• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1304937
審判番号 不服2014-16485  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-20 
確定日 2015-09-03 
事件の表示 特願2011- 75431「行動履歴管理システムおよび行動履歴管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月25日出願公開、特開2012-208854〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成23年3月30日の出願であって、平成26年2月17日付けで拒絶理由通知がなされ、同年4月28日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたが、同年5月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年8月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は平成26年4月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項8に記載された、
「電子広告表示装置の付近の被写体をカメラが撮影して撮影画像データを取得するステップと、
前記撮影画像データから人物を検出して、当該人物の特徴を示す特徴情報を前記撮影画像データから抽出するステップと、
前記カメラによって撮影された際の前記人物の状況を示す行動履歴情報を取得するステップと、
前記人物ごとに、前記特徴情報と前記行動履歴情報とを対応付けて記憶部に記憶させるステップと、
を備えることを特徴とする行動履歴管理方法。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項8に記載された、
「電子広告表示装置の付近の被写体をカメラが撮影して撮影画像データを取得するステップと、
前記撮影画像データから人物を検出して、当該人物の特徴を示す特徴情報を前記撮影画像データから抽出するステップと、
前記カメラによって撮影された際の前記人物の状況を示す行動履歴情報を取得するステップと、
前記人物ごとに、前記特徴情報と前記行動履歴情報とを対応付けて記憶部に記憶させるステップと、
前記記憶部を参照して、過去に抽出された特徴情報と現時点において抽出した特徴情報とを比較し、前記カメラによって撮影された被写体の中に前記記憶部に記憶されている特徴情報が示す特徴を有する人物が含まれているか否かを判定する人物判定ステップと、
前記人物判定ステップの判定結果に応じたコンテンツを決定し、決定したコンテンツを前記デジタルサイネージのディスプレイに表示させる配信コンテンツ決定ステップと
を有することを特徴とする行動履歴管理方法。」
という発明(以下、「本件補正発明」という。)に補正することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の行動履歴管理方法の構成に「前記記憶部を参照して、過去に抽出された特徴情報と現時点において抽出した特徴情報とを比較し、前記カメラによって撮影された被写体の中に前記記憶部に記憶されている特徴情報が示す特徴を有する人物が含まれているか否かを判定する人物判定ステップ」と「前記人物判定ステップの判定結果に応じたコンテンツを決定し、決定したコンテンツを前記デジタルサイネージのディスプレイに表示させる配信コンテンツ決定ステップ」を追加することにより、本件補正において補正のない請求項1(「行動履歴管理システム」)と同等のものとしたものであり、実質的に特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び特許法第17条の2第5項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)本件補正発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本件補正発明」として認定したとおりである。

(2)引用発明
原審の拒絶理由に引用文献3として引用された特開2010-113314号公報(以下、「引用例」という。)には、「電子広告システム、電子広告配信装置、及び電子広告配信方法並びにプログラム」の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付与したものである。)
(a)「【請求項5】
広告映像を表示する複数個の電子広告装置に電子広告を配信する電子広告配信方法において、
前記電子広告装置の観覧者の顔部分の画像、当該観覧者が観覧していた広告映像を特定する情報及び当該電子広告装置を特定する情報を記録する観覧者情報記録段階と、
観覧者の顔部分の画像を前記観覧者情報記録段階で記録された画像情報と照合する顔画像照合段階と、
前記顔画像照合段階で、前記電子広告装置が撮像した観覧者と前記観覧者情報記録手段に記録された画像の人物が同一人物であると判断した場合に、前記観覧者情報記録段階で記録された画像の人物が観覧していた広告映像に関係する広告映像を前記電子広告装置に表示させる広告映像制御段階とを備える
ことを特徴とする電子広告配信方法。」

(b)「【0002】
電子広告装置あるいはデジタルサイネージと呼ばれる装置を店舗等に設置して、当該店舗等を訪れる顧客に広告画像を観覧させることが知られている(例えば特許文献1)。電子広告装置は、画像表示装置(例えば液晶表示装置)を備えて、当該電子広告装置の内部に記録され、あるいは上位の配信装置から配信される広告映像を前記画像表示装置に表示する装置である。
(・・・中略・・・)
【0005】
