮影オーダ情報とを対応付ける。このとき、コンソール7には、放射線画像データとCRカセッテの対応関係、撮影オーダ情報とCRカセッテの対応関係がそれぞれ送信されているので、これらに基づいて放射線画像データと撮影オーダ情報とを正確に対応付けることができる。
〈FPDモードの場合〉
制御部14は、操作入力部18からFPDモードの入力を受けると(ステップS3でFPDモード)、今回の撮影に対応する撮影オーダ情報を入力するための入力画面171(図7参照)を表示部17に表示する(ステップS4)。」

キ 「【0080】
そして、操作者は、表示部105に表示された撮影オーダ情報により患者の撮影部位や撮影方向などを確認した後、FPDカセッテ6を撮影部位に対応する箇所に設置する。そして、回診用放射線照射装置4を操作して放射線を照射し、FPDカセッテ6により放射線画像データを生成して、画像記憶部66に記憶させる。」

以上の記載事項ア?キから、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「CRカセッテの代わりにFPD装置を利用することができる放射線画像撮影システム及びその制御装置を提供する方法であって、
操作者がCRカセッテ9を用いて回診撮影を行うCRモードか、可搬型のFPDカセッテ6を用いて回診撮影を行うFPDモードかを選択するものであり、
CRモードの場合、操作者がCRカセッテ9を撮影部位に対応する箇所に設置後、回診用放射線照射装置4を操作して放射線を照射し、CRカセッテ9に放射線画像に対応する放射線量を蓄積させ、撮影枚数分のCRカセッテ9を読取装置3に挿入し、CRカセッテ9毎に放射線画像データを取得し、放射線画像データをコンソール7に送信するものであり、
FPDモードの場合、操作者が、FPDカセッテ6を撮影部位に対応する箇所に設置し、回診用放射線照射装置4を操作して放射線を照射し、FPDカセッテ6により放射線画像データを生成して、画像記憶部66に記憶させるものである
放射線画像撮影システム及びその制御装置を提供する方法。」(以下、「引用発明1」という。)

(2)本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2008-132216号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア 「【0007】
しかし無線通信では、患者のポジションやカセッテに内蔵された無線通信手段の位置によっては、通信が一時的に遮断されて、放射線発生装置とカセッテ型FPDとの通信に通信失敗し、前述のX線連携が正常に行えない場合がある。特に、放射線の照射開始時に放射線の照射とFPDとの同期が正常に行えないとFPDのコンデンサの電荷リセットや電荷蓄積がタイミングよく行えず、放射線照射を行ったのに良好な放射線画像が得られないこととなり、再撮影を行うような場合には被検体に無駄なX線放射をしたこととなる。」

イ 「【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無線通信手段により放射線発生装置からの照射開始の制御信号を受信せず、かつ照射検知手段により放射線の照射開始を検知したとき、に放射線画像検出部の検出素子を電荷掃き出し状態から電荷蓄積状態に移行させるので、放射線発生装置とカセッテ型FPDの無線通信が失敗した場合においても、X線連携を確実に行い、被検体に無駄なX線放射を行うことがない放射線撮像システムを得ることが可能となる。」

ウ 「【0027】
図2は、撮像装置Fの外観図である。図1と共通する部分に関しては同符号を付している。撮像装置Fは、可搬型の撮像装置でありいわゆるFPD(Flat Panel Detetector)と称されるものである。撮像装置Fは、図2に示すようにシンチレータ21、撮像パネル22、信号選択回路27、撮像制御手段30、走査駆動回路301、電源部42、コネクタ43、メモリ部44を有する。これらは筐体41に収納されている。」

エ 「【0041】
[照射検知手段]
本実施形態においては、撮像パネル22(放射線画像検出部)の複数の検出素子220のうち、その一部を「照射検知手段」として用いている。具体的には、走査ライン223に沿った任意の1行(例えばp行)の検出素子220を一組として放射線照射手段の照射時間よりも短い周期で、走査線223-pに読出信号RSを供給して、電荷の読み出しを連続して行うように制御することにより、照射検知手段として用いる。放射線の照射時間としては、例えば数十msec?数百msecであり、照射検知手段として用いる際の読み出し周期はそれよりも一桁以上短い周期、例えば0.1msec?数msecの周期に設定している。
【0042】
照射検知手段は、撮像パネル22の全走査ライン223に対して223-1?223-m間で、例えば数十から百ラインに対して一ライン程度の間隔で全範囲に渡って配置させている。図2に示す例においては、B群検出素子220bが照射検知手段に相当する。撮像パネル22の全画素(検出素子220)のうち、その一部をB群検出素子の照射検知手段として機能させ、残りをA群検出素子220aとし本来の放射線画像を得るための画素として機能させている。なお、図2においては、説明のためにB群検出素子とA群検出素子を色分けしているが、実際には両検出素子は、同一構成のものであり、適宜相互に変更可能である。」

