• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B25F
管理番号 1307194
審判番号 不服2014-21568  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-24 
確定日 2015-10-29 
事件の表示 特願2011-129929「電動工具」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月27日出願公開、特開2012-254508〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本件発明
本件出願の手続の経緯は以下のとおりである。
平成23年 6月10日 :出願
平成26年 6月20日 :上申書、手続補正書の提出
平成26年 6月30日付け:拒絶理由の通知
平成26年 7月18日 :意見書、手続補正書の提出
平成26年 7月31日付け:拒絶査定
平成26年10月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成27年 2月12日 :上申書の提出
平成27年 5月13日付け:拒絶理由の通知(当審)
平成27年 6月30日 :意見書、手続補正書の提出

そして、本件出願の請求項1及び2に係る発明は、平成27年6月30日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
被切断材に当接させるベースと、該ベースの上面側に支持された切断機本体を備え、該切断機本体は、グリップ部を有するハンドルと、モータハウジングに収容したDCブラシレスモータと、該DCブラシレスモータの動作を制御するモータ制御装置と、電源としてのバッテリパックが取り付けられるバッテリ取付け台座部と、前記DCブラシレスモータを駆動源として回転する鋸刃を備え、前記ベースの下面側に突き出した前記鋸刃の下部を被切断材に切り込ませて切断加工を行う切断機であって、
前記モータ制御装置は、複数のスイッチング素子から構成される三相ブリッジ回路を備え、
前記グリップ部と、前記モータハウジングの外周面上部より上方で延びて前記グリップ部の前部に至る起立部と、前記モータハウジングの外周面後部より後方で延びて前記グリップ部の後部に至る連結部が側面視略三角形状に形成されることで、前記ハンドルが構成され、
前記グリップ部に前記DCブラシレスモータを起動するためのトリガスイッチが設けられており、
前記ハンドルの後部に、前記バッテリ取付け台座部が設けられており、
前記バッテリ取付け台座部に取り付けたバッテリパックの電力を前記DCブラシレスモータに供給するための電源供給用ケーブルが、前記連結部の内部に設定した配線通路に配線されて前記モータ制御装置に接続されており、前記トリガスイッチから第1の信号線が前記グリップ部の内部を後方に延びて前記配線通路に配線されて、前記電源供給用ケーブルの配線経路として前記グリップ部内を除外した切断機。」(以下「本件発明」という)

2 当審での拒絶の理由
一方、当審が平成27年5月13日付けで通知した拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
本件出願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開平9-164501号公報
2.特開2010-260152号公報

3 刊行物の記載事項
(1)当審が通知した上記拒絶の理由で引用した特開平9-164501号公報(以下「刊行物1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審で付与)。

a 「【0009】
【発明の実施の形態】本発明における電動丸鋸として、バッテリーを駆動源とする電池式丸鋸の実施形態に基づいて詳述する。電動丸鋸は、図2に示されるように本体7と、本体7の下側に配されると共に被切断部材の切断時に被切断部材の外面に当接されるベース8を備えている。
【0010】本体7を構成するハウジング3の中央部にはメインスイッチ9があり、その下方にはモータケース10が配設されている。また、ハウジング3の後部には把手部11が一体に設けられ、把手部11の後部にはバッテリーが着脱自在に取り付けられる電池部12が設けられている。ハウジング3の前部には丸鋸刃1が設置され、この丸鋸刃1はハウジング3に設けられた減速ブロックを介してモータケース10内に収納配置されたモータ13にて図1、図2、図4中矢印イ方向に向けて回転駆動させられるようになっている。ここで、丸鋸刃1が図中矢印イ方向に回転すると図1、図4中矢印ロ方向に向けて流れるように風が発生する。ハウジング3の前端には透明カバー14が固定されており、丸鋸刃1による被切断部材の切断時に発生する切粉の飛散を抑えると共に丸鋸刃1の刃先を見やすいようになっている。
【0011】本体7に配された丸鋸刃1とモータ13と把手部11と電池部12は同一軸線上に配置されており、本体7のバランス(特に左右方向)及び切断作業時の押しやすさ、切りやすさを良くした構造となっており、通常、丸鋸刃1の固定覆いとしての透明カバー14はグリップ位置と軸線上から離れた位置にハウジング3とは別物で構成されている。」
【図1】


