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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1307051
審判番号 不服2014-6046  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-03 
確定日 2015-10-21 
事件の表示 特願2001-581174「全自動迅速顕微鏡用スライドスキャナ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 8日国際公開、WO01/84209、平成16年 5月20日国内公表、特表2004-514920〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年3月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、平成12年5月3日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成14年12月11日に手続補正がなされ(特許法第184条の7第2項)、平成22年11月12日付けの拒絶理由の通知に対し、平成23年5月16日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成24年2月29日付けの拒絶理由の通知に対し、同年9月4日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成25年3月5日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月12日に意見書が提出されたが、同年11月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成26年4月3日に審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年4月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年4月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正は、本件補正前の請求項1の
「最大領域を有する試料の表面によって定義された主要試料平面を有する顕微鏡試料の少なくとも一つの部分を自動的にデジタル化するためのスキャナであって、
試料を載置し、第一方法および第二方法で移動させるための電動ステージであって、当該第一方法は、予め決められた第一位置と予め決められた第二位置との間を、当該第一位置及び当該第二位置で定義された第一の移動軸(x)に沿って、実質的に一定速度で前記試料平面にある試料を動かすことであり、当該第二方法は、当該第一の移動軸(x)に直角であり、当該試料平面にある第二の軸(y)に沿って試料を動かすことである電動ステージと、
試料の少なくとも一つの部分が照明される照明システムと、
前記照明システムによって照明された試料部分の中心にある光軸に沿って位置決めされ、前記試料平面に直角である少なくとも一つの顕微鏡対物レンズと、
合焦光学系であって、それにより、顕微鏡対物レンズからの光学信号が光軸に直角の画像平面上に合焦される合焦光学系と、
少なくとも一つの一次元配列で配置された複数の光応答性要素を備える少なくとも一つの一次元スキャンカメラであって、当該一次元スキャンカメラが前記照明システムによって照明された前記電動ステージ上にある試料領域の一次元の観察フィールドを有するように、当該光応答性要素が前記画像平面上に位置決めされ、且つ、当該一次元配列が前記第一の移動軸(x)に直角である一次元スキャンカメラと、
前記電動ステージに載置された試料の予め決められた動きに同期して、前記複数の光応答性要素からの光強度をデジタル化、処理、および格納するためのデータ処理装置であって、複数の画像ストリップ形式の連続したスキャンから切れ目のないデジタル画像を構成するデータ処理装置と、
前記電動ステージと前記データ処理装置の間に接続され、当該電動ステージの位置を決定するステージコントローラであって、複数の画像ストリップから構成されるデジタル画像を形成するために、
第1に、第一の画像ストリップを取得するための前記第一方法に対応する前記試料の予め決められた動きを行うように制御し、
第2に、必要な数の画像ストリップを取得するまで、前記第二方法及び当該第一方法に対応する当該試料の予め決められた動きを行うように繰り返し制御し、
第3に、当該第一方法に対応する当該試料の予め決められた動きの始め及び終わりで、各々、加速及び減速するように制御することにより、実質的に一定速度で当該試料を動かすように制御するステージコントローラと、を備え、
前記データ処理装置は、前記該電動ステージのx/y位置の関数として予めスキャンされた最良の焦点の焦点地図にしたがって、第3の軸(z)に沿った少なくとも1つの対物レンズの動きによる焦点調節を、当該電動ステージの動きと並行して行うように構成されていることを特徴とするスキャナ。」

との記載を、

「最大の領域を有する試料の表面によって定義された第一の試料平面を有する顕微鏡試料の少なくとも一つの部分を自動的にデジタル化するためのスキャナであって、
試料を載置し、第一方法および第二方法で当該試料を移動させるための電動ステージであって、当該第一方法は、予め決められた第一位置と予め決められた第二位置との間を、当該第一位置及び当該第二位置によって定義された第一の移動軸(x)に沿って、実質的に一定速度で前記試料平面にある試料を動かすことであり、当該第二方法は、当該第一の移動軸(x)に直角であり、当該試料平面にある第二の軸(y)に沿って試料を動かすことである電動ステージと、
前記試料の少なくとも一つの部分が照明される照明システムと、
前記照明システムによって照明された試料部分の中心にあり、前記試料平面に直角である光軸に沿って位置決めさる少なくとも一つの顕微鏡対物レンズと、
合焦光学系であって、それにより、顕微鏡対物レンズからの光学信号が光軸に直角の像平面上に合焦される合焦光学系と、
少なくとも一つの一次元配列で配置された複数の光応答性要素を備える少なくとも一つの一次元スキャンカメラであって、当該一次元スキャンカメラが前記照明システムによって照明された前記電動ステージ上にある試料領域の一次元の観察フィールドを有するように、当該複数の光応答性要素が前記像平面上に位置決めされ、且つ、当該複数の応答性要素の配列方向が前記第一の移動軸(x)に直角である一次元スキャンカメラと、
前記電動ステージに載置された試料の予め決められた動きに同期して、前記複数の光応答性要素からの光強度をデジタル化、処理、および格納するためのデータ処理装置であって、複数の画像ストリップ形式の連続したスキャンから切れ目のないデジタル画像を構成するデータ処理装置と、
前記電動ステージと前記データ処理装置の間に接続され、当該電動ステージの位置を決定するステージコントローラであって、複数の画像ストリップから構成されるデジタル画像を形成するために、
第1に、第一の画像ストリップを取得するための前記第一方法に対応する前記試料の予め決められた動きを行うように制御し、
第2に、必要な数の画像ストリップを取得するまで、前記第二方法及び当該第一方法に対応する当該試料の予め決められた動きを行うように繰り返し制御し、
第3に、当該第一方法に対応する当該試料の予め決められた動きの始め及び終わりで、各々、加速及び減速するように制御することにより、実質的に一定速度で当該試料を動かすように制御するステージコントローラと、を備え、
各画像ストリップのデジタル画像は、前記少なくとも一つの一次元スキャンカメラの前記第一の移動軸(x)に沿ったスキャンによって収集された複数のライン画像から構成され、
前記データ処理装置は、前記該電動ステージのx/y位置の関数である、最良の焦点のプリ-スキャン焦点地図にしたがって、前記少なくとも1つの対物レンズの第3の軸(z)に沿った動きによる焦点調節を、当該電動ステージの動きと並行して、各ライン画像の収集毎に行うように構成されていることを特徴とするスキャナ。」

