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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1304973 |
審判番号 | 不服2014-12896 |
総通号数 | 190 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-07-03 |
確定日 | 2015-08-26 |
事件の表示 | 特願2007-300687「半導体装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月11日出願公開、特開2009-129975〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年11月20日の出願であって、平成24年4月23日付け拒絶理由通知に対して同年8月16日付けで手続補正がなされ、平成25年3月22日付け拒絶理由通知に対して同年6月26日付けで手続補正がなされたが、平成26年2月28日付けで補正却下の決定及び拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月3日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。 第2 平成26年7月3日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年7月3日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 平成26年7月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであって、請求項1について、 本件補正の前(平成24年8月16日付けの手続補正)に、 「【請求項1】 上面に凹部を有する第1の中継基板と、 前記第1の中継基板の前記凹部内に搭載された半導体チップと、 前記半導体チップ上方に、前記第1の中継基板と接続端子を介し搭載された第2の中継基板とを具備し、 前記第2の中継基板上には、内蔵半導体装置が設けられ、 前記第1の中継基板と前記第2の中継基板との間に充填され前記半導体チップを封止する第1樹脂部と、 前記第1樹脂部および前記内蔵半導体装置を封止する第2樹脂部とを具備し、 前記第1樹脂部と前記第2樹脂部とは同じ樹脂からなり、 前記内蔵半導体装置の上面は、前記第2樹脂部の上面から露出していることを特徴とする半導体装置。」 とあったところを、 「【請求項1】 上面に凹部を有する第1の中継基板と、 前記第1の中継基板の前記凹部内に搭載された半導体チップであって、その上面と前記第1の中継基板の前記凹部が形成されていない部分の上面が電気的に接続されている半導体チップと、 前記半導体チップ上方に、前記第1の中継基板と接続端子を介し搭載された第2の中継基板とを具備し、 前記第2の中継基板上には、内蔵半導体装置が設けられ、前記第1の中継基板の前記凹部の底部の厚さが前記第2の中継基板の厚さより薄く、 前記第1の中継基板と前記第2の中継基板との間に充填され前記半導体チップ、及び前記半導体チップと前記第2の中継基板との間隙を封止する第1樹脂部と、 前記第1樹脂部および前記内蔵半導体装置を封止する第2樹脂部とを具備し、 前記第1樹脂部と前記第2樹脂部とは同じ樹脂からなり、 前記内蔵半導体装置の上面は、前記第2樹脂部の上面から露出していることを特徴とする半導体装置。」 とするものである。 2.新規事項の検討 本件補正は、「前記第1の中継基板の前記凹部の底部の厚さが前記第2の中継基板の厚さより薄く」の補正事項を含むものである。 この補正事項について、審判請求人は、審判請求書において「かかる補正は、出願当初の明細書段落0020、0026の記載及び図1-9などに基づいてなされた」旨を主張している。 以下、当該補正事項について検討する。 本願明細書の段落【0020】には「図1は実施例1に係る半導体装置の断面図である。図1を参照に、ガラスエポキシ等の絶縁体からなる中継基板10の上面に凹部12が設けられている。中継基板10の厚さは例えば約200μm、凹部12の深さは、例えば中継基板10の厚さの1/2以上が好ましい。中継基板10は、Cu等の金属からなるランド電極14、パッド電極16および貫通接続部18を有している。ランド電極14およびランド電極14間を接続する配線(不図示)は中継基板10の上面側に配置され、パッド電極16は中継基板10の下面側に設けられている。ランド電極14とパッド電極16とは貫通接続部18により電気的に接続されている。パッド電極16には半田ボール15が設けられている。」