電子広告装置は、動画像を提示できるから、ポスター等の静止画に比べて、訴求力が大きい。しかしながら、店舗等に入場した顧客が特定のデジタルサイネージの側に留まって、そのデジタルサイネージに表示される広告映像の全編を連続して観覧する場合は少ない。そこで、店内を移動する顧客に、例えば、広告映像を繰り返し観覧させて、当該顧客に大きなインパクトを与えて、大きな広告効果を得たいという要請がある。」

(c)「【0014】
図1に示すように、店舗1内には複数の電子広告装置2?5が配置され、店舗1に入場した顧客Cは、店舗1内を自由に移動して、電子広告装置2?5に表示される広告映像を自由に観覧することができる。また、電子広告装置2?5はそれぞれカメラ6?9を備えて、広告映像を観覧している顧客Cの顔部分を撮像することができる。
【0015】
店舗1内に配置された電子広告装置2?5及びカメラ6?9は電子広告システム10の構成要素であって、電子広告システム10は図2に示すように構成される。すなわち、電子広告システム10は、電子広告装置2?5、観覧者情報記録装置11、顔画像照合装置12及び広告配信装置13を備える。
電子広告装置2?5は、それぞれ、液晶表示装置等の表示装置とスピーカ等から構成され、任意のコンテンツ(画像及び/又は音声)を出力する。
電子広告装置2?5は、それぞれ、カメラ6?9を備える。各カメラ6?9は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等から構成され、その画角は、立ち止まって電子広告装置2?5の画面を観覧している顧客Cの顔が撮影されるように設定されている。
【0016】
観覧者情報記録装置11は、電子広告装置2?5に表示された広告映像を観覧した顧客Cの観覧情報を格納する。観覧情報は、図3に示すように、電子広告装置2?5に表示された広告映像を観覧している顧客Cの顔部分の画像の画像データ(顔画像データ)と、顧客Cが観覧した広告映像の識別情報(観覧広告ID)と、電子広告装置2?5の識別情報(電子広告装置ID)と、広告を観覧した日時を示す日時情報と、を含む。
【0017】
顔画像照合装置12は、プロセッサ等から構成され、例えば、カメラ6?9が撮像した顧客Cの顔部分の画像と観覧者情報記録装置11に記録された顔画像を照合して、観覧者情報記録装置11に、カメラ6?9が撮像した顧客Cの顔画像と同一人物の顔画像が記録されていた場合に、広告差し替え指示を広告配信装置13に出力するコンピュータである。
【0018】
広告配信装置13は、広告映像を記憶し、所定のスケジュールに従って電子広告装置2?5に広告映像を配信し、表示させる。また、広告配信装置13は、顔画像照合装置12から広告差し替え指示が入力されると、スケジュールに従った広告映像の配信を中断し、観覧者情報記録装置11に記録された広告映像と同一の広告映像を、電子広告装置2?5のうち該当するものに配信する。」

(d)「【0025】
次に、上記構成の電子広告システム10の動作を説明する。
まず、広告配信装置13の制御部36は、RTCが計時する現在時刻とスケジュールDB32に登録されているスケジュールとに従って、広告映像DB33から表示対象の広告映像を読み出し、電子広告装置2?5に供給する。電子広告装置2?5は、それぞれ、供給された広告映像を表示する。
【0026】
一方、電子広告装置2?5に設置されたカメラ6?9は、それぞれ、前方の画像を撮影し、例えば、1/30秒のフレーム周期でフレーム画像を取得し、顔画像照合装置12に送信する。
顔画像照合装置12は、電子広告装置2?5に設置されたカメラ6?9からフレーム画像を受信すると、受信した各フレーム画像について、図7に示す処理を行う。
【0027】
以下では、電子広告装置2に設置されたカメラ6から受信したフレーム画像を例に処理を説明する。
まず、顔画像照合装置12は、供給された各フレーム画像に、顔の画像が含まれているか否かを、パターン認識技術等を用いて判別する(ステップS11)。
【0028】
顔画像照合装置12は、顔の画像が含まれていると判別した場合(ステップS11;Yes)、顧客が、電子広告装置2から所定距離内に位置しているか否かを判別し(ステップS12)、所定距離内に位置していると判別すると(ステップS12;Yes)、その顧客が電子広告装置2を観覧しているか(注目しているか)否かを判別する(ステップS13)。
【0029】
顧客Cが、電子広告装置2から所定距離内に位置しているか否かは、例えば、フレーム画像上の顔のサイズが基準値以上か否かにより判別できる。また、顧客Cが電子広告装置2を見ているか否かは、例えば、顔の画像中に、一定の距離(10?18cm相当)にある2つの黒点(目の画像と推定されるもの)の組を抽出できるか否かにより判別することができる。
【0030】
顔画像照合装置12は、供給された各フレーム画像に、顔の画像が含まれていないと判別された場合(ステップS11;No)、顧客Cが、電子広告装置2から所定距離以上離れていると判別した場合(ステップS12;No)、顧客Cが電子広告装置2を観覧していない(注目していない)と判別した場合(ステップS13;No)、今回の処理を終了する。
【0031】
一方、ステップS13で、顧客Cが電子広告装置2を観覧していると判別した場合(ステップS13;Yes)、その顧客Cの顔画像(以下「新顔画像」という)と観覧者情報記録装置11に記録されている画像(以下「旧顔画像」という)とを照合し、一致するものが存在するか否か判別する(ステップS14)。
【0032】
新顔画像が観覧者情報記録装置11に格納されている旧顔画像の何れとも一致しない場合、つまり、新顔画像が電子広告システム10で初めて検出された人物の顔画像である場合(ステップS14;YES)は、制御部36は、タイマをスタートさせる(ステップS15)。所定時間が経過して、タイマがタイムアップした時、電子広告装置2に対応するカメラ6が同一の顧客Cを検出していなければ(ステップS16;No)、つまり顧客Cが、所定時間が経過する前に電子広告装置2の前から立ち去っていれば、そのまま、何もしないで処理を終了する。一方、カメラ6が同一の顧客Cを引き続き検出していれば、つまり顧客Cが所定時間、電子広告装置2の前に留まって、広告映像を観覧していれば(ステップS16;Yes)、カメラ6で撮像した顧客Cの顔部分の画像(新顔画像)と顧客Cが電子広告装置2で観覧(閲覧)していた広告映像のID及び電子広告装置2の識別符号を観覧者情報記録装置11に記録する(ステップS17)。顧客Cが所定時間を超えて広告映像を観覧していれば、顧客Cが当該広告映像に関心を持っている蓋然性が高いと考えるからである。なお、ステップS17で、同一顔画像について、同一の電子広告装置で同一の広告映像を観覧している場合には、観覧者情報を更新せず、いずれかの情報が変化したときに、観覧者情報を上書き更新又は追加更新するようにしてもよい。
