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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1305957
審判番号 不服2014-15217  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-01 
確定日 2015-09-24 
事件の表示 特願2011-554239「ローカル・マップ及び位置特有の注釈付きデータを提供するための人間援助型の技術」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月16日国際公開、WO2010/105186、平成24年 9月 6日国内公表、特表2012-520468〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 出願の経緯
本願は、2010年(平成22年)3月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2009年(平成21年)3月13日 米国、2010年(平成22年)1月12日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成23年11月10日 :翻訳文提出
平成23年11月10日 :手続補正書の提出
平成25年 4月 9日付け:拒絶理由の通知
平成25年 6月14日 :意見書、手続補正書の提出
平成26年 3月25日付け:拒絶査定(同年4月1日送達)
平成26年 8月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成26年8月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年8月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項37の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項37】
少なくとも1つのネットワーク・ベースの電子デバイスを用いて、
携帯用電子デバイスと関連するセンサリー入力情報を表わす1つ又は複数の電子信号を得ることと、前記センサリー入力情報は、前記携帯用電子デバイスの位置における、あるいはその近くの、少なくとも1つの可視環境特徴に対応する画像情報及び音声情報を具備する;
前記センサリー入力情報に少なくとも部分的に基づいて、ローカル・マップ情報を得ることと;
通信ネットワークを介して、前記携帯用電子デバイスに前記ローカル・マップ情報の少なくとも一部を表わす1つ又は複数の電子信号を送信することと;
前記少なくとも1つのネットワーク・ベースの電子デバイスを用いて、
前記画像情報及び前記音声情報に、少なくとも部分的に基づいて、テキストのメタデータを決定することと、ここにおいて前記テキストのメタデータの少なくとも一部は、前記少なくとも1つの可視環境特徴と関連する;
前記テキストのメタデータに少なくとも部分的に基づいて、前記ローカル・マップ情報を得ることと;
を具備し、
前記ローカル・マップ情報は、エリアのグラフィカル・デジタル説明、地理的なタグを有するポイント・オブ・インタレスト情報、無線ビーコン・デバイスに関連する情報のようなコンテクスチュアル情報を含む、ローカル・マップ及び位置特有の注釈付きデータを提供するための方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成25年6月14日の手続補正による特許請求の範囲の請求項37の記載は次のとおりである。
「【請求項37】
少なくとも1つのネットワーク・ベースの電子デバイスを用いて、
携帯用電子デバイスと関連するセンサリー入力情報を表わす1つ又は複数の電子信号を得ることと、前記センサリー入力情報は、前記携帯用電子デバイスの位置における、あるいはその近くの、少なくとも1つの可視環境特徴に対応する画像情報及び音声情報を具備する;
前記センサリー入力情報に少なくとも部分的に基づいて、ローカル・マップ情報を得ることと;
通信ネットワークを介して、前記携帯用電子デバイスに前記ローカル・マップ情報の少なくとも一部を表わす1つ又は複数の電子信号を送信することと;
前記少なくとも1つのネットワーク・ベースの電子デバイスを用いて、
前記画像情報及び/又は前記音声情報に、少なくとも部分的に基づいて、テキストのメタデータを決定することと、ここにおいて前記テキストのメタデータの少なくとも一部は、前記少なくとも1つの可視環境特徴と関連する;
前記テキストのメタデータに少なくとも部分的に基づいて、前記ローカル・マップ情報を得ることと;
を具備するローカル・マップ及び位置特有の注釈付きデータを提供するための方法。」

(3)上記補正は、補正前の請求項37に記載した発明を特定するために必要な事項について、
ア 少なくとも部分的に基づいて、テキストのメタデータを決定する情報について「前記画像情報及び/又は前記音声情報」とあったところを、「前記画像情報及び前記音声情報」と限定し、
イ 「ローカル・マップ情報」について「前記ローカル・マップ情報は、エリアのグラフィカル・デジタル説明、地理的なタグを有するポイント・オブ・インタレスト情報、無線ビーコン・デバイスに関連する情報のようなコンテクスチュアル情報を含む」との事項を付加するものである。

よって、請求項37についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 補正の適否
そこで、補正後の請求項37に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日(パリ条約による優先権主張の基礎とされた出願の出願日)前に頒布された刊行物である、特表2003-518625号公報(公表日:平成15年6月10日。以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付与したものである。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信ネットワークとのインタラクションを通じて移動機(MS)を用いて情報を取得する方法及び装置を提供するものである。」

