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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1306226
審判番号 不服2013-24244  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-09 
確定日 2015-10-08 
事件の表示 特願2001-559337「平坦なパネル画像装置を有するコーンビームコンピュータ断層撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月23日国際公開、WO01/60236、平成15年 7月29日国内公表、特表2003-522576〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年2月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成12年2月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年7月6日付けで拒絶理由が通知され、平成23年1月5日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年3月8日付けで拒絶理由が通知され、同年6月10日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成24年3月7日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年6月15日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年12月27日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成25年5月9日付けで意見書が提出されたが、同年7月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、平成26年8月29日付けで上申書が提出されたものである。
その後、当審において、平成27年1月9日付けで拒絶理由が通知され、同年4月14日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
この出願の請求項1に係る発明は、平成27年4月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「放射線治療システムであって、
対象物のまわりを移動し且つ上記対象物に向かって放射線ビームを差し向ける放射線源と、
コーンビームコンピュータ断層撮像システムと、を有し、
このコーンビームコンピュータ断層撮像システムは、
上記対象物のまわりを移動し且つコーンビーム形態のX線ビームを上記対象物のまわりの多数の位置から上記対象物に向けて放射するX線源と、
上記X線ビームの少なくとも一部分が上記対象物を透過した後、このX線を受けるように位置決めされ、複数の二次元投影画像に基づいて上記対象物に関する三次元情報を含むコーンビーム画像を提供する平坦パネル画像器と、
上記放射線源が上記放射線ビームを上記対象物に差し向けている間に上記対象物が配置される支持テーブルと、を備え、
上記放射線治療システムは、上記放射線源と上記対象物との相対位置を調整することによって上記三次元情報と、計画作成用画像に含まれる計画作成用画像情報との比較に基づく上記対象物を透過する上記放射線ビームの経路を制御し、上記計画作成用画像は、上記コーンビーム画像上に重ねられ、これらの計画作成用画像とコーンビーム画像とが互いに合わせられ、上記コーンビーム画像は、上記放射線源と上記対象物との相対位置を調整する直前に提供され、
上記支持テーブルは、X方向、Y方向、及び/又はZ方向のそれぞれの上記対象物の並進が可能であり、上記支持テーブルの長手方向に延びるZ軸を中心とした回転が可能であり且つ/又は上記支持テーブルの幅方向に延びるY軸を中心とした回転が可能であり、上記放射線ビームの経路を調整するように上記三次元情報に基づいて移動することを特徴とする放射線治療システム。」

ここで、「上記支持テーブルは、X方向、Y方向、及び/又はZ方向のそれぞれの上記対象物の並進が可能であり、上記支持テーブルの長手方向に延びるZ軸を中心とした回転が可能であり且つ/又は上記支持テーブルの幅方向に延びるY軸を中心とした回転が可能であ」ることとは、「上記支持テーブルは、X方向、Y方向、及び/又はZ方向のそれぞれの上記対象物の並進が可能であ」ることと、「上記支持テーブルの長手方向に延びるZ軸を中心とした回転が可能であ」ることと、「上記支持テーブルの幅方向に延びるY軸を中心とした回転が可能であ」ることの三者が、「且つ/又は」として並列的に記載されていることから、文理上、いずれか1つの場合も含むものと解すべきである。
しかしながら、意見書においては、並進運動については必須の事項である一方で、「上記支持テーブルの長手方向に延びるZ軸を中心とした回転が可能であ」ることと、「上記支持テーブルの幅方向に延びるY軸を中心とした回転が可能であ」ることの二者のみが、「且つ/又は」として並列的に記載されているが如く主張している。
そこで、以下においては、いずれの場合も考慮しながら検討する。

第3 当審の拒絶理由通知
当審の拒絶の理由の概略は、以下のとおりである。
本願の請求項1?12に係る発明は、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平09-218939号公報及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 刊行物の記載事項
本願優先日前に頒布され、当審の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平09-218939号公報(以下、「刊行物1」という。」)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

