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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1307227
審判番号 不服2014-14909  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-30 
確定日 2015-10-27 
事件の表示 特願2013-502456「タッチスクリーンパネル装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月 6日国際公開、WO2011/122797、平成25年 6月17日国内公表、特表2013-524335〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成23年3月25日(優先権主張 平成22年3月31日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成25年11月13日付けで拒絶理由が通知され、平成26年2月19日付けで手続補正がなされたが、同年3月24日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年7月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年2月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
タッチスクリーンパネル装置において、
ITOセンサガラス層;
前記ITOセンサガラス層の上部にOCAによって積層されるウィンドウガラス層;
前記ウィンドウガラス層の面と前記ITOセンサガラス層の面との間に介在して電極パターンとして用いられる導電層;及び
前記導電層が配置されるITOセンサガラス層の上面に実装されるタッチスクリーンコントロールユニットを含むことを特徴とするタッチスクリーンパネル装置。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された、特開平5-324203号公報(以下「引用例1」という。)には、次の記載がある。

a.「【0003】
【従来の技術】静電容量型のタッチパネルは、ガラス基板(透明基板)の全面に所定の面抵抗値をもつ透明導電膜を設けることによって構成され、使用に際してはCRT画面などのディスプレイ画面の前面に装着される。」(【0003】の記載。)(下線は、当審で付与した。以下、同様。)

b.「【0018】図1において、タッチパネル1は、タッチ位置検出素子となる透明導電膜12、シールド電極となる透明導電膜13、保護膜14、及び電極端子18を設けたガラス基板10と、グレア防止膜16及び保護膜17を設けたガラス基板20とを、エポキシ樹脂などの透明接着材30を用いて貼り合わせることによって構成されている。つまり、タッチパネル1は2重基板構造を有している。
【0019】ガラス基板10の厚さは3又は4mm程度とされ、ガラス基板20の厚さは1mm程度とされている。また、ガラス基板10の大きさは、電極端子18の形成領域の分だけガラス基板20よりも大きめに選定されている。
【0020】透明導電膜12,13は、例えば主成分の酸化インジウムと数%の酸化スズからなる400Å程度の膜厚のITO膜であり、蒸着又はスパッタリングによって形成されている。
【0021】なお、保護膜14、グレア防止膜16、及び保護膜17の膜厚は、それぞれ1000?2000Å程度であり、透明導電膜12とガラス基板20の間の透明接着材からなる層の厚さは10μm程度である。
【0022】以上の構成のタッチパネル1では、保護膜17の表面をタッチ面STとする入力操作に際して、十分に厚く且つ硬質のガラス基板20によって透明導電膜12が保護されるので、誤動作の原因となる損傷を確実に防止することができる。」(【0018】?【0020】の記載。)

c.タッチパネルの構成を示す要部断面図である図1には、ガラス基板10の、ガラス基板20と貼り合わせられる面側に透明導電膜12を形成すると共に、電極端子18を透明導電膜12の上に設けた構成が示されている。

これら引用例1の記載及び関連する図面から、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「タッチ位置検出素子となる透明導電膜12及び電極端子18を設けたガラス基板10と、保護膜17を設けたガラス基板20とを、エポキシ樹脂などの透明接着材30を用いて貼り合わせることによって構成されており、
ガラス基板10の大きさは、電極端子18の形成領域の分だけガラス基板20よりも大きめに選定されており、
透明導電膜12は、ITO膜であり、
保護膜17の表面をタッチ面STとし、
ガラス基板10の、ガラス基板20と貼り合わせられる面側に透明導電膜12を形成すると共に、電極端子18を透明導電膜12の上に設けた
タッチパネル1と、
前記タッチパネル1が前面に装着されるディスプレイ画面とからなる
タッチスクリーン装置。」

