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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09D
管理番号 1306787
審判番号 不服2013-25573  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-26 
確定日 2015-10-13 
事件の表示 特願2009-537247号「可塑化成分及びそれを含む硬化性コーティング組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成20年5月22日国際公開、WO2008/060727、平成22年4月2日国内公表、特表2010-510352号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
この出願は、2007年8月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年11月17日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成22年8月3日及び同年8月16日に手続補正書が提出され、平成24年7月31日付けの拒絶理由の通知に対して同年11月29日に意見書及び手続補正書が提出され、平成25年8月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月26日に審判請求がなされ、平成26年9月5日付けの当審における拒絶理由の通知に対して同年12月4日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに同年12月19日付けの当審における拒絶理由の通知に対して平成27年4月3日に意見書及び手続補正書が提出されたものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年4月3日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「アクリル樹脂と、
該樹脂成分に対して反応性の、架橋剤であるアミノプラスト樹脂と、
イソシアヌレート中心骨格と該イソシアヌレート中心骨格にぶら下がる少なくとも1つの低表面張力基を有する可塑化成分と
を含み、該低表面張力基が、少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪鎖及びそれらの組み合わせから成る群から選択され、該低表面張力基が0?3つの架橋性官能基を有し、
前記可塑化成分が、一般構造:
【化1】


[式中、Rは、1?12個の炭素原子を含む部分を表し、
Lは、ウレタン基を表し、
R_(1)は、6?18個の炭素原子を有する脂肪鎖及びそれらの組み合わせを表し、
Fは、第二級ヒドロキシル基を表し、かつLから少なくとも炭素原子4個分離れている]で表される、硬化性コーティング組成物であって、
前記可塑化成分は、前記硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、5?20質量部であり、
前記樹脂成分は、前記硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、40?70質量部であり、
前記架橋剤は、前記硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、15?25質量部である、硬化性コーティング組成物。」

II.当審における拒絶理由の概要
平成26年12月19日付けの当審における拒絶理由の概要は、「本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された特開2000-234014号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」旨を理由の一つにするものである。

III.特開2000-234014号公報(以下、「引用例」という。)に記載の事項
引用例には、以下の記載がある。
(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 分子末端にイソシアネート基を有し、かつ、イソシアネート基の反応により誘導される、実質的にウレタン結合を含まない結合単位によって変性されている変性ポリイソシアネートと、
活性水素成分としてのモノオールとを反応させることによって得られる、イソシアネート基含有率が0.5%以下であることを特徴とする、ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】 変性ポリイソシアネートが、アロファネート結合、ビウレット結合およびイソシアヌレート結合からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合単位によって変性されている、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】 活性水素成分として、さらに、分子内に活性水素基を少なくとも2つ以上有する多官能性活性水素基含有化合物が含まれている、請求項1または2に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項4】 変性ポリイソシアネートと活性水素成分とを、活性水素成分の活性水素基に対する変性ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が0.9?1.1の割合となるように反応させる、請求項1?3のいずれかに記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項5】 可塑剤として使用される、請求項1?4のいずれかに記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項6】 シーリング材、防水材、接着剤、塗料および舗装材に配合される、請求項1?5のいずれかに記載のウレタン樹脂組成物。」

(b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ウレタン樹脂組成物、詳しくは、シーリング材、防水材、接着剤、塗料および舗装材などの可塑剤として好適に使用されるウレタン樹脂組成物に関する。」

(c)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の公報に記載されるウレタン変性化合物、あるいはウレタン変性ポリエーテル化合物を、シーリング材や防水材に配合して、硬化させた後の表面に塗装を施すと、当初は耐ブリード性を良好に維持して、塗膜汚染を改善することはできるが、屋外などの環境下において長期的に使用される場合には、やはりウレタン変性化合物、あるいはウレタン変性ポリエーテル化合物がブリードして、シーリング材や防水材が硬くなり、あるいは、体積収縮を引き起して、塗膜のひび割れの原因となる場合がある。
【0005】本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、配合されたベース樹脂から長期にわたりブリードせず、塗膜表面の劣化などを少なくすることができる、ウレタン樹脂組成物を提供することにある。」