「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、移動通信網と広域コンピュータ・ネットワークとのインタラクションを通じて移動機の正確な所在位置を特定する方法及び装置を提供することにより、従来の所在位置探知装置と情報システムよりも優れた改良を行うものである。」

「【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの実施例に従って、対象MSの周囲の地理上の所在位置またはMSに最も近い対象物のデジタル画像を対象移動機へ入力し、MSにサービスを提供する広域パケット無線サービス(GPRS)ネットワークや汎欧州デジタル移動電話方式(GSM)などの移動通信装置用ネットワークを介してデジタル画像の送信を行うことにより上記課題は達成される。次いで、このデジタル画像は、アクセス・ポートを介してインターネットやワールド・ワイド・ウェブなどのような広域通信ネットワークへ送信される。デジタル画像データをテキスト・データへ変換する変換サーバは、広域通信ネットワークを介してアクセス可能である。次いで、このテキスト・データは、やはり広域通信ネットワークを介してアクセス可能なロケーション・サーバへ転送される。ロケーション・サーバは、例えば、MSが通信を行う仲介基地局を特定することによりMSの概略の所在位置アドレスを受け取り、この概略の所在位置アドレスとテキスト・データとを利用して、データベースの中に記憶されている地域別位置情報とこの情報との比較を行う。記憶されている地域別位置情報は、典型的には、ロケーション・サーバ内に配置されている、あるいは、ロケーション・サーバによりアクセス可能なデータベース内に含まれる道路マップと陸標のライブラリである。いったんMSの正確な所在位置が決定されると、その所在位置情報はMSへ返送される。
【0006】
この決定された所在位置情報は多数のアプリケーションでの利用が可能である。例えば、1つの実施例では、1以上のサービス・サーバは、広域通信ネットワークへのアクセスが可能であり、この決定されたMSの所在位置用に仕立てられた多くの情報サービスの提供が行われるようになっている。このようなサービスの中に、その地域の道路交通情報や天気予報の提供だけでなく、商品/サービスを今すぐ必要としているかもしれないMSユーザが、最も近くに在るガソリン・スタンドや自動車修理センタなどの所在位置のような商品/サービスを受けられる場所の所在位置を見つけることができるような、最も近くに在る商品やサービスのプロバイダの特定と所在位置情報の提供も含むようにすることが可能である。」

