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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F16F
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  F16F
管理番号 1306705
審判番号 無効2014-800153  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-09-10 
確定日 2015-09-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5403772号発明「減衰弁」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5403772号に係る出願は,平成20年3月17日に出願された特願2008-67353号の一部が平成24年12月5日に特許出願され,平成25年11月8日にその発明について特許の設定登録(請求項の数13)がなされたものである。

以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。
1. 平成26年 9月10日 本件無効審判の請求
2. 平成26年12月 8日 審判事件答弁書
3. 平成26年12月 8日 訂正請求書
4. 平成27年 2月16日 審判事件弁駁書
5. 平成27年 3月31日 審理事項通知書
6. 平成27年 5月21日 口頭審理陳述要領書(請求人)
7. 平成27年 5月21日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
8. 平成27年 6月11日 口頭審理
9. 平成27年 6月25日 上申書(請求人)
10.平成27年 7月 9日 上申書(被請求人)

第2 訂正請求について
1 訂正請求の内容
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「当該フェール弁は,流路を開放する開放ポジションと流路面積を減じるフェールポジションとを有してソレノイドへの供給電流が所定値以下となるとフェールポジションを採り」とあるのを,「該フェール弁は,流路を開放する開放ポジションと流路面積を減じるフェールポジションとを有し,ソレノイドへの供給電流が所定値を超えると固定鉄心に吸着して開放ポジションを採り,ソレノイドヘの供給電流が所定値以下となるとフェールポジションを採り」に訂正する。

訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「流路の途中に弁要素に独立して直列配置されるフェール弁を設け」とあるのを,「フェール弁は,流路の途中に,弁要素とは離れて独立してかつ当該弁要素に直列に配置され」に訂正する。

訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「流路面弁積」とあるのを,「流路面積」に訂正する。

訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に「可動鉄心は遮断弾性体と弁体との間に介装されてなる」とあるのを,「ソレノイドは,励磁時に可動鉄心を吸引して弁要素における弁体に流路面積を制限する方向に推力を与え,可動鉄心は遮断弾性体と弁体との間に介装されてなる」に訂正する。

訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「請求項4または5に記載の減衰弁」とあるのを,「請求項4に記載の減衰弁」に訂正する。

訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に「請求項3,4,5,6または7に記載の減衰弁」とあるのを,「請求項3に記載の減衰弁」に訂正する。

訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に「請求項3,4,5,6,または8に記載の減衰弁」とあるのを,「請求項3または8に記載の減衰弁」に訂正する。

訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に「請求項4,5,6,7,8,または9に記載の減衰弁」とあるのを,「請求項4または6に記載の減衰弁」に訂正する。

訂正事項9
特許請求の範囲の請求項12に「請求項5,6,7,8,9,10,または11に記載の減衰弁」とあるのを,「請求項5に記載の減衰弁」に訂正する。

2 訂正の適否
訂正事項1,2の訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり(特許法第134条の2第1項第1号),訂正事項3の訂正は,誤記の訂正を目的とするものであり(特許法第134条の2第1項第2号),訂正事項4の訂正は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり(特許法第134条の2第1項第3号),訂正事項5?9の訂正は,引用する請求項の項番を訂正するものであって,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである(特許法第134条の2第1項第3号)。
また,訂正事項1?9の訂正は,新規事項の追加に該当せず(特許法第126条第5項,特許法第134条の2第9項),実質上特許請求の範囲を拡張,変更するものでもない(特許法第126条第6項,特許法第134条の2第9項)。

3 まとめ
以上のとおり,本件訂正請求は,特許法第134条の2第1項ただし書及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するので適法な訂正と認める。

第3 本件訂正発明
本件特許の請求項1ないし13に係る発明(以下,「本件訂正発明1ないし13」という。)は,訂正明細書の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
流路の途中に設けられて通過する流体に抵抗を与える弁要素と、弁要素における弁体に流路面積を制限する方向に推力を与えるソレノイドと、当該弁体に流路面積を最大とする方向に推力を与える弾性体とを備えた減衰弁において、流路の途中に弁要素に直列配置されるフェール弁を設け、当該フェール弁は、流路を開放する開放ポジションと流路面積を減じるフェールポジションとを有し、ソレノイドへの供給電流が所定値を超えると固定鉄心に吸着して開放ポジションを採り、ソレノイドへの供給電流が所定値以下となるとフェールポジションを採り、単一のソレノイドで弁要素とフェール弁とを独立して駆動することを特徴とする減衰弁。
【請求項2】
フェール弁は、流路の途中に、弁要素とは離れて独立してかつ当該弁要素に直列に配置され、ソレノイドへの供給電流が所定値を超えると弁要素が流路の流路面積を制限すると共にフェール弁が開放ポジションを採り、ソレノイドへの供給電流が所定値以下となると弁要素が流路の流路面積を開放すると共にフェール弁がフェールポジションを採ることを特徴とする請求項1に記載の減衰弁。
【請求項3】
弁要素は、弁体に流路面積を最大とする方向に推力を与える弾性体と、弁体に流路面積を制限する方向に推力を与える遮断弾性体とを備え、ソレノイドへの供給電流が所定値以下となると流路面積を最大とすることを特徴とする請求項1または2に記載の減衰弁。
【請求項4】
フェール弁は、フェール弁体と、フェール弁体にフェールポジションを採る方向に推力を与えるフェール弾性体とを備え、ソレノイドへの供給電流が所定値を超えるとフェール弁体がソレノイドに吸引されて開放ポジションを採ることを特徴とする請求項1、2または3に記載の減衰弁。
【請求項5】
流路を迂回する主流路と、主流路を開閉する主弁体を有する主弁と、流路の弁要素およびフェール弁より上流側に設けた固定弁と、流路における固定弁と弁要素との間の圧力が導かれるとともに内部圧力で主流路を制限する方向へ向けて主弁体を附勢する背圧室とを備えたことを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の減衰弁。
【請求項6】
ソレノイドは、励磁時に可動鉄心を吸引して弁要素における弁体に流路面積を制限する方向に推力を与えるとともに、供給電流が所定値を超えるとフェール弁体を吸引することを特徴とする請求項4に記載の減衰弁。
【請求項7】
通常作動時に弁要素における弁体を駆動するためにソレノイドに供給される電流値の下限とフェール弁を開放ポジションに切換える所定値との間にマージンを設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6に記載の減衰弁。
【請求項8】
弾性体と遮断弾性体の圧縮長さを調節して初期推力を調節する調節部材を備えたことを特徴とする請求項3に記載の減衰弁。
【請求項9】
ソレノイドは、励磁時に可動鉄心を吸引して弁要素における弁体に流路面積を制限する方向に推力を与え、可動鉄心は遮断弾性体と弁体との間に介装されてなることを特徴とする請求項3または8に記載の減衰弁。
【請求項10】
フェール弁体は、フェールポジションを採ると流路に対向して流路を制限するオリフィスを備えたことを特徴とする請求項4または6に記載の減衰弁。
【請求項11】
ソレノイドは、弁要素の開弁圧を調節することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に記載の減衰弁。
【請求項12】
主弁における主弁体はリーフバルブであることを特徴とする請求項5に記載の減衰弁。
【請求項13】
減衰弁は、伸縮時に排出通路を介してシリンダからリザーバヘ流体を排出する緩衝器における排出通路の途中に設けられることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12に記載の減衰弁。」

第4 当事者の主張
1 請求人
請求人は,審判請求書,審判事件弁駁書,口頭審理陳述要領書,上申書において,「特許第5403772号発明の特許請求の範囲の請求項1?13に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨とし,甲第1?4号証を提出して,次の無効理由を主張する。

無効理由の概要
(1)無効理由1
本件訂正発明1?8,10及び11は,甲第1号証に記載された発明(以下,「甲1発明」という。)と同一であるから,特許法第29条第1項第3号により特許を受けることができないものであり,本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

具体的には,本件訂正発明1に対して,概略以下のように主張している。

本件訂正発明1の「固定鉄心」は,その記載から「ソレノイドへの供給電流が所定値を超えるとフェール弁を吸着して開放ポジションを採る固定鉄心」と解釈できる。本件特許の請求項1にはこれ以上の記載がないので,「固定鉄心」は,フェール弁との関係において固定鉄心として機能するもの,すなわち,フェール弁を吸着するときに固定されていれば足りるものである。フェール弁を吸着するとき以外に鉄心が「可動」だとしても,本件訂正発明の課題,効果を満たし,技術的意義も変わらない。したがって,本件特許の請求項1に規定された「固定鉄心」は,フェール弁を吸着(フェール弁が移動)するとき以外に可動する鉄心を排除していない。以上から,甲第1号証の「電機子562」は,本件特許の請求項1の「固定鉄心」に該当する。
また,甲第1号証の第1弁部材529a(フェール弁)と第2弁部材529b(弁要素)とは,甲第1号証の説明図の図Aから図Bの状態においては,第1弁部材529aのみが駆動され,第2弁部材529bは駆動されず移動しない。
このような状態を見れば,第1弁部材529aと第2弁部材529bとは独立に駆動されていると言わざるを得ない。よって,甲第1号証は,第1弁部材529aと第2弁部材529bとが独立に駆動される状態を開示しているので,甲1発明は,請求項1の「弁要素とフェール弁とを独立に駆動」を充足する。
さらに,本件訂正発明1のその余の発明特定事項も甲1発明と同一である。

(2)無効理由2
本件訂正発明1?11は,甲1発明に基いて,また,本件訂正発明12,13発明は,甲1発明及び甲第2号証に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであり,本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

具体的には,本件訂正発明1に対して,概略以下のように主張している。

無効理由1について記載したとおり,本件訂正発明1は,甲1発明と同一とさえいえる発明であるから,本件訂正発明1は,甲1発明から当業者であれば容易に発明することができたものである。

(3)証拠方法
甲第1号証 米国特許第5413196号明細書
甲第2号証 特開平4-312227号公報
甲第3号証 特開平4-50576号公報
甲第4号証 特開2007-321864号公報

2 被請求人
被請求人は,審判事件答弁書,口頭審理陳述要領書,上申書において,「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」ことを答弁の趣旨とし,次のように反論する。

答弁の概要
(1)無効理由1について
本件訂正発明1は,ソレノイドへの供給電流が所定値を超えると,フェール弁は固定鉄心に吸着する構成及びソレノイドへの供給電流が所定値を超えて弁要素が駆動する際には,フェール弁は固定鉄心に吸着し,弁要素はフェール弁と独立に駆動する構成を有するが,甲第1号証には,上記各構成については,全く開示されていない。