(d)「【0010】
【発明の実施の形態】本発明に用いられる変性ポリイソシアネートは、分子末端にイソシアネート基を有し、かつ、イソシアネート基の反応により誘導される、実質的にウレタン結合を含まない結合単位によって変性されているものであって、このような変性ポリイソシアネートは、原料としてポリイソシアネートを用い、これを所定の条件下において変性のための反応を行なうことによって得ることができる。」(当審注:下線は当審において付与した。以下同じ。)

(e)「【0015】脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアネートオクタン、1,6,11-トリイソシアネートウンデカン、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアネートヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアネートメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどが挙げられる。
【0016】これらポリイソシアネートは、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。好ましくは、芳香族、芳香脂肪族、脂環族および脂肪族のジイソシアネートが挙げられる。
【0017】そして、ポリイソシアネートの変性は、ポリイソシアネートの有するイソシアネート基を、所定の条件下において反応させて、例えば、アロファネート結合、ビウレット結合、イソシアヌレート結合、ウレチジオン結合、ウレア結合、カルボジイミド結合、ウレトンイミン結合、オキサジアジントリオン結合など、ウレタン結合以外の結合単位を生成させることにより行なわれる。このような変性のための反応は、必要により、例えば、モノオール、ポリオール、水、モノアミン、ポリアミンなどの公知の変性原料や、例えば、アミン系触媒、金属系触媒、燐系触媒などの公知の触媒を用いて、常法に従って行なうことができ、変性ポリイソシアネートは、このような反応の後、未反応のポリイソシアネートを公知の方法によって除去することにより得ることができる。」

(f)「【0029】また、本発明では、活性水素成分として、さらに、多官能性活性水素基含有化合物を含ませて、これを、モノオールとともに、変性ポリイソシアネートと反応させてもよい。このような多官能性活性水素基含有化合物は、変性ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応し得る、例えば、水酸基、アミノ基などの活性水素基を分子内に少なくとも2つ以上有する多官能性の化合物であって、ポリウレタンなどの製造に通常使用される、例えば、低分子量ポリオール、低分子量ポリアミンおよび低分子量アミノアルコールや、マクロポリオールなどが挙げられる。
【0030】低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルカン(C7?C22)ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、アルカン-1,2-ジオール(C17?C20)、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコール、ビスヒドロキシエチレンテレフタレートなどの低分子量ジオール、例えば、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノール、およびその他の脂肪族トリオール(C8?C24)などの低分子量トリオール、例えば、テトラメチロールメタン、D-ソルビトール、キシリトール、D-マンニトール、D-マンニットなどの水酸基を4個以上有する低分子量ポリオールなどが挙げられる。」

(g)「【0050】このようにして得られた、本発明のウレタン樹脂組成物は、実質的にイソシアネート基を含有せず、可塑剤として好適に使用でき、特に、シーリング材、防水材、接着剤、塗料および舗装材などのベース樹脂に好適に配合される。なお、ベース樹脂の種類は、例えば、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、変成シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリサルファイド樹脂など、公知の合成樹脂のいずれであってもよく、特に制限されることなく配合できる。ベース樹脂に配合する割合は、通常、5?20重量%であり、公知のミキサーなどを用いて混練などによって配合し得る。」

IV.引用例記載の発明
(ア)上記(b)(c)より、引用例には、「塗料を硬化させる」こと、つまり「硬化性塗料を硬化させる」ことが記載されているということができる。

(イ)上記(d)の「変性ポリイソシアネートは、原料としてポリイソシアネートを用い、これを所定の条件下において変性のための反応を行なうことによって得ることができる」(【0010】)、上記(e)の「ポリイソシアネートの変性は、ポリイソシアネートの有するイソシアネート基を、所定の条件下において反応させて、例えば、アロファネート結合、ビウレット結合、イソシアヌレート結合、ウレチジオン結合、ウレア結合、カルボジイミド結合、ウレトンイミン結合、オキサジアジントリオン結合など、ウレタン結合以外の結合単位を生成させることにより行なわれる。このような変性のための反応は、必要により、例えば、モノオール、ポリオール、水、モノアミン、ポリアミンなどの公知の変性原料や、例えば、アミン系触媒、金属系触媒、燐系触媒などの公知の触媒を用いて、常法に従って行なうことができ」(【0017】)、同「脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、・・・ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、・・・などが挙げられる。」(【0015】)、上記(f)の「低分子量ポリオールとしては、例えば、・・・2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、・・・などが挙げられる。」(【0030】)および同「また、本発明では、活性水素成分として、さらに、多官能性活性水素基含有化合物を含ませて、これを、モノオールとともに、変性ポリイソシアネートと反応させてもよい。このような多官能性活性水素基含有化合物は、変性ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応し得る、例えば、水酸基、アミノ基などの活性水素基を分子内に少なくとも2つ以上有する多官能性の化合物であって、ポリウレタンなどの製造に通常使用される、例えば、低分子量ポリオール、低分子量ポリアミンおよび低分子量アミノアルコールや、マクロポリオールなどが挙げられる。」(【0029】)より、引用例には、「ポリイソシアネートの変性において、モノオールとともに低分子量ポリオールを用いる際、変性ポリイソシアネートの内に、ポリイソシアネートに対してポリオールのみが反応したもの、例えば、3つのヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート結合したポリイソシアネートと2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオールとの反応生成物が含まれており、これは、
構造式:


であって、3つのヘキサメチレンジイソシアネートそれぞれの一方のイソシアネート基(3つ)がイソシアヌレート結合し、Rは、ヘキサメチレンジイソシアネートの6個の炭素原子の部分を表し、Lは、ヘキサメチレンジイソシアネートの他方のイソシアネート基と2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオールの一方のヒドロキシ基とが結合したウレタン基を表し、R_(1)は、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオールの10個の炭素原子の部分(脂肪鎖)を表し、Fは、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオールの他方の第二級ヒドロキシル基を表し、かつLから炭素原子6個分離れている、変性ポリイソシナネートである」ことが記載されているということができる。

上記(a)ないし(f)の記載事項、上記(ア)および(イ)の検討事項より、引用例には、「アクリル樹脂と、構造式:


の可塑剤(変性ポリイソシナネート)とを含み、可塑剤(変性ポリイソシナネート)が『F、R_(1)』以外と該『F、R_(1)』以外にぶら下がる3つのR_(1)を有し、該R_(1)のそれぞれが10個の炭素原子を有する脂肪鎖であり、該R_(1)のそれぞれが1つのFを有し、[式中、Rは、6個の炭素原子を含む部分を表し、Lは、ウレタン基を表し、R_(1)は、10個の炭素原子を有する脂肪鎖を表し、Fは、第二級ヒドロキシル基を表し、かつLから炭素原子6個分離れている]で表される、硬化性塗料。」(引用例記載の発明)が記載されているものと認める。

V.対比・判断
本願発明と引用例記載の発明とを対比する。
○引用例記載の発明の「『F、R_(1)』以外」、「第二級ヒドロキシ基」、「R_(1)」、「可塑剤(変性ポリイソシナネート)」および「硬化性塗料」は、本願発明の「イソシアヌレート中心骨格」、「架橋性官能基」、「低表面張力基」、「可塑化成分」および「硬化性コーティング組成物」のそれぞれに相当する。

○引用例記載の発明の「構造式:」は、本願発明の「一般構造:
【化1】」に相当する。

○引用例記載の発明の「アクリル樹脂と、可塑剤(変性ポリイソシナネート)とを含み、可塑剤(変性ポリイソシナネート)が『F、R_(1)』以外と該『F、R_(1)』以外にぶら下がる3つのR_(1)を有し、該R_(1)のそれぞれが10個の炭素原子を有する脂肪鎖であり、該R_(1)のそれぞれが1つのFを有」することは、本願発明の「アクリル樹脂と、」「イソシアヌレート中心骨格と該イソシアヌレート中心骨格にぶら下がる少なくとも1つの低表面張力基を有する可塑化成分とを含み、該低表面張力基が、少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪鎖及びそれらの組み合わせから成る群から選択され、該低表面張力基が0?3つの架橋性官能基を有」することに相当する。

○引用例記載の発明の「式中、Rは、6個の炭素原子を含む部分を表し、Lは、ウレタン基を表し、R_(1)は、10個の炭素原子を有する脂肪鎖を表し、Fは、第二級ヒドロキシル基を表し、かつLから炭素原子6個分離れている」は、本願発明の「式中、Rは、1?12個の炭素原子を含む部分を表し、Lは、ウレタン基を表し、R_(1)は、6?18個の炭素原子を有する脂肪鎖及びそれらの組み合わせを表し、Fは、第二級ヒドロキシル基を表し、かつLから少なくとも炭素原子4個分離れている」ことに相当する。