1 「【0005】そこで、治療計画時において、撮影された計画用の画像(例えば断層像とする)上に、例えば当該画像としてなるべく不動な互いに異なる少なくとも3つの部位(例えば脊椎上の所要位置等)を特徴点(A,B,C)として指定し(図9参照)、その位置情報(位置座標)を求めておく。続いて、実際の治療時において、再度画像(位置合せ用画像であり、断層像とする)を収集し、その収集された位置合せ用画像上において、上記計画用の画像上で特徴点(A,B,C)が指定された部位に対応する部位(同一部位)に特徴点(A′,B′,C′)を指定して(図10参照)その位置情報を求める。そして、計画用の画像上の特徴点(A,B,C)と位置合せ用画像上の特徴点(A′,B′,C′)との位置を合せ(重ね合せ)、その位置合せ処理の際に要する画像平面内の2次元移動量及び回転量を算出することにより、当該患者の状態変化量が求まる(この方法をランドマーク法という)。」

2 「【0029】図1に示す放射線治療システム1は、放射線治療計画用及び画像間位置合せ用の画像を取得する例えばX線CTスキャナやX線透視撮影装置、MRI装置等の画像取得装置2と、コンピュータ回路を搭載し、画像取得装置2により取得された治療計画用画像に基づいて、放射線照射位置、放射線照射方向(照射角度)、放射線量、及び照射野(当審注:「野」は「の」の誤記と認められる。)形状等の治療計画を立てる治療計画装置3と、画像取得部2により取得された治療計画用画像及び画像間位置合せ用画像に基づいて画像間位置合せ処理を行なう画像処理装置4と、治療計画装置3により計画された治療計画データ及び画像処理装置4により生成された画像間位置合せデータに従って、例えばX線により照射治療を行なう放射線治療装置5とを備えている。この放射線治療装置4(当審注:「4」は「5」の誤記と認められる。)は、図1に示すように、被検体(患者)載置用の寝台10と、被検体の体軸(Z)方向を回転軸として回転可能な架台11と、この架台11を回転可能に支持する架台支持体12と、治療装置全体を制御する図示しない制御部とを備えている。
【0030】寝台10はその上面に天板10aを有し、図示しない駆動機構により上下動(Y軸方向)、長手方向(Z軸方向)、及び横方向(X軸方向)に当該天板10aを移動させることができる。また、寝台10は、図示しない駆動機構により、天板支柱回転及びアイソセンタを中心とした回転が可能になっている。これら寝台10の動作は、治療時の天板10aの位置決め及び放射線治療の際に必要であり、コンソールからの制御信号により制御される。
【0031】放射線治療装置1(当審注:「1」は「5」の誤記と認められる。)により治療を行なう際には、寝台10の天板10aに被検体が載置された状態で、治療計画装置3により計画された照射位置、照射方向、放射線量、及び照射野(当審注:「野」は「の」の誤記と認められる。)形状等の治療計画データに従ってコンソールを介して寝台10、架台11(回転角度等)、図示しないコリメータ等が制御されて、治療に最適な照射位置、照射方向、照射野(当審注:「野」は「の」の誤記と認められる。)形状及び最適なX線量でX線が病変部に照射され、当該病変部が治療される。」

3 「【0042】続いて、以上の処理により計画された放射線治療計画データに基づいて実際の放射線治療を行なう場合、被検体の状態変化(体の向きの違い等)や病変部の大きさの変化等により、計画時に設定された放射線方向を若干補正した方が良い場合がある。そこで、画像取得装置2により再度被検体の病変部を含む領域の画像を撮影、取得する。すなわち、画像取得装置2側に寝台10の天板10aをセットし、当該画像取得装置2により被検体の病変部を含む領域の画像間位置合せ用画像(断層像、X線透視像等)が撮影、取得される。この位置合せ用画像は、画像管理部19に送られる。」

4 「【0049】制御部15は、点B1の特徴点データが入力されると、特徴点(B1 を示すマーカー(MB1;図中△で表す)を重畳させて位置合せ用画像IB上に重畳表示する(ステップS17)。そして、制御部15は、モニタ16に関する表示制御を行ない、位置合せ用画像IB上に表示された特徴点(A,B,C)を示すマーカー(MA ,MB ,MC)を、当該特徴点(A,B,C)相互の位置関係を保ったままで例えば画像中心を軸として回転移動させることにより、当該マーカー(MA ,MB)をマーカー(MA1,MB1)に一致させる。すなわち、この処理により、マーカー(MA,MB)が指定された治療計画用画像IAとマーカー(MA1,MB1)が指定された位置合せ用画像IBとの間の位置合せが行なわれたことになる(ステップS18;図7参照)。なお、回転移動に加えて(x,y)方向への移動を行なうこともできる。」