(2)無効理由2について
ア 甲1発明との対比
本件訂正発明1が,ソレノイドへの供給電流が所定値を超えると,フェール弁は固定鉄心に吸着するのに対して,甲1発明が,コイル535aにわずかな供給電流が流れると(第1作動状態),弁部材529aは,第2弁部材529bに固定され可動鉄心として機能する電機子部材562に当接する点(以下,「相違点1」という。)及び本件訂正発明1が,ソレノイドへの供給電流が所定値を超えて弁要素が駆動する際には,フェール弁は固定鉄心に吸着し,弁要素はフェール弁と独立に駆動するのに対して,甲1発明が,コイル535aに階段状に上昇した供給電流が流れて第2弁部材529bが駆動する際(別の作動状態)には,弁部材529aは電機子部材562に当接した状態に維持され,第2弁部材529bの移動に伴って弁部材529aも移動する点(以下,「相違点2」という。)で相違する。

イ 相違点1について
本件訂正発明1の「固定鉄心」は恒久的に固定された鉄心と解釈されるのに対して,甲1発明の電機子562は,移動可能であるため可動鉄心と解釈されるものであるから,甲1発明の電機子562は,本件訂正発明1の「固定鉄心」に相当しない。
また,甲第1号証には,「ソレノイドへの供給電流が所定値を超えると,フェール弁は固定鉄心に吸着する」ことが想到容易であることを示す根拠は存在しないから,弁部材529aが可動鉄心として機能する電機子562に当接する開示しかない甲第1号証をもって,上記相違点1が当業者にとって想到容易であるとは到底言えない。

ウ 相違点2について
相違点2の「ソレノイドへの供給電流が所定値を超えて弁要素が駆動する際には,フェール弁は固定鉄心に吸着し,弁要素はフェール弁と独立に駆動する」構成は,弁要素によって流路面積を支配的に調整するようにし,フェール弁による流路面積への影響が極力少なくなるような設計を一切考慮することなく,減衰力を所望の減衰力に調整することができるという技術的に格別な意味を有する。
そして,第1弁部材529aと第2弁部材529bとが一体に移動する開示しかない甲第1号証をもって,上記本件訂正発明1の構成が,甲1発明に基づいて想到容易であるとは到底言えない。

エ したがって,本件訂正発明1は,甲1発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)証拠方法
乙第1号証 JIS工業用語大辞典,第5版,第378頁,第723頁
乙第2号証 マグローヒル科学技術用語大辞典,第2版,第1106頁
乙第3号証 THE HERITAGE ILLUSTRATED DICTIONARY OF THE ENGLISH
LANGUAGE,第72頁

第5 甲各号証について
1 甲第1号証(米国特許第5413196号明細書)に記載の発明について
(1) 明細書第2欄第21行ないし第29行
「It is an object of the present invention to provide an oscillation damper with variable damping effect which on the one hand is automatically adjusted to a predetermined damping effect in case of failure of the electric control means and on the other hand can be maintained at a usually desired damping effect in normal driving operation (i.e. without failure of the electric control) with a reduced consumption of electric energy.」

(本発明の目的は,電気的制御が機能しない場合に,自動的に所定の減衰効果になるように調整される一方で,通常の走行(すなわち電気的制御の故障のない)において,少ない電気エネルギーの消費量で,一般に望ましいとされる減衰効果に保持することができる,可変減衰効果を有する振動ダンパを提供することである。)

(2) 明細書第12欄第46行から第15欄第3行
「 In the embodiment of FIG. 6 analogous components are again designated by the same reference numerals as in the preceeding embodiments, increased by further 100.
In this embodiment the flow path 430 comprises two parallel branch paths 430a and 430b. A first restriction 432a is allocated to the first branch path 430a and a second restriction 432b is allocated to the second branch path 430b. The first restriction 432a is defined by a first valve member 429a whereas the second restriction 432b is defined by a second valve member 429b. More particularly, the first restriction 432a is defined by the first valve member 429a and the second valve member 429b in mutual cooperation. The first valve member 429a has a radial bore 429a1 and the second valve member 429b has a bore 429b1. The degree of axial overlapping of the bores 429a1 and 429b1 defines the cross-sectional area of the first restriction 432a, the second restriction 432b is in particular defined by mutual cooperation of the second valve member 429b and a valve seat 460. In FIG. 6 there is again shown the emergency condition. In as much as the restriction 432b is completely closed the flow resistance of the flow path 430 is exclusively defined by the flow resistance in the branch path 430a and the flow resistance through the branch path 430a is dependent on the axial overlapping degree between the bores 429b1 and 429a1. This overlapping is at a minimum as shown in FIG. 6, so the flow resistance in the flow path 430 is high, the pressure in the liquid chamber 426f is also high, the main valve member 26 can only be lifted by a high pressure below it, and the damping behavior of the oscillation damper is therefore a hard one. The valve member 429b is urged in the emergency position according to FIG. 6 by the biasing spring 433b which is again supported by the spring support piston 434. The first valve member 429a is maintained in the emergency position as shown in FIG. 6 by the first biasing spring 433a which is softer than the second biasing spring 433b. The first biasing spring 433a is supported by an armature member 462 which is fastened to the second valve member 429b. A pressure compensation duct 438 extends through both the armature 462 and the first valve member 429a. The first valve member 429a is surrounding the second valve member 429b. In the emergency position as shown in FIG. 6 the first valve member 429a rests on the shoulder 429b2 of the second valve member 429b.
When the motor vehicle is started the electro-magnetic coil 435a receives a small current supply. Thus, an electromagnetic field is built up to which both the armature 462 of the second valve member 429b and the iron-material of the first valve member 429a are exposed. The electro-magnetic field is so weak that only the first valve member 429a is lifted, whereas the second valve member 429b remains in its position as shown in FIG. 6. The lifting of the first valve member 429a is stopped, when the upper end of the first valve member 429a abuts against the armature 462, i.e. when the gap 465 is closed. One can see from FIG. 6 that in this position of the first valve member 429a the restriction 432a is completely closed because the bores 429a1 and 429b1 are free of overlapping. This means that the flow path 430 is completely closed. Thus the liquid pressure in the liquid chamber 426f is at a maximum and this results in a very hard damping action of the oscillation damper, because the main valve member 26b of FIG. 2 can be lifted only in response to very high pressure below it. This is again the first operational condition in the terminology of the present invention. This first operational condition corresponds, however, to a very hard damping effect. Therefore this embodiment of FIG. 6 is particularly applicable to sportive vehicles in which a hard damping effect is desirable under normal driving conditions. One can recognize that this first operational condition corresponding to a hard damping effect is obtainable by low current supply to the electro-magnetic coil 435a such that again the normal operational condition can be obtained with a minimum of power consumption. Even a sportive driver may desire a more comfortable operation. When increasing--for example by manual operation--the current supply to the electro-magnetic coil to a considerable degree the electro-magnetic field becomes so strong that also the second valve member 429b is lifted. During such lifting the first valve member 429a remains in its elevated position with respect to the second valve member 429b. The restriction 432a remains consequently fully closed but the restriction 432b is opened such that the resulting flow resistance through the flow path 430 is again reduced with the result that the pressure in the liquid chamber 426f is also reduced and the damping behavior of the oscillation damper becomes softer. This is a further operational condition in the terminology of the present invention. When the current supply to the coil 435a breaks down for what ever reason the device of FIG. 6 returns into the condition as shown in FIG. 6, i.e. into the emergency condition. It is easily understandable that the operational condition of minimum damping effect is obtained when the armature 462 abuts the abutment face 470 such that the gap between this abutment face 470 and the armature 462 is closed. The embodiment of FIG. 6 has the advantage that the springs 433a and 433b are both allocated to only one respective valve member 429a and 429b respectively. Therefore the tuning of the device of FIG. 6 is very simple.
A further improvement in tuning is obtainable by a tuning spring 471 which may be replaceable by other tuning springs. The adjustment screw 439 cooperates only with the second biasing spring 433b. This is a further improvement as to the tuning operation of the device.
Returning now to FIG. 2, the EM-valve unit 28 has not yet been described. One recognizes by a comparison of the drawings that the two valve members 529a and 529b and the respective biasing springs 533a and 533b are arranged as shown in FIG. 6. The restrictions 532b and 26i are, however, arranged in series as in FIG. 3. The position of FIG. 2 corresponds to the emergency condition: The flow path extending from 26f through 26g, 532b, 26g, 26i, 26k to 20, has a flow resistance defined by the cross-sectional area of the restriction 26i. This corresponds to the emergency condition because the flow resistance through 26i is high, the pressure in the liquid chamber 26f is therefore also high, and the main valve member 26b can only be opened by high pressure below the valve member 26b. The cross-sectional area of the passage 26i is defined in mutual cooperation of the valve member 529a and a valve seat 574. When starting the vehicle a small current supply flows to the coil 535a such that the valve member 529a is lifted from the valve seat member 574. Such, the cross-sectional area of the restriction 26i is increased. This is a first operational condition corresponding to weak oscillation dampers.
When a sensor recognizes that a further operational condition should be used having harder damping effect on the oscillation damper a step-like increased current supply must be given to the electro-magnetic coil 535a such that the electro-magnetic field can force the second valve member 529b against the action of the harder biasing spring 533b upward. Therefore, the second restriction 532b is reduced in cross-sectional area and the flow resistance is increased again with the result that the damping behavior of the oscillation damper becomes harder again. When the current supply to the coil 535a breaks down the device returns into the condition as shown in FIG. 2, i.e. into the emergency condition having a relatively hard damping effect.
One can see from FIG. 2 again tuning springs 571 comparable in their function with the tuning spring 471 of FIG. 6. According to the left side of FIG. 2 the helical compression spring 571 may be replaced by cup springs.
It is possible to use the EM-valve units as shown in FIGS. 2 to 6 also for direct electric control of the main valve member 26b as shown in FIG. 2.
It will be further understood that by replacing the biasing springs, one can easily adapt the oscillation damper in its behavior to a required behavior.
A specific advantage of the present invention is that by one electro-magnetic coil two valve members can be moved.」(下線は合議体が付した。)