と記載され、段落【0026】には「実施例1によれば、図1を参照に、半導体チップ20が中継基板10の凹部12内に搭載されている。このため、半導体チップ20と内蔵半導体装置50との間隔t2を、凹部12の深さt1分大きくすることができる。これにより、図2(c)において、アンダーフィル剤を内蔵半導体装置50と半導体チップ20との間に容易に充填させることができる。また、図1において、凹部12が設けられていない場合と間隔t2が同じであれば、凹部12が設けられた実施例1は中継基板10と内蔵半導体装置50との間隔t3を小さくすることができる。よって、半導体装置の低背化が可能となり、かつ内蔵半導体装置50から発生する熱を第1樹脂部26を介し放熱することができ放熱性の向上が可能となる。さらに、間隔t3が小さくなると、半田端子28を小さくできるため、半田端子28を配置する間隔を小さくすることができる。よって、半導体装置の小型化も可能となる。」と記載されている。なお、下線は当審で付与した。 以上によれば、段落【0020】の記載から「中継基板10の厚さ」及び「凹部12の深さ」について、段落【0026】の記載から「半導体チップ20と内蔵半導体装置50との間隔を凹部12の深さ分大きくする」こと及び「中継基板10と内蔵半導体装置50との間隔を小さくする」こと、については記載されているものの、「第1の中継基板10の前記凹部12の底部の厚さが前記第2の中継基板30の厚さより薄くする」ことについては、直接的な記載もこれを示唆する記載もない。また、概略図である図1乃至9から「第2の中継基板の厚さ」を特定できるものでもない。 そして、本願明細書のその他の記載を参酌しても、第2の中継基板の厚さについての記載はない。 したがって、本件補正は、本願の願書に最初に添付された明細書または図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.独立特許要件の予備的判断 (1)本件補正の目的 上記「2.新規事項の検討」で示したように、本件補正は新規事項が追加されたと判断されるものの、仮に各中継基板の凹部を設けない部分の厚さが同じことが自明であり、「前記第1の中継基板の前記凹部の底部の厚さが前記第2の中継基板の厚さより薄く」が新規事項でないと仮定し、本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当するとして、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうかについても判断を示す。 そうすると、本件補正は、「半導体チップ」について「その上面と前記第1の中継基板の前記凹部が形成されていない部分の上面が電気的に接続されている半導体チップ」と限定し、「中継基板の厚さ」について「前記第1の中継基板の前記凹部の底部の厚さが前記第2の中継基板の厚さより薄く」と限定し、「第1樹脂部」について「及び前記半導体チップと前記第2の中継基板との間隙」を封止すると限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的にするものといえる。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下予備的に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2006/095852号(2006年9月14日国際公開、以下「引用例1」という。)には、「電子部品モジュール及びその製造方法」に関し、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。 ア.「[0018] 図3は電子部品モジュールの上面図、図4は図3に示す電子部品モジュールのA-A線断面図、図5は図3に示す電子部品モジュールのB-B線断面図、図6は電子部品モジュールをC方向から見た側面図である。 電子部品モジュールは、キャビティ2を形成した配線基板1と、配線基板1に搭載される第1の半導体素子10及び第2の半導体素子11と、第2の半導体素子11を被覆する樹脂材4とから主に構成されている。 [0019] 配線基板1は概略直方体形状をなし、一主面(図では上面)側にキャビティ2が形成されている。かかる配線基板1は、例えば、ガラス-セラミックス、アルミナセラミックス等のセラミック材料からなる絶縁体層を複数個積層することにより形成さている。各絶縁体層の厚みは例えば50μm?300μmに設定される。絶縁層の積層数は任意であるが、例えば、5層?15層に設定される。」 イ.「[0021] また、配線基板1の下面には外部端子3が形成され、これらの外部端子3を通じて、メインボード18と接続される。また、配線基板1の上面には電極パッド5や表面配線パターン(図示せず)が形成されている。 