5 「【0052】さらに、制御部15は、回転・移動後のマーカー(MA',MB',MC')(つまり、位置合せ用画像IB上の特徴点(A1,B1,C1))の位置データと治療計画用画像IA 上のマーカー(MA,MB,MC)(つまり、治療計画用画像上の特徴点(A,B,C))の位置データとをズレ量計算部21に送る。ズレ量計算部21は、送られた位置データに基づいて、治療計画用画像IAと位置合せ用画像IBとのズレ量((x,y)方向のズレ量や画像中心からの回転方向(θ)のズレ量等)を計算し、制御部15に送る。制御部15では、送られたズレ量をモニタ16の右側画面の位置合せ用画像IBの一部に重畳表示する(ステップS21;図8参照)。
【0053】そして、制御部15は、ステップS21の処理により求められたズレ量を治療装置5のコンソールに送り、処理を終了する。
【0054】治療装置5のコンソールは、保持された治療計画データの内、特に放射線照射方向(照射角度)を、送られたズレ量に基づいて補正する。そして、治療装置5のコンソールは、補正された放射線照射方向を含む治療計画データに従って、寝台10、架台11(回転角度等)、図示しないコリメータ等を制御して放射線治療を行なう。すなわち、寝台10の天板10aを治療装置5側の所定位置へ移動させた状態で、治療に最適な照射位置、照射方向、照射野(当審注:「野」は「の」の誤記と認められる。)形状及びX線量でX線を病変部に照射することができる。」

以上の記載事項から、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「放射線治療システム1であって、
被検体(患者)載置用の寝台10と、被検体の体軸(Z)方向を回転軸として回転可能な架台11と、この架台11を回転可能に支持する架台支持体12と、治療装置全体を制御する制御部とを備えている放射線治療装置5と、
放射線治療計画用及び画像間位置合せ用の画像を取得するX線CTスキャナを備え、
寝台10はその上面に天板10aを有し、駆動機構により上下動(Y軸方向)、長手方向(Z軸方向)、及び横方向(X軸方向)に当該天板10aを移動させることができ、また、寝台10は、駆動機構により、天板支柱回転及びアイソセンタを中心とした回転が可能になっていて、これら寝台10の動作は、治療時の天板10aの位置決め及び放射線治療の際に必要であり、コンソールからの制御信号により制御されるものであり、
放射線治療装置5により治療を行なう際には、寝台10の天板10aに被検体が載置された状態で、治療計画装置3により計画された照射位置、照射方向、放射線量、及び照射の形状等の治療計画データに従ってコンソールを介して寝台10、架台11(回転角度等)、コリメータ等が制御されて、治療に最適な照射位置、照射方向、照射の形状及び最適なX線量でX線が病変部に照射され、当該病変部が治療されるものであり、
実際の放射線治療を行なう場合、画像取得装置2により再度被検体の病変部を含む領域の画像を撮影、取得する、すなわち、位置合せ用画像が撮影、取得されるものであり、
計画用の画像上の特徴点と位置合せ用画像上の特徴点との位置を合せ(重ね合せ)、その位置合せ処理の際に要する画像平面内の2次元移動量及び回転量を算出することにより、当該患者の状態変化量が求まるものであり、
位置合せ用画像上の特徴点の位置データと治療計画用画像上の特徴点の位置データとをズレ量計算部21に送り、ズレ量計算部21は、送られた位置データに基づいて、治療計画用画像と位置合せ用画像とのズレ量を計算し、制御部15に送るものであり、
放射線治療装置5のコンソールは、保持された治療計画データの内、特に放射線照射方向(照射角度)を、送られたズレ量に基づいて補正し、補正された放射線照射方向を含む治療計画データに従って、寝台10、架台11(回転角度等)、コリメータ等を制御して放射線治療を行なう、すなわち、寝台10の天板10aを放射線治療装置5側の所定位置へ移動させた状態で、治療に最適な照射位置、照射方向、照射の形状及びX線量でX線を病変部に照射することができる、放射線治療システム1。」(以下、「引用発明」という。)