(図6の実施形態において,ここでも,類似の部材には先行する実施形態と同じであるが,さらに100を加えた参照符号が付されている。
この実施形態において,流路430は,2つの平行の分岐路430aおよび430bを含む。第1制限部432aは第1分岐路430aに割り当てられ,第2制限部432bは第2分岐路430bに割り当てられている。第1制限部432aは,第1弁部材429aによって形成され,これに対して,第2制限部432bは,第2弁部材429bによって形成される。特に,第1制限部432aは,第1弁部材429aと第2弁部材429bとによって共同で規定される。第1弁部材429aは半径方向ボア429a1を有し,第2弁部材429bはボア429b1を有する。ボア429a1および429b1の軸方向の重なり合いの程度が第1制限部432aの横断面を規定し,第2制限部432bは,第2弁部材429bと弁座460との協働によって規定される。図6においても非常状態が示される。制限部432bが完全に閉鎖されるので,流路430の流れ抵抗は,分岐路430a内の流れ抵抗のみによって規定され,分岐路430aの流れ抵抗は,ボア429b1とボア429a1との間の軸方向の重なり合いの程度によって決まる。この重なり合いは,図6の図示では最小であり,したがって流路430の流れ抵抗は大きく,液体チャンバ426f内の圧力も同様に高く,主弁部材26は,その下方の高い圧力によってしか持ち上げることができないので,振動ダンパの減衰効果は硬い。弁部材429bは,付勢ばね433bによって図6の非常位置へ押動され,この付勢ばね433bも,ばね支持ピストン434によって支持されている。第1弁部材429aは,第2付勢ばね433bよりも軟らかい第1付勢ばね433aによって,図6に示された非常位置に保持される。第1付勢ばね433aは,第2弁部材429bに固定された電機子部材462によって支持されている。圧力補償管路438は,電機子462と第1弁部材429aとを通って延びる。第1弁部材429aは第2弁部材429bを包囲する。図6に示す非常位置において,第1弁部材429aは,第2弁部材429bのショルダ429b2上に載置されている。
自動車を始動させた場合,電磁コイル435aは,わずかな電流供給を受ける。それにより電磁場が形成され,第2弁部材429bの電機子462と第1弁部材429aの鉄材料とがこの電磁場にさらされる。電磁場は非常に弱いので,第1弁部材429aのみが持ち上げられ,これに対して,第2弁部材429bは,図6に示す位置にとどまる。第1弁部材429aの持ち上げは,第1弁部材429aの上端が電機子462に当接すると,すなわち間隙465が閉じられると停止する。図6から,ボア429alとボア429blとは重なり合わないので,第1弁部材429aがこの位置にあるときに,制限部432aは完全に閉鎖されることが見て取れる。このことは,流路430が完全に閉鎖されることを意味する。したがって,液体チャンバ426f内の液体圧は最大であり,このことによって,振動ダンパの非常に大きい減衰作用がもたらされる。なぜなら,図2の主弁部材26bは,その下方の非常に高い圧力に対する応答としてしか持ち上げられないからである。これも,本発明の用語では第1作動状態である。しかしながら,この第1作動状態は,非常に硬い減衰効果に対応する。そのため,図6の実施形態は,通常の走行条件下で強い(hart)減衰効果が望ましい,特にスポーツ車に適用可能である。強い減衰効果に対応するこの第1作動状態は,電磁コイル435aへのわずかな電流供給によって得ることができ,それによって,正常な作動状態も最小の電力消費によって得ることができることがわかる。スポーツドライバでもさらに快適な運転を望むことがある。電磁コイルへの電流供給を,例えば手動操作によって相当の程度にまで増加させると,電磁場が非常に強くなり,第2弁部材429bも持ち上げられる。持ち上げられている間,第1弁部材429aは,第2弁部材429bに対して持ち上げられたその位置にとどまる。したがって制限部432aは完全に閉鎖されたままではあるが,制限部432bは,生じた流路430の流れ抵抗が再び低減されるように開放され,その結果,液体チャンバ426f内の圧力も同様に低下し,振動ダンパの減衰挙動が穏やかになる。これは,本発明の用語では別の作動状態である。コイル435aへの電流供給が何らかの理由で停止すると,図6の装置は,図6に示された状態,すなわち非常状態に戻る。電機子462が当接面470に当接し,それによってこの当接面470と電機子462との間の隙間が閉じられると,減衰効果が最少の作動状態が得られることが容易に理解できる。図6の実施形態は,ばね433aおよび433bは,両方とも,それぞれ弁部材429aもしくは429bに割り当てられるだけであるという点で有利である。そのため,図6の装置の位置合わせは非常に簡単である。
位置合わせのさらなる改善は,他の位置合わせばねと置き換えることができる位置合わせばね471によって達成することができる。調整ねじ439は,第2付勢ばね433bのみと協働する。このことは,装置の位置合わせ動作に関するさらなる改善である。
図2に関して,EM弁ユニット28についてはまだ説明していなかった。図を比較することによって,2つの弁部材529aおよび529bと対応する付勢ばね533aおよび533bが図6に示すように配置されることがわかる。しかしながら,制限部532bと26 iとは,図3に示されているように直列に配置されている。図2の位置は,非常状態に相当する。:26fから26g,532b,26h,26 i,26kを通って20へと延びる流路は,制限部26iの横断面によって規定される流れ抵抗を有する。このことは非常状態に相当する。なぜなら,26iの流れ抵抗が大きく,それゆえ液体チャンバ26f内の圧力も同様に高く,主弁部材26bが,弁部材26bの下方の高い圧力に,よってのみ開放され得るからである。通路26iの横断面は,弁部材529aおよび弁座574の協働によって規定される。車両の始動時に,コイル535aにわずかな供給電流が流れ,それによって,弁部材529aが弁座部材574から持ち上げられる。これにより,制限部26iの横断面が拡大される。これは,弱い振動減衰に対応する第1作動状態である。
振動ダンパに対してより大きい減衰効果を有する別の作動状態が用いられるべきであることをセンサが検知した場合,電磁コイル535aには,階段状に上昇した供給電流を供給しなければならず,それにより,電磁場は,第2弁部材529bを硬いほうの付勢ばね533bの作用に抗して上に向かって押動することができる。したがって,第2制限部532bの横断面が縮小され,流れ抵抗が大きくなり,その結果,振動ダンパの減衰作用は,再びより硬くなる。コイル535aへの電流供給が停止すると,装置は,図2に示すような状態,すなわち比較的強い減衰効果を有する非常状態に戻る。
図2においてもまた位置合わせばね571が見て取れる。このばねの機能は,図6の位置合わせばね471と同等である。図2の左側によると,圧縮コイルばね571は皿ばねと置き換えることができる。
図2および図6に示されるEM弁ユニットを,図2に示される主弁部材26bを直接電気的に制御するためにも使用することができる。
さらに,付勢ばねを置き換えることによって,振動ダンパの挙動を,要求される挙動に容易に適合させることができることがわかる。
本発明の特殊な利点は,1つの電磁コイルによって2つの弁部材を移動させることができることである。)(下線は合議体が付した。)

(3) Fig.2



(4) 記載事項(1),(2)及び(3)によれば,

上記記載事項及び図示内容を総合して,本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると,甲第1号証には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「液体チャンバ26fから開口部26g,第2制限部532b,空間26h,制限部26i,ボア26kを通って環状チャンバ20へと延びる流路の途中に設けられて通過する流体に抵抗を与える第2制限部532bと,第2制限部532bにおける第2弁部材529bに流路面積を制限する方向に推力を与えるコイル535aと,当該第2弁部材529bに流路面積を最大とする方向に推力を与える付勢ばね533bとを備えた流れ制御ユニット22において,流路の途中に第2制限部532bに直列配置される弁部材529aと弁座部材574からなる弁(以下,「第1弁要素」という。)を設け,当該第1弁要素は,制限部26iの横断面が拡大される第1作動状態と,制限部26iの横断面によって規定される流れ抵抗を有する非常状態とを有し,コイル535aにわずかな電流が流れ弁部材529aが電機子562に当接して第1作動状態を採り,コイル535aへの電流供給が停止すると非常状態を採り,コイル535aで第2制限部532bと第1弁要素とを駆動する流れ制御ユニット22。」

2 甲第3号証
(1)請求の範囲
「・・・移動可能な第2の固定鉄心・・・。」

(2)第3頁左下欄第18行から同頁右下欄第6行
「[発明が解決しようとする課題]
従来のスプールタイプのバルブによって、例えば内燃機関のスロットル弁をバイパスする通路を開閉する比例流量制御バルブを構成した場合には、上述のように、スプールをなす可動鉄心とスリーブ(円筒部材)との間のクリアランス部からの漏れがあり、そのために、流量を零にしたい運転領域においても完全には零にすることができないという問題が発生する。」

(3)第4頁左上欄第14行から同頁右上欄第18行
「[課題を解決するための手段]
この発明に係る比例流量制御バルブは、固定鉄心を第1と第2の二つに分割して、第2の固定鉄心の方を電磁コイルに所定の微小電流が通電されることによって第1の固定鉄心へ向かう方向に一定ストロークだけ移動可能とするとともに、この第2の固定鉄心と円筒部材内に摺動可能に配設された流量調整手段との間にリターンスプリングを配設し、また、電磁コイルの無通電時に流量調整手段の第2の固定鉄心とは反対の側が当接するバルブシートを設け、さらに、第2の固定鉄心を第1の固定鉄心に対し流量調整手段の吸引方向とは反対の方向に付勢する弾性手段を設けて、無通電時にはこの弾性手段と前記リターンスプリングとのバランスによって第2の固定鉄心が第1の固定鉄心から一定ストロークだけ離間し、流量調整手段がバルブシートに着座するようにしたものである。
[作用]
この発明においては、電磁コイルの無通電時には、移動可能な第2の固定鉄心は第1の固定鉄心に対し一定ストロークだけ離間しており、また、この時、流量調整手段は円筒部材の流体通路穴を塞いで全閉状態となるとともに、その先端側の面がバルブシートに着座し漏れ量を零とする。」

第6 当審の判断
1 無効理由1について
(1)本件訂正発明1
ア 対比
本件訂正発明1と引用発明を対比すると,その作用,機能からみて,後者の「液体チャンバ26fから開口部26g,第2制限部532b,空間26h,制限部26i,ボア26kを通って環状チャンバ20へと延びる流路」は前者の「流路」に相当し,同様に,「第2制限部532b」は「弁要素」に,「第2弁部材529b」は「弁体」に,「コイル535a」は「ソレノイド」に,「付勢ばね533b」は「弾性体」に,「流れ制御ユニット22」は「減衰弁」に,「第1弁要素」は「フェール弁」に,「制限部26iの横断面が拡大される第1作動状態と,制限部26iの横断面によって規定される流れ抵抗を有する非常状態とを有」することは「流路を開放する開放ポジションと流路面積を減じるフェールポジションとを有」することに,それぞれ相当する。

したがって,両者は,
「流路の途中に設けられて通過する流体に抵抗を与える弁要素と,弁要素における弁体に流路面積を制限する方向に推力を与えるソレノイドと,当該弁体に流路面積を最大とする方向に推力を与える弾性体とを備えた減衰弁において,流路の途中に弁要素に直列配置されるフェール弁を設け,当該フェール弁は,流路を開放する開放ポジションと流路面積を減じるフェールポジションとを有する減衰弁。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