これらの内部配線導体や外部端子3、電極パッド5等は、Ag、Cu、W及びMo等の金属を主成分とする材料からなるものであり、例えばAg系粉末、ホウ珪酸系低融点ガラスフリット、エチルセルロース等の有機バインダー、有機溶剤等を含有してなる導体ペーストを、従来周知のスクリーン印刷等によって配線基板1の各絶縁体層に対応したセラミックグリーンシート上に塗布し、焼成することによって形成される。 [0022] 配線基板1に設けられたキャビティ2は、矩形状の開口面を有する凹部であり、第1の半導体素子10を収容する。 キャビティ2の開口面から底面までの深さは、例えば、収容される第1の半導体素子10の上面が、配線基板1の上面よりも上に突出しない深さに設定される。 キャビティ2に収容される第1の半導体素子10は、例えば、SiやGaAs等の半導体素子基板の表面に、Al等の回路配線が形成されたものである。この回路配線により、増幅回路や発振回路を構成している。」 ウ.「[0031] これら第2の半導体素子11、SAWフィルタ12、水晶発振器13、チップ状電子部品14等を被覆するようにして樹脂材4が、配線基板1の上面側に形成されている。 樹脂材4は、例えば、エポキシ等の樹脂材料が用いられ、第2の半導体素子11、SAWフィルタ12、水晶発振器13、チップ状電子部品14の接合強度を補強している。 なお、本発明において樹脂材4は、必ずしも配線基板上の第2の半導体素子11、SAWフィルタ12、水晶発振器13、チップ状電子部品14等、搭載部品の全体を、完全に覆う必要はない。 [0032] 樹脂材4は、これらの搭載部品の少なくとも一部を被覆していればよい。例えば、本実施形態においては、図4、図5に示すように、樹脂材4は、第2の半導体素子11の側面を被覆し、上面を被覆していない。第2の半導体素子11の上面は、後述するように、シールド樹脂層8が直接接触している。 また、本発明の実施形態において、樹脂材4は、キャビティ2内にも充填され、第1の半導体素子10を被覆している。」 [0033] これによって、第1の半導体素子10の配線基板1に対する接合強度を補強することができる。 さらに、第1の半導体素子10の上面と第2の半導体素子11の下面との間に存在する空間にも樹脂材4が充填されているので、これによっても第2の半導体素子11の接合強度を補強することができる。」 エ.「[0049] 以上の製造法により、電子装置の組み立て工程が大幅に簡素化されるようになり、電子部品モジュールの生産性向上に供することが可能となる。 なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良が可能である。 例えば、上述した本発明に係る電子部品モジュールの実施形態において、第1、第2の半導体素子の下面に設けられる接続端子6とキャビティ底面あるいは配線基板1の上面に設けられた電極パッド5とを導電性接合材によって接続するようにしたが、これに代えて、第1、第2の半導体素子の上面に設けた接続端子と電極パッド5とをワイヤボンディングにより接続するようにしてもよい。」 ・上記アによれば、電子部品モジュールは、配線基板、第1の半導体素子、第2の半導体素子、及び樹脂材とから構成されている。 ・上記ア、図4によれば、第1の半導体素子及び第2の半導体素子は配線基板に搭載され、第2の半導体素子は第1の半導体素子の上方に設けられている。 ・上記アによれば、配線基板には上面にキャビティが形成され、上記イによれば、キャビティとは凹部であることから、配線基板は上面に凹部が形成されている。また、上記イによれば、配線基板の凹部に第1の半導体素子が収容される。 ・上記ウによれば、樹脂材は、第1の半導体素子を被覆し、第1の半導体素子と第2の半導体素子の間に充填され、配線基板の上面側に形成されて第2の半導体素子を被覆している。但し、樹脂材は、第2の半導体素子の上面は被覆していない。 したがって、上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「上面に凹部を形成した配線基板と、 前記配線基板の前記凹部に収容され搭載された第1の半導体素子と、 前記配線基板に搭載され、前記第1の半導体素子の上方に設けられた第2の半導体素子と、 前記第1の半導体素子と前記第2の半導体素子の間に充填され前記第1の半導体素子を被覆する樹脂材と、 前記配線基板の上面側に形成されて第2の半導体素子を被覆する樹脂材とから構成され、 前記樹脂材は、前記第2の半導体素子の上面を被覆していない電子部品モジュール。」 また、原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-340451号公報(平成17年12月8日公開、以下「引用例2」という。)には、「半導体装置及びその製造方法、回路基板並びに電子機器」に関し、図面とともに以下の記載がある。 オ.