「【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の現在推奨されている実施例に従う、移動通信ネットワーク・ユーザへ正確な所在位置情報を提供するシステム10が図1に例示されている。システム10は、移動機12とコンピュータ・ネットワーク18との間のインタラクションと通信を提供するものである。コンピュータ・ネットワークとは、例えば、インターネットやワールド・ワイド・ウェブなどであってもよい。これらの用語は本明細書では互換的に使用される。MS12は、移動電話、個人用情報機器(PDA)、並びに、無線通信能力を備えたラップトップ・コンピュータを含む任意の別のタイプの無線通信装置であってもよい。MS12は、汎欧州デジタル移動電話方式(GSM)や広域パケット無線サービス・ネットワーク(GPRS)のような移動通信ネットワーク14を介して一般の当業者に周知の方法で他の移動機と交信を行う。図1にGPRSネットワーク14が表されている。また当業で周知のように、ネットワーク14は、MS12とインターネット18との間で交換される情報用パスを設けるためのインターネット・アクセス・ポート16において、受信機への無線送信を介してコンピュータ・ネットワークまたはインターネット18との交信が可能である。システム10には、当業で周知のように、デジタル画像データをテキスト・フォーマットに変換するデータ変換用サーバ20がさらに含まれる。この目的のための好適なサーバとして光学式文字認識(OCR)サーバがある。MSの特定のかつ正確な所在位置情報を以下に記載の方法で取得するために、ロケーション・サーバ22もインターネット18を介してアクセスが可能である。
【0010】
MS12のユーザは、自分の正確な所在位置を知りたい場合、MSに最も近い地理上の所在位置を示すデジタル画像を取得する。このようなデジタル画像は、ビル、道路標識を備えた交差点、陸標などであってもよいし、デジタル・カメラ13を使用して得られるものであってもよい。
・・・(中略)・・・
さらに、デジタル・カメラを自動車のダッシュボードに取り付け、電気的にあるいは無線で自動車電話などのMSとこのカメラを接続してもよい。自動車に内蔵されているハードウェアまたはソフトウェアによりデジタル・カメラを制御してカメラの位置を決め、自動車の運転中例えば道路標識などの画像を受信して、適切なデジタル画像の取得を行うことも可能である。次いで、MS12は、正確なMSの所在位置要求と共に、カメラ13から移動通信ネットワーク14へ上記取得デジタル画像を伝送する。移動通信ネットワーク14は、インターネット・アクセス・ポート16を介してインターネット18とコンタクトするか、あるいはインターネット18にアクセスし、インターネットと交信する様々なサーバへデジタル画像を送信して、MSの正確な所在位置を取得する。この所在位置要求は、例えばインターネット・アクセス・コード(電話番号など)をダイヤルしてインターネット・サーバと接続することにより行われる。
【0011】
装置10は、デジタル画像情報を直接利用することにより、MSの正確な所在位置の特定を行うことが可能である。あるいは、本発明の1推奨実施例に従って、デジタル画像を2進テキスト・データへ変換するための光学式文字認識(OCR)サーバなどのデータ変換器へデジタル・データの送信を行う。当業で周知のように、OCRサーバ20は、MS12に最も近い地理上の所在位置の受信デジタル画像を2進テキストなどのビット・フォーマットに変換する。次いで、この情報は、ロケーション・サーバ(LS)22へ通信されて特定される。上記地理画像の2進テキスト・バージョンの受信に先行して、あるいは、上記受信後、もしくは上記受信と同時に、LSは、地理画像が含まれる概略位置すなわちMSが位置する概略位置を取得する。この取得はLSと通信ネットワーク14間の通信を通じて行われる。例えば、LSにより出されたリクエストに応答して、ネットワーク14は、MS12と交信するセル/基地局(BS)または1グループのセル/基地局の位置エリアID(LAI)、並びに、ネットワーク14がMS12の概略位置に関して持つ可能性がある他の情報をLSに与える。GSMネットワーク14の場合、LAIは移動交換センタ(MSC)のビジタ位置レジスタ(VLR)の形をしていてもよい。
【0012】
LSは、道路地図、ビルの所在位置、陸標などのような所在位置情報を含むデータベースを含むか、このデータベースへのアクセスを行う。MS12の概略の地理領域を特定するLAIの受信時に、LSは2進テキスト情報を利用して、概略の地理領域の範囲内で正確な所在位置をピンポイントで示す。これは2進テキストとLAI情報とを所在位置データベ-ス・データと比較することにより行われる。OCRサーバは、送信された映像の画像からパターンを構成する能力を有している。したがって、このパターンはロケーション・サーバ内の既存のパターンと比較され、もしマッピングの或る一定の最低閾値が満たされれば、ある一定のデータベースのパターンとの対応づけが行われる。いったん所在位置すなわち“マッチ”が特定されると、その所在位置はMSへ返送される。インターネット18とネットワーク14との組合せを介して、あるいは、例えばこれらのネットワーク間の無線通信などを通じて、LS22とネットワーク14との間で直接上記返送を行うことが可能である。この所在位置情報は、MS内に組み込まれているディスプレイに表示されるテキスト・メッセージあるいは図(地図など)の形のものであってもよいし、あるいは、自動車電話を通じてロケーション要求が出される場合などのような、移動電話からの、あるいは、移動電話と接続されたスピーカからの耳に聞こえるメッセージ放送であってもよい。
【0013】
この正確な所在位置情報は、様々なアプリケーションで利用したり、MSユーザに対して様々な情報サービスを提供するために利用したりすることが可能である。例えば、MSユーザが車の運転中道に迷った場合、本発明による装置10は、MSの正確な所在位置を認知するとすぐにユーザへ指示を送信する。或る推奨実施例では、商品や、MSユーザの最も近くに位置する、もしくは、MSユーザのすぐ近傍に位置するサービス・プロバイダに関するMSを通じて出されたクエリに応答して情報を伝えるための、例えばインターネット18などと交信できるサービス・サーバ24を設けることもできる。例えば、ユーザがガソリンや自動車の修理を必要とする場合、正確なMSの所在位置を利用してサービス・サーバ24にアクセスし、MS12の最も近くに位置するガソリン・スタンドやサービス・ステーションの所在位置を見つけ出してこのようなステーションへ行く方向を指示することが可能となる。」