本件訂正発明1では,「ソレノイドへの供給電流が所定値を超えると固定鉄心に吸着して開放ポジションを採り,ソレノイドへの供給電流が所定値以下となるとフェールポジションを採り,単一のソレノイドで弁要素とフェール弁とを独立して駆動する」(以下,「本件訂正発明1の構成」という。)減衰弁であるのに対し,引用発明では,「コイル535aにわずかな電流が流れ弁部材529aが電機子562に当接して第1作動状態を採り,コイル535aへの電流供給が停止すると非常状態を採り,コイル535aで第2制限部532bと第1弁要素とを駆動する」(以下,「引用発明の構成」という。)流れ制御ユニット22である点。

イ 判断
そこで,本件訂正発明1の構成と引用発明の構成が実質的に同一であるか,とりわけ,本件訂正発明1の「固定鉄心」と引用発明の「電機子562」が実質的に同一であるか,引用発明の構成が「独立して駆動する」の構成を備えているかについて検討する。
(ア)「固定鉄心」と「電機子562」の実質的同一性について
固定鉄心とは,「ソレノイドの磁気回路を形成する鉄心の固定した部分」であり(乙第1号証),当該「固定」とは,「一所に定まって移動せぬこと。動かぬこと。また,動かぬようにすること。」である(広辞苑,昭和33年7月15日,第一版第五刷発行,「固定」の項参照)。
そうすると,「固定鉄心」とは,一所に定まって移動しない鉄心,動かない鉄心,動かないようにされた鉄心と解することが自然であって,動く場合がある鉄心は,含まれないと解される。
この点,確かに,引用発明の「電機子562」は,第1作動状態では電磁場が非常に弱く当該電磁場による弁部材529aの持ち上げの力が弱いから,弁部材529aに当接したままで付勢ばね533bの押し下げる力と均衡して静止した状態にある。しかし,別の作動状態ではコイル535aへの供給電流が相当程度強くなり,第2弁部材529bも持ち上げられるので,「電機子562」は,供給電流の多寡に応じて上下に動くことになる。したがって,「電機子562」は,動く場合があるから,「固定鉄心」には含まれない。
また,甲第3号証に「移動可能な第2の固定鉄心」(第5の2.(1))と記載されているのは,「スプールをなす可動鉄心とスリーブ(円筒部材)との間のクリアランス部からの漏れがあり,そのために,流量を零にしたい運転領域においても完全には零にすることができないという問題」(第5の2.(2))を従来の「固定鉄心を第1と第2の二つに分割し」,「第2の固定鉄心が第1の固定鉄心から一定ストロークだけ離間」できるようにして,上記問題を解決する(第5の2.(3))との説明上,あえて「移動可能な」第2の固定鉄心と記載したに止まり,甲第3号証に記載された事項は,動く場合がある鉄心も「固定鉄心」に含まれることの根拠となるものではない。
さらに,実質的に考えても,本件訂正発明1の「固定鉄心」は,「ソレノイドへの供給電流が所定値を超えると固定鉄心に吸着して開放ポジションを採り」との記載から,「ソレノイドへの供給電流が所定値を超える」状態(引用発明の「別の作動状態」)で固定されているか否かを検討する必要があるところ,引用発明の「電機子562」は,別の作動状態で動く場合がある鉄心であるから,「固定鉄心」であるとはいえないと解される。
よって,本件訂正発明1の「固定鉄心」と引用発明の「電機子562」が実質的に同一であるとはいえない。

(イ)「独立して駆動する」ことについて
引用発明において,「第2制限部532b」と「第1弁要素」が「独立して駆動する」といえるかについて検討するに際し,まず,本件訂正発明1において,「弁要素」と「フェール弁」が「独立して駆動する」とはいかなる意義であるかについて検討する。
本件訂正明細書【0010】には「この減衰弁にあっては,単一のソレノイドで弁要素とフェール弁を独立して駆動し,ソレノイドへの供給電流が所定値を超える状態では,弁要素のみが流路を制限してフェール弁は流路に影響を与えず,反対に,ソレノイドへの供給電流が所定値以下である場合にはフェール弁のみが流路を制限して弁要素は流路に影響を与えないようになっているので,弁要素とフェール弁が互いに干渉しあうことが無く,減衰力調整とフェールセーフを確実に行うことができる。」との記載がある。
当該記載から,ソレノイドへの供給電流が所定値を超える状態(以下,「開放ポジション」という。)では「弁要素のみが流路を制限してフェール弁は流路に影響を与えず」,他方,ソレノイドへの供給電流が所定値以下である場合(以下,「フェールポジション」という。)には「フェール弁のみが流路を制限して弁要素は流路に影響を与えない」こと ,すなわち,流路に影響を与える要素が,開放ポジションでは「弁要素」のみであり,フェールポジションでは「フェール弁」のみであることが理解できる。
かかる理解によれば,本件訂正発明1における「独立して駆動する」とは,流路に影響を与える要素が,開放ポジションでは「弁要素」のみであり,フェールポジションでは「フェール弁」のみであることを意味し,開放ポジションで「弁要素」に加えて「フェール弁」も流路に影響を与える場合又はフェールポジションで「フェール弁」に加えて「弁要素」も流路に影響を与える場合は,「独立して駆動する」とはいえないと解される。
これを引用発明においてみるに,別の作動状態(開放ポジション)の場合に,「第2制限部532b」がコイル535aへの電流供給の多寡に応じて流路に影響を与える際,「第1弁要素」の構成要素たる弁部材529aもコイル535aへの電流供給の多寡に応じて弁座部材574上で上下するから,「第1弁要素」も流路に影響を与えているといえる。
そうすると,引用発明において,別の作動状態(開放ポジション)の場合に,「第2制限部532b」に加えて「第1弁要素」も流路に影響を与えるから,「第2制限部532b」と「第1弁要素」が「独立して駆動する」といえない。
よって,引用発明は,本件訂正発明1の構成を備えず,この点でも,本件訂正発明1と引用発明が実質的に同一であるとはいえない。

(ウ)したがって,無効理由1によって,本件訂正発明1についての特許を無効とすることはできない。

(2)本件訂正発明2ないし8及び10
本件訂正発明2ないし8及び10は,直接または間接的に本件訂正発明1を引用するものであるから,本件訂正発明1の特許を無効理由1によって無効とすることができない以上,本件訂正発明2ないし8及び10の特許を無効理由1によって無効とすることはできない。

2 無効理由2について
(1)本件訂正発明1
ア 対比
本件訂正発明1と引用発明を対比すると,無効理由1で述べたとおりの,一致点及び相違点を有する。

イ 判断
上記相違点について検討するに,第6の1(1)イで説示したように,引用発明の「電機子562」は,実質的に「固定鉄心」でないのみならず,これと技術的に関連して,引用発明の「第2制限部532b」と「第1弁要素」とが「独立して駆動する」といえないから,根拠なく,上記相違点に係る構成が引用発明から容易に発明できたとはいえない。
無効理由2は,無効理由1を主な理由とした上で,補足的・形式的な理由としたものに止まり,具体的な根拠は示されていない。
また,第6の1(1)イ(イ)で説示したように,本件訂正発明1は,開放ポジションとフェールポジションの2ポジションに区別した上で,流路に影響を与える要素が,前者では「弁要素」のみであり,後者では「フェール弁」のみであり,単一のソレノイドで弁要素とフェール弁とを独立して駆動することを技術事項とする発明であるところ,引用発明から当該技術事項が容易に想到し得るとする具体的な根拠は見いだせない。
したがって,本件訂正発明1は,引用発明から当業者が容易に発明できたとはいえない。

ウ 効果について
本件訂正発明1が奏する効果は,引用発明から,当業者が予測できる範囲内のものとはいえない。

エ したがって,無効理由2によって,本件訂正発明1についての特許を無効とすることはできない。

(2)本件訂正発明2ないし13
本件訂正発明2ないし13は直接または間接的に本件訂正発明1を引用するものであるから,本件訂正発明1の特許を無効理由2によって無効とすることができない以上,本件訂正発明2ないし13の特許を無効理由2によって無効とすることはできない。

