• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B23Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23Q
管理番号 1305929
審判番号 不服2014-5998  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-02 
確定日 2015-09-24 
事件の表示 特願2010-522358「機械的構成部品を検査するためのプログラマブルシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月 5日国際公開、WO2009/027430、平成22年12月 2日国内公表、特表2010-536598〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2008年(平成20年)8月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年8月30日、イタリア)を国際出願日とする特許出願であって、平成25年2月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月3日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月29日付けで拒絶の査定がなされた。その後、当該査定を不服として平成26年4月2日に本件審判の請求がされると同時に、手続補正書が提出された。その後、同年6月30日に上申書が提出された。

第2 平成26年4月2日付け手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成26年4月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1. 補正の内容の概要
平成26年4月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の全文について補正をするものであって、その請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

(1)補正前
「【請求項1】
機械的要素(1)の位置および/または寸法を検査するためのシステムにおいて、
検出装置(13)、電力供給装置(12)、処理装置(9)、および、信号を無線で送信および受信するための少なくとも1つの遠隔送受信ユニット(8)を有する検査プローブ(4)と、
前記少なくとも1つの遠隔送受信ユニット(8)へ信号を無線で送信する、および前記少なくとも1つの遠隔送受信ユニット(8)からの信号を無線で受信するためのベースユニット(11)と、
表示装置(22,30,31,32,38,39,40,41)と、
前記ベースユニット(11)に連結され、制御装置を有するインターフェースユニット(34)と、を含み、
前記インターフェースユニット(34)の前記制御装置は、少なくとも1つの送受信機(20,21)を含み、
前記送受信機(20,21)は、前記ベースユニット(11)および前記検査プローブ(4)から距離をおいて使用される遠隔コントローラー(37)と通信するためのものである、ことを特徴とするシステム。」

(2)補正後
「【請求項1】
機械的要素(1)の位置および/または寸法を検査するためのシステムにおいて、
検出装置(13)、電力供給装置(12)、処理装置(9)、および、信号を無線で送信および受信するための少なくとも1つの遠隔送受信ユニット(8)を有する検査プローブ(4)と、
前記少なくとも1つの遠隔送受信ユニット(8)へ信号を無線で送信する、および前記少なくとも1つの遠隔送受信ユニット(8)からの信号を無線で受信するためのベースユニット(11)と、
表示装置(22,30,31,32,38,39,40,41)と、
前記ベースユニット(11)に連結され、制御装置を有するインターフェースユニット(34)と、を含み、
前記インターフェースユニット(34)の前記制御装置は、少なくとも1つの送受信機(20,21)を含み、
前記送受信機(20,21)は、前記ベースユニット(11)および前記検査プローブ(4)から距離をおいて使用される遠隔コントローラー(37)と通信するためのものであり、
前記少なくとも1つの送受信機(20,21)は、符号化された信号を受信するとともに、受信が生じた場合に、ベースユニット(11)および/またはプローブ(4)をプログラムするために利用される制御信号の生成を生じさせるよう構成されたレシーバー(26,27)を含む、ことを特徴とするシステム。」

2. 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする上記補正は、送受信機(20,21)について「少なくとも1つの送受信機(20,21)は、符号化された信号を受信するとともに、受信が生じた場合に、ベースユニット(11)および/またはプローブ(4)をプログラムするために利用される制御信号の生成を生じさせるよう構成されたレシーバー(26,27)を含む」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第5項ただし書き第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1) 補正発明
補正発明は、上記1.(2)に示すとおりの「システム」であると認める。

(2) 刊行物
これに対して、本件出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物であって原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-2514号公報(以下「刊行物1」という。)及び特開2002-310642号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は理解の便のため、当審で付した。

