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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1307221
審判番号 不服2014-9061  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-15 
確定日 2015-10-27 
事件の表示 特願2011-526099「テレビ用モジュラー式フレキシブルソフトウェアアーキテクチャ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月11日国際公開、WO2010/027687、平成24年 1月26日国内公表、特表2012-502357〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件請求に係る出願(以下、「本願」と記す。)は、
2008年9月3日(以下、「優先日」と記す。)付けのアメリカ合衆国での出願、及び、
2008年11月20日付けのアメリカ合衆国での出願を基礎とした優先権主張を伴った、
2009年8月20日を国際出願日とする出願であって、
平成23年3月3日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出され、
平成23年5月6日付けで特許法第184条の4第1項の規定による翻訳文が提出され、
平成24年3月7日付けで審査請求がなされ、
平成25年7月8日付けで拒絶理由通知(平成25年7月10日発送)がなされ、
平成25年12月10日付けで意見書が提出されるとともに、
同日付けで手続補正書が提出され、
平成26年1月8日付けで拒絶査定(平成26年1月15日謄本発送、送達)がなされたものである。

本件審判請求は、「原査定を取り消す 本発明はこれを特許すべきものとするとの審決を求める。」との趣旨で
平成26年5月15日付けで審判請求されたものであって、
同日付けで手続補正書が提出されたものである。
なお、平成26年7月10日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされている。


2.本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」と言う。)は、上記平成26年5月15日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書、図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

<本願発明>
「ソフトウェアで実現されるテレビ性能アーキテクチャを実装するプロセッサ回路(20)であって、
アプリケーションロジック調整ユニット(ALCU)(34)と、
前記ALCU(34)と通信する複数のプラグインモジュール(PIM)(36)であって、それぞれが所望のテレビシステム性能を表し、ここでALCU(34)は情報をPIMの間で伝達する、PIMと、
を含むディスプレイシステムであって、
前記ALCU(34)と通信するPIMと協働する新たなPIMを前記ALCU(34)に追加することができ、
第1の性能を与えるPIM(36)は、第1のモデル系列内で第1のアプリケーションの開始の判定を実行し、第1の性能を与えるPIM(36)は、第2のモデル系列内で第2のアプリケーションの開始の判定を実行し、前記第2のアプリケーションの開始の判定は前記第1のアプリケーションの開始の判定とは異なるものであり、
第1の性能を与えるPIM(36)は、第1のモデル系列において第1のイベントを登録し、第1の性能を与えるPIMは、第2のモデル系列において第2のイベントを登録し、前記第2のイベントは前記第1のイベントとは異なるものである、
ことを特徴とする、ディスプレイシステム。」


3.先行技術

(1)引用文献
本願の出願前である上記優先日よりも前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原査定の拒絶の理由である上記平成25年7月8日付けの拒絶理由通知書において引用された、下記引用文献には、下記の引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<引用文献>
特開2003-304458号公報(平成15年10月24日出願公開)

<引用文献記載事項1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 記録媒体を備えた拡張装置とのインタフェースを備えたデジタルテレビ受信機において、
前記記録媒体に保存されている、デジタルテレビ受信機の機能毎に分割しモジュール化されたソフトウェアを読み込む手段と、
読み込んだソフトウェアを実行する手段と、
読み込んだソフトウェアをデジタルテレビ受信機の保有しているものから更新する手段と、
前記実行する手段、更新する手段を選択的に利用できる手段とを、備えたことを特徴としたデジタルテレビ受信機。
【請求項2】 請求項1に記載において、
内部に保有しているモジュール化されたソフトウェアのバージョンと、前記拡張装置備え付けの記録媒体中に保存されているモジュール化されたソフトウェアのバージョンとを、モジュールごとに比較する手段を備え、
新しいバージョンが前記記録媒体中に存在した場合には、そのモジュールを選択的に利用させることを特徴としたデジタルテレビ受信機。
【請求項3】 請求項1または2に記載において、
前記記録媒体を備えた拡張装置とのインタフェースとして、カードスロットを持つことを特徴としたデジタルテレビ受信機。
【請求項4】 請求項1または2または3に記載のデジタルテレビ受信機に接続可能な機能拡張のための拡張装置であって、
前記拡張機能を動かすための複数の更新可能なモジュールを、前記拡張装置内部の記録媒体に格納することを特徴とした拡張装置。
【請求項5】 請求項4に記載において、
複数の更新可能なモジュールごとのバージョンを管理するデータを、内部の前記記録媒体中に格納することを特徴とした拡張装置。
【請求項6】 請求項4または5に記載において、
デジタルテレビ受信機の本体のみでは対応していない伝送方式で伝送されている信号を受信・復調し、その復調データを前記本体に送る機能を有することを特徴とする拡張装置。
【請求項7】 請求項4または5に記載において、
デジタルテレビ受信機の本体のみでは対応していない通信方式に対応し、前記本体とその通信回線間のデータを仲介する機能を有することを特徴とする拡張装置。」

