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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60C
管理番号 1307199
審判番号 不服2014-22658  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-06 
確定日 2015-10-29 
事件の表示 特願2009-234573「空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月21日出願公開、特開2011- 79469〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成21年10月8日の出願であって、平成25年6月18日付けで拒絶理由が通知され、同年8月23日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成26年1月29日付けで拒絶理由が通知され、同年4月4日付けで意見書が提出されたが、同年9月24日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、同年11月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1?3に係る発明は、平成25年8月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
一対のビードコアを埋設するビード部間にトロイダル状に跨るとともに、前記ビードコアの周りにタイヤ幅方向内側から外側に折り返してなるカーカスプライからなるカーカスを骨格として、該カーカスのクラウン部の径方向外側に、少なくとも1層の傾斜ベルト層を有するベルトおよびトレッドを順に配置した空気入りタイヤであって、
該タイヤを適用リムに装着した状態のタイヤ幅方向断面における、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、当該最外側層の幅方向中心部と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.04以下である空気入りタイヤにおいて、
タイヤの最大幅位置の前記カーカスの幅方向外側に、カーカスプライ補強層を配置し、
前記カーカスの径方向最外側とビードトゥとの間のタイヤ径方向の距離CSHに対する、前記カーカスプライ補強層の幅CRFwの比CRFw/CSHが0.2以上0.6以下であり、
前記カーカスプライ補強層に埋設されている補強素子がタイヤ径方向に対して30°以上90°以下の角度で傾斜していることを特徴とする空気入りタイヤ。」

2.引用文献
原査定において、拒絶理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物は、国際公開第2009/078425号(以下、「引用文献1」という。)であり、周知例として提示された刊行物は、特開2005-67342号公報(以下、「引用文献2」という。)、特開2005-349962号公報(以下、「引用文献3」という。)、特開平6-199113号公報(以下、「引用文献4」という。)、特開2003-237322号公報である。

(1)引用文献1記載の事項及び引用発明
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「請求の範囲
[1] 一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスを骨格として、該カーカスのクラウン部の径方向外側に、少なくとも1層の傾斜ベルト層を有するベルトおよびトレッドを順に配置した空気入りタイヤであって、
該タイヤを適用リムに装着した状態のタイヤ幅方向断面において、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、当該最外側層の幅方向中心部と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.04以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。
・・・
[9] 前記カーカスはビードコアにてタイヤの幅方向内側から外側へ巻き返して延びる折り返し部を有し、該折り返し部の端末とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離CSEhが、タイヤの最大幅位置にタイヤの回転軸と平行に引いた線分とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離SWhの0.5倍以下であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。」

「[0020]
以下、図面を参照して、本発明を具体的に説明する。
図1に、本発明に従うタイヤについて、その幅方向断面を示す。同図において、符号1は一対のビードコアであり、これらビードコア1間にトロイダル状に跨る、コードのラジアル配列プライからなるカーカス2を骨格として、該カーカス2のクラウン部の径方向外側に、タイヤの赤道面Oに対して傾斜した向きに延びるコードの多数本をゴムで被覆した、少なくとも1層、図示例で2層の傾斜ベルト層3aおよび3bを配置し、さらに傾斜ベルト層3aの径方向外側に、タイヤの赤道面Oに沿って延びるコードの多数本をゴムで被覆した、少なくとも1層、図示例で1層の周方向ベルト層4を配置し、これらベルトの径方向外側にトレッド5を配置してなる。なお、傾斜ベルト層は1層でも構わないが、その際には、少なくとも1層の周方向ベルト層との組み合わせにてベルトを構成することが好ましい。
[0021]
かようなタイヤ6は、適用リム7に装着されて使用に供される。ここで、該タイヤ6を適用リム7に装着した状態のタイヤ幅方向断面において、図1に示すように、前記傾斜ベルト層の最外側層3aの幅BWに対する、当該最外側層3aの幅方向中心部(赤道面O)と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.04以下であることが肝要である。
なお、ここでいう傾斜ベルト層とは、カーカスの最大幅CSWの0.6倍以上の幅を有するものである。」

