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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02B
管理番号 1305413
審判番号 不服2015-463  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-08 
確定日 2015-09-10 
事件の表示 特願2010-242537「電動アシストターボチャージャ制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月17日出願公開、特開2012- 92796〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成22年10月28日の出願であって、平成26年6月5日付けで拒絶理由が通知され、同年8月5日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに同年8月22日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年10月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月10日付けで同年10月21日に提出された手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定がされるとともに、同日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年1月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年1月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成27年1月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成27年1月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年8月5日付けで提出された手続補正書により補正された)下記アに示す請求項1及び2を、下記イに示す請求項1及び2と補正するものである。
ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び2
「 【請求項1】
ターボ軸の回転を補助する電気モータとタービンホイールへの排気ガス流を調節するベーンとを備えた電動アシストターボチャージャに対して前記電気モータと前記ベーンの制御を行う電動アシストターボチャージャ制御装置において、
前記電気モータによる回転補助なし時にエンジン運転状態に応じて前記ベーンを開度制御し、前記電気モータによる回転補助時には前記ベーンを全閉又は回転補助なし時より小さい開度に制御するベーン協調制御部を備え、
前記ベーン協調制御部は、回転補助の終了時に、前記ベーンの開度を回転補助時の開度制御から回転補助なし時の開度制御まで徐々に戻すことを特徴とする電動アシストターボチャージャ制御装置。
【請求項2】
前記ベーン協調制御部は、回転補助の終了後に、前記ベーンの開度を回転補助時の開度制御から回転補助なし時の開度制御まで変化させることを特徴とする請求項1記載の電動アシストターボチャージャ制御装置。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2
「 【請求項1】
ターボ軸の回転を補助する電気モータとタービンホイールへの排気ガス流を調節するベーンとを備えた電動アシストターボチャージャに対して前記電気モータと前記ベーンの制御を行う電動アシストターボチャージャ制御装置において、
前記電気モータによる回転補助なし時に、前記ベーンをエンジン運転状態に応じた通常開度に制御し、前記電気モータによる回転補助時に、前記ベーンを前記通常開度を閉方向に補正して得られる補正開度に制御するベーン協調制御部を備え、
前記ベーン協調制御部は、回転補助の終了時に、前記ベーンを回転補助時の補正開度から回転補助なし時の通常開度まで徐々に戻すことを特徴とする電動アシストターボチャージャ制御装置。
【請求項2】
前記ベーン協調制御部は、回転補助の終了後に、前記ベーンを回転補助時の補正開度から回転補助なし時の通常開度まで変化させることを特徴とする請求項1記載の電動アシストターボチャージャ制御装置。」
(下線は、本件補正箇所を示すために、請求人が付したものである。)

2 本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項である「ベーン協調制御部」について、本件補正前の「前記電気モータによる回転補助時には前記ベーンを全閉又は回転補助なし時より小さい開度に制御する」を、本件補正後に「前記電気モータによる回転補助時に、前記ベーンを前記通常開度を閉方向に補正して得られる補正開度に制御する」とし、ベーン開度を補正するという限定を付加する補正を含むものである。そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

3 独立特許要件
3-1 刊行物
(1)刊行物1の記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である特開2006-57548号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。