b 「【0013】ここで、ブレーキ回路は図3に示されるように構成されており、スイッチSWのオン時には電源が入り、モータ13が駆動するが、この時、モータ短絡ブレーキ用の抵抗2には電流は流れない。次にモータ13駆動中にスイッチSWをオフにすると電源はカットされるがモータ13及び丸鋸刃1は回転慣性力により回り続けようとする。この時、モータ13は短絡状態となるためモータ13に逆起電圧が発生し、抵抗2及びモータ13に逆起電流が流れてモータ13を停止させる力が働く。」

c 上記摘記事項aの「本体7の下側に配される・・・ベース8」という記載及び図1の板状のベース8の上面側に本体7が位置し下面側から丸鋸刃1が突出している構成の図示からみて、本体7はベース8の上面側に支持されており、ベース8の下面側に突き出した丸鋸刃1の下部を被切断部材に切り込ませるものであると認められる。

d 上記摘記事項bの「スイッチSWのオン時には電源が入り、モータ13が駆動する」という記載及び図1のメインスイッチ9の形状配置の図示からみて、メインスイッチ9(スイッチSW)はモータ13を起動するためのトリガスイッチであり、ハウジング3に一体に設けられた把手部11のグリップ位置に設けられていると認められる。

e 図1の記載からみて、電池部12に取り付けたバッテリーの電力をモータ13に供給するための電源供給用ケーブルが、ハウジング3の内部に設定した配線通路に配線されていることが理解できる。

f 上記摘記事項a及びb並びに認定事項cないしeを、技術常識を踏まえて整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。
「被切断部材の外面に当接されるベース8と、該ベース8の上面側に支持された電動丸鋸の本体7を備え、該電動丸鋸の本体7は、グリップ位置を有する把手部11と、モータケース10に収納配置されたモータ13と、バッテリーが取り付けられる電池部12と、前記モータ13を駆動源として回転する丸鋸刃1を備え、前記ベース8の下面側に突き出した前記丸鋸刃1の下部を被切断部材に切り込ませて切断する電動丸鋸であって、
前記把手部11のグリップ位置に前記モータ13を起動するためのトリガスイッチが設けられており、
前記把手部11の後部に、前記電池部12が設けられており、
前記電池部12に取り付けたバッテリーの電力を前記モータ13に供給するための電源供給用ケーブルが、ハウジング3の内部に設定した配線通路に配線された、電動丸鋸。」(以下「引用発明」という)

(2)当審で通知した拒絶の理由に示した特開2010-260152号公報(以下「刊行物2」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。

g 「【0001】
本発明は、ブラシレスモータを駆動源とする電動工具に関する。本発明は、インバクトドライバ、ドライバドリル、振動ドリル、ハンマドリル等の締付け、穴あけ用工具以外に、丸鋸、ジグソー等のブラシレスモータを使用する他の電動工具にも適用可能である。」

h 「【0022】
<電動工具50全体の組立構成について>
最初に、図1を参照して電動工具全体の組立構成について説明する。
電動工具50の本体は、胴体ハウジング部(モータハウジング部とも称する)1aおよびハンドルハウジング部(グリップハウジング部とも称する)1bから成るハウジング1内に収容されている。胴体ハウジング部(モータハウジング部)1aは、ブラシレスモータ部(ブラシレス直流モータ部)2のモータ回転軸(モータ軸)2eの軸方向(水平軸方向)に沿って、一端部(図面の左端部)1cから他端部(図面の右端部側)1dに延在し、胴体ハウジング部1aの一端部1c側においてブラシレスモータ部2およびインバータ回路の半導体スイッチング素子3aを実装するインバータ回路基板3を収容し、かつブラシレスモータ部2の他端部1d側において、動力伝達部5を構成する減速機構部5aおよびトルク調整部(クラッチ部)5bを収容する。
【0023】
ハンドルハウジング部(グリップハウジング部)1bは、胴体ハウジング部1aの延在方向から分岐するように垂下し、作業者が片手で把持できるような外周形状を有する。ハンドルハウジング部1bの下端部には、ブラシレスモータ2の駆動電源となる電池パック8が着脱可能に装着されている。また、電池パック8の上部には、ブラシレスモータ2のインバータ回路基板3に組込まれたインバータ回路を制御するための制御回路基板4が、紙面を横切る方向に延在するように設けられている。
【0024】
ブラシレスモータ部2は、本実施形態では3相ブラシレス直流モータからなる。ブラシレスモータ部2は、図3の要部拡大図に示されるように、円筒状の外形をもつステータ2cと、ステータ2cのティース部の内周部内に同心軸状に設けられ、モータ回転軸2e方向に延びるN極およびS極の永久磁石(マグネット)2bが埋め込まれたロータ(マグネットロータ)2aと、ステータ2cの3相巻線U、V、W(図6参照)を含むステータ巻線2dとから構成される。」


