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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01M
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G01M
管理番号 1305394
審判番号 不服2014-2082  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-04 
確定日 2015-09-10 
事件の表示 特願2010-530153「腐食性液体の存在の検出に好適なケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月23日国際公開、WO2009/052412,平成23年 1月 6日国内公表,特表2011-501160〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成20年10月17日(パリ条約による優先権主張日 平成19年10月18日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成24年10月25日付けで拒絶理由が通知され,平成25年4月22日付けで意見書及び手続補正書が提出され,同年10月1日付けで拒絶査定されたのに対し,平成26年2月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,それと同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,平成25年4月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲である,
「【請求項1】
a)少なくとも1つの導電層により囲まれる中央導体を有する第1及び第2検出用ワイヤーであって、該第1及び第2検出用ワイヤーの少なくとも1つが更に少なくとも1つの非導電表面層により囲まれており、前記少なくとも1つの非導電表面層が腐食性液体によって溶解し、第1及び第2検出用ワイヤーの間を電気的に接続可能にする前記少なくとも1つの導電層が露出する、第1及び第2検出用ワイヤーと、
b)該前記第1及び第2検出用ワイヤーに隣接して固定されたコア部材と、そして
c)該コア部材と第1及び第2検出用ワイヤーとの上に重なる断続型カバーと、を具備する腐食性液体の存在の検出に好適なケーブル。
【請求項2】
前記第1及び第2検出用ワイヤーが少なくとも1つの非導電表面層を備える請求項1記載のケーブル。
【請求項3】
第1及び第2絶縁ワイヤーを更に具備する請求項1記載のケーブル。
【請求項4】
前記第1及び第2検出用ワイヤーと前記第1及び第2絶縁ワイヤーとが前記コア部材上にバランスした構成で配置される請求項3記載のケーブル。
【請求項5】
該コア部材が絶縁材料で囲まれる中央支持部材を備える請求項1記載のケーブル。
【請求項6】
該中央支持部材がワイヤーであり、該絶縁材料がポリマーである請求項5記載のケーブル。
【請求項7】
該断続型カバーが有効な吸い込み作用を提供する請求項1記載のケーブル。
【請求項8】
該断続型カバーが有効なUV保護を提供する請求項1記載のケーブル。
【請求項9】
該断続型カバーが編組織物カバーを有する請求項1記載のケーブル。
【請求項10】
該編組織物カバーが複数のポリエステルファイバーを有する請求項9記載のケーブル。
【請求項11】
該編組織物カバーが16本のポリエステルファイバーのヤーンを有し、該各ファイバーが
10,000デニールである請求項10記載のケーブル。
【請求項12】
該中央導体が無垢の金属中央導体を有し、
該少なくとも1つの導電層がポリビニリデンフルオライドを有し、
該少なくとも1つの非導電表面層がポリウレタンの層を有し、
そしてエチレン/テトラフルオロエチレンコーポリマーの少なくとも1つの層により囲ま
れたストランド化ニッケルめっき銅ワイヤーで構成される中央支持部材が熱可塑性エラス
トマーの層により囲まれる請求項1記載のケーブル。
【請求項13】
a)少なくとも1つの導電層により囲まれた中央導体を有する第1及び第2検出用ワイヤ
ーと、
b)該第1及び第2検出用ワイヤーに隣接して固定されたコア部材と、
c)前記第1及び第2検出用ワイヤーと前記コア部材とを封入する少なくとも1つの非導電表面層であって、前記少なくとも1つの非導電表面層が腐食性液体によって溶解し、該第1及び第2検出用ワイヤーの間を電気的に接続可能にする前記少なくとも1つの導電層が露出する、非導電表面層と、
d)該非導電表面層の上に重なる断続型カバーと、を具備する腐食性液体の存在の検出に好適なケーブル。
【請求項14】
該断続型カバーが有効な吸い込み作用を提供する請求項13記載のケーブル。
【請求項15】
該断続型カバーが有効なUV保護を提供する請求項13記載のケーブル。
【請求項16】