第7 むすび
以上のとおり,請求人の主張する理由及び証拠方法によっては,本件訂正発明1ないし13についての特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
減衰弁
【技術分野】
【0001】
この発明は、伸縮時に排出通路を介してシリンダからリザーバへ流体を排出する緩衝器における排出通路の途中に設けられる減衰弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、伸縮時に排出通路を介してシリンダからリザーバへ流体を排出する緩衝器における排出通路の途中に設けられる減衰弁としては、たとえば、ソレノイドで駆動される可動鉄心の軸芯に固定されるとともに外周に環状溝を備えた軸体と、軸体をソレノイドの推力に抗して上方へ附勢する附勢バネと、軸体が挿入される孔を備えるとともに環状溝幅より幅狭の肉厚に設定されるプレートとを備えて構成され、環状溝の外周にプレートを対向させ、プレートの孔の上方側の縁と環状溝の上方側の縁とで通常作動時に機能する弁部を形成するとともに、プレートの孔の下方側の縁と環状溝の下方側の縁とで非常作動時に機能する非常弁部を形成するようにしている。
【0003】
そして、この減衰弁にあっては、ソレノイドを励磁することにより、環状溝の外周にプレートが対向する範囲で軸体を中立位置(プレートが環状溝に対して軸方向に真中に配置される位置)から下方へ移動させると、プレートの孔の上方側の縁と環状溝の上方側の縁とでなる弁部における流路面積をプレートの孔の下方側の縁と環状溝の下方側の縁とでなる非常弁部における流路面積より小さくし、逆に、ソレノイドを励磁せずに附勢バネによって軸体を中立位置から下方へ移動させると、弁部における流路面積を非常弁部における流路面積より大きくさせるようになっている。
【0004】
すなわち、システムが正常に動作する状況では、ソレノイドへ供給する電流量によって、軸体の位置を中立位置より上方側へ配置して弁部における流路面積を調節し、当該弁部によって減衰力を発生させ、反対に、システムが正常に動作せずソレノイドへ給電不能となる状況では、附勢バネによって軸体を最下方に配置して非常弁部によって減衰力を発生させるようになっている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3064964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この従来の減衰弁にあっては、ソレノイドを励磁できないフェール時における非常弁部における流路面積の調整を、可動鉄心の上方に配置したストッパの位置によって行うようになっており、このストッパは送り螺子機構によって可動鉄心に対して遠近可能で無段階に非常弁部における流路面積を調整できるようになっている。
【0007】
このように従来の減衰弁にあっては、単一のソレノイドで駆動される軸体を利用して、通常作動時における弁部の制御とフェール時における非常弁部の流路面積を決するようにしているため、ストッパで可動鉄心の上方へ移動限界を設定して非常弁部の流路面積を決する場合、ストッパによってプレートが環状溝に対して中立位置より上方へ配置される状態で規制されると、フェール状態にあっても弁部における流路面積が非常弁部における流路面積より小さくなって非常弁部が機能しない状態となるとともに、弁部における流路面積調整幅が小さくなって減衰力調整を満足に行うことができなくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、減衰力調整とフェールセーフを確実に行うことができる減衰弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段は、流路の途中に設けられて通過する流体に抵抗を与える弁要素と、弁要素における弁体に流路面積を制限する方向に推力を与えるソレノイドと、当該弁体に流路面積を最大とする方向に推力を与える弾性体とを備えた減衰弁において、流路の途中に弁要素に直列配置されるフェール弁を設け、当該フェール弁は、流路を開放する開放ポジションと流路面積を減じるフェールポジションとを有してソレノイドへの供給電流が所定値以下となるとフェールポジションを採り、単一のソレノイドで弁要素とフェール弁とを独立して駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この減衰弁にあっては、単一のソレノイドで弁要素とフェール弁を独立して駆動し、ソレノイドへの供給電流が所定値を超える状態では、弁要素のみが流路を制限してフェール弁は流路に影響を与えず、反対に、ソレノイドへの供給電流が所定値以下である場合にはフェール弁のみが流路を制限して弁要素は流路に影響を与えないようになっているので、弁要素とフェール弁が互いに干渉しあうことが無く、減衰力調整とフェールセーフを確実に行うことができる。
【0011】
それゆえ、公差等による製品毎のバラツキを補正するために、弁要素における弁体に推力を与えている弾性体たるバネ等の初期荷重を調節しても、フェール弁には影響が無く、フェール時の減衰力に影響を与えることが無いから、フェール時と通常作動時における製品のバラツキを無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施の形態における減衰弁の断面図である。
【図2】一実施の形態の減衰弁が適用された緩衝器の断面図である。
【図3】一実施の形態の減衰弁におけるソレノイドの磁路を示した図である。
【図4】ソレノイドへの供給電流と減衰力との関係を示した図である。
【図5】他の実施の形態における減衰弁の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図示した一実施の形態に基づいて、この発明を説明する。図1は、一実施の形態における減衰弁の断面図である。図2は、一実施の形態の減衰弁が適用された緩衝器の断面図である。図3は、一実施の形態の減衰弁におけるソレノイドの磁路を示した図である。図4は、ソレノイドへの供給電流と減衰力との関係を示した図である。図5は、他の実施の形態における減衰弁の断面図である。
【0014】
以下、図に示した実施の形態に基づいて本発明の減衰弁を説明する。一実施の形態における減衰弁V1は、図1に示すように、流路Pの途中に設けられて通過する流体に抵抗を与える弁要素1と、弁要素1における弁体2に流路面積を制限する方向に推力を与えるソレノイドSと、当該弁体2に流路面積を最大とする方向に推力を与える弾性体としてのバネ3と、流路Pの途中に弁要素1に直列配置されるフェール弁4とを備えて構成されて緩衝器Dに適用されており、緩衝器Dは、伸縮時に減衰弁V1を通過する流体に抵抗を与えて減衰力を発生するようになっている。
【0015】
この減衰弁V1が適用される緩衝器Dは、たとえば、図2に示すように、シリンダ5と、シリンダ5内に摺動自在に挿入されるピストン6と、シリンダ5内に移動挿入されてピストン6に連結されるロッド7と、シリンダ5内に挿入したピストン6で区画したロッド側室8とピストン側室9と、シリンダ5の外周を覆ってシリンダ5との間に排出通路10を形成するパイプ11と、さらに、パイプ11の外周を覆ってパイプ11との間にリザーバ12を形成する外筒13とを備えて構成されており、ロッド側室8、ピストン側室9およびリザーバ12内には作動油等の流体が充填されるとともにリザーバ12には作動油の他に気体が充填されている。なお、流体は、作動油以外にも、減衰力を発揮可能な流体であれば使用可能である。
【0016】
そして、この緩衝器Dの場合、リザーバ12からピストン側室9へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路14と、ピストン6に設けられてピストン側室9からロッド側室8へ向かう作動油の流れのみを許容するシリンダ内通路15とを備え、排出通路10はピストン側室9とリザーバ12とを連通し、減衰弁V1は、流路Pを排出通路10に接続して当該排出通路10の途中に設けられている。
【0017】
したがって、この緩衝器Dは、圧縮作動する際には、ピストン6が図2中下方へ移動してピストン側室9が圧縮され、ピストン側室9内の作動油がシリンダ内通路15を介してロッド側室8へ移動する。この圧縮作動時には、ロッド7がシリンダ5内に侵入するためシリンダ5内でロッド侵入体積分の作動油が過剰となり、過剰分の作動油がシリンダ5から押し出されて排出通路10を介してリザーバ12へ排出される。緩衝器Dは、排出通路10を通過してリザーバ12へ移動する作動油の流れに減衰弁V1で抵抗を与えることによって、シリンダ5内の圧力を上昇させて圧側減衰力を発揮する。
【0018】
反対に、緩衝器Dが伸長作動する際には、ピストン6が図2中上方へ移動してロッド側室8が圧縮され、ロッド側室8内の作動油が排出通路10を介してリザーバ12へ移動する。この圧縮作動時には、ピストン6が上方へ移動してピストン側室9の容積が拡大して、この拡大分に見合った作動油が吸込通路14を介してリザーバ12から供給される。そして、緩衝器Dは、排出通路10を通過してリザーバ12へ移動する作動油の流れに減衰弁V1で抵抗を与えることによってロッド側室8内の圧力を上昇させて伸側減衰力を発揮する。
【0019】
上述したところから理解できるように、緩衝器Dは、伸縮作動を呈すると、必ずシリンダ5内から排出通路10を介して作動油をリザーバ12へ排出し、作動油がピストン側室9、ロッド側室8、リザーバ12を順に一方通行で循環するユニフロー型の緩衝器に設定され、伸圧両側の減衰力を単一の減衰弁V1によって発生するようになっている。なお、ロッド7の断面積をピストン6の断面積の二分の一に設定しておくことで、同振幅であればシリンダ5内から排出される作動油量を伸圧両側で等しく設定できるため、減衰弁V1が流れに与える抵抗を同じにしておくことで伸側と圧側の減衰力を同じに設定することができる。
【0020】
つづいて、減衰弁V1は、パイプ11の開口部に設けたスリーブ11aに嵌合して流路Pを備えた中空なバルブハウジング16と、バルブハウジング16内に収容される弁体2と、ソレノイドSと、弁体2に流路面積を最大とする方向に推力を与えるバネ3と、弁体2に流路面積を制限する方向に推力を与える遮断弾性体としてのバネ17と、フェール弁4とを備えて構成されている。
【0021】
バルブハウジング16は、図1に示すように、軸線に沿う横孔16aと、横孔16aに通じる縦孔16bとを備え、図中左端となる先端の外周をパイプ11のスリーブ11aに嵌合して、横孔16aの左端開口部をパイプ11とシリンダ5の間で形成される排出通路10内に臨ませるとともに、縦孔16bをリザーバ12に臨ませており、横孔16aおよび縦孔16bで流路Pを形成している。
【0022】
また、バルブハウジング16は、横孔16aの途中であって縦孔16bより排出通路10側となる図1中左方側に小内径部16cを設けて当該小内径部16cの内縁で形成される環状の弁座18を備えており、外周には、縦孔16bの開口部より排出通路10側となる図1中左方側にフランジ16dと、縦孔16bの開口部より反排出通路10側となる図1中右方側に大外径部16eを備えている。
【0023】
さらに、バルブハウジング16のスリーブ11aへの嵌合部の外周には、シールリング19が装着されており、排出通路10とリザーバ12との間がシールされ、流路P以外を介して排出通路10とリザーバ12とが連通されないようになっている。
【0024】
また、バルブハウジング16のフランジ16dは、外筒13の側部に設けた開口13aに取付けた筒13bの内周に嵌合され、当該筒13bの内周に設けた段部13cに当接されている。筒13bは、端部外周に符示しない螺子部を備えており、この筒13bには、ソレノイドSを内包した有底筒状のケース20が螺着される。
【0025】
