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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1307171 |
審判番号 | 不服2014-14755 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-07-28 |
確定日 | 2015-10-29 |
事件の表示 | 特願2009-14364「エピタキシャルウェハの製造方法および欠陥除去方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年8月5日出願公開、特開2010-171330〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成21年1月26日を出願日とする出願であって、 平成24年1月10日付けで審査請求がなされ、 平成25年4月16日付けで拒絶理由通知(同年同月23日発送)がなされ、 これに対して同年6月17日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、 同年11月29日付けで最後の拒絶理由通知(同年12月3日発送)がなされ、 これに対して平成26年1月6日付けで意見書が提出されたものの、 同年6月17日付けで上記平成25年11月29日付けの拒絶理由通知書に記載した理由(特許法第29条第2項)によって拒絶査定(同年同月24日謄本発送・送達)がなされたものである。 これに対して、「原査定を取り消す、本願の発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として平成26年7月28日付けで本件審判請求がなされると同時に、手続補正がなされ、 同年10月29日付けで上申書が提出され、 当審より平成27年5月15日付けで拒絶理由通知(同年同月19日発送)がなされ、 これに対して同年6月29日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明の認定 本件の請求項1ないし2に係る発明(以下、請求項2に係る発明を、「本願発明」という。)は、平成27年6月29日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 ウェハの成膜面上にエピタキシャル膜を気相成長させたエピタキシャルウェハの製造方法であって、 前記ウェハの成膜面に粗研磨を施す粗研磨工程と、 前記粗研磨したウェハの成膜面に、常温常圧の条件で気相エッチング処理を施すことで、前記粗研磨時に前記成膜面に作用する応力により形成された欠陥と前記成膜面とをエッチングする気相エッチング工程と、 前記気相エッチング処理したウェハの成膜面にエピタキシャル膜を気相成長させるエピタキシャル膜形成工程と、 前記エピタキシャル膜が形成されたウェハに仕上げ研磨を施す仕上げ研磨工程と、を備え、 前記気相エッチング工程におけるエッチャントは、オゾンガス及びフッ化水素ガスの混合ガスである ことを特徴とするエピタキシャルウェハの製造方法。 【請求項2】 ウェハの成膜面に施した粗研磨により発生した欠陥を除去するエピタキシャルウェハの欠陥除去方法であって、 前記成膜面に、常温常圧の条件でオゾンガス及びフッ化水素ガスの混合ガスをエッチャントとした気相エッチング処理を施すことで、前記欠陥と前記成膜面とをエッチングする ことを特徴とするエピタキシャルウェハの欠陥除去方法。」 第3 先行技術・引用発明の認定 3-1 引用文献及び引用発明 本願の出願日前に頒布され、上記当審の拒絶理由通知で引用された、特開2007-51051号公報(平成19年3月1日公開、以下、「引用文献」という。)には、以下の技術的事項が記載されている。 (下線は、当審にて付した。) A 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、半導体ウェハを、フッ化水素及び酸化剤を含有するガス状媒体で処理する方法、並びに前記媒体で処理された、低い粗面性及び低い金属濃度を有する半導体ウェハに関する。 【背景技術】 【0002】 例えば電子工学デバイスの製造において使用される半導体ウェハ、特にシリコンウェハの製造の範囲内で、一連の機械加工工程が実施される。単結晶からシリコンウェハを分離した後、このシリコンウェハは例えばラッピング及び/又は研削され、要求に応じた表面状態が得られる。