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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1307014
審判番号 不服2014-24663  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-03 
確定日 2015-11-10 
事件の表示 特願2012-530857「ストライプベースのメモリ動作」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月14日国際公開、WO2011/043791、平成25年 2月21日国内公表、特表2013-506190、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2010年9月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年9月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年4月6日付けで手続補正がなされ、平成25年7月11日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月10日付けで手続補正がなされ、同年11月12日付けで拒絶理由通知がなされ、平成26年2月14日付けで手続補正がなされ、同年9月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年12月3日付け手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成26年12月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

本件補正は、補正前の請求項1の「前記更新データを前記第2ストライプに書き込むと同時に、無関係データを前記第2ストライプに書き込むことを含み、前記無関係データが、前記第1ストライプの前記オリジナルデータおよび前記第2ストライプの前記更新データと無関係であり、」という発明特定事項を、「前記更新データを前記第2ストライプに書き込むと同時に、無関係データを前記第2ストライプに書き込み、前記第1ストライプをリクラメーションする場合には、前記無関係データに対応する前記オリジナルデータが第3ストライプにコピーされ、前記第1ストライプを消去することを含み、前記無関係データが、前記第1ストライプの前記オリジナルデータおよび前記第2ストライプの前記更新データと無関係であり、」に限定する補正事項を含むものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。

そうすると、本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができるもの(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するもの)でなければならない。

しかしながら、本願補正発明は、以下の理由で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

「データとデータが対応する」とは、例えば、両者が同じ論理アドレスに格納されるデータである、両者が異なる記憶装置の同じ物理アドレスに格納される、データの具体的な内容が対になっている等、種々の対応関係が考えられるところ、本願補正後の請求項1の「無関係データに対応するオリジナルデータ」という記載だけでは、これらの二つのデータが、どのような点で対応しているのかが明確でない。

以上のとおり、本願補正発明は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
よって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 上記補正の却下の決定を前提とした本願についての検討

1.本願請求項1に係る発明について

1.1 本願発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-14に係る発明は、平成26年2月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は以下のとおりである。(以下、当該請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

「 【請求項1】
複数のアドレスに関連するオリジナルデータを複数のチャネルに渡る第1ストライプに書き込み、かつ、
前記複数のアドレスの少なくとも1つに関連する更新データを、前記第1ストライプ内のオリジナルデータの読み取りまたはコピーを行うことなく、前記複数のチャネルに渡る第2ストライプに書き込み、
前記更新データを前記第2ストライプに書き込むと同時に、無関係データを前記第2ストライプに書き込むことを含み、前記無関係データが、前記第1ストライプの前記オリジナルデータおよび前記第2ストライプの前記更新データと無関係であり、
前記第2のストライプの一部に関連したエラーを検出するように構成された、不揮発性メモリ制御回路と、
前記不揮発性メモリ制御回路が前記エラーを検出したことに応答して、前記第2のストライプの前記一部を前記第2のストライプから取り除くメモリ管理回路とを備え、
前記不揮発性メモリ制御回路は、更に、前記第2のストライプの前記取り除かれた一部なしで、前記第2のストライプを駆動する、
ことを特徴とするメモリシステム制御回路。」