原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された、特開2009-157916号公報(以下「引用例2」という。)には、次の記載がある。

d.「【0036】
図1を参照すれば、本発明の一の実施形態に係る表示装置は、表示板部(display-panel unit)300、タッチスクリーンパネル(touch screen panel)900および制御部(control unit)CUを含む。表示板部300とタッチスクリーンパネル900は位置合わせされ、制御部CUによって制御される。」(【0036】の記載。)

e.「【0040】
図5および図6に示すように、タッチスクリーンパネル900は、絶縁基板920とその両面に形成されている複数の薄膜構造物を含む。絶縁基板920の表面であって、表示板部300から遠い方の表面は蓋膜910で覆われており、表示板部300から近い表面には、行感知データ線SY_(1)?SY_(N)、940と列感知データ線SX_(1)?SX_(M)、960が形成されている。」(【0040】の記載。)

f.「【0049】
図1および図3を参照すれば、制御部CUは、感知信号処理部800、接触判断部700および信号制御部600を含む。
【0050】
感知信号処理部800は、タッチスクリーンパネル900の行感知データ線SY_(1)?SY_(N)にそれぞれ接続される複数の出力部810と、列感知データ線SX_(1)?SX_(M)にそれぞれ接続される複数の出力部820を含む。出力部810、820は行および列感知データ線SY_(1)?SY_(N)、SX_(1)?SX_(M)からの感知信号による出力電圧を生成する。感知信号処理部800は、この出力電圧をデジタル信号に変換して信号処理し、デジタル感知データ信号DSNを生成する。
【0051】
接触判断部700は、感知信号処理部800からのデジタル感知データ信号DSNに演算処理をして接触の有無および接触位置を判断した後、接触情報を送信する。信号制御部600は、感知信号処理部800等の動作を制御する。
【0052】
このような駆動成分である、信号制御部600、接触判断部700、感知信号処理部800のそれぞれは、少なくとも1つの集積回路チップの形態で表示板部300および/またはタッチスクリーンパネル900の上に直接装着されるか、あるいはフレキシブルプリント回路フィルム(図示せず)の上に装着されてTCP(tape carrier package)の形態に表示板部300および/またはタッチスクリーンパネル900に付着されるか、あるいは別途のプリント回路基板(printed‐circuit‐board)(図示せず)の上に装着することができる。これとは異なり、これら駆動成分である、信号制御部600、接触判断部700、感知信号処理部800は、表示板部300に集積することもできる。」(【0049】?【0052】の記載。)

これら引用例2の記載及び関連する図面から、引用例2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「タッチスクリーンパネル900は、制御部CUによって制御され、
タッチスクリーンパネル900は、絶縁基板920とその両面に形成されている複数の薄膜構造物を含み、絶縁基板920の表面には、行感知データ線SY_(1)?SY_(N)、940と列感知データ線SX_(1)?SX_(M)、960が形成されるものであり、
制御部CUは、感知信号処理部800、接触判断部700および信号制御部600を含むものであり、
感知信号処理部800は、タッチスクリーンパネル900の行感知データ線SY_(1)?SY_(N)にそれぞれ接続される複数の出力部810と、列感知データ線SX_(1)?SX_(M)にそれぞれ接続される複数の出力部820を含むものであり、
信号制御部600、接触判断部700、感知信号処理部800のそれぞれは、少なくとも1つの集積回路チップの形態でタッチスクリーンパネル900の上に直接装着される
タッチスクリーンパネル。」

3.対比
本願発明と引用発明1を対比すると、次のことがいえる。
(1)引用発明1の「タッチスクリーン装置」と本願発明の「タッチスクリーンパネル装置」は、「タッチスクリーン装置」である点で共通する。

(2)引用発明1の「ガラス基板10」は「ITO膜」である「透明導電膜12」が設けられたものであるから、本願発明の「ITOセンサガラス層」に相当する。

(3)引用発明1の「ガラス基板20」は「保護膜17」が設けられたものであり、「保護膜17」の表面は「タッチ面ST」とされているから、引用発明1の「ガラス基板20」は本願発明の「ウィンドウガラス層」に相当する。
そして、引用発明1の「ガラス基板20」は、「ガラス基板10」と「エポキシ樹脂などの透明接着剤30を用いて貼り合わせ」られているから、引用発明1の「ガラス基板20」は、本願発明の「前記ITOセンサガラス層の上部にOCAによって積層されるウィンドウガラス層」に相当する。

(4)引用発明1は、「ガラス基板10の、ガラス基板20と貼り合わせられる面側に透明導電膜12を形成」するものであり、「透明導電膜12」は「タッチ位置検出素子となる」ものであるから、引用発明1の「透明導電膜12」は、本願発明の「前記ウィンドウガラス層の面と前記ITOセンサガラス層の面との間に介在して電極パターンとして用いられる導電層」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違する。

