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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E06B
管理番号 1307209
審判番号 不服2015-3657  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-26 
確定日 2015-10-29 
事件の表示 特願2011-27661「室内外差圧解消装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年1月12日出願公開、特開2012-7464〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成23年 2月10日 出願(国内優先権主張 平成22年5月25日)
平成26年 7月29日 拒絶理由通知(同年8月5日発送)
平成26年11月25日 拒絶査定(同年12月2日送達)
平成27年 2月26日 審判請求書・手続補正書
平成27年 7月21日 上申書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年2月26日付けの手続補正を却下する。

1 補正の内容・目的
平成27年2月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1を次のように補正することを含むものである。
(補正前)
「キー又はサムターンの回転操作によりデッドボルトが錠ケースのフロントから進退して施解錠する施錠装置と、室内外を連通する空気流通路と、該空気流通路を開閉する開閉板とを備えた扉に設けられる室内外差圧解消装置であって、
前記施錠装置と前記開閉板とを連結し、前記キー又はサムターンの回転操作に連動して軸方向に移動して前記開閉板を移動させるロッドを備え、該ロッドは、前記施錠装置の施錠動作に連動して前記空気流通路を閉鎖する方向に前記開閉板を移動させる一方、前記施錠装置の解錠動作に連動して前記空気流通路を開放する方向に前記開閉板を移動させることを特徴とする室内外差圧解消装置。」
(補正後)
「キー又はサムターンの回転操作によりデッドボルトが錠ケースのフロントから進退して施解錠する施錠装置と、室内外を連通する空気流通路と、該空気流通路を開閉する開閉板とを備えた扉に設けられる室内外差圧解消装置であって、
前記施錠装置と前記開閉板とを連結し、前記キー又はサムターンの回転操作に連動して軸方向に移動して前記開閉板を移動させるロッドを備え、該ロッドは、前記施錠装置の施錠動作に連動して前記空気流通路を閉鎖する方向に前記開閉板を移動させる一方、前記施錠装置の解錠動作に連動して前記空気流通路を開放する方向に前記開閉板を移動させ、
前記開閉板は、前記空気流通路の閉鎖時と開放時の両方において、前記扉の内部空間に収納されていることを特徴とする室内外差圧解消装置。」

上記補正事項は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「開閉板」について、「前記空気流通路の閉鎖時と開放時の両方において、前記扉の内部空間に収納されている」という事項を付加して限定したものであり、かつ補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、
本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものであり、また、新規事項を追加するものではないから、同法第17条の2第3項の規定を満たしている。
そこで、本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 独立特許要件違反(特許法第29条第2項違反)
(1)刊行物
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平11-324519号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の記載がある(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(ア) 「【請求項1】 扉に装備された錠の操作ハンドルを回転操作すると、錠側の昇降棒の移動に対応して室内外気圧差解消窓孔用開閉板が開放する建物等の扉用室内外気圧差解消装置に於いて、前記扉1の一側壁1aに小切欠開口部11を形成し、この小切欠開口部11に当てがうように上下方向に摺動可能な作動部材6を備えた固定板5を該一側壁1aに固着し、かつ、前記作動部材6の背面側に突出状態に設けた係止腕18を錠2側の昇降棒3に連結状態に係止させ、一方、作動部材6の表側に突出状態に設けた駆動係合杆28と、一端部が軸着された室内外気圧差解消窓孔8用開閉板7の下端部に固着された案内板9の斜め方向の案内係合部38とを互いに係合させことを特徴とする建物等の扉用室内外気圧差解消装置。」

(イ) 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、まず第1の目的は、室内外の気圧差を生じさせている建物等の開閉を容易にすることを目的とする。具体的には、錠の操作ハンドルを操作すると、錠側の昇降棒の移動に対応して作動部材及び室内外気圧差解消窓孔用開閉板が円滑に移動し、よって、建物等の室内外の気圧差を迅速に解消させることができることである。・・・」

