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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1306896
審判番号 不服2014-17257  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-01 
確定日 2015-10-15 
事件の表示 特願2010- 59373号「点灯装置及び照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月29日出願公開、特開2011-192596号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年3月16日の出願であって、平成25年11月27日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年9月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成26年9月1日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年9月1日の手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成26年9月1日の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成26年1月17日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下のように補正するものである。
なお、下線部は補正箇所を示す。

(a)本件補正前の請求項1の記載
「【請求項1】
光源を点灯する点灯電力を上記光源に供給する電力供給回路と、
上記電力供給回路が上記光源に供給した点灯電力を測定し、測定した点灯電力に比例する電力測定電圧を生成する電力測定回路と、
上記光源が点灯している時間を累積した点灯時間を計測し、計測した上記点灯時間を記憶装置に記憶する点灯時間計測回路と、
上記点灯時間計測回路により上記記憶装置に記憶された上記点灯時間に基づいて、上記光源を点灯する調光信号を算出し、算出した調光信号を出力する調光度算出回路と、
上記調光度算出回路により出力された調光信号に基づいて、上記電力供給回路が上記光源に供給する点灯電力の目標値に比例する目標電圧を生成する目標電圧生成回路と、
上記目標電圧生成回路が生成した目標電圧に比例する補正電圧を生成し、上記目標電圧に対する上記補正電圧の比が可変である電圧補正回路と、
上記電力測定回路が生成した電力測定電圧と、上記電圧補正回路が生成した補正電圧とを比較する比較回路と、
上記比較回路が比較した結果に基づいて、上記電力供給回路が上記光源に供給する点灯電力を制御する供給制御回路とを有することを特徴とする点灯装置。」

(b)本件補正後の請求項1の記載
「【請求項1】
光源を点灯する点灯電力を上記光源に供給する電力供給回路と、
上記電力供給回路が上記光源に供給した点灯電力を測定し、測定した点灯電力に比例する電力測定電圧を生成する電力測定回路と、
上記光源が点灯している時間を累積した点灯時間を計測し、計測した上記点灯時間を記憶装置に記憶する点灯時間計測回路と、
上記点灯時間計測回路により上記記憶装置に記憶された上記点灯時間に基づいて、上記光源を点灯する調光信号を算出し、算出した調光信号を出力する調光度算出回路と、
上記調光度算出回路により出力された調光信号の極性が2つのスイッチング素子により反転された極性反転後の調光信号に基づいて、上記電力供給回路が上記光源に供給する点灯電力の目標値に比例する目標電圧を生成する目標電圧生成回路と、
上記目標電圧生成回路が生成した目標電圧に比例する補正電圧を生成し、上記目標電圧に対する上記補正電圧の比が可変である電圧補正回路と、
上記電力測定回路が生成した電力測定電圧と、上記電圧補正回路が生成した補正電圧とを比較する比較回路と、
上記比較回路が比較した結果に基づいて、上記電力供給回路が上記光源に供給する点灯電力を制御する供給制御回路とを有することを特徴とする点灯装置。」

2.補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無について
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「調光信号」について、「調光信号の極性が2つのスイッチング素子により反転された極性反転後の調光信号」と限定するものであり、かつ、補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
また、前記補正事項は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0026】及び【図3】に記載されているので、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

