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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06T
管理番号 1307284
審判番号 不服2012-25166  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-19 
確定日 2015-11-06 
事件の表示 特願2009-529815「メニューディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月 3日国際公開、WO2008/038205、平成22年 2月18日国内公表、特表2010-505174〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2007年9月21日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2006年9月28日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶査定 :平成24年 8月29日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成24年12月19日
拒絶理由(当審・最初) :平成25年 9月 6日(起案日)
手続補正 :平成26年 3月10日
拒絶理由(当審・最後) :平成26年 3月26日(起案日)
手続補正 :平成26年 9月29日
拒絶理由(当審・最初) :平成26年11月 6日(起案日)
意見書のみ :平成27年 5月 1日

2.本願発明
特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年9月29日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
なお、下記のとおり説明のために(A)ないし(I)の記号を当審において付与した。以下、構成要件A、構成要件Bなどと称することにする。

「【請求項1】
(A) ビジュアル情報をレンダリングする方法であって、
(B) 入力手段により画像情報を受信すること、
(C) 前記入力手段により前記画像情報と組み合わせてレンダリングされるべき第2の画像情報を受信すること、及び、
(D) 画像処理手段により3次元空間にレンダリングされるべき出力情報を生成するために前記入力手段により受信された前記画像情報及び前記第2の画像情報を処理することを有し、
(E) 前記出力情報は、ディスプレイの奥行きレンジを持つ3Dディスプレイ上への表示のために設けられ、
(F) 前記処理手段による前記処理は、
前記画像情報の画像の奥行きレンジを検出すること、
前記第2の画像情報の第2の奥行きレンジを検出すること、
前記ディスプレイの奥行きレンジにおいて、双方がオーバーラップしない第1のサブレンジ及び第2のサブレンジを決定すること、及び
前記画像の奥行きレンジを前記第1のサブレンジに適合させるとともに、前記第2の奥行きレンジを前記第2のサブレンジに適合させることを有し、
(G)前記処理手段による前記処理はさらに、
前記3Dディスプレイ上で追加の情報を表示するために、前記3Dディスプレイの奥行きレンジ中で、前記第1のサブレンジ及び前記第2のサブレンジとオーバーラップしない第3のサブレンジを決定すること、
を有し、
(H) 前記処理手段により、
第2の画像情報及び前記追加の情報がレンダリングされるべきではない期間を検出すること、及び
検出された前記期間において、前記画像の奥行きレンジを前記ディスプレイの奥行きレンジに適合させることを有する、
(I) 方法。」

3.引用発明
(1)平成26年11月6日付けの当審の拒絶の理由に引用された特開平11-113028号公報(以下、「引用例1」という。)には、「3次元映像表示装置」として図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【請求項1】 複数の映像信号が入力され、それら映像信号を3次元の表示空間上に表示することが可能な3次元映像表示装置において、
第1の映像信号とは別の第2の映像信号が入力され、前記第1の映像信号の映像が表示される位置よりも前面に前記第2の映像信号による映像が空間的に表示されるように少なくともいずれか一方の映像信号の視差量を制御する視差量制御手段と、
前記視差量制御手段で制御された第3の映像信号と前記第1の映像信号とを各映像信号の視差量に応じて、前面側の映像信号が優先的に3次元表示空間上に表示されるように合成する3次元映像合成手段とを具備したことを特徴とする3次元映像表示装置。
【請求項2】 前記視差量制御手段は、前記第1、第2の映像信号のうち3次元映像のいずれか一方若しくは両方の映像信号の視差量を制限することで、第1と第2の映像信号の映像の前後関係を設定していることを特徴とする請求項1記載の3次元映像表示装置。」(2頁1欄)

イ.「【0010】
【発明が解決しようとする課題】従来の3次元映像表示装置で映像鑑賞中に、チャンネル切替などの操作をするときに、不自然な姿勢でリモコン装置を探さなければならなず、操作が不便であった。そこでこの発明は、立体表示を観察しながら容易に操作を行うことができる3次元映像表示装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明は上記の目的を達成するために、第1の映像信号と第2の3次元映像信号が入力され、第1の映像信号による第1の映像が表示される位置よりも前面(手元側)に第2映像信号による第2の映像が表示されるよう、第2の映像信号の視差量を制御する視差量制御手段を持つ。
【0012】
【作用】上記の手段により例えば操作用の画像を前面に表示することができ、テレビ番組のチャンネル切替や音量調節などをする場合に、立体操作映像を利用して操作入力を与えることができるようになる。」(3頁3欄-4欄)

