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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1306002 |
審判番号 | 不服2014-14381 |
総通号数 | 191 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-07-24 |
確定日 | 2015-09-28 |
事件の表示 | 特願2010-195600「情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月15日出願公開、特開2012- 53657〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成22年9月1日を出願日とする出願であって, 平成25年4月23日付けで審査請求がなされ, 平成26年1月7日付けで拒絶理由通知(同年1月9日発送)がなされ, これに対して同年3月6日付けで意見書が提出されると共に手続補正書が提出されたが,同年5月1日付けで拒絶査定(同年5月7日謄本送達)がなされた。 これに対して,「原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする,との審決を求める。」との請求の趣旨で,平成26年7月24日付けで審判請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に記載された発明(以下,「本願発明」という。)は,上記平成26年3月6日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「変換前のソースプログラムである旧ソースプログラムに対してマイグレーションを行うことにより得られた変換後のソースプログラムである新ソースプログラムが格納される新ソースプログラム格納部と, 前記新ソースプログラムへの変換開始後に,一以上の関数が修正された前記旧ソースプログラムである修正ソースプログラムが格納される修正ソースプログラム格納部と, 前記修正ソースプログラムに含まれる関数のうちの,前記旧ソースプログラムの前記新ソースプログラムへの変換開始後に修正された関数の識別情報である修正関数識別情報を取得する修正関数識別情報取得部と, 前記修正ソースプログラム内の,前記修正関数識別情報取得部が取得した修正関数識別情報が示す関数を変換する関数変換部と, 前記修正関数識別情報取得部が取得した修正関数識別情報が示す関数に対応した新ソースプログラム内の関数を検出する修正箇所検出部と, 前記修正箇所検出部が検出した関数を,前記関数変換部が変換した関数で更新する関数更新部とを備えた情報処理装置。」 3.引用文献 本願出願前に頒布され,原審の拒絶査定の理由である上記平成26年1月7日付けの拒絶理由通知において引用された,特開平2-245875号公報(平成2年10月1日出願公開,以下,「引用文献」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) A 「同一情報を日本語表現と英語表現のように異なる表現形式で蓄積した情報資源1,2を,それぞれ管理する情報資源制御部3,4を備えた情報処理システムに於いて,情報資源1,2の何れが一方の変更差分情報を,変換単位等の差分抽出条件に従って抽出する変更差分抽出部5と,前記情報資源1,2の対応関係を管理する対応関係管理部6と,一方の表現形式から他方の表現形式に変換する情報資源変換処理部7とを設け,変更差分情報抽出部5で抽出した変更差分情報を,情報資源変換処理部7に於いて一方から他方の表現形式に変換し,対応関係管理部6を参照して,変換された変更差分情報により他方の情報資源の変更処理を行うと共に,その変更処理によって情報質aX,2間の対応関係に変更が生じた時は,その対応関係を更新するものである。」(2頁左下欄15行?右下欄10行) B 「情報資源1,2の対応関係を,例えば,プログラムについては1実行文,文書では1文(1フレーズ)等の情報種別に対応した変換単位毎に,対応関係管理部6に於いて管理している。そして,情報資源1の内容の一部を変更した場合,変更差分情報抽出部5は,情報資源制御部3を介して前述の変換単位毎に,変更内容とその位置情報とからなる変更差分情報を抽出する。 情報資源変換処理部7は,抽出された変更差分情報を一方の表現形式から他方の表現形式に変換し,対応関係管理部6による一方の情報資源1と他方の情報資源2との対応関係に応じて,他方の情報資源2の内容の一部を更新し,この更新により対応関係が変化する場合は,対応管理部6の内容も更新する。」(2頁右下欄18行?3頁左上欄12行) C 「又最初に日本語表現又は英語表現の何れか一方の表現形式によるプログラムを作成し,機械翻訳手段等からなる情報資源変換処理部17により,1実行文等の変換単位毎に他方の表現形式によるプログラムに変換して,他方の情報資源に蓄積し,且つ対応関係管理部16に,一方と他方との情報資源11,12の位置関係,この場合は行番号関係を対応させて格納する。