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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1305687
審判番号 不服2014-21197  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-20 
確定日 2015-10-07 
事件の表示 特願2012- 38046「無線ICタグ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 5日出願公開、特開2013-174978、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月23日の出願であって、平成25年12月26日付けで拒絶理由通知が通知され、平成26年3月13日付けで意見書、手続補正書が提出されたが、平成26年7月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成26年10月20日に拒絶査定不服審判が請求され、手続補正書が提出されたものである。

第2 平成26年10月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否

1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
セメント、骨材、水を混練するセメント製品の製造工程で混入される無線ICタグは、強誘電体を利用した不揮発メモリ、RFIDタグモジュールをフェライトコア上に実装し、アンテナをフェライトコアに巻回してなる無線ICタグ本体と、該無線ICタグ本体を内蔵してなる保護体から成り、該保護体は抗アルカリ性のポリプロピレン樹脂材を無機質フィラーで強化した樹脂材で円柱型または俵型に形成し、前記保護体の表面には長手方向両端部が閉塞した深さ0.2?0.5mmの凹溝を形成したことを特徴とする無線ICタグ。」
と補正するものである。

2.補正の適否
本件補正は、平成26年3月13日付け手続補正書の請求項1に対して、請求項3,4,6,7の構成を加えたものであり、請求項の削除に該当する。
また、特許法第17条の2第3項に違反するところはない。

第3 進歩性
請求項1の発明(以下、「本願発明」という。)について、引用例に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるかどうか以下に検討する。

(1)引用例1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である「特開2009-282688号公報」には、
ア.「【請求項1】
セメント、骨材、水等を混練するセメント製品の製造工程で混入され、無線交信で情報の書き込み・読み取り可能なアンテナ部を備えた無線ICタグを内蔵してなる保護体の表面には凹部を設けたことを特徴とする無線ICタグ。」
イ.「【0009】
保護体表面に設けられる凹部は、保護体表面に複数施されてなる窪みをディンプル加工により形成してなることを特徴とする。」
ウ.「【0023】
保護体は、抗アルカリ性の熱可塑性樹脂材で形成してなることにより、PH12?PH13のアルカリ性のセメントに混練しても、無線ICタグが溶解したり膨張したりすることがなく、無線ICタグの破損、損傷の恐れがなく、セメント製品の強度に影響を与えることもない。
【0024】
保護体は、ポリアミド樹脂材をガラス繊維、無機質フィラーにより強化した熱可塑性樹脂材で形成してなることにより強化した熱可塑性樹脂材で形成してなることにより、強アルカリ性のセメント中に混練しても、無線ICタグが溶解したり膨張したりすることがなく、また、吸水による寸法変化や強度の低下が少なく、混練時の力や、打設されて加わる圧縮力に抗することができ、無線ICタグの破損、損傷の恐れがなく、セメント製品の強度に影響を与えることもない。
【0025】
保護体は、球状、楕円球体、多面体の立体形状としてなることにより、セメント、骨材、水等との混練時の力や、打設されて加わる圧縮力に抗することができ、破損、損傷の恐れがなくなる。」
エ.「【0035】
保護体2の表面には、凹部3が加工されている。この凹部は保護体2表面に設けられた複数の細かな凹部がディンプル加工形成されていて、この凹部にセメント製品が潜り込み、無線ICタグ1とセメント製品との密着性、親和性が得られる。また、凹部3を形成することにより無線ICタグの強度を高めることもできる。本実施の形態においては、射出成型時にディンプル加工を施すべく、無線ICタグの両面に各25個所、計50個所のディンプル加工を施しているが、全面に施してもよいし、一部に施してもよい。また、本実施の形態の凹部の深さは、0.2?0.5mm程度であるがこれに限られるものではない。凹部はディンプル加工に限られるものではなく、保護体2の表面に凹穴を形成したり、保護体2を湾曲させたり、保護体2を凹レンズ状に形成して凹部を設けてもよい。」(下線は当審による。)
と記載されている。
そうすると、引用例1には、
「セメント、骨材、水等を混練するセメント製品の製造工程で混入され、無線交信で情報の書き込み・読み取り可能なアンテナ部を備えた無線ICタグを内蔵してなる保護体で、保護体は、ポリアミド樹脂材を無機質フィラーにより強化した樹脂材で形成され、球状、楕円球体、多面体の立体形状であり、保護体の表面には深さ0.2?0.5mm程度の凹部を設けた無線ICタグ。」
の発明が記載されている。(以下、「引用例1発明」という。)

(2)原査定の拒絶理由に引用された引用文献2である「特開平11-157894号公報」には、
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、従来のポリオレフィン繊維に比べてセメントスラリー中に補強繊維をより均一に分散させることができ、補強用繊維をより効果的に寄与させることができるセメント補強用繊維に関する。」
イ.「【0008】本発明に使用されるポリオレフィン系重合体(A)は、オレフィン系の重合体または共重合体であれば特に制限はない。たとえば、ポリプロピレン系重合体、ポリ4-メチルペンテン-1、ポリエチレン系重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体およびそのケン化物、さらにはこれらの共重合体が使用できる。中でもポリプロピレン系重合体やポリ4-メチルペンテン-1は耐熱性や耐アルカリ性が良好であることから好ましい。また、重合体または繊維が安価であることがらポリプロピレン系重合体が最も好ましい。」(下線は当審による。)
と記載されている。

