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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1307059
審判番号 不服2014-14038  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-18 
確定日 2015-10-21 
事件の表示 特願2011-287316「半導体製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月17日出願公開、特開2013- 12704〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年12月28日(パリ条約による優先権主張2011年6月29日、台湾)の出願であって、平成25年4月26日付けで拒絶理由が通知され、同年9月9日に手続補正がなされたが、平成26年3月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成26年7月18日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年7月18日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理 由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を、
「【請求項1】
成長基板を提供する工程と、
前記成長基板の上面に誘電体層を形成する工程と、
前記誘導体層に対するパターン露光、現像及びエッチング法によって前記上面の一部の領域を暴露する工程と、
前記一部の領域をエッチングして、前記成長基板に複数の溝を形成する工程と、
ウェットエッチングによって前記誘導体層を除去する工程と、
前記複数の溝を前記成長基板と半導体素子層との間に位置するように、前記成長基板に前記半導体素子層を形成する工程と、
前記成長基板から前記半導体素子層を分離するために、前記成長基板及び前記半導体素子層を加熱し、圧力を加えることにより前記半導体素子層を接合基板に直接接合する工程とを備え、
前記半導体素子層は、1つの窒化物半導体素子層のみから形成されていることを特徴とする半導体製造方法。
【請求項2】
前記接合基板は、銅(Cu)材料、アルミニウム(Al)材料、シリコン(Si)材料、ダイヤモンド材料、銅合金材料、アルミニウム合金材料及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれた一つであり、
前記成長基板は、アルミナ(Al_(2)O_(3))材料、サファイア材料、炭化ケイ素(SiC)材料とシリコン(Si)材料からなる群から選ばれた一つであることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造方法。
【請求項3】
前記複数の溝は、化学ウェットエッチング及びドライエッチングのいずれかで前記成長基板をパターン形成することにより製造され、
前記化学ウェットエッチングは、水酸化カリウム(KOH)溶液によって実行され、
前記ウェットエッチングは、水素フッ化物(HF)溶液によって実行され、
前記誘電体層は、二酸化ケイ素(SiO_(2))の材料を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体製造方法。
【請求項4】
第一表面を有する成長基板を提供する工程と、
前記成長基板の第一表面に誘電体層を形成する工程と、
前記誘導体層に対するパターン露光、現像及びエッチング法によって前記第一表面の一部の領域を暴露する工程と、
前記一部の領域をエッチングして、複数の溝を形成する工程と、
ウェットエッチングによって前記誘導体層を除去する工程と、
前記複数の溝を前記成長基板と半導体素子層との間に位置するように、前記第一表面と接触する第二表面を有する前記半導体素子層を前記成長基板に形成する工程と、
前記成長基板から前記半導体素子層を分離するように、前記成長基板及び前記半導体素子層を加熱し、圧力を加えることにより前記半導体素子層を接合基板に直接接合する工程とを備え、
前記接合基板は、銅(Cu)材料、アルミニウム(Al)材料、シリコン(Si)材料、ダイヤモンド材料、銅合金材料、アルミニウム合金材料およびそれらの組合せからなる群から選ばれる一つであり、
前記成長基板は、アルミナ(Al_(2)O_(3))材料、サファイア材料、炭化ケイ素(SiC)材料およびシリコン(Si)材料からなる群から選ばれる一つであり、
前記半導体素子層は、一つの窒化物半導体素子層のみであることを特徴とする半導体製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体製造方法によって前記半導体素子層を前記成長基板に成長させ、半導体を製造するための成長基板。」
に補正するものである。

したがって、本件補正は、本件補正後の全ての請求項に係る発明において、「半導体素子層を接合基板に直接接合する」との事項、及び、「前記半導体素子層は、一つの窒化物半導体素子層のみである」との事項を発明特定事項とするように補正するものといえる。

2 補正の適否についての判断
本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、その請求項2及び【0008】に「前記半導体素子層は、窒化物半導体素子層であり」との記載があり、また、【0022】に「半導体素子層2を成長基板1に形成する」との記載はあるが、本件補正後の「前記半導体素子層は、一つの窒化物半導体素子層のみである」との記載はない。

