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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B21D
管理番号 1306353
審判番号 不服2014-10407  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-04 
確定日 2015-10-07 
事件の表示 特願2009-525519「金属シートから目的物を熱成形、硬化させる方法および車両用Bピラー」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月28日国際公開、WO2008/024042、平成22年 1月21日国内公表、特表2010-501353〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年(平成19年)8月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年8月25日、スウェーデン王国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成24年 7月25日付け:拒絶理由の通知
平成24年10月29日 :意見書の提出
平成25年 4月 9日付け:拒絶理由の通知
平成25年 7月12日 :意見書及び手続補正書の提出
平成26年 1月28日付け:拒絶査定
平成26年 6月 4日 :審判請求書及び手続補正書の提出

第2 平成26年6月4日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年6月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成26年6月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という)は、本願特許請求の範囲を補正するもので、特許請求の範囲の請求項1の記載を、次のとおり補正することを含むものである。(下線部は、補正箇所である。)
(1)補正前
「金属シート素材から金属シート目的物を熱成形し、冷却した工具内で硬化させる方法であって、素材の一部で金属シートが二重となっており、素材全体を1回の成形作業で成形加工する方法において、
重なり部分(23)を有する2つの素材要素(20、21)を一緒に設置し、これらの要素を相互に溶接してから成形することによって素材を作り、成形中に、重なり合っていない2つの素材要素の部分と同時に重なり合っている金属シートを有する部分を成形し、硬化させ、かつ成形した金属シートの対象物が3つの異なった強度の領域を有するようにすることを特徴とする方法。」
(2)補正後
「金属シート素材から金属シート目的物を熱成形し、冷却した工具内で硬化させる方法であって、素材の一部で金属シートが二重となっており、素材全体を1回の成形作業で成形加工する方法において、
重なり部分(23)を有する2つの素材要素(20、21)を一緒に設置し、これらの要素を相互に溶接してから成形することによって素材を作り、成形中に、重なり合っていない2つの素材要素の部分と同時に重なり合っている金属シートを有する部分を成形し、硬化させ、かつ異なった焼入性を有する異なった鋼種または異なった鋼厚の素材要素(20、21)を使用することによって成形した金属シートの対象物が3つの異なった強度の領域を有するようにすることを特徴とする方法。」

2 補正の適否
上記1の本願請求項1についてする補正は、補正前の請求項1に係る発明の特定事項である、「成形した金属シートの対象物が3つの異なった強度の領域を有するようにする」という最終工程が、補正前においては具体的な処理を特定していなかったのに対して、本件補正によって、「異なった焼入性を有する異なった鋼種または異なった鋼厚の素材要素(20、21)を使用することによって」当該最終工程が行われたと限定するものであるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定)について以下に検討する。

3 引用例およびその記載事項
本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-58082号公報(以下「引用例1」という)及び実願平3-18434号(実開平5-215号)のCD-ROM(以下「引用例2」という)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(1)引用例1
(ア)
「【請求項2】
鉄系材料に焼入性を高め得る量の合金元素を添加した鋼材からなる第1の金属素板と、焼入性を高め得る量の合金元素を添加していない鉄系材料からなる第2の金属素板とを溶接することにより、両金属素板が一体化した連結基板を得る溶接工程と、
前記連結基板を、前記鉄系材料に焼入性を高め得る量の合金元素を添加した鋼材にとって焼入れ可能な温度領域にまで加熱する加熱工程と、
前記焼入れ可能な温度状態にある連結基板に対し、相対的に低温のプレス型を用いてプレス加工を施すことにより、所望形状の付与及び焼入れを一度に行うプレス工程と
を備えることを特徴とするテーラードブランクプレス成形品の製造方法。」

(イ)
「【0013】
この製造方法によれば、テーラードブランク材の元となる連結基板は、鉄系材料に焼入性を高め得る量の合金元素を添加した鋼材からなる第1の金属素板と、焼入性を高め得る量の合金元素を添加していない鉄系材料からなる第2の金属素板とを溶接することで得られる。プレス前の段階でその連結基板が、前記鉄系材料に焼入性を高め得る量の合金元素を添加した鋼材にとって焼入れ可能な温度領域にまで加熱されることで、その連結基板の全体が塑性変形し易くなる。そして、その焼入れ可能な温度状態を保持した連結基板に対しプレス型を用いてプレス加工を施すことにより、連結基板には優れた成形精度にて所望形状が付与されると共に、相対的に低温のプレス型に接触することで、連結基板が急冷されて焼入れが行われる。
【0014】
このように、所定の温度領域に加熱された連結基板を熱間プレスして所望形状の付与(成形)と焼入れ(急冷強化)とを一度に達成するという手法を採用することにより、テーラードブランクプレス成形品における内部応力の残留が回避又は緩和され、プレス成形品の成形性が向上する。また、熱間プレスとしたことでプレスによる加工硬化の制御性が大幅に改善され、品質が安定して従来よりも品質管理が容易になる。更に、成形と同時に焼入れが行われることで、従来よりも安価に且つ確実にテーラードブランクプレス成形品の品質向上を図ることが可能となる。」