i 「【0035】
一方、ハンドルハウジング部1bの上端部には、スイッチ部7aを有するスイッチトリガ(トリガ操作部)7が配設され、スイッチトリガ7がバネ力によって付勢された状態でハンドルハウジング部1bから突出している。スイッチ部7aは、スイッチ回路基板7bに電気的接続され、スイッチトリガ7の引込み操作量に応答した電気信号をスイッチ回路基板7bへ供給する。すなわち、スイッチトリガ7のトリガ操作量は、スイッチ部7aに形成されたポテンショメータの可動端子(摺動端子)(図示なし)に連動して電圧値に変換されて、後述する印加電圧設定回路15(図6参照)の設定電圧として演算部20へ入力される。
【0036】
電池パック8は、スイッチ回路基板7bおよび制御回路基板4によって構成された、演算機能を含む制御回路30(図6参照)へ駆動電源を供給し、かつインバータ回路基板3によって構成されたインバータ回路3(図6参照)へ駆動電力を供給するように電気的接続されている。電池パック8は、例えば、リチウムイオン二次電池によって構成される。」

j 「【0041】
<電動工具50の全体の回路構成について>
次に、電動工具50の回路構成について、図6に示した回路機能プロック図を参照して説明する。図6に示されるように、インバータ回路部(3)は、上述したインバータ回路基板3に実装された、3相ブリッジ形式に接続された半導体スイッチング素子(半導体パワーデバイス)3aである6個のパワーMOSFET3a(Q1?Q6)から構成される。
【0042】
ブリッジ接続された6個のMOSFETQ1?Q6は、制御信号出力回路13に接続され、また、6個のMOSFETQ1?Q6のドレインまたはソースはスター結線されたステータ巻線U、VおよびWに接続される。これによって、6個のMOSFETQ1?Q6は、制御信号出力回路13から入力されたスイッチング駆動信号H1?H6によってスイッチング動作を行い、インバータ回路部3に印加される電池パック8の直流電圧を、3相(U相、V相、W相)の駆動電圧Vu、Vv、Vwとして、ステータ巻線U、V、Wへ電力を供給する。
【0043】
制御回路部30は、制御信号出力回路13に制御信号を出力するために設けられたもので、図1に示したスイッチ回路基板7bおよび制御回路基板4の回路装置を含む。機能的には処理プログラムとデータに基づいて制御信号出力回路13へ駆動信号を出力するための演算部20と、上記3つのホールIC10、11、12の出力信号に基づいてロータ2aとステータ2cのステータ巻線2dの3相巻線U、V、Wとの関係位置を検出し、演算部20へ通常のロータ2aの位置情報を出力する回転子位置検出部16と、回転子位置検出回路16の検出信号に基づいて回転数を検出する回転数検出回路17と、インバータ回路部3の半導体スイッチング素子3aの温度上昇を感熱素子19aによって測定し、その測定信号を演算部20へ出力する温度上昇測定回路19と、モータ2の駆動電流を常に検出して、その情報を演算部20に出力する電流検出回路18と、上記したスイッチトリガ7のトリガ操作量に応答してスイッチ部7aにおいて発生する出力制御信号に対応するPWM信号のデューティ比を設定するための印加電圧設定回路14と、モータ2の正逆切替レバー9による正方向回転または逆方向回転の操作を検出してモータ2の回転方向を設定するための回転方向設定回路15と、から構成されている。
【図6】