上記の点につき、請求人は、審判請求書の(3-2)において、
「本願の補正した請求項1と4に係る発明は、『前記成長基板から前記半導体素子層を分離するために、前記成長基板及び前記半導体素子層を加熱し、圧力を加えることにより前記半導体素子層を接合基板に直接に接合する』及び『前記半導体素子層は、一つの窒化物半導体素子層のみである』との特徴を有する。即ち、本願の補正した請求項1と4に係る発明での接合基板と一つの半導体基板のみとの直接接合について、半導体基板が温度変化によって剥離され、膨張係数が接合基板の厚さによって調節されることは、当業者にも理解し得る事項である。」
と記載している。
そして、上記のように、本件補正後の請求項1及び4に係る発明につき、請求人自身が「接合基板と一つの半導体基板のみとの直接接合」と記載しているところからみて、本件補正後の請求項における「(一つの窒化物半導体素子層のみである)半導体素子層」は、半導体基板のような単層の構造のものを意味するものと認められる。
すなわち、本件補正後の各請求項に係る発明は、成長基板の上に最初に形成された単一の層に接合基板が直接接合されるものであると認められるところ、このような事項は、本願当初明細書等に記載されていない。

この点についてさらにいえば、本願当初明細書等には、【0003】に「従来の方法は、サファイア基板を除去することである。又、従来技術では、窒化物半導体素子は、LED素子の特性を高めるように、ウェハ接合技術により、サファイア成長基板から接合基板へ移行される。」と記載され、また、【0023】に記載される工程S14において接合基板3に接合される半導体素子層2について、【0022】に「工程S13は、後続の素子の製造を進め、半導体素子層2を成長基板1に形成する工程である。」と記載されていることからすれば、接合基板に接合される半導体素子層としては、複数の半導体層からなるものであり、LED素子のような素子としての構造を有する半導体素子層が想起されるところであって、本願当初明細書等に、接合基板に接合される半導体素子層でありながら、その半導体素子層が成長基板上に形成された単一の層であるというものが記載されているということはできない。

以上のとおりであって、本件補正後の「半導体素子層を接合基板に直接接合する」との事項、及び、「前記半導体素子層は、一つの窒化物半導体素子層のみである」との事項は、本願当初明細書等に記載されておらず、また、本願当初明細書等の記載からみて、自明の事項であるとも認められないから、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。

3 補正却下の決定の理由のむすび
したがって、本件補正後の全ての請求項に係る発明において、「半導体素子層を接合基板に直接接合する」との事項、及び、「前記半導体素子層は、一つの窒化物半導体素子層のみである」との事項を発明特定事項とするように補正することを含む本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内でされたものとはいえず、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成25年9月9日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次の事項により特定されるものである。

「上面を有する成長基板を提供する工程と、
前記成長基板の上面に誘電体層を形成する工程と、
前記誘導体層に対するパターン露光、現像及びエッチング法によって前記上面の一部の領域を見せる工程と、
前記一部の領域をエッチングして、複数の溝を形成する工程と、
ウェットエッチングによって前記誘導体層を除去する工程と、
前記複数の溝を前記成長基板と半導体素子層との間に位置するように、下面を有する前記半導体素子層を前記成長基板に形成する工程と、
前記成長基板及び前記半導体素子層を加熱する工程と、
を備えていることを特徴とする半導体製造方法。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-241192号公報(以下「引用例」という。)には、次の記載がある。
「【請求項1】 横方向結晶成長作用を利用して、下地基板上に III族窒化物系化合物半導体から成る基板層を形成することにより、前記下地基板から独立した半導体結晶を得る方法であって、
前記下地基板上に多数の突起部を形成する突起部形成工程と、
前記突起部の表面の少なくとも一部を前記基板層が結晶成長を開始する最初の成長面として、この成長面が各々互いに連結されて少なくとも一連の略平面に成長するまで、前記基板層を結晶成長させる結晶成長工程と、
前記突起部を破断することにより、前記基板層と前記下地基板とを分離する分離工程とを有することを特徴とする半導体結晶の製造方法。
【請求項2】 前記基板層と前記下地基板とを冷却または加熱することにより、前記基板層と前記下地基板との熱膨張係数差に基づく応力を発生させ、この応力を利用して前記突起部を破断することを特徴とする請求項1に記載の半導体結晶の製造方法。

【請求項21】 請求項1乃至請求項20の何れか1項に記載の半導体結晶の製造方法を用いて製造された、前記半導体結晶を結晶成長基板として有することを特徴とする III族窒化物系化合物半導体発光素子。」
ここで、上記記載における請求項2に係る発明を「引用発明」という。

