• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04R
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04R
管理番号 1307062
審判番号 不服2014-15832  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-08 
確定日 2015-10-21 
事件の表示 特願2011-516366「ヘッドセットコードホルダ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月30日国際公開、WO2009/158075、平成23年10月 6日国内公表、特表2011-526456〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成21年5月12日(パリ条約による優先権主張 平成20年6月27日 米国(US))の出願であって、平成25年6月11日付け拒絶理由通知に対して同年9月3日付けで手続補正がなされ、平成26年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月8日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。


第2 平成26年8月8日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年8月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正後の本願発明
平成26年8月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1、27、36、44を補正するものであって、

「【請求項1】
バッグと衣類の洋品とからなる物品のグループのうちの少なくとも1つの物品に取り付けられる本体と、
上記本体に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを直接的に受け止めて、解放可能に固定する第1の溝とを備え、
上記本体は、上記少なくとも1つの物品の第1の部分を、該少なくとも1つの物品の第2の部分に開閉自在に閉じる開閉機構の一部、上記少なくとも1つの物品に沿って移動できるスライド可能な洋品の一部、その機能的構造とは無関係な美的特徴を有する装飾的なアクセサリの一部のいずれかであることを特徴とするヘッドセットコードホルダ。
【請求項27】
バッグと衣服の洋品とからなる物品のグループのうちの少なくとも1つの物品に取り付けられる本体と、
上記本体に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを直接的に受け止めて、解放可能に固定する第1の溝とを備え、
上記本体は、上記少なくとも1つの物品の第1の部分を、該少なくとも1つの物品の第2の部分に開閉自在に閉じる開閉機構の一部であることを特徴とするヘッドセットコードホルダ。
【請求項36】
バッグと衣服の洋品とからなる物品のグループのうちの少なくとも1つの物品に取り付けられる本体と、
上記本体に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを直接的に受け止めて、解放可能に固定する第1の溝とを備え、
上記本体は、上記少なくとも1つの物品に沿って移動できるスライド可能な洋品であることを特徴とするヘッドセットコードホルダ。
【請求項44】
バッグと衣服の洋品とからなる物品のグループのうちの少なくとも1つの物品に取り付けられる本体と、
上記本体に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを直接的に受け止めて、解放可能に固定する第1の溝とを備え、
上記本体は、その機能的構造とは無関係な美的特徴を有する装飾的なアクセサリの一部であることを特徴とするヘッドセットコードホルダ。」
とあったところを、

「【請求項1】
バッグと衣類の洋品とからなる物品のグループのうちの少なくとも1つの物品に取り付けられ、外面を有する本体と、
上記本体の外面内に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを直接的に受け止めて、解放可能に固定する第1の溝とを備え、
上記本体は、上記少なくとも1つの物品の第1の部分を、該少なくとも1つの物品の第2の部分に開閉自在に閉じる開閉機構の一部、上記少なくとも1つの物品に沿って移動できるスライド可能な洋品の一部、その機能的構造とは無関係な美的特徴を有する装飾的なアクセサリの一部のいずれかであり、
上記第1の溝は、第1の溝壁と第2の溝壁と差込口空間とを有し、上記ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に固定されるときに、上記ヘッドセットコードの少なくとも一部が上記本体内又は上記外面下に保持されるように、上記第1の溝壁と上記第2の溝壁は、共に、上記本体の外面下に延びて、上記第1の溝を形成することを特徴とするヘッドセットコードホルダ。
【請求項27】
バッグと衣服の洋品とからなる物品のグループのうちの少なくとも1つの物品に取り付けられ、外面を有する本体と、
上記本体の外面内に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを直接的に受け止めて、解放可能に固定する第1の溝とを備え、
上記本体は、上記少なくとも1つの物品の第1の部分を、該少なくとも1つの物品の第2の部分に開閉自在に閉じる開閉機構の一部であり、
上記第1の溝は、第1の溝壁と第2の溝壁と差込口空間とを有し、上記ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に固定されるときに、上記ヘッドセットコードの少なくとも一部が上記本体内又は上記外面下に保持されるように、上記第1の溝壁と上記第2の溝壁は、共に、上記本体の外面下に延びて、上記第1の溝を形成することを特徴とするヘッドセットコードホルダ。
【請求項36】
バッグと衣服の洋品とからなる物品のグループのうちの少なくとも1つの物品に取り付けられ、外面を有する本体と、
上記本体の外面内に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを直接的に受け止めて、解放可能に固定する第1の溝とを備え、
上記本体は、上記少なくとも1つの物品に沿って移動できるスライド可能な洋品であり、
上記第1の溝は、第1の溝壁と第2の溝壁と差込口空間とを有し、上記ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に固定されるときに、上記ヘッドセットコードの少なくとも一部が上記本体内又は上記外面下に保持されるように、上記第1の溝壁と上記第2の溝壁は、共に、上記本体の外面下に延びて、上記第1の溝を形成することを特徴とするヘッドセットコードホルダ。
【請求項44】
バッグと衣服の洋品とからなる物品のグループのうちの少なくとも1つの物品に取り付けられ、外面を有する本体と、
上記本体の外面内に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを直接的に受け止めて、解放可能に固定する第1の溝とを備え、
上記本体は、その機能的構造とは無関係な美的特徴を有する装飾的なアクセサリの一部であり、
上記第1の溝は、第1の溝壁と第2の溝壁と差込口空間とを有し、上記ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に固定されるときに、上記ヘッドセットコードの少なくとも一部が上記本体内又は上記外面下に保持されるように、上記第1の溝壁と上記第2の溝壁は、共に、上記本体の外面下に延びて、上記第1の溝を形成することを特徴とするヘッドセットコードホルダ。」
とするものである。


