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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F04D
管理番号 1304960
審判番号 不服2013-25712  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-27 
確定日 2015-08-26 
事件の表示 特願2007-335460「タービンエンジンで使用するファン組立体を製作するための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月17日出願公開,特開2008-163946〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成19年(2007年)12月27日(パリ条約による優先権主張 2006年12月28日 米国)の出願であって,平成25年8月29日付けで拒絶査定され,平成25年12月27日に拒絶査定不服審判が請求されると共に,同日付け手続補正書が提出された後,平成26年8月15日付けで当審の拒絶理由が通知され,平成27年2月18日付けで意見書および手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成27年2月18日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲,明細書および図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。
「タービンエンジンで使用されるファン組立体(14)であって、
その少なくとも1つが複合材料で作られた複数のファンブレード(28)を含むロータ(31)と、
前記ロータの周りで円周方向に延びるケーシング(32)と、
を含み、
前記ケーシングが、前記複数のファンブレードから所定の距離に配置され、
充填材(150)が前記ケーシング(32)に施工されており、
前記充填材(150)がアルミニウムであり、
前記充填材(150)が、前記ケーシング(32)がブレードアウト後に前記ケーシング及び複数のファンブレード間に生じる接触抵抗の量を増大させるのを可能にする厚さを有し、
正常作動時に比べ前記ロータの軌道直径が増大する前記ファン組立体(14)のブレードアウト時に、前記充填材(150)が、前記ファンブレードと接触し浸食され、次いで、
前記ファンブレードが前記ケーシングに接触したときに該ファンブレードが磨滅する
ことを特徴とする、ファン組立体(14)。」

3 刊行物
(1) 当審の拒絶理由に引用した,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された特開平11-200813号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。

(ア) 「【0004】ファン部は、ロータアセンブリーとステータアセンブリーとを含む。ファンのロータアセンブリーは、ロータディスクと外側へ延びる複数のロータブレードとを含む。各ロータブレードは、エアフォイル部と、根部と頂部とを含む。エアフォイル部は、流路を通して延び、作動媒体ガスと相互作用をなしてロータブレードと作動媒体ガスとの間にエネルギを伝達する。ステータアセンブリーは、ロータブレードの頂部に極く近い位置でロータアセンブリーを取り巻くファン収容ケースアセンブリーを含む。ファン収容ケースアセンブリーはファンケースを含み、このファンケースは、支持構造体と、該ファンケースの半径方向外側に配置された複数のファブリックラップ(fabric wraps)と、円周方向に隣接している複数の吸音パネル(acoustic panels)と、該ファンケースの半径方向内側に配置され円周方向に隣接した複数のラブストリップ(rub strips)を備えている。従来のファンケースは、一般的には、ファブリックラップを支持するために剛性の支持部を形成する剛体金属ケースである。前記の複数のラブストリップは比較的柔軟な材料から形成されている。ファンブレードの頂部がラブストリップに接触してしまった場合に、ラブストリップの柔軟性によって、ファンブレードに損傷が生じる危険性が最小となる。
【0005】ファンブレード頂部とファン収容ケースとの間には、重要性の高い2つの特定の隙間がある。第1の隙間は、性能隙間として特徴付けられ、ブレード頂部とファンケースの内面内の軟かいラブストリップとの間の隙間として定義される。第2の隙間は、効果的構造隙間として特徴付けられ、ブレード頂部とファンケース内の硬質金属面との間の隙間として定義される。本発明は、性能隙間ではなくてこの構造隙間に関するものである。
【0006】エンジンでは、特に、1つのファンブレードが破損してロータアセンブリーから外れた後に、ロータの激しい不均衡が生じる。ファンブレード損失の1つの原因は、偶然にエンジン内に吸入される鳥や霰や他の物体のような異物の衝突があることである。外れたファンブレードは外側へ投げ出されてファンケースを通過するが、通常は、ファン収容ケースアセンブリー内のファブリックラップによって捕えられる。ブレード損失はロータ内で不均衡を生じ、ロータ軸を半径方向外側へ偏らせる。ロータがその長手方向軸から偏ると、ロータアセンブリーを更に損傷してしまうおそれがある。ロータが偏れば偏るほど、ロータ軸受支持部にかかる半径方向負荷がますます大きくなる。
【0007】ファンケース構造体はロータアセンブリーの偏移を停止させる。軸の偏移はファンケースアセンブリーの近接部分によって制限されるから、ファン頂部とケースとの間の隙間を減少させることによって、ロータアセンブリの損傷が減少される。軸の半径方向の偏移を最小にすると、軸、ロータ軸受及び軸受支持構造体に生じる損傷のおそれが最小になる。
【0008】今までは、軸の偏移は、ファンブレードがファンケース内に食い込むことによって制限されていた。そうすると、ブレードは、通常ファンケースよりも固いから、ファンケースを急速に切り割いてこれを破壊してしまう。ファンフレードは、回転し続けるに従って、静的なファンケース構造体と接触して、ロータ軸の機械エネルギをケースに伝達してしまい、ケースにねじりと損傷を起こす。ロータ軸がファンケースと接触することによって、高トルク負荷がファンケースに伝達される。ファンブレード損失が生じている間に、ファンケースへのこのトルクが掛かると、非常に大きな負荷が関連するエンジンの取付部及びエンジンケース構造体に掛かる。」