(ウ) 「【0008】
【発明の実施の形態】まず、図1乃至図7に示す第1実施例の室内外気圧差解消装置Xの主要部材或いは装置について説明する。1は建物等の扉、例えば建物に取付けられた防音或いは防火用扉、トンネル立坑に於けるエアタイト付気密扉等の扉である。2は扉1に取付けられた錠(例えばグレモン錠)、3は錠2の操作ハンドル4の回動操作によって上下方向に移動する昇降棒、5は錠2を基準にし、本実施例では扉1の上部に固定された固定板、6は固定板に上下動可能に取付けられ、かつ、前記昇降棒3と連動する作動部材、7は扉1に形成された室内外気圧差解消用窓孔8を有する回動式開閉板、9は回動式開閉板の一側面に固定的に取付けられ、かつ、前記作動部材と係合する案内板である。
【0009】次に上記主要部材を中心に説明する。扉1は、例えば高層マンションやトンネル立坑の建物等の室内の出入り口に軸着される。この種の扉1は、普通一般に金属で出来ており、かつ、中空構造体である。
【0010】錠2は扉1の開放側端部の中央部に取付けられ、その錠箱は錠ケース2aとフロント板2bから成る。そして、錠箱には内外に操作ハンドル4、4が取付けられる。また錠箱には、特に図示しないが操作ハンドル4によって作動する駆動板や上下の昇降棒3、3用の牽引手段が内装されている。操作ハンドル4の握り部4aは、本実施例では扉1の閉鎖時には下方(真下)を指向し、例えば操作ハンドル4を反時計方向へ60度回転させると、上下の昇降棒3、3は錠箱内の駆動板や牽引手段を介して錠2方向へ移動する。したがって、図1は扉1の閉鎖時の状態であり、この場合錠2のデッドボルト10が施錠(ロック)方向へ突出していると共に、上下の昇降棒3、3もそれぞれ施錠(ロック)方向へ移動している。つまり、扉1は3点で施錠されている。また固定板5に上下方向にスライド可能に装着された作動部材6は、本実施例では上方の方に位置している。そのため、案内板9を介して回転する開閉板7は、窓孔8を閉じている。」

(エ) 「【0023】次に開閉板7の開放について説明する。ある意味では室内を仕切るこの種の扉1は、例えば火災が発生した場合室内の負圧化現象が発生し、このため容易に開けることができない時がある。このような時操作ハンドル4を回転し、開閉板7を開放する。前述したように図1は扉1が閉鎖状態の時である。この場合開閉板7は窓孔8を閉鎖している。
【0024】そこで、図6で示すように操作ハンドル4を反時計方向に約60度回転すると、上下の昇降棒3、3は錠2側へ牽引される。そこで、上方の昇降棒3が矢印A側に移動すると、開閉板7は蝶板35を支点に上方から矢印B側に約20度回転する。すなわち、昇降棒3の移動と共に作動部材6も固定板5をスライドするので、作動部材6の駆動係合杆28がそのまま真下に下降する。その結果、開閉板7の案内板9はその案内長孔38を介して駆動係合杆28の係合杆部30に押し下げられる格好となり、蝶板35を支点に上方から回転開放する。そこで、外気が窓孔8を通って室内側に流れ込み、室内の負圧状態が解消される。
【0025】
【実施例】第1実施例の室内外気圧差解消装置Xでは、室内外気圧差解消用窓孔8が扉1の上部に形成されているので、固定板5、作動部材6、案内板9等の主要部材を扉1の上部に配設している。したがって、室内外気圧差解消用窓孔8が扉1の下部に形成されている場合には、当然、扉1の下部に配設される。また前記作動部材6に於いて、例えば前面スライド板15と支持ブロック20を1つの部材となるように形成しても良い。作動部材6は、要は扉1に固定前の固定板5にスライド可能に取付けることができる形態であれば良い。また、案内板9の案内長孔38は、案内係合部の一例であるから、案内長孔38の機能を有するガイド用切欠部、ガイド用係合突起、ガイド用係合溝等も当業者の均等の範囲に含まれる。」