【0033】
一方、新顔画像が前記旧顔画像の何れかと実質的に同一である場合(ステップS14;No)、つまり顧客Cと旧顔画像の何れかの人物が同一人物であるとされる場合は、顔画像照合装置12は広告配信装置13に広告差し替え指示を出力して(ステップS18)、処理を終える。この指示は、観覧広告IDと電子広告装置IDとを含む。
【0034】
広告差し替え指示を受けた広告配信装置12は、図8に示すような広告差し替え処理プログラムを実行する。前述のように、電子広告システム10の動作中は、広告配信装置12は所定のスケジュールに従って各種の広告映像を電子広告装置2?5に配信しているが、顔画像照合装置12から広告配信装置13に広告差し替え指示が入力された時に、この差し替え処理プログラムが割込実行される。
【0035】
図8に示すように、広告配信装置12の制御部36は、広告差し替え処理プログラムを実行すると、広告差し替え指示に含まれていた電子広告装置IDで特定される(新顔画像を撮像したカメラを備える)電子広告装置(本実施形態では、電子広告装置2)へのスケジュールに基づく広告映像の配信を中止する(ステップS21)。次に、広告差し替え指示に含まれている観覧広告IDで特定される広告映像を広告映像DB33から読み出して、広告差し替え指示に含まれている電子広告装置IDで特定された電子広告装置2に配信する。すなわち、観覧者情報記録装置11に記録されている広告映像(つまり、顧客Cが電子広告装置2の前に立つ以前に、電子広告装置2?5のいずれかで観覧した広告映像)と同一の広告映像を電子広告装置2に配信して表示させる(ステップS22)。そして、観覧者Cが電子広告装置2において前記同一の広告映像を観覧した旨を、観覧者情報記録装置11に記録し(ステップS23)、さらに同一の広告映像の電子広告装置2に於ける表示が終わったら、所定のスケジュールによる広告映像の配信を再開して(ステップS24)、処理を終える。
(・・・中略・・・)
【0039】
なお、本実施形態では、顧客Cが観覧していた広告映像に関係する広告映像の例として、「同一の広告映像」を取り上げたが、本発明の「関係する広告映像」とは「同一の広告映像」には限らない。例えば顧客Cが電子広告装置2で観覧した広告画像と同じジャンルの商品の広告画像を電子広告装置5に表示してもよい。また、同じブランドの商品の広告画像を電子広告装置5に表示してもよい。あるいは、例えば、顧客Cが電子広告装置2であるブランドのイメージ広告を長時間観覧したような場合に、顧客Cの顔画像から顧客Cの年齢性別を推定して、当該ブランドの顧客Cの年齢性別に適合する商品の広告映像を電子広告装置5に表示してもよい。あるいは、複数の広告映像がシリーズになっているような(例えば、複数の広告映像で一続きのストーリーを構成するような)場合に、顧客Cが電子広告装置2で観覧した広告画像の次の広告画像を電子広告装置5に表示してもよい。つまり「関係する広告映像」とは、顧客Cが電子広告装置2で観覧した広告画像と何らかの関係があって、所定のプログラムに従って広告配信装置13が選択した広告映像である。」

(e)「【0042】
なお、本実施形態では、電子広告装置5が広告映像を表示するとしたが、広告映像は動画像には限られない。静止画像であってもよい。また広告映像は、具体的な商品やサービスを直接的に宣伝する映像には限定されない。ブランドイメージを訴求するためのイメージ広告であってもよいし、販促イベントの開催を通告する広告であってもよい。
顔画像の同一・非同一を判別する手法は任意であるが、顔画像から顔の特徴データを抽出して特徴データ同士を比較することにより、判別してもよい。特徴データを用いる判別方法としては、例えば、特開2004-139596号公報に開示されているもの等を利用できる。」
(・・・中略・・・)
【0044】
また、上記各装置のデータ構成や処理手順も適宜変更可能である。例えば、図3の構成で、顔画像に代えて(又は顔画像に追加して)、顔画像から得られた顔の特徴データ等を用いてよい。また、図7のステップS15で、タイマTCにより一定時間ウエイトする代わりに、一旦処理を終了し、一定期間繰り返し、同一の顔画像が得られるか否かを判別するようにしてもよい。」

ここで、上記(a)乃至(e)の記載について検討する。
(ア)上記(a)の記載から引用例には、
「広告映像を表示する複数個の電子広告装置に電子広告を配信する電子広告配信方法において、
前記電子広告装置の観覧者の顔部分の画像、当該観覧者が観覧していた広告映像を特定する情報及び当該電子広告装置を特定する情報を記録する観覧者情報記録段階と、
観覧者の顔部分の画像を前記観覧者情報記録段階で記録された画像情報と照合する顔画像照合段階と、
前記顔画像照合段階で、前記電子広告装置が撮像した観覧者と前記観覧者情報記録手段に記録された画像の人物が同一人物であると判断した場合に、前記観覧者情報記録段階で記録された画像の人物が観覧していた広告映像に関係する広告映像を前記電子広告装置に表示させる広告映像制御段階とを備える
ことを特徴とする電子広告配信方法。」
が記載されている。
(イ)上記(b)の記載によれば、
「電子広告装置は、画像表示装置(例えば液晶表示装置)を備えて、当該電子広告装置の内部に記録され、あるいは上位の配信装置から配信される広告映像を前記画像表示装置に表示する装置であって、デジタルサイネージとも呼ばれる」
ことが記載されている。
