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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23K
管理番号 1307045
審判番号 不服2013-23446  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-29 
確定日 2015-10-21 
事件の表示 特願2009-526714「異種材料溶接のための構成および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月 6日国際公開、WO2008/027474、平成22年 1月21日国内公表、特表2010-501360〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2007(平成19)年8月27日(パリ条約による優先権主張2006(平成18)年8月30日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成25年6月27日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成25年11月29日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲について補正がなされた。その後、平成26年11月7日付けで当審から拒絶の理由が通知され、平成27年5月11日に意見書とともに手続補正書が提出され、特許請求の範囲についてさらに補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、上記平成27年5月11日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「 【請求項1】
溶接可能な異種材料を結合する方法であって、
異種材料である第1および第2材料から、第1および第2材料の各第1の端部が摩擦攪拌溶接によって互いに接合された2つの部分からなるアダプタを現場に対して遠隔場所において形成するステップと、
アダプタの完全性を確認するステップと、
アダプタの第1材料の他の端部が異種材料の第1材料に溶接されるように、およびアダプタの第2材料の他の端部が異種材料の第2材料に溶接されるように、現場にて異種材料の間の中間位置においてアダプタを、アーク溶接、ガス溶接、抵抗溶接、超音波溶接、高周波溶接、およびエネルギービーム溶接からなるグループから選択される処理により溶接するステップであり、第1材料および異種材料の第1材料が、アーク溶接プロセスが構造的および機能的完全性を有する均一な溶接を生成するような互いに類似の溶融特性および熱伝導性を有する材料であり、第2材料および異種材料の第2材料が、アーク溶接プロセスが構造的および機能的完全性を有する均一な溶接を生成するような互いに類似の溶融特性および熱伝導性を有する材料である、ステップと、
を含み、
第1材料および第2材料が、炭素鋼、ステンレス鋼、スーパオーステナイトステンレス鋼、高強度低合金鋼、銅合金、アルミニウム合金、鉛、亜鉛、およびマグネシウムからなるグループから選択される、方法。」

第3 引用刊行物記載の発明
これに対して、当審での平成26年11月7日付けの拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された下記刊行物には、以下の発明、あるいは事項が記載されていると認められる。

刊行物1:特開平2-207985号公報
刊行物2:特開2006-218543号公報

1 刊行物1
(1)刊行物1に記載された事項
刊行物1には、「高耐食性異材接合材およびその製造方法」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。


「本発明は、Zr系材料またはTi系材料と、ステンレス鋼との接合材およびその製造方法に関する。なお、本明細書においてZr系材料とは、工業用純ZrまたはZr合金を言い、Ti系材料とは、工業用純TiまたはTi合金を言う。」(明細書第1ページ左下欄第16?末行)


「Zr系材料またはTi系材は、高温高濃度の酸に対して高い耐食性を示すので、化学工業用プラント、酸処理プラント等への広い需要が期待されている。しかし、こられの材料は、汎用の高耐食性材料であるステンレス鋼と比べて著しく高価である。このため、腐食環境の過酷な部分にのみこれらの材料を使用し、他の部分はステンレス鋼で置き換えられることが有利となる。」(明細書第1ページ右下欄第2?9行)


「このようにZr系材料またはTi系材料を部分的に使用する場合、これらの材料とステンレス鋼との接合が必要になる。しかし、両者の溶融溶接は極めて難しく、現場での直接接合は困難である。そのため、通常は、第1図に示すような異材継手10が使用される。これは、接合しようとするZr系材料またはTi系材料からなる部材11と、ステンレス鋼からなる部材12とを拡散接合、爆着、摩擦接合等の非溶融溶接法で予め接合したものである。これを用いれば、接合しようとするZr系材料またはTi系材料21とステンレス鋼22との接合は、同種材料の接合となり、TIG接合等の溶融溶接
の使用により現場でも比較的簡単に行うことが可能となる。」(明細書第1ページ右下欄第10行?第2ページ左上欄第3行)