a)中央導体を有する第1及び第2検出用ワイヤーであって、該第1及び第2検出用ワイヤーの少なくとも1つが更に少なくとも1つの非導電表面層により囲まれており、前記少なくとも1つの非導電表面層が腐食性液体によって溶解し、該第1及び第2検出用ワイヤーの間を電気的に接続可能にする前記少なくとも1つの導電層が露出する、第1及び第2検出用ワイヤーと、
b)該第1及び第2検出用ワイヤーの上に重なる断続型カバーと、を具備する腐食性液体
の存在の検出に好適なケーブル。
【請求項17】
a)少なくとも1つの非導電表面層により囲まれる中央導体を有する第1及び第2検出用ワイヤーであって、前記少なくとも1つの非導電表面層が腐食性液体によって溶解し、該第1及び第2検出用ワイヤーの間を電気的に接続可能にする前記少なくとも1つの導電層が露出する、第1及び第2検出用ワイヤーと、
b)該第1及び第2検出用ワイヤーに隣接して固定されたコア部材と、そして
c)該コア部材と第1及び第2検出用ワイヤーとの上に重なる断続型カバーと、を具備する腐食性液体の存在の検出に好適なケーブル。」(上記の下線は,以下の本件補正によって削除された発明特定事項を示す。)を,
「【請求項1】
腐食性液体の存在の検出に好適なケーブルであって、
a)少なくとも1つの導電層により囲まれる中央導体を有する第1及び第2検出用ワイヤーであって、該第1及び第2検出用ワイヤーの少なくとも1つが更に少なくとも1つの非導電表面層により囲まれている第1及び第2検出用ワイヤーと、
b)該前記第1及び第2検出用ワイヤーに隣接して固定されたコア部材と、そして
c)該コア部材と第1及び第2検出用ワイヤーとの上に重なる断続型カバーと、を具備し、
前記断続型カバーは、前記ケーブルの回りの前記腐食性液体の効果的なウィッキングを提供し、
前記断続型カバーは、前記ケーブルの紫外線に対する強化耐性を提供する、ケーブル。
【請求項2】
前記第1及び第2検出用ワイヤーが少なくとも1つの非導電表面層を備える請求項1記載のケーブル。
【請求項3】
第1及び第2絶縁ワイヤーを更に具備する請求項1記載のケーブル。
【請求項4】
前記第1及び第2検出用ワイヤーと前記第1及び第2絶縁ワイヤーとが前記コア部材上にバランスした構成で配置される請求項3記載のケーブル。
【請求項5】
該コア部材が絶縁材料で囲まれる中央支持部材を備える請求項1記載のケーブル。
【請求項6】
該中央支持部材がワイヤーであり、該絶縁材料がポリマーである請求項5記載のケーブル。
【請求項7】
該断続型カバーが編組織物カバーを有する請求項1記載のケーブル。
【請求項8】
該編組織物カバーが複数のポリエステルファイバーを有する請求項7記載のケーブル。
【請求項9】
該編組織物カバーが16本のポリエステルファイバーのヤーンを有し、該各ファイバーが10,000デニールである請求項8記載のケーブル。
【請求項10】
請求項1記載のケーブルを利用して漏洩の存在を検出し、位置探索する方法。
【請求項11】
該中央導体が無垢の金属中央導体を有し、該少なくとも1つの導電層がポリビニリデンフルオライドを有し、該少なくとも1つの非導電表面層がポリウレタンの層を有し、そしてエチレン/テトラフルオロエチレンコーポリマーの少なくとも1つの層により囲まれたストランド化ニッケルめっき銅ワイヤーで構成される中央支持部材が熱可塑性エラストマーの層により囲まれる請求項1記載のケーブル。
【請求項12】
腐食性液体の存在の検出に好適なケーブルであって、
a)少なくとも1つの導電層により囲まれた中央導体を有する第1及び第2検出用ワイヤーと、
b)該第1及び第2検出用ワイヤーに隣接して固定されたコア部材と、
c)前記第1及び第2検出用ワイヤーと前記コア部材とを封入する少なくとも1つの非導電表面層と、そして
d)該非導電表面層の上に重なる断続型カバーと、を具備し、
前記断続型カバーは、前記ケーブルの回りの前記腐食性液体の効果的なウィッキングを提供し、
前記断続型カバーは、前記ケーブルの紫外線に対する強化耐性を提供する、ケーブル。
【請求項13】
請求項12記載のケーブルを利用して漏洩の存在を検出し、位置探索する方法。
【請求項14】
腐食性液体の存在の検出に好適なケーブルであって、
a)中央導体を有する第1及び第2検出用ワイヤーであって、該第1及び第2検出用ワイヤーの少なくとも1つが更に少なくとも1つの非導電表面層により囲まれている第1及び第2検出用ワイヤーと、そして
b)該第1及び第2検出用ワイヤーの上に重なる断続型カバーと、具備し、
前記断続型カバーは、前記ケーブルの回りの前記腐食性液体の効果的なウィッキングを提供し、
前記断続型カバーは、前記ケーブルの紫外線に対する強化耐性を提供する、ケーブル。
【請求項15】
腐食性液体の存在の検出に好適なケーブルであって、
a)少なくとも1つの非導電表面層により囲まれる中央導体を有する第1及び第2検出用ワイヤーと、
b)該第1及び第2検出用ワイヤーに隣接して固定されたコア部材と、そして
c)該コア部材と第1及び第2検出用ワイヤーとの上に重なる断続型カバーと、を具備し、
前記断続型カバーは、前記ケーブルの回りの前記腐食性液体の効果的なウィッキングを提供し、
前記断続型カバーは、前記ケーブルの紫外線に対する強化耐性を提供する、ケーブル。」(本件補正における下線は,補正された部分を示す。)と補正するものである。