(ウ)上記(c)の第【0014】段落の「電子広告装置2?5はそれぞれカメラ6?9を備えて、広告映像を観覧している顧客Cの顔部分を撮像することができる。」との記載によると、「電子広告装置2?5」はそれぞれ「カメラ6?9」を備えており、広告映像を観覧している顧客Cの顔部分を撮像することができるものである。
そして、上記(d)の第【0026】段落の「電子広告装置2?5に設置されたカメラ6?9は、それぞれ、前方の画像を撮影し、例えば、1/30秒のフレーム周期でフレーム画像を取得し、顔画像照合装置12に送信する。」、第【0027】段落の「以下では、電子広告装置2に設置されたカメラ6から受信したフレーム画像を例に処理を説明する。まず、顔画像照合装置12は、供給された各フレーム画像に、顔の画像が含まれているか否かを、パターン認識技術等を用いて判別する(ステップS11)。」、第【0028】段落の「顔画像照合装置12は、顔の画像が含まれていると判別した場合(ステップS11;Yes)、顧客が、電子広告装置2から所定距離内に位置しているか否かを判別し(ステップS12)、所定距離内に位置していると判別すると(ステップS12;Yes)、その顧客が電子広告装置2を観覧しているか(注目しているか)否かを判別する(ステップS13)。」と記載されていることから、ここには、
「電子広告装置に設置されたカメラは、それぞれ、前方の画像を撮影し、例えば、1/30秒のフレーム周期でフレーム画像を取得し、顔画像照合装置に送信し、顔画像照合装置は、供給された各フレーム画像に、顔の画像が含まれているか否かを、パターン認識技術等を用いて判別し、顔の画像が含まれていると判別した場合、顧客が、電子広告装置から所定距離内に位置しているか否かを判別し、所定距離内に位置していると判別すると、その顧客が電子広告装置2を観覧しているか(注目しているか)否かを判別するステップ」
を備えることが記載されている。
(エ)上記(d)の第【0031】段落の「顧客Cが電子広告装置2を観覧していると判別した場合(ステップS13;Yes)、その顧客Cの顔画像(以下「新顔画像」という)と観覧者情報記録装置11に記録されている画像(以下「旧顔画像」という)とを照合し、一致するものが存在するか否か判別する(ステップS14)。」、及び、第【0032】段落の「新顔画像が観覧者情報記録装置11に格納されている旧顔画像の何れとも一致しない場合、つまり、新顔画像が電子広告システム10で初めて検出された人物の顔画像である場合(ステップS14;YES)は、・・・一方、カメラ6が同一の顧客Cを引き続き検出していれば、つまり顧客Cが所定時間、電子広告装置2の前に留まって、広告映像を観覧していれば(ステップS16;Yes)、カメラ6で撮像した顧客Cの顔部分の画像(新顔画像)と顧客Cが電子広告装置2で観覧(閲覧)していた広告映像のID及び電子広告装置2の識別符号を観覧者情報記録装置11に記録する(ステップS17)。」と記載されていることから、ここには、
「顧客が電子広告装置を観覧していると判別した場合、その顧客の顔画像(以下「新顔画像」という)と観覧者情報記録装置に記録されている画像(以下「旧顔画像」という)とを照合し、一致するものが存在するか否か判別し、新顔画像が観覧者情報記録装置に格納されている旧顔画像の何れとも一致しない場合、つまり、新顔画像が電子広告システムで初めて検出された人物の顔画像である場合は、カメラで撮像した顧客の顔部分の画像(新顔画像)と顧客が電子広告装置で観覧(閲覧)していた広告映像のID及び電子広告装置の識別符号を観覧者情報記録装置に記録するステップ」
を備えることが記載されている。
(オ)上記(d)の第【0033】段落の「一方、新顔画像が前記旧顔画像の何れかと実質的に同一である場合(ステップS14;No)、つまり顧客Cと旧顔画像の何れかの人物が同一人物であるとされる場合は、顔画像照合装置12は広告配信装置13に広告差し替え指示を出力して(ステップS18)、処理を終える。この指示は、観覧広告IDと電子広告装置IDとを含む。」、第【0034】段落の「広告差し替え指示を受けた広告配信装置12は、図8に示すような広告差し替え処理プログラムを実行する。」、及び、第【0035】段落の「図8に示すように、広告配信装置12の制御部36は、広告差し替え処理プログラムを実行すると、広告差し替え指示に含まれていた電子広告装置IDで特定される(新顔画像を撮像したカメラを備える)電子広告装置(本実施形態では、電子広告装置2)へのスケジュールに基づく広告映像の配信を中止する(ステップS21)。次に、広告差し替え指示に含まれている観覧広告IDで特定される広告映像を広告映像DB33から読み出して、広告差し替え指示に含まれている電子広告装置IDで特定された電子広告装置2に配信する。すなわち、観覧者情報記録装置11に記録されている広告映像(つまり、顧客Cが電子広告装置2の前に立つ以前に、電子広告装置2?5のいずれかで観覧した広告映像)と同一の広告映像を電子広告装置2に配信して表示させる(ステップS22)。」と記載されていることから、ここには、
「新顔画像が前記旧顔画像の何れかと実質的に同一である場合、つまり顧客と旧顔画像の何れかの人物が同一人物であるとされる場合は、顔画像照合装置は広告配信装置に広告差し替え指示を出力し、この指示は、観覧広告IDと電子広告装置IDとを含み、広告差し替え指示を受けた広告配信装置は、広告差し替え処理プログラムを実行すると、広告差し替え指示に含まれていた電子広告装置IDで特定される(新顔画像を撮像したカメラを備える)電子広告装置へのスケジュールに基づく広告映像の配信を中止し、次に、広告差し替え指示に含まれている観覧広告IDで特定される広告映像を広告映像DBから読み出して、広告差し替え指示に含まれている電子広告装置IDで特定された電子広告装置に配信し、すなわち、観覧者情報記録装置に記録されている広告映像(つまり、顧客が電子広告装置の前に立つ以前に、電子広告装置のいずれかで観覧した広告映像)と同一の広告映像を電子広告装置に配信して表示させるステップ」
を備えることが記載されている。