3 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「下地基板」が本願発明の「成長基板」に相当するところであり、引用発明は、本願発明と同様に「上面を有する成長基板を提供する工程」を備えるものといえる。
(2)引用発明は、「下地基板上に多数の突起部を形成する突起部形成工程」を有するものであるところ、突起部と突起部の間の部分が本願発明の「溝」に相当するといえるから、本願発明と引用発明は、「成長基板の上面に複数の溝を形成する工程」を備えるものである点で一致する。
(3)引用発明は、「突起部の表面の少なくとも一部を前記基板層が結晶成長を開始する最初の成長面として、この成長面が各々互いに連結されて少なくとも一連の略平面に成長するまで、前記基板層を結晶成長させる結晶成長工程」を有するものであるところ、この「基板層」は、突起部の表面に成長面が各々互いに連結されて略平面に成長されたものであるから、その下面に溝が存在するものと認められるところであり、また、この「基板層」は、引用例の上記【請求項21】に記載されるように、III族窒化物系化合物半導体発光素子に結晶成長基板として含まれる層であるから、半導体素子を構成する層という意味において「半導体素子層」といえる。
したがって、引用発明の前記「突起部の表面の少なくとも一部を前記基板層が結晶成長を開始する最初の成長面として、この成長面が各々互いに連結されて少なくとも一連の略平面に成長するまで、前記基板層を結晶成長させる結晶成長工程」は、本願発明の「前記複数の溝を前記成長基板と半導体素子層との間に位置するように、下面を有する前記半導体素子層を前記成長基板に形成する工程」に相当する。
(4)引用発明における「前記基板層と前記下地基板とを冷却または加熱する」工程における「加熱する」工程は、本願発明の「前記成長基板及び前記半導体素子層を加熱する工程」に相当する。
(5)引用発明の「半導体結晶の製造方法」は、本願発明の「半導体製造方法」に相当する。
(6)以上のことから、本願発明と引用発明は、
「上面を有する成長基板を提供する工程と、
前記成長基板の上面に複数の溝を形成する工程と、
前記複数の溝を前記成長基板と半導体素子層との間に位置するように、下面を有する前記半導体素子層を前記成長基板に形成する工程と、
前記成長基板及び前記半導体素子層を加熱する工程と、
を備えている半導体製造方法。」
の点で一致する。
(7)一方、両者は、次の点で相違する。
本願発明では、上記の「前記成長基板の上面に複数の溝を形成する工程」が、
「前記成長基板の上面に誘電体層を形成する工程と、
前記誘導体層に対するパターン露光、現像及びエッチング法によって前記上面の一部の領域を見せる工程と、
前記一部の領域をエッチングして、複数の溝を形成する工程と、
ウェットエッチングによって前記誘導体層を除去する工程と」
を備えるものであるのに対し、引用発明の「下地基板上に多数の突起部を形成する突起部形成工程」が、このような工程を備えるものであるか不明な点。

4 判断
上記相違点について検討するに、原査定において引用された特開2005-64492号公報(段落【0018】、【0081】、【0096】?【0097】等を参照。)、特開2008-177528号公報(段落【0023】?【0025】、【0047】等を参照。)に記載されるように、成長基板の上面に凹凸を形成する方法として、成長基板の上面に誘電体層を形成し、前記誘導体層に対するパターン露光、現像及びエッチング法によって前記上面の一部の領域を見せ、前記一部の領域をエッチングして、複数の溝を形成することは、本願の優先日当時周知の技術であり、また、前記特開2005-64492号公報の【0097】には、マスクとした誘導体層をウェットエッチングによって除去することも記載されているところであるから、引用発明における「下地基板上に多数の突起部を形成する突起部形成工程」として上記周知の技術等を用いることにより、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることに格別の困難性は認められない。
また、引用発明における突起部形成工程を上記相違点に係る本願発明の工程により行ったことによる格別の効果も認められない。


第4 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術等に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-18 
結審通知日 2015-05-19 
審決日 2015-06-11 
出願番号 特願2011-287316(P2011-287316)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高椋 健司岡田 吉美小林 謙仁  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 小松 徹三
近藤 幸浩
発明の名称 半導体製造方法  
代理人 秋元 輝雄  

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