3.独立特許要件について
上記のとおり、本件補正の請求項1に関する補正は、特許法第17条の2第3項に規定に適合し、同条第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1.(b)に記載したとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載の事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-5264号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)
「【0001】
本発明は、放電灯点灯装置及び照明器具に関するものである。」
(イ)
「【0002】
従来から、放電灯点灯装置として、例えば図17に示すものが提供されている。
【0003】
この放電灯点灯装置は、直流電源1の両端間に接続された2個のスイッチング素子QH,QLの直列回路からなるハーフブリッジ回路2と、ハーフブリッジ回路2のローサイドのスイッチング素子QLの両端間に接続された直列コンデンサCs、インダクタL、並列コンデンサCpの直列回路からなる共振回路4とを備える。放電灯7は、並列コンデンサCpの両端間に接続される。
【0004】
また、ハーフブリッジ回路2のスイッチング素子QH,QLを交互にオンオフする制御回路3を備える。制御回路3がハーフブリッジ回路2のスイッチング素子QH,QLを交互にオンオフすると、共振回路4の共振作用により、放電灯7に交流電力が供給されて放電灯7が点灯する。放電灯7に供給される電力の周波数は例えば20?200kHzである。ここで、共振回路4と放電灯7とによって決定する共振周波数に対し、制御回路3がハーフブリッジ回路2のスイッチング素子QH,QLをオンオフする周波数(以下、「駆動周波数」と呼ぶ。)が近いほど、放電灯7に供給される電力は大きくなる。制御回路3は、駆動周波数を制御することにより放電灯7を調光制御する。駆動周波数は、通常、共振周波数よりも高い領域で制御される。つまり、駆動周波数が低いほど、放電灯7に供給される電力は増加し、駆動周波数が高いほど、放電灯7に供給される電力は減少して深い調光となる。
【0005】
また、調光レベル信号8に応じて放電灯7に供給する電力を指示する調光信号を生成する調光回路5を備える。調光レベル信号8としては、例えば、使用者によって操作されるスイッチやリモコン装置(いずれも図示せず)から出力されて使用者の指示する調光レベルを示すものや、照度センサや人感センサの出力に応じた調光レベル信号8を生成する制御ユニット(図示せず)から出力されて状況に応じた調光レベルを示すものが考えられる。調光回路5は、図18に示すように、一端が定電圧Vccに維持され他端が接地された抵抗R1?R3の直列回路と、一端が高電圧側の2個の抵抗R1,R2の接続点に接続され他端が接地された抵抗R4とトランジスタからなるスイッチング素子Q1との直列回路とを備える。スイッチング素子Q1のベースには、調光レベル信号8が入力される。調光レベル信号8は、具体的には例えばPWM制御に用いられる矩形パルス信号であって、指示する電力が低いほど(つまり、調光が深いほど)デューティ比を高くしてある。そして、低電圧側の抵抗R2,R3の接続点の電位が、調光回路5が出力する調光信号S1として制御回路3に入力される。抵抗R3には、コンデンサC1が並列に接続されている。入力される調光レベル信号8のデューティ(DUTY)比に対し、調光信号S1の電圧レベルは図19に示すように単調に減少する。
【0006】
制御回路3は、図20に示すように、例えば周知のインバータ駆動用ICからなりハーフブリッジ回路2のスイッチング素子QH,QLを交互にオンオフ駆動する駆動信号A1,A2を出力する駆動部31を備える。駆動部31はコンデンサC3を介して接地される端子と抵抗R8を介して接地される端子とを有し、抵抗R8を介して接地される端子から流出する電流の電流値が高いほど駆動周波数が低くなる。また、制御回路3は、非反転入力端子に調光信号S1が入力され出力端子がダイオードD1と抵抗R7とを介して駆動部31と抵抗R8との接続点に接続されたオペアンプOP1を備える。ここで、ハーフブリッジ回路2には抵抗6が直列に接続されており、ローサイドのスイッチング素子QLに流れる電流が、抵抗6によって電圧に変換され、フィードバック信号B1として抵抗R5を介してオペアンプOP1の反転入力端子に入力されるようになっている。また、オペアンプOP1の反転入力端子と出力端子との間には、抵抗R6とコンデンサC2との並列回路が接続されている。すなわち、調光信号の電圧レベルが高いほど、又はローサイドのスイッチング素子QLに流れる電流が少ないほど、オペアンプOP1の出力端子の電位が低くなることにより、駆動部31から抵抗R7を通じて流出する電流が増加し、駆動周波数が低下して共振周波数に近付き、すなわち放電灯7に供給される電力が増加する。つまり、放電灯7に供給される電力が、調光信号S1の電圧レベルに応じた一定値となるようにフィードバック制御されるのであり、調光信号S1の電圧レベルによって放電灯7に供給される電力が指示されている。」