(イ)引用例1に記載された技術事項
a 段落【0001】には、「通信ネットワークとのインタラクションを通じて移動機(MS)を用いて情報を取得する方法。」との技術事項が記載されている。

b 段落【0005】より、「対象MSの周囲の地理上の所在位置またはMSに最も近い対象物のデジタル画像を対象移動機へ入力し、MSにサービスを提供する移動通信装置用ネットワークを介してデジタル画像の送信を行い、次いで、このデジタル画像は、アクセス・ポートを介して広域通信ネットワークへ送信され、広域通信ネットワークを介してアクセス可能である変換サーバは、デジタル画像データをテキスト・データへ変換し、次いで、このテキスト・データは、やはり広域通信ネットワークを介してアクセス可能なロケーション・サーバへ転送され、ロケーション・サーバは、MSの概略の所在位置アドレスとテキスト・データとを利用して、データベースの中に記憶されている地域別位置情報とこの情報との比較を行い、いったんMSの正確な所在位置が決定されると、その所在位置情報はMSへ返送される。」との技術事項が読み取れる。

c 段落【0009】には、「MS12は、移動電話、個人用情報機器(PDA)、並びに、無線通信能力を備えたラップトップ・コンピュータを含む任意の別のタイプの無線通信装置であってもよい。」との技術事項が記載されている。

d 段落【0010】には、「MSに最も近い地理上の所在位置を示すデジタル画像」の内容として「ビル、道路標識を備えた交差点、陸標」が例示され、当該デジタル画像の取得手段として「デジタル・カメラ13」が挙げられている。また、段落【0010】には、「デジタル・カメラを制御してカメラの位置を決め、自動車の運転中例えば道路標識などの画像を受信して、適切なデジタル画像の取得を行うことも可能である。」とも記載されている。
以上より、段落【0010】から、「MSに最も近い地理上の所在位置を示すデジタル画像は、デジタル・カメラ13を使用して得られる、ビル、道路標識、陸標などであってよい。」との技術事項が読み取れる。

e 段落【0011】に記載されているとおり、「LS」は「ロケーション・サーバ」であるから、段落【0012】より、「ロケーション・サーバからMSへ返送される所在位置情報は、MS内に組み込まれているディスプレイに表示される図(地図など)の形のものであってもよい。」との技術事項が読み取れる。