「しかしながら、拡散接合、爆着、摩擦接合等でZr系材料またはTi系材料とステンレス鋼とを接合すると、非溶融溶接法で接合されているにもかかわらず、接合界面で金属間化合物の生成がおこり、耐食性が著しく劣化する。その結果、前述の異材継手l0にあっては、それ自体の接合部13で腐食が進む。このようなZr系材料またはTi系材料とステンレス鋼との接合部腐食に対する対策としては、両者の間にβ型Zr合金またはβ型Ti合金を介在させる方法(特開昭61-52966号公報)と、Taを介在させる方法(特開昭62-220291号公報)等が公知である。」(明細書第2ページ左上欄第4?15行)


上記記載事項ウに「接合しようとするZr系材料またはTi系材料21とステンレス鋼22との接合は、・・・TIG接合等の溶融溶接の使用により現場でも比較的簡単に行うことが可能」とあることから、刊行物1には、溶接可能な異種材料を結合する方法、が記載されているといえる。


上記記載事項ウに「第1図に示すような異材継手10が使用される。これは、接合しようとするZr系材料またはTi系材料からなる部材11と、ステンレス鋼からなる部材12とを拡散接合、爆着、摩擦接合等の非溶融溶接法で予め接合したものである。」とあるところ、第1図の記載内容も併せて合理的に考えれば、該「異材継手10」については、Zr系材料またはTi系材料からなる部材11およびステンレス鋼からなる部材12の各中央側の端部が拡散接合、爆着、摩擦接合等の非溶融溶接法で予め互いに接合された2つの部分からなる異材継手10、ということができる。

(2)刊行物1発明
そこで、刊行物1の上記記載事項アないしエ並びに上記認定事項オ及びカを図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下「刊行物1発明」という。)
「溶接可能な異種材料を結合する方法であって、
異種材料である、Zr系材料またはTi系材料、およびステンレス鋼から、Zr系材料またはTi系材料からなる部材11およびステンレス鋼からなる部材12の各中央側の端部が拡散接合、爆着、摩擦接合等の非溶融溶接法によって予め互いに接合された2つの部分からなる異材継手10を形成するステップと、
異材継手10のZr系材料またはTi系材料からなる部材11の他の端部がZr系材料またはTi系材料21に溶接されるように、および異材継手10のステンレス鋼からなる部材12の他の端部がステンレス鋼22に溶接されるように、現場にて異種材料の間の中間位置において異材継手10を、TIG接合により溶接するステップであり、部材11およびZr系材料またはTi系材料21が、いずれも同じZr系材料またはTi系材料であり、部材12およびステンレス鋼22が、いずれも同じステンレス鋼である、ステップと、
を含み、
部材11の材料が、Zr系材料またはTi系材料であり、部材12の材料がステンレス鋼である、方法。」

2 刊行物2
(1)刊行物2に記載された事項
刊行物2には、「ニチノール製医療装置に対する摩擦撹拌接合および摩擦撹拌プロセスの利用」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。

ア 「【0004】
・・・(中略)・・・例えば、電子ビーム、不活性ガス、およびレーザーなどの、このような溶融溶接技術または方法では、基材と著しく異なる溶接ゾーンに微細構造が形成されることが知られている。この溶接ゾーンは、機械特性が管の他の部分よりも劣るため、最終製品の実用性が制限される。さらに、ニッケル・チタン合金とステンレス鋼などの異種材料を溶融法で溶接すると、溶接ゾーンに脆弱な金属間化合物が形成される。」

イ 「【0011】
摩擦撹拌接合は、互いに接合されるべき2片の材料の接合部に回転器具を配置し、所定の速度で回転させながら接合部に沿って移動させるプロセスである。回転器具のデザインおよびその回転により、材料が接合部の一側から他側に移動し、これにより2片の材料が互いに効果的に接合される。これは実質的に冷間溶接であるため、基材が、現在利用されている溶接技術に関連した加熱による悪影響を全く受けない。」