2.新規事項の有無、補正の目的要件について

本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、「ヘッドセットコードホルダ」の本体が「外面」を有することを限定し、「第1の溝」が本体の「外面内」に一体成形されていることを限定し、更に、「第1の溝」が「第1の溝壁と第2の溝壁と差込口空間とを有し、ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に固定されるときに、上記ヘッドセットコードの少なくとも一部が本体内又は外面下に保持されるように、上記第1の溝壁と上記第2の溝壁は、共に、上記本体の外面下に延びて」いることを限定したものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項、第4項の規定に該当するとともに、補正前の請求項1、27、36、44に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。


3.独立特許要件について

本件補正における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。

(1)補正後の発明
補正後の発明は、上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
バッグと衣類の洋品とからなる物品のグループのうちの少なくとも1つの物品に取り付けられ、外面を有する本体と、
上記本体の外面内に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを直接的に受け止めて、解放可能に固定する第1の溝とを備え、
上記本体は、上記少なくとも1つの物品の第1の部分を、該少なくとも1つの物品の第2の部分に開閉自在に閉じる開閉機構の一部、上記少なくとも1つの物品に沿って移動できるスライド可能な洋品の一部、その機能的構造とは無関係な美的特徴を有する装飾的なアクセサリの一部のいずれかであり、
上記第1の溝は、第1の溝壁と第2の溝壁と差込口空間とを有し、上記ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に固定されるときに、上記ヘッドセットコードの少なくとも一部が上記本体内又は上記外面下に保持されるように、上記第1の溝壁と上記第2の溝壁は、共に、上記本体の外面下に延びて、上記第1の溝を形成することを特徴とするヘッドセットコードホルダ。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-55050号公報には、「スライダーの引手」について、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

ア.「【0001】
本発明は、スライドファスナー用スライダーにおける引手であって、ヘッドホンのコード等の紐状物を簡単に体裁良く保持することが可能なスライダーの引手に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ポータブル型のオーディオプレーヤーや携帯電話等が広く普及しており、オーディオプレーヤーや携帯電話の本体に保存した音楽等のサウンドを、電車等により移動する
際に聞いている人が多く見られる。この場合、プレーヤーや携帯電話の本体を、衣服のポケットや携帯しているバッグ等に保持し、その本体に接続したイヤホンやヘッドホンを介して保存したサウンドを聴くことが一般的である。このため、通常は、バッグ等にプレーヤー等の本体を保持している場合でも、イヤホン等が容易に使用できるようにそのコードが長く形成されている。
【0003】
また、上記のような電車等による移動中や歩行中にイヤホンやヘッドホンを身体に装着しているときには、長いコードが衣服の前立てや衣服の表面で垂れ下がったり、ぶらついたりしていることが多い。しかしながら、このような状態のコードは、煩わしく感じるものの、邪魔にならないように処理することが難しい。更に、コードが周辺の様々な部材に引っ掛かり易く、ユーザーの頭部が不意に引っ張られ、また、プレーヤー等の本体がバッグから落ちて壊れ易くなる等の不具合があった。
【0004】
ところで、衣服や鞄等の開口部にはスライドファスナーが取り付けられていることが多く、また、スライドファスナーは、従来から様々な改良を加えることによりその利便性を向上させてきている。例えば、実公昭55-11690号公報(特許文献1)には、スライドファスナーを有する洋服等の商品にラベル等を取り付ける際に、ラベルの取付作業を容易に行うことが可能なスライダーの引手に関する発明が開示されている。」