上記より、本願発明と引用例記載の発明は、
「アクリル樹脂と、イソシアヌレート中心骨格と該イソシアヌレート中心骨格にぶら下がる少なくとも1つの低表面張力基を有する可塑化成分とを含み、該低表面張力基が、少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪鎖及びそれらの組み合わせから成る群から選択され、該低表面張力基が0?3つの架橋性官能基を有し、
前記可塑化成分が、一般構造:
【化1】


[式中、Rは、1?12個の炭素原子を含む部分を表し、Lは、ウレタン基を表し、R_(1)は、6?18個の炭素原子を有する脂肪鎖及びそれらの組み合わせを表し、Fは、第二級ヒドロキシル基を表し、かつLから少なくとも炭素原子4個分離れている]で表される、硬化性コーティング組成物。」という点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明では、「アクリル樹脂成分に対して反応性の、架橋剤であるアミノプラスト樹脂と」を含む硬化性コーティング組成物であるのに対して、引用例記載の発明では、アクリル樹脂(アクリル樹脂成分)を含む硬化性塗料(硬化性コーティング組成物)であるものの、「アクリル樹脂成分に対して反応性の、架橋剤であるアミノプラスト樹脂と」を含む硬化性コーティング組成物であるかについて言及されていない点。

<相違点2>
本願発明では、「可塑化成分は、硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、5?20質量部であり、樹脂成分は、硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、40?70質量部であり、架橋剤は、硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、15?25質量部である」のに対して、引用例記載の発明では、上記「」内の事項について言及されていない点。

以下、両相違点について検討する。
<相違点1>について
引用例記載の発明は、硬化性塗料(硬化性コーティング組成物)であり、そして、塗料を硬化させるとき、塗料に含まれる樹脂成分に対して反応性の硬化剤(架橋剤)を用いることは極めて普通に行われていることからして、引用例記載の発明の「アクリル樹脂(アクリル樹脂成分)を含む硬化性塗料(硬化性コーティング組成物)」についても、アクリル樹脂(アクリル樹脂成分)に対して反応性の架橋剤を用いているということができる。
ここで、一般に、反応性ポリマー成分(例えば、アクリルコポリマ-、ポリビニルアセタール)と、反応性ポリマー成分に対して反応性の架橋剤(例えば、アミノプラスト樹脂)と、可塑剤としての非反応性ポリマー成分(例えば、官能性ヒドロキシ基を有するポリカプロラクトンポリマー)とを含む硬化性コーティング組成物は、従前の周知技術(例えば、原査定および当審における拒絶理由において引用した特開平2-113078号公報の特に下記※1)ないし※3)の記載参照)であり、一方、引用例記載の発明は、アクリル樹脂(アクリル樹脂成分)と、アクリル樹脂(アクリル樹脂成分)に対して反応性の架橋剤と、第二級ヒドロキシ基を有する可塑剤(可塑化成分)とを含む硬化性塗料(硬化性コーティング組成物)であるということができ、両者は、反応性ポリマー成分と、反応性ポリマー成分に対して反応性の架橋剤と、ヒドロキシ基を有する可塑剤とを含む硬化性コーティング組成物という点で共通している。
そうすると、引用例記載の発明における「アクリル樹脂(アクリル樹脂成分)に対して反応性の架橋剤」を用いることについて、上記の点で共通する上記周知技術における「架橋剤」としての「アミノプラスト樹脂」を適用すること、つまり「アクリル樹脂(アクリル樹脂成分)に対して反応性のアミノプラスト樹脂(架橋剤)」を含む硬化性塗料(硬化性コーティング組成物)にすることは、当業者であれば容易に設定し得ることである。
したがって、上記相違点1に係る技術事項を本願発明の発明特定事項とすることは、引用例記載の発明および従前の周知技術に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