[図1]から、ビードコア1が、ビード部に埋設されていることを看取しうる。

段落[0062]の[表1-1]には、実施例1?55として、カーカスの径方向最外側とビードトゥとの間のタイヤ径方向の距離CSHが114mmであり、タイヤの断面高さSHが127mmであることが記載されている。

上記エから、CSHに対するSHの比SH/CSHが、約1.11であるといえる。
上記記載事項及び[図1]の記載からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「一対のビードコアを埋設するビード部間にトロイダル状に跨るとともに、前記ビードコアにてタイヤ幅方向内側から外側へ巻き返して延びる折り返し部を有した、コードのラジアル配列プライからなるカーカスを骨格として、該カーカスのクラウン部の径方向外側に、少なくとも1層の傾斜ベルト層を有するベルトおよびトレッドを順に配置した空気入りタイヤであって、
該タイヤを適用リムに装着した状態のタイヤ幅方向断面において、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、当該最外側層の幅方向中心部と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.04以下である空気入りタイヤにおいて、
カーカスの径方向最外側とビードトゥとの間のタイヤ径方向の距離CSHに対する、タイヤの断面高さSHの比SH/CSHが、約1.11である
空気入りタイヤ。」

(2)引用文献2記載の事項
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、空気入りタイヤ、特に乗り心地性、タイヤ重量及び転がり抵抗を維持しつつ、サイド部の耐カット性を向上させた空気入りタイヤに関するものである。」

「【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の空気入りタイヤは、一対のビード部及び一対のサイド部と、両サイド部に連なるトレッド部とを有し、前記一対のビード部間にトロイド状に延在して、これら各部を補強するカーカスとを備えた空気入りタイヤにおいて、前記サイド部に3軸織物を配置したことを特徴とする。
【0014】
従来のコード含有シート(トリート)のような1方向補強シートは、強度の強い方向と弱い方向が明確であり、例えば、縁石とリムとに挟まれるような変形を充分に抑制することができなかった。これに対し、本発明のタイヤに用いる3軸織物は、等方的な剛性を有するため、強度の弱い方向がなく、該3軸織物をタイヤのサイド部に配置することで、サイド部を強度の弱い方向なしに補強でき、その結果、縁石とリムとに挟まれた場合のサイド部の3次元的な変形を効果的に抑制することができる。なお、本発明のタイヤにおいては、サイド部のゲージを厚くする必要が無いため、タイヤ重量を増加させることが無く、乗り心地性及び転がり抵抗を維持することができる。更に、サイド部の強度が向上しているため、縁石や岩石への衝突によるサイドカットも防止することができる。
【0015】
上記3軸織物は、図1に示すように、2種の縦糸(X軸糸1X、Y軸糸1Y)と横糸(Z軸糸1Z)とが約60°の角度で交差した状態で織られた2D-3軸織物である。該3軸織物は、多方向に充分な強度・剛性を有するため、サイド部に配置することで、タイヤの耐サイドカット性を改善することができる。
【0016】
本発明の空気入りタイヤにおいては、前記3軸織物を少なくともタイヤの最大幅位置に配置するのが好ましい。3軸織物をタイヤの最大幅位置に配置することで、縁石や岩石への衝突によるサイドカットを確実に抑制することができる。
【0017】
本発明の空気入りタイヤにおいては、前記3軸織物の幅が、タイヤ断面高さの20?80%であるのが好ましい。3軸織物の幅がタイヤ断面高さの20%未満では、サイド部の耐カット性を向上させる効果が小さく、80%を超えると、タイヤの転がり抵抗及び重量が増加し、乗り心地が悪化することがある。
【0018】
本発明の空気入りタイヤにおいては、前記3軸織物をサイド部のカーカスのタイヤ幅方向内側及び外側のいずれに配置してもよいが、カーカスのタイヤ幅方向外側に配置するのが好ましい。3軸織物をカーカスのタイヤ幅方向外側に配置することで、カーカスにカットが発生するのを抑制することができる。」