イ.「【0039】
更に、本発明の実施例3に係る引手について説明する。ここで、図7は、本実施例3に係る引手を示した斜視図である。
本実施例3の引手62は、スライダー胴体の引手取付部に連結させる環状部3と、環状部3の端部に形成された引手本体64と、引手本体64と一体に形成されたコード保持部69とを備えている。また、引手本体64及びコード保持部69は、前記実施例1及び2と同様に、弾性を有する合成樹脂を射出成形することにより形成されている。
【0040】
前記引手本体64と前記コード保持部69は、両部材が一体となってスライダーの操作時に持ち手となる摘み部を形成しており、この摘み部は、断面が略正八角形で、底面から環状部3側に向けてその断面積が漸減するような棒状の形状を有している。また、引手62の全体は、例えば引手をスライダーの後口側に傾倒させた状態において、スライダー胴体の引手取付部との連結部からスライダーの後口側に向けて長く延びた形状を有している。更に、引手本体64とコード保持部69との間には、断面が矩形状の保持空間70と、摘み部の外周面から保持空間70に向けて貫通する導入開口71とが、引手の長手方向に沿うように形成されている。
【0041】
また本実施例3において、前記保持空間70は、一片の長さがイヤホン等に一般的に用いられているコード35の外径の大きさと同等、若しくは、その外径よりも若干大きく形成されており、コード35を安定して挿通保持できるように構成されている。更に、前記導入開口71は、その開口幅を保持空間70に向けて漸減するようにテーパ状に形成されており、導入開口71の最小開口幅(即ち、保持空間70側における導入開口71の開口幅)が、コード35の外径よりも小さく形成されている。
【0042】
このような本実施例3の引手62によってイヤホン等のコード35の一部を保持する場合には、コード35を導入開口71から保持空間70に向けて押し込むことにより、導入開口71の開口幅が拡大してコード35を保持空間70に容易に導入して、コード35を引手62から浮き上がった状態にさせることなく、保持空間70で安定して保持することができる。従って、前記実施例1及び2と同様に、コード35がぶらついて邪魔になることを防ぐことができるとともに、コード35がその他の周辺部材等に引っ掛かることを防止することができる。また、このようにコード35を保持空間70に保持しても、コード35が引手62の長手方向に沿って移動可能であるため、前記実施例1及び2と同様に、身体の動きによってイヤホンが引手62によって引っ張られることも、また、スライダーの摺動によってコード35が引っ張られることもない。」

・引用例は、上記アによれば、ヘッドホンのコードを保持することが可能なスライドファスナー用スライダーにおける引手62である。また、該スライドファスナー用スライダーは、衣服や鞄等に取り付けられるものである。

・上記イ、図7によれば、引手62は、引手本体64にコード保持部69を一体成形して摘み部を形成したものである。この結果、摘み部の外周面から保持空間70に向けて貫通する導入開口71が形成されるので、保持空間70及び導入開口71は摘み部の外周面内に一体成形で設けられたものといえる。


したがって、特に図7に示される実施例3に係るものに着目し、上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。

「衣服や鞄等に取り付けられたスライドファスナー用スライダーの引手62に形成された摘み部と、
上記摘み部の外周面内に一体成形で設けられ、コード35を保持する保持空間70及び導入開口71とを備え、
上記保持空間70及び導入開口71は、上記コード35が上記保持空間70に保持されるように、摘み部の外周面内に導入開口71を形成したスライドファスナー用スライダーの引手62。」