「【背景技術】 【0002】 スタックドタイプの半導体装置が開発されている。スタックドタイプの半導体装置は、半導体チップを三次元的に実装するので、平面的に小型化が可能である。また、既存の半導体チップの組み合わせで対応することができるので、新たな集積回路の設計が不要になる。しかしながら、それぞれの半導体チップをインターポーザによって支持した場合、上下のインターポーザの接合強度が信頼性に影響を与えていた。」 カ.「【0010】 半導体装置は、複数の第2のパッケージ30を有する。それぞれの第2のパッケージ30は、第2のインターポーザ32を有する。第2のインターポーザ32には、第1のインターポーザ12についての説明が該当する。さらに、第2のインターポーザ32は、第1のインターポーザ12と同じ材料で形成してもよいし、同じ厚みで形成してもよいし、同じ熱膨張率を有していてもよい。あるいは、第2のインターポーザ32は、第1のインターポーザ12と異なる材料で形成してもよいし、異なる厚みで形成してもよい。また、第1及び第2のインターポーザ12,32は、いずれか一方が他方よりも熱膨張率が大きくてもよい。なお、熱膨張率は、加熱時の膨張率であるとともに、冷却時の収縮率でもある。第2のインターポーザ32には、第2の配線パターン34が形成されている。第2の配線パターン34には、第1の配線パターン14についての説明が該当する。」 キ.「【0016】 第1及び第2のパッケージ10,30(第1及び第2のインターポーザ12,32)の間には、複数のコンタクト部48が設けられている。コンタクト部48は、第1及び第2の配線パターン14,34を電気的に接続する。例えば、第1の配線パターン14の一部(例えばランド)と、第2の配線パターン34の一部(例えばランド)が相互に対向しており、この対向する部分間にコンタクト部48を設けてもよい。コンタクト部48は、軟ろう(soft solder)又は硬ろう(hard solder)のいずれで形成してもよい。軟ろうとして、鉛を含まないハンダ(以下、鉛フリーハンダという。)を使用してもよい。鉛フリーハンダとして、スズー銀(Sn-Ag)系、スズ-ビスマス(Sn-Bi)系、スズ-亜鉛(Sn-Zn)系、あるいはスズ-銅(Sn-Cu)系の合金を使用してもよいし、これらの合金に、さらに銀、ビスマス、亜鉛、銅のうち少なくとも1つを添加してもよい。 ク.「【0017】 第1及び第2のパッケージ10,30の間(詳しくは、第1及び第2のインターポーザ12,32の間と、第1の半導体チップ16と第2のインターポーザ32との間)には、樹脂50が設けられている。樹脂50は、熱硬化性樹脂であってもよい。樹脂50は、エポキシ樹脂であってもよい。樹脂50は、封止部44の材料(あるいは第2のパッケージ30)よりも熱膨張率が大きくてもよい。樹脂50は、第1及び第2のインターポーザ12,32の対向面と、第1の半導体チップ16と第2のインターポーザ32との対向面と、に接着している。樹脂50は、複数のコンタクト部48を封止している。樹脂50は、第1及び第2のパッケージ10,30の間に隙間なく充填されていてもよい。これによって、第1及び第2のパッケージ10,30の接合強度がさらに向上する。樹脂50は、第2のパッケージ30の端面を被覆していてもよい。すなわち、半導体装置の側面に樹脂50が露出していてもよい。図2に示すように、樹脂50は、封止部44の端面46(のみ)を被覆していてもよい。樹脂50が封止部44の材料よりも熱膨張率が大きければ、第2のパッケージ30(封止部44)に加えられる応力を緩和することができる。樹脂50は、第2のインターポーザ32の端面33(のみ)を被覆していてもよい。樹脂50は、第2のインターポーザ32の端面33及び封止部44の端面46を被覆していてもよい。樹脂50は、第2のパッケージ30の端面の全部を被覆して、第2のパッケージ30の上面と面一となっていてもよい。あるいは、樹脂50によって、第2のパッケージ30の上面よりも低い面が形成されていてもよい。」 (3)対比・判断 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「配線基板」及びその「凹部」は、本願補正発明の「第1の中継基板」及びその「凹部」に相当する。よって、引用発明の「上面に凹部を形成した配線基板」は、本願補正発明の「上面に凹部を有する第1の中継基板」に相当する。 b.引用発明の凹部に収容された「第1の半導体素子」は、本願補正発明の「半導体チップ」に相当する。よって、引用発明の「前記配線基板の前記凹部に収容され搭載された第1の半導体素子」は、本願補正発明の「前記第1の中継基板の前記凹部内に搭載された半導体チップ」に相当する。 c.引用発明の「前記配線基板に搭載され、前記第1の半導体素子の上方に設けられた第2の半導体素子」は、本願補正発明の「内蔵半導体装置」に相当し、第1の半導体素子(本願発明の半導体チップに相当。)