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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60N
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60N
管理番号 1305836
審判番号 不服2014-7510  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-23 
確定日 2015-09-15 
事件の表示 特願2009-553211「コンパクトな座席装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月18日国際公開、WO2008/110814、平成22年 6月24日国内公表、特表2010-521354〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願2009-553211号に係る手続の経緯の概要は以下のとおりである

平成20年(2008)3月14日 出願(国際出願,外国庁受理,パリ条約による優先権主張,2007年3月15日,英国)

平成23年 4月11日 補正書

平成25年 1月24日 拒絶理由

平成25年 7月 8日 意見書,補正書

平成25年12月20日 拒絶査定

平成26年 4月23日 拒絶査定不服審判請求,補正書

平成26年11月28日 拒絶理由

平成27年 2月24日 意見書

第2 本願発明

本願の請求項に係る発明は,平成26年4月23日になされた手続補正後の明細書の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項14に記載された事項によって特定されるものと認められるところ,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「【請求項1】
車両内で成人の運転手および二人の成人の乗客が着席可能なコンパクトな座席装置であって,
前記座席装置は,実質的に横方向に整列された2つの後方乗客用シートと実質的に中央にかつ前記乗客用シートの前方に配置された運転手用シートとを具備してなる少なくとも3つのシートを有しており,
前記運転手用シートは横方向において前記後方乗客用シートのそれぞれの一部にオーバーラップするよう延在しており,
前記オーバーラップは,使用時に二人の成人の乗客が各前記後方乗客用シートに着席した状態で前記運転手用シートが,横方向において,その形状によって後方の各乗客の中央側の脚の一部にオーバーラップするよう延在する広がりをなし,それによって,前記運転手用シートのセンターラインと前記乗客用シートのそれぞれのセンターラインとの間の空間が低減でき,所定のサイズの乗客の中央側の肩同士が,前記運転手用シートが乗客の中央側の脚と横方向にオーバーラップさせられるように形状付けられていない場合に比べて,互いに対してより近接して位置させられるようになっており,
各シートは,その上に使用者が座るシートベースと,使用者の背中を支持するためのシートバックとを具備してなり,かつスペースまたは切欠きが,乗客の脚の一部を収容するよう,前記運転手用シートの前記シートベースの各側部および/または前記シートバックの各側部に設けられており,
前記運転手用シートの前記シートバックが,上側の相対的に幅広の部分と,下側の相対的に幅狭の部分と,を備え,前記スペースまたは切欠が,前記下側の相対的に幅狭の部分の側方において,閉塞されていないスペースまたは切欠として形成されていることを特徴とするコンパクトな座席装置。」

第3 刊行物の記載及び引用発明

1.原査定及び平成26年11月28日付け拒絶の理由に引用した,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-7018号公報(以下「刊行物1」という。)には,以下の記載がある。

(1)「【課題を解決するための手段】この目的を達成するため,本発明は,横方向にほぼ整列して互いに離れる2個の後部パッセンジャーシート及びほぼ中央かつ前記2個の後部パッセンジャーシートの前方に配置したドライバーズシートとよりなり,前記前方のドライバーズシートを各後部パッセンジャーシートの一部にオーバーラップするよう横方向に突出させた少なくとも3個のシートを有する車両のシート構成にすることを特徴とする。」(【0005】段落)

(2)「ドライバーズシートのパッセンジャーシートに対するオーバーラップ構成により,コンパクトでありながら,快適であり,かつアクセス性のよいパッセンジャーキャビンを得ることができる。」(【0010】段落)

(3)上記(1)によれば,刊行物1には,
「横方向にほぼ整列して互いに離れる2個の後部パッセンジャーシート及びほぼ中央かつ前記2個の後部パッセンジャーシートの前方に配置したドライバーズシートとよりなり,前記前方のドライバーズシートを各後部パッセンジャーシートの一部にオーバーラップするよう横方向に突出させた少なくとも3個のシートを有し,ドライバーズシートのパッセンジャーシートに対するオーバーラップ構成により,コンパクトなパッセンジャーキャビンを得ることができる車両のシート構成。」(以下「本願発明1」という。)
が記載されているものと認められる。

2.平成26年11月28日付け拒絶の理由に引用した,本願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭59-90639号(実開昭61-5241号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には,以下の記載がある。

(1)「この考案は,・・・自動車のシート構造を提供するようにしたものである。」(2頁13?15行)