第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

1 引用発明の「放射線治療システム1」、「病変部」、「位置合わせ用画像」及び「治療計画用画像」が、それぞれ、本願発明の「放射線治療システム」、「対象物」、「三次元情報」及び「計画作成用画像」に相当する。

2 引用発明の「放射線治療装置5」の「被検体の体軸(Z)方向を回転軸として回転可能な架台11」に「病変部に照射する」「X線」源が設けられることは自明であるから、引用発明が備えていることが自明な上記の「X線」源が、本願発明の「対象物のまわりを移動し且つ上記対象物に向かって放射線ビームを差し向ける放射線源」に相当するといえる。

3 引用発明の「放射線治療計画用及び画像間位置合せ用の画像を取得するX線CTスキャナ」と、本願発明の「コーンビームコンピュータ断層撮像システム」とは、「コンピュータ断層撮像システム」の点で共通する。

4 引用発明の「X線CTスキャナ」が、「病変部」のまわりを移動し且つ「X線」ビームを「病変部」のまわりの多数の位置から「病変部」に向けて放射する「X線」源を備えることは自明であるから、引用発明「X線CTスキャナ」と、本願発明の「上記対象物のまわりを移動し且つコーンビーム形態のX線ビームを上記対象物のまわりの多数の位置から上記対象物に向けて放射するX線源」とは、「上記対象物のまわりを移動し且つX線ビームを上記対象物のまわりの多数の位置から上記対象物に向けて放射するX線源」を備える点で共通する。

5 引用発明の「X線CTスキャナ」が、「X線」ビームの少なくとも一部分が「病変部」を透過した後、このX線を受けるように位置決めされ、複数の二次元投影画像に基づいて「病変部」に関する三次元情報を含むコンピュータ断層画像を提供する画像器を有することは自明であるから、引用発明の「X線CTスキャナ」と、本願発明の「上記X線ビームの少なくとも一部分が上記対象物を透過した後、このX線を受けるように位置決めされ、複数の二次元投影画像に基づいて上記対象物に関する三次元情報を含むコーンビーム画像を提供する平坦パネル画像器」とは、「上記X線ビームの少なくとも一部分が上記対象物を透過した後、このX線を受けるように位置決めされ、複数の二次元投影画像に基づいて上記対象物に関する三次元情報を含む画像を提供する画像器」の点で共通する。

6 引用発明の「放射線治療装置5により治療を行なう際には」、「X線」源が「X線」ビームを病変部に差し向けていることは自明であるから、引用発明の「放射線治療装置5により治療を行なう際に」「その天板10aに被検体が載置され」る「寝台10」は、本願発明の「上記放射線源が上記放射線ビームを上記対象物に差し向けている間に上記対象物が配置される支持テーブル」に相当する。

7 引用発明の「位置合せ用画像上の特徴点の位置データと治療計画用画像上の特徴点の位置データとをズレ量計算部21に送り、ズレ量計算部21が、送られた位置データに基づいて、治療計画用画像と位置合せ用画像とのズレ量を計算し」、「放射線治療装置5のコンソールは、保持された治療計画データの内、特に放射線照射方向(照射角度)を、送られたズレ量に基づいて補正し」、そして、「放射線治療装置5のコンソール」は、「補正された放射線照射方向を含む治療計画データに従って、寝台10、架台11(回転角度等)等を制御して放射線治療を行なう、すなわち、寝台10の天板10aを放射線治療装置5側の所定位置へ移動させた状態で、治療に最適な照射位置、照射方向、照射の形状及びX線量でX線を病変部に照射することができる」ことは、本願発明の「上記放射線治療システムは、上記放射線源と上記対象物との相対位置を調整することによって上記三次元情報と、計画作成用画像に含まれる計画作成用画像情報との比較に基づく上記対象物を透過する上記放射線ビームの経路を制御」することに相当する。

8 引用発明の「計画用の画像上の特徴点と位置合せ用画像上の特徴点との位置を合せ(重ね合せ)」ることと、本願発明の「上記計画作成用画像は、上記コーンビーム画像上に重ねられ、これらの計画作成用画像とコーンビーム画像とが互いに合わせられ」ることとは、「上記計画作成用画像は、上記画像上に重ねられ、これらの計画作成用画像と画像とが互いに合わせられ」る点で共通する。

