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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1306247
審判番号 不服2014-21353  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-22 
確定日 2015-10-08 
事件の表示 特願2010- 83997「電子機器用ラック」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月27日出願公開、特開2011-216696〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年3月31日の出願であって、平成25年12月16日付けの拒絶理由通知に対して、平成26年2月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月16日付け(発送日:同年7月22日)で拒絶査定がされ、これに対して、同年10月22日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成26年10月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年10月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
平成26年10月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。) は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
底板と天板との間にわたって電子機器を装着可能なマウントフレームを具備するとともに、該マウントフレームの側方を側板によって覆うようにした電子機器用ラックにおいて、
前記側板を前記底板と前記天板との間に前後方向へスライド可能に装着してなり、
前記底板又は前記天板に、前記側板を前後方向へスライド可能に嵌め合せる凸部が設けられ、
前記底板及び前記天板に、前記マウントフレームを止着するための止着フレームを設けるとともに、この止着フレームを、前記凸部から当該電子機器用ラックの内部側へ離して配置し、
スライド前後の前記側板と前記マウントフレームとの間、及び前記凸部と前記マウントフレームとの間に空間が確保されるようにして、前記マウントフレームを前記底板と前記天板との間で前記止着フレームに止着したことを特徴とする電子機器用ラック。」を、
補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
底板と天板との間にわたって電子機器を装着可能なマウントフレームを具備するとともに、該マウントフレームの側方を側板によって覆うようにした電子機器用ラックにおいて、
前記側板を前記底板と前記天板との間に前後方向へスライド可能に装着してなり、
前記底板又は前記天板に、前記側板を前後方向へスライド可能に嵌め合せる凸部が設けられ、
前記底板及び前記天板に、前記マウントフレームを止着するための止着フレームを設けるとともに、この止着フレームを、前記凸部から当該電子機器用ラックの内部側へ離して配置し、
当該電子機器用ラックを横幅方向へ複数連設して前記側板を前方又は後方へスライドさせた場合に、前記マウントフレームの側方に、前記凸部から前記マウントフレームまで水平方向に連続する空間であって且つ作業スペースとなる空間が確保されるようにして、前記マウントフレームを前記底板と前記天板との間で前記止着フレームに止着したことを特徴とする電子機器用ラック。」
と補正することを含むものである。
なお、下線は補正箇所であり、請求人が付したとおりである。

本件補正は、発明を特定するために必要な事項である「空間」について「スライド前後の前記側板と前記マウントフレームとの間、及び前記凸部と前記マウントフレームとの間」の空間を「当該電子機器用ラックを横幅方向へ複数連設して前記側板を前方又は後方へスライドさせた場合に、前記マウントフレームの側方に、前記凸部から前記マウントフレームまで水平方向に連続する空間であって且つ作業スペースとなる」空間と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2 引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開2002-299863号公報(以下、「刊行物」という。)には、「機器収納用ラック」に関して、図面(特に、【図1】ないし【図4】参照)とともに、次の事項が記載されている。
以下、下線は当審で付与したものである。


「【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明は、通信機器やネットワーク関連機器等のコンピュータ関連の機器類を保管するラックとして用いられる。
【0015】本発明は、ラックPのセキュリティを高めるために、ラックPの前面または前後面に装着される扉1と、ラックPの側面を覆って前後スライド自在に設けたスライド側板2とを形成している(図1参照)。
【0016】スライド側板2は、横並びに連結した複数のラックPから任意のラックPのスライド側板2を自在に引き抜けるようにしている(図4参照)。そのため図示例では、ラックPの側面に複数本の側板支持体3を平行に配設し、これら側板支持体3の内側にスライド側板2をスライド自在に収納している(図1参照)。図示の側板支持体3は、複数枚の帯板3Aを張り合わせて形成しフレームP1に固定している。そして、帯板3Aの間に形成したスライド溝3Bにスライド側板2を収納し、このスライド溝3Bに沿ってスライド側板2をスライドせしめるものである(図2参照)。このような側板支持体3によると、ラックPを横並びに接続したときでも、このスライド側板2が重ならずに済み、スムーズに引き出すことができる。この他、側板支持体3の形状は、スライド側板2を前後にスライドできる構造であれば図示例に限られない。更に、図示例では、ラックPの側面に上下2枚のスライド側板2を配設しているが、このスライド側板2の数は任意に設定することができる。例えば、ラックPの側面全体を1枚のスライド側板2で覆うようにしてもよく、また、より多数のスライド側板2を配設してもよい。
【0017】更に、スライド側板2の引き抜き方向を前記扉1の開放方向に向けて設定し、このスライド側板2の引き抜き端部2Aを扉1の内側に配置する(図3参照)。図示の引き抜き端部2Aは、断面略L字形状に屈曲することで、反対側への引き抜きを防止すると共に、スライド側板2を抜き出す際にスライド側板2を掴み易くしている(図1参照)。
【0018】また、図3、図4に示すラックPは、扉1をラックPの前後に一対装着すると共に、スライド側板2をラックPの左右両側面に配置し、左右のスライド側板2を前方と後方とに向けて引き抜けるように設けている。このように、ラックPの両側を開放できるようにすると、横並びに連結した複数のラックPの内部空間が一つになり、内部に搭載した機器の保守点検作業を容易に行うことができる。」