(イ) 「【0011】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、ガスタービンエンジン内のファンケースはそれに取り付けられた硬化材料のライナを含み、ファンブレード損失の状態にある間、ブレード頂部が硬化ライナ上を滑り、ファンケースを切り割いて破壊するのを減少させる。硬化材料のこのライナは、ブレードが円周方向に滑るための滑り面を備え、これにより、ファンケースに掛かるトルクを最小にする。更に、本発明のファンケースの構造は、ファンブレード損失が生じている間ロータ軸の偏移を制限する。本発明の一実施形態において、硬化材のライナーは複数のシングル(shingles)から成る。」

(ウ) 「【0013】
【発明の実施の形態】図1を参照して、軸流ターボガスタービンエンジン10は、ファン部14と、圧縮部16、燃焼部18及びタービン部20とから成る。エンジンの軸Ar はエンジン内の中心にあり、これらの部分を通して長手方向に延びている。作動媒体ガス用の一次流路22は軸Ar に沿って長手方向に延びている。作動媒体ガス用の二次流路24は一次流路22に平行にかつこれから半径方向外側で延びている。
【0014】ファン部14は、ステータアセンブリー27とロータアセンブリー28とを含む。ステータアセンブリーは、二次流路24の外壁を形成するファン収容ケース30を有する。ロータアセンブリー28は、ロータディスク32と複数のロータブレード34を含む。各ロータブレード34は、ロータディスク32から外側へ延び、作動媒体流路22及び24を横切ってファン収容ケース30の近傍に達している。各ロータブレード34は、根元部36、これと反対側の頂部38及びこれらの間を延びる中間スパン部40を有する。
【0015】図3を参照して、本発明のファンケースライナ42がファン収容ケースアセンブリー30内に設置されている。ファン収容ケースアセンブリーは、ロータブレード34の頂部38に極めて近接してロータアセンブリー28を取り巻いている。ファン収容ケースアセンブリー30は、ライナ42と、円周方向に隣接した複数のラブストリップ44と、支持構造体又はファンケース48の半径方向内側に配置された複数の円周方向に隣接した吸音パネル46を含む。複数のファブリックラップ50がファンケースの半径方向外側に配置されている。ファンケースは、一般的には、ファブリックラップを支持するための剛体支持体を形成する剛性金属ケーシングである。ファブリックラップ50の「ファブリック(繊維)」は、テープ、織られた材料又はこれらと同様のものを含むが、これらに限定されるものではなく、また、ファンブレードの損失が生じた場合にファンブレードを捕らえる。ラブストリップ44は、比較的柔軟な材料から形成されている。ラブストリップ44を設けることで、ブレード34をファンケースの極く近くに配置して、ファンブレードの周りを流れる空気の量を最小にすることができ、これにより、ファンブレードの周りの流体の流れの漏れを減少させてファン操作を改善することができる。ファンブレード34の頂部38がラブストリップ44に接触してしまった場合、ラブストリップの柔軟性はファンブレード34が破損するおそれを最小にする。ファンケースライナ42は、ステンレススティールやニッケルの合金のような硬化材料製である。ニッケル合金インコネル718(Inconel718)又はAISI321若しくはAISI347のようなステンレススティール合金はライナを製造するために使用され得る合金の例である。従って、ライナは、例えばチタニウム等のブレード頂部の材料よりも固い材料で製造される。組付けを容易にするために、ライナはファンケースに接着できるアーク状のセグメント(部分)として製造され得よう。」