ア. 刊行物1
刊行物1には以下の事項が記載されている。

(ア)
「【0024】図1は、本発明を組み込んだプローブを示す図である。
【0025】図1においては、プローブ2が示されており、これは従来よりのタッチ・トリガまたはアナログ・プローブであり、工作機械のスピンドル7への固着のためのシャンク1を有している。
【0026】プローブ2はハウジングを有し、該ハウジングの互いに異なるセクション中には、電波送信システム3、信号調整電子系4、及び該ハウジングの底部から外に向かって突出するスタイラス6用の機械的サスペンション系5等を収容している。電波送信システムは、プローブからの計測動作に関するプローブ・データを機械(図示せず)上に設置されたインタフェース10に通信している。
【0027】図2は、前記プローブとインタフェース内の回路群の模式図であり、また図3は、前記インタフェースのフロント・パネルの配置図である。
【0028】図2と図3において、インタフェース10内の回路は、電波受信回路12と、該電波回路で使用される周波数を発生するシンセサイザ14と、マイクロプロセッサ16とを含んでいる。該マイクロプロセッサは、米国アリゾナマイクロチップコーポレーションにより製造されたPICシリーズとして知られるタイプが好適である。該マイクロプロセッサは、EEPROM( 電気的に消去可能なプログラマブルROM) の形態をとるメモリ部を含んでいる。また、インタフェースには、6個の状態LED18、20、22、24、26、及び28、2個のプッシュボタン・セレクタ・スイッチ30、32、そして、チャンネル・インジケータ34がある。
【0029】プローブ中の回路60には、電波送信回路36、該電波送信回路で使用される周波数を発生するシンセサイザ38、及び、対応EEPROMを有する他のPICマイクロプロセッサ40等が備わっている。
【0030】さらに、ブロック図として表されているが、電波送信システム上でインタフェース10に送信するためのプローブ信号を調整する調整電子系4を有するプローブ電子系42、それに該プローブ電子系と電源44との接続/切断を行う異なるスイッチ回路群43とを有している。尚、分離しているように示されているが、前記プローブ電子系42とスイッチ回路群43の多くの機能はマイクロプロセッサ40内に当然組み込んでもよい。
【0031】上記した2つのマイクロプロセッサ16、40は双方向無線通信リンクにより接続され、このリンクは比較的ショート・レンジ(short range )であり、例えばインタフェースの外側近辺に設置されている送信/受信フォトダイオード46、48、及びプローブ側に設置された送信/受信フォトダイオード50、52を備えている。」

(イ)
「【0036】プローブ中のマイクロプロセッサ40は次に挙げる機能を有している。
【0037】a) インタフェースからの信号を受信するとシンセサイザの周波数をプログラムし、プローブの電波送信のタイミング及びシーケンス動作を行う。
【0038】b) 送信/受信フォト・ダイオード50、52の動作を制御する。ウォッチドッグ回路は、プローブの開始状態(start condition )を検出するかバッテリが交換されたらマイクロプロセッサを作動する。この場合、マイクロプロセッサは、プログラムされたプロトコールを作動し、このプロトコールは信号を光送信機(50)を介してインタフェースに送信し、所定時間内に応答が無い場合は活動を停止するという動作から成る。
【0039】システムは次のように動作する:即ち、プローブを機械に挿入する前に、該プローブを、プローブとインタフェースとの間の双方向通信リンクの範囲に持ち込むことにより、オン/オフ・スイッチングの状態と電波送信システムの周波数チャンネルがチェックされる。
【0040】一度通信リンクが確立されると、プローブはそのプログラムされた機能の状態、つまり、その上で動作すべくプログラムされている周波数チャンネルと、プローブがスイッチオン/オフされるモードをインタフェースに送信する。
【0041】インタフェース中の受信機は、ある一定の期間、例えば5秒間プローブ情報を受信するようプログラムされており、その期間中はそれが受信モードであることを知らしめるために一定のビープ音を発生する。
【0042】インタフェース中のマイクロプロセッサは、チャンネル用ディスプレイ上にチャンネル番号を表示することにより、またスイッチ用ディスプレー表示上に状態LED群を適当な並びで点灯することにより、プローブのプログラム情報が表示されるようにする。そして、実際のプローブ用プログラミングが希望するそれと一致していた場合は、そこでインタフェースからプローブをはずして、使用するために機械内に挿入することができる。
【0043】プローブ内のプログラムされた情報が正確でない場合は、オペレータはプローブのプログラミングを変更するためにプローブに渡す一群の命令で、インタフェースをプログラムすることが可能である。チャンネルは2個のセレクタ・ボタンの内1個を押すことにより再プログラムされる。即ち、チャンネル表示窓に正しいチャンネルが現れるまで、該2個のボタンの内1個はチャンネル番号を増加させるのに使用し、他の1個はチャンネル番号を減少させるのに使用する。この様にして70までの異なるチャンネルが選択できる。」