ア 「【0013】
(第1の実施形態)
図1は本発明の多段過給システムを内燃機関としてのディーゼルエンジン(以下エンジンという)1に適用した一実施形態を示した全体構成図である。エンジン1はシリンダブロック2に設けられた4つの気筒3に接続された吸気マニホールド4及び排気マニホールド5をそれぞれ備え、吸気マニホールド4には吸気通路6が、排気マニホールド5には排気通路7がそれぞれ接続されている。吸気通路6には、ターボ過給機8のコンプレッサ8aが設けられ、排気通路7には、ターボ過給機8のタービン8bが設けられている。コンプレッサ8a及びタービン8bは互いに回転軸(不図示)を介して連結されている。
【0014】
ターボ過給機8はタービン8bの入口の断面積を変更可能な可変ノズル式のターボ過給機である。タービン8bの入口部には複数の可動ベーン8c・・・8cが配置され(図1では模式的に示す)、これにより可変ノズルが構成される。可動ベーン8cの傾きを変更して可変ノズルの開口面積(ノズル開度)を変化させることにより、タービン8bの入口の断面積を変更できる。周知のように、ノズル開度を閉じ側とする(絞る)ことにより、過給圧を上げることができ、反対にノズル開度を開き側にすることにより、エンジン1の背圧を下げることができる。可変ノズル(可動ベーン8c)を動作させるための機構は周知のものと同様でよいのでここでは詳細を省略する。ターボ過給機8は、後述するエンジンコントロールユニット(ECU)20の指示に応じて所定のノズル開度に制御される。
【0015】
ターボ過給機8には、コンプレッサ8aの駆動をアシストするために、電気モータ9を備えた過給アシスト手段が設けられている。これにより、電気モータ9を作動してターボ過給機8による過給をアシストすることができる。電気モータ9はバッテリ10と接続され、駆動電力としてバッテリ10の電力が用いられる。駆動電力はECU20の指示に応じて調整され、これにより過給に対するアシストの程度(アシスト量)が制御される。
【0016】
エンジン1にはオルタネータ11が取り付けられている。周知のように、オルタネータ11はバッテリ10から供給される電力を用いて磁界を作り、エンジン1により図示しないロータを駆動して発電を行う。発電された電力は、バッテリ10を充電するために用いられる。オルタネータ11は、図示しない制御回路を備えており、この制御回路により発電を行う発電状態と発電を行わない非発電状態とを選択することができる。発電量の制御はECU20の指示に応じて制御回路にて適宜に行われる。
【0017】
その他、エンジン1には、コンプレッサ8aの上流側の吸気通路6に設けられ吸気の異物を除去するエアクリーナ12と、コンプレッサ8aの下流側に設けられ圧縮された吸気を冷却するインタークーラ13と、タービン8bの下流側の排気通路7に設けられ排気ガスを浄化する排気浄化装置14と、排気ガスを吸気系に還流するためのEGR装置15と、が設けられている。排気浄化装置14は排気ガス中の粒子状物質と窒素酸化物(NOx)とを同時に浄化可能な装置である。EGR装置15は、EGR通路16と、EGR通路16を流れる排気ガスの流量を調整するEGRバルブ17と、EGR通路16を流れる排気ガスを冷却するEGRクーラ18と、を有している。EGR通路16はタービン8bよりも上流の排気通路7を構成する排気マニホールド5に設定された排気ガスの取出口16aと、コンプレッサ8bの下流の吸気通路6を構成する吸気マニホールド4に設定された排気ガスの導入口16bとを連通する、いわゆるハイプレッシャループを構成するように設けられている。EGRバルブ17はその開度をECU20の指令に従って調整できる周知の電磁制御弁である。なお、吸気通路6のコンプレッサ8aと導入口16bとの間には吸入空気量を調整するスロットル弁が設けられてもよい。その場合、スロットル弁の開度によりEGR率(EGR量)を制御することができる。
【0018】
本実施形態に係る過給システムは、ECU20により制御される。ECU20はマイクロプロセッサ、ROM、RAM等の周辺装置を備えたコンピュータユニットとして構成され、各種パラメータに基づいてエンジン1を適正な運転状態に制御する。本実施形態の過給システムは、エンジン1の機関回転数(回転速度)を検出する回転数センサ21、図示しないアクセルの開度や開度変化等の位置情報を検出するアクセル開度センサ22、バッテリ10の電圧を検出する電圧センサ23、電気モータ9の温度を検出するモータ温度センサ24、及び吸気マニホールド4内の圧力(過給圧)を検出する過給圧センサ25をそれぞれ備えている。これらのセンサは、対象となる物理量を直接検出してもよいし、他の物理量から推定してもよい。これらのセンサは、それぞれECU20に接続されており、各センサの入力情報は以下に述べる制御に利用される。
【0019】
図2は、本実施形態に係る制御の一例を示したタイミングチャートである。この図においては、過給圧、ターボ過給機8のノズル開度、及び電気モータ9による過給のアシスト量が同一時間軸によりそれぞれ示されている。ECU20は、所定の制御ルーチンに基づいて目標となる過給圧(目標過給圧)と過給圧センサ25により検出された現在の過給圧(実過給圧)との偏差を監視しており、その偏差が所定値以上になった場合に現在の状態を目標過給圧の上昇に対する実過給圧の応答遅れが生じる過渡状態と判断する。なお、目標過給圧の算出は、例えば、目標過給圧にアクセル開度に基づいて算出される燃料噴射量及び機関回転数を対応させたマップをECU20のROMに記憶させ、これを参照することにより実現できる。アクセル開度及び機関回転数は、アクセル開度センサ22及び回転数センサ21からの入力信号に基づいて取得する。
【0020】
ECU20が過渡状態と判断した場合には、ECU20は、図2に示すようにノズルの開度を最小開度に制御するとともに、この制御の開始に合わせて電気モータ9を作動させて過給に対するアシストを開始する(時刻t1)。この例ではアシスト量は最大(100%)に設定される。過渡状態のときにノズル開度が強制的に最小開度に制御されるとともに、電気モータ9による過給のアシストが行われるため、過給の立ち上がりの遅れが改善される。なお、以後の説明ではノズル開度を最小開度に制御することを最小開度制御という。
【0021】
最小開度制御の終了は、実過給圧が目標過給圧に達する前の第1設定圧P2まで上昇したことを条件として判断される。この終了が判断された場合には、ECU20はノズル開度の制御を、最小開度制御からノズル開度の通常制御に移行する(時刻t3)。詳細は後述するが、最小開度制御から通常制御に移行することによりノズル開度がエンジン1の運転状態に応じて制御されるため、図2に示したように、ノズル開度の増加が許容される。一方、電気モータ9に対しては、実過給圧が第1設定圧P2よりも低い第2設定圧P1にまで上昇すると(時刻t2)、それ以降、アシスト量が漸次減少するように電気モータ9が制御され、第1設定圧P2に達すると過給のアシストが停止(アシスト量=0)される(時刻t3)。