<相違点2>について
一般に、反応性ポリマー成分(例えば、アクリルコポリマ-、ポリビニルアセタール)と、反応性ポリマー成分に対して反応性の架橋剤(例えば、アミノプラスト樹脂)と、可塑剤としての非反応性ポリマー成分(例えば、官能性ヒドロキシ基を有するポリカプロラクトンポリマー)とを含む硬化性コーティング組成物について、硬化性コーティング組成物の100重量部に対して、非反応性ポリマー成分(可塑剤)を2?25重量部、未硬化の反応性ポリマー成分を約55?95重量部、架橋剤を5?20重量部とすることは、従前の周知技術(例えば、原査定および当審における拒絶理由において引用した特開平2-113078号公報の特に下記※1)および※4)の記載参照)であり、一方、引用例記載の発明は、上記「<相違点1>について」で示したように、アクリル樹脂(アクリル樹脂成分)と、アクリル樹脂(アクリル樹脂成分)に対して反応性の架橋剤と、第二級ヒドロキシ基を有する可塑剤(可塑化成分)とを含む硬化性塗料(硬化性コーティング組成物)であるということができ、両者は、反応性ポリマー成分と、反応性ポリマー成分に対して反応性の架橋剤と、ヒドロキシ基を有する可塑剤とを含む硬化性コーティング組成物という点で共通している。
そうすると、引用例記載の発明の「アクリル樹脂(アクリル樹脂成分)と、アクリル樹脂(アクリル樹脂成分)に対して反応性の架橋剤と、第二級ヒドロキシ基を有する可塑剤(可塑化成分)とを含む硬化性塗料(硬化性コーティング組成物)」について、上記の点で共通する上記周知技術における「硬化性コーティング組成物の100重量部に対して、非反応性ポリマー成分(可塑剤)(例えば、官能性ヒドロキシ基を有するポリカプロラクトンポリマー)を2?25重量部、未硬化の反応性ポリマー成分(例えば、アクリルコポリマ-、ポリビニルアセタール)を約55?95重量部、架橋剤(例えば、アミノプラスト樹脂)を5?20重量部とする」ことを考慮して、硬化性塗料(硬化性コーティング組成物)の100重量部に対する、可塑剤(可塑化成分)、アクリル樹脂(アクリル樹脂成分)、架橋剤それぞれの重量部を上記従前の周知技術のレベルにすることは、当業者であれば容易に設定し得ることである。
したがって、上記相違点2に係る技術事項を本願発明の発明特定事項とすることは、引用例記載の発明および従前の周知技術に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

次に、本願発明の発明特定事項の「可塑化成分は、硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、5?20質量部であり、樹脂成分は、硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、40?70質量部であり、架橋剤は、硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、15?25質量部である」ことにおけるそれぞれの下限値・上限値に臨界的意義があるかについては、本願明細書の【0049】ないし【0065】の記載事項からすると、以下(A)ないし(C)であるということができる。
(A)樹脂成分が60質量部である実施例1、2、5、6と、同75質量部である実施例3、4、7、8について、両者の「耐エッチング性および耐クラッキング性」を比較したとき、両者の間に格別の差異があるとはいえないことからして、本願発明の発明特定事項の「樹脂成分は、硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、40?70質量部であり」における「70質量部」に臨界的意義があるとはいえない。
また、同「樹脂成分は、硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、40?70質量部であり」における「40質量部」については、40質量部よりも小さい質量部との対比データの開示がないことから、「40質量部」に臨界的意義があるとまではいえない。
(B)本願発明の発明特定事項の「架橋剤は、硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、15?25質量部である」ことについて、実施例1ないし8の全てが18.5質量部であり、15?25質量部の範囲外との対比データの開示がないことから、「15質量部」および「25質量部」に臨界的意義があるとまではいえない。
(C)本願発明の発明特定事項の「可塑化成分は、硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、5?20質量部であり」における「5質量部」および「20質量部」について、実施例1、2、5、6は「20質量%」で、実施例3、4、7、8は「5質量%」であり、5?20質量部の範囲外との対比データの開示がないことから、「5質量部」および「20質量部」に臨界的意義があるとまではいえない。

さらに、本願発明の「耐エッチング性および耐クラッキング性」については、本願明細書の【0049】ないし【0065】の記載事項および引用例の記載事項からすると、以下(α)(β)であるということができる。
(α)本願明細書における可塑化成分を用いる実施例1ないし8と、可塑化成分を用いない比較例1、2について、耐エッチング性を比較したとき、両者の間に格別の差異があるとはいえないことからして、本願発明は、顕著な「耐エッチング性」(作用効果)を有するものではない。
(β)本願明細書における可塑化成分を用いる実施例1ないし8と、可塑化成分を用いない比較例1、2について、耐クラッキング性を比較したとき、耐クラック性は向上しているということはできる。
ここで、引用例記載の発明の「可塑剤とを含む硬化性塗料(硬化性コーティング組成物)」は、可塑剤(可塑化成分)による可塑性(弾性限界以下の外力であれば変形が回復する弾性)を有し、このことにより、可塑剤(可塑化成分)を含まないものと比較して耐クラック性が向上しているということができるので、本願発明と引用例記載の発明とは、可塑化成分を含まないものと比較して耐クラック性が向上するものであるという点で軌を一にしており、そして、本願発明における耐エッチング性の向上が、引用例記載の発明の耐エッチング性の向上と比較しても顕著なものであることを示す明確な根拠があるとはいえない。
そうすると、本願発明は、顕著な「耐クラック性」(作用効果)を有するものであるとまではいえない。