〈一致点〉
「タッチスクリーン装置において、
ITOセンサガラス層;
前記ITOセンサガラス層の上部にOCAによって積層されるウィンドウガラス層;
前記ウィンドウガラス層の面と前記ITOセンサガラス層の面との間に介在して電極パターンとして用いられる導電層を含むタッチスクリーン装置。」

〈相違点1〉
本願発明はタッチスクリーンパネル装置であるのに対し、引用発明はタッチスクリーンパネル装置といい得るものではない点。

〈相違点2〉
本願発明は「前記導電層が配置されるITOセンサガラス層の上面に実装されるタッチスクリーンコントロールユニット」を有するものであるのに対して、引用発明1には、タッチスクリーンコントロールユニットが記載されていない点。

4.当審の判断
〈相違点1〉について
ディスプレイとして液晶パネル等を用いたパネル状のものは例示するまでもなく周知のものであり、引用発明1のディスプレイ画面をパネル状のものとして、「タッチスクリーンパネル装置」とすることは、当業者が適宜なし得る設計事項である。

〈相違点2〉について
以下の事情を勘案すると、引用発明1において、上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
(ア)引用発明2は引用発明1と同様にタッチスクリーンパネルに関するものである。
そして、その「タッチスクリーン900」は「絶縁基板920とその両面に形成されている複数の薄膜構造物を含み、絶縁基板920の表面には、行感知データ線SY_(1)?SY_(N)、940と列感知データ線SX_(1)?SX_(M)、960が形成されるもの」であり、前記「タッチスクリーン900」の「絶縁基板920」は引用発明1の「ガラス基板10」に相当するものである。
また、引用発明2の「制御部CU」は「タッチスクリーンパネル900」を制御するものであるから、「タッチスクリーンコントロールユニット」といい得るものである。
ここで、引用発明2の「タッチスクリーン900」は「絶縁基板920とその両面に形成されている複数の薄膜構造物」から構成されるものであるから、「制御部CU」を構成する「感知信号処理部800、接触判断部700および信号制御部600」を「タッチスクリーンパネル900の上に直接装着」することは、実質的に、「制御部CU」を、薄膜構造物が両面に形成された「絶縁基板920」の上に装着することといえる。
してみると、引用発明2において、「制御部CU」を構成する「感知信号処理部800、接触判断部700および信号制御部600」を「タッチスクリーンパネル900の上に直接装着」することは、「タッチスクリーンコントロールユニット」を「引用発明1のガラス基板10に相当する層に実装する」ことを意味する。
(イ)引用発明1はタッチパネルに関するものであり、該タッチパネルの位置検出素子に電気的に接続されるタッチパネルの制御部(タッチスクリーンコントロールユニット)が設けられることは、その機能から見て明らかである。
そして、引用発明1においてタッチスクリーンコントロールユニットを設けるに当たり、引用発明2で採用されているようなタッチスクリーンコントロールユニット実装手法が有用かつ採用可能であることは、当業者に明らかである。また、引用発明1においてそのような実装手法を採用することを妨げる事情はない。
(ウ)引用発明1において、「電極端子18」は「ガラス基板10」の表面に形成された「透明導電膜12」の上に形成されるものであること、「透明導電膜12」は「タッチ位置検出素子となる」ものであることから、引用発明1の「電極端子18」はタッチ位置検出素子と接続される端子といえ、引用発明1において引用発明2で採用されているようなタッチスクリーンコントロールユニット実装手法を採用し、タッチスクリーンコントロールユニットをガラス基板10に直接装着するに当たり、タッチ位置検出素子からの信号を入力するものであるタッチスクリーンコントロールユニットを、タッチ位置検出素子と接続される端子である電極端子18の位置、すなわち、導電層が配置されるITOセンサガラス層の上面の位置に装着することは、タッチスクリーンコントロールユニット及び電極端子18の機能を考慮すれば、自然なことである。
(エ)以上のことは、引用発明1において上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することが、当業者にとって容易であったことを意味している。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明1、引用発明2から当業者ならば予測することができる程度のものであり、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-29 
結審通知日 2015-06-01 
審決日 2015-06-12 
出願番号 特願2013-502456(P2013-502456)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 山田 正文
桜井 茂行
発明の名称 タッチスクリーンパネル装置  
代理人 実広 信哉  

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