<引用文献記載事項2>
「【0019】図3は、図2で表されるデジタルテレビ受信機に接続可能な拡張装置の一例としての、カードチューナーの概略構成図である。図3に示すように、カードチューナー51は、メモリ媒体52と、チューナー・復調部53と、カードインタフェース80とを有している。メモリ媒体52には、カードチューナー51側のモジュールの管理データであるモジュール管理データ(カード)70と、デジタルテレビ受信機1への追加・更新候補のモジュールである、メニューモジュール54と、EPGモジュール55と、選局モジュール56と、裏番組データ集計モジュール57と、年末年始風画面データモジュール58と、チューナードライバモジュール59とが、いくつかの対応機種ごとに一つ格納されている。
【0020】カードインタフェース80は、メモリ媒体52及びチューナー・復調部53からのデータをデジタルテレビ受信機1に渡す。チューナー・復調部53は、このカードチューナーにより視聴可能になる衛星・地上波等のチューナー・復調部であって、外部のアンテナに接続し、ここで取得したデータをカードインタフェース80を用いて、デジタルテレビ受信機1に渡す。これにより、デジタルテレビ受信機1の本体のみでは対応していない伝送方式で伝送されている信号を受信・復調し、その復調データをデジタルテレビ受信機1の本体に送出できるようになっている。」

<引用文献記載事項3>
「【0021】次に、図11の処理フローを用いて、カードチューナー51がデジタルテレビ受信機1に挿入された場合を例にとって、本発明でのモジュール更新・実行方法についてを説明する。
【0022】まず、ステップ200において、カードチューナー51が拡張スロット2に挿入されると、ステップ201において、デジタルテレビ受信機1は、モジュール読取・取得部22を使用して、メモリ媒体52に格納されているモジュール管理データ(カード)70を読み込む。
【0023】次に、ステップ202において、モジュール管理部21は、図8の更新モジュールリスト180の作成と、拡張装置側(ここでは、カードチューナー51側)のモジュールの更新を行う。更新モジュールリスト180は、モジュール名及び更新タイプ及び説明テキストから構成されたリストであって、これから述べる処理で作成された後、ユーザのカスタムメニュー150での選択結果により更新される。このリストは、図13で述べるモジュール更新・実行処理を行う際に使用される。」

<引用文献記載事項4>
「【0024】ここで、図4?図10、図12を参照して、上記した更新モジュールリスト180の作成手順について説明を行う。ここでは、デジタルテレビ受信機1の具体例としてSTB1、IDTV2を想定する。
【0025】いま、STB1のモジュール管理データの一例として、図5のモジュール管理データ120を、IDTV2のモジュール管理データの一例として、図6のモジュール管理データ130を、モジュール管理データ(カード)70の一例として、図4のモジュール管理データ100を、それぞれ持っていると想定し、以下、STB1、IDTV2にカードチューナー51が挿入された場合の処理について、図12の処理フローを用いて説明する。
【0026】ステップ250において、カード側モジュール管理データ100の一番上の行を取得する。
【0027】次に、ステップ251において、モジュール管理データ(受信機)30のモジュール名が、ステップ250で取得したモジュール名と一致する行を取得し、対応受信機の項目に該当するか否かを確認し、該当すればステップ252の処理にうつり、そうでなければ、ステップ258の処理にうつる。例として、STB1でEPGモジュールを考えた場合、ステップ250で取得した行は該当している。
・・・中略・・・
【0032】ステップ256においては、この行のモジュール名で表されているモジュールを実行可能モジュールとして、更新モジュールリスト180に追加する。
【0033】ステップ257においては、この行のモジュール名で表されているモジュールを更新・実行可能モジュールとして、更新モジュールリスト180に追加する。
【0034】ステップ258においては、モジュール管理データ(カード)70の全ての行について処理を行ったかどうかを判断し、そうであれば更新モジュールリスト180の作成を終了する。そうでなければ、ステップ250に戻って、次の行を取得し、ステップ251乃至258の処理を再度行う。以上の処理により、更新モジュールリスト180の作成が完了する。」