ウ.「【0013】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。以後の説明に関して、説明済みの部分については、同一番号を付して説明を省略することがある。第1の実施例について、図面を用いて詳細に説明する。入力端11には第1の映像信号が供給され、入力端12には第2の映像信号が供給される。この例では、第1と第2の映像信号は、それぞれ3次元映像信号であり、いずれの映像信号も左目用・右目用映像信号をフィールド順次で入力される。第1の映像信号は、奥行き情報最大値取得回路101と3次元映像合成器103へ入力される。また、第2の映像信号が視差量制御回路102へ入力される。
【0014】第1の映像信号は3次元映像信号であり、左目用・右目用映像信号がフィールド順次で入力される。この第1の映像信号が立体表示器104へそのまま入力されると、従来と同様に3次元表示される。その表示される像の奥行き情報は、左右眼,スクリーン,左目像,右目像の各位置からそれぞれ数値演算で求められる。説明のため、奥行き情報がスクリーンより前面の場合には、正の値で示し、スクリーンより後面の場合には負の値で示すことにする。
【0015】ここで、着目するのは最も前面に表示される像の奥行き情報つまり奥行き情報の最大値である。横軸に時間、縦軸に奥行き情報をとり、奥行き情報の時間推移の一例を図2に示す。図2で示している時間範囲において、最も前面に表示される像の奥行き情報は、丸印をつけた像に関するもので値はDMAXである。
【0016】このように奥行き情報最大値取得回路101は、例えば1画面内で最も前面,あるいは適切な時間の過去までさかのぼり現在までに渡って最も前面に表示される像の奥行き情報を得る。第1の映像信号の奥行き情報に対して、1画面内の最大値,あるいは適切な時間の過去までさかのぼって現在までの最大値が得られ、この最大値を視差量制御回路102へ出力する。
【0017】視差量制御回路102は、入力される奥行き情報の最大値( 図2の場合DMAX) を用いて第2の映像信号の奥行き情報に対して、(任意の第2の映像信号の奥行き情報)>(第1の映像信号の奥行き情報の最大値)となるよう第2の映像信号の奥行き情報を制御する。例として、図3に示すように第2の映像d(L4,R4) の奥行き情報に第1の映像信号の奥行き情報の最大値DMAXと余裕分αを加えて3次元映像e(L4X,R4X) に変換する制御があげられる。このようにして制御された3次元映像信号が3次元映像合成器103の他方の入力端子へ出力される。3次元映像合成器103は、入力される2つの映像信号の奥行き情報を比較し大きい値をもつ信号が有効になるよう合成する。第2の映像信号の表示領域が、表示器104の表示可能領域より小さく第2の映像信号の非表示領域の後方に第1の映像信号の像が存在する場合、その部分は第1の映像が表示されるよう合成する。
【0018】3次元映像合成器103の一例としては次のようなものがあげられる。第2の映像信号の表示領域内では第2の映像による3次元映像を出力し、第2の映像信号の非表示領域では、後方の第1の映像を出力するという単純なセレクタで構成される3次元映像合成器である。このような簡易な3次元映像合成器であっても、第1の映像よりも第2の映像が前面に表示されるべき奥行き情報となっていることが視差量制御回路102などの動作により保証されているため、良好に表示される。一方、従来の技術では、奥行き情報に関して第1の映像よりも第2の映像の方がより後ろである場合があり、それにもかからわらず後ろ側の第2の映像を表示してしまうことになるために第1の映像に第2の映像が奥行き方向にめり込んだ形の表示となり強い違和感が生じてしまうことになる。
【0019】この発明では上記のように制御することで、第1の映像信号による第1の映像の表示より第2の映像信号による第2の映像の表示を前面に表示することが可能となる。」(3頁4欄-4頁5欄)