(エ) 「【0018】ブレード損失によりロータ内に不均衡が生じ、ロータが、ファンケースの極く近くまで半径方向外側へ偏移される。近代的なエンジンでは、ファンブレードとファンケースの内表面との間の間隔は、ロータアセンブリーの半径方向の偏移を減少させるために最小にされている。ロータが偏移しファンブレード及びファンケース間の間隔が減少されていることによって、ファンブレード頂部は急速にファン収容ケースアセンブリーの内表面の柔軟なラブスリップ44に切り込む。鋼鉄又はニッケル合金のような硬化材料製の薄いファンケースライナ42は比較的柔らかなブレードに対する滑り面(skid surface)を備えている。ファンブレードはライナの滑り面に沿って円周方向へ移動する。ブレードがファンケースに食い込むことが避けられるか減少され、その結果、ケースに望ましくないトルクがかかることが減少される。硬化ライナが無いと、ファンブレードはファンケースに切り込み続け強固に食い込んでしまう。従って、本発明は、ファンブレード損失が生じている間ロータ偏移を制限する装置を提供し、かつ、ケースにトルクが更に発生してしまうことを無くするか減少させるスキッドプレートの機能を備える。」

(オ) 図1には典型的な軸流ターボガスタービンエンジンの斜視図が示され,図2には放出されたファンブレードを示すロータアセンブリーの斜視図が示され,図3にはファンケースを含むファン収容ケースアセンブリーの断面図が示されている。

(カ) 上記事項と図示内容とから,ファンケース48はロータアセンブリー28の周りで円周方向に延びること,および,ラブストリップ44が,ブレード損失後にロータブレード34に切り込まれる厚さを有することが理解できる。

これらの事項を総合すると,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「軸流ターボガスタービンエンジン10で使用されるファン部14であって,
複数のロータブレード34を含むロータアセンブリー28と,
前記ロータアセンブリー28の周りで円周方向に延びる硬化材料のライナ42を設置したファンケース48と,
を含み,
前記硬化材料のライナ42を設置したファンケース48が,前記複数のロータブレード34から極く近くに配置され,
ラブストリップ44が前記硬化材料のライナ42を設置したファンケース48に配置されており,
前記ラブストリップ44が比較的柔軟な材料であり,
前記ラブストリップ44が、ブレード損失後にロータブレード34に切り込まれる厚さを有し,
ロータが,ファンケース48の極く近くまで半径方向外側へ偏移される前記ファン部14のブレード損失時に,前記ラブストリップ44が,前記ロータブレード34に切り込まれ,次いで,
前記ロータブレード34が前記硬化材料のライナ42を設置したファンケース48のライナ42に接触して該ロータブレード34がファンケース48に食い込むことが避けられるか減少される,
ファン部14。」

(2) 当審の拒絶理由に引用した,本願の優先権主張の日前に外国において頒布された米国特許第5628622号明細書(以下,「引用例2」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。

(ア) 「FIG. 1 diagrammatically shows an aircraft turbine engine having, in conventional manner, a low pressure compressor 1, a high pressure compressor 3 and a fan 5. The high pressure compressor 3 has a fixed part, namely the stator 3a, whose blades 3b are held by their ends fixed to the casing 2. It also has a rotary part, namely the rotor 3c, whose blades 3d are fixed by their ends fixed to the rotary disks 3c. In the same way, the low pressure compressor 1 has a fixed stator 1a and a rotary rotor 1b. Moreover, the fan 5 has a rotary blade 6 and a fixed part, the casing 7. (当審訳:図1は図式的に,従来の方法で,低圧圧縮機1,高圧圧縮機3とファン5を有する航空機タービンエンジンを示している。高圧圧縮機3は,そのブレード3bにより保持される固定部,すなわち固定子3aとを有しているそれらの端部は,ケーシング2に固定される。また,そのブレード3dが回転ディスク3cに固定され,それらの端部によって固定されて回転部分,すなわち,ロータ3cとを有している。同様に,低圧圧縮機1は、固定されたステータ1aと,回転ロータ1bを有している。また,ファン5がロータリーブレード6及び固定部,ケーシング7を有している。)」(1欄19?28行)