【0022】
第1設定圧P2は、目標過給圧に対して実過給圧が十分に近づいたとみなすことができる圧力として設定される。これにより過給圧のオーバーシュートが防止される。過給のアシストは電気エネルギを消費するので、可能な限り無駄なアシストを避ける必要がある。このため、本実施形態では第2設定圧力P1は第1設定圧力P2よりも低い値に設定され、アシスト量の減量が最小開度制御から通常制御への切り替えよりも先に開始されるように制御される。
【0023】
以上の制御は、例えば図3及び図4に示す制御ルーチンを実行することにより実現される。図3はECU20が過渡状態であると判定した場合に実行する制御ルーチンの一例を示したフローチャートであり、図4は図3の制御ルーチンと並行して実行される制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。これらの制御ルーチンは、ECU20のROM等に格納されたプログラムに従って繰り返し実行される。これにより、ターボ過給機8のノズル開度及び電気モータ9を制御する本発明の制御手段としてECU20を機能させることができる。図3に示したように、ECU20は、まずステップS1において過渡制御フラグがセットされているか否かを判定する。過渡制御フラグは、制御状態の判別に用いられるものであり、ECU20のRAMに作業領域として割り当てられている。従って、ECU20は過渡制御フラグを参照することにより制御状態を判別することができる。過渡制御フラグがセットされている場合は、最小開度制御が既に行われていることになるので、以降の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。
【0024】
一方、ステップS1において過渡制御フラグがセットされていない場合には、ECU20は最小開度制御を実行し(ステップS2)、次いで、最小開度制御の開始に合わせて過給に対するアシストが行われるように電気モータ9を制御する(ステップS3)。ステップS3では、アシスト量が最大となるように電気モータ9が作動制御される。次いで、ECU20はステップS4において上述した過渡制御フラグをセットして今回のルーチンを終了する。
【0025】
次に、図3と並行して実行される図4の制御ルーチンについて説明する。このルーチンは、図3の制御ルーチンにより開始された最小開度制御(ステップS2)及び過給のアシスト(ステップS3)の終了を判断するものである。まず、ECU20は、ステップS5において過渡制御フラグがセットされているか否かを判定する。過渡制御フラグがセットされていない場合には、図3の最小開度制御及び過給のアシストが開始されていないことになるので、以降の処理をスキップして今回のルーチンを終える。一方、過渡制御フラグがセットされている場合には、ECU20は続くステップS6において、過給圧センサ25からの入力信号を参照して実過給圧を取得し、その実過給圧が上述した第2設定圧P1に達しているか否かを判定する。実過給圧が第2設定圧P1に達していない場合には、過給のアシストを続行すべく以降の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。一方、実過給圧が第2設定圧P1に達した場合には、ECU20は処理をステップS7に進め、アシスト量を実過給圧に応じて減量し、減量したアシスト量にて過給のアシストが実行されるように電気モータ9の作動を制御する。図2のように、アシスト量を一定の割合で減量してもよいし、減量の割合を変化させてアシスト量を減量してもよい。
【0026】
次に、ECU20はステップS8において、実過給圧が上述した第1設定圧P2に達しているか否かを判定する。第1設定圧P2に達していない場合は、最小開度制御を続行するため以降の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。一方、第1設定圧P2に達した場合には最小開度制御の終了を判断して、ノズル開度の制御を通常制御に移行する(ステップS9)。そして、過給のアシストが停止されるように電気モータ9を制御する(ステップS10)。次いで、ECU20はステップS11において、過渡制御フラグをクリアして今回のルーチンを終了する。
【0027】
次に、本実施形態に関連する他の制御について補足的に説明する。
【0028】
[ノズル開度の通常制御]
ノズル開度の通常制御は、上述した最小開度制御の実行中以外に行われる。この通常制御の一例として、ECU20はエンジン1の運転状態に応じたノズル開度のフィードバック制御を行う。このフィードバック制御の基礎となるノズル開度(ベース開度)は予めエンジン1の運転状態に応じて設定される。例えば、ノズル開度に機関回転数と燃料噴射量とを対応させたマップをECU20のROMに記憶させておき、このマップを参照することによってベース開度を算出してもよい。そして、ECU20は目標過給圧と実過給圧との差に応じたフィードバック量を算出し、算出されたフィードバック量をベース開度に加えることにより最終的なノズル開度の指令値を求める。この指令値をターボ過給機8に指示することにより適正なノズル開度に制御される。
【0029】
[電気モータの通常制御]
上述した過渡状態以外の通常時においては、ECUは目標過給圧に対する実過給圧の不足分に基づいてアシスト量の要求値を算出し、その要求値にて過給のアシストが実行されるように電気モータ9の動作を制御している。このアシスト量の要求値の算出は、例えば、アシスト量の要求値に目標過給圧と実過給圧との差を対応付けたマップを予めECU20のROMに記憶させておき、これを参照することにより実現してもよい。これにより、目標過給圧に対する実過給圧の不足分に応じた過給のアシストが実行される。
【0030】
[オルタネータの動作制御]
本実施形態においては、オルタネータ11の動作をエンジン1の機関回転数に応じて制御してもよいし、過給のアシスト、つまり電気モータ9の作動の開始に合わせてオルタネータ11を非発電状態としてもよい。オルタネータ11を非発電状態とした場合には、エンジン1の負荷(フリクション)が低減されるのでエンジン1の回転数が早期に上昇する。従って過給のアシストによる加速性能の向上効果を更に高めることができる。
【0031】
[EGR装置の制御]
過給のアシスト中においては、EGR通路16の導入口16bの圧力がEGR通路16の取出口16aの圧力よりも高くなる場合がある。この状態でEGRバルブ17が開かれると吸気がEGR通路16を介して排気通路7に抜けるおそれがある。このような問題を回避するため、本実施形態では、過給のアシスト中においてEGRバルブ17を閉じるようにECU20にて制御されている。」(段落【0013】ないし【0031】)