例えば,一方の情報資源11の内容がIIA,他方の情報資源12の内容が12Aにそれぞれ示す場合,行番号がそれぞれ対応するから,対応関係管理部16の内容は16Aに示すものとなる。 前述のように,同一内容で表現形式が異なるプログラムからなる情報資源11,12が構成された情報処理システムに於いて,例えば,一方の情報資源11の行番号300の内容「Δ○××」を「××××」に変更して,11Bに示す内容とした場合,変換単位を行番号の100,200と,300?500とすると,この情報資源11から情報資源制御部13を介して変更差分情報抽出部15は,変更した行番号300を含む変換単位の行番号300?500を位置情報とし,且つその内容を含めた変更差分情報を抽出し,変換前変更差分情報としてバッファ部18に加える。又行番号等の対応関係の変更の有無を判断し,変更があれば,情報資源11側の行番号を変更する。 情報資源変換処理部17は,バッファ部18の日本語表現の変換前変更差分情報を,英語表現に変換し,且つ対応関係管理部16を検索して,情報資源11の行番号300?500に対応する行番号300?500を位置情報とした変換済み変更差分情報をバッファ部19に加える。 このバッファ部19からの変換済み変更差分情報が,情報資源制御部14を介して情報資源12に加えられ,行番号300?500の内容が更新される。」(3頁左下欄1行?右下欄16行) D 「前述の実施例は,日本語表現と英語表現とによるプログラムの場合について示すものであるが,他の言語表現の場合にも適用することができる。 又3以上の言語表現を用いた3以上の同一性を維持する情報資源を有するシステムに於いても適用することができる。又各種のデータベース等についても,それぞれ異なる表現形式とした場合に適用することができる。又異なる表現形式として,言語表現のみでなく,ソースプログラムとオブジェクトプログラムとのような同一情報ではあるが,表現形式が異なる情報資源に対しても適用することができる。」(4頁右下欄2?13行) ここで,上記引用文献に記載されている事項を検討する。 (1)上記Bの「情報資源1の内容の一部を変更した場合」との記載, 上記Cの「最初に日本語表現又は英語表現の何れか一方の表現形式によるプログラムを作成し,機械翻訳手段等からなる情報資源変換処理部17により,1実行文等の変換単位毎に他方の表現形式によるプログラムに変換して,他方の情報資源に蓄積し」,『同一内容で表現形式が異なるプログラムからなる情報資源11,12が構成された情報処理システムに於いて,例えば,一方の情報資源11の行番号300の内容「Δ○××」を「××××」に変更し』との記載からすると, 引用文献には, 「最初に一方の表現形式によるプログラムを変換した,他の表現形式によるプログラムを蓄積した他方の情報資源」と, 「最初に他の表現形式によるプログラムに変換された後に,その一部が変更された一方の表現形式によるプログラムを蓄積した一方の情報資源」とが記載されていると解される。 (2)上記Bの「情報資源1,2の対応関係を,例えば,プログラムについては1実行文,文書では1文(1フレーズ)等の情報種別に対応した変換単位毎に,対応関係管理部6に於いて管理している。」,「情報資源1の内容の一部を変更した場合,変更差分情報抽出部5は,情報資源制御部3を介して前述の変換単位毎に,変更内容とその位置情報とからなる変更差分情報を抽出する。」との記載, 上記Cの『一方の情報資源11の行番号300の内容「Δ○××」を「××××」に変更して,11Bに示す内容とした場合,変換単位を行番号の100,200と,300?500とすると,この情報資源11から情報資源制御部13を介して変更差分情報抽出部15は,変更した行番号300を含む変換単位の行番号300?500を位置情報とし,且つその内容を含めた変更差分情報を抽出し,変換前変更差分情報としてバッファ部18に加える。』との記載からすると, 変更した行番号をそのまま位置情報とするのではなく,変更した行番号を含む「変換単位」の位置情報を抽出していることが読み取れ, さらに,「変換単位」は,行番号に限定されない情報種別に対応する情報であることが読み取れるから, 引用文献には, 「変更された一方の表現形式によるプログラム内の複数の変換単位から,変更した部分を含む変換単位の位置情報を抽出する変更差分情報抽出部」が記載されていると解される。 (3)上記Aの「一方の表現形式から他方の表現形式に変換する情報資源変換処理部7」との記載, 上記Bの「情報資源1の内容の一部を変更した場合,変更差分情報抽出部5は,情報資源制御部3を介して前述の変換単位毎に,変更内容とその位置情報とからなる変更差分情報を抽出する。 