との記載へ補正することを含むものである(下線は、補正箇所を示すためのものとして請求人が付したものである。)。

(2)上記(1)で示した補正は、以下の補正項目からなるものである(下線は当審が付した。以下同じ。)。
ア 「最大領域」を「最大の領域」とする補正。

イ 「主要試料平面」を「第一の試料平面」とする補正。

ウ 「試料を載置し、第一方法および第二方法で移動させるための電動ステージ」を「試料を載置し、第一方法および第二方法で当該試料を移動させるための電動ステージ」とする補正。

エ 「当該第一位置及び当該第二位置で定義された第一の移動軸」を「当該第一位置及び当該第二位置によって定義された第一の移動軸」とする補正。

オ 「試料の少なくとも一つの部分が照明される照明システム」を「前記試料の少なくとも一つの部分が照明される照明システム」とする補正。

カ 「前記照明システムによって照明された試料部分の中心にある光軸に沿って位置決めされ、前記試料平面に直角である少なくとも一つの顕微鏡対物レンズ」を「前記照明システムによって照明された試料部分の中心にあり、前記試料平面に直角である光軸に沿って位置決めさる少なくとも一つの顕微鏡対物レンズ」とする補正。
なお、補正後の「位置決めさる」は「位置決めされる」の誤記であると認められる。

キ 「顕微鏡対物レンズからの光学信号が光軸に直角の画像平面上に合焦される合焦光学系」を「顕微鏡対物レンズからの光学信号が光軸に直角の像平面上に合焦される合焦光学系」とする補正。

ク 「当該光応答性要素が前記画像平面上に位置決めされ」を「当該複数の光応答性要素が前記像平面上に位置決めされ」とする補正。

ケ 「当該一次元配列が前記第一の移動軸(x)に直角である一次元スキャンカメラ」を「当該複数の応答性要素の配列方向が前記第一の移動軸(x)に直角である一次元スキャンカメラ」とする補正。

コ 「各画像ストリップのデジタル画像は、前記少なくとも一つの一次元スキャンカメラの前記第一の移動軸(x)に沿ったスキャンによって収集された複数のライン画像から構成され、」との特定事項を追加する補正。

サ 「前記該電動ステージのx/y位置の関数として予めスキャンされた最良の焦点の焦点地図にしたがって、第3の軸(z)に沿った少なくとも1つの対物レンズの動きによる焦点調節」を「前記該電動ステージのx/y位置の関数である、最良の焦点のプリ-スキャン焦点地図にしたがって、前記少なくとも1つの対物レンズの第3の軸(z)に沿った動きによる焦点調節」とする補正。

シ データ処理装置が焦点調節を行うタイミングについて「各ライン画像の収集毎に」行うとの特定事項を追加する補正。

(3)上記(2)コの補正項目は、補正前の請求項1の発明特定事項である「画像ストリップ」の「デジタル画像」について、「前記少なくとも一つの一次元スキャンカメラの前記第一の移動軸(x)に沿ったスキャンによって収集された複数のライン画像から構成され」るものとの本願の出願当初明細書及び図面に記載した事項の範囲内の限定を付加するもので特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものであり、また、補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(以下「特許請求の範囲の減縮」という。)を目的とするものに該当する。
そして、上記(2)シの補正項目は、補正前の請求項1の発明特定事項である「焦点調節」を行うタイミングについて「各ライン画像の収集毎」との限定を付加するものであるから、同様に、新規な事項を加えるものではなく、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
他方、上記(2)の他の各補正項目については、新規な事項を加えるものではなく、同項第3号の誤記の訂正又は同第4号の明りょうでない記載の釈明に該当する。

2 本件補正の適否
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に本件補正後の請求項1として記載したものにおいて、「前記試料平面に直角である光軸に沿って位置決めさる少なくとも一つの顕微鏡対物レンズ」との誤記が含まれる記載を「前記試料平面に直角である光軸に沿って位置決めされる少なくとも一つの顕微鏡対物レンズ」と正したものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平11-211988号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに次の記載がある。

a 「【発明の属する技術分野】」(段落【0001】)、
「本発明は、顕微鏡画像の静止画像取得システムに関し、特に、全体参照画像作成後、遠隔地にて前記全体参照画像上で注視位置を指定することによって当該注視位置を中心とする高倍率静止画像を遠隔地からでも取得することに適用して有効な技術に関するものである。」(段落【0001】)

b 「【従来の技術】」(段落【0002】)、
「従来、この種の全体参照画像上を指定することによって表示したい位置の高倍率静止画像を取得する手段として、特願平4-162715号の技術を挙げることができる。この技術では標本の全体像を把握するために、プレパラートを顕微鏡のステージにセットする前に専用のマクロ撮影のスタンドにセットして固定のサイズの全体参照画像として撮影し、さらに、高倍率の画像の撮影に関しては、該全体参照画像をブロックに分割し、この分割したブロックを高倍率で撮影している。」(段落【0002】)

c 「【発明が解決しようとする課題】」(段落【0003】)、
「また、標本の大きさに制限がある結果、標本が大きいときには所定領域の全てを撮影することができない結果必要な部分が表示されない全体参照画像が作成される場合があり、また、標本が小さいときには所定領域が全体参照画像のほんの一部分になってしまい不必要な部分まで取込むという無駄が生じる場合があるという問題もあった。」(段落【0006】)、
「また、高精細静止画像を倍率を変えながら取得するので、似たような画像を含むような部分領域が複数箇所に発生するような病理画像では、特に、全体参照画像中のどの部分領域を何倍の倍率で取得済みであるのかを病理医が覚えておくことが非常に困難である。」(段落【0007】)