<引用文献記載事項5>
「【0036】続いて、図11の処理フローに戻って説明を続ける。ステップ203においては、更新モジュールリスト180が空か否かを判定し、空の場合には処理を終了する。
【0037】更新モジュールリストが空でない場合には、ステップ204において、例えば図7に示すような、カスタマイズメニュー150の作成を行って、これをユーザに提示する。ここでの更新モジュールリスト180を使用したカスタムメニューの作成法は、現在市販されているデジタルテレビ受信機の各種メニューの作成法と同一のものであって、本発明の要旨と直接に関係しないので、ここでの説明は省略する。
【0038】次に、ユーザにより、例えばリモコンあるいは本体のボタンでカスタマイズメニュー150を使用してモジュールが選択されると、更新モジュールリスト180がユーザの選択したもののみに制限・変更された後、ステップ205において、ユーザの選択したモジュールの更新・実行が行われる。
【0039】以下、上記したユーザの選択したモジュールの更新・実行についてを、図13の処理フローを用いて説明する。
【0040】まず、ステップ350において、更新項目リスト180から最初に選択されたモジュール名を取得する。次に、ステップ351において、モジュール読取・取得部22が、選択されたモジュールをメモリ媒体52から読み出す。ここで更新・実行可能モジュールとして指定されていた場合は、ステップ353に移り、モジュール格納部24を更新するとともに、モジュール管理データ(受信機)30も更新し、ステップ354に移る。一方、ステップ352において、更新・実行可能モジュールとして指定されていなかった場合、つまり、実行可能モジュールとして指定されていた場合は、ステップ354に移る。
【0041】次に、ステップ354においては、ステップ351で読み込んだモジュールを加えることで、モジュール実行部25を更新する。次に、モジュール実行がステップ355で行われ、その実行が終了すると、ステップ356に移る。
【0042】次に、ステップ356では、ユーザが選択した全モジュールについてステップ351乃至ステップ355の処理が行われているかどうか判断し、そうであれば処理を終了し、そうでなければ、ステップ357において次のモジュール名を読み出し、再度ステップ351乃至ステップ356の処理を繰り返す。以上の処理をもってモジュール更新・実行を完了する。」

<引用文献記載事項6>
「【0044】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のデジタルテレビ受信機を使用すると、ソフトウェアモジュールを選択的に更新/実行して使用することができる。また、メニュー画面等の見た目のカスタマイズも、ユーザが選択して行うことができる。また、本発明のソフトウェア更新方式を使用すると、モジュール管理データがモジュール名をあとから増やしても対応可能な方式をとっているので、後発リリースのカード、受信機に対応が可能であり、様々なバージョンの受信機、カードが存在している場合でも対応が可能となる。
【0045】また、本発明の適用が可能である多種多様な拡張装置を準備することで、デジタルテレビ受信機の機能の多様化を図ることができるとともに、デジタルテレビ受信機本体に要する機能を縮小することができ、安価にデジタルテレビ受信機本体を提供できるようになる。」

<引用文献記載事項7>
「 【図3】



<引用文献記載事項8>
「 【図4】




(2)参考文献
本願の出願前である上記優先日よりも前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記参考文献には、それぞれ、下記参考文献記載事項が記載されている。

<参考文献1>
特開平1-270145号公報(平成1年10月27日出願公開)