イ 「【図2】

」(【図2】)

(2)上記(1)及び図面から分かること
ア 上記(1)アの段落【0018】及び図1の記載によれば、エンジン1全体を制御するエンジンコントロールユニット(ECU)20は、エンジン1の一部である過給システムの制御装置を含んでいることが分かる。また、上記(1)アの段落【0014】及び【0015】並びに図1の記載によれば、上記過給システムの制御装置は、過給システムの一部であるターボ過給機8及び電気モータ9を制御する手段(以下、「ターボ過給機8及び電気モータ9の制御部」という。)を備えていることが分かる。

イ 上記(1)アの段落【0021】には、時刻t3に、ノズル開度の制御が最小開度制御から通常制御に移行されることが記載されている。一方、上記(1)イの図2には、時刻t3から後の時刻の位置にノズル開度の変曲点があるから、その時点で通常のノズル開度への移行が完了することが分かる。すなわち、時刻t3に、ノズル開度の制御が最小開度制御から通常制御に移行されるが、通常のノズル開度への移行が完了するのは、時刻t3から後の時刻であることが分かる。

(3)刊行物1に記載された発明
上記(1)及び(2)の記載を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されているといえる。

「タービン8bと回転軸を介して連結されたコンプレッサ8aの回転をアシストする電気モータ9と、
タービン8bの入口の断面積を変更する可動ベーン8cとを備えたターボ過給機8に対して、
電気モータ9の駆動電力を調整し、ターボ過給機8の可動ベーン8cの傾きを変更することによってターボ過給機8のノズル開度の制御を行う過給システムの制御装置において、
通常時であって電気モータ9による過給のアシストを行わない時に、エンジン1の運転状態に応じたノズル開度の通常制御を行い、
過渡状態であって電気モータ9による過給のアシストを行う時に、ノズル開度を最小開度に制御する最小開度制御を行うエンジンコントロールユニット20におけるターボ過給機8及び電気モータ9の制御部を備え、
エンジンコントロールユニット20におけるターボ過給機8及び電気モータ9の制御部は、過給のアシストが停止する時刻t3にノズル開度の制御を最小開度制御から通常制御に移行し、時刻t3から後の時刻に通常のノズル開度への移行が完了するように制御する
過給システムの制御装置。」

(4)刊行物2の記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である特開2008-101552号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の記載がある。