(3)対比・判断
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比する。

a.引用発明1の「スライドファスナー用スライダーの引手62」は、摘み部(引手本体64とコード保持部69)、及びヘッドホン(イヤホン等)のコード35を保持するための導入開口71と保持空間70を備えたものであるから、本願補正発明の「ヘッドセットコードホルダ」に相当する。また、引用発明1の「摘み部」は、本願補正発明の「本体」に相当する。

b.引用発明1の「衣服や鞄等に取り付けられたスライドファスナー用スライダーの摘み部」は、衣類やバッグに取り付けられるものであり、摘み部(引手本体64とコード保持部69とから形成。)は導入開口が形成された外周面を有しているから、本願補正発明の「バッグと衣類の洋品とからなる物品のグループのうちの少なくとも1つの物品に取り付けられ、外面を有する本体」に相当する。また、引用発明1の「スライドファスナー用スライダーの摘み部」は、ファスナーの機能からして、本願補正発明の「本体は、少なくとも1つの物品の第1の部分を、該少なくとも1つの物品の第2の部分に開閉自在に閉じる開閉機構の一部・・・であり」に相当する。

c.引用発明1の「保持空間70及び導入開口71」は、一体成形されたコード保持部69と引手本体64との間に引手62の長手方向に沿って設けられたものになっているから(引用例の図7を参照。)、その形状からして摘み部の外周面に一体成形で設けられた溝であるといえる。また、コード35は導入開口71から押し込まれ、保持空間71は保持されるコード35の外径よりも若干大きく形成されているので開放可能に固定するものといえる。よって、引用発明1の「摘み部の外周面内に一体成形で設けられ、コード35を保持する保持空間70及び導入開口71」は、本願補正発明の「本体の外面内に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを直接的に受け止めて、解放可能に固定する第1の溝」に相当する。

d.上記cのとおり、引用発明1の「保持空間70及び導入開口71」は、摘み部の外周面から内側に向かって形成されて「溝」であるから、引用例の図7を参照すると、摘み部の内/外周面下にある「導入開口71から保持空間70に至る部分のコード保持部69側」と「導入開口71から保持空間70に至る部分の引手本体64側」とが本願補正発明の「第1の溝壁、第2の溝壁」に相当する。また、引用発明1の「導入開口71」は本願補正発明の「差込口空間」に相当する。よって、引用発明1の「保持空間70及び導入開口71」は、本願補正発明の「第1の溝壁と第2の溝壁と差込口空間とを有し、上記ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に固定されるときに、上記ヘッドセットコードの少なくとも一部が上記本体内又は上記外面下に保持されるように、上記第1の溝壁と上記第2の溝壁は、共に、上記本体の外面下に延びて形成される上記第1の溝」に相当する。


よって、本願補正発明と引用発明1とは、次の点で一致し、相違点は認められない。

「バッグと衣類の洋品とからなる物品のグループのうちの少なくとも1つの物品に取り付けられ、外面を有する本体と、
上記本体の外面内に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを直接的に受け止めて、解放可能に固定する第1の溝とを備え、
上記本体は、上記少なくとも1つの物品の第1の部分を、該少なくとも1つの物品の第2の部分に開閉自在に閉じる開閉機構の一部であり、
上記第1の溝は、第1の溝壁と第2の溝壁と差込口空間とを有し、上記ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に固定されるときに、上記ヘッドセットコードの少なくとも一部が上記本体内又は上記外面下に保持されるように、上記第1の溝壁と上記第2の溝壁は、共に、上記本体の外面下に延びて、上記第1の溝を形成することを特徴とするヘッドセットコードホルダ。」


(4)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明

1.本願発明の認定
平成26年8月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至49に係る発明は、平成25年9月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至49に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
バッグと衣類の洋品とからなる物品のグループのうちの少なくとも1つの物品に取り付けられる本体と、
上記本体に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを直接的に受け止めて、解放可能に固定する第1の溝とを備え、
上記本体は、上記少なくとも1つの物品の第1の部分を、該少なくとも1つの物品の第2の部分に開閉自在に閉じる開閉機構の一部、上記少なくとも1つの物品に沿って移動できるスライド可能な洋品の一部、その機能的構造とは無関係な美的特徴を有する装飾的なアクセサリの一部のいずれかであることを特徴とするヘッドセットコードホルダ。」