エ.「【0022】さらに、上記の実施の形態では、第2の映像信号の奥行き情報を制御したが、図4で示すように、( 第2の3次元映像信号の奥行き情報の最小値) >( 任意の第1の映像信号の奥行き情報) となるよう第1の映像信号の奥行き情報を制御してもよい。他の部分は先の実施の形態と同様である。
【0023】この実施の形態では、入力端11に第1の映像信号が供給され、入力端12に第2の映像信号が供給される。そして第1の映像信号は視差量制御回路106に入力され、第2の映像信号は奥行き情報最小値取得回路105及び3次元映像合成器103に入力される。この3次元映像合成器103には先の視差量制御回路106の出力も入力されている。ここでは、先に述べたのと同様に、入力される2つの映像信号の奥行き情報を比較し大きい値をもつ信号が有効になるよう合成が行われる。
【0024】図5に更に他の実施の形態を示す。入力端11には第1の映像信号が入力され、入力端12には第2の映像信号が入力される。第1の映像信号は奥行き情報制限器201に入力され、第2の映像信号は奥行き情報制限器202に入力される。各奥行き情報制限器201、202で制限された映像信号が、3次元映像合成器103に入力される。
【0025】一般に、3次元映像表示器( 例えば104) には表示可能な3次元映像信号の奥行き情報のとりうる値xの範囲f≦x≦gがある。第1の奥行き情報制限器201は、第1の映像信号の奥行き情報のとりうる値x1をf≦x1<hで制限して3次元映像合成器103へ出力する。この第1の奥行き情報制限器201の制限特性の例を図6に示す。図6(a)はh以上の入力奥行き情報をh未満で制限して出力する例、図6(b)は入力される奥行き情報の最大値がh未満の値となるよう定率をかけて出力する例、図6(c)は入力される奥行き情報の最大値がh未満の値となるよう奥行き情報を一律に後方へ移動して出力する例である。
【0026】第2の奥行き情報制限器202は、第2の3次元映像信号の奥行き情報のとりうる値x2をh≦x2≦gに制限して3次元映像合成器103へ出力する。この第2の3次元映像信号が、本3次元映像表示装置内で生成されるなどの理由により、奥行き情報の取り得る値x2の範囲がh≦x2≦gであることが保証される既知の場合には第2の奥行き情報制限器202は不要である。」(4頁5欄-6欄)

オ.「【0029】また、3次元映像生成回路302は、操作入力検出回路301の出力および関連付け変更回路303の出力に応じて変更される関連付け情報を保持する関連付けメモリ304の出力から、例えば従来技術で説明したような手法にて、第2の3次元映像信号を生成する。この生成された3次元映像信号による映像は、例えば、この3次元映像表示装置の操作を行うためのボタンや回転つまみ,スライド式つまみや現在受信中のチャンネルを示す数字などである。先に説明したとおり、この第2の映像信号は、第1の映像信号の奥行き情報制限回路201の出力となる3次元映像と比較して、より前面に表示される奥行き情報となっている。
【0030】したがって、両映像が合成された最終表示イメージは、図8に示すように第1の映像信号による映像801が後方に表示され、第2の映像信号による映像802は前面に表示される。
【0031】次に、図9に示す本3次元映像表示装置の外観の一例900と表示映像,観察者905を用いて操作に関して説明する。操作入力検出回路301(図7に示した)を構成するイメージセンサ901により破線で示すように観察者の左目,右目の位置を検出するとともに、一点鎖線で示すように観察者の手の位置と動きを検出する。第2の3次元映像による表示映像902は図のように観察者に近い側の位置に表示される。
【0032】ここで、xyzの座標軸を図に示すように左右方向にx軸,上下方向にy軸,奥行き方向にz軸をとっている。説明の簡単のために、第2の3次元映像による表示映像902は5×3×3計45個の球体で示してある。もちろん色,形状などはこれに限らない。最も左下奥の球体の座標を原点とする。また、第1の映像信号による第1の3次元映像は、前面に表示されたとしても高々図で示す903の位置( zが負の位置) までである。観察者905が胴体を安定した状態で、動かせる手の位置範囲は点線で示すような概略半球状の空間904となる。ここで手の位置座標と第2の3次元映像による表示映像902の操作対象となる球体の座標を対応づけ操作機能を実現する。」(4頁6欄-5頁7欄)