(ウ)
上記摘記事項(ア)の「図1においては、プローブ2が示されており、これは従来よりのタッチ・トリガまたはアナログ・プローブであり、工作機械のスピンドル7への固着のためのシャンク1を有している。」(段落【0025】)との記載から、刊行物1に記載されたものが、「工作機械のスピンドル7」に固着された「プローブ2」を用いて、対象物の位置および/または寸法を検査するためのシステムであることが明らかである。さらに、「プローブ2」設けられた「スタイラス6」が対象物に対して接触することで上記検査が行われ、当該接触に伴う「スタイラス6」の変位を検出するための検出装置を、「プローブ2」が備えることも明らかである。

(エ)
上記摘記事項(イ)の「プローブ中のマイクロプロセッサ40は次に挙げる機能を有している。a) インタフェースからの信号を受信するとシンセサイザの周波数をプログラムし、プローブの電波送信のタイミング及びシーケンス動作を行う。」(段落【0036】及び【0037】)との記載から、「インタフェース」からの信号受信を契機として、「プローブ中のマイクロプロセッサ40」は、「シンセサイザの周波数をプログラム」が開始されるものであることが理解できるから、「インタフェース」は、当該プログラムするために利用される制御信号を生成するものであるといえる。

(オ)
上記摘記事項(ア)及び(イ)に記載の「送信/受信フォトダイオード50、52」は、光信号を送受信するものであるから、無線で信号を送受信するものであることは、明らかであるといえる。

(カ)刊行物1記載の発明
上記摘記事項(ア)及び(イ)並びに認定事項(ウ)ないし(オ)から刊行物1記載の事項を技術常識を考慮しながら整理すると、刊行物1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「対象物の位置および/または寸法を検査するためのシステムにおいて、
検出装置、電源44、プローブ信号を調整するマイクロプロセッサ40、および、信号を無線で送信及び受信するための送信/受信フォトダイオード50、52を有するプローブ2と、
前記送信/受信フォトダイオード50、52へ信号を無線で送信する、および前記送信/受信フォトダイオード50、52からの信号を無線で受信するためのインタフェース10と、
状態LED18、20、22、24、26及び28並びにチャンネル・インジケータ34と、
プローブ2をプログラムするために利用される制御信号の生成をするインタフェース10
を含むシステム。」

イ 刊行物2
刊行物2には以下の事項が記載されている。

(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被測定物の表面に沿ってプローブを操作するとともに測定に必要な情報をモニタで表示する例えば三次元測定機、形状測定機、その他の表面性状測定装置に関するものである。」