「【0021】
【発明の効果】本発明は、上述の如く構成したことにより当初の目的を達成する。すなわち、ラックPの前面または前後面に装着される扉1と、ラックPの側面を覆うスライド側板2とを形成し、ラックP側面にスライド側板2を前後スライド自在に配設し、横並びに連結した複数のラックPから任意のラックPのスライド側板2を引き抜き自在に形成したことにより、側板を外さないで複数台のラックを連結した場合でも、各ラック内の保守点検作業を容易にすることができる。」


上記記載事項アの「通信機器やネットワーク関連機器等のコンピュータ関連の機器類を保管するラック」との記載、【図1】及び【図2】から、センサー5が装着された板(以下、「天板」という。)とラックPを構成する底の板(以下、「底板」という。)との間にわたってコンピュータ関連の機器類を装着可能な、天板から底板に向かう方向(以下、「上下方向」という。)のフレームP1を具備するとともに、該フレームP1の側方をスライド側板2によって覆うようにしたコンピュータ関連の機器類用ラックPが看て取れる。


【図1】及び【図4】から、スライド側板2が底板と天板との間で前後方向(以下、スライド側板2がスライドする方向を「前後方向」という。)へスライド可能に装着されていることが看て取れる。



【図1】及び【図2】から、スライド側板2を前後方向へスライド可能に嵌め合せる、コンピュータ関連の機器類用ラックPの内側から見て最も外側に設けられた帯板3A(以下、「最も外側の帯板3A」という。)が看て取れる。


【図1】及び【図3】から、前後方向のフレームP1は、最も外側の帯板3Aからコンピュータ関連の機器類用ラックの内部側へ離して配置されていることが看て取れる。
また、フレームP1はラックPを形成するものであるから、上下方向のフレームP1は、底板と天板との間で前後方向のフレームP1に止着していることが理解できる。


上記記載事項アの「スライド側板2は、横並びに連結した複数のラックPから任意のラックPのスライド側板2を自在に引き抜けるようにしている」との記載及び【図4】から、コンピュータ関連の機器類用ラックを横幅方向へ複数連設してスライド側板2を前方又は後方へスライドさせた場合に、上下方向のフレームP1の側方に、最も外側の帯板3Aから上下方向のフレームP1まで水平方向に連続する空間があることが理解できる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合して、本願補正発明に則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「底板と天板との間にわたってコンピュータ関連の機器類を装着可能な上下方向のフレームP1を具備するとともに、該上下方向のフレームP1の側方をスライド側板2によって覆うようにしたコンピュータ関連の機器類用ラックPにおいて、
スライド側板2を底板と天板との間に前後方向へスライド可能に装着してなり、
スライド側板2を前後方向へスライド可能に嵌め合せる最も外側の帯板3Aが設けられ、
上下方向のフレームP1と止着するための前後方向のフレームP1を設けるとともに、この前後方向のフレームP1は、最も外側の帯板3Aからコンピュータ関連の機器類用ラックPの内部側へ離して配置され、
コンピュータ関連の機器類用ラックPを横幅方向へ複数連設してスライド側板2を前方又は後方へスライドさせた場合に、上下方向のフレームP1の側方に、最も外側の帯板3Aから上下方向のフレームP1まで水平方向に連続する空間が確保されるようにして、上下方向のフレームP1を底板と天板との間で前後方向のフレームP1に止着したコンピュータ関連の機器類用ラックP。」

