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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16B
管理番号 1305792
審判番号 不服2014-22344  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-04 
確定日 2015-09-16 
事件の表示 特願2011-519180「相互接続されたフォーム又は接着剤層」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月28日国際公開、WO2010/010167、平成23年12月 1日国内公表、特表2011-529160〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年7月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2008年7月25日、EP)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月14日付けの拒絶理由通知に対して、平成26年2月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月27日付け(発送日:同年7月1日)で拒絶査定がされ、これに対して、同年11月4日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。なお、平成26年11月4日付けの手続補正は明細書のみを補正するものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年2月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
以下を備える補強体(10):
終端部(16)の間に延在する複数の壁(14)を有するキャリア(12);
前記キャリア(12)上に配置された支持機構(20);及び
少なくとも1つの前記複数の壁(14)の外側表面上に配置され且つ前記支持機構(20)により少なくとも部分的に支持される材料層(18)、
ここで、前記支持機構(20)は、少なくとも1つの前記複数の壁(14)の外側表面と一体的に形成され且つその外側表面から延在する少なくとも1つのリブ(22)を含み
、かつ
前記リブ(22)は、前記壁(14)の前記外側表面に対して負の抜き勾配角度を有している。」

第3 刊行物に記載された事項
1 原査定の理由で引用された特開2001-199362号公報(以下、「刊行物」という。)には、「中空構造物の補強具」に関して、図面(特に、【図17】ないし【図24】参照。)とともに、以下の事項が記載されている。

(1)「【0041】(実施の形態4)この発明の実施の形態4を図17?図28にしたがって説明する。この実施の形態4において、補強部材111は、実施の形態1あるいは実施の形態2と略同様にして耐熱性を有する硬質合成樹脂、望ましくは、強化用繊維が混入された硬質合成樹脂材料よりなり、射出成形によって一体成形されている。この補強部材111は、中空パネル1の中空室6の長手方向に延びる複数の縦壁部113と、これら複数の縦壁部113を連結する複数の横壁部112とを一体に備えている。
【0042】図17?図19に示すように、前記補強部材111の複数の縦壁部113のうち、所定、例えば、図18に向かって、左から2番目の内側縦壁部113bと、その外側に隣接する外側縦壁部113aとは、上側が広くなって略逆ハの字状に対向するとともに、下側が狭くかつ底部115によって結合されている。図18に向かって、左から2番目の内側縦壁部113bと、その内側に隣接する図に向かって右から2番目の内側縦壁部113bとは、上側が狭くかつ頂部114によって結合されるとともに、下側が広くなって略ハの字状に対向している。さらに、図18に向かって、右から2番目の内側縦壁部113bと、その外側に隣接する外側縦壁部113aとは、上側が広くなって略逆ハの字状に対向するとともに、下側が狭くかつ底部115によって結合されている。そして、前記複数の横壁部112と複数の縦壁部113によって囲まれた部分には、図18に向かって、上側が広くなって開口し下側が狭くかつ底部115によって塞がれた空間部117と、上側が狭くかつ頂部114によって塞がれ下側が広くなって開口する空間部116とが、中空室6の短手方向に交互に隣接して区画形成されている。すなわち、この実施の形態4の補強部材111は、少なくとも4つの縦壁部113を有して横断面ほぼW字状をなしている。なお、隣接する縦壁部113の対向角度は5度?60度の範囲、好ましくは10度?30度の範囲において設定されている。
【0043】特に、この実施の形態4において、図17?図19に示すように、補強部材111の複数(4つ)の縦壁部113のうち、両側に位置する両外側縦壁部113aの長手方向の両端部は、外側端末壁部120によって一体連続状に結合されている。そして、これら両外側縦壁部113aと、両外側端末壁部120によって環状をなす外側周壁部122が構成されている。また、補強部材111の両外側縦壁部113aの内側に隣接する両内側縦壁部113bの長手方向の両端部は、内側端末壁部121によって一体連続状に結合されている。そして、これら両内側縦壁部113bと、両内側端末壁部121によって環状をなす内側周壁部123が構成されている。
・・・
【0050】また、補強部材111の長手方向の両端部寄りの各一対の外側横壁部112a、内側横壁部112b及び保持片160の間に装着される発泡性基材133、134、135は、射出成形によって所要とする形状の平板状に形成されて、各一対の外側横壁部112a、内側横壁部112b及び保持片160の間に差し込まれて装着される。そして、各一対の外側横壁部112a、内側横壁部112b及び保持片160の間において、各発泡性基材133、134、135が脱落することがないように、各一対の外側横壁部112a、内側横壁部112b及び保持片160の間に接着剤を用いて発泡性基材133、134、135が接着される。また、接着剤に換え、各一対の外側横壁部112a、内側横壁部112b及び保持片160の間に係止突起等の係止部を設けて各発泡性基材133、134、135を係止してもよい。
【0051】前記したように補強部材111と発泡性基材130、136とを備えた補強具110は、実施の形態1とほぼ同様の工程を経て中空パネル1の中空室6内に装着される(図20?図23参照)。そして、図24に示すように、外部加熱によって各発泡性基材130?135がそれぞれ発泡して発泡体138となることで、補強部材111と中空パネル1の内周壁面とを結合する。これによって、中空パネル1を補強するとともに中空室6を遮断する。また、この実施の形態4においても、前記実施の形態1と略同様にいて、補強部材111を成形するための合成樹脂材料を、空間部116、117によって削減することができるとともに、軽量なものとなり、しかも各空間部116、117はその開口側が広いテーパ状をなすため、成形型から補強部材111を容易に脱型することができる。
・・・
【0053】さらに、外側周壁部122の高さ方向の両端部近傍において、その外側周壁部122に周囲に沿ってほぼ環状をなす凹部124、125の発泡性基材130、131がそれぞれ発泡し、発泡体138となって補強部材111の外側周壁部122の高さ方向の両端部の周囲と、中空パネル1の内周壁面とを結合することができる。さらに、内側周壁部123の頂部114の凹部125の発泡性基材130が発泡し、発泡体138となって補強部材111の頂部114と、中空パネル1の内周壁面とを結合することができる。このため、中空パネル1に作用する荷重を、各発泡体138を介して補強部材111において受け止めることができ、中空パネル1の補強に効果が大きい。また、補強部材111の長手方向の両端部寄りにおいて、各一対の外側横壁部112a、内側横壁部112b及び保持片160の間にそれぞれ装着された発泡性基材133、134、135がそれぞれ発泡し、発泡体138となって補強部材111と中空パネル1の内壁周面とを結合して中空室6を遮断することができる。このため、補強効果をより一層高めることができるとともに、中空室6を遮断することができ、中空パネル1の制振性や遮音性の向上を図ることができる。
【0054】前記実施の形態4において、各発泡性基材130?135がそれぞれ発泡する際、各凹部124、125、126の相対する面や、一対の外側横壁部112a、内側横壁部112b及び保持片160の相対する面によって各発泡性基材130?135が中空室6の長手方向に発泡することが規制され、中空パネル1の内周壁面に向けて発泡する。このため、各発泡性基材130?135の発泡による発泡体138が中空パネル1の内周壁面に隙間なく接着する。この結果、隙間の発生による不具合(例えば、遮音不良)を防止することができる。」