(イ)
「【0020】図1には、本発明の第1の実施の形態が示されている。図1において、第1の実施形態に係る表面性状測定装置1は、コンピュータ数値制御可能でありX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の測定を行う三次元測定機である。そして、この表面性状測定装置1を使った測定では、表面性状測定装置1に組み込まれたX、Y、Z各軸駆動機構を介して保持されたプローブ2を定盤3上に載置された被測定物5の所定箇所に当接させる。このプローブ2が被測定物5に当接した瞬間における球形状のプローブ2の先端の中心座標値を得ることで行われる。
【0021】一方、X、Y、Z各軸駆動機構は、門型コラム6、スライダ7、Z軸スピンドル8から構成される。このようにして得たプローブ2の先端の中心座標値については、駆動制御装置9を介してホストコンピュータ10に出力されて幾何計算などの処理がなされる。これにより、被測定物5の種々の寸法情報が第1モニタ11に表示されたり、あるいはプリンタ12などに印刷出力される。なお、プローブ移動の自動制御は、主に、キーボード13などを介してホストコンピュータ10へのプログラム入力によって行われる。」

(ウ)
「【0030】テンキー34は、画面に触れることで測定に必要な情報を入力するものであり、これらの情報はキーボード13によりホストコンピュータ10に入力することも可能である。具体的には、キーボード13は、被測定物5の測定対象部位の形状を指定する場合に使用する。・・・」

(エ)
「【0046】次に、本発明の第3の実施の形態を図1、図3、図5および図6に基づいて説明する。第3の実施の形態は、入力手段40の取付位置が第1および第2の実施の形態と異なるもので、他の構造は第1および第2の実施の形態と同じである。図1、図3および図5の想像線で示される通り、入力手段40は、第2モニタ29の近傍であってZ軸スピンドル8に着脱自在に取り付けられている。
【0047】この入力手段40は、携帯電話のような持ち運び自在な構造である。この入力手段40とホストコンピュータ10との間は、例えば電線、光ファイバなどによる有線の他、音波、超音波、光、電波などの無線によって行うこともできる。入力手段40は手持ち状態で操作することができ、ホストコンピュータ10への指示を容易に行うことができる。
【0048】図6には、入力手段40の具体的な構成が示されている。入力手段40は、第1および第2の実施の形態と同様に、テンキー34と、原点認識スイッチ35と、測定終了通知スイッチ36とを備えて構成されている。
【0049】したがって、第3の実施の形態では、第1および第2の実施の形態の(1)(2)(3)(5)(7)の作用効果の他に加えて、次のような効果が得られる。(8)第2モニタ29の近傍であってZ軸スピンドル8には、測定に必要な情報を入力するための入力手段40が設けられているので、測定作業手順に応じて必要なコマンドなどをそれぞれ近接配置されたプローブ2と第2モニタ29とを見ながら入力手段40で入力することができるので、作業効率をさらに向上できる。」

上記摘記事項(ア)ないし(エ)から、刊行物2には以下の事項(以下「刊2事項」という。)が記載されていると認められる。

「プローブを備えた表面性状測定装置において、持ち運び自在な構造の入力手段40とホストコンピュータ10とを音波、超音波、光、電波等の無線通信可能に構成し、入力手段40によって測定に必要な情報をホストコンピュータ10に入力してプローブの側でプローブを制御すること。」

(3) 対比
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「対象物」は、「プローブ2」により「位置および/または寸法」を検査されるものであるから、補正発明の「機械的要素(1)」に相当する。
引用発明の「電源44」及び「プローブ信号を調整するマイクロプロセッサ40」は、補正発明の「電力供給装置(12)」及び「処理装置(9)」と、その機能・構成からみてそれぞれ相当する。
また、引用発明の「送信/受信フォトダイオード50、52」は、補正発明の「遠隔送受信ユニット(8)」と「信号を無線で送信および受信するための送受信ユニット」である点で共通する。
さらに、引用発明の「インタフェース10」は、その機能・構成からみて、補正発明の「ベースユニット(11)」に相当する。
また、引用発明の「状態LED18、20、22、24、26及び28並びにチャンネル・インジケータ34」が、補正発明の「表示装置」に相当する。
引用発明の「プローブ2をプログラムするために利用される制御信号の生成をするインタフェース10」は、補正発明の「前記ベースユニット(11)に連結され、制御装置を有するインターフェースユニット(34)と、を含み、前記インターフェースユニット(34)の前記制御装置は、少なくとも1つの送受信機(20,21)を含み、前記送受信機(20,21)は、前記ベースユニット(11)および前記検査プローブ(4)から距離をおいて使用される遠隔コントローラー(37)と通信するためのものであり、前記少なくとも1つの送受信機(20,21)は、符号化された信号を受信するとともに、受信が生じた場合に、ベースユニット(11)および/またはプローブ(4)をプログラムするために利用される制御信号の生成を生じさせるよう構成されたレシーバー(26,27)を含む」とは、「プローブをプログラムするために利用される制御信号を生成する構成」である点で共通する