ア 「【0020】
まず、本発明の第一実施形態に係る、過給機の過給制御装置について説明する。図1は、本実施形態の過給制御装置が一例として四気筒のエンジン20に組み合わされた状態を示す概略図である。この過給制御装置10においては、燃料が供給されるエンジン20からの排気により排気タービン12が作動され、この作動によるコンプレッサ14の駆動が、モータ18のアシスト力により選択的に補助されるようになっている。過給制御装置10は、排気エネルギーによってのみ過給を行う通常の過給機としても機能し得るが、モータ18によってコンプレッサ14を強制的に回転駆動することで更なる過給を行うこともできる。
【0021】
なお、モータ18は、排気流によって排気タービン12を回転させることで回生発電することも可能である。即ち、回生発電によって電力を回収することも可能である。モータ18は、回転軸16に固定されたロータ即ち永久磁石と、その周囲に配置されたステータ即ち鉄心に巻かれたコイルとを主たる構成部分として有している。これらのコンプレッサ14、排気タービン12、回転軸16、及びモータ18は、図示されていないハウジングの内部に収納されている。なお、コンプレッサ14は、通常のようにエンジン20の吸気通路となる吸気導管34上に配されているものである。また、排気タービン12は、通常のようにエンジン20の排気通路となる排気導管24上に配されているものである。このため、エンジン20からの排気が通過する排気導管24は、エンジン20と排気タービン12とを接続して、排気タービン12の上流へ排気を流入させる。ここでは、過給制御装置10の部分を抜き出して図1に図示している。
【0022】
図1において全体的に示されている過給制御装置10では、排気タービン12とコンプレッサ14とが回転軸16により連結され、回転軸16がモータ18即ち電動機により補助的に駆動されるようになっている。エンジン20への吸気は、エアクリーナ32を経て取り入れられ、コンプレッサ14により加圧され、吸気導管34及び吸気マニホールド36を経てシリンダへ送られる。また、吸気導管34の途中には、インタークーラ40及びスロットル弁42が設けられている。排気タービン12には、エンジン20のシリンダから排出されて排気マニホールド22によって集められた排気ガスが、排気導管24を経て供給されるようになっている。排気タービン12を出た排気ガスは、排気導管26を経て触媒コンバータ28へ導入され、ここで有害成分が浄化されて、排気導管30より放出されるようになっている。
【0023】
ここで、エンジン20からの排気の一部を、排気タービン12をバイパスして排気タービン12の下流へ流入させるバイパス路となるバイパス管35が配設されている。バイパス管35は、排気タービン12の出口となる排気導管26と接続されている。過給制御装置10は、排気導管24上における排気タービン12の入口即ち上流に、排気導管24の開度を可変制御して排気圧の調整が可能な圧力調整手段としての機能を有するVN即ちバリアブルノズル37を備えている。バリアブルノズル37は、その可変ノズルの開度即ちVN開度を無段階に調節可能なノズルである。VN開度を制御することで、排気タービン12の入口圧を調整して排気タービン12前後の圧力比を制御することができる。バリアブルノズル37は、後述のECU44に接続されており、ECU44からの駆動信号に基づいて制御されている。
【0024】
また、過給制御装置10は、バイパス管35の途中に、バイパス管35の開度を可変制御でき、圧力調整手段としての機能を有するウェイストゲートバルブ38を備えている。ウェイストゲートバルブ38は、バルブ開度を任意に調節可能なバルブである。このため、ウェイストゲートバルブ38を制御することによって、バルブ開度に応じて、バイパス管35を通過する通過排気量を調節できる。また、この通過排気量を制御することで、排気タービン12前後の圧力比を制御できる。ウェイストゲートバルブ38は、後述のECU44に接続されており、ECU44からの駆動信号に基づいて制御されている。
【0025】
また、過給制御装置10は、電子制御装置であるECU44を備えており、このECU44は、物理的には、マイクロコンピュータなどにより構成されている。ECU44には、スロットルセンサ46からスロットル弁42のスロットル開度に関する信号が、エンジン20に設けられたエンジン回転センサ48からエンジン20のエンジン回転数Neに関する信号が、吸気マニホールド36に設けられた圧力センサ59から後述の内部圧力Pimに関する信号が、また、図1には示されていないその他の種々のセンサなどからエンジン20の運転状態に関する信号が与えられる。ここで、ECU44のマイクロコンピュータに組み込まれた制御プログラムに基づいて、後述する種々の制御演算が行われ、スロットル弁42やその他の装置などの作動が制御される。また、ECU44は、後述のエアフローメータ50、モータ回転センサ52、及び圧力センサ59からの信号に基づいて、モータ制御装置54によりモータ18の作動を制御するとともに、バリアブルノズル37やウェイストゲートバルブ38の開閉を制御して開度を調整する。なお、エアフローメータ50は、吸入空気量Gaを検出するセンサである。また、モータ回転センサ52は、モータ18に設けられ、排気タービン12の回転速度Ntを検出するセンサである。また、圧力センサ59は、吸気マニホールド36に設けられ、吸気マニホールド36の内部圧力Pimを検出するセンサである。
【0026】
ECU44は、機能的には、レベル判断手段としての機能を有するレベル判断部441と、制御手段としての機能を有する制御部442とを有している。レベル判断部441は、コンプレッサ14にサージが発生する前の発生前状態であるか、又は、サージが既に発生している発生中状態であるかを判断する。より詳しくは、コンプレッサ14におけるサージの発生レベルが、所定範囲内であるか、又は、所定範囲を超えているかを判断する。また、制御部442は、レベル判断部441によりサージの発生前状態であると判断された場合、即ち、サージの発生レベルが所定範囲内であると判断された場合、サージの発生を事前に抑制する後述の発生前抑制制御を行う。ここで、サージの発生レベルとは、サージの発生の程度の大きさを意味している。更に、制御部442は、レベル判断部441により、サージの発生レベルが、所定範囲を超えていると判断された場合、サージの発生レベルが所定範囲内になるようにサージの発生を回避してサージが発生していない状態にする後述の発生後回避制御を行う。
【0027】
本実施形態における発生前抑制制御とは、燃料を減量してエンジン20へ供給する制御である。即ち、制御部442は、エンジン20に設けられた燃料噴射装置56を制御して、空燃比A/Fを通常時よりも数パーセント分といった所定の割合だけリーン側になるような燃料噴射量を、エンジン20へ供給させる。より詳しくは、センサ46,48,50,52,59によって得られた検出量(例えば吸入空気量Ga、コンプレッサ14の前後圧力比、エンジン回転数Neなど)が、サージの発生レベルは所定範囲を超えていると判断される既定の検出量(サージ時吸入空気量Gasg、サージ時のコンプレッサ14の前後圧力比、サージ時のエンジン回転数など)を超えない範囲で近ければ近い程、この所定の割合をより多くすることによって、サージの発生を事前に抑制することができる。なお、センサによって得られた検出量が既定の検出量に近い状態とは、吸入空気量とコンプレッサ14の前後圧力比との関係を示す空気量圧力比マップにおけるいわゆるサージラインによって示される状態に近い状態である。
【0028】
また、本実施形態における発生後回避制御とは、モータ18のアシスト力を減少させる制御である。即ち、制御部442は、モータ18のアシスト力を、通常時よりも数パーセント分といった所定の割合だけ、減少させるようにモータ18を制御する。これにより、サージの発生を回避してサージが発生していない状態にするような制御が行われる。」(段落【0020】ないし【0028】)