上記ア.?上記オ.の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮して引用例1の記載事項を検討する。

上記イ.、上記ウ.の段落【0018】?【0019】、上記オ、及び図8、図9に記載のように、引用例1には、後方に表示されるべき第1の映像信号による第1の映像の表示より第2の映像信号による第2の映像の表示を前面に表示するようにした3次元映像表示装置について記載があり、3次元映像表示装置により映像信号を3次元表示空間上に表示するようにしているから、引用例1には『映像情報を3次元表示空間上に表示する方法』が記載されているといえる。
上記ア.、上記エ.及び図5の記載によれば、入力端11には3次元映像信号である第1の映像信号が入力され、入力端12には3次元映像信号である第2の映像信号が入力されている。ここで、上記ア.に記載されるように、第1の映像信号と第2の映像信号とは別の映像信号である。
そして、第1及び第2の映像信号はそれぞれ第1及び第2の奥行き情報制限器に入力され、奥行き情報が制限されるように制御されて3次元映像合成器に入力されている。この3次元映像合成器の出力は、f≦x≦gの奥行き情報の範囲をもつ3次元映像表示器において3次元空間上に映像信号を表示するための出力である。
第1の奥行き情報制限器では、前記第1の映像信号の奥行き情報を図6(b)に記載されるようにf≦x1<hの範囲に制限するようにしており、前記第2の奥行き情報制限器では、同様に、前記第2の映像信号の奥行き情報をh≦x2≦gの範囲に制限するようにしている。

したがって、引用例1の図5に係る実施の形態には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。
なお、下記(a)ないし(i)の記号は、説明のために当審にて付与したものであり、以下構成要件a、構成要件bなどと称することにする。

(引用発明1)
「(a) 映像情報を3次元表示空間上に表示する方法であって、
(b) 入力端11に第1の映像信号を入力し、
(c) 入力端12に第2の映像信号を入力し、
(d) 第1の奥行き情報制限器と第2の奥行き情報制限器と3次元映像合成器により、前記入力された第1の映像信号と第2の映像信号を制御した出力を得て、3次元映像表示器において3次元空間上に映像信号を表示するようにし、
(e) 3次元映像合成器からの前記出力は、f≦x≦gの奥行き情報の範囲をもつ3次元映像表示器における表示のために用いられ
(f) 前記第1の奥行き情報制限器は、前記第1の映像信号の奥行き情報を入力して、第1の映像信号の奥行き情報をf≦x1<hの範囲に制限するようにし、
前記第2の奥行き情報制限器は、前記第2の映像信号の奥行き情報を入力して、第2の映像信号の奥行き情報をh≦x2≦gの範囲に制限するようにする、
(g)方法。」

(2)平成26年11月6日付けの当審の拒絶の理由に引用された特開2005-229384号公報(以下、「引用例2」という。)には、「マルチメディア情報配受信システム、マルチメディア情報配信装置およびマルチメディア情報受信装置」として図面とともに以下の事項が記載されている。