したがって、補正発明と引用発明とは、以下の点で一致している。

[一致点]
機械的要素の位置および/または寸法を検査するためのシステムにおいて、
検出装置、電力供給装置、処理装置、および、信号を無線で送信および受信するための少なくとも1つの送受信ユニットを有する検査プローブと、
前記少なくとも1つの送受信ユニットへ信号を無線で送信する、および前記少なくとも1つの送受信ユニットからの信号を無線で受信するためのベースユニットと、
表示装置と、
プローブをプログラムに利用される制御信号を生成する構成
を含むシステムである点。

[相違点]

ア. 相違点1
「送受信ユニット」について、補正発明の「送受信ユニット」は「遠隔」で信号を無線で送信及び受信するものであるのに対し、引用発明の「送信/受信フォトダイオード50、52」がそのようなものであるか明らかではない点。

イ. 相違点2
「プローブをプログラムに利用される制御信号を生成する構成」について、補正発明は、「前記ベースユニット(11)に連結され、制御装置を有するインターフェースユニット(34)と、を含み、前記インターフェースユニット(34)の前記制御装置は、少なくとも1つの送受信機(20,21)を含み、前記送受信機(20,21)は、前記ベースユニット(11)および前記検査プローブ(4)から距離をおいて使用される遠隔コントローラー(37)と通信するためのものであり、前記少なくとも1つの送受信機(20,21)は、符号化された信号を受信するとともに、受信が生じた場合に、ベースユニット(11)および/またはプローブ(4)をプログラムするために利用される制御信号の生成を生じさせるよう構成されたレシーバー(26,27)を含む」ものであるのに対し、引用発明は「プローブ2をプログラムするために利用される制御信号の生成をするインタフェース10」である点。

(4) 相違点に対する判断

ア. 相違点1について
上記(2)ア.の摘記事項(イ)の「システムは次のように動作する:即ち、プローブを機械に挿入する前に、該プローブを、プローブとインタフェースとの間の双方向通信リンクの範囲に持ち込むことにより、オン/オフ・スイッチングの状態と電波送信システムの周波数チャンネルがチェックされる。」(段落【0039】)及び「実際のプローブ用プログラミングが希望するそれと一致していた場合は、そこでインタフェースからプローブをはずして、使用するために機械内に挿入することができる。」(段落【0042】)との記載から、引用発明においては、プローブをプログラムするにあたっては、「プローブ」を機械から外すものであるが、当該設定を「プローブ」を機械に挿入したままの状態で行えるならば、手数の削減になり、かつ、「プローブ」を使用時の状態で確認しつつプログラムできるから利便であることは当業者にとって明らかである。そうすると、引用発明において、「インターフェース」の側に「プローブ」を持ってくるのではなく、「インタフェース」から離れた位置であるかも知れない「プローブ」が機械に挿入された位置で、プログラムすることを可能とすべく、遠隔コントローラを導入することの動機が、少なくとも刊行物1には示唆されているといえる。ここで、本願明細書の段落【0014】の「遠隔送受信ユニット8およびベースユニット11の送受信装置10は、一つの無線双方向通信リンク14を画定している。双方向通信リング14は、例えば単一チャンネルの無線周波数での送信のためのもの、または、様々な技術による光または音波信号または無線手段による情報送信のためのものである。」との記載から、「遠隔送受信」の媒体の例示として「音波、光」を挙げており、引用発明の「送信/受信フォトダイオード50、52」による通信も「光」を媒体とするものである。そうすると、引用発明の「送信/受信フォトダイオード50、52」を、「遠隔」送受信可能なものに置き換えることは、上記動機にしたがって、具体的に要求される通信距離を満たすべく、引用発明の「送信/受信フォトダイオード50、52」で使用される光を選択することで、当業者が容易になし得た事項である。