d 「【課題を解決するための手段】」(段落【0014】)、
「前述の手段によれば、顕微鏡の自動移動式ステージを制御しながら所定倍率で前記標本の分割撮影を繰り返し、この分割撮影により得られた画像群をメモリに取込み、該メモリ上で分割撮影された画像群の平面的な位置関係に矛盾が生じないようにつなぎ合わせることによって前記全体参照画像を合成するので、専用のマクロ撮影のスタンドと専用のカメラを用意し、マクロ撮影のスタンドにプレパラートをセットしなくても全体参照画像を取込むことができる。また、専用のマクロ撮影のスタンドを使用したら標本が大きすぎたり小さすぎたりして全体参照画像が適切に取得できなかったものでも、所定領域の全体参照画像を最も適した任意の大きさの画像として合成することができる。」(段落【0021】)

e 「(実施例1)」(段落【0025】)、
「顕微鏡2にCCDカメラ1を接続して顕微鏡2で拡大した画像をCCDカメラ1で撮影し、送信装置5に標本3の画像を取込むためには、接眼レンズの代わりにリレーレンズを使用する。対物レンズの倍率、リレーレンズの倍率、それらのレンズを使用したときのCCDカメラ1で取込む画像の実際のサイズとの関係の例を表1に示し、この例を使用して以降の実施例1を説明する。」(段落【0035】)、
「【表1】

」(段落【0036】)、
「以下に、全体参照画像として取込みたい範囲のステージ制御座標値をメモリに取込む手段を説明する。」(段落【0039】)、
「顕微鏡2のステージ4に標本3がセットしてあり、対物レンズは4倍、リレーレンズは1倍になっている。まず、全体参照画像として取込みたい範囲が含まれるような長方形領域の左上の角が取込み可能領域の中央より右下になるような位置でその顕微鏡2のステージ制御座標を取込む。」(段落【0040】)、
「次に、全体参照画像として取込みたい範囲が含まれるような長方形領域の右下の角が取込み可能領域の中心より左上になるような位置でその顕微鏡のステージ制御座標を取込む。全体参照画像の左上のステージ制御座標と右下のステージ制御座標の取込みは、右上のステージ制御座標と左下のステージ制御座標の取込みに置き換えてもよい。」(段落【0041】)、
「図2及び図3を参照して、メモリに取込んだステージ制御座標値に関してステージを制御しながら画像をメモリに取込む手段を説明する。左上のステージ制御座標値を(x1,y1)、右下のステージ制御座標値を(x2,y2)とする。ただし、x1<x2,y1<y2である。また、x1,y1、x2,y2の単位はミクロンメートルである。|x1-x2|/2210≦k1となる最小の自然数k1と、|y1-y2|/1650≦k2となる最小の自然数k2を計算する(S301)。ステージ4を、顕微鏡2の視野の中心が(x1,y1)+Pのステージ制御座標値になるよう制御する(S302)。」(段落【0042】)

f 「(実施例4)」(段落【0111】)、
「前述の実施例1,2,3ではCCDカメラ1で取込んだ静止画像を合成することによって全体参照画像を作成した。それ故、前述の実施例1,2,3に従って全体参照画像を作成すると輝度にむらができる結果、画像をつなぎ合わせた個所が目立ってしまい、実際の標本とは異なった画像として全体参照画像が作成されてしまうという問題があった。」(段落【0111】)、
「この問題を解決するためには、以下のことを行う。静止画像をCCDカメラ1で取込むため輝度にむらが生じる。従って、本実施例4では前述の実施例1,2,3とは異なり、全体参照画像を作成するためにラインセンサカメラを使用することによって輝度のむらを軽減する。」(段落【0112】)、
「図9は本発明の実施例4の全体参照画像を作成する手段を説明するための図であり、1はラインセンサカメラである。」(段落【0113】)、
「ラインセンサの仕様によるが、本実施例4でのラインセンサカメラ1Aの画素数は1024画素、1画素サイズは14*14ミクロンメートル(μm)であるとする。また、ステージ制御の最大誤差は10ミクロンメートルであり、2つの画像をつなぎ合わせるのに必要な2つの画像の重なり合った長方形部分画像領域の短いほうの一辺の画素数を20ドットとする。」(段落【0114】)、
「図9を参照してステージを制御しながらラインセンサで全体参照画像を作成する手段を説明する。図6を参照して、あらかじめ、つなぎ合わせる二つの画像の重複領域の短いほうの一辺の大きさを求めておく。ステージ制御の最大誤差10ミクロンメートルは1ドットであるので、2つの画像の重複領域の短いほうの一辺の大きさは22ドット、22*14=308ミクロンメートル必要と計算できる。前述の実施例1,2,3と同様の方法で全体参照画像として取込みたい範囲のステージ制御座標を取込む。|y1-y2|/14028≦k2となる最小の自然数k2を計算する。ラインセンサカメラ1Aで取込むラインの一番上のステージ制御座標値が(x1-154,y1-154)になるように制御する。ステージを右方向にx座標値が(x2+154)になるまで制御し、画像をメモリに取込み左上の位置にステージ制御座標値(x1-154,y1-154)を記録する。メモリに取込まれた静止画像のx座標方向の大きさは(x2-x1+308)/14ドットである。ラインセンサで取込むラインの一番上のステージ制御座標値が(x1-154,y1+13874)になるように制御する。同様にステージ4を右方向にx座標値が(x2+154)になるまで制御し、画像をメモリに取込み左上の位置にステージ制御座標値(x1-154,y1+13874)を記録する。これを(k2-1)回繰り返し、k2枚の静止画像のメモリへの取込みと左上の位置のステージ制御座標値の記録を行う。」(段落【0115】)、
「一枚目の静止画像をメモリに取込む。取込む画像は{(x2-x1+308)/14}*1024で取込んだ画像のうち、上下左右11ドットずつを取り除いた静止画像である。」(段落【0116】)、
「次の画像との重複領域中の小領域を指定する方法を説明する。次の画像との重複領域は静止画像中の下端から22ドットにあたる部分である{(x2-x1+308)/14}*22の静止画像であり、ステージ制御の最大誤差は1ドットであるので、前述の実施例1,2,3と同様に計算すると、重複領域中の小領域Aは、[{(x2-x1+308)/14}-2]*20の上下左右端から1ドットずつを切り取ったものである。」(段落【0117】)、
「相関係数を計算して合成位置を決定し画像をつなぎ合わせる方法を説明する。次の画像中で前の画像と重なると計算される静止画像中の上端から22ドットにあたる部分である{(x2-x1+308)/14}*22の静止画像を画像Bとする。画像Bの中には〔{(x2-x1+308)/14}-2〕*20の静止画像が9通り考えられる。これらを任意にB1?B9とし、以降の全体参照画像の作成の方法は前記実施例3と同様とする。」(段落【0118】)、
「本実施例4によれば、一枚の静止画像が前述の実施例1,2,3で得られる静止画像と比較して大きいため全体参照画像を取込む枚数が少なくて済み、その結果、画像合成を行う回数を削減することができる。画像合成を行う回数が削減できることにより、合成にかかる時間が短縮できるという効果が得られるとともに、実際の標本と同一の全体参照画像が作成されやすいという効果が得られる。」(段落【0119】)、
「また、顕微鏡のステージに置かれた標本の所定領域の全体参照画像を、顕微鏡のステージを制御しながらラインセンサでスキャンし、該画像群をメモリに取込み、該メモリ上で平面的な位置関係に矛盾が生じないようにつなぎ合わせることによって合成する手段により、専用のマクロ撮影のスタンドを用意し、該マクロ撮影のスタンドにプレパラートをセットしなくても、全体参照画像を取込むことができる。」(段落【0120】)、
「また、平面で撮影するCCDカメラでは一枚の静止画像中で画像の中心と端とでは輝度が違うので、つなぎ合わせたときにつなぎ目が顕著になってしまうが、ラインセンサでスキャンすることにより、横にスキャンすれば縦方向の、縦にスキャンすれば横方向のつなぎ目が発生しないので、その分元の標本3と近い画像を作成することができる。これにより、前述の実施例1,2,3ほど頻繁に輝度によって合成位置が顕著になる部分のない全体参照画像が作成できるという効果が得られる。」(段落【0121】)