の上方に設けられたものである点で共通する。但し、本願補正発明の内蔵半導体装置は「第2の中継基板」上に設けられているが、引用発明には「第2の中継基板」に相当する構成の記載はない。 d.引用発明の「前記第1の半導体素子と前記第2の半導体素子の間に充填され前記第1の半導体素子を被覆する樹脂材」は、本願補正発明の「半導体チップを封止する第1樹脂部」に相当する。 e.引用発明の「前記配線基板の上面側に形成されて第2の半導体素子を被覆する樹脂材」は、引用例1の図4や図5を参照すると上記dの樹脂材(本願補正発明の第1樹脂部に相当。)と繋がっており、また、第2の半導体素子(本願補正発明の内蔵半導体装置に相当。)を封止しているものといえるから、本願補正発明の「前記第1樹脂部および前記内蔵半導体装置を封止する第2樹脂部」に相当する。 また、引用発明の「前記樹脂材は、前記第2の半導体素子の上面を被覆していない」点は、本願補正発明の「前記内蔵半導体装置の上面は、前記第2樹脂部の上面から露出している」点に相当する。 f.「上記dの樹脂材」(本願補正発明の第1樹脂部に相当。)と「上記eの樹脂材」(本願補正発明の第2樹脂部に相当。)は、引用例1の記載を全体的に参酌しても別の樹脂材とはなっておらず(引用例1において、全ての樹脂材は「樹脂材4」として説明されている。)、同じ樹脂材であると解せるから、引用発明の「樹脂材」は、本願補正発明の「前記第1樹脂部と前記第2樹脂部とは同じ樹脂からなり」に相当する。 g.引用発明の「電子部品モジュール」は、本願補正発明の「半導体装置」に相当する。 よって、本願補正発明と引用発明とは、 「上面に凹部を有する第1の中継基板と、 前記第1の中継基板の前記凹部内に搭載された半導体チップと、 前記半導体チップ上方に、内蔵半導体装置が設けられ、 前記半導体チップを封止する第1樹脂部と、 前記第1樹脂部および前記内蔵半導体装置を封止する第2樹脂部とを具備し、 前記第1樹脂部と前記第2樹脂部とは同じ樹脂からなり、 前記内蔵半導体装置の上面は、前記第2樹脂部の上面から露出していることを特徴とする半導体装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 半導体チップの接続について、本願補正発明は「その上面と前記第1の中継基板の前記凹部が形成されていない部分の上面が電気的に接続されている」のに対し、引用発明にはそのような特定がなされていない点。 (相違点2) 第2の中継基板について、本願補正発明は「前記半導体チップ上方に、前記第1の中継基板と接続端子を介し搭載された第2の中継基板とを具備し」ているのに対し、引用発明には「第2の中継基板」の構成が特定されていない点。 (相違点3) 中継基板の厚さについて、本願補正発明は「前記第1の中継基板の前記凹部の底部の厚さが前記第2の中継基板の厚さより薄」いのに対し、引用発明にはそのような特定がなされていない点。 (相違点4) 第1樹脂部について、本願補正発明は、「前記第1の中継基板と前記第2の中継基板との間に充填され前記半導体チップ、及び前記半導体チップと前記第2の中継基板との間隙を封止」するのに対し、引用発明は「第1の半導体素子と第2の半導体素子の間に充填され前記第1の半導体素子を被覆」しているものの「第2の中継基板」の構成が特定されていない点。 上記相違点について検討する。 <相違点1について> 引用例1には、配線基板1の上面に電極パット5が形成されていること、また、第1の半導体素子の上面に設けられた接続端子と電極パット5とをワイヤボンディングにより接続するようにしてもよいこと(上記エを参照。)が記載されている。 したがって、引用発明において、第1の半導体素子と配線基板との接続形態を相違点1の構成とすることは当業者が適宜なし得た事項である。 <相違点2について> インターポーザに半導体チップを搭載したものを複数組積層することは、例えば引用例2に記載されているようにスタックドタイプの半導体装置として周知である。ここで、上記引用例2には、それぞれの半導体チップをインターポーザによって支持すること(上記オを参照。)、第1インターポーザ及び第2のインターポーザの間にコンタクト部が設けられていること(上記キを参照。)が記載されており、「第1のインターポーザ」、「第2のインターポーザ」、「コンタクト部」は、本願補正発明の「第1の中継基板」、「第2の中継基板」、「接続端子」にそれぞれ相当する。 したがって、引用発明において、第2の半導体素子に代えて引用例2に記載された周知のインターポーザによって支持された半導体素子構造とし、相違点2の構成とすることは当業者が容易に想到できたものである。 <相違点3について> スタックドタイプの半導体装置において、積層される複数のインターポーザを同じ厚みで形成することは、例えば引用例2の上記カに記載されているように適宜設計し得る事項である。 