2 本件補正の適否
(1)本件補正は,本件補正前の平成25年4月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲がすべて「ケーブル」としての物の発明だけであたったのに対し,新たに請求項10として「請求項1記載のケーブルを利用して漏洩の存在を検出し、位置探索する方法。」の方法の発明を,新たに請求項13として「請求項12記載のケーブルを利用して漏洩の存在を検出し、位置探索する方法。」の方法の発明を追加するものである。
発明のカテゴリーによって法律効果が異なり,「方法の発明」を追加することは「物の発明」として請求していた権利とは異なる効果を有する別の権利をさらに請求することにほかならないことから,このように発明のカテゴリーが異なる発明を追加することは,特許請求の範囲を変更するものであり,特許法17条の2第5項各号のいずれにも該当しない(例えば,平成19年9月20日に知財高裁でなされた平成18年(行ケ)第10494号判決参照。)ものである。

(2)本件補正は,本件補正前の平成25年4月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の独立項である請求項1,13,16及び17に係る発明から「前記少なくとも1つの非導電表面層が腐食性液体によって溶解し、該第1及び第2検出用ワイヤーの間を電気的に接続可能にする前記少なくとも1つの導電層が露出する」との発明特定事項を削除し,これとは別の発明特定事項で限定して,それらを新たに独立項として請求項1,12,14及び15に係る発明としたものである。このように発明特定事項を削除する補正事項を含む補正は,特許法17条の2第5項各号のいずれにも該当しないものである。

(3)小括
本件補正は,上記(1),(2)の点で,特許法17条の2第5項各号のいずれにも該当しないことから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3 上申書について
請求人は,平成26年12月10付けで上申書を提出しており,それには補正案が提示されているため,一応,その補正案についても検討しておく。補正案には,請求項1として,以下の発明が記載されている。
「腐食性液体の存在の検出に好適なケーブルであって、
a)少なくとも1つの導電層により囲まれる中央導体を有する第1及び第2検出用ワイヤーであって、該第1及び第2検出用ワイヤーの少なくとも1つが更に少なくとも1つの非導電表面層により囲まれており、前記少なくとも1つの非導電表面層が腐食性液体によって溶解し、第1及び第2検出用ワイヤーの間を電気的に接続可能にする前記少なくとも1つの導電層が露出する、第1及び第2検出用ワイヤーと、
b)該前記第1及び第2検出用ワイヤーに隣接して固定されたコア部材と、そして
c)該コア部材と第1及び第2検出用ワイヤーとの上に重なる断続型カバーと、を具備し、
前記断続型カバーは、前記ケーブルの回りの前記腐食性液体の効果的なウィッキングを提供し、
前記断続型カバーは、前記ケーブルの紫外線に対する強化耐性を提供する、ケーブル。」(以下「補正案発明」という。)