g 図9は次のとおりである。


h 実施例4のラインセンサカメラ1Aの画素は、以下の理由により、ステージ制御座標のx方向に対応する方向に1画素、ステージ制御座標のy方向に対応する方向に1024画素の一次元配列からなるものと認められる。

(a)段落【0114】によれば、ラインセンサカメラ1Aの画素数は1024画素であり、1画素サイズは14*14ミクロンメートル(μm)であるとされている。

(b)実施例4は、ラインセンサカメラ1Aにより全体参照画像を作成するものであり、段落【0115】によれば、概略、次のとおりのステップを含むものと認められる。

α ラインセンサカメラ1Aで取り込むラインの一番上のステージ制御座標値が(x1-154,y1-154)になるように制御し、ステージを右方向にx座標値がx2+154になるまで制御し、画像をメモリに取り込む。
ここでいう「画像」とは、図9でいうと紙面横方向を長手方向とする矩形部(当審が作成した参考図1の太線で囲まれた部位を参照。)を画像化したものと解され、引用例1にはこの理解に反する記載はない。
[参考図1]


β ラインセンサカメラ1Aで取り込むラインの一番上のステージ座標値が(x1-154,y1+13874)になるように制御し、ステージを右方向に座標値がx2+154になるまで制御し、画像をメモリに取り込む。
ここでいう「画像」とは、上記αと同様に、図9でいうと紙面横方向を長手方向とする矩形部(当審が作成した参考図2の太線で囲まれた部位を参照。)を画像化したものと解され、引用例1にはこの理解に反する記載はない。
[参考図2]


γ これを(k2-1)回繰り返し、k2枚の静止画像のメモリへの取込みと左上の位置のステージ制御座標値の記録を行う。
ここで、k2-1とは、全体参照画像として取り込みたい範囲をスキャンするために、ステージをy方向に移動させることが必要な回数を意味するものと解され、引用例1にはこの理解に反する記載はない。

(c)上記(b)γの「k2」に関し、段落【0115】には、|y1-y2|/14028≦k2となる最小の自然数k2を計算するとの記載があるところ、k2は、上記(b)γのとおり、全体参照画像として取り込みたい範囲をスキャンするために、ステージをy方向に移動させることが必要な回数に1を加えたものである。
そうすると、除数である14028は、上記(b)βにおいて、ステージをy方向に移動させるときの長さを意味するものと解され、この理解は、上記(b)αにおけるステージ制御座標のy座標値y1-154と同βにおける同y座標値y1+13874との差の絶対値が14028になっていることと整合する。ここで、被除数である|y1-y2|の単位はミクロンメートル(段落【0042】)であるから、14028の単位もミクロンメートルである。
そして、2つの画像の重複領域(当審が作成した参考図3の太線で囲まれた部位を参照。この部位を画像化したものが「2つの画像の重複領域」となる。)の短いほうの一辺の大きさに相当する長さが308ミクロンメートルとされている(段落【0115】)。
[参考図3]


してみると、ラインセンサカメラ1Aの画素全体の長さのうち、ステージ制御座標のy方向に対応する長さは、14028+308=14336ミクロンメートルであると解される。
そして、ラインセンサカメラ1Aの1画素サイズは14ミクロンメートル*14ミクロンメートル(上記(a))であるから、ラインセンサカメラ1Aのy方向の画素の数は、14336/14=1024ということになる。
以上を踏まえ、さらに、図9のラインセンサカメラが直線状になっていることが見て取れること、ラインセンサカメラ1Aの画素数が1024であること(上記(a))をも考え併せると、ラインセンサカメラ1Aの画素は、ステージ制御座標のx方向に対応する方向に1画素、ステージ制御座標のy方向に対応する方向に1024画素の一次元配列からなるものと認められる。