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「コンピュータ関連の機器類」は、その機能、構造、性質からみて、本願補正発明の「電子機器」に相当し、同様に、引用発明の「上下方向のフレームP1」、「スライド側板2」、「コンピュータ関連の機器類用ラックP」、「最も外側の帯板3A」、「前後方向のフレームP1」は、本願補正発明の「マウントフレーム」、「側板」、「電子機器用ラック」、「凸部」、「止着フレーム」に、それぞれ相当する。

以上の点からみて、本願補正発明と引用発明とは、

[一致点]
「底板と天板との間にわたって電子機器を装着可能なマウントフレームを具備するとともに、マウントフレームの側方を側板によって覆うようにした電子機器用ラックにおいて、
側板を底板と天板との間に前後方向へスライド可能に装着してなり、
側板を前後方向へスライド可能に嵌め合せる凸部が設けられ、
マウントフレームを止着するための止着フレームを設けるとともに、この止着フレームを、凸部から電子機器用ラックの内部側へ離して配置し、
電子機器用ラックを横幅方向へ複数連設して側板を前方又は後方へスライドさせた場合に、マウントフレームの側方に、凸部からマウントフレームまで水平方向に連続する空間が確保されるようにして、マウントフレームを底板と天板との間で止着フレームに止着した電子機器用ラック。」
である点で一致し、

次の点で相違する。
[相違点]
相違点1
本願補正発明では、凸部は「底板又は天板」に設けられ、止着フレームは「底板及び天板」に設けられるのに対して、引用発明では、「最も外側の帯板3A」及び「前後方向のフレームP1」と底板及び天板との関係が明らかでない点。

相違点2
空間に関して、本願補正発明では、「作業スペースとなる」のに対して、引用発明では、不明である点。

4 判断
(1)相違点1について
引用発明は、「側板支持体3は、複数枚の帯板3Aを張り合わせて形成しフレームP1に固定」されており(記載事項アの段落【0016】)、当該「フレームP1」は、底板及び天板と共にラックPを構成しているから(【図1】ないし【図3】)、前後方向のフレームP1と底板及び前後方向のフレームP1と天板は、ラックとしての一定の強度を有する程度に結合していると解される。
そうすると、引用発明の前後方向のフレームP1と底板及び前後方向のフレームP1と天板は、それぞれ本願補正発明の「底板又は天板」と機能・作用が共通するから、引用発明の前後方向のフレームP1と底板及び前後方向のフレームP1と天板を、それぞれ一体のものとして底板又は天板とすることは、当業者が適宜なし得る設計事項といえる。
よって、上記相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が引用発明に基づいて容易になし得たことである。

(2)相違点2について
引用発明は、横並びに連結した複数のラックPの内部空間で保守点検作業を容易にすることを課題としているから(記載事項アの段落【0018】)、引用発明の空間を作業スペースとなる空間とすることは、当業者が容易に推考できることである。
よって、上記相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が引用発明に基づいて容易になし得たことである。

(3)作用効果について
そして、本願補正発明による効果も、引用発明から当業者が予測し得た程度のものにすぎない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成26年2月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のもの(以下、「本願発明」という。)である。

「【請求項1】
底板と天板との間にわたって電子機器を装着可能なマウントフレームを具備するとともに、該マウントフレームの側方を側板によって覆うようにした電子機器用ラックにおいて、
前記側板を前記底板と前記天板との間に前後方向へスライド可能に装着してなり、
前記底板又は前記天板に、前記側板を前後方向へスライド可能に嵌め合せる凸部が設けられ、
前記底板及び前記天板に、前記マウントフレームを止着するための止着フレームを設けるとともに、この止着フレームを、前記凸部から当該電子機器用ラックの内部側へ離して配置し、
スライド前後の前記側板と前記マウントフレームとの間、及び前記凸部と前記マウントフレームとの間に空間が確保されるようにして、前記マウントフレームを前記底板と前記天板との間で前記止着フレームに止着したことを特徴とする電子機器用ラック。」

2 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開2002-299863号公報の記載事項及び引用発明は、上記第2の2(1)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から「空間」について限定する発明特定事項を除いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、上記第2の4に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-07 
結審通知日 2015-08-11 
審決日 2015-08-25 
出願番号 特願2010-83997(P2010-83997)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 小柳 健悟
大内 俊彦
発明の名称 電子機器用ラック  
代理人 特許業務法人 英知国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 英知国際特許事務所  

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