「【0023】
図示例のタイヤ(タイヤ最大幅WMAX)は、リム8に装着された状態において、サイド部3のタイヤ最大幅位置Pを含むように3軸織物9がそれぞれ配置されている。図中、3軸織物9の幅hは、タイヤの断面高さHの20?80%であり、乗り心地性、タイヤ重量及び転がり抵抗を維持しつつ、サイド部の耐カット性が向上している。」

(3)引用文献3記載の事項
引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、空気入りラジアルタイヤに関し、特に、3軸織物を含むコード補強層を設けて操縦安定性を向上させた空気入りラジアルタイヤに関する。」

「【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る空気入りラジアルタイヤの特徴は、ビードコア及びビードフィラーを含む1対のビード部と、前記ビードコアの周りにタイヤ軸方向内側からタイヤ軸方向外側に折り返されたカーカスプライと、前記カーカスプライのタイヤ半径方向外側に配置されたベルト層と、前記ビード部のタイヤ半径方向外側かつ前記ベルト層のタイヤ軸方向端部のタイヤ半径方向内側の領域内に配置されており、互いに交差する3つの軸方向に沿って配列するコードを互いに織り合わせた3軸織物を含むコード補強層とを有することを要旨とする。
【0008】
かかる発明によれば、周囲のゴムと比較して3つの軸方向に高い剛性を有する構造の3軸織物を含むコード補強層を用いるため、タイヤの転動時に発生するタイヤの変形を抑制し、操縦安定性の向上や乗り心地の向上やタイヤの転がり抵抗の低減を図ることができる。」

「【0013】
また、本発明において、コード補強層が、カーカスプライに隣接して配置されていてもよい。また、本発明において、コード補強層のタイヤ半径方向幅が、タイヤ断面高さの7%乃至40%であるように構成されていてもよい。
【0014】
また、本発明において、コード補強層が、タイヤ最大幅部を含む領域に配置されていてもよい。・・・」

「【0024】
コード補強層28を構成する3軸織物は、図2に示すように、同一平面内で、X軸(第1の軸)に沿って配列されたコード30Xと、Y軸(第2の軸)に沿って配列されたコード30Yと、Z軸(第3の軸)に沿って配列されたコード30Zとを互いに織り合わせたものである。各コード30は、その交差部において、上下にかつ互い違いに順次交差している。
【0025】
ここで、Y軸及びZ軸は、X軸に対して60°以下の角度をなすように構成されていることが好ましい。また、コード補強層28は、X軸がタイヤ周方向に沿うように配置されることが好ましい。」

「【0038】
実施例1?4及び比較例1?4で用いられたタイヤサイズは、いずれも「215/60 R16」である。すなわち、断面幅(タイヤ幅)が約215mmであり、偏平比(タイヤ幅に対するタイヤ断面高さの比の100倍)が約60%である。」

「【0041】
したがって、実施例1で用いられた3軸織物のコード補強層のインサート幅はタイヤ断面高さSHの約7.8%であり、実施例2で用いられた3軸織物のコード補強層のインサート幅はタイヤ断面高さSHの約11.6%であり、実施例3で用いられた3軸織物のコード補強層のインサート幅はタイヤ断面高さSHの約23.3%であり、実施例4で用いられた3軸織物のコード補強層のインサート幅はタイヤ断面高さSHの約38.8%であり、比較例4で用いられた3軸織物のコード補強層のインサート幅はタイヤ断面高さSHの約42.6%である。」

【図1】、【図3】から、コード補強層28はカーカスプライ12のタイヤ幅方向外側に配置されることを看取しうる。

(4)引用文献4記載の事項
引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トレッドに埋設されたベルト層と、トレッド及びサイドウォールを貫通して延び、両端がビード部で巻き上げられたカーカスとを備え、軽量化を図るとともに耐外傷性を向上させた空気入りタイヤに関する。」