ウ 「【0012】
このプロセスは、様々な金属材料を互いに溶接する際に用いることができるが、特にニッケル・チタン合金の接合に有利である。例えば、摩擦撹拌接合で製造できる製品の1つに、ニッケル・チタン製の微小管があり、・・・(中略)・・・摩擦撹拌接合を用いて、ニッケル・チタン合金を、ステンレス鋼、チタン合金(α、β、およびα+β)、コバルト系合金(L605)、および耐火金属合金などの他の医療用工学材料に接合することもできる。また、この技術を用いて、金、プラチナ、パラジウム、銀、タンタル、タングステン、およびモリブデンを含む放射線不透過性がより高い材料を、ニッケル・チタン合金に接合または固定することもできる。放射線不透過性がより高い材料をニッケル・チタン合金に接合または結合することで、装置全体または装置の所望の部分が、放射線不透過性がより高くなる。したがって、例えば、タンタルのバンドをニッケル・チタン製のステントの端部に接合して、X線透視下での位置合わせを容易にすることができる。」

エ 「【0018】
図1を参照すると、2つのワークピース材料200と300との間の接合部250にある回転器具100が模式的に例示されている。2つのワークピース材料200と300が強く締め付けられた典型的な当接接合構造では、回転器具100を、全接合部の深さに亘って材料を移動させるのに十分な深さまで、接合部250内に貫入させる。回転器具100は、接合部250内への器具100の貫入を可能にするピンすなわちプローブ102と、材料を接合部250の一側から他側に移動させるための成形肩部分104を備えている。例示されていないが、プローブ102と肩104との間に移行部が設けられている。回転器具100の形状は、材料を移動させることができるようにデザインされている。例示されているように、例示的な実施形態では、回転器具100は実質的に円柱状である。



(2)刊行物2事項
刊行物2の上記記載事項アないしエを技術常識を踏まえて整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認められる。(以下「刊行物2事項」という。)
「ニッケル・チタン合金とステンレス鋼などの異種材料を溶融法で溶接することより溶接ゾーンに脆弱な金属間化合物が形成されるのを避けるため、ニッケル・チタン合金およびステンレス鋼の各端部を摩擦攪拌接合によって互いに接合すること。」

第4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物1発明の「Zr系材料またはTi系材料」は本願発明の「第1材料」に相当することは、その機能に照らして明らかであり、以下同様に技術常識も踏まえると、「ステンレス鋼」は「第2材料」に、「Zr系材料またはTi系材料からなる部材11」は「第1材料」に、「ステンレス鋼からなる部材12」は「第2材料」に、「中央側の端部」は「第1の端部」に、「異材継手10」は「アダプタ」に、「Zr系材料またはTi系材料21」は「異種材料の第1材料」に、「ステンレス鋼22」は「異種材料の第2材料」に、「TIG接合」は「アーク溶接」「処理」に相当することも明らかである。
また、刊行物1発明の「部材11およびZr系材料またはTi系材料21が、いずれも同じZr系材料またはTi系材料であり、部材12およびステンレス鋼22が、いずれも同じステンレス鋼である」ことは、上記対応関係を踏まえ「第1材料および異種材料の第1材料が、いずれも同じZr系材料またはTi系材料であり、第2材料および異種材料の第2材料が、いずれも同じステンレス鋼である」ものと言い改められるところ、同じ材料であれば同じ溶接特性及び伝熱特性を持つことは明らかであるから、これは本願発明の「第1材料および異種材料の第1材料が、アーク溶接プロセスが構造的および機能的完全性を有する均一な溶接を生成するような互いに類似の溶融特性および熱伝導性を有する材料であり、第2材料および異種材料の第2材料が、アーク溶接プロセスが構造的および機能的完全性を有する均一な溶接を生成するような互いに類似の溶融特性および熱伝導性を有する材料である」ことに相当するといえる。