(ウ)
「【0020】
(溶接工程及び金属素板の条件)
テーラードブランク材の元となる連結基板は、二以上の金属素板(そのうちの2枚を第1の金属素板及び第2の金属素板とする)を溶接して一体化したものである。例えば、隣り合う金属素板の各端部を突き合わせ、その突き合わせ部位に連続溶接を施すことにより複数素板の一体化が達成される。その際に使用可能な溶接手法としては、レーザー溶接、マッシュルーム溶接、電子ビーム溶接、TIG溶接、MIG溶接、プラズマ溶接、シーム溶接、スポット溶接、アーク溶接、電気溶接等を例示することができる。」

(エ)
「【0044】
(実施例1)
第1の金属素板Xとして、板厚t1=1.8mmの特殊鋼材Aを採用すると共に、第2の金属素板Yとして、板厚t2=1.2mmのSHP270鋼板を採用した。特殊鋼材Aは、高張力鋼に分類される鉄系材料であって、後記表1に掲載するような成分組成を持つ。特殊鋼材Aの融点は摂氏1300?1400度であり、その引張強度は約600MPaである。SHP270鋼板はいわゆる一般材であり、その引張強度は約270MPaである。図1に示すように、これら両金属素板X,Yの端部を突き合わせ、その突き合わせ部位にレーザー溶接を施して両者を一体化することにより、一枚の平らな連結基板を得た。
【0045】
続いてこの連結基板を、内部を窒素ガス雰囲気とした電気加熱炉内に封入し、所定の目標温度(本例では930℃)にまで加熱した。目標温度に加熱した連結基板を電気炉から成形用プレス型10,20間に高速搬送し、直ちにプレス加工を施した。連結基板を電気炉からプレス型にセットし押圧を開始するまでの時間を5秒以内として、プレス直前の連結基板の温度が摂氏850度を下回らないように注意した。他方、プレス型10,20の温度は常温(室温付近)のままとした。プレス圧は約5千MPaとした。板厚の異なる金属素板X,Yからなる連結基板のプレスは、図2に示すように、板薄な第2の金属素板Yとプレス型の成形面11との間にクリアランスC1(=0.6mm)が確保されるような態様にて行った。プレス直後にプレス型から取り出したプレス成形品の温度は100?200℃であった。
【0046】
実施例1のプレス成形品をプレス型10,20から取り外したとき、当該成形品にスプリングバックは生じず、ほぼプレス型通りの形状が付与された。また、当該成形品に割れやしわといった成形不良は発見されず、その後に遅れ破壊の兆候も見られなかった。このテーラードブランクプレス成形品について各部の引張強度を測定したところ、第1の金属素板X(t1=1.8mm)からなる部分の引張強度の平均値は1500MPaに飛躍的に向上し、第2の金属素板Y(t2=1.2mm)からなる部分の引張強度の平均値も440MPaに向上した。両部分で1000MPaを超える引張強度差が生じたことは、両金属素板X,Yの材質が特殊鋼材と一般材で全く異なるという事情と、クリアランスC1(=0.6mm)を確保する態様でのプレス加工を行ったという事情とが相乗的に影響したものと推測される。尚、各金属素板部分における複数の測定点間でも引張強度のばらつきは少なく、強度分布もほぼ均一化していた。また、この実施例1のプレス成形品を複数ロット製造したが、ロット間での品質のばらつきはほとんどみられず、ほぼ同じ品質のテーラードブランクプレス成形品を安定的に製造することができた。」

(オ)
上記摘記事項(イ)の「鉄系材料に焼入性を高め得る量の合金元素を添加した鋼材からなる第1の金属素板と、焼入性を高め得る量の合金元素を添加していない鉄系材料からなる第2の金属素板」から、引用例1に記載されたテーラードブランクプレス成形の製造方法は、焼入れ性を高め得る合金元素の添加の有無から、異なった焼入性を有する異なった鋼種の素板を用いていることは明らかである。