イ 「【0048】
(2)第二実施形態
次に、本発明の第二実施形態に係る、過給機の過給制御装置について説明する。図3は、前述した各種のセンサ46,48,50,52,59からの入力信号に基づいて、ECU44により行われるモータ18、バリアブルノズル37、ウェイストゲートバルブ38、及び燃料噴射装置56などの制御の一例について示すフローチャートである。このフローチャートによる制御も、上述した第一実施形態と同様に、所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0049】
なお、本実施形態に係る過給制御装置は、後述するように、発生前抑制制御及び発生後回避制御による処理が上述した第一実施形態と異なる。その他の構成については、第一実施形態と同一または同様であるので、ここでは説明を省略する。
・・・・・(中略)・・・・・
【0052】
図3は、前述した各種のセンサ46,48,50,52,59からの入力信号に基づいて、ECU44により行われるモータ18及びバリアブルノズル37(及び/又はウェイストゲートバルブ38)の制御の一例について示すフローチャートである。このフローチャートによる制御は、イグニッションスイッチがオンされてエンジン20の作動が開始された後、所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0053】
この制御が開始されると、先ず、ステップT10にて、前述した各種のセンサ46,48,50,52,59などから、吸入空気量Ga、吸気マニホールド36の内部圧力Pim、排気タービン回転速度Nt、燃料噴射量Q、エンジン負荷L、大気圧Pa、アクセル開度Aa、エンジン回転数Ne、及び大気温度TaなどがそれぞれECU44により読み込まれる。
【0054】
次のステップT20では、ステップT10にて得られた検出量の数値に基づいて、モータ18によるアシストの開始又は継続を行う条件下にあるか否かが、判断される。より詳しくは、モータ18によるアシストが未だ開始されていない状態においては、ステップT20において、モータ18によるアシストの開始を行う条件下にあるか否かが判断される。一方、モータ18によるアシストが既に開始されている状態においては、ステップT20において、モータ18によるアシストの継続を行う条件下にあるか否かが判断される。例えば、モータ18によるアシストが未だ開始されていない状態において、排気タービン回転速度Ntが所定の回転速度以下である場合は、アシストの開始が判断される。また、モータ18によるアシストが既に開始されている状態において、エンジン負荷Lの大きさが所定の範囲内である場合は、アシストの継続が判断される。
【0055】
ここで、ステップT20において、モータ18によるアシストの開始又は継続を行う条件下にない場合、一連の制御が終了する。そして、再度、ステップT10から、上記したような制御が繰り返される。一方、モータ18によるアシストの開始又は継続を行う条件下にある場合、ステップT22に進む。
【0056】
ステップT22では、ステップT10にて得られたアクセル開度Aa、エンジン回転数Ne、及び目標スロットル開度Asに基づいて、目標ターボ回転数Nttが決定される。そして、ステップT24に進む。
【0057】
ステップT24では、吸入空気量とコンプレッサ14の前後圧力比との関係を示す上記した空気量圧力比マップに基づいて、バリアブルノズル37(及び/又はウェイストゲートバルブ38)の開度が、ECU44のレベル判断部441により決定される。即ち、空気量圧力比マップにおけるいわゆるサージライン上によって示される状態から現在の状態が遠ざかるような開度が決定される。なお、この空気量圧力比マップに基づいてバリアブルノズル37(及び/又はウェイストゲートバルブ38)の開度を決定する代わりに、エンジン回転数Neとエンジン負荷L(ディーゼルエンジンの場合は燃料噴射量Q)との関係を示すマップに基づいてこの開度を決定してもよい。そして、ステップT26に進む。
【0058】
ステップT26では、ステップT20においてアシストの開始が判断された場合おいては、モータ18によるアシストの開始が行われる。一方、ステップT20においてアシストの継続が判断された場合においては、モータ18によるアシストの継続が行われる。そして、ステップT30に進む。
・・・・・(中略)・・・・・
【0064】
ステップT44では、所定の開度になるように、バリアブルノズル37(及び/又はウェイストゲートバルブ38)がECU44の制御部442により開かれる。バリアブルノズル37(及び/又はウェイストゲートバルブ38)が開かれて開度が大きくなることにより、モータ18によるアシストが無い場合には過給圧が低下してしまうが、ここでモータ18のアシスト力を増加させることで、ターボ回転数が維持されるため、トルクの低下が防止される。そして、エンジン20からの排気の圧力が低下するとともに、アシスト力を増加させることによってエンジン20の充填効率が上昇して、吸入空気量が増加する。このようなサージの発生の発生後回避制御により、サージの発生が回避される。次に、後述のステップT50に進む。
・・・・・(中略)・・・・・
【0066】
ステップT52では、バリアブルノズル37(及び/又はウェイストゲートバルブ38)がECU44の制御部442により更に開かれる。このようなサージの発生の発生後回避制御により、サージの発生が回避される。次に、ステップT50に戻る。
・・・・・(中略)・・・・・
【0072】
ステップT72では、モータ18によるアシストがECU44の制御部442により停止される。次に、後述のステップT74に進む。
【0073】
ステップT74では、ステップT44やステップT52で開かれたバリアブルノズル37(及び/又はウェイストゲートバルブ38)の開度が、ECU44の制御部442により徐々に戻される。即ち、開度のフィードバックが徐々に実施される。このステップT74で、一連の制御が終了し、上記したように、再度、ステップT10から、以上のような制御が繰り返される。」(段落【0048】ないし【0073】)