(カ)上記(e)の第【0042】段落の「顔画像の同一・非同一を判別する手法は任意であるが、顔画像から顔の特徴データを抽出して特徴データ同士を比較することにより、判別してもよい。」、及び、第【0044】段落の「例えば、図3の構成で、顔画像に代えて(又は顔画像に追加して)、顔画像から得られた顔の特徴データ等を用いてよい。」と記載されていることから、ここには、
「顔画像の同一・非同一を判別する手法として、顔画像から顔の特徴データを抽出して特徴データ同士を比較することにより判別してもよく、また、記録する観覧者の顔部分の画像に代えて(又は顔画像に追加して)、顔画像から得られた顔の特徴データを用いてよい」
ことが記載されている。
(キ)以上の(ア)乃至(カ)によると、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「広告映像を表示する複数個の電子広告装置に電子広告を配信する電子広告配信方法において、
前記電子広告装置の観覧者の顔部分の画像、当該観覧者が観覧していた広告映像を特定する情報及び当該電子広告装置を特定する情報を記録する観覧者情報記録段階と、
観覧者の顔部分の画像を前記観覧者情報記録段階で記録された画像情報と照合する顔画像照合段階と、
前記顔画像照合段階で、前記電子広告装置が撮像した観覧者と前記観覧者情報記録手段に記録された画像の人物が同一人物であると判断した場合に、前記観覧者情報記録段階で記録された画像の人物が観覧していた広告映像に関係する広告映像を前記電子広告装置に表示させる広告映像制御段階とを備える
ことを特徴とする電子広告配信方法であって、
電子広告装置は、画像表示装置(例えば液晶表示装置)を備えて、当該電子広告装置の内部に記録され、あるいは上位の配信装置から配信される広告映像を前記画像表示装置に表示する装置であって、デジタルサイネージとも呼ばれており、
さらに、電子広告装置に設置されたカメラは、それぞれ、前方の画像を撮影し、例えば、1/30秒のフレーム周期でフレーム画像を取得し、顔画像照合装置に送信し、顔画像照合装置は、供給された各フレーム画像に、顔の画像が含まれているか否かを、パターン認識技術等を用いて判別し、顔の画像が含まれていると判別した場合、顧客が、電子広告装置から所定距離内に位置しているか否かを判別し、所定距離内に位置していると判別すると、その顧客が電子広告装置2を観覧しているか(注目しているか)否かを判別するステップと、
顧客が電子広告装置を観覧していると判別した場合、その顧客の顔画像(以下「新顔画像」という)と観覧者情報記録装置に記録されている画像(以下「旧顔画像」という)とを照合し、一致するものが存在するか否か判別し、新顔画像が観覧者情報記録装置に格納されている旧顔画像の何れとも一致しない場合、つまり、新顔画像が電子広告システムで初めて検出された人物の顔画像である場合は、カメラで撮像した顧客の顔部分の画像(新顔画像)と顧客が電子広告装置で観覧(閲覧)していた広告映像のID及び電子広告装置の識別符号を観覧者情報記録装置に記録するステップと、
新顔画像が前記旧顔画像の何れかと実質的に同一である場合、つまり顧客と旧顔画像の何れかの人物が同一人物であるとされる場合は、顔画像照合装置は広告配信装置に広告差し替え指示を出力し、この指示は、観覧広告IDと電子広告装置IDとを含み、広告差し替え指示を受けた広告配信装置は、広告差し替え処理プログラムを実行すると、広告差し替え指示に含まれていた電子広告装置IDで特定される(新顔画像を撮像したカメラを備える)電子広告装置へのスケジュールに基づく広告映像の配信を中止し、次に、広告差し替え指示に含まれている観覧広告IDで特定される広告映像を広告映像DBから読み出して、広告差し替え指示に含まれている電子広告装置IDで特定された電子広告装置に配信し、すなわち、観覧者情報記録装置に記録されている広告映像(つまり、顧客が電子広告装置の前に立つ以前に、電子広告装置のいずれかで観覧した広告映像)と同一の広告映像を電子広告装置に配信して表示させるステップ、とを備え、
顔画像の同一・非同一を判別する手法として、顔画像から顔の特徴データを抽出して特徴データ同士を比較することにより判別してもよく、また、記録する観覧者の顔部分の画像に代えて(又は顔画像に追加して)、顔画像から得られた顔の特徴データを用いてよい、
電子広告配信方法。」

(3)対比
そこで、本件補正発明と上記引用発明を対比する。
(あ)本件補正発明における「電子広告表示装置の付近の被写体をカメラが撮影して撮影画像データを取得するステップ」について検討する。
引用発明の「電子広告装置」は、「広告映像を表示する複数個の電子広告装置に電子広告を配信する」及び「電子広告装置は、画像表示装置(例えば液晶表示装置)を備え」との記載から広告映像を表示する装置であるから、本件補正発明の「電子広告表示装置」に相当するものである。
また、引用発明の「電子広告装置に設置されたカメラは、それぞれ、前方の画像を撮影し、例えば、1/30秒のフレーム周期でフレーム画像を取得し、顔画像照合装置に送信し、顔画像照合装置は、供給された各フレーム画像に、顔の画像が含まれているか否かを、パターン認識技術等を用いて判別し、顔の画像が含まれていると判別した場合、顧客が、電子広告装置から所定距離内に位置しているか否かを判別し、所定距離内に位置していると判別すると、その顧客が電子広告装置2を観覧しているか(注目しているか)否かを判別するステップ」によると、引用発明も電子広告装置に設置されたカメラによって、前方の画像を撮影し、フレーム画像を取得するものであり、さらにここでは顧客の顔の画像を取得しようとするものであることから、該顧客を被写体とするものである。また、引用発明では「顧客が、電子広告装置から所定距離内に位置しているか否かを判別し、所定距離内に位置していると判別すると、その顧客が電子広告装置2を観覧しているか(注目しているか)否かを判別する」ものであることから、引用発明も電子広告装置の付近の被写体を撮影の対象とするものであることは明らかである。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、後記する点で相違するものの、