(カ)
上記摘記事項(ア)の「前記連結基板を、前記鉄系材料に焼入性を高め得る量の合金元素を添加した鋼材にとって焼入れ可能な温度領域にまで加熱する加熱工程と、前記焼入れ可能な温度状態にある連結基板に対し、相対的に低温のプレス型を用いてプレス加工を施すことにより、所望形状の付与及び焼入れを一度に行うプレス工程とを備える」という記載から、引用例1のテーラードブランクプレス成形品の製造方法は、金属素板からなる連結基板から所望形状の付与及び焼入れをして目的とする物を得るのだから、金属素板目的物を熱成型するものであることが明らかである。

上記摘記事項(ア)?(エ),上記認定事項(オ)及び(カ)及び当業者の技術常識によれば、上記引用例1には、「連結基板から金属素板目的物を熱成形し、相対的に低温のプレス型内で焼入させる方法であって、素板を突き合わせて溶接しており、連結基板を1回の成形作業で成形加工する方法において、
2つの素板を一緒に設置し、これらの素板を相互に溶接してから成形することによって連結基板を作り、成形中に、重なり合っていない2つの素板の部分と同時に突き合わせている部分を成形し、焼入させ、かつ異なった焼入性を有する異なった鋼種の素板を使用することによって成形した金属シートの対象物が2つの異なった強度の領域を有するようにする方法。」の発明(以下「引用例1発明」という)が記載されていると認められる。

(2)引用例2
(ア)
「 【0002】
【従来の技術】
従来から、部位によって材質や厚さが異なるプレス成形品を得たり或いは廃材を利用してプレス成形品を得るために、特開昭59-220229号公報に示されるように複数のパネルをレーザビームにより突合わせ溶接してパネル部材を得た後、該パネル部材をダイとパンチとからなるプレス成形型具によってプレス成形する方法が知られている。
【0003】
ところが、上記のように複数のパネルを突合わせ溶接する場合には、各パネル同士の相対的な位置決め精度について高度なものが要求されると共に、突合わせ部の端面をカッティングしなければならない等の問題がある。
【0004】
そこで、2枚の平板を重ね合わせ熔接してパネル部材を得た後、該パネル部材をプレス成形型具を用いてプレス成形することが考慮される。この場合、ダイ又はパンチのいずれかに上記パネル部材の重ね合せ部の形状と対応する凹部を形成しておく必要があるが、従来は、成形品について美観が余り要求されない方に凹部を形成するのが通常であった。従って、2枚の平板が重ね合わせ熔接されてなるパネル部材をプレス成形して、下側が開口するコの字状部分と該コの字状部分の下端から両側へ延びるフランジ部分とからなるハット状断面を有する成形品を得る場合には、美観上の観点から上面が平坦である方が好ましいので凹部をダイ側に設けるのが通常であった。」

(イ)
「 【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本考案は、重ね合せ部のフランジ部分と対応する凹部をダイ側に設けることによりフランジ部分をダイ側へ突出させてその下面をフラットに成形すると共に、重ね合せ部のコの字状部分と対応する凹部をパンチ側に設けることにより、パネル部材の重ね合せ部を最初にパンチの凹部と嵌合させてパネル部材とプレス成形型との位置ずれを修正し且つコの字状部分のスポット溶接部とフランジ部分のスポット溶接部との間が離れないようにするものである。」

上記摘記事項(ア)及び(イ)によれば、上記引用例2には、部位によって材質が異なるプレス成形品を得るために、複数の平板を重ね合わせ溶接してパネル部材を得た後、該パネル部材をプレス成形型具を用いてプレス成形する技術が記載されていると認められる。

4 対比
本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、その機能及び作用からみて、引用例1発明の「素板」、「プレス型」、「連結基板」は、それぞれ、本願補正発明の「素材要素」あるいは「シート素材」、「工具」、「金属シート素材」に相当する。
引用例1発明の「焼入」は、「熱処理の一種。鉄鋼を高温に加熱した後、これを急冷し、硬さを増す作業。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」との意味であるから、本願補正発明の「硬化」に相当する。
そして、引用例1発明の「相対的に低温の」は、連結基板に比しては「冷却した」ものであるから、引用例1発明の「相対的に低温のプレス型」は、本願補正発明の「冷却した工具」に相当する。
上記対比をふまえると、引用例1発明の「2つの素板を一緒に設置し、これらの要素を相互に溶接してから成形することによって素材を作り、成形中に、突き合わせていない2つの素板の部分と同時に突き合わせている部分を成形し、焼入させ、かつ異なった焼入性を有する異なった鋼種の素板を使用することによって成形した金属シートの対象物が2つの異なった強度の領域を有するようにする」という行為は、「重なり部分を有するように溶接をする」という行為の点を除けば、「2つの素材要素を一緒に設置し、これらの要素を相互に溶接してから成形することによって素材を作り、成形中に、素材全体を成形し、硬化させ、かつ異なった焼入性を有する異なった鋼種の素材要素を使用することによって成形する」という行為の点で共通する方法の発明である。