(d)上記(c)の認定は、段落【0116】の「一枚目の静止画像をメモリに取込む。取込む画像は{(x2-x1+308)/14}*1024で取込んだ画像のうち、上下左右11ドットずつを取り除いた静止画像である。」との記載において、「1024」が、(上下左右11ドットずつを取り除く前の)取込んだ画像の、ステージ制御座標のy方向に対応する方向のドット数と解されることと整合するものである。
さらに、上記(c)の認定は、段落【0115】の「ラインセンサカメラ1Aで取込むラインの一番上のステージ制御座標値が(x1-154,y1-154)になるように制御する。」との記載において、「ラインの一番上」が、「線」ではなく「点」としてのステージ制御座標値で特定されていることとも整合するものである。

(e)なお、段落【0114】には「2つの画像をつなぎ合わせるのに必要な2つの画像の重なり合った長方形部分画像領域の短いほうの一辺の画素数を20ドットとする。」との記載があるところ、ここでいう「2つの画像」とは、例えば、参考図1の太線で囲まれた部位に対応する画像及び参考図2の太線で囲まれた部位に対応する画像であり、2つの画像の重なり合った長方形部分画像領域とは、例えば、参考図3の太線で囲まれた部位に対応する画像であると解され、引用例1にはこの理解に反する記載はない。
したがって、当該記載は、上記(c)の認定に影響するものではない。

(イ)上記(ア)の各事項によれば、引用例1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「全体参照画像を作成するためにラインセンサカメラを使用することによって輝度のむらを軽減する装置であって、
顕微鏡と、
顕微鏡のステージに置かれた標本の所定領域の全体参照画像を、顕微鏡のステージを制御しながらラインセンサでスキャンし、該画像群をメモリに取込み、該メモリ上で平面的な位置関係に矛盾が生じないようにつなぎ合わせることによって合成する手段を備え、
ステージ制御の最大誤差は10ミクロンメートルであり、2つの画像をつなぎ合わせるのに必要な2つの画像の重なり合った長方形部分画像領域の短いほうの一辺の画素数を20ドットとされており、ステージ制御の最大誤差10ミクロンメートルは1ドットであるので、2つの画像の重複領域の短いほうの一辺の大きさは22ドット、22*14=308ミクロンメートル必要と計算できるものであって、
該画像群のメモリへの取り込みは、
(a) 全体参照画像として取込みたい範囲のステージ制御座標を取込み、左上のステージ制御座標値を(x1,y1)、右下のステージ制御座標値を(x2,y2)とし、x1<x2,y1<y2であって、x1,y1、x2,y2の単位はミクロンメートルであり、
(b) |y1-y2|/14028≦k2となる最小の自然数k2を計算し、
(c) ラインセンサカメラ1Aで取込むラインの一番上のステージ制御座標値が(x1-154,y1-154)になるように制御し、ステージを右方向にx座標値が(x2+154)になるまで制御し、画像をメモリに取込み左上の位置にステージ制御座標値(x1-154,y1-154)を記録し、メモリに取込まれた静止画像のx座標方向の大きさは(x2-x1+308)/14ドットであり、取込んだ画像は{(x2-x1+308)/14}*1024であり、
(d) ラインセンサで取込むラインの一番上のステージ制御座標値が(x1-154,y1+13874)になるように制御し、同様にステージ4を右方向にx座標値が(x2+154)になるまで制御し、画像をメモリに取込み左上の位置にステージ制御座標値(x1-154,y1+13874)を記録し、
(e) これを(k2-1)回繰り返し、k2枚の静止画像のメモリへの取込みと左上の位置のステージ制御座標値の記録を行う、
ことによりなされ、
ラインセンサカメラ1Aの画素数は1024画素、1画素サイズは14*14ミクロンメートル(μm)であり、ステージ制御座標のx方向に対応する方向に1画素、ステージ制御座標のy方向に対応する方向に1024画素の一次元配列からなり、
画像合成を行う回数が削減できることにより、合成にかかる時間が短縮できる、
装置。」

イ 引用例2
(ア)同じく原査定で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表平10-506206号公報(以下「引用例2」という。)には、図とともに次の記載がある。

「焦点走査データの利用法
細胞焦点走査が完了したならば、すべての成功焦点走査の結果を集計し、成功焦点評点を用いて、標本の焦点面モデルに適合させる。このようなモデルの一つの例は、10個のパラメータによる多項式によって与えられる。すなわち、
Z=C_(0)+C_(1)x+C_(2)y+C_(3)x_(2)+C_(4)xy+C_(5)y_(2)+C_(6)x_(3)+C_(7)x_(2)y+C_(8)xy_(2)+C_(9)y_(3)
ここに、Zは、標本の最良焦点の高さであり、Xとyは、スライドに平行な標本の軸であり、C_ 0,...,C_9は、調節の対照となる10個のパラメータである。これらのパラメータは、等式1で求められる表面の誤差の二乗平均と、成功焦点数を最小にするように選んでもよい。この、平均二乗誤差最小値は、等式1の自由パラメータによって取り上げられる自由度10を除くように補正すると、このモデルに基づいて、標本にどの程度正確に焦点を当てることができるかを示す尺度として用いることができる。受容不可能はほどに大きな平均二乗誤差を持つ標本は、排除することができる。
標本の焦点面のモデルが一旦使用できるようになれば、それを、低倍で、カバー・グラスの下の標本全面を走査する際の案内に用いることができる。」(32頁下から11行?33頁4行)