オ 「【0045】
次に図4から図6を用いてX線連携に関する制御について説明する。図4は、実施形態に係る放射線撮像システムの制御フローを示す図である。操作者が操作するコンソール1、放射線発生装置R、撮像装置F、間の制御フローを示したものである。
【0046】
[X線連携]
まずステップS1で操作者が、コンソール1を操作することにより撮影の指示を行う。続くステップS2では、放射線発生装置Rで撮影指示を受け付け、その指示に基づいて、放射線照射の準備(ステップS3)と撮像装置Fに無線通信により準備指示信号(sig1)を送信する。ここで行う放射線照射の準備とは、放射線照射手段11の回転陽極(ターゲット)の回転準備等である。撮像装置Fでは、準備指示信号に基づいて撮像準備として撮像パネル22を電荷掃き出し状態(初期化)にセットする(ステップS4)。準備が完了し(ステップS5)、操作者が放射線の照射を指示した場合には、照射の前に照射開始信号(sig2a)を撮像装置Fに無線通信により送信する(ステップS6)。
【0047】
ステップS7では、撮像制御手段30により、照射開始信号sig2aが無線通信手段45で受信されたか否かが判断される。照射開始信号sig2aが受信された場合には(ステップS7のYes)、撮像装置Fでは、この照射開始信号に基づいて撮像パネル22を電荷蓄積状態にセットする(ステップS10)。
【0048】
ステップS8では、放射線照射手段11により放射線の照射を開始する。この放射線の照射にともない、B群検出素子220b(以下照射検知手段とも称す)では照射されたことを検知する(sig2b)。
【0049】
その際に、ステップS7において照射開始信号を受信していない場合(S7のNo)には、撮像制御手段30により、B群検出素子220bで照射が検知されたか否かが判断される(ステップS9)。照射が検知された場合には(S9のYes)、ステップS10の処理を実行し、検知されていない場合には(S9のNo)、ステップS7の処理を実行する。」

以上の記載事項ア?オから、刊行物2には、以下の発明が記載されていると認められる。

「操作者が操作するコンソール1、放射線発生装置R、可搬型FPDである撮像装置F、間のX線連携に関する放射線撮像システムの制御方法であり、
ステップS1で操作者が、コンソール1を操作することにより撮影の指示を行い、
続くステップS2では、放射線発生装置Rで撮影指示を受け付け、その指示に基づいて、放射線照射の準備(ステップS3)と撮像装置Fに無線通信により準備指示信号(sig1)を送信し、
撮像装置Fでは、準備指示信号に基づいて撮像準備として撮像パネル22を電荷掃き出し状態(初期化)にセットし(ステップS4)、
準備が完了し(ステップS5)、操作者が放射線の照射を指示した場合には、照射の前に照射開始信号(sig2a)を撮像装置Fに無線通信により送信し(ステップS6)、
ステップS7では、撮像制御手段30により、照射開始信号sig2aが無線通信手段45で受信されたか否かが判断され、
照射開始信号sig2aが受信された場合には(ステップS7のYes)、撮像装置Fでは、この照射開始信号に基づいて撮像パネル22を電荷蓄積状態にセットし(ステップS10)、
ステップS8では、放射線照射手段11により放射線の照射を開始し、この放射線の照射にともない、撮像装置Fにおける撮像パネル22のB群検出素子220bでは照射されたことを検知し(sig2b)、
その際に、ステップS7において照射開始信号を受信していない場合(S7のNo)には、撮像制御手段30により、B群検出素子220bで照射が検知されたか否かが判断され(ステップS9)、
照射が検知された場合には(S9のYes)、ステップS10の処理を実行し、検知されていない場合には(S9のNo)、ステップS7の処理を実行する
放射線撮像システムの制御方法。」(以下、「引用発明2」という。)

4 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。

(1)引用発明1の「操作して放射線を照射」する「回診用放射線照射装置4」と、本願発明の「複数の撮影室のそれぞれに配置される曝射開始用の操作ボタンを有する放射線照射装置」とは、「曝射開始用の操作」手段「を有する放射線照射装置」の点で共通する。

(2)刊行物1の段落【0004】の「撮影枚数分のCRカセッテを回診先に運ぶ」との記載が示唆するように、CRカセッテが複数の撮影室のそれぞれで使用可能であることは技術常識であるから、引用発明1の「放射線画像に対応する放射線量を蓄積させ」る「CRカセッテ9」は、本願発明の「前記複数の撮影室のそれぞれで使用可能な放射線画像データを記録可能なCRカセッテ」に相当する。