(1)引用刊行物及びその記載事項
ア 本願優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2005-524082号公報(以下「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。なお,以下の摘記においては,引用発明の認定に特に関連する箇所に下線を付与した。
(1-ア)「【請求項1】
腐食性の液体の存在を検知するのに適したケーブルであって、
a)少なくとも1つの導電性の層によって包囲されている中心導電体を含んでいる第1及び第2の感知ワイヤーであって、該第1及び第2の感知ワイヤーのうちの少なくとも1つが更に、少なくとも1つの非導電性の表面層によって包囲されている第1及び第2の感知ワイヤーと、
b)前記第1及び第2の感知ワイヤーが周囲に巻き付けられているコア部材と、を含むケーブル。」

(1-イ)「【0002】
原油、精製石油製品又は濃縮された酸若しくは塩基のような腐食性の液体のような液体の搬送は、タンク及び地下パイプラインを使用して行われることが多い。地下パイプラインは、パイプ、嵌合部及び弁からの漏れを受ける。有害な又は腐食性の液体を搬送する地下パイプラインが漏れを進行させると、漏れは、修理できる前に、最初に検知し且つ突き止めなければならない。
【0003】
漏れを検知するための種々の装置が公知である。水、有機溶剤又は腐食性液体のような液体の存在のような長い経路に沿った変数の変化を検知するために、例えば、センサーケーブルを使用することができる。センサーケーブルは、パイプライン内の全長すなわち長手軸線に沿って又は液体の漏れが起こる傾向がある種々の部分又は点に延びていても良い。
【0004】
公知のセンサーケーブルは、一般的に、互いに隔置された第1及び第2の導電体を含んでいる。導電性液体が第1及び第2の導電体の両方に接触すると、電気的接続が形成される。第1の導電体と第2の導電体との間に接触を形成するのに十分な液体が存在しない場合には、接続が存在しないであろう。一般的なセンサーケーブルは、雨水及び地下水を含むあらゆる導電性液体を検知するであろう。従って、このような一般的なセンサーケーブルは、低い濃度の腐食性の成分を含んでいる地下水又は雨水のような一般的な導電性液体と、濃縮された硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、強い鉱酸又は水酸化ナトリウムのような強い塩基のような導電性で腐食性が強い液体とを区別することができないので、擬似警報を受ける。」

(1-ウ)「【0028】
好ましい実施形態においては、ケーブルの第1及び第2の感知ワイヤーの各々の非導電性表面層は、腐食性液体と接触したときに、分解され又は可溶化されて、第1及び第2の感知ワイヤーの各々の下に横たわっている層を露出させる。ひとたび各感知ワイヤーの導電性の層が露出され且つ腐食性の液体と接触すると、第1の感知ワイヤーと第2の感知ワイヤーとの間に電気的接続が形成される。結果的に得られる電気接続は、漏れの存在を示す。」

(1-エ)図2は,本発明のケーブルの断面図である。
【図2】


してみれば,上記引用例1の記載事項を総合すると,引用例1には,以下の発明が記載されていると認められる。
「腐食性の液体の存在を検知するのに適したケーブルであって,
a)少なくとも1つの導電性の層によって包囲されている中心導電体を含んでいる第1及び第2の感知ワイヤーであって,該第1及び第2の感知ワイヤーのうちの少なくとも1つが更に,少なくとも1つの非導電性の表面層によって包囲されている第1及び第2の感知ワイヤーと,
b)前記第1及び第2の感知ワイヤーが周囲に巻き付けられているコア部材と,を含むケーブルにおいて,
上記非導電性の表面層は,腐食性液体と接触したときに,分解され又は可溶化されて,第1及び第2の感知ワイヤーの各々の下に横たわっている層を露出させ,ひとたび各感知ワイヤーの導電性の層が露出され且つ腐食性の液体と接触すると,第1の感知ワイヤーと第2の感知ワイヤーとの間に電気的接続が形成され,結果的に得られる電気接続は,漏れの存在を示す,ケーブル。」(以下「引用発明」という。)