「電子広告表示装置の付近の被写体をカメラが撮影して撮影画像データを取得するステップ」
を備える点で共通する。
(い)本件補正発明における「前記撮影画像データから人物を検出して、当該人物の特徴を示す特徴情報を前記撮影画像データから抽出するステップ」について検討する。
引用発明は、「電子広告装置に設置されたカメラは、それぞれ、前方の画像を撮影し、例えば、1/30秒のフレーム周期でフレーム画像を取得し、顔画像照合装置に送信し、顔画像照合装置は、供給された各フレーム画像に、顔の画像が含まれているか否かを、パターン認識技術等を用いて判別」するものであり、カメラにより撮影されたフレーム画像から、パターン認識技術等を用いて顔の画像が含まれるか否かを判別しており、これは本件補正発明の上記「前記撮影画像データから人物を検出」することに相当するものである。
また、引用発明の「顧客が電子広告装置を観覧していると判別した場合、その顧客の顔画像(以下「新顔画像」という)と観覧者情報記録装置に記録されている画像(以下「旧顔画像」という)とを照合し、一致するものが存在するか否か判別し、新顔画像が観覧者情報記録装置に格納されている旧顔画像の何れとも一致しない場合、つまり、新顔画像が電子広告システムで初めて検出された人物の顔画像である場合は、カメラで撮像した顧客の顔部分の画像(新顔画像)と顧客が電子広告装置で観覧(閲覧)していた広告映像のID及び電子広告装置の識別符号を観覧者情報記録装置に記録するステップ」によれば、カメラで撮像した顧客の顔部分の画像が観覧者情報記録装置に記録されることになるから、カメラで撮影された画像から顧客の顔部分の画像が抽出されるものであることは明らかであり、また、顧客の顔部分の画像は、「当該人物の特徴を示す」情報である。
さらに、引用発明の「顔画像の同一・非同一を判別する手法として、顔画像から顔の特徴データを抽出して特徴データ同士を比較することにより判別してもよく、また、記録する観覧者の顔部分の画像に代えて(又は顔画像に追加して)、顔画像から得られた顔の特徴データを用いてよい」とのことから、顧客の顔画像から得られた顔の特徴データを抽出し、顔画像の同一・非同一を判別することも記載されており、この顧客の顔画像から得られた顔の特徴データは、本件補正発明の上記「当該人物の特徴を示す特徴情報」に相当するものである。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、後記する点で相違するものの、
「前記撮影画像データから人物を検出して、当該人物の特徴を示す特徴情報を前記撮影画像データから抽出するステップ」
を備える点で共通する。
(う)本件補正発明における「前記カメラによって撮影された際の前記人物の状況を示す行動履歴情報を取得するステップ」について検討する。
引用発明の「顧客が電子広告装置を観覧していると判別した場合、その顧客の顔画像(以下「新顔画像」という)と観覧者情報記録装置に記録されている画像(以下「旧顔画像」という)とを照合し、一致するものが存在するか否か判別し、新顔画像が観覧者情報記録装置に格納されている旧顔画像の何れとも一致しない場合、つまり、新顔画像が電子広告システムで初めて検出された人物の顔画像である場合は、カメラで撮像した顧客の顔部分の画像(新顔画像)と顧客が電子広告装置で観覧(閲覧)していた広告映像のID及び電子広告装置の識別符号を観覧者情報記録装置に記録するステップ」では、カメラで撮影した顧客について、当該顧客が電子広告装置で観覧(閲覧)していた広告映像のIDを観覧者情報記録装置に記録しており、この電子広告装置で観覧(閲覧)していたことは、カメラで撮影された際の顧客の状況であり、その際顧客が電子広告装置で観覧(閲覧)していた広告映像のIDは、カメラによって撮影された際の前記人物の状況を示す情報の一つであるといえる。また、観覧者情報記録装置に記録する前の処理として当該広告映像のIDを取得する処理が行われることは当然のことである。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、後記する点で相違するものの、
「前記カメラによって撮影された際の前記人物の状況を示す情報を取得するステップ」
を備える点で共通する。
(え)本件補正発明における「前記人物ごとに、前記特徴情報と前記行動履歴情報とを対応付けて記憶部に記憶させるステップ」について検討する。
引用発明の「顧客が電子広告装置を観覧していると判別した場合、その顧客の顔画像(以下「新顔画像」という)と観覧者情報記録装置に記録されている画像(以下「旧顔画像」という)とを照合し、一致するものが存在するか否か判別し、新顔画像が観覧者情報記録装置に格納されている旧顔画像の何れとも一致しない場合、つまり、新顔画像が電子広告システムで初めて検出された人物の顔画像である場合は、カメラで撮像した顧客の顔部分の画像(新顔画像)と顧客が電子広告装置で観覧(閲覧)していた広告映像のID及び電子広告装置の識別符号を観覧者情報記録装置に記録するステップ」では、観覧している顧客の顔画像と観覧者情報記録装置に記録されている画像とを照合し、一致するものが存在しない場合、つまり該顧客の顔画像が電子広告システムで初めて検出された人物の顔画像である場合は、カメラで撮像した顧客の顔部分の画像(新顔画像)と顧客が電子広告装置で観覧(閲覧)していた広告映像のID及び電子広告装置の識別符号を観覧者情報記録装置に記録するものであり、ここでは顧客の顔画像に対応して、すなわち人物ごとに顧客が電子広告装置で観覧(閲覧)していた広告映像のIDと電子広告装置の識別符号を観覧者情報記録装置に記録するものである。