1.2 原査定の理由の概要

本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

引用文献1には、RAID5等を用いたRAID方式のディスク記憶システムであり(第2-8段落)、不揮発性メモリには、ディスク装置に書込むデータをログ構造化して保持するための書込みバッファとして使用する領域、およびバッファ管理情報(バッファ管理テーブル)を格納する領域が設けられており(第14段落)、データ更新手段は、データ更新処理時に書込みバッファに蓄積した論理ブロックがN*K-1個に達するまでその論理ブロックの更新を遅延させ、前記書込みバッファに蓄積された各論理ブロックに対する論理アドレスから構成される論理アドレス・タグ・ブロックを生成し、N*K-1個の論理ブロックに前記論理アドレス・タグ・ブロックを加えたN*K個の論理ブロックからK個のパリティブロックを生成し、この論理ブロックにパリティブロックを加えたN*K個の論理ブロックを、前記各ディスクドライブ上の更新対象の旧データを保持している領域とは別の空領域の中から連続した記憶領域(セクタ単位)を選択して、連続した書込み操作により順次書込む機能を有するように構成されたディスク記憶システム(第11段落)が記載されている。
同引用文献8には、実施形態6-9として、RAID5構成のログ構造化書込み方式のディスクアレイを用いた実施例が記載されており、N+1台のディスク装置から構成されるRAID5のディスクアレイであって、ディスクアレイとしての論理アドレスとそのディスクアレイを構成する各ディスク装置の物理アドレスとのブロック単位のマッピング情報を格納するアドレスマッピングテーブルと、N・K個以上のブロックに相当する容量を持つ書込みバッファとを持ち、データ更新の際には、各ディスク装置上の更新されるべき旧データを保持している領域を変更するのではなく、前記書込みバッファにN・K個以内の更新すべきデータの論理ブロックを蓄積し、書込みバッファのN・K個のブロックに対応するK個のパリティブロックを生成し、書込みバッファのデータブロックとそのパリティブロックから成るパリティストライプをまとめて(N+1)・K個の空領域へ格納し、前記マッピングテーブルを空領域に格納したディスク装置のブロックを指すように変更する、ログ構造化書込み方式のディスクアレイ(第202段落)であり、RAID5のデータ再構成機能を失う事無く、実施形態6におけるディスク装置追加に必要な時間を大幅に減らす事(第251段落)について記載されている。

よって、引用文献1及び8に記載されているログ構造化ファイルシステム(LSFS)の更新データの書き込み方法として、更新データを書込バッファに蓄積することと、書込バッファに蓄積した論理ブロックが一定量(1ストライプ分)に達すると、パリティをブロックを生成して、旧データを保持している領域とは別の連続した空き領域に書き込むことが記載されている。ここで、当該書き込み処理の際、書込バッファに蓄積されているデータブロックのデータが相互に無関係かどうかは引用文献1又は8に明記されていないが、例えば、引用文献8の実施形態1に記載されているように、“0”データであれば、更新データとは無関係であり、かつ、パリティの計算にも影響を与えないものである。
また、参考文献Aの「2.1 LSFS技術」には、「LSFSでは,データの記憶位置をHDD上で固定しない動的マッピングなどの機構を使って,複数の小さなブロックの書込みデータを,一つの大きいブロックのシーケンシャルな小さなブロックが順番に並んだログへ変換して“まとめ書き”する。ここで,“複数の小さなブロックの書込み”はファイルの論理構造とはまったく無関係である。つまり,異なるファイルであろうとも,書込みデータをある程度の大きさになるまでためて,それを大きなシーケンシャルログとしてHDDに記録する。」と記載されており、参考文献B(特に、第19段落、及び図6に係る記載)にも、ログ構造化ファイルシステム技術を使用した場合には、書き込みデータをディスクにまとめ書きする点、「まとめ書き」の単位をパリティグループ1つ分のデータ容量とし、その書き出し位置をパリティグループの先頭に合わせることにより、RAIDコントローラ16では「まとめ書き」の書き込みデータだけからパリティを計算できるようになることから、先に述べた古いデータの読み出し、古いパリティデータの読み出し、新しいパリティデータの書き込み(書き込みペナルティ)が発生しなくなり、書き込み性能が向上する点、1パリティグループに足らない場合には、ダミーデータを追加した後に、一括書き込み処理を実行する点が記載されている。これらの記載からも、LSFSにおいて、新しいパリティグループ(本願の、「第2ストライプ」としてまとめ書きするデータブロックのまとまりは、無関係なまとまりでよいことは明らかである。

以上の理由により、本願発明の前半部分(「不揮発性メモリ制御回路と、」まで)については、引用文献1、8、参考文献A、Bの記載から、当業者であれば容易に想到しうる事項である。