(イ)上記(ア)によれば、引用例2には、
「Zは、標本の最良焦点の高さであり、Xとyは、スライドに平行な標本の軸である、標本の焦点面のモデルが一旦使用できるようになれば、それを、低倍で、カバー・グラスの下の標本全面を走査する際の案内に用いることができる」
との技術的事項が記載されていると認められる。

(3)本願補正発明と引用発明1との対比
ア 本願補正発明と引用発明1とを以下に対比する。

(ア)引用発明1の「標本」は、本願補正発明の「顕微鏡試料」及び「試料」に相当するといえる。

(イ)引用発明1の「顕微鏡のステージに置かれた標本の所定領域の全体参照画像を、顕微鏡のステージを制御しながらラインセンサでスキャンし、該画像群をメモリに取込み、該メモリ上で平面的な位置関係に矛盾が生じないようにつなぎ合わせることによって合成する手段を備え」る「装置」と、本願補正発明の「最大の領域を有する試料の表面によって定義された第一の試料平面を有する顕微鏡試料の少なくとも一つの部分を自動的にデジタル化するためのスキャナ」との関係について検討する。

a 引用発明1の「顕微鏡のステージに置かれ」ている「標本」は、本願補正発明の「最大の領域を有する試料の平面によって定義された第一の試料平面を有する顕微鏡試料」に相当するといえる。

b 引用発明1の「装置」は、「標本の所定領域」を対象とするものであるから、本願補正発明のように「顕微鏡試料の少なくとも一つの部分」を対象とするものである。

c 引用発明1の「ラインセンサでスキャン」する「手段を備え」た「装置」は、本願補正発明の「スキャナ」に相当する。

d 引用発明1は、「標本の所定領域の全体参照画像を、顕微鏡のステージを制御しながらラインセンサでスキャンし、該画像群をメモリに取込み、該メモリ上で平面的な位置関係に矛盾が生じないようにつなぎ合わせることによって合成する手段を備え」るから、本願補正発明のように「顕微鏡試料の少なくとも一つの部分を自動的にデジタル化するための」ものであることが明らかである。

e 以上によれば、引用発明1の「顕微鏡のステージに置かれた標本の所定領域の全体参照画像を、顕微鏡のステージを制御しながらラインセンサでスキャンし、該画像群をメモリに取込み、該メモリ上で平面的な位置関係に矛盾が生じないようにつなぎ合わせることによって合成する手段を備え」る「装置」と、本願補正発明の「最大の領域を有する試料の表面によって定義された第一の試料平面を有する顕微鏡試料の少なくとも一つの部分を自動的にデジタル化するためのスキャナ」に相当するといえる。

(ウ)引用発明1の「ステージ」は、「制御」されるものである以上、本願補正発明の「電動ステージ」に相当することが明らかである。
また、引用発明1の「標本」は「顕微鏡のステージに置かれた」ものである。
そして、引用発明1の「ステージ」は、(c)?(e)の各ステップからみて、ステージ制御座標でx方向及びy方向に制御できるものであるとともに、x方向の制御では、ステージ制御座標のx座標値が、x1-154とx2+154との間でなされている。
そうすると、引用発明1の「ステージ」は、本願補正発明の「試料を載置し、第一方法および第二方法で当該試料を移動させるための電動ステージであって、当該第一方法は、予め決められた第一位置と予め決められた第二位置との間を、当該第一位置及び当該第二位置によって定義された第一の移動軸(x)に沿って、」「前記試料平面にある試料を動かすことであり、当該第二方法は、当該第一の移動軸(x)に直角であり、当該試料平面にある第二の軸(y)に沿って試料を動かすことである電動ステージ」との特定事項を備えているといえる。

(エ)引用発明1の「装置」は「顕微鏡」を含むものであるから、引用発明1が本願補正発明の「前記試料の少なくとも一つの部分が照明される照明システム」と「前記照明システムによって照明された試料部分の中心にあり、前記試料平面に直角である光軸に沿って位置決めされる少なくとも一つの顕微鏡対物レンズ」との特定事項を備えていることは明らかである。

(オ)引用発明1の「画素数は1024画素、1画素サイズは14*14ミクロンメートル(μm)であり、ステージ制御座標のx方向に相当する方向に1画素、ステージ制御座標のy方向に相当する方向に1024画素の一次元配列からなっている」「ラインセンサカメラ1A」は、上記(ウ)及び(エ)にも照らせば、本願補正発明の「少なくとも一つの一次元配列で配置された複数の光応答性要素を備える少なくとも一つの一次元スキャンカメラであって、当該一次元スキャンカメラが前記照明システムによって照明された前記電動ステージ上にある試料領域の一次元の観察フィールドを有するように、当該複数の光応答性要素が」「像平面上に位置決めされ、且つ、当該複数の応答性要素の配列方向が前記第一の移動軸(x)に直角である一次元スキャンカメラ」に相当することが明らかである。

(カ)引用発明1は、「顕微鏡のステージに置かれた標本の所定領域の全体参照画像を、顕微鏡のステージを制御しながらラインセンサでスキャンし、該画像群をメモリに取込み、該メモリ上で平面的な位置関係に矛盾が生じないようにつなぎ合わせることによって合成する」ものであり、ラインセンサの各画素毎のデータをデジタル的にメモリに取り込んでいることは明らかであるから、引用発明1の「全体参照画像」及び「画像群」は、本願補正発明の「デジタル画像」といえる。

(キ)引用発明1では、画像群のメモリへの取り込みについて、(c)のステップ、(d)のステップ及びこれらの繰り返しに相当する(e)のステップが記載されており、各ステップでは、ラインセンサカメラ1Aでラインが取込まれるとともに「画像」がメモリに取込まれているところ、上記各ステップでそれぞれメモリに取込まれる各「画像」が、いずれも、本願補正発明の「画像ストリップ」に相当するといえる。
そして、上記(オ)及び(カ)にも照らせば、引用発明1の上記各「画像」が、本願補正発明の「各画像ストリップのデジタル画像は、前記少なくとも一つの一次元スキャンカメラの前記第一の移動軸(x)に沿ったスキャンによって収集された複数のライン画像から構成され」るとの特定事項を備えているといえる。