(5)上記(4)及び図面から分かること
上記イ及び図3によれば、ステップT26でモータ18によるアシストが開始された後、ECU44の制御部442は、ステップT44やステップT52でバリアブルノズル37の開度を開くように制御し、ステップT72でモータ18によるアシストを停止した後、ステップT74で、ステップT44やステップT52で開かれたバリアブルノズル37の開度を徐々に戻すものであることが分かる。

(6)刊行物2に記載された技術
上記(4)及び(5)の記載を総合すると、刊行物2には次の技術(以下、「刊行物2に記載された技術」という。)が記載されているといえる。

「回転軸16を補助的に駆動するモータ18と排気タービン12への排気圧の調整が可能なバリアブルノズル37とを備えた過給制御装置10に対してモータ18とバリアブルノズル37の制御を行うECU44及びモータ制御装置54からなる制御装置において、
ECU44の制御部442は、モータ18によるアシストを停止すると、モータ18によるアシスト時に決定されたバリアブルノズル37の開度から、その開度を徐々に戻す制御装置。」

3-2 対比
本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明における「回転軸」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願補正発明における「ターボ軸」に相当し、以下同様に、「アシストする」は「補助する」に、「電気モータ9」は「電気モータ」に、「可動ベーン8c」は「ベーン」に、「ターボ過給機8」は「電動アシストターボチャージャ」に、「過給システムの制御装置」は「電動アシストターボチャージャ制御装置」に、「通常時であって電気モータ9による過給のアシストを行わない時」は「電気モータによる回転補助なし時」に、「エンジン1」は「エンジン」に、「ノズル開度の通常制御を行い」は「通常開度に制御し」に、「エンジンコントロールユニット20におけるターボ過給機8及び電気モータ9の制御部」は「ベーン協調制御部」に、「過渡状態であって電気モータ9による過給のアシストを行う時」は「電気モータによる回転補助時」に、それぞれ相当する。
また、刊行物1に記載された発明における「タービン8bと回転軸を介して連結されたコンプレッサ8aの回転をアシストする」ことは、タービン8bと連結するターボ軸の回転をアシストすることになるから、本願補正発明における「ターボ軸の回転を補助する」に相当し、刊行物1に記載された発明における「タービン8bの入口の断面積を変更する」ことは、タービン8bにおけるホイールへ流入する排気ガスの流れの大きさを調節することになるから、本願補正発明における「タービンホイールへの排気ガス流を調節する」に相当する。
さらに、刊行物1に記載された発明における「駆動電力を調整」すること及び「傾きを変更すること」は、いずれも制御することに他ならないから、刊行物1に記載された発明における「電気モータ9の駆動電力を調整し、ターボ過給機8の可動ベーン8cの傾きを変更することによってターボ過給機8のノズル開度の制御を行う」ことは、本願補正発明における「電気モータとベーンの制御を行う」に相当する。
そして、刊行物1に記載された発明は、可動ベーン8cによってノズル開度を制御するものであるから、刊行物1に記載された発明の「エンジン1の運転状態に応じたノズル開度の通常制御を行い」は、本願補正発明における「ベーンをエンジン運転状態に応じた通常開度に制御し」に相当する。