<参考文献記載事項1-1>
「2.特許請求の範囲
1)下位モジュールと上位モジュールから成るプログラムの階層化システムにおいて、上位モジュールの処理を行うタスクに対して、下位モジュールが、上位モジュールに依頼された処理が完了したという事象や、上位モジュールに直接関係なく発生した或る事象について、その事象発生を通知して両モジュール間で同期をとる事象発生通知方式において、
ルーチンの登録等の管理及び登録されたルーチンの呼び出しを行うプログラム機構をシステム内に用意しておき、上位モジュールは、下位モジュールが上位モジュールに事象発生の通知を行う場合に、下位モジュールに呼び出させるルーチンを前記機構を用いて予め登録しておき、
下位モジュールは、通知すべき事象が発生したとき、前記機構を用いて前記ルーチンを呼び出して上位モジュールにその実行を依頼することによって事象発生を通知して同期をとることを特徴とする事象発生通知方式。」(第1頁下左欄第3行?同頁下右欄第3行)

<参考文献記載事項1-2>
「本発明では、上位モジュールが、エントリコール機構と呼ばれる同期機構(プログラム機構)を利用してイベントが発生した場合に実行するルーチン(以降エントリルーチンと称する)を登録しておき、下位モジュールは上位モジュールへ通知すべきイベント(情報)が発生した場合には、該エントリルーチンを呼び出すことによって情報の通知を行う。」(第2頁下左欄第15行?同頁下右欄第2行)


<参考文献2>
特開2006-85356号公報(平成18年3月30日出願公開)

<参考文献記載事項2-1>
「【0379】
関数showPrinterStatus()は、図29の行52のHTMLから利用されている。
【0380】
行52では、BODY要素のonLoadイベントに対するイベントハンドラとしてスクリプトを登録している。onLoadイベントハンドラは、文書を構成するすべてのデータのロード(展開、表示)が完了したタイミングで呼び出される。ハンドラでは、setIntervalによって、一定間隔で繰り返し生起するタイマーイベントハンドラの登録を行っている。この登録が行われると、10,000ミリ秒間隔で関数showPrinterStatusが呼び出されることになる。」

<参考文献記載事項2-2>
「【0412】
関数createCounterReport()とcreateLogReport()は、図34の行25と行42のHTMLから利用されている。
【0413】
行25では、BODY要素のonLoadイベントに対するイベントハンドラとしてスクリプトを登録している。onLoadイベントハンドラは、文書を構成するすべてのデータのロード(展開、表示)が完了したタイミングで呼び出される。ハンドラでは、まずcreateCounterReport()の呼び出しを行い、ついでcreateLogReport()を呼び出している。また、行42では、「更新」とラベル付けされたボタン入力要素updateButtonのonClickイベントに呼応するイベントハンドラとしてスクリプトを登録している。こちらの
ハンドラもまったく同様に、まずcreateCounterReport()の呼び出しを行い、ついでcreateLogReport()を呼び出している。」


4.引用発明の認定

(1)上記引用文献には、上記引用文献記載事項1の【請求項1】記載のとおりの「デジタルテレビ受信機」と、同【請求項4】記載のとおりの「拡張装置」が説明されており、これらは引用文献記載事項6等に記載の「ソフトウェア更新方式」を構成するものと言える。
したがって、引用文献には、
「記録媒体を備えた拡張装置とのインタフェースを備えたデジタルテレビ受信機において、
前記記録媒体に保存されている、デジタルテレビ受信機の機能毎に分割しモジュール化されたソフトウェアを読み込む手段と、
読み込んだソフトウェアを実行する手段と、
読み込んだソフトウェアをデジタルテレビ受信機の保有しているものから更新する手段と、
前記実行する手段、更新する手段を選択的に利用できる手段とを、備えたデジタルテレビ受信機と、
該デジタルテレビ受信機に接続可能な機能拡張のための拡張装置であって、
前記拡張機能を動かすための複数の更新可能なモジュールを、前記拡張装置内部の記録媒体に格納することを特徴とした拡張装置と
よりなるソフトウェア更新方式」
が記載されていると言える。