(ク)本願補正発明の「データ処理装置」について検討する。

a 引用発明1では、画像群のメモリへの取り込みについて、(c)のステップ、(d)のステップ及びこれらの繰り返しに相当する(e)のステップが記載されており、各ステップでは、ラインセンサカメラ1Aでラインが取込まれるとともに画像がメモリに取込まれているから、上記(ウ)及び(オ)にも照らせば、引用発明1が、本願補正発明の「前記電動ステージに載置された試料の予め決められた動きに同期して、前記複数の光応答性要素からの光強度をデジタル化、処理、および格納するためのデータ処理装置」を備えていることが明らかである。

b 引用発明1の(c)のステップは、「ラインセンサカメラ1Aで取込むラインの一番上のステージ制御座標値が(x1-154,y1-154)になるように制御し、ステージを右方向にx座標値が(x2+154)になるまで制御」して、「メモリに取込まれた静止画像のx座標方向の大きさは(x2-x1+308)/14ドットであり、取込んだ画像」を{(x2-x1+308)/14}*1024」とするものであるから、上記画像(本願補正発明の「画像ストリップ」に相当。)はx座標方向に空間的に連続しているものと認められる。
さらに、引用発明1は、「画像合成を行う回数が削減できることにより、合成にかかる時間が短縮できる」ものであるから、(c)?(e)の各ステップにおいて各画像(本願補正発明の「画像ストリップ」に相当。)を取込むに際して、各ラインを取込む毎にラインカメラセンサ1Aを停止させているとは解されず、ラインカメラセンサ1Aを停止させずに、各上記画像を取得しているものと認められる。そうすると、引用発明1の各上記画像は、時間的に連続したスキャンによって取得されているものと認められる。
よって、引用発明1は、本願補正発明の「複数の画像ストリップ形式の連続したスキャン」との特定事項を備えているといえる。

c 引用発明1は、「該画像群をメモリに取込み、該メモリ上で平面的な位置関係に矛盾が生じないようにつなぎ合わせることによって」「全体参照画像」を「合成する」ものであって、「ステージ制御の最大誤差は10ミクロンメートルであり、2つの画像をつなぎ合わせるのに必要な2つの画像の重なり合った長方形部分画像領域の短いほうの一辺の画素数を20ドットとされており、ステージ制御の最大誤差10ミクロンメートルは1ドットであるので、2つの画像の重複領域の短いほうの一辺の大きさは22ドット、22*14=308ミクロンメートル必要と計算できるものであ」るから、本願補正発明の「切れ目のないデジタル画像を構成する」との特定事項を備えているといえる。

d 上記b及びcによれば、引用発明1は、本願補正発明の「複数の画像ストリップ形式の連続したスキャンから切れ目のないデジタル画像を構成するデータ処理装置」との特定事項を備えているといえる。

(ケ)引用発明1は、「顕微鏡のステージを制御しながらラインセンサでスキャン」するものであるから、上記(ウ)及び(ク)にも照らせば、本願補正発明の「前記電動ステージと前記データ処理装置の間に接続され、当該電動ステージの位置を決定するステージコントローラ」を備えていることが明らかである。

(コ)引用発明1の(c)の制御は、上記(キ)にも照らせば、本願補正発明の「第1に、第一の画像ストリップを取得するための前記第一方法に対応する前記試料の予め決められた動きを行うように」する「制御」に相当する。
引用発明1の(d)及び(e)の制御は、上記(キ)にも照らせば、本願補正発明の「第2に、必要な数の画像ストリップを取得するまで、前記第二方法及び当該第一方法に対応する当該試料の予め決められた動きを行うように繰り返し」行う「制御」に相当する。
そして、引用発明1では、これらの制御が、本願補正発明のように「複数の画像ストリップから構成されるデジタル画像を形成するために」行われているといえる。

イ 上記アによれば、本願補正発明と引用発明1とは、

「最大の領域を有する試料の表面によって定義された第一の試料平面を有する顕微鏡試料の少なくとも一つの部分を自動的にデジタル化するためのスキャナであって、
試料を載置し、第一方法および第二方法で当該試料を移動させるための電動ステージであって、当該第一方法は、予め決められた第一位置と予め決められた第二位置との間を、当該第一位置及び当該第二位置によって定義された第一の移動軸(x)に沿って、前記試料平面にある試料を動かすことであり、当該第二方法は、当該第一の移動軸(x)に直角であり、当該試料平面にある第二の軸(y)に沿って試料を動かすことである電動ステージと、
前記試料の少なくとも一つの部分が照明される照明システムと、
前記照明システムによって照明された試料部分の中心にあり、前記試料平面に直角である光軸に沿って位置決めされる少なくとも一つの顕微鏡対物レンズと、
少なくとも一つの一次元配列で配置された複数の光応答性要素を備える少なくとも一つの一次元スキャンカメラであって、当該一次元スキャンカメラが前記照明システムによって照明された前記電動ステージ上にある試料領域の一次元の観察フィールドを有するように、当該複数の光応答性要素が像平面上に位置決めされ、且つ、当該複数の応答性要素の配列方向が前記第一の移動軸(x)に直角である一次元スキャンカメラと、
前記電動ステージに載置された試料の予め決められた動きに同期して、前記複数の光応答性要素からの光強度をデジタル化、処理、および格納するためのデータ処理装置であって、複数の画像ストリップ形式の連続したスキャンから切れ目のないデジタル画像を構成するデータ処理装置と、
前記電動ステージと前記データ処理装置の間に接続され、当該電動ステージの位置を決定するステージコントローラであって、複数の画像ストリップから構成されるデジタル画像を形成するために、
第1に、第一の画像ストリップを取得するための前記第一方法に対応する前記試料の予め決められた動きを行うように制御し、
第2に、必要な数の画像ストリップを取得するまで、前記第二方法及び当該第一方法に対応する当該試料の予め決められた動きを行うように繰り返し制御するステージコントローラと、を備え、
各画像ストリップのデジタル画像は、前記少なくとも一つの一次元スキャンカメラの前記第一の移動軸(x)に沿ったスキャンによって収集された複数のライン画像から構成されているスキャナ。」