(3)対比
引用例1発明の「セメント、骨材、水等を混練するセメント製品の製造工程で混入され、無線交信で情報の書き込み・読み取り可能なアンテナ部を備えた無線ICタグを内蔵してなる保護体」は、本願発明の「セメント、骨材、水を混練するセメント製品の製造工程で混入される無線ICタグは、」「無線ICタグ本体と、該無線ICタグ本体を内蔵してなる保護体」に相当する。
引用例1発明の「保護体は、」「樹脂材を無機質フィラーにより強化した樹脂材で形成され」は、本願発明の「該保護体は抗アルカリ性の」「樹脂材を無機質フィラーで強化した樹脂材」に相当する。
引用例1発明の「保護体の表面には」「深さ0.2?0.5mm程度の凹」「を設けた無線ICタグ」は、本願発明の「保護体の表面には」「深さ0.2?0.5mmの凹」「を形成した」「無線ICタグ。」に相当する。

(4)判断
本願発明と引用例1発明の一致点と相違点は以下の通りである。
[一致点]
「セメント、骨材、水を混練するセメント製品の製造工程で混入される無線ICタグは、無線ICタグ本体と、該無線ICタグ本体を内蔵してなる保護体から成り、該保護体は抗アルカリ性の樹脂材を無機質フィラーで強化した樹脂材で形成し、前記保護体の表面には深さ0.2?0.5mmの凹を形成した無線ICタグ。」

[相違点]
(ア)本願発明のRFIDタグは、「強誘電体を利用した不揮発メモリ、RFIDタグモジュールをフェライトコア上に実装し、アンテナをフェライトコアに巻回して」いるのに対して、引用例1発明のRFIDタグは、特に、構成が明記されていない点。
(イ)本願発明の樹脂材料が「ポリプロピレン樹脂」であるのに対して、引用例1発明の樹脂材料は、「ポリアミド樹脂」である点。
(ウ)本願発明の保護体は、「円柱型または俵型に形成」であるのに対して、引用例1発明の保護体は、「球状、楕円球体、多面体の立体形状」である点。
(エ)本願発明の保護体の凹は、「長手方向両端部が閉塞した」「凹溝」であるのに対して、引用例1発明の凹は、単に「凹部」である点。

上記相違点について検討する。
相違点(ア)について
RFIDタグで、「不揮発メモリ、RFIDタグモジュールをフェライトコア上に実装し、アンテナをフェライトコアに巻回し」たものは、例えば、特開2005-310650号公報の段落番号0017に記載されているように周知事項であり、さらに、RFIDタグの不揮発メモリを強誘電体で構成することも、例えば、国際公開第2008/105076号の[0001]に記載されているように周知事項であり、RFIDタグの構成は、必要に応じて設計し得ることであるから、周知事項を引用例1発明に適用し、相違点(ア)の構成とすることは当業者が容易になしえることである。
相違点(イ)について
引用例2には、ポリプロピレン系重合体は、耐アルカリ性が良好であることが記載されているものの、引用例2においてポリプロピレン系重合体を使用する目的は、「セメントスラリー中に補強繊維をより均一に分散させること」であり、ポリプロピレン系重合体によって何かを保護することを目的としたものではない。
そうすると、セメントから物を保護することを目的として、ポリプロピレン系重合体を用いることが記載されているとはいえないから、引用例1発明の保護体にポリプロピレン系重合体を用いることが容易であるとはいえない。
相違点(ウ)について
本願発明の保護体は、形状において引用例1発明とはことなるものの、形状の違いによる効果の違いを示した比較例は記載されていないから、「円柱型または俵型」にするか「球状、楕円球体、多面体」にするかは、単なる設計的事項であって、技術的に格別なこととはいえない。
相違点(エ)について
本願発明の保護体の凹は「長手方向両端部が閉塞した凹溝」であるが、凹溝が引用例1に記載されたディンプル加工した凹部等に比べて、無線ICタグ1とセメント製品との密着性、親和性が良好であるとする比較例は示されておらず、凹を溝にするか他の形状にするかは単なる設計的事項であって、技術的に格別なこととはいえない。

したがって、本願発明は、引用例1発明、引用例2の記載事項、周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、特許法29条第2項の規定に該当しない。
請求項1に係る発明が、引用例1発明、引用例2の記載事項、周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、請求項1に係る発明に対してさらに限定を加えた請求項2についても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)むすび
本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-09-17 
出願番号 特願2012-38046(P2012-38046)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 石川 正二
小田 浩
発明の名称 無線ICタグ  
代理人 田辺 敏郎  

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