情報資源変換処理部7は,抽出された変更差分情報を一方の表現形式から他方の表現形式に変換し」との記載, 上記Cの「情報資源変換処理部17により,1実行文等の変換単位毎に他方の表現形式によるプログラムに変換し」との記載からすると, 引用文献には, 「上記位置情報が示す変更された変換単位を,一方の表現形式から他方の表現形式に変換する情報資源変換処理部」が記載されていると解される。 (4)上記Bの「情報資源1,2の対応関係を,例えば,プログラムについては1実行文,文書では1文(1フレーズ)等の情報種別に対応した変換単位毎に,対応関係管理部6に於いて管理している。」との記載, 上記Cの「情報資源変換処理部17は,バッファ部18の日本語表現の変換前変更差分情報を,英語表現に変換し,且つ対応関係管理部16を検索して,情報資源11の行番号300?500に対応する行番号300?500を位置情報とした変換済み変更差分情報をバッファ部19に加える。」との記載からすると, 「番号300?500は」は「一方の情報資源」及び「他方の情報資源」の「変換単位」を識別する情報といえ, 情報資源変換処理部は,一方の情報資源の変換単位に対応する他方の情報資源の変換単位の位置情報を検出しているといえるから, 引用文献には, 上記「情報資源変換処理部」は,「一方の情報資源の変更された変換単位に対応する他方の情報資源の変換単位を検出する」ことが記載されていると解される。 (5)上記Cの「情報資源11の行番号300?500に対応する行番号300?500を位置情報とした変換済み変更差分情報をバッファ部19に加える。このバッファ部19からの変換済み変更差分情報が,情報資源制御部14を介して情報資源12に加えられ,行番号300?500の内容が更新される。」との記載からすると, 上記「情報資源12」は,「他方の情報資源」であり, 上記「行番号300?500」は,変換単位の位置情報であるから, 引用文献には, 「一方の情報資源の変更された変換単位に対応する他方の情報資源の変換単位を変換済の変換単位で更新する情報資源制御部」が記載されていると解される。 (6)上記Aの「同一情報を日本語表現と英語表現のように異なる表現形式で蓄積した情報資源1,2を,それぞれ管理する情報資源制御部3,4を備えた情報処理システムに於いて,情報資源1,2の何れが一方の変更差分情報を,変換単位等の差分抽出条件に従って抽出する変更差分抽出部5と,前記情報資源1,2の対応関係を管理する対応関係管理部6と,一方の表現形式から他方の表現形式に変換する情報資源変換処理部7とを設け」との記載からすると, 引用文献には, 上記(1)?(5)で検討した「他方の情報資源」,「一方の情報資源」,「変更差分情報抽出部」,「情報資源変換処理部」及び「情報資源制御部」を備えた「情報処理システム」が記載されていると解される。 (7)以上,(1)?(6)で検討した事項を踏まえると,引用文献には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「最初に一方の表現形式によるプログラムを変換した,他の表現形式によるプログラムを蓄積した他方の情報資源と, 最初に他の表現形式によるプログラムに変換された後に,その一部が変更された一方の表現形式によるプログラムを蓄積した一方の情報資源と, 変更された一方の表現形式によるプログラム内の複数の変換単位から,変更した部分を含む変換単位の位置情報を抽出する変更差分情報抽出部と, 上記位置情報が示す変更された変換単位を,一方の表現形式から他方の表現形式に変換し, 一方の情報資源の変更された変換単位に対応する他方の情報資源の変換単位を検出する情報資源変換処理部と, 一方の情報資源の変更された変換単位に対応する他方の情報資源の変換単位を変換済の変換単位で更新する情報資源制御部と を備えた情報処理システム。」 4.参考文献 (1)本願出願前に頒布され,原審の拒絶査定の理由である上記平成26年1月7日付けの拒絶理由通知において引用された特許第3494376号公報(平成16年2月9日発行,以下,「参考文献1」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) E 「【請求項1】 旧ソースプログラムの命令パターンを示す情報である第一命令パターン情報と新ソースプログラムの命令パターンを示す情報である第二命令パターン情報の対を1以上,記憶部に格納しており, 旧ソースプログラムにおいて,前記1以上の第一命令パターン情報が何回出現するかを,解析手段を用いて解析する解析ステップと, 前記解析ステップにおける解析結果を,出力手段を用いて出力する解析結果出力ステップと, 前記解析ステップにおいて第一命令パターン情報の出現回数が,所定回数(所定回数は2以上である)以上であると解析された第一命令パターン情報に対応する旧ソースプログラムの記述箇所を,当該第一命令パターン情報と対になる第二命令パターン情報に対応するように,変換手段を用いて変換する命令パターン変換ステップと, 前記命令パターン変換ステップにおいて前記旧ソースプログラムを変換した結果である新ソースプログラムを,出力手段を用いて出力する新プログラム出力ステップと, 前記解析ステップにおいて第一命令パターン情報の出現回数が前記所定回数未満であると解析された第一命令パターン情報に対応する旧ソースプログラムの記述箇所に対して,ユーザの手作業による当該旧ソースプログラムの記述箇所を新ソースプログラムに変更する,入力手段を用いた入力を受け付けるステップを具備する,ある環境で動作していたプログラムを他の環境で動作させるためのプログラム自動変換方法。」 (2)本願出願前に頒布され,原審の拒絶査定の理由である上記平成26年1月7日付けの拒絶理由通知において引用された特開平9-62498号公報(平成9年3月7日出願公開,以下,「参考文献2」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) F 「【0013】まず最初に,ソースプログラム1をソース解析部2に入力する。ソース解析部2では,その記述言語の仕様上,論理的に意味を持たないコメント部分を削除し,論理単位である関数に分割する。その論理単位を識別するために関数名などの識別子を選択する。その論理単位の記述内容を論理的に表現する論理数値として,空白や改行文字など,追加,削除によりプログラムの論理的意味が変化しない文字を無視して,その論理単位の先頭から文字数と,その位置にある文字のアスキーコードを掛け合わせた数値を全て加算した結果を用いるものとする。 【0014】ソース解析部2で生成された論理単位を識別する識別子と論理数値の組を,比較部3に渡す。比較部3は,ソース解析部2からの論理単位を識別する識別子と論理数値の組と,数値保存部4に保存された該識別子と論理数値の組を比較し,変更があったか否かを判定し結果表示部5に表示する。」 (3)本願出願前に頒布された特開2004-38297号公報(平成16年2月5日出願公開,以下,「参考文献3」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) G 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は,プログラムソースの書式を変換するためのプログラム書式変換装置および変換プログラムに関するものである。」 H 「【0015】 さらに,本発明のプログラム書式変換装置は,上記各発明のプログラム書式変換装置に加え,第1の変換手段を次のようにしたものである。第1の変換手段は,プログラムソース内の関数における各行の式を所定のタグで囲み,所定のタグで囲まれたすべての式を,その関数名を含むタグで囲むことで,関数の定義の書式をマークアップ言語へ変換する。」 I 「【0027】 さらに,本発明のプログラム書式変換装置は,上記各発明のプログラム書式変換装置に加え,第2の変換手段を次のようにしたものである。第2の変換手段は,マークアップ言語のデータ内で関数名を含むタグで囲まれている部分を,第2のプログラミング言語の文法に従ったその関数の定義に変換する。」 5.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「最初に一方の表現形式によるプログラムを変換した,他の表現形式によるプログラムを蓄積した他方の情報資源」は,変換されたプログラムを格納する手段であるから,本願発明の「変換前のソースプログラムである旧ソースプログラムに対してマイグレーションを行うことにより得られた変換後のソースプログラムである新ソースプログラムが格納される新ソースプログラム格納部」に対応するものといえる。 上記Cの記載からすると,引用発明の「プログラム」は,人間が認識可能な表現形式の行番号を含むプログラムであるから,ソースプログラムに相当するものである。 本願発明の「マイグレーション」は,引用発明のプログラムの表現形式の「変換」の一種であるといえる。 引用発明の「一方の表現形式によるプログラム」は,最初の変換の対象となるプログラムであるから,本願発明の「変換前のソースプログラム」,「旧ソースプログラム」に対応するものといえる。 引用発明の「他の表現形式によるプログラム」は,最初の変換の結果となるプログラムであるから,本願発明の「変換後のソースプログラム」,「新ソースプログラム」に対応するものといえる。 そうすると,引用発明の「他方の情報資源」と,本願発明の「新ソースプログラム格納部」とは,後記する点で相違するものの, “変換前のソースプログラムである旧ソースプログラムに対して変換を行うことにより得られた変換後のソースプログラムである新ソースプログラムが格納される新ソースプログラム格納部” である点で共通しているといえる。 (2)引用発明の「最初に他の表現形式によるプログラムに変換された後に,その一部が変更された一方の表現形式によるプログラムを蓄積した一方の情報資源」は,変換後に変更された変換元プログラムを格納する手段であるから,本願発明の「前記新ソースプログラムへの変換開始後に,一以上の関数が修正された前記旧ソースプログラムである修正ソースプログラムが格納される修正ソースプログラム格納部」に対応するものといえる。 