(2)上記引用文献記載事項2、7、8等から、
「前記記録媒体は、モジュールの管理データであるモジュール管理データ(カード)と、前記デジタルテレビ受信機への追加・更新候補のモジュールである、メニューモジュール、EPGモジュール、選局モジュール、裏番組データ集計モジュール、年末年始風画面データモジュール、チューナードライバモジュール等のモジュール化されたソフトウェアが、いくつかの対応機種ごとに一つ格納されているもの」
であると言える。

(3)
ア.上記引用文献記載事項3等から「前記デジタルテレビ受信機は、前記モジュール管理データ(カード)を読み込み」、「更新モジュールリストの作成を行」うものであると言える。

イ.そして、上記引用文献記載事項4等から、該「更新モジュールリストの作成」は、カード側モジュール管理データの行ごとに、テレビ受信機がその対応受信機の項目に該当するか否かを確認し、該当すれば実行可能モジュールあるいは更新・実行可能モジュールとして、更新モジュールリストに追加するものであることが読み取れる。
してみると、上記ア.で作成される「更新モジュールリスト」は
「その対応受信機の項目が当該デジタルテレビ受信機に該当するモジュール化されたソフトウェアのリストである」と言える。

ウ.さらに、上記引用文献記載事項5等から、前記デジタルテレビ受信機は
「該更新モジュールリストを使用してカスタマイズメニューを作成しこれをユーザに提示し、ユーザの選択したモジュール化されたソフトウェアの更新・実行を行うもの」であると言える。

エ.したがって、
「前記デジタルテレビ受信機は、前記モジュール管理データ(カード)を読み込み、その対応受信機の項目が当該デジタルテレビ受信機に該当するモジュール化されたソフトウェアのリストである更新モジュールリストの作成を行い、該更新モジュールリストを使用してカスタマイズメニューを作成しこれをユーザに提示し、ユーザの選択したモジュール化されたソフトウェアの更新・実行を行うものである」
と言える。

(4)よって、上記引用文献には下記の事項によって特定される発明(以下、「引用発明」と記す。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「記録媒体を備えた拡張装置とのインタフェースを備えたデジタルテレビ受信機において、
前記記録媒体に保存されている、デジタルテレビ受信機の機能毎に分割しモジュール化されたソフトウェアを読み込む手段と、
読み込んだソフトウェアを実行する手段と、
読み込んだソフトウェアをデジタルテレビ受信機の保有しているものから更新する手段と、
前記実行する手段、更新する手段を選択的に利用できる手段とを、備えたデジタルテレビ受信機と、
該デジタルテレビ受信機に接続可能な機能拡張のための拡張装置であって、
前記拡張機能を動かすための複数の更新可能なモジュールを、前記拡張装置内部の記録媒体に格納することを特徴とした拡張装置と
よりなるソフトウェア更新方式であって、
前記記録媒体は、モジュールの管理データであるモジュール管理データ(カード)と、前記デジタルテレビ受信機への追加・更新候補のモジュールである、メニューモジュール、EPGモジュール、選局モジュール、裏番組データ集計モジュール、年末年始風画面データモジュール、チューナードライバモジュール等のモジュール化されたソフトウェアが、いくつかの対応機種ごとに一つ格納されているものであり、
前記デジタルテレビ受信機は、前記モジュール管理データ(カード)を読み込み、その対応受信機の項目が当該デジタルテレビ受信機に該当するモジュール化されたソフトウェアのリストである更新モジュールリストの作成を行い、該更新モジュールリストを使用してカスタマイズメニューを作成しこれをユーザに提示し、ユーザの選択したモジュール化されたソフトウェアの更新・実行を行うものである
ソフトウェア更新方式。」


5.対比
以下に、本願発明と引用発明とを比較する。

(1)引用発明は「デジタルテレビ受信機と」「拡張装置と」「よりなるソフトウェア更新方式」であるから、本願発明と同様に「ディスプレイシステム」とも言えるものである。

(2)
ア.本願発明における「ソフトウェアで実現されるテレビ性能アーキテクチャを実装するプロセッサ回路であって」との記載が何を修飾しているのかは必ずしも明確なものではないものの、この記載は「ディスプレイシステム」が「ソフトウェアで実現されるテレビ性能アーキテクチャを実装するプロセッサ回路」を利用して構成されている旨を表現しようとしたものと解釈することができる。
そして、引用発明における「デジタルテレビ受信機」は「読み込んだソフトウェアを実行する手段」を有しているのであるから、これも「ソフトウェアで実現されるテレビ性能アーキテクチャを実装するプロセッサ回路」を利用して構成されていると言える。