また、上記(い)で示したように、引用発明も記録する観覧者の顔部分の画像に代えて(又は顔画像に追加して)、顔画像から得られた顔の特徴情報を記録すること、及び、上記(う)で示したように、顧客が電子広告装置で観覧(閲覧)していた広告映像のIDは、カメラによって撮影された際の前記人物の状況を示す情報の一つであることから、引用発明の顔画像から得られた顔の特徴データ、顧客が電子広告装置で観覧(閲覧)していた広告映像のID、及び、観覧者情報記録装置は、本件補正発明における上記「前記特徴情報」、「前記行動履歴情報」、及び、「記憶部」に対応するものである。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、後記する点で相違するものの、
「前記人物ごとに、前記特徴情報と前記情報とを対応付けて記憶部に記憶させるステップ」
を備える点で共通する。
(お)本件補正発明における「前記記憶部を参照して、過去に抽出された特徴情報と現時点において抽出した特徴情報とを比較し、前記カメラによって撮影された被写体の中に前記記憶部に記憶されている特徴情報が示す特徴を有する人物が含まれているか否かを判定する人物判定ステップ」について検討する。
引用発明の「顧客が電子広告装置を観覧していると判別した場合、その顧客の顔画像(以下「新顔画像」という)と観覧者情報記録装置に記録されている画像(以下「旧顔画像」という)とを照合し、一致するものが存在するか否か判別し、新顔画像が観覧者情報記録装置に格納されている旧顔画像の何れとも一致しない場合、つまり、新顔画像が電子広告システムで初めて検出された人物の顔画像である場合は、カメラで撮像した顧客の顔部分の画像(新顔画像)と顧客が電子広告装置で観覧(閲覧)していた広告映像のID及び電子広告装置の識別符号を観覧者情報記録装置に記録するステップ」でも、顧客の顔画像(以下「新顔画像」という)と観覧者情報記録装置に記録されている画像(以下「旧顔画像」という)とを照合し、一致するものが存在するか否か判別しており、これは観覧者情報記録装置に記録されている画像に一致する顧客、すなわち人物が含まれているか否かを判定するものであるから人物判定ステップであるといえる。
また、上記(い)で示したように、引用発明も顔画像から顔の特徴データを抽出して特徴データ同士を比較することにより判別し、及び、記録する観覧者の顔部分の画像に代えて(又は顔画像に追加して)、顔画像から得られた顔の特徴データを用いることから、引用発明の顧客の顔画像(以下「新顔画像」という)から抽出した特徴データと、観覧者情報記録装置に記録されている画像(以下「旧顔画像」という)から抽出した特徴データは、上記本件補正発明の「現時点において抽出した特徴情報」と、「過去に抽出された特徴情報」及び「前記記憶部に記憶されている特徴情報」に相当するものである。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、後記する点で相違するものの、
「前記記憶部を参照して、過去に抽出された特徴情報と現時点において抽出した特徴情報とを比較し、前記記憶部に記憶されている特徴情報が示す特徴を有する人物が含まれているか否かを判定する人物判定ステップ」
を備える点で共通する。
(か)本件補正発明における「前記人物判定ステップの判定結果に応じたコンテンツを決定し、決定したコンテンツを前記デジタルサイネージのディスプレイに表示させる配信コンテンツ決定ステップ」について検討する。
引用発明の「新顔画像が前記旧顔画像の何れかと実質的に同一である場合、つまり顧客と旧顔画像の何れかの人物が同一人物であるとされる場合は、顔画像照合装置は広告配信装置に広告差し替え指示を出力し、この指示は、観覧広告IDと電子広告装置IDとを含み、広告差し替え指示を受けた広告配信装置は、広告差し替え処理プログラムを実行すると、広告差し替え指示に含まれていた電子広告装置IDで特定される(新顔画像を撮像したカメラを備える)電子広告装置へのスケジュールに基づく広告映像の配信を中止し、次に、広告差し替え指示に含まれている観覧広告IDで特定される広告映像を広告映像DBから読み出して、広告差し替え指示に含まれている電子広告装置IDで特定された電子広告装置に配信し、すなわち、観覧者情報記録装置に記録されている広告映像(つまり、顧客が電子広告装置の前に立つ以前に、電子広告装置のいずれかで観覧した広告映像)と同一の広告映像を電子広告装置に配信して表示させるステップ」でも、「新顔画像が前記旧顔画像の何れかと実質的に同一である場合、つまり顧客と旧顔画像の何れかの人物が同一人物であるとされる場合は、顔画像照合装置は広告配信装置に広告差し替え指示を出力」するものであり、「電子広告装置へのスケジュールに基づく広告映像の配信を中止し」、「観覧者情報記録装置に記録されている広告映像(つまり、顧客が電子広告装置の前に立つ以前に、電子広告装置のいずれかで観覧した広告映像)と同一の広告映像を電子広告装置に配信して表示させる」ものであり、これは顧客が観覧者情報記録装置に記録されている人物と同一人物と判定された結果、該顧客が電子広告装置の前に立つ以前に、電子広告装置のいずれかで観覧した広告映像と同一の広告映像を、電子広告装置に差し替えて配信し表示するコンテンツとして決定するものである。
また、引用発明の「電子広告装置は、画像表示装置(例えば液晶表示装置)を備えて、当該電子広告装置の内部に記録され、あるいは上位の配信装置から配信される広告映像を前記画像表示装置に表示する装置であって、デジタルサイネージとも呼ばれており」によれば、電子広告装置はデジタルサイネージである。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、後記する点で相違するものの、
「前記人物判定ステップの判定結果に応じたコンテンツを決定し、決定したコンテンツを前記デジタルサイネージのディスプレイに表示させる配信コンテンツ決定ステップ」
を備える点で共通する。
(き)以上の、(あ)乃至(か)によると、本件補正発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。
<一致点>
電子広告表示装置の付近の被写体をカメラが撮影して撮影画像データを取得するステップと、
前記撮影画像データから人物を検出して、当該人物の特徴を示す特徴情報を前記撮影画像データから抽出するステップと、