引用発明の「変更された一方の表現形式によるプログラム」は,「他の表現形式によるプログラム」への変換開始後に修正されたものであるから,本願発明の「修正ソースプログラム」に対応するものといえる。 そうすると,引用発明の「一方の情報資源」と,本願発明の「修正ソースプログラム格納部」とは,後記する点で相違するものの, “前記新ソースプログラムへの変換開始後に,修正された前記旧ソースプログラムである修正ソースプログラムが格納される修正ソースプログラム格納部” である点で共通しているといえる。 (3)引用発明の「一方の表現形式によるプログラム内の複数の変換単位から,変更した部分を含む変換単位の位置情報を抽出する変更差分情報抽出部」は,プログラム中の変更された部分を特定する手段であるから, 本願発明の「前記修正ソースプログラムに含まれる関数のうちの,前記旧ソースプログラムの前記新ソースプログラムへの変換開始後に修正された関数の識別情報である修正関数識別情報を取得する修正関数識別情報取得部」に対応するものといえる。 本願発明の「関数」は,引用発明の「変換単位」の一種であるといえる。 引用発明の「位置情報」は,「変換単位」を識別する情報といえる。 そうすると,引用発明の「変更差分情報抽出部」と,本願発明の「修正関数識別情報取得部」とは,後記する点で相違するものの, “修正ソースプログラムに含まれる変換単位のうちの,旧ソースプログラムの新ソースプログラムへの変換開始後に修正された変換単位の識別情報を取得する手段” である点で共通しているといえる。 (4)引用発明の「上記位置情報が示す変更された変換単位を,一方の表現形式から他方の表現形式に変換」する「情報資源変換処理部」は, 本願発明の「前記修正ソースプログラム内の,前記修正関数識別情報取得部が取得した修正関数識別情報が示す関数を変換する関数変換部」に対応するものといえる。 引用発明の「位置情報」は,「変換単位」を識別する情報であり,本願発明の上記「修正関数識別情報取得部」に対応する引用発明の上記「変更差分情報抽出部」により取得した情報である。 そうすると,引用発明の「情報資源変換処理部」と,本願発明の「関数変換部」とは,後記する点で相違するものの, “修正ソースプログラム内の,修正された変換単位の識別情報を取得する手段が取得した前記変換単位の識別情報が示す変換単位を変換する手段” である点で共通しているといえる。 (5)引用発明の「一方の情報資源の変更された変換単位に対応する他方の情報資源の変換単位を検出」する「情報資源変換処理部」は, 本願発明の「前記修正関数識別情報取得部が取得した修正関数識別情報が示す関数に対応した新ソースプログラム内の関数を検出する修正箇所検出部」に対応するものといえる。 引用発明の「他方の情報資源」は,上記(1)で検討したように,本願発明の「新ソースプログラム」に対応する「他の表現形式によるプログラム」を蓄積する手段であるから, 引用発明の「他方の情報資源」は変更された変換単位に対応する新ソースプログラム内の変換単位を検出するものといえる。 そうすると,引用発明の「情報資源変換処理部」と,本願発明の「修正箇所検出部」とは,後記する点で相違するものの, “前記変更された変換単位の識別情報が示す変換単位に対応した新ソースプログラム内の変換単位を検出する手段” である点で共通しているといえる。 (6)引用発明の「一方の情報資源の変更された変換単位に対応する他方の情報資源の変換単位を変換済の変換単位で更新する情報資源制御部」は, 本願発明の「前記修正箇所検出部が検出した関数を,前記関数変換部が変換した関数で更新する関数更新部」に対応するものといえる。 引用発明の「一方の情報資源の変更された変換単位に対応する他方の情報資源の変換単位」は,本願発明の「修正箇所検出部」に対応する引用発明の「情報資源変換処理部」により検出された変換単位である。 そうすると,引用発明の「情報資源変換処理部」と,本願発明の「修正箇所検出部」とは,後記する点で相違するものの, “前記検出した変換単位を,前記変換した変換単位で更新する手段” である点で共通しているといえる。 (7)上記(1)?(6)を踏まえると,引用発明の「情報処理システム」の「他方の情報資源」,「一方の情報資源」,「変更差分情報抽出部」,「情報資源変換処理部」,「情報資源制御部」は, 本願発明の「情報処理装置」の「新ソースプログラム格納部」,「修正ソースプログラム格納部」,「修正関数識別情報取得部」,「関数変換部」及び「修正箇所検出部」,「関数更新部」にそれぞれ対応するものといえる。 