(ウ)
「【0012】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、低温時と高温時との両方で深い調光に伴う放電灯の立ち消えやちらつきの発生を抑えることができる放電灯点灯装置及び照明器具を提供することにある。」
(エ)
「【0026】
本実施形態は、図1に示すように、従来例と共通の調光信号(以下、「第1の調光信号」と呼ぶ。)S1を生成する調光回路(以下、「第1の調光回路」と呼ぶ。)5に加え、放電灯7の周囲の温度が低いほど放電灯7に供給する電力として高い電力を指示する第2の調光信号S2を生成する第2の調光回路9と、放電灯の周囲の温度が高いほど放電灯に供給する電力として高い電力を指示する第3の調光信号S3を生成する第3の調光回路10とを備える。また、図2に示すように第1?第3の調光信号S1?S3のうち最も電圧レベルの高い調光信号S4をオペアンプOP1の非反転入力端子に入力する選択部32を制御回路3に設けている。」
(オ)
「【0028】
選択部32は、例えば第1?第3の調光信号S1?S3の経路にそれぞれ挿入されたダイオードD2?D4からなる。
【0029】
図4(a)に示すように、低温では温度が低いほど電圧レベルが高くなる第2の調光信号S2の電圧レベル(以下、単に「第2の調光信号S2」という。)が第1の調光信号S1の電圧レベル(以下、単に「第1の調光信号S1」という。)の最小値S1Lよりも高くなり、高温では温度が高いほど電圧レベルが高くなる第3の調光信号S3の電圧レベル(以下、単に「第3の調光信号S3」という。)が第1の調光信号S1の最小値S1Lよりも高くなる。また、第1の調光信号S1の最小値S1Lは第2の調光信号S2の最小値と第3の調光信号S3の最小値とのいずれよりも高く、常温付近(例えば15?50℃)では第1の調光信号S1の最小値S1Lが第2の調光信号S2と第3の調光信号S3とのいずれよりも高くなるように、抵抗R9,R10やサーミスタNTC1,NTC2は選択されている。つまり、図4(b)に示すように、オペアンプOP1の非反転入力端子に入力される調光信号S4の最小値S4Lは、常温付近では第1の調光信号S1の最小値S1Lとなり、低温域では第2の調光信号S2となり、高温域では第3の調光信号S3となる。」
(カ)
「【0033】
また、図6に示すように、選択部32が出力する調光信号S4を抵抗R12,R13で分圧したものを調光信号S5としてオペアンプOP1に入力してもよい。図6の例では、選択部32とオペアンプOP1との間に別のオペアンプOP2を用いたボルテージホロワを挿入している。この構成を採用すれば、分圧された調光信号S5と同程度にフィードバック信号B1の電圧レベルを低くすることができるから、抵抗6の抵抗値を小さくして抵抗R6による消費電力を低減することができる。・・・」
(キ)
「【0036】
さらに、図13に示すように、図6に示した制御回路3における分圧用の抵抗R12,R13の一方の抵抗R13を、可変抵抗器VR1に置換してもよい。この構成を採用すれば、図14に示すように、オペアンプOP1に入力される調光信号S5の、調光レベル信号8のデューティ比に対する変化量を、実線1Mで示すように可変抵抗器VR1の抵抗値を中程度としたときに比べ、実線1Lで示すように可変抵抗器VR1の抵抗値を小さくし
たときには小さく、実線1Hで示すように可変抵抗器VR1の抵抗値を大きくしたときには大きくするといったように微調整することができる。また、図14のように可変抵抗器VR1によって調光信号S5と調光レベル信号8のデューティ比との関係を大きく変化させることができるから、構成部品の定数ばらつきを十分吸収できる。可変抵抗器VR1の抵抗値による調光信号S5の変化量は、調光レベル信号8のデューティ比が大きいときすなわち調光比が低い(調光が深い)ときよりも、調光レベル信号8のデューティ比が小さいときすなわち調光比が高いときに大きいから、可変抵抗器VR1の調整は、調光比が高い時を想定した放電灯7への供給電力の調整に適する。
【0037】
また、図18に示した第1の調光回路5における抵抗R1,R2の接続点とスイッチング素子Q1との間に接続された抵抗R4を、可変抵抗器VR2に置換してもよい。・・・」