この表面を更に平滑にしかつ機械加工工程により損傷された結晶領域(いわゆるダメージ)を取り去るために、シリコンウェハは通常ではエッチングプロセスにかけられる。この場合、前記シリコンウェハは、一般に液状媒体中に浸漬されるか又は周囲に液状媒体が流される。」 B 「【0008】 液状媒体中でエッチング除去が増大すると共に、予めラッピング又は研削により設定されたシリコンウェハの形状寸法は次第に著しく変動し、引き続くポリシングプロセスの際に問題が生じるという欠点がある。ポリシングの前に問題の原因となる幾何学的欠陥は場合によりもはやポリシングによって補正できない。 【0009】 ポリシングの前にできる限り良好な幾何学的値を達成するために、液体エッチング媒体を用いる従来の方法の場合に、エッチング除去を、たいていは機械加工工程により引き起こされたダメージだけを除去する用に選択する。このためには、選択された機械プロセスに依存して、ウェハ面当たり10?15μmのエッチング除去で十分である。この場合に達成可能な、半導体ウェハの粗面性及び反射能についての値は、しかしながら後続するポリシング工程を必然的に不可欠にしている。このポリシング工程によって、再び、半導体ウェハの表面上の及び表面近傍の領域の金属濃度が高められてしまう。」 C 「【0015】 本発明の場合に、半導体ウェハの表面は、少なくともフッ化水素(HF)と、半導体材料を酸化する少なくとも1種のガス、有利にオゾンとを定義するガス状媒体が供給される。本発明に導く調査は、ガス状の媒体は流動なしでは著しいエッチング除去及び平滑化を引き起こすことができないことが示された。本発明による方法の成果にとって決定的なのは、従って、ガス状媒体と半導体ウェハとの間の相対速度が40mm/s?300m/sの範囲内、有利に1m/s?100m/sの範囲内にあることである。更に、ガス状媒体は、有利に40°?90°の範囲内の角度で、特に有利に75°?90°の範囲内の角度で表面に供給される。このエッチング率は、ガス状媒体の流れが、半導体ウェハの表面に対して直角で、つまり90°の角度である場合に最大であり、従って特に有利である。有利にガス状媒体の流動パラメータ及び組成は、処理すべき表面に液膜が沈着しないように選択される。 ・・・(中略)・・・ 【0017】 前記媒体のガス状の状態に基づき、処理すべき半導体ウェハと媒体との間の極めて高い相対流動速度を達成することができ、この流動速度は、液体エッチング媒体を使用する際の流動速度をはるかに上回る。液体エッチング媒体を使用する場合の典型的な流動速度は、5mm/s?40mm/sである。気相中でエッチングする場合に、障害なく500mm/s以上に達することができる。本発明の場合のこの高い流動速度により、まずウェハ表面の高い領域(つまり突出部)は除去され、一方で深い領域(谷部)はガス状の媒体によって全く攻撃されないか又はわずかに攻撃されるだけである。それにより、本発明による方法を用いて、極めてわずかなエッチング除去の場合でも既に、Chapman Surface Profiler MP 2000を用いて測定してRMS粗面性が70nmよりも低い極めて平滑な表面が作成される。極めてわずかなエッチング除去により、半導体ウェハの寸法形状は実際に変化せず、つまり先行する平坦化工程、例えばラッピング又は研削より設定された寸法形状が維持される。」 D 「【0034】 本発明による方法は、気相-エッチング法として、半導体ウェハの製造プロセスにおいて有利に次の位置で使用することができる: スライシング-エッジラウンディング-研削(1段階又は多段階)-液体中でのエッチング-エッジポリシング-気相中での本発明によるエッチング-除去ポリシング(片面又は両面)-鏡面研磨(CMP)の一連の製造工程。この場合、このエッチングは気相中で半導体ウェハの粗面性の低減のために用いられ、それにより必要なポリシングによる除去を低減することができる。ウェハ表面及びウェハエッジの多段階の研削プロセスが使用される場合には、不純物及び結晶構造の表面障害を除去するために必要なエッチング除去を低減でき、エッチング液中での従来のエッチングは気相中でのエッチングのため行わず、研削プロセスにより優勢となる半導体ウェハの平坦度に相応して有利な影響を有する。 【0035】 スライシング-エッジラウンディング-研削(1段階又は多段階)-液体中でのエッチング-エッジポリシング-気相中での本発明によるエッチング-除去ポリシング(片面又は両面)-ポリシング及びエピタキシャル被覆されたウェハ並びにアニールウェハのためのCMPの一連の製造工程も可能である。」 