イ 本願優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である実願平4-25441号(実開平5-62838号)のCD-ROM(以下「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。なお,下線は当審において付与した。
(2-ア)「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、硫酸、苛性ソーダなどの液体を輸送するパイプラインや貯蔵タンクなどに破損が生じたとき、それを検知する漏液検知線に関する。」

(2-イ)「【0005】
【考案が解決しようとする課題】
上述した従来の漏液検知線では、絶縁体を被覆した電極線の1対を撚り合わせるために、撚り合わせ工程で電極線の絶縁体にピンホールを生じるおそれがあり、撚り合わせ工程後の各工程における巻き取りや巻き戻しの際にも、電極線の絶縁体相互の摩擦により傷つくおそれもある。また、敷設工事等の際に踏まれたりして、電極線間に加わる圧力によって絶縁体に傷が生じることがある。特に不飽和ポリエステル樹脂のエナメル被覆による絶縁体は内部応力をひとつの要因としてクレージングやクラックが生じやすい材料である。電極線の絶縁体にピンホールや傷があると、降雨などにより誤動作するという問題点を有していた。」

(2-ウ)「【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的達成のため、本考案の漏液検知線は、導体上に耐水性で検知対象液に溶解する薄肉の絶縁体を被覆した電極線1対をほぼ平行に配設してコアを形成し、その外方に、検知対象液に溶解せず耐水性・非吸液性の糸から成る群と、検知対象液に溶解し耐水性・吸液性の糸から成る群とを交互に配設した内部編組体、および検知対象液に溶解し耐水性・吸液性で耐候性の糸から成る外部編組体を順次被覆して成る漏液検知線であって、前記1対の電極線間に微小間隙を保持する耐水性で検知対象液に溶解するスペーサを設けたものである。そして、上記絶縁体はポリエステル系熱可塑性エラストマーを押出被覆したものが好ましい。」

(2-エ)「【0016】
外部編組体8は、検知対象液に溶解し耐水性・吸液性で耐候性の糸から成るものであり、バインド部等で内部編組体7を介して電極線3の絶縁体2に加わる圧力を緩和するなどの機械的保護機能を有する。外部編組体8を構成する検知対象液に溶解し耐水性・吸液性で耐候性の糸としては、例えばポリエステル繊維から成る黒色のマルチフィラメント状の糸が好ましい。硫酸等の漏液が発生すると、外部編組体8がまずこれを吸収し、前述した内部編組体7が保持する。特に、外部編組体8は黒色による耐候性を有しているので、紫外線等の太陽光線をこの外部編組体8が吸収し、内部編組体7の経時変化を防ぐ。
【0017】
・・・そして、検知対象液の漏液があった場合、漏液は外部編組体8によって吸液され、内部編組体7を透過して電極線3へ導かれる。外部編組体8は検知対象液に溶解し耐水性・吸液性で耐候性の糸から成るので漏液があると吸液して内部に導くだけでなく、いち早く溶解して漏液の浸入を容易にする。内部編組体7は、検知対象液に溶解せず耐水性・非吸液性の糸から成る群と、検知対象液に溶解し耐水性・吸液性の糸から成る群とを交互に配設して成るので、漏液によって液溶性の糸から成る群がいち早く溶解して漏液の内部電極3への通路を確保すると共に、非液溶性の糸から成る群が溶解も吸液もせず、液溶性の糸を溶解した漏液が周辺に拡散するのを阻止して内部電極3の絶縁体2が溶解するまで保持する。」