k 「【0046】
<インバータ回路基板3の胴体ハウジング部1a内の配置について>
図2に示されるように、インバータ回路基板3は、配線パターン(図示なし)が形成されたほぼ円形形状のプリント基板から成り、該インバータ回路基板3の中央部にはモータ回転軸2eを貫通させるための貫通孔3dが形成されている。また、インバータ回路基板3のほぼ円周部には、6個の半導体スイッチング素子3a(図6の半導体スイッチング素子Q1?Q6)が実装されている。インバータ回路基板3とステータ巻線2d間の電気的配線、インバータ回路基板3と制御回路基板4間の電気的配線、およびインバータ回路基板3とスイッチ回路基板7b間の電気的配線には、大電流用導線3bおよび小電流用導線3cが使用されている。」

4 対比
本件発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「被切断部材の外面に当接されるベース8」は本件発明の「被切断材に当接させるベース」に相当し、同様に「ベース8の上面側に配された電動丸鋸の本体7」は「ベースの上面側に支持された切断機本体」に、「グリップ位置を有する把手部11」は「グリップ部を有するハンドル」に、「モータケース10に収納配置された」は「モータハウジングに収容した」に、「バッテリーが取り付けられる電池部12」は「電源としてのバッテリパックが取り付けられるバッテリ取付け台座部」に、「丸鋸刃1」は「鋸刃」に、「切断する電動丸鋸」は「切断加工を行う切断機」に、「把手部11のグリップ位置」は「グリップ部」に、それぞれ相当する。また、刊行物1の上記摘記事項bの記載から「モータ13」は直流電流で駆動されるものであることは明白であるから、引用発明の「モータ13」と本件発明の「DCブラシレスモータ」とは、「DCモータ」である点で共通する。

そうすると、引用発明は、
「被切断材に当接させるベースと、該ベースの上面側に支持された切断機本体を備え、該切断機本体は、グリップ部を有するハンドルと、モータハウジングに収容したDCモータと、電源としてのバッテリパックが取り付けられるバッテリ取付け台座部と、前記DCモータを駆動源として回転する鋸刃を備え、前記ベースの下面側に突き出した前記鋸刃の下部を被切断材に切り込ませて切断加工を行う切断機であって、
前記グリップ部に前記DCモータを起動するためのトリガスイッチが設けられており、
前記ハンドルの後部に、前記バッテリ取付け台座部が設けられており、
前記バッテリ取付け台座部に取り付けたバッテリパックの電力を前記DCモータに供給するための電源供給用ケーブルが、配線通路に配線された、切断機。」
である点で本件発明と一致し、下記の点で本件発明と相違する。

<相違点1>
ハンドルの構成について、本件発明では、「前記グリップ部と、前記モータハウジングの外周面上部より上方で延びて前記グリップ部の前部に至る起立部と、前記モータハウジングの外周面後部より後方で延びて前記グリップ部の後部に至る連結部が側面視略三角形状に形成される」のに対し、引用発明では、把手部11が斜めになるようハウジング3と接続されているが「側面視略三角形状に形成される」ようになっていない点。
<相違点2>
本件発明では、DCモータを「DCブラシレスモータ」とし、「複数のスイッチング素子から構成される三相ブリッジ回路構成」とした「該DCブラシレスモータの動作を制御するモータ制御装置」を備え、電源供給用ケーブルが「連結部の内部に設定した配線通路に配線されて前記モータ制御手段に接続されて」「配線経路としてグリップ部内を除外」し、トリガスイッチから「第1の信号線が前記グリップ部の内部を後方に延びて前記配線通路に配線され」るようにしたのに対し、引用発明ではそのようになっていない点。

5 当審の判断
<相違点1>について
電動丸鋸のような切断機のハンドルについて、「グリップ部と、モータハウジングの外周面上部より上方で延びて前記グリップ部の前部に至る起立部と、前記モータハウジングの外周面後部より後方で延びて前記グリップ部の後部に至る連結部が側面視略三角形状に形成される」ように構成することは、例えば、特開昭59-169387号公報の第3図に記載された丸ノコ(ハウジング(2)の上方に形成された略く字状の取手(1)の構造を参照)や特開2008-229763号公報の図1ないし3に記載されたコードレス丸のこ1(ハウジング2から成りモータ9を収容する胴体部3から起立するハンドル4及び該ハンドル4の下端とハウジング2とを繋ぐ架設部16の構造を参照)として示されているように、従来周知の事項である。そして、このような従来周知のハンドルの構造を引用発明の把手部11に適用し、把手部11に起立部及び連結部を接続させて側面視略三角形状に形成し、本件発明の上記<相違点1>に係る発明特定事項のように構成することは、適宜成し得る設計変更程度の事項に過ぎない。