前記カメラによって撮影された際の前記人物の状況を示す情報を取得するステップと、
前記人物ごとに、前記特徴情報と前記情報とを対応付けて記憶部に記憶させるステップと、
前記記憶部を参照して、過去に抽出された特徴情報と現時点において抽出した特徴情報とを比較し、前記記憶部に記憶されている特徴情報が示す特徴を有する人物が含まれているか否かを判定する人物判定ステップと、
前記人物判定ステップの判定結果に応じたコンテンツを決定し、決定したコンテンツを前記デジタルサイネージのディスプレイに表示させる配信コンテンツ決定ステップと
を有することを特徴とする方法。

<相違点1>
上記一致点における「前記カメラによって撮影された際の前記人物の状況を示す情報」が、本件補正発明では「行動履歴情報」であるのに対し、引用発明では「顧客が電子広告装置で観覧(閲覧)していた広告映像のID」である点。

<相違点2>
上記一致点における「人物判定ステップ」において、本件補正発明では「前記カメラによって撮影された被写体の中に」、前記記憶部に記憶されている特徴情報が示す特徴を有する人物が含まれているか否かを判定するのに対し、引用発明ではそのようになっていない点。

<相違点3>
本件補正発明は「行動履歴管理方法」であるのに対し、引用発明は「電子広告配信方法」である点。

(4)相違点についての判断
(4-1)<相違点1>について
本件補正発明の「行動履歴情報」について、明細書の第【0019】段落に「また、デジタルサイネージ2は、前を通行した人物が視聴した電子広告の内容や表示時刻、あるいは、デジタルサイネージ2が設置されている位置等を示す情報を取得する。この情報は、前を通行した人物がデジタルサイネージ2の表示する電子広告に興味を示して視聴した可能性があることを示す情報であり、以下、行動履歴情報と記す。」と、また、第【0038】段落に「また、デジタルサイネージ2の行動履歴情報取得部211は、ステップST102において撮影された際のAさんの状況を示す行動履歴情報を取得する(ステップST105)。例えば、行動履歴情報取得部211は、ステップST102において撮影された際にディスプレイ23に表示されていたコンテンツαを示す情報や、デジタルサイネージ2が設置されている場所、ステップST102において撮影された際の時刻を示す情報を行動履歴情報として取得する。」と記載されており、当該「行動履歴情報」は撮影された際に表示されていた電子広告の内容やコンテンツを示す情報であるから、引用発明の「顧客が電子広告装置で観覧(閲覧)していた広告映像のID」も含まれることは明らかである。
よって、この点において、本件補正発明と引用発明に差異があるものではない。

(4-2)<相違点2>について
引用発明は、電子広告装置に設置されたカメラで前方の画像を撮影してフレーム画像を取得し、供給された各フレーム画像に、顔の画像が含まれているか否かを、パターン認識技術等を用いて判別するものであって、カメラで前方の画像を撮影した際に複数の人物の顔が撮影され、パターン認識技術等により複数の顔の画像が認識される場合も当然あり得ることである。
また、引用発明では、認識されたある顧客の顔画像についての処理が特定されているのであって、複数の顧客の顔画像が認識されるのであれば、当該顧客毎に同じ処理が実行されることになるのは自明である。
そうすると、引用発明における上記「人物判定ステップ」は、撮影された複数の人物のそれぞれについて、前記記憶部に記憶されている特徴情報が示す特徴を有する人物が含まれているか否かを判定するものであるから、上記相違点2に係る「前記カメラによって撮影された被写体の中に」とすることは、当業者であれば容易に想到しえたことである。

(4-3)<相違点3>について
本件補正発明にける「行動履歴」は、上記(4-1)で示したようにデジタルサイネージの前を通行した人物が視聴した電子広告の内容やコンテンツを示す情報などである。
そして、本件補正発明である「行動履歴管理方法」は、要するにカメラによって撮影された人物の特徴情報と行動履歴情報である電子広告の内容やコンテンツを示す情報とを対応付けて記憶部に記憶させ、前記記憶部を参照して、過去に抽出された特徴情報と現時点において抽出した特徴情報とを比較し、前記カメラによって撮影された被写体の中に前記記憶部に記憶されている特徴情報が示す特徴を有する人物が含まれているか否かを判定し、判定結果に応じたコンテンツを決定し、決定したコンテンツを前記デジタルサイネージのディスプレイに表示させることを意味するのであり、この点において上記一致点でも示したように引用発明の「電子広告配信方法」とかわりはないのであるから、当業者であれば引用発明の「電子広告配信方法」を、「行動履歴管理方法」と言い換えることに格別の技術的困難性があるものではない。

(4-4)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(5)まとめ
よって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成26年8月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記本件補正発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-06 
結審通知日 2015-07-07 
審決日 2015-07-21 
出願番号 特願2011-75431(P2011-75431)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 月野 洋一郎  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 金子 幸一
石川 正二
発明の名称 行動履歴管理システムおよび行動履歴管理方法  
代理人 特許業務法人 志賀国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