イ.引用発明における「デジタルテレビ受信機」は「読み込む手段」「実行する手段」「更新する手段」等を有し、「モジュール化されたソフトウェア」を「読み込」み、「実行」、「更新」等を行うのであるから、引用発明における「デジタルテレビ受信機」も本願発明における「アプリケーションロジック調整ユニット(ALCU)」に相当するものを有していると言える。

ウ.引用発明における「モジュール化されたソフトウェア」は本願発明における「プラグインモジュール(PIM)」に対応付けられるものであるところ、前者は「デジタルテレビ受信機に接続可能な機能拡張のための拡張装置」の「記録媒体に保存されている」ものであり、「デジタルテレビ受信機の機能毎に分割」されているものなのであるから、「複数のプラグインモジュール(PIM)であって、それぞれが所望のテレビシステム性能を表すPIM」とも言えるものである。

エ.したがって、引用発明と本願発明とは
「ソフトウェアで実現されるテレビ性能アーキテクチャを実装するプロセッサ回路であって、
アプリケーションロジック調整ユニット(ALCU)と、
複数のプラグインモジュール(PIM)であって、それぞれが所望のテレビシステム性能を表すPIMと、
を含むディスプレイシステム」
である点で共通すると言える。

(3)引用発明における「拡張装置」は「機能拡張のため」のものであり「デジタルテレビ受信機への追加」「候補の」「モジュール化されたソフトウェア」も「更新・実行」の対象となるのであるから、引用発明と本願発明とは
「新たなPIMを前記ALCUに追加することができ」
るものである点で共通すると言える。

(4)引用発明においては「前記記録媒体は、モジュールの管理データであるモジュール管理データ(カード)と、前記デジタルテレビ受信機への追加・更新候補のモジュールである、メニューモジュール、EPGモジュール、選局モジュール、裏番組データ集計モジュール、年末年始風画面データモジュール、チューナードライバモジュール等のモジュール化されたソフトウェアが、いくつかの対応機種ごとに一つ格納されているものであり」、「前記デジタルテレビ受信機は、前記モジュール管理データ(カード)を読み込み、その対応受信機の項目が当該デジタルテレビ受信機に該当するモジュール化されたソフトウェアのリストである更新モジュールリストの作成を行い、該更新モジュールリストを使用してカスタマイズメニューを作成しこれをユーザに提示し、ユーザの選択したモジュール化されたソフトウェアの更新・実行を行うものである」から、例えば、デジタルテレビ受信機が「STB1」の場合には「STB1」用の「EPG」のモジュールが、デジタルテレビ受信機が「IDTV2」の場合には「IDTV2」用の「EPG」のモジュールが実行されるようになされており、「STB1」用の「EPG」のモジュールが「IDTV2」では動作せず、「IDTV2」用の「EPG」のモジュールが「STB1」では動作しないものであることは明らかである。
してみると、引用発明も本願発明と同様に
「第1の性能を与えるPIMは、第1のモデル系列内で第1のアプリケーションの開始の判定を実行し、第1の性能を与えるPIMは、第2のモデル系列内で第2のアプリケーションの開始の判定を実行し、前記第2のアプリケーションの開始の判定は前記第1のアプリケーションの開始の判定とは異なるもの」
であることは明らかである。
なお、本願発明における当該発明特定事項は、ひとつのPIM内の複数のアプリケーションごとに、対応モデル系列の判定を行うことを意味するものと解することも可能であるが、このようなプログラミング技法も当業者にとっては、証拠を挙げるまでもない周知慣用技術であり、仮に該解釈を採用しても本審決の結論に影響するものではない。

