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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
管理番号 1305768
審判番号 不服2013-9725  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-27 
確定日 2015-09-16 
事件の表示 特願2001-548368「位置アラーム装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月 5日国際公開、WO01/48721,平成15年 6月10日国内公表,特表2003-518611〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は,2000年(平成12年)12月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1999年(平成11年)12月23日,英国)を国際出願日とする特許出願であって,平成25年1月22日付けで拒絶査定(発送日:平成25年 1月29日)がなされ,この査定を不服として,平成25年 5月27日に本件審判が請求されるとともに,手続補正がなされた。
そして,平成26年 5月14日付けで当審において拒絶理由が通知(発送日:平成26年 5月15日)され,その応答期間内である平成26年 8月14日に意見書及び手続補正書が提出され,さらに,同年 9月 4日付けで当審において拒絶理由が通知(発送日:同年 9月 9日)され,その応答期間内である平成27年 3月 5日に意見書及び手続補正書が提出されたところである。
この出願の請求項1?12に係る発明は,平成27年 3月 5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「【請求項1】
位置アラーム装置であって,
予め規定された定義に基づきグループ化された複数のアラーム位置を共通の識別子の選択によって一度に指定可能なアラーム設定手段と,
前記アラーム設定手段により一度に指定された複数のアラーム位置を記録するストレージ手段と,
全地球測位システム(GPS)情報を取得及び処理することにより,当該位置アラーム装置の現在位置を判断する位置判断手段と,
前記現在位置が,前記一度に指定された複数のアラーム位置のうち何れかのアラーム位置と同じである場合,出力信号を生成する出力信号生成手段とを有する,位置アラーム装置。」

2.刊行物とその記載事項
平成26年 9月 4日付けの当審における拒絶の理由で引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平7-71972号公報(以下,「刊行物」という。)には,「ナビゲーション装置」に関し,図面とともに次の事項が記載または示されている。

・「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は,車や船舶などの移動体に積載し,画面に地図を表示しこの地図上の任意の地点に所定のマークなどのナビゲーション情報を登録し,移動体の移動に伴ってナビゲーション情報を提供するナビゲーション装置の改良に関するものである。」

・「【請求項1】地図データを記憶する地図データ記憶手段と,移動体の現在位置を検出して現在位置データを出力する現在位置検出手段と,前記地図データを用いて地図を表示するとともに,この表示地図上に前記現在位置データをもとに現在位置を表示する表示手段,とを備えたナビゲーション装置において,
この移動体の現在位置を登録する登録ボタンを有し,このボタンにより登録することを指示した時点におけるその地点での上記位置データを登録地点データとして順次記憶する現在地登録記憶手段と,前記現在地登録記憶手段に記憶されている前記の登録地点データを順次呼び出して,別途入力されたマークデータの中から,この呼び出した地点に対応させる任意のマークを指定するマーク指定手段と,このマーク指定手段により任意のマークが指定された前記地点のデータとこれに対応する前記のマークとを対応させて記憶する位置マーク記憶手段と,表示中の地図範囲内に前記位置マーク記憶手段が記憶している前記の地点のいずれかが含まれている場合は,前記の表示した地図の該当の位置に,この位置に対応する前記マークを表示するマーク表示手段,とを備えたことを特徴とするナビゲーション装置。」

・「【請求項3】地図データを記憶する地図データ記憶手段と,移動体の現在位置を検出して現在位置データを出力する現在位置検出手段と,前記地図データを用いて地図を表示するとともに,この表示地図上に前記現在位置データをもとに現在位置を表示する表示手段,とを備えたナビゲーション装置において,
この移動体の現在地点を登録する登録ボタンを有し,このボタンにより登録することを指示した時点におけるその地点での上記現在位置データを登録地点データとして順次記憶する現在地登録記憶手段と,前記現在地登録記憶手段に記憶されている前記の登録地点データを順次呼び出して,別途入力した音声メッセージデータの中からこの呼び出した登録地点に対応させる音声メッセージデータを選択して登録する位置対応メッセージ登録手段と,
この位置対応メッセージ登録手段により登録された音声メッセージとこれに対応する前記の位置データとを対応させて記憶する位置メッセージ記憶手段と,この移動体の現在位置が前記位置メッセージ記憶手段が記憶している地点のいずれかに一致した場合に信号を発信する一致監視手段と,この信号が出力されたときこの地点に対応する前記音声メッセージを再生する音声再生手段とを備えたことを特徴とするナビゲーション装置。」