(ウ)引用例1に記載された発明
これらのことから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「通信ネットワークとのインタラクションを通じて移動機(MS)を用いて情報を取得する方法であって、
MSは、移動電話、個人用情報機器(PDA)、並びに、無線通信能力を備えたラップトップ・コンピュータを含む任意の別のタイプの無線通信装置であってもよく、
対象MSの周囲の地理上の所在位置またはMSに最も近い対象物のデジタル画像を対象移動機(MS)へ入力するが、MSに最も近い地理上の所在位置を示すデジタル画像は、デジタル・カメラ13を使用して得られる、ビル、道路標識、陸標などであってよく、次に、MSにサービスを提供する移動通信装置用ネットワークを介してデジタル画像の送信を行い、次いで、このデジタル画像は、アクセス・ポートを介して広域通信ネットワークへ送信され、広域通信ネットワークを介してアクセス可能である変換サーバは、デジタル画像データをテキスト・データへ変換し、次いで、このテキスト・データは、やはり広域通信ネットワークを介してアクセス可能なロケーション・サーバへ転送され、ロケーション・サーバは、MSの概略の所在位置アドレスとテキスト・データとを利用して、データベースの中に記憶されている地域別位置情報とこの情報との比較を行い、いったんMSの正確な所在位置が決定されると、その所在位置情報はMSへ返送され、ロケーション・サーバからMSへ返送される所在位置情報は、MS内に組み込まれているディスプレイに表示される図(地図など)の形のものであってもよい、方法。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)本願明細書(翻訳文)の段落【0023】には、「例えば、1つ又は複数のネットワーク・ベースの電子デバイス114は、ネットワーク116に結合される及び/又はその内部に提供されうる。」と記載されている。
すると、引用発明の「変換サーバ」及び「ロケーション・サーバ」は、共に「広域通信ネットワークを介してアクセス可能」であるから、本件補正発明の「少なくとも1つのネットワーク・ベースの電子デバイス」に相当する。
(イ)引用発明の「移動機(MS)」は「移動電話、個人用情報機器(PDA)、並びに、無線通信能力を備えたラップトップ・コンピュータを含む任意の別のタイプの無線通信装置」であってもよいから、本件補正発明の「携帯用電子デバイス」に相当する。
(ウ)引用発明の「対象MSの周囲の地理上の所在位置またはMSに最も近い対象物」は、「ビル、道路標識、陸標など」であるから、本件補正発明の「前記携帯用電子デバイスの位置における、あるいはその近くの、少なくとも1つの可視環境特徴」に相当する。
(エ)引用発明において、「対象移動機(MS)へ入力」される「ビル、道路標識、陸標など」の「対象MSの周囲の地理上の所在位置またはMSに最も近い対象物のデジタル画像」は、「デジタル・カメラ13を使用して得」られたものであって、MSの所在位置における可視環境特徴に対応していることは明らかであるから、本件補正発明の「前記携帯用電子デバイスの位置における、あるいはその近くの、少なくとも1つの可視環境特徴に対応する画像情報及び音声情報を具備する」「センサリー入力情報」とは、「前記携帯用電子デバイスの位置における、あるいはその近くの、少なくとも1つの可視環境特徴に対応する画像情報を具備する」「センサリー入力情報」の点で共通する。
(オ)引用発明における「MS内に組み込まれているディスプレイに表示される図(地図など)」の情報が、本件補正発明における「ローカル・マップ情報」に相当する。同様に、引用発明における「地図」が、本件補正発明における「ローカル・マップ」に相当する。
(カ)引用発明において、「広域通信ネットワークを介してアクセス可能」な「ロケーション・サーバ」において「いったんMSの正確な所在位置が決定される」と、その「所在位置情報」が「MSへ返送され、ロケーション・サーバからMSへ返送される所在位置情報は、MS内に組み込まれているディスプレイに表示される図(地図など)の形のもの」であることが、本件補正発明の「通信ネットワークを介して、前記携帯用電子デバイスに前記ローカル・マップ情報の少なくとも一部を表わす1つ又は複数の電子信号を送信すること」に相当する。
(キ)引用発明において「変換サーバ」により変換された「ビル、道路標識、陸標など」のテキスト・データがMSの所在位置における可視環境特徴と関連していることは明らかであるから、引用発明において、「広域通信ネットワークを介してアクセス可能である変換サーバは、デジタル画像データをテキスト・データへ変換」することと、本件補正発明の「前記少なくとも1つのネットワーク・ベースの電子デバイスを用いて、前記画像情報及び前記音声情報に、少なくとも部分的に基づいて、テキストのメタデータを決定することと、ここにおいて前記テキストのメタデータの少なくとも一部は、前記少なくとも1つの可視環境特徴と関連する」こととは、「前記少なくとも1つのネットワーク・ベースの電子デバイスを用いて、前記画像情報に、少なくとも部分的に基づいて、テキストのメタデータを決定することと、ここにおいて前記テキストのメタデータの少なくとも一部は、前記少なくとも1つの可視環境特徴と関連する」点で共通する。
(ク)引用発明において、「テキスト・データ」が「やはり広域通信ネットワークを介してアクセス可能なロケーション・サーバへ転送され、ロケーション・サーバは、MSの概略の所在位置アドレスとテキスト・データとを利用して、データベースの中に記憶されている地域別位置情報とこの情報との比較を行い、いったんMSの正確な所在位置が決定されると、その所在位置情報はMSへ返送され、ロケーション・サーバからMSへ返送される所在位置情報は、MS内に組み込まれているディスプレイに表示される図(地図など)の形のものであ」ることが、本件補正発明の「前記テキストのメタデータに少なくとも部分的に基づいて、前記ローカル・マップ情報を得ること」に相当する。
(ケ)引用発明において「MSへ返送される所在位置情報」を「MS内に組み込まれているディスプレイに表示される」「地図」の形で提供することと、本件補正発明における「ローカル・マップ及び位置特有の注釈付きデータを提供する」こととは、「ローカル・マップを提供する」点で共通する。
(コ)引用発明について上記(エ)ないし(ク)に記載した一連の事項は、「デジタル・カメラ13を使用して得」られた「ビル、道路標識、陸標など」の「対象MSの周囲の地理上の所在位置またはMSに最も近い対象物のデジタル画像」を、「対象移動機(MS)へ入力」し、「変換サーバ」で該「デジタル画像データをテキスト・データへ変換」し、「ロケーション・サーバ」において「MSの概略の所在位置アドレスとテキスト・データとを利用して」、「MSの正確な所在位置」を「決定し」、その「所在位置情報」が「MS内に組み込まれているディスプレイに表示される図(地図など)の形」で「MSへ返送され」ることを表しているから、次の相違点は別として、本件補正発明の「前記センサリー入力情報に少なくとも部分的に基づいて、ローカル・マップ情報を得ること」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「少なくとも1つのネットワーク・ベースの電子デバイスを用いて、
携帯用電子デバイスと関連するセンサリー入力情報を表わす1つ又は複数の電子信号を得ることと、前記センサリー入力情報は、前記携帯用電子デバイスの位置における、あるいはその近くの、少なくとも1つの可視環境特徴に対応する画像情報を具備する;
前記センサリー入力情報に少なくとも部分的に基づいて、ローカル・マップ情報を得ることと;
通信ネットワークを介して、前記携帯用電子デバイスに前記ローカル・マップ情報の少なくとも一部を表わす1つ又は複数の電子信号を送信することと;
前記少なくとも1つのネットワーク・ベースの電子デバイスを用いて、
前記画像情報に、少なくとも部分的に基づいて、テキストのメタデータを決定することと、ここにおいて前記テキストのメタデータの少なくとも一部は、前記少なくとも1つの可視環境特徴と関連する;
前記テキストのメタデータに少なくとも部分的に基づいて、前記ローカル・マップ情報を得ることと;
を具備する、
ローカル・マップを提供するための方法。」