E 「【実施例】 【0045】 次に、本発明による方法の利点を、実施例及び比較例を用いて説明する。 【0046】 単結晶シリコンウェハを、単結晶から分離後に洗浄し、FO1200でラッピングし、もう1回洗浄した。このラッピングされた表面は、R_(a)=0.25μmの粗面性を有していた。このシリコンウェハから、複数の同じ大きさの約1cm×3cmのサイズのシリコン片を製造した。 【0047】 同様に製造された2番目の対照ウェハについて、鉄、銅、ニッケル、クロム、亜鉛及びカルシウムの金属の濃度をPoly-UTPにより決定した。この金属濃度は、前記したそれぞれ個々の金属について1.0×10^(12)at/cm^(2)よりも高い値を示した。 【0048】 記載されたシリコン片を、引き続き気相エッチングにかけ、その際、ガス状エッチング媒体といて、酸素、オゾン、フッ化水素及び水蒸気からなる混合物を使用した。このガス状エッチング媒体は次のように製造された: オゾン発生器に、ガスボンベから酸素(99.999%)を供給した。この発生器の出力を、このオゾン発生器から出るガス流が0.125gオゾン/lの濃度を有するように選択した。このガス流は、室温(T=22℃)で、フッ酸(質量25%)を充填した洗浄びんを通過させて供給した。こうして製造されたガス状エッチング媒体を、テフロンホースを通して水平に置かれたPFA管(長さ80cm、直径=5cm)中に通し、この供給及び排出の両方は三方コック弁によって遮断可能にした。 ・・・(中略)・・・ 【0054】 実施例1: 上記のように製造されたシリコン片を、水平に置いたPFA管中で45°の角度に傾けて置いた。引き続き、供給及び排出用の手動弁を開放した。50mm/sの速度で、上記のガス状エッチング媒体を、前記反応管を通過するように流した。30分の反応時間の後に、ガス流が最初に当たり、45゜の角度で平行して傾斜平面を上方に向かって流動し始めるシリコン片の下端で、明らかな平滑化効果が視覚的に認識でき、この平滑化効果はシリコン面に沿って急速に弱まり、約1.5cmの後で完全に消失した。」 上記Aには、以下の事項が記載されている。 - 半導体ウェハの製造工程中で、一連の機械加工工程が実施され、当該機械加工工程でウェハはいわゆるダメージと称される損傷された結晶領域が発生するので、この損傷(ダメージ)を取り去るためにエッチングプロセスにかけられるのが通常であること 上記AとBとから、問題視されている摘記A中の「機械加工工程により損傷した結晶領域(いわゆるダメージ)」と、摘記B中の「機械加工工程により引き起こされたダメージ」は、ウェハ表面に生じている同一状態を表現形を変えて述べたものと言える。 上記Cには、「ガス状媒体」は、フッ化水素(HF)とオゾンから有利には構成されることが記載されている。 また、本発明のガス状媒体を流した場合のウェハ表面の初期状態として、高い領域(つまり突出部)と、深い領域(谷部)とが存在すること、及びガス状媒体を流すことでエッチングがなされることも記載されている。 上記Dには、「気相-エッチング法」が使用される対象として、「エピタキシャル被覆されたウェハ」の製造にも用いられることが記載されている。 上記Eには、実施例としてウェハを気相エッチングする条件として、用いるガス状媒体が、室温(T=22℃)で、オゾン流をフッ酸収納びんを通過させることで連続して供給するとし、このガス状媒体は、反応管にホースで導かれ、シリコン片に薄いホース中のガス流の形で流しかけ、平滑化が視認できたことが記載されている。 以上のことから、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (引用発明) 「エピタキシャル被覆されるウェハの製造工程中に用いた一連の機械加工によりウェハ表面に発生した損傷した結晶領域を取り去るエッチングプロセスであって、 前記ウェハ表面の損傷した結晶領域に、室温条件でオゾンガス及びフッ化水素ガスの混合ガスであるガス状媒体を流し、エッチングする エピタキシャルウェハのエッチングプロセス。」 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「エピタキシャル被覆されるウェハ」、「製造工程中に用いた一連の機械加工」、及び「ウェハ表面に発生した損傷した結晶領域を取り去る」は、各々、本願発明の「成膜」を伴う「エピタキシャルウェハ」、「ウェハの成膜面に施した粗研磨」、及び「発生した欠陥を除去する」に相当する。