そして、当該ケース20は、筒部20aと筒部20aの開口端を加締めて固定される底部20bと、筒部20aの内周側に設けられてソレノイドSにおける巻線21を保持するソレノイドボビン22を保持するフランジ20cとを備えており、このフランジ20cと筒13bにおける段部13cとでバルブハウジング16のフランジ16dおよび非磁性体のスペーサ23を挟持し、これによってバルブハウジング16が緩衝器Dに固定される。このように固定されてもフランジ16dで流路Pのリザーバ12への連通が断たれることが無いように、フランジ16dには貫通孔16fが形成されている。
【0026】
ソレノイドSは、上記した有底筒状のケース20と、巻線21を保持するとともにケース20の底部に固定される環状のソレノイドボビン22と、有底筒状であってソレノイドボビン22の内周に嵌着される第一固定鉄心24と、同じくソレノイドボビン22の内周に嵌着される筒状の第二固定鉄心25と、同じくソレノイドボビン22の内周に嵌着されるとともに第一固定鉄心24と第二固定鉄心25との間に介装される非磁性体の筒状のスペーサ26と、第一固定鉄心24の内周側に配置される有底筒状の可動鉄心27と、バルブハウジング16の大外径部16eの外周に摺動自在に装着されて可動鉄心27とは別にもう一つの可動鉄心としても機能する筒状のフェール弁体28とを備えて構成されている。
【0027】
そして、有底筒状の可動鉄心27は、筒の開口端側を第一固定鉄心24の内方へ向けて第一固定鉄心24の内周に摺動自在に挿入されるとともに、第一固定鉄心24の底部に設けた非磁性体のワッシャ29に当接するまで第一固定鉄心24内に進入しても、図1中左方の底部側面が第二固定鉄心25の内周に若干対向するか至近に配置されるようになっている。また、可動鉄心27の筒の肉厚には通孔27aが設けられており、第一固定鉄心24と可動鉄心27で仕切られる空間が密閉されないようになっている。
【0028】
さらに、可動鉄心27と第一固定鉄心24との間に遮断弾性体としてのバネ17が介装され、バネ17によって第一固定鉄心24から離れる方向へ推力が与えられている。このバネ17は、図1中右端が第一固定鉄心24の軸芯部に螺合される調節部材たるバネ力調整螺子30の先端に設けたバネ受30aに支承され、バネ力調整螺子30を第一固定鉄心24に対して進退させることでバネ17の支承位置を図1中左右に変更することができるようになっている。そして、この実施の形態の場合、ケース20の底部20bを筒部20aの開口端に加締めて固定する前にのみ、バネ力調整螺子30の操作をすることができるようになっているが、底部20bの筒部20aへの固定にあたり底部20bの着脱が可能な固定方法を採用すれば、バネ力調整螺子30の操作可能時期は底部20bの固定前に限られない。
【0029】
第二固定鉄心25は、筒状とされており、第一固定鉄心24側の開口端は、内周側傾斜するようにテーパされており、巻線21が通電時に発生する磁束が右端内周側に集中するようになっており、この第二固定鉄心25と第一固定鉄心24との間に介装される非磁性体のスペーサ26における図1中左端の形状は、第二固定鉄心25のテーパに符合する形状とされている。
【0030】
上述したところから、このソレノイドSにあっては、図3に示すように、磁路が第一固定鉄心24、可動鉄心27および第二固定鉄心25を通過するように形成されており、巻線21が励磁されると、第一固定鉄心24寄りに配置される可動鉄心27が第二固定鉄心25側に吸引され、可動鉄心27には図1中左側へ向かう推力が作用するようになっている。
【0031】
そして、この可動鉄心27の底部は、図1に示すように、弁要素1の弁体2に当接しており、バネ17の推力が弁体2に伝わるようになっているとともに、ソレノイドSの励磁時には、吸引される可動鉄心27を介して弁体2に図1中左側へ向かう方向の推力を与えることができるようになっている。なお、可動鉄心27の弁体2側となる図1中左側への移動限界は、バルブハウジング16の右端外周に嵌合されて大外径部16eによって左方への移動が規制されている非磁性体でなる筒状のストッパ31によって規制されている。ワッシャ29およびストッパ31を合成樹脂等としておくことで、可動鉄心27の衝合時における衝撃や音の発生を抑制することができる。
【0032】
そして、弁体2は、この実施の形態の場合、バルブハウジング16の図1中右端内周に摺接する大径部2aと、大径部2aの左端から伸びてバルブハウジング16の縦孔16bに対向する小径部2bと、小径部2bの左端に形成されるポペット型の弁頭2cとを備えて構成され、弁頭2cが弁座18に離着座することで流路Pを開閉することができるようになっている。なお、この弁体2の場合、小径部2bがバルブハウジング16の内周との間に隙間を形成するようになっており、弁体2が縦孔16bを閉塞することが無いよう配慮されている。
【0033】
また、この弁体2における大径部2aの左端とバルブハウジング16の小内径部16cの右端との間には、バネ3が介装されており、当該バネ3は、弁体2を弁座18から遠ざける方向に推力を発揮しており、弁体2に流路Pにおける流路面積を最大とする方向に推力を与えている。
【0034】
したがって、弁体2は、可動鉄心27を介してバネ3とバネ17で挟み込まれており、バネ3によって流路Pの流路面積を最大とする方向への推力が作用するとともに、反対に可動鉄心27を介してバネ17によって流路Pの流路を制限する方向への推力が作用しており、弁体2はソレノイドSへの通電が無い状態では、弾性体たるバネ3による推力が遮断弾性体たるバネ17の推力に釣り合うか上回って、可動鉄心27がワッシャ29へ当接するまで第一固定鉄心24内に押し込まれ、流路Pを最大開放する位置にまで弁体2を弁座18から後退するようになっている。
【0035】
ここで、バネ3とバネ17は上述したところから理解できるように、直列配置されているため、バネ力調整螺子30でバネ17の支承位置を調節すると、バネ17の圧縮された状態における長さ、すなわち、圧縮長さを変更するだけでなく、バネ3の圧縮長さをも調節することができ、これらバネ3,17が弁体2に作用させる初期推力を調節することができるようになっている。
【0036】
この初期推力を調節することで、ソレノイドSへの供給電流量に対する弁体2の位置、すなわち、弁要素1における流路面積を調整することができる。調節部材は、バネ17の支承位置を軸方向に調節することができればよいので、上記したバネ力調整螺子30に限定されるものではない。
【0037】
戻って、ソレノイドSにおける第二固定鉄心25は、ソレノイドボビン22より図1中左方へ突出されており、第二固定鉄心25の左端外周には、スペーサ23が嵌合される。詳しくは、スペーサ23は、筒状であって右端内周にフランジ23aを備え、当該フランジ23aの内周を第二固定鉄心25の外周に嵌合させている。また、スペーサ23は、外筒13に設けた筒13bの内周にも嵌合されており、その外周に装着したシールリング32によって、スペーサ23と筒13bとの間シールされている。
【0038】
フェール弁4は、バルブハウジング16大外径部16eの外周に摺動自在に装着されるフェール弁体28と、フェール弁体28とスペーサ23のフランジ23aとの間に介装されるフェール弾性体たるバネ33とを備えて構成される。
【0039】
フェール弁体28は、筒状であって外周側に設けた鍔28aと、バルブハウジング16のフランジ16dの図1中右端面に対向する環状突起28bと、内周と外周とを連通するオリフィス28cと、図1中右端から開口してオリフィス28cへ通じる通孔28dとを備えて構成され、鍔28aとスペーサ23のフランジ23aとの間に介装されるバネ33によって、バルブハウジング16のフランジ16d側へ向けて常に推力が与えられている。
【0040】
そして、このフェール弁体28の右端は、第二固定鉄心25の左端に対向しており、図3に示すように、磁路が、第二固定鉄心25、フェール弁体28、バルブハウジング16、筒13bおよびケース20を通過するように形成されている。上述したところから、このソレノイドSにあっては巻線21が励磁されると、フェール弁体28が第二固定鉄心25に吸引され、フェール弁体28には図1中右側へ向かう推力が作用するようになっている。そして、ソレノイドSへの供給電流が所定値を超えると、ソレノイドSによってフェール弁体28に作用する推力がバネ33の推力に打ち勝って第二固定鉄心25に吸着して流路Pを最大開放する。
【0041】
反対に、ソレノイドSへの供給電流が所定値以下となる場合、ソレノイドSによってフェール弁体28に作用する推力がバネ33の推力に打ち勝つことができず、フェール弁体28は環状突起28bをバルブハウジング16のフランジ16dへ当接させて流路面積を制限する。このとき、フェール弁体28のオリフィス28cが流路Pに対向して、オリフィス28cのみを介して流路Pを連通するようになるので流路面積をオリフィス28cの流路面積にまで制限する。
【0042】
したがって、ソレノイドSへの供給電流が所定値を超えると、フェール弁4は、流路Pを開放する開放ポジションを採り、反対に、ソレノイドSへの供給電流が所定値以下の状態では、オリフィス28cのみを介して流路Pを連通するフェールポジションを採る。
【0043】
なお、フェール弁体28が第二固定鉄心25に密着しても、通孔28dが第二固定鉄心25の端部によって閉塞されず、連通状態を保つようになっており、フェール弁体28が第二固定鉄心25に密着した状態となっても、可動鉄心27が収容される空間が閉塞されないようになっており、これによって、弁体2がロックされて移動不能となってしまうといった事態が阻止される。
【0044】
以上のように構成された減衰弁V1は、ソレノイドSへ電流供給を行うことが可能な通常作動時には、図4に示すように、ソレノイドSへ所定値I1を超えるI2からI3の範囲で電流が供給され、フェール時にはソレノイドSへの電流供給を停止する。なお、フェール時は、通電不能である場合に当然のこととして、ソレノイドSへ通電可能であっても電流供給を行わないようになっている。また、通常作動時の電流値の上限であるI3は、ソレノイドSの定格によって決せられており、フェール弁4がフェールポジションへ切換わる電流値I1を通常作動時における範囲の下限としないのは、電源電圧の安定性やノイズによってソレノイドSへの供給電流が振動的となったり電流不足となったりして、通常作動させたい場合にもフェール弁4がフェールポジションに切換わってしまうことを防止するため、所定値I1と通常作動時の下限の電流値I2との間に誤動作防止のマージンを設けているのである。
【0045】
最初に、通常作動時について説明する。通常作動時には、ソレノイドSには、所定値I1を超える電流値の範囲となるI2からI3の範囲で電流が供給されるため、フェール弁4は流路Pを開放した状態となる。他方、弁要素1にあっては、ソレノイドSから受ける弁座18側への推力によって弁体2の流路Pの開放度合あるいは開弁圧が調節されることになる。
【0046】
そして、この緩衝器Dが伸縮作動すると、シリンダ5内から排出通路10を介して押し出される作動油が減衰弁V1における弁要素1を通過してリザーバ12へ移動する。この作動油の流れに弁要素1で抵抗が与えられシリンダ5内の圧力が上昇して、減衰力が発生される。
【0047】
この減衰力は、弁要素1で与える抵抗の大きさによって変更することができ、具体的には、ソレノイドSへの供給電流が電流値I2となるときに弁要素1で与える抵抗が最小となって、緩衝器Dは、最小のソフトな減衰力を発生し、反対に、ソレノイドSへの供給電流が電流値I3となるときに弁要素1で与える抵抗が最大となって、緩衝器Dは、最大のハードな減衰力を発生し、ソレノイドSへの電流供給量を変更することで緩衝器Dの減衰力をソフトからハードの間で無段階に調節することができる。
【0048】