・「【請求項11】請求項1に記載の地点とこの地点に対応するマークとを記憶する位置マーク記憶手段,又は,請求項3に記載の地点とこの地点に対応する音声メッセージとを記憶する位置メッセージ記憶手段のいずれかの記憶データから,任意の複数地点を経由地点として選定して記憶する経由地点選定記憶手段を有し,この選定した経由地点についてのみ前記位置マーク記憶手段または位置メッセージ記憶手段からデータを読みだして前記マークの表示,又は,前記の音声の再生を行う経由地点表示再生手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項3に記載のナビゲーション装置。」

・「【0037】
【課題を解決するための手段】第1?第17の発明は,まず,次の手段を有している。即ち
(1)地図を表示するための地図データ記憶手段
(2)自車の位置を検出する位置検出手段
(3)地図や自車位置を表示する表示手段
(4)現在地の位置を緯度経度の絶対位置で登録,記憶する現在地登録記憶手段と,その登録を指示するための登録ボタン,そして,各発明は上記手段に加えて,以下に記す手段をそれぞれ有している。
【0038】即ち,第1の発明は,登録した現在位置に対応させるマークを後刻,指定できるマーク指定手段と,こうして指定したマークを,登録した前記の現在位置と対応させて記憶する位置マーク記憶手段と,記憶しているマークを記憶している位置に対して地図上に表示するマーク表示手段とを用いるものである。
【0039】第2の発明は第1の発明の手段に加えて,指定したマークの種類に対応した音声メッセージを登録するマーク対応メッセージ登録手段と,登録した音声メッセージを対応するマークに対応させて記憶するマークメッセージ記憶手段と,現在の位置が登録している前記の位置の何れかと一致していないかどうかを監視する一致監視手段と,音声メッセージを出力する音声再生手段とを用いるものである。
【0040】第3の発明は,登録した現在位置に対応して,後刻,音声メッセージを登録できる位置対応メッセージ登録手段と,一致監視手段と,こうして登録した位置とメッセージとを対応させて記憶する位置メッセージ記憶手段と,音声再生手段とを有している。」

・「【0048】第11の発明は第1の発明または第3の発明の構成手段の何れかに加えて,登録済みの地点から任意の複数箇所を選定できる経由地点選定記憶手段と,この選定した地点についてのみ,ナビゲーション情報を出力する経由地点表示再生手段とを設けたものである。」

・「【0055】
【作用】第1?第17の全ての発明における現在地登録記憶手段は,現在地の登録に際し,現地点を記憶する指示を行うための「押しボタンを一回押す操作」以外の何の操作をも必要としないので地図表示画面を見ずに簡単に登録することができ,結果として車両の走行中でも安全に登録を行うことが可能となる。
【0056】第2の発明におけるナビゲーション装置はナビゲーション情報を音声メッセージと画面マークとの両方で出力するのでオペレータは画面を見ている必要がなく安全運転が出来,かつ,画面を見る必要の生じるタイミングを知ることができる。」

・「【0062】第11の発明による経由地点選定手段は,現在地点登録を行った地点の中から,複数地点を経由地点として選定することができるので異なる目的で入力した他の目標点を中間点としてナビゲーションに活用することができ,かつ,画面上に不必要な表示が現れなくなるので表示情報が見やすくなる。」