(オ) 上記(ウ)を参照して図6をみると、操作ハンドル4の回転操作によりデッドボルト10が錠ケース2aのフロント板2bから進退して施解錠する錠2が設けられていることが明らかである。

(カ) これら(ア)ないし(オ)によると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認められる。
「高層マンション等の室内の出入り口に軸着される扉1に装備された錠の操作ハンドル4の回転操作によりデッドボルト10が錠ケース2aのフロント板2bから進退して施解錠する錠2と、錠2の操作ハンドル4の回動操作によって上下方向に移動する昇降棒3と、錠2を基準にし、扉1の上部に固定された固定板5と、固定板に上下動可能に取付けられ、かつ、前記昇降棒3と連動する作動部材6と、扉1に形成された室内外気圧差解消用窓孔8を有する回動式開閉板7と、回動式開閉板の一側面に固定的に取付けられ、かつ、前記作動部材と係合する案内板9とを備えた扉用室内外気圧差解消装置であって、
扉1の閉鎖時の状態の場合、錠2のデッドボルト10が施錠(ロック)方向へ突出していると共に、上下の昇降棒3、3もそれぞれ施錠(ロック)方向へ移動していて、作動部材6、案内板9を介して回転する開閉板7は、窓孔8を閉じており、一方、操作ハンドル4を反時計方向へ60度回転すると、上下の昇降棒3、3は錠2側へ牽引され、上方の昇降棒3が移動すると、開閉板7は蝶板35を支点に上方から回転し、外気が窓孔8を通って室内側に流れ込み、室内の負圧状態が解消される、室内外気圧差解消装置。」

イ 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平9-78958号公報(以下「刊行物2」という。)には、次の記載がある。

(ア) 「【請求項1】 扉の内外少なくとも一方に設けた操作部材によって上下方向に被動されるロッドと、扉の下框に沿って水平方向に移動可能な作動部材と、前記ロッドの上下運動を水平運動に変換して前記作動部材に伝達する第1の運動変換機構と、下降に伴って下框と床面との間の隙間を遮蔽する上下動可能な遮蔽部材と、前記作動部材の水平運動を上下運動に変換して前記遮蔽部材に伝達する第2の運動変換機構とを備えて成ることを特徴とする扉下部の隙間遮蔽装置。
【請求項2】 省略。
【請求項3】 前記操作部材を扉錠のデッドボルトに対する施解錠用の操作部材とし、かつ、前記デッドボルトの施錠操作に連動して前記遮蔽部材を隙間遮蔽の状態に切り換えさせる第3の運動変換機構を備えた請求項1記載の扉下部の隙間遮蔽装置。」

(イ) 「【0030】図9(A),(B)に、上記のロッド15を上下方向に被動(当審注:「移動」の誤記と認める。)させる操作機構の別の実施の形態を示している。この実施の形態では、扉錠38のデッドボルト39に対する施解錠用の操作部材、即ち、サムターンやキーにより回動されるシリンダを操作部材6にする一方、前記デッドボルト39の施錠操作に連動して遮蔽部材22を隙間遮蔽の状態に切り換えさせる第3の運動変換機構40を設けた点に特徴を有する。」

(ウ) これら(ア)及び(イ)によると、刊行物2には、次の事項が開示されていると認められる。
「扉に設けた操作部材によって上下方向に被動されるロッドと、前記ロッドの下降に伴って下框と床面との間の隙間を遮蔽する上下動可能な遮蔽部材を備え、前記操作部材を扉錠のデッドボルトに対する施解錠用の操作部材とし、かつ、前記デッドボルトの施錠操作に連動して前記遮蔽部材を隙間遮蔽の状態に切り換えさせる扉下部の隙間遮蔽装置において、ロッド15を上下方向に移動させる操作機構として、扉錠38のデッドボルト39に対する施解錠用の操作部材、即ち、サムターンやキーにより回動されるシリンダを操作部材6にする一方、前記デッドボルト39の施錠操作に連動して遮蔽部材22を隙間遮蔽の状態に切り換えさせること。」