上記の各記載事項及び【図1】、【図2】、【図4】、【図6】、【図13】、【図14】、【図18】?【図20】によれば、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「直流電源1の両端間に接続された2個のスイッチング素子QH,QLの直列回路からなるハーフブリッジ回路2と、
ハーフブリッジ回路2のローサイドのスイッチング素子QLの両端間に接続された直列コンデンサCs、インダクタL、並列コンデンサCpの直列回路からなる共振回路4とを備え、
放電灯7は、並列コンデンサCpの両端間に接続され、
ハーフブリッジ回路2に直列に接続され、ローサイドのスイッチング素子QLに流れる電流を電圧に変換し、フィードバック信号B1として出力する抵抗6を備え、
照度センサや人感センサの出力に応じて、調光が深いほどデューティ比を高くした矩形パルス信号である調光レベル信号8を生成する制御ユニットと、
一端が定電圧Vccに維持され他端が接地された3個の抵抗R1?R3の直列回路と、一端が高電圧側の2個の抵抗R1,R2の接続点に接続され他端が接地された可変抵抗器VR2とトランジスタからなるスイッチング素子Q1との直列回路とを備え、抵抗R3には、コンデンサC1が並列に接続されており、スイッチング素子Q1のベースには調光レベル信号8が入力され、低電圧側の抵抗R2,R3の接続点の電位が、調光レベル信号8のデューティ(DUTY)比に対し、電圧レベルが単調に減少する第1の調光信号S1として出力され、調光レベル信号8に応じて放電灯7に供給する電力を指示する第1の調光信号S1を生成する第1の調光回路5と、
放電灯7の周囲の温度が低いほど電圧レベルが高くなり、第1の調光信号S1の最小値S1Lよりも高くなる第2の調光信号S2を生成する第2の調光回路9と、
放電灯7の周囲の温度が高いほど電圧レベルが高くなり、第1の調光信号S1の最小値S1Lよりも高くなる第3の調光信号S3を生成する第3の調光回路10とを備え、
常温付近では第1の調光信号S1の最小値S1Lが第2の調光信号S2と第3の調光信号S3とのいずれよりも高くなるように設定され、
第1?第3の調光信号S1?S3のうち最も電圧レベルの高い調光信号S4を出力する選択部32であり、
選択部32が出力する調光信号S4を抵抗R12、可変抵抗器VR1で分圧したものを調光信号S5としてオペアンプOP1の非反転入力端子に入力し、フィードバック信号B1を抵抗R5を介してオペアンプOP1の反転入力端子に入力し、
オペアンプOP1の出力端子の電位が低くなるときに、放電灯7に供給する電力を増加させるように、ハーフブリッジ回路2のスイッチング素子QH,QLを駆動する駆動周波数を制御する駆動部31とからなり、
放電灯7に供給される電力が、調光信号の電圧レベルに応じた一定値となるようにフィードバック制御される、放電灯点灯装置。」