9 引用発明の「実際の放射線治療を行う場合、画像取得装置2により再度被検体の病変部を含む領域の画像を撮影、取得する、すなわち、位置合せ用画像が撮影、取得される」ことと、本願発明の「上記コーンビーム画像は、上記放射線源と上記対象物との相対位置を調整する直前に提供され」ることとは、「上記画像は、上記放射線源と上記対象物との相対位置を調整する直前に提供され」る点で共通する。

10 引用発明の「寝台10はその上面に天板10aを有し、駆動機構により上下動(Y軸方向)、長手方向(Z軸方向)、及び横方向(X軸方向)に当該天板10aを移動させることができ」ることと、本願発明の「上記支持テーブルは、X方向、Y方向、及び/又はZ方向のそれぞれの上記対象物の並進が可能であり、上記支持テーブルの長手方向に延びるZ軸を中心とした回転が可能であり且つ/又は上記支持テーブルの幅方向に延びるY軸を中心とした回転が可能であり、上記放射線ビームの経路を調整するように上記三次元情報に基づいて移動する」こととは、「上記支持テーブルは、X方向、Y方向、及び/又はZ方向のそれぞれの上記対象物の並進が可能であり、上記放射線ビームの経路を調整するように上記三次元情報に基づいて移動する」点で共通する。

してみると、本願発明と引用発明とは、
「放射線治療システムであって、
対象物のまわりを移動し且つ上記対象物に向かって放射線ビームを差し向ける放射線源と、
コンピュータ断層撮像システムと、を有し、
このコンピュータ断層撮像システムは、
上記対象物のまわりを移動し且つX線ビームを上記対象物のまわりの多数の位置から上記対象物に向けて放射するX線源と、
上記X線ビームの少なくとも一部分が上記対象物を透過した後、このX線を受けるように位置決めされ、複数の二次元投影画像に基づいて上記対象物に関する三次元情報を含む画像を提供する画像器と、
上記放射線源が上記放射線ビームを上記対象物に差し向けている間に上記対象物が配置される支持テーブルと、を備え、
上記放射線治療システムは、上記放射線源と上記対象物との相対位置を調整することによって上記三次元情報と、計画作成用画像に含まれる計画作成用画像情報との比較に基づく上記対象物を透過する上記放射線ビームの経路を制御し、上記計画作成用画像は、上記画像上に重ねられ、これらの計画作成用画像と画像とが互いに合わせられ、上記画像は、上記放射線源と上記対象物との相対位置を調整する直前に提供され、
上記支持テーブルは、X方向、Y方向、及び/又はZ方向のそれぞれの上記対象物の並進が可能であり、上記放射線ビームの経路を調整するように上記三次元情報に基づいて移動する放射線治療システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明では、コンピュータ断層撮像システムはコーンビームコンピュータ断層撮像システムであり、X線ビームがコーンビーム形態であり、画像器がコーンビーム画像を提供する平坦パネル画像器であるのに対し、引用発明では、コンピュータ断層撮像システムはX線CTスキャナであるものの、その具体的構成が不明な点。

(相違点2)
上記「第2」で述べたように、「上記支持テーブルは、X方向、Y方向、及び/又はZ方向のそれぞれの上記対象物の並進が可能であり、上記支持テーブルの長手方向に延びるZ軸を中心とした回転が可能であり且つ/又は上記支持テーブルの幅方向に延びるY軸を中心とした回転が可能であ」ることが、「上記支持テーブルは、X方向、Y方向、及び/又はZ方向のそれぞれの上記対象物の並進が可能であ」ることのみである場合を含むと解した場合は、これに関して、本願発明と引用発明とに相違点はない。

また、上記「第2」で述べたように、「上記支持テーブルは、X方向、Y方向、及び/又はZ方向のそれぞれの上記対象物の並進が可能であり、上記支持テーブルの長手方向に延びるZ軸を中心とした回転が可能であり且つ/又は上記支持テーブルの幅方向に延びるY軸を中心とした回転が可能であ」ることを、「上記支持テーブルは、X方向、Y方向、及び/又はZ方向のそれぞれの上記対象物の並進が可能であ」ることと、「上記支持テーブルの長手方向に延びるZ軸を中心とした回転が可能であり且つ/又は上記支持テーブルの幅方向に延びるY軸を中心とした回転が可能であ」ることのいずれも含むと解した場合、本願発明では「上記支持テーブルの長手方向に延びるZ軸を中心とした回転が可能であり且つ/又は上記支持テーブルの幅方向に延びるY軸を中心とした回転が可能であ」るのに対し、引用発明はそのようなものではない点。