以上から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 (一致点) 「変換前のソースプログラムである旧ソースプログラムに対して変換を行うことにより得られた変換後のソースプログラムである新ソースプログラムが格納される新ソースプログラム格納部と, 前記新ソースプログラムへの変換開始後に,修正された前記旧ソースプログラムである修正ソースプログラムが格納される修正ソースプログラム格納部と, 修正ソースプログラムに含まれる変換単位のうちの,旧ソースプログラムの新ソースプログラムへの変換開始後に修正された変換単位の識別情報を取得する手段と, 修正ソースプログラム内の,修正された変換単位の識別情報を取得する手段が取得した前記変換単位の識別情報が示す変換単位を変換する手段と, 前記変更された変換単位の識別情報が示す変換単位に対応した新ソースプログラム内の変換単位を検出する手段と, 前記検出した変換単位を,前記変換した変換単位で更新する手段と を備えた情報処理装置」 (相違点1) 本願発明では,新ソースプログラムが旧ソースプログラムに対して「マイグレーション」を行うことにより得られたものであるのに対して, 引用発明では,そのような構成に限定されていない点 (相違点2) 本願発明では,「関数」を変換単位としているのに対して, 引用発明では,そのような構成に限定されていない点 6.当審の判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 本願明細書の段落【0016】には「ここでの変換とは,例えば,旧ソースプログラムを,言語や言語の仕様や系統の異なる新ソースプログラムに変換する変換であり,いわゆるマイグレーションと呼ばれるものである。」と記載されており, 本願発明の「マイグレーション」は,言語や言語の仕様や系統の異なるソースプログラムに変換することであると認められる。 一方,引用発明の「変換」とは,上記Cに記載されるように「同一内容で表現形式が異なるプログラムからなる」2つの情報資源間の変換であり, このような同一内容のプログラムの表現形式の変換は,プログラム言語の仕様や系統の変換の一種といえる。 また,上記Dに記載されるように,引用発明の「変換」は,特定の言語表現に限定されず,表現形式が異なる情報一般に適用可能な処理である。 そして,プログラムに対する変換として,言語や言語の仕様や系統の異なるソースプログラムに変換する変換,すなわち,「マイグレーション」を採用することは,例えば参考文献1(上記Eを参照),参考文献3(上記G,H,Iを参照)に記載されるように,本願出願前には,プログラム言語処理の技術分野において適宜に採用されていた周知技術であった。 そうすると,引用発明1のプログラムの「変換」に,上記周知技術を適用して,「マイグレーション」とすること,すなわち,相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 よって,相違点1は格別なものではない。 (2)相違点2について 引用発明の「変換単位」は,上記Bの「情報種別に対応した変換単位」との記載,上記Cの「変換単位を行番号の100,200と,300?500とする」との記載からすると,情報種別に対応した変換単位を採用可能であり,例えば,プログラム中の複数行のまとまりを変換単位として採用できるものである。 プログラム言語において,修正された部分の識別処理やマイグレーション処理等の,各種処理の単位として「関数」を採用することは,例えば参考文献2(上記Fを参照),参考文献3(上記G,H,Iを参照)に記載されるように,本願出願前には,プログラム言語処理の技術分野において適宜に採用されていた周知技術であった。 そうすると,上記周知技術を参酌して,引用発明の「変換単位」として「関数」を採用すること,すなわち,相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 よって,相違点2は格別なものではない。 (3)小括 上記で検討したごとく,相違点1及び相違点2は格別のものではなく,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び参考文献1?3に記載の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 7.むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-07-30 |
結審通知日 | 2015-07-31 |
審決日 | 2015-08-17 |
出願番号 | 特願2010-195600(P2010-195600) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂庭 剛史 |
特許庁審判長 |
高木 進 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 戸島 弘詩 |
発明の名称 | 情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム |
代理人 | 谷川 英和 |