(2)「この考案の詳細を,第1図?第4図に示す実施例について説明すると,次の通りである。
前席シート10はシートクッション12,シートバックレスト13,ヘッドレスト14を有し,フロア16の上方でサイドシル17の側方に位置する。そしてシート10の両側縁18,すなわちシートバックレスト13の両側縁の下部からシートクッション12の両側縁の後部にわたる部分に,後席の乗員の足部19を納める凹入部21を設ける。(この凹入部21を設ける部分は,前席の乗員の腰が当たらないところである)。」(3頁3?13行)

(3)上記(1),(2)によれば,「シート10の両側縁18,すなわちシートバックレスト13の両側縁の下部からシートクッション12の両側縁の後部にわたる部分に,後席の乗員の足部19を納める凹入部21を設けた自動車のシート構造」(以下「引用発明2」という。)
が記載されているものと認められる。

3.平成26年11月28日付け拒絶の理由に引用した,本願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭59-130370号(実開昭61-44329号)のマイクロフィルム(以下「刊行物3」という。)には,以下の記載がある。

(1)「シート1は乗用自動車の前席シートであって,シートクッション2とシートバックレスト3とを備える。・・・一方,シート1の両側縁,すなわちシートクッション2の両側縁の後部と,シートバックレスト3の両側縁の下部とに,それぞれ対応して位置する凹入部2a,3aを設け,後席に着座した乗員がその足部12を凹入部2a,3aを通して前方に伸ばし,狭い室内で寛げるようにしてある。」(2頁18行?3頁13行)

(2)上記(1)によれば,「シート1の両側縁,すなわちシートクッション2の両側縁の後部と,シートバックレスト3の両側縁の下部とに,それぞれ対応して位置する凹入部2a,3aを設け,後席に着座した乗員がその足部12を凹入部2a,3aを通して前方に伸ばす,乗用自動車の前席シート」(以下「引用発明3」という。)
が記載されているものと認められる。

第4 対比・判断

本願発明と本願発明1を対比する

1.本願発明1の「後部パッセンジャーシート」,「ドライバーズシート」は,それぞれ,本願発明の「乗客用シート」,「運転手用シート」に相当する。

2.通常,車両のシートは成人の着席が可能であるから,本願発明1の「後部パッセンジャーシート」,「ドライバーズシート」も成人の着席が可能であると解される。

3.本願発明1の「コンパクトなパッセンジャーキャビン」は,「パッセンジャーシート」のみを含むものであって,「ドライバーズシート」を含むものではないが,「パッセンジャーキャビン」がコンパクトになれば,「パッセンジャーシート」と「ドライバーズシート」全体の座席配置もコンパクトになるから「コンパクトな座席配置」といえる。

4.車両用のシートは,使用者が座るシートベースと,使用者の背中を支持するためのシートバックとを具備するのが技術常識であることを踏まえれば,引用発明1の「後部パッセンジャーシート」と「ドライバーズシート」においても,使用者が座るシートベースと,使用者の背中を支持するためのシートバックとを具備しているものと解される。

5.よって,本願発明と本願発明1は,
「車両内で成人の運転手および二人の成人の乗客が着席可能なコンパクトな座席装置であって,
前記座席装置は,実質的に横方向に整列された2つの後方乗客用シートと実質的に中央にかつ前記乗客用シートの前方に配置された運転手用シートとを具備してなる少なくとも3つのシートを有しており,
前記運転手用シートは横方向において前記後方乗客用シートのそれぞれの一部にオーバーラップするよう延在しており,各シートは,その上に使用者が座るシートベースと,使用者の背中を支持するためのシートバックとを具備してなるコンパクトな座席装置。」

である点で一致し,下記(1)?(2)の点で相違するものと認められる。

(1)本願発明は,「前記オーバーラップは,使用時に二人の成人の乗客が各前記後方乗客用シートに着席した状態で前記運転手用シートが,横方向において,その形状によって後方の各乗客の中央側の脚の一部にオーバーラップするよう延在する広がりをなし,それによって,前記運転手用シートのセンターラインと前記乗客用シートのそれぞれのセンターラインとの間の空間が低減でき,所定のサイズの乗客の中央側の肩同士が,前記運転手用シートが乗客の中央側の脚と横方向にオーバーラップさせられるように形状付けられていない場合に比べて,互いに対してより近接して位置させられるようになって」いるのに対し,本願発明1は,「運転手用シートが,横方向において,その形状によって後方の各乗客の中央側の脚の一部にオーバーラップするよう延在する広がりをな」す構造を備えていない点(以下「相違点1」という。)。