・「【0069】
【実施例】
実施例1.以下,本発明の第1の発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は,本発明の実施例によるナビゲーション装置のブロック図である。図1において,1は道路情報を記憶する地図データ記憶手段,102は各種センサの出力データより車両の現在位置を検出する現在位置検出手段,103は登録地点にマークを附加する等を行うためのマーク指定手段,105は上記地図データ記憶手段1より必要な地図データを読み出したり,上記現在位置検出手段102より車両の現在位置を入力したり等の,システム全体の動作を制御するシステム制御手段であり,マイクロコンピュータやRAMなどにより構成されている。
【0070】106は上記システム制御手段105よりの指示に従って,道路地図,現在位置マーク,目的地マーク等を表示するための表示信号を発生する表示制御手段,107は表示制御手段106からの表示信号に従って表示を行なう表示手段,108は上記マーク指定手段103で指定された地点や内容種別の登録を制御する登録制御手段,109は上記登録制御手段108の制御に従って指定地点,マーク,を登録し記憶する登録記憶手段である。
【0071】905は登録記憶手段109内に設けられた位置マーク記憶手段,906は表示制御手段106内に設けられたマーク表示手段,928は登録制御手段108内に設けられた現在地登録記憶手段である。
【0072】図2は,図1のブロック図の理解を助けるため本発明の実施例によるナビゲーション装置のハードウェア構成の一例を示すものである。図2において,21は地図データ記憶手段1に対応するCD-ROMおよびCD-ROMドライバ,22は車両の現在位置を検出するGPS受信機(GPSはGlobal Positioning System),23は車両の方位を検出する方位センサ,24は車両の移動距離を検出する距離センサであり,これらは現在位置検出手段102に対応している。25は各種演算および装置全体の制御を行なうコントロールユニット,26は使用者が種々の指示を入力する入力スイッチである。
【0073】28は上記コントロールユニット25からの表示データを表示する液晶ディスプレイである。上記コントロールユニット25は,CPU251,ROM22,RAM253,表示部28の表示制御を行なう表示制御部254,コントロールユニット25と外部との入出力を行なうI/O255から構成されている。上記入力スイッチ261は,液晶ディスプレイ28に設けられている。コントロールユニット25は,図1のシステム制御手段105,表示制御手段106,登録制御手段108,登録記憶手段109に対応している。又,入力スイッチ261はマーク指定手段103及び登録制御手段108に対応している。
【0074】図3は,図2における入力スイッチ261と液晶ディスプレイ28の例である。図3の入力スイッチは,液晶ディスプレイ28上に設けられ,ファンクションスイッチ301,カーソルスイッチ302,設定スイッチ303,タッチスイッチ304及び現在地登録スイッチ300から構成されている。
【0075】図4は,登録記憶手段109内の位置マーク記憶手段905の構成内容を示したものであり,登録地点とそのマークが格納されている様子を説明する図であって,905の記憶装置は位置とマークとが対応して記憶される。
【0076】次に,上記構成の移動体用ナビゲーション装置の動作について,図を参照しながら説明する。図5は,地点登録における動作を説明するためのフローチャートを示す。ステップS50?S51において,表示手段107に,現在位置検出手段102より取り込まれた移動体の現在位置と,地図データ記憶手段1から読み込まれた地図情報が表示されている。
【0077】ステップS52で図3に示す現在地登録スイッチ300(以下登録スイッチと言う)を押すと,ステップS53に進み,現在位置が登録希望地点として指定され,現在地の位置データ(緯度,経度データ)が現在地登録記憶手段928に一時的に記憶される。以上のようにして,マークの指定を行なう必要もなく,現在地点データをとにかく登録しておくことができる。ここで現在地点データは現在地点記憶手段928に記憶するとしたが,図4の位置マーク記憶手段905の地点座標データ欄に記憶されることでもよい。
【0078】このようにして登録した複数の地点に対し,後から,マークを付加する。この操作について図5のフローチャートにより説明する。前記のようにして1箇所以上の登録地点データが記憶されている状態で,図3のタッチスイッチ304のマークを選択すると(ステップS54,以下単にS54と言う),編集か,消去か,リストかの選択メニューが表示される(S55),ここで編集を選択すると図6に示す登録地点リスト画面が表示される(S551)。このリストからマークを付加,あるいは変更したい登録地点をカーソルキー302で選択する(S552)と,図7のようにマーク選択メニューが表示される(S56)ので,マークを選択する(S57)とマークの付加または変更ができる。
【0079】又,上記選択メニュー(S55)において消去を選択すると指定したマークを持つ登録地点を登録記憶手段109から消去することができ,リストを選択すれば指定したマークを持つ登録地点のリストを表示することができる。
【0080】最後にステップS58で設定スイッチ303を押せば,選択したマークが選択した登録地点に対応して図4の位置マーク記憶手段905のM1M2・・・・に記憶される。
【0081】表示制御手段106内のマーク表示手段906は,地図の表示している範囲の中に記憶している地点座標データが含まれ,且つ,その座標データに対応してマークが登録されている場合には,現在表示している地図の対応する位置に登録されているマークを表示する。これがマーク表示手段である。
【0082】第1の発明では,登録したい場所に移動体がいる時にとにかく登録ボタン300さえ押せば,他の操作をしなくてもその地点の登録が出来,この地点に表示させたいマークなどは,後刻,どこかのパーキング等でゆっくり登録操作を行なえばよい。地点は登録されていて,後に読み出されるので忘れてしまう等と言うことは生じない。」