【相違点1】
本件補正発明は、「センサリー入力情報」が「前記携帯用電子デバイスの位置における、あるいはその近くの、少なくとも1つの可視環境特徴に対応する画像情報及び音声情報を具備」し、「前記画像情報及び前記音声情報に、少なくとも部分的に基づいて、テキストのメタデータを決定」し、「ここにおいて前記テキストのメタデータの少なくとも一部は、前記少なくとも1つの可視環境特徴と関連する」のに対し、引用発明では、「デジタル・カメラ13を使用して得」られた、「対象移動機(MS)へ入力」される情報(本件補正発明における「センサリー入力情報」に相当する。以下、同様。)が「ビル、道路標識、陸標など」の「対象MSの周囲の地理上の所在位置またはMSに最も近い対象物のデジタル画像」(前記携帯用電子デバイスの位置における、あるいはその近くの、少なくとも1つの可視環境特徴に対応する画像情報)であって、「音声情報」については示されておらず、また、引用発明では、「ビル、道路標識、陸標など」の「対象MSの周囲の地理上の所在位置またはMSに最も近い対象物のデジタル画像データ」を「変換サーバ」により「テキスト・データへ変換」しているものの、「ビル、道路標識、陸標など」の「対象MSの周囲の地理上の所在位置またはMSに最も近い対象物」の「音声情報」をテキスト・データへ変換することは示されていない点。

【相違点2】
本件補正発明は、「前記ローカル・マップ情報は、エリアのグラフィカル・デジタル説明、地理的なタグを有するポイント・オブ・インタレスト情報、無線ビーコン・デバイスに関連する情報のようなコンテクスチュアル情報を含む、ローカル・マップ及び位置特有の注釈付きデータを提供するための方法」であるのに対し、引用発明では、「所在位置情報」を「MS内に組み込まれているディスプレイに表示される図(地図など)の形」で提供する方法が示されているにすぎない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
例えば、特開2004-78451号公報に、端末装置の位置情報の測位を可能とするための操作として「端末装置の音声入力手段から端末装置周辺の景観中の住居表示情報を入力するという簡単な操作」(段落【0105】)及び「端末装置の画像入力手段から端末装置周辺の景観中の住居表示画像情報を入力するという簡単な操作」(段落【0106】)が記載されているように、端末装置の位置情報の測位を可能とするための、端末装置周辺の景観中の情報(「携帯用電子デバイスの位置における、あるいはその近くの、少なくとも1つの可視環境特徴に対応する」情報)を、「画像入力手段」(センサリー入力)から入力された「画像情報」及び「音声入力手段」(センサリー入力)から入力された「音声」(音声情報)とすることは、周知の事項である。
よって、引用発明において、「対象移動機(MS)へ入力」される情報(センサリー入力情報)を「デジタル・カメラ13を使用して得」られた「ビル、道路標識、陸標など」の「対象MSの周囲の地理上の所在位置またはMSに最も近い対象物のデジタル画像」(前記携帯用電子デバイスの位置における、あるいはその近くの、少なくとも1つの可視環境特徴に対応する画像情報)及び「音声入力手段」から入力された「音声」とし、また、「ビル、道路標識、陸標など」の「対象MSの周囲の地理上の所在位置またはMSに最も近い対象物」の「デジタル画像データ」及び「音声」を、「変換サーバ」(前記特開2004-78451号公報の段落【0040】や、VOICE SELF SERVICE、音声認識とGIS(地理情報システム)を連携し快適なナビゲーション環境を提供するボイスマップナビ^(TM)、Computer TELEPHONY、株式会社リックテレコム、第5巻、第11号、2002年10月20日、p.82(中欄第16?17行の「1つは、現在地などの入力操作に音声認識を用いたことだ。」参照。)に記載されているとおり、この場合、「変換サーバ」は「音声認識」により文字列情報を抽出することはいうまでもないことである。)により、MSの所在位置と関連する「テキスト・データへ変換」して、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者か容易になし得たことである。