次に、引用文献1、8、参考文献A、Bには、RAID5の構成を有することが記載されている。RAID5構成は文献を挙げるまでもなく、周知技術であり、RAID5構成のディスクアレイ装置のディスクにエラーが発生した場合に、エラーが発生したディスクを正常なディスクに交換してデータの再構成をするまでの間、エラーが発生していないディスクのデータとパリティデータによって、エラーが発生したディスクのデータを再計算することで、運用を継続することは、周知技術であり、普通に実施されていることである。
したがって、本願発明の後半部分(「前記不揮発性メモリ制御回路が前記エラーを検出したことに応答して、前記第2のストライプの前記一部を前記第2のストライプから取り除くメモリ管理回路とを備え、前記不揮発性メモリ制御回路は、更に、前記第2のストライプの前記取り除かれた一部なしで、前記第2のストライプを駆動する、」)については、RAID5に代表されるディスクアレイ装置のディスクエラー処理として、周知である。

以上の理由から、本願発明は、引用文献1、8、参考文献A、Bの記載から、当業者であれば容易に想到しうる。

・引用文献等一覧
1.特開平11-194899号公報
8.特開2000-10738号公報

・参考文献等一覧
A.関戸 一紀、水野 聡,RAID高速化技術 RAID BOOSTER[TM],東芝レビュー,第54巻第12号,株式会社東芝,1999年12月 1日,pp.13-17
B.特開2001-075741号公報

1.3 引用例

原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特開平11-194899号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0010】具体的には、本発明は、N台のディスクドライブから構成されるディスク記憶システムであって、N*K(Kはブロック数を意味する整数)個の論理ブロックに相当する記憶容量を有する書込みバッファ手段と、前記書込みバッファを前記各ディスクドライブとの間で転送される読出しデータ及び書込みデータのキャッシュメモリとして管理し、前記書込みバッファに必要に応じてデータ長を可変した前記論理ブロックを蓄積するキャッシュ管理手段と、データ更新処理時に前記書込みバッファに蓄積した論理ブロックがN*K-1個に達するまでその論理ブロックの更新を遅延させ、前記書込みバッファに蓄積された各論理ブロックに対する論理アドレスから構成される論理アドレス・タグ・ブロックを生成し、N*K-1個の論理ブロックに前記論理アドレス・タグ・ブロックを加えたN*K個の論理ブロックを、前記各ディスクドライブ上の更新対象の旧データを保持している領域とは別の空領域の中から連続した記憶領域(セクタ単位)を選択して、連続した書込み操作により順次書込むためのデータ更新手段とを有するシステムである。」

「【0017】ここで、本実施形態では、書込みバッファ6からディスク装置2への書込み処理はストライプ単位であり、読込み処理は可変長の論理ブロック単位であると想定する。ストライプ単位の書込み処理とは、N台のディスクドライブにおいて、N*K(Kブロック数を示す整数)個の論理ブロックのデータの一括書込み動作の実行である。」

「【0020】ホストシステム10からから書込み要求された書込みデータに対応する論理アドレスLA100の場合において、制御装置1は、図2に示すバッファ管理テーブル7を参照して、次の書込み可能なバッファ領域B8及び論理アドレスLA100に対応するバッファ領域B1を認識する。ここで、データ更新処理として、2論理ブロックにまたがるため、論理アドレスLA100のデータサイズが増えた分の論理アドレスLA101に対応するバッファ領域を割り当てる必要がある。この場合には、遅延したストライプ毎の書込み処理時に、ストライプ上の物理ブロックとして連続に割り当てるようにする。このときのブロック移動は最小ですむようにすると効率が良い。このデータ更新処理では、図4に示すような状態となる。」

「【0023】以上のように書込みバッファ6とバッファ管理テーブル7との関係について説明した。図2から図5に示す具体例では、書込みバッファ6に対する読込み処理や書込み処理時に連続した論理アドレスとして位置するデータに対して、物理的にも連続したアドレスになるようにデータの再配置が行なわれる。・・・(略)・・・
【0024】また、ディスク装置2(ディスクドライブ21?24)は、それぞれブロックサイズの整数倍(K)であるストライプユニットと呼ぶ予め決められた単位(ディスク上の1トラック長に近いサイズが良い)で書込み処理を一括して実行する。このとき、ディスクドライブ21?24の物理的に同じ位置のストライプユニットは1つのストライプとして、同じタイミングで書込み処理が行われる。・・・(略)・・・」