(2-オ)以下の図1は,本考案の漏液検知線の断面図である。
【図1】


(2)対比・判断
ア 対比
補正案発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「腐食性の液体の存在を検知するのに適したケーブル」は,補正案発明の「腐食性液体の存在の検出に好適なケーブル」に相当し,引用発明の「第1及び第2の感知ワイヤー」は,補正案発明の「第1及び第2検出用ワイヤー」に相当する。

(イ)引用発明の「少なくとも1つの導電性の層によって包囲されている中心導電体を含んでいる第1及び第2の感知ワイヤーであって,該第1及び第2の感知ワイヤーのうちの少なくとも1つが更に,少なくとも1つの非導電性の表面層によって包囲されている第1及び第2の感知ワイヤー」は,補正案発明の「少なくとも1つの導電層により囲まれる中央導体を有する第1及び第2検出用ワイヤーであって、該第1及び第2検出用ワイヤーの少なくとも1つが更に少なくとも1つの非導電表面層により囲まれて」いる「第1及び第2検出用ワイヤー」に相当する。

(ウ)引用発明の「非導電性の表面層は,腐食性液体と接触し」「分解され又は可溶化」し,「第1の感知ワイヤーと第2の感知ワイヤーとの間に電気的接続が形成され」るように「第1及び第2の感知ワイヤーの各々の下に横たわっている」「導電性の層が露出」することは,補正案発明の「少なくとも1つの非導電表面層が腐食性液体によって溶解し、第1及び第2検出用ワイヤーの間を電気的に接続可能にする前記少なくとも1つの導電層が露出する」ことに相当する。

(エ)引用発明の「第1及び第2の感知ワイヤーが周囲に巻き付けられているコア部材」は,コア部材の周囲に第1及び第2の感知ワイヤーを巻き付けることであるから,コア部材は第1及び第2の感知ワイヤーに隣接して固定されていることになる。してみれば,引用発明の「第1及び第2の感知ワイヤーが周囲に巻き付けられているコア部材」は,補正案発明の「第1及び第2検出用ワイヤーに隣接して固定されたコア部材」に相当する。

してみれば,補正案発明と引用発明とは,
(一致点)
「腐食性液体の存在の検出に好適なケーブルであって,
a)少なくとも1つの導電層により囲まれる中央導体を有する第1及び第2検出用ワイヤーであって,該第1及び第2検出用ワイヤーの少なくとも1つが更に少なくとも1つの非導電表面層により囲まれており,前記少なくとも1つの非導電表面層が腐食性液体によって溶解し,第1及び第2検出用ワイヤーの間を電気的に接続可能にする前記少なくとも1つの導電層が露出する,第1及び第2検出用ワイヤーと,
b)該前記第1及び第2検出用ワイヤーに隣接して固定されたコア部材と、を具備するケーブル。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点)コア部材と第1及び第2検出用ワイヤーとの上に,補正案発明では,「ケーブルの回りの前記腐食性液体の効果的なウィッキングを提供し」「ケーブルの紫外線に対する強化耐性を提供する」「断続型カバー」が重なることが特定されているのに対し,引用発明では,そのようなカバーが重なることが特定されていない点。

イ 当審の判断
補正案発明の「断続型カバー」について,本願明細書では「断続型カバーは、液体を通過出来るようにするカバーを有している。断続型カバー、すなわち、編組織物カバーの様な液体の転送を可能にするカバー」(【0023】)と記載されている。そして,その断続型カバーが「コア部材と第1及び第2検出用ワイヤーとの上に」「重なる」とは,本願に添付されている下記の図1のように,コア部材と第1及び第2検出用ワイヤーを含むケーブル部分の周りを覆う状態のことである。
【図1】