転じて、フェール時には、ソレノイドSへは通電されないため、弁要素1における弁体2はバネ17に抗してバネ3のバネ力によって図1中右方へ後退せしめられて流路Pを開放し、反対に、フェール弁4におけるフェール弁体28は、バネ33によるバネ力によってバルブハウジング16のフランジ16d側へ押圧されて環状突起28bをフランジ16dに当接させて流路Pにおける流路面積をオリフィス28cにおける流路面積にまで制限することになる。
【0049】
この状態において、緩衝器Dが伸縮作動すると、シリンダ5内から排出通路10を介して押し出される作動油がフェールポジションに移行したフェール弁4のオリフィス28cを通過してリザーバ12へ移動する。この作動油の流れにオリフィス28cで抵抗が与えられシリンダ5内の圧力が上昇して、減衰力が発生される。
【0050】
すなわち、フェール時における緩衝器Dが発生する減衰力は、オリフィス28cで与える抵抗のみによって決定される。つまり、オリフィス28cにおける流路面積を適当な値に設定することで、フェール時の減衰力を設定することができ、また、オリフィスの流路面積は、単一の孔の径で設定することができ、加工上、大きくばらつくことが無く、狙った通りの安定した減衰力を得ることができる。
【0051】
上述したように、この減衰弁V1にあっては、単一のソレノイドSで弁要素1とフェール弁4を独立して駆動し、ソレノイドSへの供給電流が所定値を超える状態では、弁要素1のみが流路Pを制限してフェール弁4は流路Pに影響を与えず、反対に、ソレノイドSへの供給電流が所定値以下である場合にはフェール弁4のみが流路Pを制限して弁要素1は流路Pに影響を与えないようになっているので、弁要素1とフェール弁4が互いに干渉しあうことが無く、減衰力調整とフェールセーフを確実に行うことができる。
【0052】
それゆえ、公差等による製品毎のバラツキを補正するために、弁要素1における弁体2に推力を与えている弾性体たるバネ3や遮断弾性体たるバネ17の初期荷重を調節しても、フェール弁4には影響が無く、フェール時の減衰力に影響を与えることが無いから、フェール時と通常作動時における製品のバラツキを無くすことができる。
【0053】
また、ソレノイドSは、供給電流が所定値を超えるとフェール弁体28自体を可動鉄心として吸引するので、別途の可動鉄心の設置が不要となって部品点数を削減できる。
【0054】
さらに、弾性体たるバネ3と遮断弾性体たるバネ17の圧縮長さを調節して初期推力を調節する調節部材たるバネ力調整螺子30を備えたので、製品毎の減衰力のバラツキを無くすことができる。
【0055】
そして、この実施の形態の場合、可動鉄心27は遮断弾性体たるバネ17と弁体2との間に介装されているので、可動鉄心27が第一固定鉄心24内で遊んでしまうことが無く、振動の入力によって弁体2やワッシャ29に衝突して異音を発生してしまうような事態が阻止される。
【0056】
フェール弁体28は、フェールポジションを採ると流路に対向して流路を制限するオリフィス28cを備えているので、流路Pに別途オリフィスを備えたサブ流路を並列させるような構成を採用せずにすみ、減衰弁V1の構造を複雑化せずにすむという利点がある。ただし、流路Pに並列するようオリフィスを備えたサブ流路を設けておいて、フェール時に流路Pを完全にフェール弁体28で遮断してサブ流路のみを機能させる構成を採用することを妨げる趣旨ではない。
【0057】
なお、オリフィス弁体28の環状突起28bの先端に切欠を設けてオリフィスを形成してもよいが、上記した実施の形態に示した孔空け加工によって形成されるオリフィス28cを採用することで、フェール時の減衰力のばらつきを最小限に留めることができるので、狙った通りの安定した減衰力を得ることができる。
【0058】
また、弁要素1は、上述したところでは、ポペット弁とされているが、ソレノイドSによって駆動されて開弁圧や流路面積を調節することが可能であればよいので、弁形式は上述したポペット弁形式に限定されない。したがって、たとえば、スプール弁として構成されてもよい。
【0059】
つづいて、図5に示す他の実施の形態における減衰弁V2について説明する。この他の実施の形態の減衰弁V2は、減衰力を発生させる減衰力発生源として主弁40を設け、この主弁40の開弁圧を通常作動時には一実施の形態における弁要素1により、フェール時にはフェール弁4によって、調整することで通常作動時における減衰力調整とフェール時における減衰力の発生を実現している。
【0060】
したがって、この他の実施の形態における減衰弁V2が一実施の形態における減衰弁V1と異なるのは、主弁40の設置と、それに伴ってバルブハウジング16の構成の一部を若干変更している点である。
【0061】
なお、他の実施の形態における減衰弁V2の説明にあたり、一実施の形態における減衰弁V1と同じ部材については、説明が重複するので同じ符号を付するのみとして詳しい説明を省略することとする。
【0062】
さて、この他の実施の形態における減衰弁V2の異なる点について詳しく説明すると、一実施の形態における減衰弁V1でバルブハウジング16の左端をパイプ11のスリーブ11aに嵌合していたところ、この減衰弁V2では、バルブハウジング16の横孔16aに螺着されるとともに主弁40を備えるアダプタ41をスリーブ11aに嵌合している。
【0063】
このアダプタ41は、図5に示すように、スリーブ11a内に嵌合される大径の基部41aと、基部41aから図5中右方へ突出する軸部41bと、基部41aと軸部41bとを貫くように形成される横孔41cと、横孔41cの途中に交差して横孔41cを軸部41bの側部外周へ連通する縦孔41dと、横孔41cの途中であって縦孔41dの交差点より左方となる排出通路10側に設けた固定弁たる固定オリフィス42と、基部41aを図5中左端から右端へ貫く複数のポートでなる主流路43と、基部41aの図5中右端に主流路43の出口の外周側に形成される環状の主弁座44とを備えて構成されている。
【0064】
そして、軸部41bは、バルブハウジング16の横孔16a内に挿入されるとともに螺合され、バルブハウジング16に連結され、アダプタ41の横孔41cはバルブハウジング16の横孔16aに連通されている。また、アダプタ41の軸部41bをバルブハウジング16の横孔16aに螺着しても、軸部41bが弁要素1に干渉しない長さに設定されている。このように他の実施の形態における減衰弁V2にあっては、アダプタ41の横孔41c、バルブハウジング16の横孔16aおよび縦孔16bによって流路Pが形成されている。
【0065】
なお、このアダプタ41の基部41aの外周には、シールリング45が装着されており、これによってスリーブ11aとの間がシールされ、基部41aの外周を介して排出通路10がリザーバ12へ通じてしまうことが無いようになっている。
【0066】
つづいて、アダプタ41の基部41aの図5中右端には、主弁座44に離着座して主流路43を開閉する主弁体たる環状のリーフバルブ46が積層されており、このリーフバルブ46の内周は、軸部41bをバルブハウジング16の横孔16aに螺着した際に、基部41aとバルブハウジング16の図5中左端によって挟持されるようになっており、リーフバルブ46は外周を自由端として撓むことができるようになっており、リーフバルブ46は主流路43に臨む正面側から受ける圧力で撓んで主流路43を開放するようになっている。
【0067】
上記したバルブハウジング16の図5中左端は、一実施の形態と異なり小径部16gが設けられており、この小径部16gの外縁でリーフバルブ46の撓みの支点を決するとともに、小径部16gには、外周側から横孔16aに通じる通孔16hが設けられている。
【0068】
さらに、このバルブハウジング16のフランジ16dより左方外周には、鍔付き筒状のスライダ47が摺動自在に装着されており、スライダ47の鍔とフランジ16dとの間に介装されるバネ48によって図5中左方へ附勢されてスライダ47の左端がリーフバルブ46の外周に当接し、リーフバルブ46は背面から受けるバネ48の附勢力によって主弁座44へ向けて附勢されている。
【0069】
そして、このスライダ47、リーフバルブ46およびバルブハウジング16によって、バルブハウジング16の小径部16gの側方に環状の背圧室49が形成されており、通孔16hを介して流路Pの途中であって固定オリフィス42と弁要素1における弁体2との間の圧力(二次圧力)を上記背圧室49に導入するようになっており、リーフバルブ46の背面にはバネ48による附勢力以外に、主弁座44へ押圧する方向へ向けて上記二次圧力も作用するようになっている。なお、固定弁は、オリフィス42以外にもチョークでもよい。
【0070】
すなわち、緩衝器Dの伸縮作動する際に、リーフバルブ46には、正面側から主流路43を介してシリンダ5内の圧力が作用するとともに、背面側からは二次圧力とバネ48による附勢力が作用し、シリンダ5内の圧力によってリーフバルブ46の外周を図5中右方へ撓ませようとする力が、リーフバルブ46自身の撓み剛性、二次圧力に二次圧力がリーフバルブ46に作用する受圧面積を乗じた力およびバネ48の附勢力を合計した合力に打ち勝つと、バネ48が圧縮されてスライダ47が基部41aから後退してリーフバルブ46が撓んで主流路43が開放される。
【0071】
なお、スライダ47をバルブハウジング16の外周に装着する関係上、スライダ47の動きを妨げることが無いように、シールリング19は廃止されている。また、スライダ47はリーフバルブ46の撓みによって後退してもバネ48によって附勢されているため、背圧室49がリザーバ12に直接連通されてしまうことが無いようになっている。このため、バネ48は、背圧室49のリザーバ12への連通を阻止可能な程度の附勢力を発生できればよい。
【0072】
ここで、減衰弁V2を通常動作させる場合には、一実施の形態と同様、図4に示すように、ソレノイドSに、所定値I1を超える電流値の範囲となるI2からI3の範囲で電流を供給して、弁要素1における弁体2の開弁圧を調節するようにすると、流路Pにおける固定オリフィス42と弁要素1の間の二次圧力を弁要素1の開弁圧に調節することができる。
【0073】
このように、弁要素1の開弁圧を調節することで二次圧力を調節することができ、リーフバルブ46の背面に作用する二次圧力を調節することによって、リーフバルブ46の主流路43を開放する開弁圧をコントロールすることができる。
【0074】
すなわち、ソレノイドSに供給する電流量によって主弁体たるリーフバルブ46と主弁座44とでなる主弁40における開弁圧を電流量によって調節し、緩衝器Dの伸長時にあってはロッド側室8内の圧力を主弁40の開弁圧にコントロールし、緩衝器Dの圧縮時にあってはシリンダ5内の圧力を主弁40の開弁圧にコントロールすることができる。具体的には、ソレノイドSへの供給電流が電流値I2となるときに弁要素1における開弁圧が最小となって主弁40における開弁圧も最小となり、緩衝器Dは、最小のソフトな減衰力を発生し、反対に、ソレノイドSへの供給電流が電流値I3となるときに弁要素1における開弁圧が最大となって主弁40における開弁圧が最大となって、緩衝器Dは、最大のハードな減衰力を発生し、ソレノイドSへの電流供給量を変更することで緩衝器Dの減衰力をソフトからハードの間で無段階に調節することができる。
【0075】
このように他の実施の形態における減衰弁V2にあっては、レノイドSへの供給電流に応じた推力を弁体2に与えることで二次圧力を調節して主弁40における開弁圧を調節するため、流路Pを流れる流量に依存することなく二次圧力を狙い通りに調節でき、緩衝器Dの伸縮速度が低速域にある場合にもソレノイドSへの供給電流に対する減衰力変化が線形に近く、制御性が向上する。また、レノイドSへの供給電流に応じた推力を弁体2に与えることで主弁体たるリーフバルブ46の背面に作用する二次圧力を調節するので、減衰力のばらつきも小さくすることができる。
【0076】