「【0025】・・・(略)・・・
(システムの書込み動作)以下図1のシステムにおいて、本実施形態の書込み動作を主として図6を参照して説明する。
【0026】制御装置1は、ホストシステム10から書込みデータとその論理アドレスを受取ると、不揮発性メモリ4上の書込みバッファ6の空領域にブロック単位に分割して詰めて格納する。また、受取った論理アドレスはブロック毎のアドレスに変換して、バッファ管理テーブル7の対応するエントリに格納する。これらの処理は、受取った論理アドレスおよび書込みバッファ6に既に格納されているデータを参照することにより、書込みバッファ6の最適な格納位置に詰めて格納する。なお、既に書込みバッファ6に格納されているデータに対するデータ更新処理の場合には、書込みバッファ6の空領域に詰めて格納するのではなく、直接に書込みバッファ6内の旧データを更新する。
【0027】ホストシステム10からの書込みデータは、1ストライプ分に1ブロック少ない数(N*K-1)だけ書込みバッファ6に蓄積された段階で、制御装置1はそれらのデータをディスク装置2に書込み処理する。このとき、最後の書込みブロックとして、バッファ管理テーブル7に格納された各ブロックの論理アドレスと揮発性メモリ3上のタイムスタンプ5から論理アドレス・タグ・ブロックを作成する。この論理アドレス・タグ・ブロック内のアドレスデータとデータブロックとの間には、1対1の関係があらかじめ設定されており、各データブロックの論理アドレスが分かるようになっている。
【0028】この後に、制御装置1は、当該論理アドレス・タグ・ブロックを加えた1ストライプ分のデータを、一括してディスクドライブ21-24の空領域に同時に書き込む。前述したように、1ストライプ内の書込みブロックは、論理アドレスに対して連続した領域になっているため、最新のデータは同じストライプ上に連続した配置となるため、読込み性能が向上する。このような動作を図6に示す。
【0029】ここで、タイムスタンプ5の値は書込み処理が完了した段階でインクリメントされる。このように、多数の細かいディスク書込み処理を1回で一括して実行できるため、ディスク書込み性能を向上させることができる。」

ここで、上記記載を関連図面及び本願優先日前からの技術常識に照らせば、以下のことがいえる。

(1)段落【0026】から【0029】までの記載及び図1及び図6の記載から、引用例の制御装置1は、書込みバッファ6に格納された、複数の論理アドレスに関連するデータを、複数のドライブの同じストライプに書き込むものである。

(2)段落【0010】の「データ更新処理時に前記書込みバッファに蓄積した論理ブロックがN*K-1個に達するまでその論理ブロックの更新を遅延させ、・・・(略)・・・前記各ディスクドライブ上の更新対象の旧データを保持している領域とは別の空領域の中から連続した記憶領域(セクタ単位)を選択して、連続した書込み操作により順次書込む」という記載及び上記段落【0017】、段落【0026】から段落【0029】までの記載からみて、引用例の制御装置1は、データの更新があった場合には、当該更新されたデータ(以下「更新データ」という。)を含むデータが書き込みバッファにN*K-1個に達するまで蓄積されるのを待機し、その後、書き込みバッファに蓄積されたデータを、旧データを保持している領域とは別の空領域(空ストライプ)に書き込むものものである。
ここで、旧データを保持している領域とは別の空領域(空ストライプ)に書き込まれるデータは、ホストシステムから受け取ったデータであるから(段落【0026】)、引用例の制御装置1は、更新データを、旧データを保持している領域とは別の空領域(空ストライプ)に書き込む際は、旧データを読み取りまたはコピーすることなく書き込んでいるものと認められる。

(3)引用例の段落【0020】の「データ更新処理として、論理アドレスLA100のデータサイズが増えた分の論理アドレス101に対応するバッファ領域を割り当てる必要がある。」という記載からみて、図4に示されたデータのうち、論理アドレスLA100及びLA101のデータは、旧データから更新されたデータであり、他のデータは、必ずしもそのようなデータではない(更新データではない)もの(以下「非更新データ」という。)と認められる。