<相違点2>について
刊行物2には、コードレスタイプの丸鋸の駆動源としてDCブラシレスモータ2を用い(摘記事項g及びhを参照)、該DCブラシレスモータのモータ制御を、6個の半導体スイッチング素子(MOSFETQ1?Q6)を三相ブリッジ形式に接続したインバータ回路部3及び制御回路部30で行う(摘記事項h及びjを参照)ものが記載されている。また、刊行物2には、スイッチトリガ7の操作量に応答した電気信号を、スイッチ部7aからスイッチ回路基板7bを含む制御回路部30及びインバータ回路部3へ入力する電気的接続を形成すること(摘記事項i及びkを参照)も記載されている。そして、丸鋸のような電動工具において、高効率のDCブラシレスモータを採用することは従来周知の技術事項であり、引用発明のコードレスの電動丸鋸においてもモータの高効率化は当然求められるものであるから、引用発明に刊行物2に記載されたDCブラシレスモータ及びそのモータ制御装置を導入することに格別の困難性はないものである。
ここで、引用発明のモータ13に代え、刊行物2に記載されたDCブラシレスモータ2を適用した場合、当然、該DCブラシレスモータのモータ制御を行うインバータ回路部3及び制御回路部30も引用発明のハウジング3内に設けられるものである。そして、刊行物2に記載された電池パック8は、インバータ回路基板によって構成されたインバータ回路へ駆動電力を供給するように電気的接続されており(摘記事項iを参照)、この電気的接続を引用発明に適用する際は、電池部12からモータ13の回転軸と同軸に設けたインバータ回路基板へ駆動電力を供給するように電気的接続するものと認められる。そして、当該電気的接続が電池部12からインバータ回路基板へ駆動電力を直接供給するものであり、抵抗による電力損失を減らすため電力ケーブルを可及的に短くすることが技術常識であることを勘案すると、駆動電力を供給するケーブルについては、最短経路となる連結部の内部を通り、迂回経路となるグリップ部内(把手部11内)を除外する配線経路を選択することは、当業者において自然というべきである。なお、刊行物2の図1には、電池パック8からの大電流導線がスイッチ回路基板7bを経由してインバータ回路基板3へ接続されている態様が示されている。しかしこの経由は、刊行物2に記載された電動工具が、ハンドルハウジング1b内に配線された大電流導線の経路上に、制御回路部30を構成するスイッチ回路基板7bも存在する構造で、電流検出等に利用されたものであって、当該図1に示された構成から、引用発明の電池部12からモータ13までの駆動電力の電源供給用ケーブルを、わざわざメインスイッチ9を経由させて把手部11内を迂回する経路をとらせることになる根拠となるものではない。
また、引用発明のトリガスイッチから出た信号線を、グリップ部(把手部11)の内部を後方に延びて、電池部12付近に設けられた制御回路部及びモータ付近に設けられたインバータ回路に向かい、連結部の内部に設定した配線通路に配線されるようにすることも、当業者が容易に採用し得る事項である。
したがって、引用発明において、刊行物2に記載されたDCブラシレスモータ及びその制御の技術を転用し、本件発明の上記<相違点2>に係る発明特定事項に想到することは、当業者であれば容易であるといえる。

また、本件発明によってもたらされる効果も、引用発明、刊行物2に記載された事項及び従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものではない。

6 むすび
したがって、本件発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、拒絶をすべきものである。
よって、本件出願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-31 
結審通知日 2015-09-01 
審決日 2015-09-14 
出願番号 特願2011-129929(P2011-129929)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B25F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 真  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 栗田 雅弘
平岩 正一
発明の名称 電動工具  
代理人 特許業務法人岡田国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