してみると、本願補正発明と刊行物1に記載された発明とは、
「ターボ軸の回転を補助する電気モータとタービンホイールへの排気ガス流を調節するベーンとを備えた電動アシストターボチャージャに対して電気モータとベーンの制御を行う電動アシストターボチャージャ制御装置において、
電気モータによる回転補助なし時に、ベーンをエンジン運転状態に応じた通常開度に制御するベーン協調制御部を備えた電動アシストターボチャージャ制御装置」の点で一致し、次の点で相違又は一応相違する。
(1)相違点1
ベーン協調制御部の電気モータによる回転補助時の制御に関し、本願補正発明においては、「ベーンを通常開度を閉方向に補正して得られる補正開度に制御する」るのに対し、
刊行物1に記載された発明においては、「ノズル開度を最小開度に制御する最小開度制御を行う」点(以下、「相違点1」という。)。
(2)相違点2
ベーン協調制御部に関し、本願補正発明においては、「回転補助の終了時に、ベーンを回転補助時の補正開度から回転補助なし時の通常開度まで徐々に戻す」のに対し、
刊行物1に記載された発明においては、「過給のアシストが停止する時刻t3にノズル開度の制御を最小開度制御から通常制御に移行し、時刻t3から後の時刻に通常のノズル開度への移行が完了するように制御する」点(以下、「相違点2」という。)。

3-3 判断
(1)相違点1
刊行物1に記載された発明における「ノズル開度を最小開度に制御する」ことは、ベーンを通常開度よりも閉方向に制御して最小開度にすることであり、そのことは補正の一態様であるといえるから、相違点1は、実質的な相違点ではない。
仮にそうでないとしても、すなわち、最小開度という一つの開度に固定することが本願補正発明における補正に含まれないとしても、電気モータによる回転補助時にノズル開度を補正することは、本件出願前に周知の技術であり(例として、特開2005-248860号公報[段落【0031】及び図2]及び特開2008-45406号公報[段落【0037】及び図2]等参照。以下、「周知技術1」という。)、電気モータによる回転補助時に制御マップにより制御することも、本件出願前に周知の技術である(例として、特開2003-239755号公報[段落【0036】]及び特開平9-329032号公報[段落【0021】ないし【0023】]等参照。以下、「周知技術2」という。)から、刊行物1に記載された発明において、周知技術1及び周知技術2を適用し、電気モータによる回転補助時に、ベーンを、通常開度を閉方向に補正して得られる補正開度に制御するように構成し、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。

(2)相違点2
刊行物1に記載された発明は、時刻t3、すなわち回転補助の終了時から後の時刻に通常のノズル開度への移行が完了するように制御するものであるが、その移行が「徐々に」であるか否かが明確でないものである。
一方、電動アシストターボチャージャ制御装置であって、電気モータによるターボ軸の回転補助の終了時にノズル開度を戻す点で刊行物1に記載された発明と軌を一にする刊行物2に記載された技術は、モータ18によるアシストを停止すると、モータ18によるアシスト時に決定されたバリアブルノズル37の開度から、その開度を徐々に戻すものである。
そうすると、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された技術とは、同一の技術分野に属するものであって、電気モータ及びベーンの制御の一部が共通するものであるから、刊行物1に記載された発明において、回転補助の終了時に、ベーンを回転補助時の補正開度から回転補助なし時の通常開度まで戻す際に、刊行物2に記載された技術のように、徐々に戻すように制御して、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明は、全体としてみても、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術から、又は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術、周知技術1及び周知技術2から予想される以上の格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術に基いて、又は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-4 まとめ
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
平成27年1月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1及び2に係る発明は、平成26年8月5日付けで提出された手続補正書により補正された請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1アに示した請求項1に記載されたとおりのものである。

1 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載及び刊行物に記載された発明については、上記第2[理由]3-1に記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明は、上記第2で検討した本願補正発明の発明特定事項である「ベーン協調制御部」について、ベーン開度を補正するという限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含む本願補正発明が、上記第2[理由]3-3で述べたとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は実質的に、上記第2[理由]3-2で示した(2)相違点2でのみ相違するから、本願発明は、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 まとめ
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-08 
結審通知日 2015-07-14 
審決日 2015-07-28 
出願番号 特願2010-242537(P2010-242537)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02B)
P 1 8・ 575- Z (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二之湯 正俊  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 佐々木 訓
槙原 進
発明の名称 電動アシストターボチャージャ制御装置  
代理人 絹谷 信雄  
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