「【0009】一対のサイドウォール3A,3Bの内、空気入りタイヤ1を車両に装着する際に車両外側に位置するサイドウォール3Aにおいて、カーカス6の外側にカーカス6に沿って半径方向内側に延びる芳香族ポリアミド繊維または脂肪族ポリアミド繊維(例えば、6-6ナイロン、6-ナイロン等のナイロン)から成るポリアミド繊維層8を設け、該ポリアミド繊維層8のトレッド側端部8Aと、ベルト層7の端部即ちベルト層7を構成する2枚のベルト7A,7Bの内の最も半径方向内側に位置する第1ベルト7A(通常、各ベルトの間で最大幅)の端部71Aとの間の距離dを0より大きく15mmよりも小さくしている(0<d<15mm)。
【0010】ポリアミド繊維層8とベルト層7即ちベルト7Aとが重なると、ベルト層7の左右両端における曲率並びに端部の剛性が変化してタイヤのユニフォミティ(特にLFV、コニシティ)に悪影響を及ぼすから、ポリアミド繊維層8のトレッド側端部8Aとベルト7Aの幅方向端部71Aとの間の距離dを0より大としている(d>0)。さらに、少なくともサイドウォール3Aのゴムゲージを薄肉化した部分を確実にポリアミド繊維層8で覆って補強するために、ポリアミド繊維層8のトレッド側端部8Aとベルト7Aの幅方向端部71Aとの間の距離dを15mm未満とする(d<15mm)。したがって、ポリアミド繊維層8のトレッド側端部8Aとベルト7Aの幅方向端部71Aとの間の距離dを0より大で、15mm未満とする(0<d<15mm)。」

「【0013】図4において、上述の各ポリアミド繊維層8を構成するポリアミド繊維コード80がタイヤ半径方向に対して成す角度である繊維コード角θを30?90度としている。・・・」

【図1】?【図3】から、ポリアミド繊維層8はタイヤ最大幅位置に配置されていることを看取しうる。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「コードのラジアル配列プライ」は前者の「カーカスプライ」に相当するので、後者の「一対のビードコアを埋設するビード部間にトロイダル状に跨るとともに、前記ビードコアにてタイヤ幅方向内側から外側へ巻き返して延びる折り返し部を有した、コードのラジアル配列プライからなるカーカス」は、前者の「一対のビードコアを埋設するビード部間にトロイダル状に跨るとともに、前記ビードコアの周りにタイヤ幅方向内側から外側に折り返してなるカーカスプライからなるカーカス」に相当する。
後者の前記カーカスを「骨格として、該カーカスのクラウン部の径方向外側に、少なくとも1層の傾斜ベルト層を有するベルトおよびトレッドを順に配置した空気入りタイヤ」は、前者の前記カーカスを「骨格として、該カーカスのクラウン部の径方向外側に、少なくとも1層の傾斜ベルト層を有するベルトおよびトレッドを順に配置した空気入りタイヤ」に相当する。
後者の「該タイヤを適用リムに装着した状態のタイヤ幅方向断面において、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、当該最外側層の幅方向中心部と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.04以下」とすることは、前者の「該タイヤを適用リムに装着した状態のタイヤ幅方向断面における、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、当該最外側層の幅方向中心部と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.04以下」とすることに相当する。
そうすると、両者は、
「一対のビードコアを埋設するビード部間にトロイダル状に跨るとともに、前記ビードコアの周りにタイヤ幅方向内側から外側に折り返してなるカーカスプライからなるカーカスを骨格として、該カーカスのクラウン部の径方向外側に、少なくとも1層の傾斜ベルト層を有するベルトおよびトレッドを順に配置した空気入りタイヤであって、
該タイヤを適用リムに装着した状態のタイヤ幅方向断面における、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、当該最外側層の幅方向中心部と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.04以下である空気入りタイヤ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点〕
本願発明は、「タイヤの最大幅位置のカーカスの幅方向外側に、カーカスプライ補強層を配置し、カーカスの径方向最外側とビードトゥとの間のタイヤ径方向の距離CSHに対する、カーカスプライ補強層の幅CRFwの比CRFw/CSHが0.2以上0.6以下であり、カーカスプライ補強層に埋設されている補強素子がタイヤ径方向に対して30°以上90°以下の角度で傾斜している」との事項を有しているのに対して、引用発明は、そのような事項を有していない点。