次に、刊行物1発明の「拡散接合、爆着、摩擦接合等の非溶融溶接法」は、本願発明の「摩擦攪拌溶接」と、「非溶融溶接法」である限りにおいて共通する。
また、刊行物1発明の「部材11の材料が、Zr系材料またはTi系材料であり、部材12の材料がステンレス鋼である」ことと、本願発明の「第1材料および第2材料が、炭素鋼、ステンレス鋼、スーパオーステナイトステンレス鋼、高強度低合金鋼、銅合金、アルミニウム合金、鉛、亜鉛、およびマグネシウムからなるグループから選択される」こととは、上記対応関係も踏まえ、第1材料および第2材料としてステンレス鋼が選択され得る、ことである限りにおいて共通する。

したがって、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「溶接可能な異種材料を結合する方法であって、
異種材料である第1および第2材料から、第1および第2材料の各第1の端部が非溶融溶接法によって互いに接合された2つの部分からなるアダプタを形成するステップと、
アダプタの第1材料の他の端部が異種材料の第1材料に溶接されるように、およびアダプタの第2材料の他の端部が異種材料の第2材料に溶接されるように、現場にて異種材料の間の中間位置においてアダプタを、アーク溶接処理により溶接するステップであり、第1材料および異種材料の第1材料が、アーク溶接プロセスが構造的および機能的完全性を有する均一な溶接を生成するような互いに類似の溶融特性および熱伝導性を有する材料であり、第2材料および異種材料の第2材料が、アーク溶接プロセスが構造的および機能的完全性を有する均一な溶接を生成するような互いに類似の溶融特性および熱伝導性を有する材料である、ステップと、
を含み、
第1材料および第2材料としてステンレス鋼が選択され得る、方法。」

そして、本願発明と刊行物1発明とは、以下の4点で相違している。
<相違点1>
第1および第2材料の各第1の端部を非溶融溶接法によって接合することに関し、本願発明は摩擦攪拌溶接によって接合するのに対し、刊行物1発明は拡散接合、爆着、摩擦接合等の非溶融溶接法であるものの、摩擦攪拌溶接ではない点。
<相違点2>
本願発明は、アダプタを現場に対して遠隔場所において形成するのに対し、刊行物1発明は、アダプタ(異材継手10)を「予め」形成するものの、現場に対して遠隔場所において形成するか明らかでない点。
<相違点3>
本願発明は、アダプタの完全性を確認するステップを含むのに対し、刊行物1発明は、そのようなステップを含むか明らかでない点。
<相違点4>
第1材料および第2材料としてステンレス鋼が選択され得ることに関し、本願発明は、第1材料および第2材料が、炭素鋼、ステンレス鋼、スーパオーステナイトステンレス鋼、高強度低合金鋼、銅合金、アルミニウム合金、鉛、亜鉛、およびマグネシウムからなるグループから選択されるのに対し、刊行物1発明は、第1材料がZr系材料またはTi系材料であり、第2材料がステンレス鋼である点。

第5 相違点の検討
1 <相違点2>について
事案に鑑み、便宜上、相違点2から検討する。刊行物1発明は、アダプタ(異材継手10)を「予め」形成するものであるところ、アダプタは「拡散接合、爆着、摩擦接合等の非溶融溶接法によって」形成されるのであるから、そのような特殊な接合は現場ではなく、現場に対して遠隔した工場等で行われるのが通常であり、相違点2は実質的な相違点ではない蓋然性が高い。
仮に相違点2が実質的な相違点であるとしても、刊行物1発明において、「予め」行われる「拡散接合、爆着、摩擦接合等の非溶融溶接法によ」る接合を現場に対して遠隔場所において行うことは格別困難なことではない。

2 <相違点3>について
刊行物1発明は、アダプタ(異材継手10)の完全性を確認するステップを含むか明らかではない。しかしながら、「化学工業用プラント、酸処理プラント等」(上記記載事項第3の1(1)イ)の接合材として用いられるアダプタに完全性が求められるのは当然であり、刊行物1発明もそのような完全性を確認するステップを実質的には含むものと考えられ、相違点3は実質的な相違点ではない。