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「直流電源1の両端間に接続された2個のスイッチング素子QH,QLの直列回路からなるハーフブリッジ回路2」と「ハーフブリッジ回路2のローサイドのスイッチング素子QLの両端間に接続された直列コンデンサCs、インダクタL、並列コンデンサCpの直列回路からなる共振回路4」とは、前者の「光源を点灯する点灯電力を上記光源に供給する電力供給回路」に相当する。
後者の「ハーフブリッジ回路2に直列に接続され、ローサイドのスイッチング素子QLに流れる電流を電圧に変換し、フィードバック信号B1として出力する抵抗6」は、前者の「電力供給回路が光源に供給した点灯電力を測定し、測定した点灯電力に比例する電力測定電圧を生成する電力測定回路」に相当する。
後者の「照度センサや人感センサの出力に応じて、調光が深いほどデューティ比を高くした矩形パルス信号である調光レベル信号8を生成する制御ユニット」は、前者の「点灯時間計測回路により記憶装置に記憶された点灯時間に基づいて、光源を点灯する調光信号を算出し、算出した調光信号を出力する調光度算出回路」と、「光源を点灯する調光信号を算出し、算出した調光信号を出力する調光度算出回路」である限りにおいて一致する。
後者の「調光回路5」のうちの「一端が定電圧Vccに維持され他端が接地された3個の抵抗R1?R3の直列回路と、一端が高電圧側の2個の抵抗R1,R2の接続点に接続され他端が接地された可変抵抗器VR2とトランジスタからなるスイッチング素子Q1との直列回路」とからなる回路における「抵抗R1,R2の接続点」の電位は、その回路構成からみて、調光レベル信号8がハイ(高い)のとき、スイッチング素子Q1がオンするため低くなり、調光レベル信号8がロー(低い)のとき、スイッチング素子Q1がオフするため高くなると認められ、調光レベル信号8の極性を反転した信号を出力しているといえる。そして、後者の「調光回路5」のうちの「低電圧側の抵抗R2,R3の接続点の電位」は、「抵抗R3には、コンデンサC1が並列に接続されて」いるので、抵抗R1,R2の接続点の電位を抵抗R2,R3で分圧し積分した値として第1の調光信号S1が出力されており、「調光レベル信号8に応じて放電灯7に供給する電力を指示する第1の調光信号S1を生成する」ものであるので、光源に供給する点灯電力の目標値に比例する目標電圧を生成しているといえる。
そうすると、後者の「一端が定電圧Vccに維持され他端が接地された3個の抵抗R1?R3の直列回路と、一端が高電圧側の2個の抵抗R1,R2の接続点に接続され他端が接地された可変抵抗器VR2とトランジスタからなるスイッチング素子Q1との直列回路とを備え、抵抗R3には、コンデンサC1が並列に接続されており、スイッチング素子Q1のベースには調光レベル信号8が入力され、低電圧側の抵抗R2,R3の接続点の電位が、調光レベル信号8のデューティ(DUTY)比に対し、電圧レベルが単調に減少する第1の調光信号S1として出力される第1の調光回路5」は、前者の「調光度算出回路により出力された調光信号の極性が2つのスイッチング素子により反転された極性反転後の調光信号に基づいて、電力供給回路が光源に供給する点灯電力の目標値に比例する目標電圧を生成する目標電圧生成回路」と、「調光度算出回路により出力された調光信号の極性が反転された極性反転後の調光信号に基づいて、電力供給回路が光源に供給する点灯電力の目標値に比例する目標電圧を生成する目標電圧生成回路」である限りにおいて一致する。
後者においては、「常温付近では第1の調光信号S1の最小値S1Lが第2の調光信号S2と第3の調光信号S3とのいずれよりも高くなるように設定され」ているので、「第1?第3の調光信号S1?S3のうち最も電圧レベルの高い調光信号S4を出力する選択部32」は、常温においては第1の調光信号S1を選択することとなり、常温時に「選択部32が出力する調光信号S4を抵抗R12、可変抵抗器VR1で分圧したものを調光信号S5」として出力する回路は、前者の「目標電圧生成回路が生成した目標電圧に比例する補正電圧を生成し、目標電圧に対する補正電圧の比が可変である電圧補正回路」に相当する。
後者の「オペアンプOP1」は、「フィードバック信号B1を抵抗R5を介して」「反転入力端子に入力」され、上記の「調光信号S5」を「非反転入力端子に入力」するものであり、「フィードバック信号B1」と「調光信号S5」とを比較するものであるので、前者の「電力測定回路が生成した電力測定電圧と、電圧補正回路が生成した補正電圧とを比較する比較回路」に相当する。
後者の「オペアンプOP1の出力端子の電位が低くなるときに、放電灯7に供給する電力を増加させるように、ハーフブリッジ回路2のスイッチング素子QH,QLを駆動する駆動周波数を制御する駆動部31」は、前者の「比較回路が比較した結果に基づいて、電力供給回路が光源に供給する点灯電力を制御する供給制御回路」に相当する。
後者の「放電灯点灯装置」は、前者の「点灯装置」に相当する。
そうすると、両者は、
「光源を点灯する点灯電力を上記光源に供給する電力供給回路と、
上記電力供給回路が上記光源に供給した点灯電力を測定し、測定した点灯電力に比例する電力測定電圧を生成する電力測定回路と、
上記光源を点灯する調光信号を算出し、算出した調光信号を出力する調光度算出回路と、
上記調光度算出回路により出力された調光信号の極性が反転された極性反転後の調光信号に基づいて、上記電力供給回路が上記光源に供給する点灯電力の目標値に比例する目標電圧を生成する目標電圧生成回路と、
上記目標電圧生成回路が生成した目標電圧に比例する補正電圧を生成し、上記目標電圧に対する上記補正電圧の比が可変である電圧補正回路と、
上記電力測定回路が生成した電力測定電圧と、上記電圧補正回路が生成した補正電圧とを比較する比較回路と、
上記比較回路が比較した結果に基づいて、上記電力供給回路が上記光源に供給する点灯電力を制御する供給制御回路とを有する点灯装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点1〕
本願補正発明は、「光源が点灯している時間を累積した点灯時間を計測し、計測した点灯時間を記憶装置に記憶する点灯時間計測回路と、点灯時間計測回路により記憶装置に記憶された上記点灯時間に基づいて」、光源を点灯する調光信号を算出するものであるのに対して、引用発明は、光源が点灯している時間を累積した点灯時間を計測する構成、及び、当該点灯時間に基づいた調光信号を算出する構成を具備していない点。
〔相違点2〕
本願補正発明は、調光信号の極性反転を「2つのスイッチング素子により」行う回路を備えているのに対して、引用発明は、そのような特定がなされていない点。
〔相違点3〕
本願補正発明の電圧補正回路は、調光信号の極性が反転された極性反転後の調光信号に基づいて生成された目標電圧から補正電圧を生成するものであるのに対して、引用発明は、選択部32が選択した調光信号S4を抵抗R12、可変抵抗器VR1で分圧するものであり、低温または高温では選択部32が必ずしも、本願補正発明の「目標電圧」に対応する第1の調光信号S1を選択するものではない点。