その結果、引用発明の「エッチングプロセス」と本願発明の「欠陥除去方法」とは対象とする方法の概略が共通する。 また、引用発明の「オゾンガス及びフッ化水素ガスの混合ガスであるガス状媒体」は、本願発明の「オゾンガス及びフッ化水素ガスの混合ガス」に相当する。 同様に、引用発明の「ガス状媒体を流し、エッチングする」は、本願発明の「混合ガスをエッチャントとした気相エッチング処理を施すことで、前記欠陥と前記成膜面とをエッチングする」に相当する。 更に、引用発明の「オゾンガス及びフッ化水素ガスの混合ガスであるガス状媒体」を用いた「エッチング」と、本願発明の「オゾンガス及びフッ化水素ガスの混合ガスをエッチャントとした気相エッチング処理を施すことで、前記欠陥と前記成膜面とをエッチングする」とは、その条件の点で見ると、引用発明の「室温」と本願発明の「常温」とが一致し、温度条件の点で共通する。 以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。 (一致点) 「ウェハの成膜面に施した粗研磨により発生した欠陥を除去するエピタキシャルウェハの欠陥除去方法であって、 前記成膜面に、常温の条件でオゾンガス及びフッ化水素ガスの混合ガスをエッチャントとした気相エッチング処理を施すことで、前記欠陥と前記成膜面とをエッチングする ことを特徴とするエピタキシャルウェハの欠陥除去方法。」 (相違点) 上記気相エッチングの圧力の条件として、本願発明では、「常圧」であるとしているのに対して、引用発明は、圧力が常圧であるかは直接明らかではない点。 第5 判断 上記相違点について検討する。 引用発明のガス状媒体の生成、及び、エッチングの態様の、双方を子細に見ると、当該媒体の発生からウエハ片への流しかけが上記摘記事項Eに示すとおり、通常の開放環境で実行されているものと見てとれ、何らの加圧ないし減圧を要する環境で行うことなく、エッチング、すなわち平滑化の効果を奏するものであると理解できる。 また、そもそも気相エッチングは化学反応の一種であることから見て、反応を所望の状態で行わしめるに際し、常圧とは異なる圧力で行うのが適当である場合には、その圧力条件を明示するのが常識である。しかるに、何も圧力条件の明示を伴わない場合には、暗に必要な圧力条件が、常圧であることを示しているものとも受け取れる。 とすれば、当該相違点に係る相違は、引用発明に殊更明らかとされていないながらも常識的に見て判明する条件が単に形式上明示されていなかっただけであって、単なる記載上の扱いによる微差と言うべきであり、両者に格別の相違は無いと認められる。 上記で検討したごとく、当該相違点は格別のものではなく、そして、本願発明の奏する作用効果は、上記引用発明に記載された事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、当審が通知した拒絶理由に対し、審判請求人は平成27年6月29日付け意見書の(6)(6-1)にて、シリコンウェハの幾何学的欠陥の発生原因について審判長の認定に瑕疵がある旨主張しているが、引用文献の段落【0002】には、「損傷された結晶領域(いわゆるダメージ)」が、「一連の機械加工工程」によるものとした記載があり、機械加工の例に「ラッピング及び/又は研削」が示されていることの他にも、段落【0046】にラッピングを行ったシリコン片の表面が粗面性を有しており、ガス状エッチング媒体を流すとシリコン片下端で明らかな平滑化効果を視認できたとしていること等から見て、引用文献には、ラッピング(=研磨)で粗面が発生する状態を、ガス状エッチング媒体を流すことで平滑化するとした思想が記載されているというべきであり、審判請求人のかかる主張は失当と言うべきである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項についての検討をするまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-26 |
結審通知日 | 2015-09-01 |
審決日 | 2015-09-14 |
出願番号 | 特願2009-14364(P2009-14364) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩瀬 昌治、福島 和幸 |
特許庁審判長 |
栗田 雅弘 |
特許庁審判官 |
久保 克彦 西村 泰英 |
発明の名称 | エピタキシャルウェハの製造方法および欠陥除去方法 |
代理人 | 特許業務法人樹之下知的財産事務所 |
代理人 | 特許業務法人樹之下知的財産事務所 |