2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-55050号公報には、「スライダーの引手」について、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

ア.「【0001】
本発明は、スライドファスナー用スライダーにおける引手であって、ヘッドホンのコード等の紐状物を簡単に体裁良く保持することが可能なスライダーの引手に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ポータブル型のオーディオプレーヤーや携帯電話等が広く普及しており、オーディオプレーヤーや携帯電話の本体に保存した音楽等のサウンドを、電車等により移動する
際に聞いている人が多く見られる。この場合、プレーヤーや携帯電話の本体を、衣服のポケットや携帯しているバッグ等に保持し、その本体に接続したイヤホンやヘッドホンを介して保存したサウンドを聴くことが一般的である。このため、通常は、バッグ等にプレーヤー等の本体を保持している場合でも、イヤホン等が容易に使用できるようにそのコードが長く形成されている。
【0003】
また、上記のような電車等による移動中や歩行中にイヤホンやヘッドホンを身体に装着しているときには、長いコードが衣服の前立てや衣服の表面で垂れ下がったり、ぶらついたりしていることが多い。しかしながら、このような状態のコードは、煩わしく感じるものの、邪魔にならないように処理することが難しい。更に、コードが周辺の様々な部材に引っ掛かり易く、ユーザーの頭部が不意に引っ張られ、また、プレーヤー等の本体がバッグから落ちて壊れ易くなる等の不具合があった。
【0004】
ところで、衣服や鞄等の開口部にはスライドファスナーが取り付けられていることが多く、また、スライドファスナーは、従来から様々な改良を加えることによりその利便性を向上させてきている。例えば、実公昭55-11690号公報(特許文献1)には、スライドファスナーを有する洋服等の商品にラベル等を取り付ける際に、ラベルの取付作業を容易に行うことが可能なスライダーの引手に関する発明が開示されている。」

ウ.「【0021】
図1は、本発明の実施例1に係る引手を有するスライドファスナー用スライダーを示した斜視図である。また、図2は、同引手を裏面側から見たときの引手の斜視図である。なお、以下の説明において、引手の表面とは、スライダーを停止させて引手をスライダーの後口側に傾倒させたときに(例えば、図3を参照)、正面から見える側の一面を指しており、また、引手の裏面とは、表面とは反対側の一面(正面から見えない側の一面)を指している。
【0022】
本実施例1の引手2は、スライドファスナー用スライダー1のスライダー胴体20に取り付けて用いられるものであり、スライダー1のスライダー胴体20に連結させる環状部3と、環状部3の端部に形成され、スライダー1の操作時に持ち手となる引手本体4と、引手本体4の側面に配されたコード保持部9とを備えている。
・・・(中略)・・・
【0025】
また、引手2の前記引手本体4及びコード保持部9は、弾性を有する合成樹脂を射出成形することにより得られる一体成形品で構成されている。また、引手本体4は、環状部3の他端部(スライダー胴体20に連結する端部とは反対側の端部)に形成されており、スライダー1の操作時に摘み易いように平板状に細長く形成されている。更に、この引手本体4の平坦な表面や裏面には、必要に応じて模様等の装飾を施したり、摘み易さを向上させるために凹凸を形成する等加工を施したりすることができる。
【0026】
前記コード保持部9は、中心部が円形断面の保持空間10となる中空の筒状体9aで構成されており、この保持空間10は引手2の長手方向に沿うように形成されている。また、コード保持部9には、筒状体9aの外周面から保持空間10に向けて貫通するスリットが保持空間10の長さ方向に沿って形成されており、このスリットがコード35等の紐状物を保持空間10に導入する導入開口11を構成している。なお、筒状体9aにおいて、スリット11aを設ける位置は特に限定されるものではないが、例えば図2に示したように、引手2の裏面側に設けることが好ましい。これにより、スリット(導入開口11)の存在がスライダー1の正面側から見えにくくなるため、引手2のデザイン性が損なわれない。
【0027】
本実施例1において、コード保持部9に設けた保持空間10の直径(筒状体9aの内径)は、イヤホン等に一般的に用いられているコード35における外径の大きさと同等、若しくは、その外径よりも若干大きく形成されており、コード35を安定して挿通保持できるように構成されている。また、コード保持部9に形成した導入開口11は、その開口幅を保持空間10に向けて漸減するようにテーパ状に形成されており、更に、導入開口11の最小開口幅(即ち、筒状体9aの内径側における導入開口11の開口幅)が、保持空間10の直径よりも小さく形成されている。これにより、コード35等の紐状物を保持空間10に導入する際に、紐状物をコード保持部9の外周面から導入開口11を介して導入させ易くすることができ、更に、紐状物を保持空間10に保持した際に、コード保持部9を弾性変形させない限り、その保持した紐状物が導入開口11から自由に抜け出すことを防ぐことができる。」