3 <相違点1>及び<相違点4>について
まず、刊行物1発明は、第1材料がZr系材料またはTi系材料であり、第2材料がステンレス鋼であるところ、一般に配管材料は対象とする流体及び環境によって、当業者が適宜適切な材料を選択し得るものであり、第1材料として、Zr系材料またはTi系材料に代え、炭素鋼、スーパオーステナイトステンレス鋼、高強度低合金鋼、銅合金、アルミニウム合金、鉛、亜鉛、およびマグネシウムというごく一般的な配管材料から選択することは、当業者が適宜行い得ることである。

次に、刊行物1発明は、第2材料のステンレス鋼と異種他材料の溶融溶接は困難であることから(上記記載事項第3の1(1)ウ)、拡散接合、爆着、摩擦接合等の非溶融溶接法を用いたものであるが、刊行物1には、かかる拡散接合、爆着、摩擦接合等の非溶融溶接法でも、接合界面が腐食することがありその対策が必要であることが示唆されている(上記記載事項第3の1(1)エ)。
ところで、上記第3の2(2)にて述べたように、刊行物2事項は、「ニッケル・チタン合金とステンレス鋼などの異種材料を溶融法で溶接することにより溶接ゾーンに脆弱な金属間化合物が形成されるのを避けるため、ニッケル・チタン合金およびステンレス鋼の各端部を摩擦攪拌接合によって互いに接合すること。」というものであり、刊行物2事項は、異種材料の溶融溶接困難性の対処として、摩擦攪拌接合を用いているのである。
さらに、溶融溶接することが困難な異種材料を摩擦攪拌溶接により接合することは、刊行物2事項に加えて、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-137952号公報には「【0008】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この発明に係るアルミニウム材と異種金属材の接合方法は、アルミニウム材と異種金属材を接合予定位置に配置したのち、接合部に高速回転するプローブを接触させ摩擦熱にて軟化させ接合する摩擦撹拌溶接法により、両材を接合することを特徴とするものである。【0009】アルミニウム材の種類は限定されることはなく、純アルミニウム系、Al-Cu系(JIS2000系)合金、Al-Mn系(JIS3000系)合金・・・(中略)・・・【0010】異種金属材はアルミニウム以外の金属材であり、その種類は特に限定されることはなく、SS材、SUS材等の鉄系材料でも良いし、あるいは銅系、チタン系、Mg系材料でも良い。」との記載や(下線は当審で付した。また、図2の「突き合わせ継手」も併せて参照)、原査定の平成24年9月10日付け拒絶の理由においても示した特開2003-170280公報(段落【0006】?【0012】)の、異種材料たるAl合金と鉄系材料を摩擦攪拌接合によって接合する旨の記載からすれば、溶融溶接することが困難な異種材料を摩擦攪拌溶接により接合することは、従来周知の技術事項といえる。

そうしてみると、刊行物1発明において、第1材料として、Zr系材料またはTi系材料に代え、アルミニウム合金等の一般的な配管材料を採用し、これをステンレス鋼たる第2材料と接合するに際し、異種材料の溶融溶接困難性の問題、及び、拡散接合・爆着・摩擦接合における腐食問題の対処として、上記従来周知の技術事項を適用して摩擦攪拌溶接によって接合することにより、相違点1及び4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

4 本願発明の効果について
本願発明により得られる効果も、刊行物1発明及び従来周知の技術事項から当業者であれば予測し得る範囲のものであって格別のものとはいえない。

5 小括
したがって、本願発明は、刊行物1発明及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-19 
結審通知日 2015-05-26 
審決日 2015-06-08 
出願番号 特願2009-526714(P2009-526714)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大屋 静男松本 公一  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 長屋 陽二郎
久保 克彦
発明の名称 異種材料溶接のための構成および方法  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  

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