そして、フェール時には、ソレノイドSへは通電されないため、弁要素1における弁体2はバネ17に抗してバネ3のバネ力によって図5中右方へ後退せしめられて流路Pを開放し、反対に、フェール弁4におけるフェール弁体28は、バネ33によるバネ力によってバルブハウジング16のフランジ16d側へ押圧されて環状突起28bをフランジ16dに当接させて流路Pにおける流路面積をオリフィス28cにおける流路面積にまで制限することになる。
【0077】
この状態において、緩衝器Dが伸縮作動すると、二次圧力は、固定オリフィス42とオリフィス28cの抵抗によって決定され、固定オリフィス42における抵抗がオリフィス28cにおける抵抗より小さければ、二次圧力は大きくなり、反対に、固定オリフィス42における抵抗がオリフィス28cにおける抵抗より大きければ、二次圧力は小さくなる。つまり、オリフィス28cの設定によって、フェール時における二次圧力の大きさを決定することができ、主弁40の開弁圧を任意に設定することができる。
【0078】
すなわち、この減衰弁V2にあっては、通常作動時に主弁40の開弁圧を調節して緩衝器Dの減衰力を調節するにあたり、フェール弁4を開放ポジションとして弁要素1のみを機能させるようにし、反対にフェール時に主弁40の開弁圧を一定させて緩衝器Dの減衰力を発生させるにあたっては、弁要素1で流路Pを制限させずにフェール弁4によってのみ流路面積を制限するようにしている。
【0079】
したがって、減衰弁V1にあっては作動油を主として流路Pを通過させ、通常作動時には弁要素1でフェール時にはフェール弁4でそれぞれ抵抗を与えて減衰力を発生していたところ、減衰弁V2にあっては、作動油を主として主流路43を通過させ、通常作動時には弁要素1でフェール時にはフェール弁4で主弁40の開弁圧を制御して減衰力を発生するようになっている。
【0080】
しかしながら、この他の実施の形態における減衰弁V2は、一実施の形態における減衰弁V1と同様に、単一のソレノイドSで弁要素1とフェール弁4を独立して駆動し、ソレノイドSへの供給電流が所定値を超える状態では、弁要素1のみが流路Pを制限してフェール弁4は流路Pに影響を与えず主弁40の開弁圧を弁要素1のみで調節し、反対に、ソレノイドSへの供給電流が所定値以下である場合にはフェール弁4のみが流路Pを制限して弁要素1は流路Pに影響を与えず主弁40の開弁圧をフェール弁4のみで設定するようになっているので、弁要素1とフェール弁4が互いに干渉しあうことが無く、減衰力調整とフェールセーフを確実に行うことができる。
【0081】
それゆえ、公差等による製品毎のバラツキを補正するために、弁要素1における弁体2に推力を与えている弾性体たるバネ3や遮断弾性体たるバネ17の初期荷重を調節しても、フェール弁4には影響が無く、フェール時の減衰力に影響を与えることが無いから、フェール時と通常作動時における製品のバラツキを無くすことができる。
【0082】
また、弁要素1、フェール弁4およびソレノイドSの構造については、上述した一実施の形態と同様の構成を採用しているので、一実施の形態における減衰弁V1と同様の作用効果を得ることができる。
【0083】
加えて、この他の実施の形態における減衰弁V2にあっては、レノイドSへの供給電流に応じた推力を弁体2に与えることで二次圧力を調節して主弁40における開弁圧を調節するため、流路Pを流れる流量に依存することなく二次圧力を狙い通りに調節でき、緩衝器Dの伸縮速度が低速域にある場合にもソレノイドSへの供給電流に対する減衰力変化が線形に近く、制御性が向上し、減衰力のばらつきも小さくすることができるという利点もある。
【0084】
また、減衰弁V1の構成に、アダプタ41、リーフバルブ46、スライダ47およびバネ48を追加するだけで、減衰弁V2の構成を実現でき、製造上便利である。なお、減衰弁V2におけるバルブハウジング16と減衰弁V1におけるバルブハウジング16とで小径部16g、通孔16hの有無によって若干異なるが、減衰弁V2におけるバルブハウジング16のスライダ47が装着される部位にシールリングを装着できるように環状溝を形成しておけば、減衰弁V1と減衰弁V2のどちらへも適用することができるので部品を共通化することができるのは言うまでも無い。
【0085】
なお、主弁40における主弁体は薄いリーフバルブ46であるため、減衰弁V2が軸方向に大型化することを防止できる利点があるが、主弁体の背面に作用する二次圧力で開弁圧を調節できればよいので、リーフバルブ以外にもスプールやポペットといった他の形式の弁体を主弁体に採用することができる。
【0086】
また、ソレノイドSについても、弁要素1における弁体2とフェール弁4とを独立して駆動することができればよいので、上述した形状、構造および磁路は一例であって、これに限定されない。
【0087】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
1 弁要素
2 弁体
2a 弁体における大径部
2b 弁体における小径部
2c 弁体における弁頭
3 弾性体としてのバネ
4 フェール弁
5 シリンダ
6 ピストン
7 ロッド
8 ロッド側室
9 ピストン側室
10 排出通路
11 パイプ
11a スリーブ
12 リザーバ
13 外筒
13a 外筒における開口
13b 外筒における筒
13c 外筒における段部
14 吸込通路
15 シリンダ内通路
16 バルブハウジング
16a バルブハウジングにおける横孔
16b バルブハウジングにおける縦孔
16c バルブハウジングにおける小内径部
16d バルブハウジングにおけるフランジ
16e バルブハウジングにおける大外径部
16f バルブハウジングにおける貫通孔
17 遮断弾性体としてのバネ
18 弁座
19,32,45 シールリング
20 ケース
20a ケースにおける筒部
20b ケースにおける底部
20c ケースにおけるフランジ
21 巻線
22 ソレノイドボビン
23,26 スペーサ
23a スペーサにおけるフランジ
24 第一固定鉄心
25 第二固定鉄心
27 可動鉄心
27a 通孔
28 フェール弁体
28a フェール弁体における鍔
28b フェール弁体における環状突起
28c フェール弁体におけるオリフィス
28d フェール弁体における通孔
29 ワッシャ
30 調節部材たるバネ力調整螺子
30a バネ力調整螺子におけるバネ受
31 ストッパ
33 フェール弾性体たるバネ
40 主弁
41 アダプタ
41a アダプタにおける基部
41b アダプタにおける軸部
41c アダプタにおける横孔
41d アダプタにおける縦孔
42 固定弁たる固定オリフィス
43 主通路
44 主弁座
46 主弁体たるリーフバルブ
47 スライダ
48 バネ
49 背圧室
D 緩衝器
P 流路
S ソレノイド
V1,V2 減衰弁
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路の途中に設けられて通過する流体に抵抗を与える弁要素と、弁要素における弁体に流路面積を制限する方向に推力を与えるソレノイドと、当該弁体に流路面積を最大とする方向に推力を与える弾性体とを備えた減衰弁において、流路の途中に弁要素に直列配置されるフェール弁を設け、当該フェール弁は、流路を開放する開放ポジションと流路面積を減じるフェールポジションとを有し、ソレノイドへの供給電流が所定値を超えると固定鉄心に吸着して開放ポジションを採り、ソレノイドへの供給電流が所定値以下となるとフェールポジションを採り、単一のソレノイドで弁要素とフェール弁とを独立して駆動することを特徴とする減衰弁。
【請求項2】
フェール弁は、流路の途中に、弁要素とは離れて独立してかつ当該弁要素に直列に配置され、ソレノイドへの供給電流が所定値を超えると弁要素が流路の流路面積を制限すると共にフェール弁が開放ポジションを採り、ソレノイドへの供給電流が所定値以下となると弁要素が流路の流路面積を開放すると共にフェール弁がフェールポジションを採ることを特徴とする請求項1に記載の減衰弁。
【請求項3】
弁要素は、弁体に流路面積を最大とする方向に推力を与える弾性体と、弁体に流路面積を制限する方向に推力を与える遮断弾性体とを備え、ソレノイドへの供給電流が所定値以下となると流路面積を最大とすることを特徴とする請求項1または2に記載の減衰弁。
【請求項4】
フェール弁は、フェール弁体と、フェール弁体にフェールポジションを採る方向に推力を与えるフェール弾性体とを備え、ソレノイドへの供給電流が所定値を超えるとフェール弁体がソレノイドに吸引されて開放ポジションを採ることを特徴とする請求項1、2または3に記載の減衰弁。
【請求項5】
流路を迂回する主流路と、主流路を開閉する主弁体を有する主弁と、流路の弁要素およびフェール弁より上流側に設けた固定弁と、流路における固定弁と弁要素との間の圧力が導かれるとともに内部圧力で主流路を制限する方向へ向けて主弁体を附勢する背圧室とを備えたことを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の減衰弁。
【請求項6】
ソレノイドは、励磁時に可動鉄心を吸引して弁要素における弁体に流路面積を制限する方向に推力を与えるとともに、供給電流が所定値を超えるとフェール弁体を吸引することを特徴とする請求項4に記載の減衰弁。
【請求項7】
通常作動時に弁要素における弁体を駆動するためにソレノイドに供給される電流値の下限とフェール弁を開放ポジションに切換える所定値との間にマージンを設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6に記載の減衰弁。
【請求項8】
弾性体と遮断弾性体の圧縮長さを調節して初期推力を調節する調節部材を備えたことを特徴とする請求項3に記載の減衰弁。
【請求項9】
ソレノイドは、励磁時に可動鉄心を吸引して弁要素における弁体に流路面積を制限する方向に推力を与え、可動鉄心は遮断弾性体と弁体との間に介装されてなることを特徴とする請求項3または8に記載の減衰弁。
【請求項10】
フェール弁体は、フェールポジションを採ると流路に対向して流路を制限するオリフィスを備えたことを特徴とする請求項4または6に記載の減衰弁。
【請求項11】
ソレノイドは、弁要素の開弁圧を調節することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に記載の減衰弁。
【請求項12】
主弁における主弁体はリーフバルブであることを特徴とする請求項5に記載の減衰弁。
【請求項13】
減衰弁は、伸縮時に排出通路を介してシリンダからリザーバへ流体を排出する緩衝器における排出通路の途中に設けられることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12に記載の減衰弁。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-07-22 
結審通知日 2015-07-24 
審決日 2015-08-04 
出願番号 特願2012-266177(P2012-266177)
審決分類 P 1 113・ 113- YAA (F16F)
P 1 113・ 121- YAA (F16F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 博之  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 中川 隆司
小柳 健悟
登録日 2013-11-08 
登録番号 特許第5403772号(P5403772)
発明の名称 減衰弁  
代理人 吉田 哲生  
代理人 後藤 政喜  
代理人 吉田 哲生  
代理人 菅野 裕之  
代理人 小野 達己  
代理人 飯田 雅昭  
代理人 菅野 裕之  
代理人 上田 充  
代理人 飯田 雅昭  
代理人 須藤 淳  
代理人 伊藤 孝美  
代理人 須藤 淳  
代理人 星野 修  
代理人 後藤 政喜  
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