である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
第一方法に関し、本願補正発明では、電動ステージが試料を実質的に一定速度で動かすものであって、ステージコントローラは、当該第一方法に対応する当該試料の予め決められた動きの始め及び終わりで、各々、加速及び減速するように制御することにより、実質的に一定速度で当該試料を動かすように制御するものであるのに対し、引用発明1ではそのような特定がない点。

[相違点2]
本願補正発明では、「合焦光学系であって、それにより、顕微鏡対物レンズからの光学信号が光軸に直角の像平面上に合焦される合焦光学系」を備えているのに対し、引用発明1ではそうなっていない点。

[相違点3]
本願補正発明では、「前記データ処理装置は、前記該電動ステージのx/y位置の関数である、最良の焦点のプリ-スキャン焦点地図にしたがって、前記少なくとも1つの対物レンズの第3の軸(z)に沿った動きによる焦点調節を、当該電動ステージの動きと並行して、各ライン画像の収集毎に行うように構成されている」のに対し、引用発明1ではそうなっていない点。

(4)相違点の判断
ア [相違点1]について
上記(3)ア(ク)bのとおり、引用発明1は、(c)?(e)の各ステップにおいて各画像(本願補正発明の「画像ストリップ」に相当。)を取込むに際して、各ラインを取込む毎にラインカメラセンサ1Aを停止させているとは解されず、ラインカメラセンサ1Aを停止させずに、上記画像を取得しているものと認められる。
そして、各上記画像を取得する際に、ステージを各ラインの取込み毎に停止させない以上、ステージを実質的に一定速度で移動させて行うことが自然である(必要があれば、例えば、特開平11-238113号公報の段落【0026】、特開平9-37005号公報の段落【0028】を参照。)。
さらに、(c)?(e)の各ステップをみると、各上記画像の取得の開始前後及び終了前後にステージの移動方向の転換等がなされていると解されるから、ステージを実質的に一定速度で移動させて各上記画像を取得する以上、ステージが、各上記画像の取得の開始前後及び終了前後に、それぞれ、加速及び減速されるように制御されることは物理的にみて明らかである。
以上によれば、引用発明1において、上記[相違点1]の構成となすことに、格別の困難性があるとはいえない。

イ [相違点2]について
顕微鏡の技術分野において、対物レンズを無限遠系で構成することは慣用技術である(例えば、特開平6-95000号公報の段落【0014】・【0015】を参照。)。
そうすると、引用発明1において、上記慣用技術を採用し、上記[相違点2]の構成となすことは、当業者が適宜なし得たことである。

ウ [相違点3]について
引用発明1で作成される全体参照画像は相当程度広い領域をも対象とするものと解される(引用例1の段落【0001】(上記(2)ア(ア)a)、段落【0002】(同b)、段落【0006】(同c)、段落【0021】(同d)及び段落【0120】(同f)とともに、病理診断用の標本をも対象としたものと解される(同段落【0003】(同c))から、位置に応じて焦点調節が必要になることは当業者が認識できる課題であると認められ、引用例2の記載(上記(2)イ(ア))もそのことを裏付けるものといえる。
そして、引用例2には、Zは、標本の最良焦点の高さであり、Xとyは、スライドに平行な標本の軸である、標本の焦点面のモデルが一旦使用できるようになれば、それを、低倍で、カバー・グラスの下の標本全面を走査する際の案内に用いることができるとの技術的事項が記載されている。
そうすると、当業者であれば、引用発明1において、位置に応じた焦点調節が必要との上記課題を解決するために、上記技術的事項を採用することは容易に想到し得たことである。
その際、焦点調節をどのタイミングで行うかについては当業者が実施に当たり当然設計しなければならない事項であるところ、引用発明1ではラインセンサカメラが使用されており、また、焦点調節は撮像単位で行うことが通常であることにも照らせば、ラインセンサカメラでラインを取込む毎に焦点調節を行うことは、当業者が適宜なし得たことである。
以上によれば、引用発明1において、引用例2記載の技術的事項を採用し、上記[相違点3]の構成となすことに、格別の困難性はない。

エ 相違点1?に係る本願補正発明の構成による効果は、引用発明1、引用例1に記載された事項、引用例2記載の技術的事項及び上記慣用技術から予測し得たものである。

オ よって、本願補正発明は、引用発明1、引用例1に記載された事項、引用例2記載の技術的事項及び上記慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)本件補正についてのむすび
以上によれば、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成24年9月4日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲1?33に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(1)で、本件補正前の請求項1として記載されたとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1、2及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、「画像ストリップ」に係る「前記少なくとも一つの一次元スキャンカメラの前記第一の移動軸(x)に沿ったスキャンによって収集された複数のライン画像から構成され」るとの限定(上記第2の[理由]2の(2)コ)と「焦点調節」を行うタイミングに係る「各ライン画像の収集毎」との限定(同シ)とを省くとともに、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明として補正した事項(同ア?ケ及びサ)を補正前の記載に戻したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに実質的に相当する本願補正発明が、上記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明1、引用例1に記載された事項、引用例2記載の技術的事項及び上記慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1、引用例1に記載された事項、引用例2記載の技術的事項及び上記慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-22 
結審通知日 2015-05-26 
審決日 2015-06-08 
出願番号 特願2001-581174(P2001-581174)
審決分類 P 1 8・ 573- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 574- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎荒巻 慎哉居島 一仁  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 清水 康司
山村 浩
発明の名称 全自動迅速顕微鏡用スライドスキャナ  
代理人 藤田 和子  
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