(イ) 「The blades according to the invention are made from composite material, i.e. are produced by means of woven fibers impregnated with a resin.(当審訳:ブレードは,本発明の複合材料から作られている,すなわち,樹脂を含浸させた不織繊維を用いて製造される。)」(3欄25?27行)

(ウ) 「FIG. 3A shows the free end of the blade 6 of the fan 5 shown in FIG. 1. This composite material blade 6 is consequently constituted by a fibrous fabric 10 impregnated with a resin 12. In the present description, these fibers 10 are called the basic fibres of the composite material.(当審訳:図3Aは、図1のファン5のブレード6の自由端を示している。この複合材料ブレード6は,結果的に樹脂12を含浸させた繊維性布10で構成されている。本明細書では,これらの繊維10は,複合材料の基本繊維と呼ばれる。)」(3欄39?43行)

(エ) 図1には航空機タービンエンジンの図が示され,図3Aには図1のファン5のブレード6の自由端を示す図が示されている。

上記事項および図示内容とから,,引用例2には,次の技術的事項(以下,「引用例2記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

「複合材料で作られたロータブレード6を有するタービンエンジン」

4 対比
そこで,本願発明と引用発明とを対比する。

機能・構造からして,引用発明の「軸流ターボガスタービンエンジン10」は本願発明の「タービンエンジン」に相当している。以下,同様にして,「ファン部14」は「ファン組立体」に相当し,「ロータブレード34」は「ファンブレード」に相当し,「ロータアセンブリー28」は「ロータ」に相当し,「硬化材料のライナ42を設置したファンケース48」は「ケーシング」に相当し,「極く近く」は「所定の距離」に相当し,「ラブストリップ44」は「充填材」に相当し,「配置され」は「施工され」に相当し,「ブレード損失後」は「ブレードアウト後」に相当し,「ラブストリップ44が、ロータブレード34に切り込まれ」る態様は「充填材が、ファンブレードと接触し浸食され」る態様に相当している。
そして,引用発明の「ロータが,ファンケース48の極く近くまで半径方向外側へ偏移される」態様は本願発明の「正常作動時に比べロータの軌道直径が増大する」態様に相当しているから,結局,引用発明の「ロータが,ファンケース48の極く近くまで半径方向外側へ偏移されるファン部14のブレード損失時」は本願発明の「正常作動時に比べロータの軌道直径が増大するファン組立体のブレードアウト時」に相当している。

また,引用発明の「ラブストリップが,ブレード損失後にロータブレードに切り込まれる厚さを有し」ていることと本願発明の「充填材が、ケーシングがブレードアウト後に前記ケーシング及び複数のファンブレード間に生じる接触抵抗の量を増大させるのを可能にする厚さを有し」ていることとは「充填剤がブレード損失後に所定の状況となる厚さを有し」ていることで共通している。
さらに,引用発明の「ロータブレード34が硬化材料のライナ42を設置したファンケース48のライナ42に接触して該ロータブレード34がファンケース48に食い込むことが避けられるか減少される」態様と本願発明の「ファンブレードがケーシングに接触したときに該ファンブレードが磨滅する」態様とは「ファンブレードがケーシングに接触したときの該ファンブレードが所定の状態とされる」との概念で共通している。

したがって,両者は,
「タービンエンジンで使用されるファン組立体であって,
複数のファンブレードを含むロータと,
前記ロータの周りで円周方向に延びるケーシングと,
を含み,
前記ケーシングが,前記複数のファンブレードから所定の距離に配置され,
充填材が前記ケーシングに施工されており,
前記充填材が所定の材料であり,
前記充填材が,ブレードアウト後に所定の状況となる厚さを有し,
正常作動時に比べ前記ロータの軌道直径が増大する前記ファン組立体のブレードアウト時に,前記充填材が,前記ファンブレードと接触し浸食され,次いで,
前記ファンブレードが前記ケーシングに接触したときに該ファンブレードが所定の状態とされる,
ファン組立体。」
である点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
「複数のファンブレード」に関し,本願発明では「その少なくとも1つが複合材料で作られた」のに対し,引用発明ではどのような材料で作られたか不明である点。