そして、本願補正は、各中継基板(凹部を設けない部分)の厚さが同じことが自明であることを前提として「前記第1の中継基板の前記凹部の底部の厚さが前記第2の中継基板の厚さより薄く」が新規事項でないと仮定したのであるから、<上記相違点2について>で検討したように、引用発明において、第2の半導体素子をインターポーザによって支持された半導体素子構造とした際に、配線基板(第1の半導体素子のインターポーザ)を第2の半導体素子のインターポーザと同じ厚さにすることは容易になし得るところ、当該配線基板には凹部が設けられているから、当該凹部の厚さは第2のインターポーザの厚さより薄くなるようにすること(相違点3の構成)は当業者が適宜なし得たものである。 <相違点4について> 引用例2の上記クによれば、第1及び第2のインターポーザの間、及び、第1の半導体チップと第2のインターポーザとの間に樹脂を設ける技術が記載されている。ここで、引用例2に記載された「第1の半導体チップ」「樹脂」は、本願補正発明の「半導体チップ」「第1樹脂部」にそれぞれ相当している。 したがって、<上記相違点2について>で検討したように、引用発明の「第2の半導体素子」(本願補正発明の内蔵半導体装置に相当。)に代えてインターポーザによって支持された半導体素子構造とし、その際、相違点4の構成とすることは当業者が容易に想到できたものである。 なお、審判請求人は、審判請求書において「平成25年6月26日付け意見書でも述べたように、引用例1における配線基板1は本願発明1、2の中継基板に対応するものではありません。引用例1における配線基板1は複数の電気部品、たとえば、RFIC10、制御用IC11、SAWフィルタ12、水晶発振器13、チップ状電気部品14などが所定の位置に搭載される回路基板(明細書段落0030を参考)であり、引用例2の段落0039及び図18に記載された回路基板1000に対応するものと考えます」と主張している。 しかしながら、引用例1の上記イ(段落[0021])には、「また、配線基板1の下面には外部端子3が形成され、これらの外部端子3を通じて、メインボード18と接続される。」と記載され、配線基板1は、メインボードに搭載されるものであり、本願補正発明の「第1の中継基板」に対応しているといえるから、請求人の上記主張は採用することができない。 そして、本願補正発明が奏する効果は、引用例1及び2から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。 (4)むすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 1.本願発明の認定 平成26年7月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至6に係る発明は、平成24年8月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1.」に本件補正の前の請求項1として記載したとおりのものである。 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及び2の記載事項は、前記「第2 3.(2)」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、本願補正発明における上記(相違点1)及び(相違点3)に係る限定(構成)を削除したものである。 そうすると、本願発明の構成要素を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 3.(3)」に記載したとおり、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1及び2に記載された発明により当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は、その余の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-03-09 |
結審通知日 | 2015-03-10 |
審決日 | 2015-04-16 |
出願番号 | 特願2007-300687(P2007-300687) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 今井 拓也 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
井上 信一 酒井 朋広 |
発明の名称 | 半導体装置及びその製造方法 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 内藤 和彦 |