よって、本願発明は、引用例記載の発明および従前の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

特開平2-1130078号公報の※1)ないし※4)の記載は、以下のとおりのものである。
※1)特許請求の範囲の請求項1ないし10
「(1)半浸透性ポリマー網状構造を含む可撓性、寸法安定性被覆の製造に使用する硬化性組成物であつて:
(a)反応性ポリマー成分;および
(b)約7,000?約30,000の間の重量平均分子量を有し、前記
の組成物を硬化させたとき少なくとも40%が抽出可能である非反応性
ポリマー成分
から成ることを特徴とする前記の組成物。
(2)前記の非反応性ポリマー成分が、可塑剤である請求項1に記載の組成物。
(3)少なくとも2官能価であり、かつ、アミノプラスト樹脂から成る架橋剤を含む請求項1に記載の組成物。
(4)該架橋剤が、メトキシメチル化メラミンである請求項3に記載の組成物。
(5)前記の反応性ポリマー成分が、約30,000?200,000の重量平均分子量および100?200のヒドロキシル価を有するポリマー物質である請求項1に記載の組成物。
(6)前記の反応性ポリマー成分が、ポリビニルアセタール;アクリルコポリマー;ポリウレタン;ポリエステル;ポリアミド;ポリエステル-アミドおよびこれらの混合物から成る群から選ばれる請求項5に記載の組成物。
(7)前記の反応性ポリマーが、ポリビニルブチラール物質である請求項6に記載の組成物。
(8)前記の非反応性ポリマー成分が、ポリカプロラクトン物質である請求項1に記載の組成物。
(9)(a)約55?95重量%の反応性ポリマー成分;および
(b)約5?25重量%の非反応性ポリマー成分
を含む請求項1に記載の組成物。
(10)前記の架橋剤が、前記の組成物の5?15重量%から成る量で存在し、かつ、アミノプラスト樹脂;アジリジン;エポキシ樹脂;イソシアネート;アルデヒド;アズラクトンおよびこれらの混合物から成る群から選ばれる請求項9に記載の組成物。
(11)(a)反応性ポリマー成分;
(b)該反応性ポリマー成分との反応に関しては少なくとも2官能
性である架橋剤;および
(c)約7,000?30,000の間の重量平均分子量を有する
非反応性ポリマー成分
の熱硬化反応生成物である半浸透性ポリマー網状構造を含むことを特徴とする可撓性、硬化樹脂。
(12)前記の反応性ポリマー成分が、ポリビニルブチラールポリマーである請求項11に記載の樹脂。
(13)前記の非反応性ポリマー成分が、ポリカプロラクトンポリマーである請求項11に記載の樹脂。
(14)前記の架橋剤が、アミノプラスト樹脂;アジリジン;エポキシ樹脂;イソシアネート;アルデヒド;アズラクトンおよびこれらの混合物から成る群から選ばれる請求項13に記載の樹脂。
(15)スペース被覆を有する埋込みレンズ再帰反射性シートであつて、該スペース被覆が、
(a)架橋した反応性ポリマー成分;
(b)反応性ポリマー成分との反応に関しては少なくとも2官能性である
架橋剤;および
(c)約7,000?30,000の間の重量平均分子量を有する非反応
性ポリマー成分
から成る半浸透性ポリマー網状構造を含むことを特徴とする前記の再帰反射性シート。
(16)(a)前記の架橋剤がアミノプラスト樹脂であり;
(b)前記の反応性ポリマー成分がポリビニルアセタール物質から
成り、そして、
(c)前記の非反応性ポリマー成分が、
15,000重量平均分子量当り約10個以下の官能性ヒドロ
キシ基を有するポリカプロラクトンポリマーである
請求項15に記載の再帰反射性シート。
(17)(a)前記の架橋剤がメトキシメチル化メラミンであり;
(b)前記の反応性ポリマー成分がポリビニルブチラールであり;
そして、
(c)前記の非反応性ポリマー成分が、ヒドロキシ末端基ポリカプ
ロラクトンポリマーである
請求項16に記載の再帰反射性シート。
(18)(a)ナンバープレート基材;および
(b)該ナンバープレートに接着している再帰反射性シートであり