(2)対比
補正発明と刊行物1発明とを対比する。
ア 刊行物1発明の「高層マンション等の室内の出入り口に軸着される」「扉用」の「室内外気圧差解消装置」は、補正発明の「扉に設けられる」「室内外差圧解消装置」に相当し、以下同様に、
「フロント板2b」は、「フロント」に、「錠2」は、「施錠装置」に、「回動操作によって上下方向に移動する昇降棒3」は、「回転操作に連動して軸方向に移動」する「ロッド」に、「室内外気圧差解消用窓孔8」は、「室内外を連通する空気流通路」に、「回動式開閉板7」は「開閉板」に、それぞれ相当する。

イ また、刊行物1発明の「錠2」と「回動式開閉板7」との関係は、「操作ハンドル4の回転操作によりデッドボルト10が錠ケース2aのフロント板2bから進退して施解錠する」「錠2の操作ハンドル4の回動操作によって上下方向に移動する昇降棒3」と、「錠2を基準にし、扉1の上部に固定された固定板5」「に上下動可能に取付けられ」る「作動部材6」とが「連動」し、「前記作動部材と係合する案内板9」が「回動式開閉板の一側面に固定的に取付けられ」ているから、補正発明でいう「施錠装置」と「開閉板」「とを連結し」に相当するといえる。

ウ さらに、刊行物1発明において、「操作ハンドル4を反時計方向へ60度回転すると、上下の昇降棒3、3は錠2側へ牽引され、上方の昇降棒3が移動すると、開閉板7は蝶板35を支点に上方から回転」するから、補正発明の「開閉板を移動させるロッド」を備えているといえる。

エ そして、刊行物1発明で「扉1の閉鎖時の状態の場合、錠2のデッドボルト10が施錠(ロック)方向へ突出していると共に、上下の昇降棒3、3もそれぞれ施錠(ロック)方向へ移動していて、作動部材6、案内板9を介して回転する開閉板7は、窓孔8を閉じて」いるのであるから、補正発明でいう「ロッドは、前記施錠装置の施錠動作に連動して前記空気流通路を閉鎖する方向に前記開閉板を移動させる」に相当することになり、また、刊行物1発明の「操作ハンドル4を反時計方向へ60度回転すると」は解錠動作であるから、「上下の昇降棒3、3は錠2側へ牽引され、」「開閉板7は回転開放し、外気が窓孔8を通って室内側に流れ込み」は、補正発明でいう「施錠装置の解錠動作に連動して」「空気流通路を開放する方向に前記開閉板を移動させ」に相当するといえる。

オ したがって、両者は、以下の点で一致している。
(一致点)
「回転操作によりデッドボルトが錠ケースのフロントから進退して施解錠する施錠装置と、室内外を連通する空気流通路と、該空気流通路を開閉する開閉板とを備えた扉に設けられる室内外差圧解消装置であって、
前記施錠装置と前記開閉板とを連結し、前記回転操作に連動して軸方向に移動して前記開閉板を移動させるロッドを備え、該ロッドは、前記施錠装置の施錠動作に連動して前記空気流通路を閉鎖する方向に前記開閉板を移動させる一方、前記施錠装置の解錠動作に連動して前記空気流通路を開放する方向に前記開閉板を移動させる室内外差圧解消装置。」

サ そして、以下の各点で相違している。
(相違点1)
補正発明の開閉板の操作は、キー又はサムターンの回転操作により行っているのに対し、
刊行物1発明の開閉板の操作は、操作ハンドルの回転操作により行っている点。
(相違点2)
補正発明の開閉板は、空気流通路の閉鎖時と開放時の両方において、扉の内部空間に収納されているのに対し、
刊行物1発明の開閉板は、そのようになっていない点。