上記相違点について以下検討する。
〔相違点について〕
引用文献2には、空気入りタイヤの最大幅位置でカーカスのタイヤ幅方向外側に、補強のための3軸織物を配置し、3軸織物の幅はタイヤ断面高さの20?80%であり、3軸織物は2種の縦糸(X軸糸1X、Y軸糸1Y)と横糸(Z軸糸1Z)とが約60°の角度で交差した状態で織られたものであることが記載されている(上記2.(2)を参照)。
引用文献3には、空気入りラジアルタイヤのタイヤ最大幅部を含む領域でカーカスプライ12のタイヤ幅方向外側にコード補強層28を配置し、コード補強層28はタイヤ半径方向幅がタイヤ断面高さの7%?40%であるように構成され、コード補強層28は3つの軸方向に沿って配列するコードを互いに織り合わせた3軸織物からなり、X軸がタイヤ周方向に沿うように配置され、Y軸及びZ軸はX軸に対して60°以下の角度、すなわち、Y軸及びZ軸はタイヤ径方向に対して30?90°をなすように構成されたものであることが記載されている(上記2.(3)を参照)。
引用文献4には、空気入りタイヤのタイヤ最大幅位置でカーカス6の外側に補強のためのポリアミド繊維層8を配置し、ポリアミド繊維層8はポリアミド繊維コード80がタイヤ半径方向に対して成す角度である繊維コード角θを30?90度としたものであることが記載されている(上記2.(4)を参照)。
そうすると、空気入りタイヤのタイヤ最大幅位置のカーカスの幅方向外側に補強層を配置することは、引用文献2?4に記載されており、当該補強層の幅をタイヤ断面高さの少なくとも20?40%程度とすることは、引用文献2、3各々に記載されており、また、当該補強層を構成する素子であるコードや繊維を、タイヤ径方向に対して30?90°の角度で傾斜させることは、引用文献3、4の各々に記載されており、何れも周知の事項といえる。
引用発明は、引用文献1の[図3]に示されているように、その最大幅位置において大きく変形するものであり、当該変形に基づいて種々の弊害が発生することは容易に予測することができ、その対策として最大幅位置の剛性を増すようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。引用発明のタイヤの最大幅位置に、剛性を増すように補強層を設けることは、十分に動機付けがあるといえる。
そうすると、引用発明に、上記周知の、タイヤ最大幅位置のカーカスの幅方向外側に補強層を設けるとの事項を適用することは、当業者が容易に想到し得ることといえ、併せて、補強層に関する周知の事項である、幅をタイヤ断面の高さに対して少なくとも20?40%とする事項、構成する素子がタイヤ径方向に対して30?90°の角度で傾斜しているとの事項を適用することも、補強層の剛性を調整する観点から見て、当業者が容易に想到し得るといえる。そして、引用発明に、補強層の幅に関する事項を適用した結果、カーカスの径方向最外側とビードトゥとの間のタイヤ径方向の距離CSHに対する、補強層の幅CRFwの比CRFw/CSHは、約0.222?0.444となるものである。
したがって、引用発明に、周知の事項を適用し、相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることといえる。

そして、本願発明の奏する作用効果を検討しても、引用発明及び周知の事項から、当業者が予測しうる範囲内のものであって、格別のものとはいえない。

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-31 
結審通知日 2015-09-01 
審決日 2015-09-14 
出願番号 特願2009-234573(P2009-234573)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 耕之助  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 平田 信勝
和田 雄二
発明の名称 空気入りタイヤ  
代理人 山口 雄輔  
代理人 杉村 憲司  

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