カ.「【0093】
以上は、複数の画像データおよび文字データを一画面に立体的に表示する場合について説明したが、立体マルチメディア情報を立体テレビジョン放送と多重して配信することも可能である。
【0094】
即ち、本発明に係るマルチメディア情報配受信システムの第2の実施形態は、図18に示すように、複数のモノメディア情報が多重された立体マルチメディア情報を配信するマルチメディア情報配信手段として機能するマルチメディア情報配信装置5と、マルチメディア情報配信装置5から配信された立体マルチメディア情報を受信するマルチメディア情報受信手段として機能するマルチメディア情報受信装置6からなるマルチメディア情報配受信システムである。
【0095】
マルチメディア情報配信装置5は、図19に示すように、複数のモノメディア情報を生成するモノメディア情報生成部11と、複数のモノメディア情報に複数のモノメディア情報間のZ軸方向の配置情報であるマルチメディアZ軸配置情報及び複数のモノメディア情報間のX・Y軸方向の配置情報であるマルチメディアX・Y軸配置情報を付加して立体マルチメディア情報を生成する立体マルチメディア情報生成部12と、立体テレビジョン情報を生成する立体テレビジョン情報生成部51と、立体マルチメディア情報に立体テレビジョン情報を多重する立体テレビジョン情報多重部52と、立体テレビジョン情報が多重された立体マルチメディア情報を配信する配信部53とを含む。なお、第1の実施形態のマルチメディア情報配信装置1と同一の機能を有する構成要素には参照の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0096】
また、マルチメディア情報受信装置6は、図20に示すように、配信部53から配信された立体マルチメディア情報を受信する受信部61と、受信部61で受信された立体マルチメディア情報から立体テレビジョン情報を分離する立体テレビジョン情報分離部62と、立体テレビジョン情報が分離された立体マルチメディア情報に基づいて立体マルチメディア画面を描画する立体マルチメディア画面描画部22と、立体テレビジョン情報分離部62で分離された立体テレビジョン情報に基づいて立体テレビジョン画面を描画する立体テレビジョン画面描画部63と、立体マルチメディア画面と立体テレビジョン画面とを合成する立体テレビジョン画面合成部64と、立体テレビジョン画面が合成された立体マルチメディア画面を立体表示する立体画面表示部65とを含む。なお、第1の実施形態のマルチメディア情報受信装置2と同一の機能を有する構成要素には参照の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0097】
立体テレビジョン情報生成部51は、立体テレビジョンカメラで被写体を撮像することにより立体テレビジョン情報を生成する。
【0098】
立体テレビジョン情報多重部52は、立体マルチメディア情報生成部12で生成された立体マルチメディア情報に立体テレビジョン情報を多重して、配信部53に伝送する。
【0099】
立体テレビジョン情報分離部62は、受信部61で受信した立体マルチメディア情報から立体テレビジョン情報を分離する。
【0100】
立体テレビジョン画面描画部63は、立体テレビジョン情報に基づいて立体テレビジョン画面を生成する。
【0101】
立体テレビジョン画面合成部64は、立体マルチメディア画面と立体テレビジョン画面とを合成する。
【0102】
そして、立体画面表示部65は、立体マルチメディア画面と立体テレビジョン画面を1つの立体画面として表示する。」(13頁-14頁)

上記カ.及び図18ないし図20の記載のように、引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されている。

(引用発明2)
「立体テレビジョン情報、立体画像情報及び立体文字情報の3種類の情報を立体表示するマルチメディア情報受信装置。」


4.対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)本願発明の構成要件Aと引用発明1の構成要件aの対比
引用発明1の「映像情報を3次元表示空間上に表示」については、映像情報がデータとして与えられて演算によって3次元画像となり3次元表示空間上に表示されるものであるから「レンダリング」であるといえ、また、引用発明1の「映像情報」は、明らかに本願発明の「ビジュアル情報」に相当する。
したがって、引用発明1の構成要件a「映像情報を3次元表示空間上に表示する方法であって、」は、本願発明の構成要件A「ビジュアル情報をレンダリングする方法であって、」に相当する。

(2)本願発明の構成要件Bと引用発明1の構成要件bの対比
引用発明1の「入力端11」は、入力信号のインターフェースであり、「入力手段」を構成するものといえる。また、引用発明1の「第1の映像信号」が、「画像情報」であることは明らかであり、また、信号を「入力」することと「受信」することは同義である。
したがって、引用発明1の構成要件b「入力端11に第1の映像信号を入力し、」は、本願発明の構成要件B「入力手段により画像情報を受信すること、」に相当する。

(3)本願発明の構成要件Cと引用発明1の構成要件cの対比
上記(2)と同様に、引用発明1の「入力端11に第2の映像信号を入力し、」は、本願発明の「入力手段により」「第2の画像情報を受信すること、」に相当する。
そして、構成要件dに記載されるように、「第2の映像信号」は、第1の映像信号とともに個々に奥行き制限された上で、3次元映像合成器によって「合成」されて、「3次元表示空間上に表示」されるべき信号である。ここで、「合成」は「組み合わせ」と同義であり、また、第1及び第2の映像信号を「3次元表示空間上に表示」することは、上記(1)に言及したとおり、「レンダリング」であるといえる。
したがって、引用発明1の構成要件c「入力端12に第2の映像信号を入力し、」は、本願発明の構成要件C「前記入力手段により前記画像情報と組み合わせてレンダリングされるべき第2の画像情報を受信すること、」に相当する。