上記各相違点について検討する。
〔相違点1について〕
放電灯点灯装置において、放電灯の使用時間に伴う光出力の低下を補うために、点灯時間を累積して計時し、累積点灯時間に応じて調光比を増加させることは周知の事項である(必要であれば、特開2009-259427号公報の段落【0002】、【0025】、【0027】?【0030】、【図1】、【図3】、特開平11-283784号公報の段落【0004】?【0006】、【図1】?【図3】等を参照)。
引用発明も放電灯を点灯する装置であり、放電灯の経時変化は当然に想定されるものであるから、その照度変化に対応する上記周知の事項を適用する動機付けは充分にあるといえる。
そうしてみると、引用発明の照度センサや人感センサの出力に応じた調光レベル信号を生成する制御ユニットに、上記周知の経時変化に応じた調光比を出力する事項を適用し、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。
〔相違点2について〕
論理信号の極性を反転させる回路を2つのスイッチング素子により構成することは、周知の事項である(必要であれば、特開平10-149888号公報の段落【0011】、【0012】、【図1】に記載されている「素子1と2からなるCMOSインバータ」、「3と4からなるCMOSインバータ」や、特開平6-252723号公報の段落【0003】、【図4】に記載されている「PチャネルMOSトランジスタ270」、「NチャネルMOSトランジスタ280」を参照)。
そうしてみると、引用発明において、調光レベル信号8の極性を反転させる回路である、スイッチング素子Q1、可変抵抗器VR2、抵抗R1からなる回路を、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることといえる。
〔相違点3について〕
引用発明において、選択部32が第2の調光信号S2、第3の調光信号S3を入力としているのは、温度補償を目的としたものであり(上記(2)(ウ)の段落【0012】を参照)、温度補償の機能は任意に取り付けるものと認められるので、当該機能を省略し選択部32を介さずに第1の調光信号を電圧補正回路に出力する回路とすることは、当業者が適宜になし得ることといえる。
したがって、引用発明を、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が適宜になし得ることといえる。

そして、本願補正発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明と周知の事項とから予測できる程度のものであって格別のものとは認められない。

よって、本願補正発明は、引用発明と周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成26年9月1日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、平成26年1月17日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2の1.(a)に記載されたとおりのものである。

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である刊行物1に記載された発明は、前記第2の3.(2)に記載した「引用発明」のとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から「調光信号」に関する「調光信号の極性が2つのスイッチング素子により反転された極性反転後の」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含む本願補正発明が、前記第2の3.(3)で検討したとおり、引用発明と周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明と周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明と周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-17 
結審通知日 2015-08-18 
審決日 2015-08-31 
出願番号 特願2010-59373(P2010-59373)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三島木 英宏  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 出口 昌哉
平田 信勝
発明の名称 点灯装置及び照明装置  
代理人 溝井 章司  
代理人 長谷川 靖子  
代理人 溝井 章司  
代理人 長谷川 靖子  

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