(i)架橋した反応性ポリマー成分;
(ii)反応性ポリマー成分に関して少なくとも2官能性であ
る架橋剤;および、
(iii)約7,000?30,000の間の重量平均分子量
を有する非反応性ポリマー成分から成る半浸透性ポリマ
ー網状構造を有するスペース被覆を含む前記の再帰反射
性シート
から成ることを特徴とするエンボス可能なナンバープレート構造体。
(19)(a)前記の架橋剤がアミノプラスト樹脂であり;
(b)前記の反応性ポリマー成分がポリビニルアセタール物質から
成り;そして
(c)前記の非反応性ポリマー成分が、
15,000重量平均分子量当り約10個以下の官能性ヒドロ
キシ基を有するポリカプロラクトンである
請求項18に記載の構造体。
(20)エンボス可能な基材の再帰反射性シートにスペース被覆を付与する方法であつて、
(a)該スペース被覆を製造するための樹脂として:
(i)ポリビニルアセタール物質から成る反応性ポリマー成分;お
よび
(ii)15,000重量平均分子量当り約10個以下の官能性ヒ
ドロキシ基および約7,000?約30,000の間の重量平
均分子量を有するポリカプロラクトンを含む非反応性ポリマー
成分であり;組成物の硬化後に少なくとも40%が抽出可能で
ある該非反応性ポリマー成分;および、
(iii)少なくとも2官能性である架橋剤を含む半浸透性ポリマ
ー網状構造を用意し;
(b)該樹脂をスペース被覆として適用し;そして
(c)該樹脂を熱硬化させる
諸工程から成ることを特徴とする前記の方法。」

※2)公報第5頁左下欄第19行?同右下欄第9行
「好ましくは反応用または反応性ポリマーは、実質的に比較的迅速に架橋することができる架橋性ポリマー成分である。本発明による組成物に使用できる典型的な反応性ポリマーには:ポリビニルホルマールおよびポリビニルブチラールのようなポリビニルアセタール、アクリルコボリマー:ポリウレタン;ポリエステル;ポリアミド、ポリエステル-アミドおよびアクリルブロック並びにグラフトコポリマーが含まれる。反応性ポリマーまたはポリマー成分として物質の混合物も使用できる。」

※3)公報第6頁左上欄第3行?同右上欄第1行
「好ましくは、架橋剤は比較的迅速に反応して比較的に短時間に実質的に完全に硬化させる架橋剤である。必ずしも必要ではないが、架橋剤は殆んどまたは全く触媒の不存在下で適切な速度で架橋しうるものが好ましい。本発明による組成物において使用できる典型的な架橋剤には:尿素ホルムアルデヒド樹脂;メラミンホルムアルデヒド樹脂:グリコウリルホルムアルデヒド付加物のようなアミノプラスト樹脂およびアクリルアミドとホルムアルデヒドとの反応生成物のエステル化付加物を含有するアクリルコポリマーが含まれる。架橋剤には、多官能価アジリジン;エポキシ樹脂;イソシアネート;アルデヒド;アズラクトンおよび(または)その官能基が反応性ポリマーの官能基と反応性である任意の他の多官能価物質が含まれる。好ましい架橋剤は例えばMonsanto CO.St.Louis、Missouri、63167のResimene ○のR 717および730のようなメトキシメラミン樹脂である。」(当審注:丸字のRを「○のR」と表記した。)

※4)公報第10頁右下欄第14?17行
「一般に、本発明による組成物は、未硬化で約55?95重量%の反応性ポリマー成分、5?20重量%の架橋剤および2?25重量%の非反応性ポリマー成分を含む。」