(4)本願発明の構成要件Dと引用発明1の構成要件dの対比
引用発明1では、「第1の奥行き情報制限器」と「第2の奥行き情報制限器」と「3次元映像合成器」により、「入力された第1の映像信号と第2の映像信号を制御した出力を得て」いる。ここで、「制御した出力」は「入力された第1の映像信号と第2の映像信号」を画像処理したものであることは明らかであるから、「第1の奥行き情報制限器」と「第2の奥行き情報制限器」と「3次元映像合成器」を併せたものは、本願発明の「画像処理手段」に相当する。
また、引用発明1の「入力された第1の映像信号と第2の映像信号」を「3次元映像表示器において3次元空間上に映像信号を表示する」ことは上記(1)に言及したとおり、「レンダリング」であるといえる。
したがって、引用発明1の構成要件d「第1の奥行き情報制限器と第2の奥行き情報制限器と3次元映像合成器により、前記入力された第1の映像信号と第2の映像信号を制御した出力を得て、3次元映像表示器において3次元空間上に映像信号を表示するようにし、」は、本願発明の構成要件D「画像処理手段により3次元空間にレンダリングされるべき出力情報を生成するために前記入力手段により受信された前記画像情報及び前記第2の画像情報を処理することを有し、」に相当する。

(5)本願発明の構成要件Eと引用発明1の構成要件eの対比
引用発明1の「f≦x≦gの奥行き情報の範囲」が本願発明の「奥行きレンジ」に相当することから、引用発明1の「f≦x≦gの奥行き情報の範囲をもつ3次元映像表示器」は、本願発明の「ディスプレイの奥行きレンジを持つ3Dディスプレイ」に相当する。そして、引用発明1の「3次元映像合成器からの前記出力」が、本願発明の「出力情報」に相当することは明らかである。
したがって、引用発明1の構成要件e「3次元映像合成器からの前記出力は、f≦x≦gの奥行き情報の範囲をもつ3次元映像表示器における表示のために用いられ」は、本願発明の構成要件E「前記出力情報は、ディスプレイの奥行きレンジを持つ3Dディスプレイ上への表示のために設けられ、」に相当する。

(6)本願発明の構成要件Fと引用発明1の構成要件fの対比
引用発明1の「第1の奥行き情報制限器」は、「前記第1の映像信号の奥行き情報を入力して、第1の映像信号の奥行き情報をf≦x1<hの範囲に制限するよう」にしている。
ここで、入力された第1の映像信号の奥行き情報を制限するためには、第1の映像信号の「奥行き情報」を「検出」することが必要であることは自明なことにすぎない。そして、この入力される「奥行き情報」は引用例1の図6(b)の横軸に記載されるように範囲、すなわち「奥行きレンジ」を持つ情報である。以上により、第1の映像信号の「奥行き情報」を「検出」することは、本願発明の「画像情報の画像の奥行きレンジを検出すること」に相当する。
また、第1の映像信号の「制限」された奥行き情報は「f≦x1<h」の範囲であり、この範囲は、3次元映像表示器の奥行き情報の表示範囲である「f≦x≦g」の一部であるから、本願発明の「ディスプレイの奥行きレンジ」における「サブレンジ」に相当する。なお、これを「第1のサブレンジ」と呼称することは任意である。そして、入力される「第1の映像信号の奥行き情報」の奥行きの範囲を「f≦x1<h」の範囲に制限することは、本願発明の「奥行きレンジ」を「第1のサブレンジ」に「適合」させることに相当する。

一方、これらの点については、「第2の奥行き情報制限器」に関しても同様である。そして、本願発明の「第1のサブレンジ」に相当する「f≦x1<h」の範囲は、「第2のサブレンジ」に相当する「h≦x2≦g」の範囲と「双方がオーバーラップしない」範囲であることは明らかである。