(5)よって、本願発明は、下記一致点で引用発明と一致し、下記相違点を有する点で引用発明と相違する。

<一致点>
「ソフトウェアで実現されるテレビ性能アーキテクチャを実装するプロセッサ回路であって、
アプリケーションロジック調整ユニット(ALCU)と、
複数のプラグインモジュール(PIM)であって、それぞれが所望のテレビシステム性能を表すPIMと、
を含むディスプレイシステムであって、
新たなPIMを前記ALCUに追加することができ、
第1の性能を与えるPIMは、第1のモデル系列内で第1のアプリケーションの開始の判定を実行し、第1の性能を与えるPIMは、第2のモデル系列内で第2のアプリケーションの開始の判定を実行し、前記第2のアプリケーションの開始の判定は前記第1のアプリケーションの開始の判定とは異なるものである、
ディスプレイシステム。」

<相違点1>
本願発明においては、PIMは「前記ALCUと通信する」ものであるとともに、ALCUは「情報をPIMの間で伝達する」ものであり、新たなPIMは「前記ALCUと通信するPIMと協働する」ものである。
(これに対し、引用発明における「モジュール化されたソフトウェア」と他の「モジュール化されたソフトウェア」や「デジタルテレビ受信機」との通信についての直接的な明示は引用文献には無い。)

<相違点2>
本願発明においては「第1の性能を与えるPIMは、第1のモデル系列において第1のイベントを登録し、第1の性能を与えるPIMは、第2のモデル系列において第2のイベントを登録し、前記第2のイベントは前記第1のイベントとは異なるもの」である。
(これに対し、イベントの登録に関する記載は引用文献には無い。)


6.判断
以下に、上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
引用発明においても個々の「モジュール化されたソフトウェア」が他の「モジュール化されたソフトウェア」と通信し協働することは自明であり(例えば、「EPGモジュール」や「選局モジュール」が「チューナードライバモジュール」と通信し協働しなければ、所望の機能が実現されないことは技術常識である。)、また、そのために「デジタルテレビ受信機」が「モジュール化されたソフトウェア」との通信手段を有することも自明な事項である。そして、この場合の「デジタルテレビ受信機」側の通信手段も「ALCU」に相当するものと解することができる。
したがって、引用発明において、PIMを「前記ALCUと通信する」ものとすること、ALCUを「情報をPIMの間で伝達する」ものとすること、および、新たなPIMを「前記ALCUと通信するPIMと協働する」ものとすること、すなわち上記相違点1に係る事項は、当業者であれば必然的に採用する構成にすぎないものであって、実質的には相違点とは言えないものである。

(2)相違点2について
引用発明における「モジュール化されたソフトウェア」が提供する機能が、リモコンのキー押下やタイマ等のイベントに応答して実行されるものであることは説示するまでもない技術常識であり、またイベントに応答するソフトウェアの実行のために、当該ソフトウェアが機器やOSに対してイベントハンドラなどのイベントに関する情報を登録するよう構成することは、従来から周知慣用の極めて一般的な手法にほかならない(必要があれば、参考文献記載事項1-1、1-2、2-1、2-2等参照。)。
したがって、引用発明における「モジュール化されたソフトウェア」を、そのイベントに関する情報を登録するものとすることで、引用発明を「第1の性能を与えるPIMは、第1のモデル系列において第1のイベントを登録し、第1の性能を与えるPIMは、第2のモデル系列において第2のイベントを登録し、前記第2のイベントは前記第1のイベントとは異なるもの」とすること、すなわち上記相違点2に係る事項を採用することは、当業者であれば適宜に採用し得た設計的事項にすぎないものである。

(3)したがって、本願発明の構成は引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
また、本願発明の効果は、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本願発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


7.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願を拒絶すべきものとした原審の拒絶査定は妥当なものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-29 
結審通知日 2015-06-01 
審決日 2015-06-17 
出願番号 特願2011-526099(P2011-526099)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 戸島 弘詩
山崎 達也
発明の名称 テレビ用モジュラー式フレキシブルソフトウェアアーキテクチャ  
代理人 上杉 浩  
代理人 上杉 浩  
代理人 須田 洋之  
代理人 近藤 直樹  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 大塚 文昭  
代理人 辻居 幸一  
代理人 近藤 直樹  
代理人 大塚 文昭  
代理人 須田 洋之  
代理人 辻居 幸一  
代理人 熊倉 禎男  
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