なお、請求人は、平成27年4月3日付け意見書において、
「引用文献1には、変性ポリイソシアネートとして、多くの化合物からヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートを選択し、さらに、多くの化合物から2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオールを選択して、これらを反応させることについての記載はありません。また、そもそも、引用文献1には、モノオールを使用することを必須の要件としており、ジオールのみを使用するという思想はありません。したがって、引用文献1には、本願発明1の特徴である、特定の可塑化成分を使用することについては記載されていません。
また、引用文献1には、明細書の段落番号0050に、ベース樹脂として、多くの樹脂の中の1つの例として、アクリル樹脂が記載されているのみです。
したがって、引用文献1には、本願発明1の特徴である、アクリル樹脂および特定の可塑化成分を使用することについては記載されていません。」(以下、「主張(1)」という。)および
「本願明細書の実施例の第2表から明らかなとおり、8週間及び14週間の時点で耐エッチング性が改良され、500時間の時点で耐クラッキング性が良好であることが分かります。表2の実施例5?8は本願発明の比較例になります。表1、段落番号0057、0058から明らかなとおり、実施例5?8では、可塑化成分C、Dを使用しており、これらは、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートと、モノアルコールである、2-エチルヘキサノールとの反応生成物であることが分かります。すなわち、実施例5?8は、引用文献1の発明に該当します。表2より、本願発明の実施例である実施例4は、クラッキングテストで1であるのに対し、引用文献1の実施例に該当する実施例5?8では、クラッキングテストで2であり、劣っていることが分かります。また、表2より、本願発明の実施例である実施例1,2は、エッチング8週間テストで2,4であるのに対し、引用文献1の実施例に該当する実施例5?8では、エッチング8週間テストで5,6であり、劣っていることが分かります。また、さらに、表2より、本願発明の実施例である実施例1,2は、エッチング14週間テストで6であるのに対し、引用文献1の実施例に該当する実施例6?8では、エッチング14週間テストで8,9であり、劣っていることが分かります。このような本願発明1の優れた効果は、引用文献1からは予測できません。」(以下、「主張(2)」という。)との主張をしているので、これらについて検討する。

上記主張(1)は、大略、引用例記載の発明は、モノオールを用いることを必須にするものであり、また、多くの樹脂の中からアクリル樹脂を、多くのイソシアネートの中からヘキサメチレンジイソシアネートを、多くのアルコールの中から2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオールを選択したものを実施例にするものではないことからして、本願発明における特定の樹脂、イソシアネート、アルコールを用いる(実施する)硬化性コーティング組成物ではないというものである。
ここで、上記「IV.」の(イ)で示したように、引用例には、「ポリイソシアネートの変性において、モノオールとともにポリオールを用いる際、変性ポリイソシアネートの内に、ポリイソシアネートに対して低分子量ポリオールのみが反応したものが含まれている」ことが記載されているということができ、また、上記「III.」の(e)(f)(g)からして、引用例には、アクリル樹脂、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオールを用いることの例示がある以上、引用例記載の発明は、これらを用いた硬化性塗料(硬化性コーティング組成物)を包含するものであるということができる。
そうすると、上記主張(1)は不適当なものであるといわざるをえない。
次に、上記主張(2)は、大略、本願発明について、ジオールを用いる実施例1ないし4を実施例とし、モノオールを用いる実施例5ないし8を比較例とすることを前提にするものであるということができる。
ここで、本願発明は、「樹脂成分は、硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、40?70質量部であ」ることを発明特定事項にするものであるのに対して、実施例3、4、7、8は、「樹脂成分は、硬化性コーティング組成物中の全固形分100質量部に対して、75質量部であ」ることからして、比較例になるというべきであり、また、本願発明は、「0?3つの架橋性官能基を有し、」「Fは、第二級ヒドロキシル基を表し」を発明特定事項にするものであり、架橋性官能基(第二級ヒドロキシル基)Fが「0」であるとき、モノオールが用いられているということができるので、モノオールを用いることをもって実施例5、6、7、8が比較例になるということはできない。
そうすると、上記主張(2)も不適当なものであるといわざるをえない。
したがって、上記主張(1)および(2)を採用することはできない。

VI.むすび
上記のとおり、本願発明は、引用例記載の発明および従前の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
それゆえ、請求項2ないし5に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-13 
結審通知日 2015-05-18 
審決日 2015-06-03 
出願番号 特願2009-537247(P2009-537247)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 服部 芙美  
特許庁審判長 國島 明弘
特許庁審判官 日比野 隆治
豊永 茂弘
発明の名称 可塑化成分及びそれを含む硬化性コーティング組成物  
代理人 篠 良一  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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