(2)本願発明は,「スペースまたは切欠きが,乗客の脚の一部を収容するよう,前記運転手用シートの前記シートベースの各側部および/または前記シートバックの各側部に設けられており,前記運転手用シートの前記シートバックが,上側の相対的に幅広の部分と,下側の相対的に幅狭の部分と,を備え,前記スペースまたは切欠が,前記下側の相対的に幅狭の部分の側方において,閉塞されていないスペースまたは切欠として形成されている」のに対し,本願発明1の「ドライバーズシート」はそのように形成されていない点(以下「相違点2」という。)。

6.判断

(1)相違点2について
引用発明2の「シートクッション12」,「シートバックレスト13」,「凹入部21」,「前席シート10」はそれぞれ,本願発明の「シートベース」,「シートバック」「スペースまたは切欠き」,「運転手用シート」に相当する。
引用発明3の「シートクッション2」,「シートバックレスト3」「凹入部2a,3a」,「シート1」はそれぞれ,本願発明の「シートベース」,「シートバック」「スペースまたは切欠き」,「運転手用シート」に相当する
そして引用発明2,3はともに,「シートバックレスト」の両側縁の下部に「凹入部」を設けるものであるから,該「シートバックレスト」は,「上側の相対的に幅広の部分と,下側の相対的に幅狭の部分と,を備え」ている。
そして上記「凹入部」は「シートバックレスト」と「シートクッション」の両側縁に設けられるので,該「凹入部」は「閉塞されていないスペースまたは切欠として形成されている」。
してみると,引用発明2,3は,上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を備えている。
また,引用発明1と引用発明2,3は,共に車両内の座席配置に関する技術であることで共通している。
そして,引用発明2,3は,ともに「凹入部」に乗客の脚の一部を収容して,座席配置をコンパクトにすることを目的とするものであるから,座席配置をコンパクトにすることを目的とする引用発明1に,引用発明2,3を適用することは,当業者にとって格別困難なことではない。
よって,引用発明1に引用発明2又は3を適用して上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項となすことは当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点1について
引用発明2はシートバックレストに凹入部を設けて後席の乗員の足部を収納するものであり,また引用発明3も引用発明2と同様の構成のものであるから,引用発明2,3は,運転手用シートが,その形状によって後方の各乗客の中央側の脚の一部にオーバーラップするよう延在する広がりをなしているといえる。
引用発明1の「横方向にほぼ整列して互いに離れる2個の後部パッセンジャーシート及びほぼ中央かつ前記2個の後部パッセンジャーシートの前方に配置したドライバーズシート」の構成に引用発明2,3を適用すれば,ドライバーズシート(運転手用シート)の横方向において後方のパッセンジャー(乗客)の脚の一部にオーバーラップすることによって,ドライバーズシート(運転手用シート)が後方のパッセンジャー(乗客)の脚の一部にオーバーラップした分,2個の後部パッセンジャーシート同士を近接して配置することになるから,必然的に本願発明と同様に「運転手用シートが,横方向において,その形状によって後方の各乗客の中央側の脚の一部にオーバーラップするよう延在する広がりをなし,それによって,前記運転手用シートのセンターラインと前記乗客用シートのそれぞれのセンターラインとの間の空間が低減でき,所定のサイズの乗客の中央側の肩同士が,前記運転手用シートが乗客の中央側の脚と横方向にオーバーラップさせられるように形状付けられていない場合に比べて,互いに対してより近接して位置」することになる。
そして,上記(1)で示したように,引用発明1に,引用発明2,3を適用することは,当業者にとって格別困難なことではない。
よって,引用発明1に引用発明2又は3を適用して上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項となすことは当業者が容易になし得ることである。

(3)そして,本願発明の奏する効果が,引用発明1と引用発明2又は引用発明3の記載事項から当業者が予測困難な程の格別顕著なものということはできない。

第5 むすび

上記のとおり,本願発明は,引用発明1と引用発明2又は引用発明1と引用発明3に基づいて容易に想到できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-30 
結審通知日 2015-04-06 
審決日 2015-05-01 
出願番号 特願2009-553211(P2009-553211)
審決分類 P 1 8・ 16- WZ (B60N)
P 1 8・ 121- WZ (B60N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳本 陽征植前 津子  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 畑井 順一
吉村 尚
発明の名称 コンパクトな座席装置  
代理人 実広 信哉  

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