(2)上記(1)の段落【0043】及び【図17】、【図18】から、外側端末壁部120の間に延在する複数の縦壁部113を有する補強部材111が看てとれる。

(3)上記(1)の段落【0050】及び【図17】、【図18】から、前記補強部材111上に一対の保持片160が配置されていること及び前記一対の保持片160を構成する保持片はそれぞれ前記複数の縦壁部113の外側表面と一体的に形成され且つその外側表面から延在していることが看てとれる。

(4)上記(1)の段落【0051】及び【図24】から、複数の縦壁部113の外側表面上に配置され且つ前記一対の保持片160により少なくとも部分的に支持される発泡体138が看てとれる。

(5) 上記(1)の段落【0054】及び【図24】から、前記発泡体138が中空パネル1の内周壁面に隙間なく接着した中空パネル1が看てとれる。

これらの記載事項、認定事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「外側端末壁部120の間に延在する複数の縦壁部113を有する補強部材111、
前記補強部材111上に配置された一対の保持片160、
前記複数の縦壁部113の外側表面上に配置され且つ前記一対の保持片160により少なくとも部分的に支持される発泡体138、
前記一対の保持片160は、前記複数の縦壁部113の外側表面と一体的に形成され且つその外側表面から延在する保持片からなる前記発泡体138が中空パネル1の内周壁面に隙間なく接着した中空パネル1。」

第4 対比
1 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「外側端末壁部120」は、その構造、機能から前者の「終端部(16)」に相当し、以下同様に、「縦壁部113」は「壁(14)」に、「補強部材111」は「キャリア(12)」に、「一対の保持片160」は「支持機構(20)」、「発泡体138」は「材料層(18)」に、「保持片」は「リブ(22)」に、「発泡体138が中空パネル1の内周壁面に隙間なく接着した中空パネル1」は「補強体(10)」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「以下を備える補強体:
終端部の間に延在する複数の壁を有するキャリア;
前記キャリア上に配置された支持機構;及び
少なくとも1つの前記複数の壁の外側表面上に配置され且つ前記支持機構により少なくとも部分的に支持される材料層、
ここで、前記支持機構は、少なくとも1つの前記複数の壁の外側表面と一体的に形成され且つその外側表面から延在する少なくとも1つのリブを有している。」
で一致し、次の点で相違する。

〔相違点〕
リブの、壁の外側表面に対する抜き勾配角度に関して、本願発明は、「負の抜き勾配角度」と特定しているのに対し、
引用発明は、抜き勾配角度が不明である点。

第5 当審の判断
そこで、上記相違点を検討する。
1 本願発明が「負の抜き勾配角度」と特定するのは、「材料層18及びキャリア12の間の接合を改善するため」であるところ(段落【0014】)、材料層とキャリアの間の接合を改善するために材料層を支持するリブを負の抜き勾配角度とすることは、例えば特開平10-46609号公報(傾斜して設けた凸部10(段落【0016】、【図4】及び【図5】参照。))に示されるような周知の構成(以下、「周知の技術事項」という。)であって、特別な構成ではない。
そして、引用発明は、上記第3の1の(1)及び上記刊行物の段落【0040】の「発泡体35によって中空パネル1の中空室6の内周壁面と補強部材11とを一体状に結合することによって、中空室6内に対し、補強部材11を振動させることなく強固に固着することができ、中空パネル1の補強に効果が大きい」との記載を参酌すると、発泡体と補強部材の間の接合の改善という課題を内在すると解される。
そうすると、引用発明において、周知の技術事項を適用して、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 本願発明が奏する効果は、引用発明、周知の技術事項から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。

3 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-14 
結審通知日 2015-04-21 
審決日 2015-05-07 
出願番号 特願2011-519180(P2011-519180)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹村 秀康  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 小柳 健悟
内田 博之
発明の名称 相互接続されたフォーム又は接着剤層  
代理人 石田 敬  
代理人 関根 宣夫  
代理人 古賀 哲次  
代理人 塩川 和哉  
代理人 出野 知  
代理人 青木 篤  

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