(相違点1について)
コンピュータ断層撮像システムたるX線CTにおいて、コーンビーム方式を用いた超高速な3次元画像計測が望まれていることは、例えば、本願優先日前に頒布され、当審の拒絶の理由に引用された刊行物である「安田 孝美 Takami YASUDA、医学における画像応用の現状と可能性 State of the Art and Future Possibility of Image Applications in Medicine、テレビジョン学会技術報告 Vol.16 No.47 ITEJ Technical Report、日本、1992.07.23発行、第16巻 第47号、1?8頁」(以下、「刊行物2」という。)の2頁左欄14?16行に記載されているように周知技術であり、また、それは放射線治療計画に用いられる医用画像への適用も視野に入れられていることは、例えば、上記刊行物2の1頁右下欄5?6行に記載されているとおりである。
したがって、引用発明のX線CTスキャナとして、超高速な3次元画像計測を可能とするために、コーンビーム方式を採用としようとすることは当業者であれば容易になし得たというべきである。

また、コーンビーム方式を採用した場合、例えば、本願優先日前に頒布され、当審の拒絶の理由に引用された刊行物である「稲邑 清也、デジタルX線の未来図、月刊新医療 4月号 第26巻第4号、日本、1999.04.01発行、第26巻 第4号、72?78頁」の75頁上欄16?24行に記載されているように、従来の薄い層を成すファン型のX線投影ではなく、立体角を持つコーン型のX線曝射により一挙に1回転で多スライスのプロジェクションデータを3次元的に収集するものであるから、それに合わせて画像器がフラットパネルディテクタ、すなわち、平坦パネル画像器が利用されるべきことは、当業者であれば当然想起しえたものというべきである。

(相違点2について)
引用発明の「放射線治療装置5のコンソール」が「保持された治療計画データの内、特に放射線照射方向(照射角度)を、送られたズレ量に基づいて補正し、補正された放射線照射方向を含む治療計画データに従って」、「架台11」の「回転角度」「を制御」することは、長手方向(Z軸方向)の回転角度に係るズレ量の補正をすることに他ならない。
そこで、この長手方向(Z軸方向)の回転角度に係るズレ量の補正を、引用発明のように「架台11」の方「を制御」して行うか、反対側の、寝台10の方を制御して行うかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項というべきであり、後者を選択して寝台10を長手方向(Z軸方向)に回転可能に構成して、相違点2に係る本願発明の「上記支持テーブルの長手方向に延びるZ軸を中心とした回転が可能であ」るものとすることは当業者が容易になし得たというべきである。

そして、本願発明において「上記支持テーブルの長手方向に延びるZ軸を中心とした回転が可能であり且つ/又は上記支持テーブルの幅方向に延びるY軸を中心とした回転が可能であ」ることによる効果は、本願明細書で「Y軸(傾斜)およびZ軸(回転)を中心とした回転は、かかる運動により補正されるが(条件付きのプランセットから適切なRTTPを選択することにより、そのような誤差を補正するのとは対照的に)、但しこれは、重力効果のせいでかかる運動が病巣444および/またはその周囲の構造体の位置および配向に不確定性を生じないのであればという条件のもとでのことである。」(【0094】)と記載されているとおり、何ら優れたものではなく、当業者の予測し得る範囲を超えるものではない。

よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-08 
結審通知日 2015-05-13 
審決日 2015-05-26 
出願番号 特願2001-559337(P2001-559337)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南川 泰裕  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 藤田 年彦
三崎 仁
発明の名称 平坦なパネル画像装置を有するコーンビームコンピュータ断層撮像装置  
代理人 大塚 文昭  
代理人 弟子丸 健  
代理人 箱田 篤  
代理人 中村 稔  
代理人 西島 孝喜  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 村社 厚夫  

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