(3)引用発明1の「放射線画像に対応する放射線量を蓄積させ」た「撮影枚数分のCRカセッテ9を」「挿入し、CRカセッテ9毎に放射線画像データを取得」する「読取装置3」は、本願発明の「前記CRカセッテに記録された前記放射線画像データを読み取る放射線画像読取装置」に相当する。

(4)引用発明1の「読取装置3に」より「取得」された「放射線画像データ」が「送信」される「コンソール7」は、本願発明の「前記放射線画像読取装置により読み取られた前記放射線画像データを取得するコンソール」に相当する。

(5)引用発明1の「CRカセッテの代わりにFPD装置を利用することができる放射線画像撮影システム及びその制御装置を提供する方法」は、「提供」される「放射線画像撮影システム及びその制御装置」が「CRシステムに対」するものから「CRモード」と「FPDモード」が混在するものへと変更するものであるから、本願発明の「CRシステムのCR/FPD混在方式の放射線画像撮影システムへの変更方法」に相当する。

(6)引用発明1の「FPD装置」は「可搬型のFPDカセッテ6」であるから、引用発明1の「CRシステムに対し、CRカセッテの代わりにFPD装置を利用することができる放射線画像撮影システム及びその制御装置を提供する」ことと、本願発明の「前記複数の撮影室のそれぞれに配置された前記放射線照射装置からの放射線照射開始を自己で検出可能である可搬型FPDを前記CRシステムに導入する工程を含む」こととは、「可搬型FPDを前記CRシステムに導入する工程を含む」点で共通する。

してみると、本願発明と引用発明1とは
「曝射開始用の操作手段を有する放射線照射装置と、前記複数の撮影室のそれぞれで使用可能な放射線画像データを記録可能なCRカセッテと、前記CRカセッテに記録された前記放射線画像データを読み取る放射線画像読取装置と、前記放射線画像読取装置により読み取られた前記放射線画像データを取得するコンソールと、を有するCRシステムのCR/FPD混在方式の放射線画像撮影システムへの変更方法であって、
可搬型FPDを前記CRシステムに導入する工程を含む
CRシステムのCR/FPD混在方式の放射線画像撮影システムへの変更方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
放射線照射装置が、本願発明では「複数の撮影室のそれぞれに配置される」のに対し、引用発明1では「回診用」であり、「回診撮影を行う」点。

(相違点2)
放射線照射装置における曝射開始用の操作手段が、本願発明では「操作ボタン」であるのに対し、引用発明1では操作手段がどのようなものであるか不明な点。

(相違点3)
可搬型FPDが、本願発明では「放射線照射装置からの放射線照射開始を自己で検出可能である」のに対し、引用発明1ではそのようなものではない点。

5 判断
(相違点1について)
刊行物1の段落【0003】の「複数の放射線撮影室を備える医療機関等での使用に対応するため…CRカセッテ…」との記載が示唆するように、複数の放射線撮影室のそれぞれに放射線照射装置を配置してCRカセッテを用いることは周知技術である。そして、このような場合にも、励起光を照射して放射線画像を読みとる読み取り装置を必要とせず、直接的に放射線画像データを得ることができ、複数の放射線画像データを記憶できる等の利便性を考慮して、CRカセッテに代わりFPDを導入しようとすることは当業者が容易に想起できるものである。そこで、「回診用放射線照射装置」に関する引用発明1の「CRカセッテの代わりにFPD装置を利用することができる放射線画像撮影システム及びその制御装置を提供する方法」を、複数の撮影室のそれぞれに配置する放射線照射装置に関するものに応用して本願相違点1に係る構成に想到することは、当業者が容易になし得たというべきである。

(相違点2について)
放射線照射装置における曝射開始用の操作手段としての「操作ボタン」は周知技術であり、引用発明1において採用することは、当業者が容易になし得たというべきである。

(相違点3について)
引用発明2は、引用発明1と同様に、放射線画像撮影(撮像)システムにおいて可搬型FPDを用いるものであって、引用発明2の「ステップS8では、放射線照射手段11により放射線の照射を開始し、この放射線の照射にともない、撮像装置Fにおける撮像パネル22のB群検出素子220bでは照射されたことを検知」するという構成は、相違点3に係る本願発明の構成である、可搬型FPDが「放射線照射装置からの放射線照射開始を自己で検出可能である」点に相当するといえる。
そして、FPDを導入する場合に、放射線の照射とFPDの同期が必要なことは技術常識であり、それらの連携をより安全性の高いものにするために、引用発明1に引用発明2を適用して、相違点3に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものというべきである。

(効果について)
相違点1?3により本願発明の奏する効果は、引用発明1、引用発明2及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-30 
結審通知日 2015-07-07 
審決日 2015-07-23 
出願番号 特願2013-150347(P2013-150347)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田倉 直人  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤田 年彦
平田 佳規
発明の名称 CRシステムのCR/FPD混在方式の放射線画像撮影システムへの変更方法  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  

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