・「【0160】実施例11
第11の発明を実施例3のナビゲーション装置に適用した場合のブロック図を図40に示す。図中920は経由地点選定記憶手段である。又921は経由地点表示再生手段である。実施例3のナビゲーション装置において,複数ヶ所の現在地点を地点登録した後,この登録地点の全てに音声メッセージを登録したものとする。それぞれの登録地点は,種々異なる目的地への走行のために登録されたものであって,それぞれ必要ではあるが,車輛の運転者がある日,ある時にある1つの目的地に向かって走行する場合,それら他の目的のために登録された地点のメッセージが次々に再生されると,役に立たぬだけでなくかえってわずらわしくなる。
【0161】そこで,運転を開始する前に希望のルートを考えた上で,このルートに沿った登録地点の中から,メッセージが出力されれば走行に役立ちそうな地点のみを抽出して,これを「経由地」として登録し,登録した経由地の音声メッセージのみが出力されるようにするものである。
【0162】図41は経由地点選定記憶手段920による経由地選択動作のフローを説明する図である。ステップS401に於いて,図17の登録地点ボタン304を押すと,設定か,リストか,消去か,経由地かの選択画面が表示され(S402),ここで経由地を選定するとS403で「音声メッセージが登録ズミの登録地点」のリスト画面421が表示される(図42)。
【0163】次にS404で図42に表示されているリスト(スクロール操作によってリストの他の部分も見ることができる)の中から経由して走行して行く地点を選択すると,S405で選択した地点データが経由地点選定記憶手段920に記憶される。記憶を消去することはもちろん可能である。なお,最終目標地点も経由地の1つとして登録する。
【0164】次に経由地の音声メッセージの再生動作について説明する。経由地が少なくとも1ヶ所記憶されているときには,経由地選択記憶手段920の記憶データのみが経由地点表示再生手段921に読出され,登録記憶手段109内の位置メッセージ記憶手段911に記憶されている。そして実施例3と同様に現在位置がこの記憶位置に一致すればメッセージが出力される。その他のデータ(即ち経由地として選定していない既登録地点)のデータは表示も,音声再生も行われない。即ち一致監視手段909は選定された経由地のみを一致監視の対象とするのである。
【0165】以上のように第11の発明によれば,その時の目的地への走行に必要なあるいは参考になる地点のみが表示又は音声再生され,それ以外の関係のない地点は表示も音声再生も行われないので,ナビゲーション情報を得るとき,混み入った感じがなくなりきき間違いも生じにくいと言う利点がある。
【0166】この実施例の説明では,この発明を実施例3のナビゲーション装置に適用する場合について説明したが,実施例1?実施例9のナビゲーション装置に適用することが可能であることは自明である。」

・図42の左方の経由地の下の欄には,3箇所の地点(姫路市高田,明石市星ヶ丘,神戸北区大沢)が表示されていることが理解できる。

上記事項と図示内容をふまえ,特に請求項11に係る発明及び実施例11に着目しつつ,本願発明に倣って整理すると,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「現在位置が記憶位置に一致したときに音声メッセージを出力するナビゲーション装置であって,
運転を開始する前に希望のルートに沿った登録地点の中から複数の経由して走行して行く地点を選択する手段と,
選択した地点データを記憶する経由地点選定記憶手段920と,
GPS受信機22により車両の現在位置を検出する現在位置検出手段102と,
前記現在位置が,記憶された経由地に一致すれば音声再生を行う手段を有する,現在位置が記憶位置に一致したときに音声メッセージを出力するナビゲーション装置。」