イ. 相違点2について
引用発明において、上記ア.で示した動機にしたがって、「プローブ」を機械に挿入したままでプログラムする際に、離れた位置にある「インターフェース」でプログラムするのに必要な操作を行うよりも、遠隔コントローラによって、「インタフェース」に対して信号を送信し操作することのほうが利便であることは明らかである。また、プローグを用いた測定装置である点で、引用発明と共通の技術分野に属する上記刊2事項は、プローブに対する指示をプローブを取り付けた状態のまま行えるようにするために、「入力手段40」を用いて、「プローブ2」に対して制御するホストコンピュータ10に対して、必要な情報を送るものである。
そうすると、引用発明において、「インタフェース」により行われていたプログラムを、遠隔コントローラを導入して、「インタフェース」に対して送受信可能とし、「遠隔コントローラ」からの信号を受信した際に、「プログラムするために利用される制御信号の生成」を生じるようにすることは、刊2事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。ここで、「インタフェース」に「制御装置を有するインターフェースユニット」を連結し、当該「インターフェースユニット」と「遠隔コントローラ」との間で信号の送受信を可能とするための「送受信機」を設け、当該信号が符号化されたものとすることは、既存の装置(「インタフェース」)に新たに、通信機能を付加しようとすれば、当然に採用する構成であるに過ぎず、当業者にとって格別困難なことではない。また、「インタフェース」と遠隔通信可能な「遠隔コントローラ」を導入したならば、「プローブ」から距離をおいた位置においても、上記遠隔通信が可能であることは自明であるから、引用発明において、「遠隔コントローラ」を「インタフェース」及び「プローブ」から距離をおいて使用されるものとしたことは、「遠隔コントローラ」導入に伴って当然に備える構成であるに過ぎない。
よって、引用発明において、相違点1及び2に係る構成を備えるようにしたことは、引用発明及び刊2事項にしたがって、当業者が容易に想到し得た事項である。

イ. 作用・効果について
補正発明によってもたらされる効果も、引用発明及び刊2事項から当業者が予測し得る以上のものであるとは認められない。

ウ. 小括
したがって、補正発明は、引用発明及び刊2事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3. むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるから、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本件出願の発明について

1. 本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし24に係る発明は、平成25年6月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1.(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの「システム」である。

2. 刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、上記第2の2.(2)に示したとおりである。

3. 対比・検討
本願発明は、上記第2の2.で検討した補正発明から、送受信機(20,21)について「符号化された信号を受信するとともに、受信が生じた場合に、ベースユニット(11)および/またはプローブ(4)をプログラムするために利用される制御信号の生成を生じさせるよう構成されたレシーバー(26,27)を含む」という事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の特定事項の全てを含み、さらに他の事項を付加する補正発明が上記第2の2.(4)で示したとおり、引用発明及び刊2事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び刊2事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4. むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2015-04-23 
結審通知日 2015-04-24 
審決日 2015-05-11 
出願番号 特願2010-522358(P2010-522358)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B23Q)
P 1 8・ 575- Z (B23Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 孝明大山 健  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 久保 克彦
原 泰造
発明の名称 機械的構成部品を検査するためのプログラマブルシステム  
代理人 岡村 和郎  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 永井 浩之  
代理人 磯貝 克臣  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