[相違点2]
「充填材」に関し,本願発明ではその材料が「アルミニウム」であるのに対し,引用発明ではその材料が「比較的柔軟な材料」である点。

[相違点3]
「充填剤がブレードアウト後に所定の状況となる厚さを有する」点に関し,本願発明では「充填材が、ケーシングがブレードアウト後に前記ケーシング及び複数のファンブレード間に生じる接触抵抗の量を増大させるのを可能にする厚さを有し」ているのに対し,引用発明では「ラブストリップが,ブレード損失後にロータブレードに切り込まれる厚さを有し」ている点。

[相違点4]
「ファンブレードがケーシングに接触し該ファンブレードが所定の状態にされる」態様に関し,本願発明では「ファンブレードがケーシングに接触したときに該ファンブレードが磨滅する」のに対し,引用発明では「ロータブレード34が硬化材料のライナ42を設置したファンケース48のライナ42に接触してファンケース48に食い込むことが避けられるか減少される」点。

5 判断
上記相違点について以下検討する。

[相違点1]について
ガスタービンのロータブレードの少なくとも1つを複合材料で作られたものとすることは,引用例2記載事項にあるように周知技術であるから,引用発明において,本願発明の上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
引用発明の「ラブストリップ」は,「ブレード34をファンケースの極く近くに配置して,ファンブレードの周りを流れる空気の量を最小にすることができ,これにより,ファンブレードの周りの流体の流れの漏れを減少させてファン操作を改善することができ」(引用例1の上記摘記事項(ウ)の段落【0015】),「ファンブレード34の頂部38がラブストリップ44に接触してしまった場合,ラブストリップの柔軟性はファンブレード34が破損するおそれを最小にする」(引用例1の上記摘記事項(ウ)の段落【0015】)機能を有するものである。この様な引用発明の「ラブストリップ44」の比較的柔軟な材料として,同様な機能を有する比較的柔軟な材料である「ハニカム」のアルミニウムとすることに,当業者にとって困難性があるものとは認められない(必要であれば,特開2001-241397号公報の「充填材料54」,特に段落【0016】の「ロータ軌道空間には軽量の脆い充填材料54が充填されており、ファン流路境界を画成し、そして正常なエンジン運転中狭い翼端間隙を保つ。填材料54は、1層の従来の摩耗可能な材料56で覆われた1層のハニカム形材料55(例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金)を含み得る。」の記載,および段落【0021】の「正常なエンジン運転中、ファンケース22は、充填材料54とともに、ファン動翼先端と狭い運転間隙を保つ。・・・ファン動翼離脱事故により・・・、充填材料54が、回転中のロータディスク14に残存するファン動翼18によって容易に摩滅する。」の記載,参照。)。

[相違点3]について
引用発明の「ラブストリップ」は,ブレード損失後にロータブレードに切り込まれる際には,ファンケースがファンケース及び複数のロータブレード間に生じる接触抵抗の量を多少なりとも増大させるから,ブレード損失後にロータブレードに切り込まれる厚さとして,ケーシングがブレードアウト後にケーシング及び複数のロータブレード間に生じる接触抵抗の量を増大させるのを可能にする厚さを有するようにすることで,引用発明をして本願発明の上記相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点4]について
引用発明は,そのロータブレードが硬化材料のライナに接触してファンケースに食い込むことが避けられるか減少されるのであって,ライナが硬化材料製であり,例えばチタニウム等のブレード頂部の材料よりも固い材料で製造され,ブレード損失時に比較的柔らかなロータブレードが,ライナの滑り面に沿って円周方向へ移動するから(引用例1の上記摘記事項(ウ)の段落【0015】及び(エ)の段落【0018】参照。),その際に,ロータブレードに磨滅が生じるようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

また,本願発明の全体構成により奏される効果も,引用発明から当業者が予測し得る範囲内のものである。

したがって,本願発明は引用発明に基いて当業者が容易になし得たものである。

6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため,本願の特許請求の範囲の他の請求項2に係る発明について検討するまでもなく,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-26 
結審通知日 2015-03-31 
審決日 2015-04-13 
出願番号 特願2007-335460(P2007-335460)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾崎 和寛  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 田村 嘉章
藤井 昇
発明の名称 タービンエンジンで使用するファン組立体を製作するための方法及び装置  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  
代理人 田中 拓人  

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