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「現在位置が記憶位置に一致したときに音声メッセージを出力するナビゲーション装置」は前者の「位置アラーム装置」に相当し,以下同様に,「記憶」は[記録」に,「経由地点選定記憶手段920」は「ストレージ手段」に,「経由地」または「記憶位置」は「アラーム位置」に,「音声再生を行う手段」は「出力信号を作成する出力信号生成手段」に,それぞれ相当する。
後者の「複数の経由して走行していく地点」即ち「複数の経由地」は「規定された定義に基づきグループ化されたアラーム位置」であるとともに,「経由地」という「共通の識別子」として選択されるものであるから,後者の「運転を開始する前に希望のルートに沿った登録地点の中から複数の経由して走行して行く地点を選択する手段」と,前者の「予め規定された定義に基づきグループ化された複数のアラーム位置を共通の識別子によって一度に指定可能なアラーム設定手段」とは,「予め規定された定義に基づきグループ化された複数のアラーム位置を共通の識別子によって指定可能なアラーム設定手段」の概念で共通する。
後者の「選択した地点データを記憶する経由地点選定記憶手段920」と,前者の「アラーム設定手段により一度に指定された複数のアラーム位置を記録するストレージ手段」とは,「アラーム設定手段により指定された複数のアラーム位置を記録するストレージ手段」の概念で共通する。
後者の「GPS受信機22により車両の現在位置を検出する現在位置検出手段102」と,前者の「全地球測位システム(GPS)情報を取得及び処理することにより,当該位置アラーム装置の現在位置を判断する位置判断手段」とは,「全地球測位システム(GPS)情報を取得及び処理することにより,現在位置を判断する位置判断手段」という概念で共通する。
後者の「前記現在位置が,記憶された経由地に一致すれば音声再生を行う手段を有する」態様と,前者の「前記現在位置が,前記一度に指定された複数のアラーム位置のうち何れかのアラーム位置と同じである場合,出力信号を生成する出力信号生成手段とを有する」態様とは,「前記現在位置が,指定された複数のアラーム位置のうち何れかのアラーム位置と同じである場合,出力信号を生成する出力信号生成手段とを有する」概念において共通する。
そうすると,両者は,
「位置アラーム装置であって,
予め規定された定義に基づきグループ化された複数のアラーム位置を共通の識別子によって指定可能なアラーム設定手段と,
アラーム設定手段により指定された複数のアラーム位置を記録するストレージ手段と,
全地球測位システム(GPS)情報を取得及び処理することにより,現在位置を判断する位置判断手段と,
前記現在位置が,指定された複数のアラーム位置のうち何れかのアラーム位置と同じである場合,出力信号を生成する出力信号生成手段とを有する,位置アラーム装置。」
の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。
<相違点1>
本願発明では,複数のアラーム位置を共通の識別子によって「一度に」指定可能なアラーム設定手段であり,アラーム設定手段により「一度に」指定された複数のアラーム位置を記憶するストレージ手段であり,前記現在位置が,前記「一度に」指定された複数のアラーム位置のうち何れかのアラーム位置と同じである場合,出力信号を生成する出力信号生成手段とを有するものであるのに対して,引用発明では,複数のアラーム位置を共通の識別子によって指定可能なアラーム設定手段であり,アラーム設定手段により指定された複数のアラーム位置を記憶するストレージ手段であり,前記現在位置が,前記指定された複数のアラーム位置のうち何れかのアラーム位置と同じである場合,出力信号を生成する出力信号生成手段とを有するものであるものの,「一度に」指定可能,及び,「一度に」指定するとはされていない点。
<相違点2>
位置判断手段が現在位置を判断する対象物が,本願発明では,「位置アラーム装置」であるのに対して,引用発明では,「車両」である点。

4.相違点についての判断
<相違点1について>
刊行物の段落【0162】,【0163】には,以下の記載がある。
「【0162】図41は経由地点選定記憶手段920による経由地選択動作のフローを説明する図である。ステップS401に於いて,図17の登録地点ボタン304を押すと,設定か,リストか,消去か,経由地かの選択画面が表示され(S402),ここで経由地を選定するとS403で「音声メッセージが登録ズミの登録地点」のリスト画面421が表示される(図42)。
【0163】次にS404で図42に表示されているリスト(スクロール操作によってリストの他の部分も見ることができる)の中から経由して走行して行く地点を選択すると,S405で選択した地点データが経由地点選定記憶手段920に記憶される。記憶を消去することはもちろん可能である。なお,最終目標地点も経由地の1つとして登録する。」
そして,図42の左方の経由地の下の欄には,3箇所の地点(姫路市高田,明石市星ヶ丘,神戸北区大沢)が表示されていることが理解できる。
図42に表示されている「音声メッセージが登録ズミの登録地点」のリストの中からスクロール操作しながら経由地を指定する際の作業として,1つずつ選択してその都度確定(セット)することも,複数の地点を候補としてひとまず選択しておいた後に一度に確定することも考えられる。
そして,一般的に情報処理操作としては,多くのデータから複数のデータを指定する際に,一度に指定することは,常套されることでもあるから,引用発明において,情報処理操作における常套手段を考慮して相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
上記3.発明の対比で述べたように,引用発明の「現在位置が記憶位置に一致したときに音声メッセージを出力するナビゲーション装置」は本願発明の「位置アラーム装置」に相当する。
そして,車両に搭載される「ナビゲーション装置」も極めて一般的なものであるから,「位置アラーム装置」である「ナビゲーション位置」の現在位置と,「車両」の現在位置は,GPSの精度を考慮すると,実質的に差異がないことものといえる。
そうすると,相違点2については,実質的な差異とは認められない。

そして,本願発明の作用効果を検討しても,引用発明から格別のものとはいえない。
したがって,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,このような特許を受けることができない発明を包含する本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-16 
結審通知日 2015-04-21 
審決日 2015-05-07 
出願番号 特願2001-548368(P2001-548368)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 則夫  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 矢島 伸一
藤井 昇
発明の名称 位置アラーム装置及び方法  
代理人 小松 広和  
代理人 津軽 進  
代理人 笛田 秀仙  

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