イ 相違点2について
位置情報に基づき、沿道の目標物や交差点などをビジュアルに表示した道案内、施設を地図上に表示する際に使用するランドマーク情報及び位置情報を含む、関心地点を表すPOI(Point Of Interest)データ、無線アクセスポイントに関連する情報、及び付近にある店舗等の案内情報を地図と併せて提供する(ローカル・マップ情報は、エリアのグラフィカル・デジタル説明、地理的なタグを有するポイント・オブ・インタレスト情報、無線ビーコン・デバイスに関連する情報のようなコンテクスチュアル情報を含む、ローカル・マップ及び位置特有の注釈付きデータを提供する)ことは周知の事項である(例えば、前記VOICE SELF SERVICE、音声認識とGIS(地理情報システム)を連携し快適なナビゲーション環境を提供するボイスマップナビ^(TM)、Computer TELEPHONY、株式会社リックテレコム、第5巻、第11号、2002年10月20日、p.82(システム概念図中の「iモード端末 FORMA端末 などの画面へ地図・案内情報の表示」との記載、右欄第13?15行の「沿道の目標物や交差点などをビジュアルに表示し、スムーズに「道案内」してくれる。」との記載。)、特開2007-43574号公報の段落【0005】、【0012】、【0059】?【0060】、前記特開2004-78451号公報の段落【0002】、【0004】参照。)。
そして、引用例1の段落【0013】には、「正確な所在位置情報」の利用例として、「MSユーザが車の運転中道に迷った場合」や「ユーザがガソリンや自動車の修理を必要とする場合、正確なMSの所在位置を利用してサービス・サーバ24にアクセスし、MS12の最も近くに位置するガソリン・スタンドやサービス・ステーションの所在位置を見つけ出してこのようなステーションへ行く方向を指示すること」が挙げられているから、引用発明において、「所在位置情報」を「MS内に組み込まれているディスプレイに表示される図(地図など)の形」で提供する際、上記のような周知の事項に係る情報も併せて提供するようにして、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知の事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本件補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成26年8月1日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし60に係る発明は、平成25年6月14日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし60に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項37に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項37に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及びその記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、
ア 少なくとも部分的に基づいて、テキストのメタデータを決定する情報について、「前記画像情報及び前記音声情報」と限定されていたところを、「前記画像情報及び/又は前記音声情報」とし、
イ 「ローカル・マップ情報」についての「前記ローカル・マップ情報は、エリアのグラフィカル・デジタル説明、地理的なタグを有するポイント・オブ・インタレスト情報、無線ビーコン・デバイスに関連する情報のようなコンテクスチュアル情報を含む」との事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定及び他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-17 
結審通知日 2015-04-21 
審決日 2015-05-11 
出願番号 特願2011-554239(P2011-554239)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01S)
P 1 8・ 121- Z (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清藤 弘晃中村 説志河内 悠  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 清水 稔
堀 圭史
発明の名称 ローカル・マップ及び位置特有の注釈付きデータを提供するための人間援助型の技術  
代理人 河野 直樹  
代理人 井関 守三  
代理人 堀内 美保子  
代理人 井上 正  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 佐藤 立志  
代理人 福原 淑弘  
代理人 砂川 克  
代理人 岡田 貴志  
代理人 野河 信久  
代理人 峰 隆司  

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