そうすると、両者は、
「金属シート素材から金属シート目的物を熱成形し、冷却した工具内で硬化させる方法であって、素材全体を1回の成形作業で成形加工する方法において、
2つの素材要素を一緒に設置し、これらの要素を相互に溶接してから成形することによって素材を作り、成形中に、素材全体を成形し、硬化させ、かつ異なった焼入性を有する異なった鋼種の素材要素を使用することによって成形した方法。」である点で一致し、以下の2点で相違している。

[相違点1] 本願補正発明は、重なり部分を有するように溶接をするのに対し、引用例1発明では、そのようなものであるか明らかではない点。

[相違点2] 本願補正発明では、成形した金属シートの対象物が3つの異なった強度の領域を有するのに対して、引用例1発明では、成形した金属シートの対象物が2つの異なった強度の領域を有する点。

5 判断
[相違点1]について
上記3(1)の摘記事項(ウ)に挙げられた、引用例1発明の金属素板を一体化する溶接として、使用可能な溶接手法は、「スポット溶接」も含まれているところ、「スポット溶接」は、重なり部分を有するように溶接することが必須のものであるから、引用例1発明は、重なり部分を有するように溶接することを示唆されているといえる。
また、引用例2の上記3(2)の摘記事項(ア)には、「上記のように複数のパネルを突合わせ溶接する場合には、各パネル同士の相対的な位置決め精度について高度なものが要求されると共に、突合わせ部の端面をカッティングしなければならない等の問題がある。そこで、2枚の平板を重ね合わせ熔接してパネル部材を得た後、該パネル部材をプレス成形型具を用いてプレス成形することが考慮される。」との記載があり、当該記載から、従来において突き合わせ溶接をしているところ、突き合わせ溶接には、各パネル同士の相対的な位置決め精度について高度なものが要求されると共に、突合わせ部の端面をカッティングしなければならない等の問題があることから、その解決のために、重ね合わせ溶接が用いられることが理解できる。
上記問題は、引用例1発明においても存在することは明らかであるから、引用例1発明の溶接方法として重ね合わせ溶接を用いることは、上記引用例1に記載の示唆するところにしたがって、引用例2に記載された重ね合わせ溶接を用いることで、当業者が容易に想到しえたことである。

[相違点2]について
引用例1発明の異なった焼入れ性を有する異なった鋼種の素板を突き合わせ溶接するものにおいて、引用文献2に記載された重ね合わせ溶接に代えた結果、相互に異なる強度を有する1枚の素板からなる2つの領域と、各素板が重ね合わせられた1つの領域の合計3つの領域が現出することは当業者にとって自明な事項である。したがって、引用例1発明において相違点2に係る構成を備えることは、上記自明な事項を特定事項としたにすぎず、当業者にとって格別困難なことではない。

そして、本願補正発明の効果も、引用例1発明及び引用例2に記載の事項から当業者が予測しうる範囲内のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例1発明及び引用例2に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に適合しないので、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成26年6月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成25年7月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されたものであると認められ、その特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、以下のとおりのものである。
「金属シート素材から金属シート目的物を熱成形し、冷却した工具内で硬化させる方法であって、素材の一部で金属シートが二重となっており、素材全体を1回の成形作業で成形加工する方法において、
重なり部分(23)を有する2つの素材要素(20、21)を一緒に設置し、これらの要素を相互に溶接してから成形することによって素材を作り、成形中に、重なり合っていない2つの素材要素の部分と同時に重なり合っている金属シートを有する部分を成形し、硬化させ、かつ成形した金属シートの対象物が3つの異なった強度の領域を有するようにすることを特徴とする方法。」(以下「本願発明」という)

2 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用例1の記載事項は、前記第2の3(1)に示したとおりである。

3 判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明の「成形した金属シート」について、「異なった焼入性を有する異なった鋼種または異なった鋼厚の素材要素(20、21)を使用することによって」の構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の5に記載したとおり、引用例1発明及び引用例2に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1発明及び引用例2に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明及び引用例2に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-28 
結審通知日 2015-05-12 
審決日 2015-05-25 
出願番号 特願2009-525519(P2009-525519)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21D)
P 1 8・ 575- Z (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 健一福島 和幸  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 久保 克彦
三澤 哲也
発明の名称 金属シートから目的物を熱成形、硬化させる方法および車両用Bピラー  
代理人 竹林 則幸  
代理人 結田 純次  

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