一方,引用例2には,漏液検知線(引用発明の「腐食性の液体の存在を検知するのに適したケーブル」に相当)において,摘記(2-イ)に記載されている課題を解決するために,コア(引用発明の「コア部材」と「第1及び第2の感知ワイヤー」に相当)の周りを,「内部編組体および外部編組体」で被覆することが記載されている。ここで,編組体は編組織物であり,摘記(2-エ)に記載のとおり漏液を通過させるものであるから,「内部編組体および外部編組体」は,補正案発明の「断続型カバー」に相当するものである。そして,その摘記(2-エ)には,外部編組体が検知対象液(補正案発明の「腐食性液体」)に対して吸液性がある(本願発明の「効果的なウィッキング」)こと及び紫外線に対する強化耐性があること記載されており,内部編組体は吸液性の糸から成る群を含むことが記載されていることから,内部編組体もある程度の吸液性があるものといえる。してみれば,引用例2の「内部編組体および外部編組体」は,本願発明の「ケーブルの回りの前記腐食性液体の効果的なウィッキングを提供し」「ケーブルの紫外線に対する強化耐性を提供する」「断続型カバー」に相当するものである。
ところで,引用発明のケーブルは,引用例1の摘記(1-イ)に記載されているとおり,引用例2の漏液検知線と同じようにタンクやパイプラインで用いられるものであるから,引用例2の摘記(2-イ)に記載の課題があるものといえ,タンクが屋外にあるときには引用例2のごとく紫外線に対する強化耐性も必要とされるものである。してみれば,引用発明においても,そのような課題の解消を図るべく,引用発明の「コア部材」と「第1及び第2の感知ワイヤー」の周りを,引用例2に記載の「内部編組体および外部編組体」で覆う,すなわち,コア部材と第1及び第2感知ワイヤーとの上に「ケーブルの回りの前記腐食性液体の効果的なウィッキングを提供し」「ケーブルの紫外線に対する強化耐性を提供する」「断続型カバー」が重なるようにすることは,当業者が容易になし得たことである。
そして,補正案発明について本願明細書に記載されている効果も,引用例1又は2に記載されている事項から当業者が予期し得るものであり,格別顕著なものではない。

(3)小括
したがって,補正案発明は,引用発明及び引用例2に記載されている事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。してみれば,仮に,補正案の補正を特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても,特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである
よって,上申書の内容は,上記[補正却下の決定の結論]の「本件補正を却下する。」との結論に影響を与えるものではない。

4 まとめ
以上のとおり,本件補正は,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?17に係る発明は,平成25年4月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「【請求項1】
a)少なくとも1つの導電層により囲まれる中央導体を有する第1及び第2検出用ワイヤーであって、該第1及び第2検出用ワイヤーの少なくとも1つが更に少なくとも1つの非導電表面層により囲まれており、前記少なくとも1つの非導電表面層が腐食性液体によって溶解し、第1及び第2検出用ワイヤーの間を電気的に接続可能にする前記少なくとも1つの導電層が露出する、第1及び第2検出用ワイヤーと、
b)該前記第1及び第2検出用ワイヤーに隣接して固定されたコア部材と、そして
c)該コア部材と第1及び第2検出用ワイヤーとの上に重なる断続型カバーと、を具備する腐食性液体の存在の検出に好適なケーブル。」

2 引用刊行物及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である上記引用例1及び2の記載事項は,上記第2の3の「(1)引用刊行物及びその記載事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,上記第2の3で記載した補正案発明から,「腐食性液体の存在の検出に好適なケーブルであって」及び「前記断続型カバーは、前記ケーブルの回りの前記腐食性液体の効果的なウィッキングを提供し、前記断続型カバーは、前記ケーブルの紫外線に対する強化耐性を提供する」との発明特定事項を省いたものである。そして,補正案発明が,前記第2の3の「(2)対比・判断」に記載したとおり,引用発明及び引用例2に記載されている事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,それらの発明特定事項を省いた本願発明も,引用発明及び引用例2に記載されている事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり,審決する。
 
審理終結日 2015-04-15 
結審通知日 2015-04-20 
審決日 2015-05-01 
出願番号 特願2010-530153(P2010-530153)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (G01M)
P 1 8・ 121- Z (G01M)
P 1 8・ 575- Z (G01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野村 伸雄  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 三崎 仁
信田 昌男
発明の名称 腐食性液体の存在の検出に好適なケーブル  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  
代理人 須田 洋之  
代理人 辻居 幸一  
代理人 上杉 浩  
代理人 近藤 直樹  
代理人 岩崎 吉信  
代理人 熊倉 禎男  
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