(3)判断
ア 相違点1について
刊行物2には、「扉に設けた操作部材によって上下方向に被動されるロッドと、前記ロッドの下降に伴って下框と床面との間の隙間を遮蔽する上下動可能な遮蔽部材(補正発明の「開閉板」に相当。)を備え、前記操作部材を扉錠のデッドボルトに対する施解錠用の操作部材とし、かつ、前記デッドボルトの施錠操作に連動して前記遮蔽部材を隙間遮蔽の状態に切り換えさせる扉下部の隙間遮蔽装置において、ロッド15を上下方向に移動させる操作機構として、扉錠38のデッドボルト39に対する施解錠用の操作部材、即ち、サムターンやキーにより回動されるシリンダを操作部材6にする一方、前記デッドボルト39の施錠操作に連動して遮蔽部材22を隙間遮蔽の状態に切り換えさせること」(上記(1)ウを参照。以下「刊行物2記載事項」という。)が記載されている。
そして、刊行物1発明と刊行物2記載事項は、ともに扉に設けられた開閉板(遮蔽部材)を、開扉時に開放状態にする開閉機構に関するものであるから、刊行物1発明において、刊行物2記載事項の遮蔽部材の操作をサムターンやキーによる回動操作で行うという構成を、操作ハンドルの回転操作により行うことに替えて採用することは、当業者が容易になし得ることにすぎない。

イ 相違点2について
一般的に、扉に設けられた空気流通路を開閉するガラリ等の開閉装置において、開閉板が、空気流通路の閉鎖時にも開放時にも扉の両表面より突出しないよう構成したものは、周知の技術にすぎない(必要ならば、特開2002-372267号公報の段落【0014】、特開2002-272866号公報の図2及び図3、特開2000-8726号公報の段落【0020】ないし【0023】、図6及び図7を参照。)。
そして、刊行物1発明と上記周知の技術は、ともに扉の空気流通路の開閉機構に関するものであるから、当該周知の技術を刊行物1発明に採用し、上記相違点2に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることであり、その際、上記周知例として提示した特開2002-372267号公報に記載のものの如く、開閉板を扉の内部空間に収納することは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

なお、請求人は、平成27年7月21日付けの上申書において、請求項1の補正案を提示しているが、該補正案において限定している「開閉板は、・・・室内側及び室外側の両方を少なくとも部分的に前記扉の壁面によって覆われる空間に収納されている」という事項は、上記周知例として提示した特開2002-372267号公報に開示されている。

ウ 補正発明の効果について
補正発明の作用効果も、刊行物1発明、刊行物2記載事項及び周知の技術から当業者が予測し得る程度のものである。

エ 小括
よって、補正発明は、当業者が刊行物1発明、刊行物2記載事項及び周知の技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明
1 本願発明
平成27年2月26日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1」において、本件補正前の請求項1として示したとおりのものである。

2 対比・判断
本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに「開閉板」について、「前記空気流通路の閉鎖時と開放時の両方において、前記扉の内部空間に収納されている」という事項を付加して限定したものが補正発明であるから、本願発明と刊行物1発明とを対比すると、両者は、上記相違点1で相違し、その余の点で一致する。
そして、上記相違点1については、上記第2、2(3)アにおいて検討したとおりであるから、結局、本願発明は、当業者が刊行物1発明及び刊行物2記載事項に基いて、容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が刊行物1発明、刊行物2記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-31 
結審通知日 2015-09-01 
審決日 2015-09-14 
出願番号 特願2011-27661(P2011-27661)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 泰利佐藤 美紗子  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 住田 秀弘
中田 誠
発明の名称 室内外差圧解消装置  
代理人 北村 周彦  

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