・引用例は、上記アによれば、ヘッドホンのコードを保持することが可能なスライドファスナー用スライダーにおける引手2である。また、該スライドファスナーは、衣服や鞄等に取り付けられるものである。

・上記ウ、図1乃至図4によれば、コード35を挿通保持するコード保持部9は、引手本体4の側面に一体成形して設けられたものである。そして、コード保持部9は中空の筒状体9aで構成されており、該筒状体9aの外周面から保持空間10に向けて貫通するスリット(導入開口11)が形成されているものである。


したがって、特に図1乃至図4に示される実施例1に係るものに着目し、上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。

「衣服や鞄等に取り付けられたスライドファスナー用スライダーの引手2に形成された引手本体4と、
上記引手本体4の側面に一体成形で設けられ、コード35を挿通保持するスリット及び保持空間10を備えた
スライドファスナー用スライダーの引手2。」


3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明2とを対比する。

e.引用発明2の「スライドファスナー用スライダーの引手2」は、引手本体4、及びコード保持部9を備えたものであるから、本願発明の「ヘッドセットコードホルダ」に相当する。また、引用発明2の「引手本体4」は、本願発明の「本体」に相当する。

f.引用発明2の「衣服や鞄等に取り付けられたスライドファスナー用スライダーの引手本体4」は、衣類やバッグに取り付けられるものであるから、本願発明の「バッグと衣類の洋品とからなる物品のグループのうちの少なくとも1つの物品に取り付けられる本体」に相当する。また、引用発明2の「スライドファスナー用スライダーの引手本体4」は、ファスナーの機能からして、本願発明の「本体は、少なくとも1つの物品の第1の部分を、該少なくとも1つの物品の第2の部分に開閉自在に閉じる開閉機構の一部・・・である」に相当する。

g.引用発明2の「スリット及び保持空間10」は、引手本体4に一体成形されたコード保持部9に設けられたものであり、コード35を挿入保持するものである。また、コード35はスリット(導入開口11)から押し込まれ、保持空間10は保持されるコード35の外径よりも若干大きく形成されているので開放可能に固定するものといえる。よって、引用発明2の「上記引手本体4の側面に一体成形で設けられ、コード35を挿通保持するスリット及び保持空間10」は、本願発明の「本体に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを直接的に受け止めて、解放可能に固定する第1の溝」に相当する。


よって、本願発明と引用発明2とは、次の点で一致し、相違点は認められない。

「バッグと衣類の洋品とからなる物品のグループのうちの少なくとも1つの物品に取り付けられる本体と、
上記本体に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを直接的に受け止めて、解放可能に固定する第1の溝とを備え、
上記本体は、上記少なくとも1つの物品の第1の部分を、該少なくとも1つの物品の第2の部分に開閉自在に閉じる開閉機構の一部であることを特徴とするヘッドセットコードホルダ。」


4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-25 
結審通知日 2015-05-26 
審決日 2015-06-08 
出願番号 特願2011-516366(P2011-516366)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04R)
P 1 8・ 113- Z (H04R)
P 1 8・ 121- Z (H04R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴垣 俊男▲吉▼澤 雅博  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 酒井 朋広
井上 信一
発明の名称 ヘッドセットコードホルダ  
代理人 小池 晃  
代理人 伊賀 誠司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