したがって、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「複数の論理アドレスに関連するデータを複数のディスクに渡るストライプに書き込み、かつ、
前記複数の論理アドレスの少なくとも1つに関連する更新データを、前記ストライプ内のデータの読み取りまたはコピーを行うことなく、前記複数のディスクに渡る前記ストライプとは異なるストライプに書き込み、
前記更新データを前記異なるストライプに書き込むと同時に、非更新データを前記異なるストライプに書き込むことを含むことを特徴とする制御装置。」

1.4 対比

本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(1)引用発明でいう「論理アドレス」「ディスク」「ストライプ」「異なるストライプ」「制御装置」はそれぞれ、本願発明でいう「アドレス」「チャネル」「第1ストライプ」「第2ストライプ」「メモリシステム制御回路」に相当する。
そして、引用発明でいう、「ストライプに書き込」まれるデータは、本願発明でいう「オリジナルデータ」に相当する。

(2)引用発明でいう「非更新データ」は、ストライプ(第1ストライプ)に格納されているデータを更新したものではなく、また、異なるストライプ(第2ストライプ)に格納されているデータを更新したものでもないから、本願発明でいうオリジナルデータ及び更新データとは無関係のデータ、すなわち、本願発明でいう「無関係データ」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「複数のアドレスに関連するオリジナルデータを複数のチャネルに渡る第1ストライプに書き込み、かつ、
前記複数のアドレスの少なくとも1つに関連する更新データを、前記第1ストライプ内のオリジナルデータの読み取りまたはコピーを行うことなく、前記複数のチャネルに渡る第2ストライプに書き込み、
前記更新データを前記第2ストライプに書き込むと同時に、無関係データを前記第2ストライプに書き込むことを含み、前記無関係データが、前記第1ストライプの前記オリジナルデータおよび前記第2ストライプの前記更新データと無関係である、
ことを特徴とするメモリシステム制御回路。」

(相違点)
本願発明のメモリシステム制御回路は、上記構成に加えて、さらに
「前記第2のストライプの一部に関連したエラーを検出するように構成された、不揮発性メモリ制御回路と、
前記不揮発性メモリ制御回路が前記エラーを検出したことに応答して、前記第2のストライプの前記一部を前記第2のストライプから取り除くメモリ管理回路とを備え、
前記不揮発性メモリ制御回路は、更に、前記第2のストライプの前記取り除かれた一部なしで、前記第2のストライプを駆動する、」
という構成を有するものであるのに対し、引用発明の制御装置は、そのようなものとされていない点。

1.5 判断

上記相違点について検討する。

RAID5構成のディスクアレイ装置のディスクにエラーが発生した場合に、エラーが発生したディスクを正常なディスクに交換してデータの再構成をするまでの間、エラーが発生していないディスクのデータとパリティデータによって、エラーが発生したディスクのデータを再計算することで、運用を継続することは、周知技術であったと認められる。

しかしながら、上記相違点に係る構成のうち、「前記不揮発性メモリ制御回路が前記エラーを検出したことに応答して、前記第2のストライプの前記一部を前記第2のストライプから取り除くメモリ管理回路」に相当する回路を設けることまでは、周知であったとは認められないし、原査定で引用されたいずれの文献にも、そのような回路を設けることの容易想到性を根拠づける記載は見当たらない。

また、他に、このような回路を設けることが当業者にとって容易であったと判断すべき理由を発見しない。

したがって、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたとはいえない。

2.本願請求項2-14に係る発明について

本願請求項2-9に係る発明は、本願発明を更に限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたとはいえない。

本願請求項10に係る発明は、本願発明を「方法」の観点から表現し直したものであり、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたとはいえない。

本願請求項11-14に係る発明は、本願請求項10に係る発明を更に限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたとはいえない。

第4 むすび

以上のとおり、本願請求項1-14に係る発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-10-26 
出願番号 特願2012-530857(P2012-530857)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲はま▼中 信行木村 貴俊  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 千葉 輝久
玉木 宏治
発明の名称 ストライプベースのメモリ動作  
代理人 野村 泰久  
代理人 大菅 義之  

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