さらに、引用発明1の構成要件fに係る処理は、「第1の奥行き情報制限器」と「第2の奥行き情報制限器」とにより行われている。ここで、上記(4)に言及したとおり、引用発明1の「第1の奥行き情報制限器」と「第2の奥行き情報制限器」と「3次元映像合成器」を併せたものは、本願発明の「画像処理手段」に相当するので、引用発明1の構成要件fに係る処理は、本願発明の「画像処理手段」すなわち「処理手段」による処理に含まれる。

したがって、引用発明1の構成要件f「前記第1の奥行き情報制限器は、前記第1の映像信号の奥行き情報を入力して、第1の映像信号の奥行き情報をf≦x1<hの範囲に制限するようにし、前記第2の奥行き情報制限器は、前記第2の映像信号の奥行き情報を入力して、第2の映像信号の奥行き情報をh≦x2≦gの範囲に制限するようにする、」は、本願発明の構成要件F「前記処理手段による前記処理は、前記画像情報の画像の奥行きレンジを検出すること、前記第2の画像情報の第2の奥行きレンジを検出すること、前記ディスプレイの奥行きレンジにおいて、双方がオーバーラップしない第1のサブレンジ及び第2のサブレンジを決定すること、及び前記画像の奥行きレンジを前記第1のサブレンジに適合させるとともに、前記第2の奥行きレンジを前記第2のサブレンジに適合させること」に相当する。

(6)本願発明の構成要件G、Hについて
本願の構成要素G「前記処理手段による前記処理はさらに、前記3Dディスプレイ上で追加の情報を表示するために、前記3Dディスプレイの奥行きレンジ中で、前記第1のサブレンジ及び前記第2のサブレンジとオーバーラップしない第3のサブレンジを決定すること、」、及び、構成要素H「前記処理手段により、第2の画像情報及び前記追加の情報がレンダリングされるべきではない期間を検出すること、及び 検出された前記期間において、前記画像の奥行きレンジを前記ディスプレイの奥行きレンジに適合させること」については、引用発明1には記載がない。

したがって、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「ビジュアル情報をレンダリングする方法であって、
入力手段により画像情報を受信すること、
前記入力手段により前記画像情報と組み合わせてレンダリングされるべき第2の画像情報を受信すること、及び、
画像処理手段により3次元空間にレンダリングされるべき出力情報を生成するために前記入力手段により受信された前記画像情報及び前記第2の画像情報を処理することを有し、
前記出力情報は、ディスプレイの奥行きレンジを持つ3Dディスプレイ上への表示のために設けられ、
前記処理手段による前記処理は、
前記画像情報の画像の奥行きレンジを検出すること、
前記第2の画像情報の第2の奥行きレンジを検出すること、
前記ディスプレイの奥行きレンジにおいて、双方がオーバーラップしない第1のサブレンジ及び第2のサブレンジを決定すること、及び
前記画像の奥行きレンジを前記第1のサブレンジに適合させるとともに、前記第2の奥行きレンジを前記第2のサブレンジに適合させることを有する、方法。」

(相違点)
(1)処理手段に関し、本願発明では、さらに「前記3Dディスプレイ上で追加の情報を表示するために、前記3Dディスプレイの奥行きレンジ中で、前記第1のサブレンジ及び前記第2のサブレンジとオーバーラップしない第3のサブレンジを決定する」ように処理しているのに対し、引用発明1ではそのような処理を行っていない点。
(2)処理手段に関し、本願発明では、「第2の画像情報及び前記追加の情報がレンダリングされるべきではない期間を検出」し、「検出された前記期間において、前記画像の奥行きレンジを前記ディスプレイの奥行きレンジに適合させる」ように処理しているのに対し、引用発明1ではそのような処理を行っていない点。

5.当審の判断
まず、相違点(1)について検討する。
引用発明1では、上記「3.引用例」の(1)のウ.の段落【0018】-【0019】の「従来の技術では、奥行き情報に関して第1の映像よりも第2の映像の方がより後ろである場合があり、それにもかからわらず後ろ側の第2の映像を表示してしまうことになるために第1の映像に第2の映像が奥行き方向にめり込んだ形の表示となり強い違和感が生じてしまうことになる。」ことを課題として、第1の映像信号の奥行き情報をf≦x1<hの範囲に制限し、第2の映像信号の奥行き情報をh≦x2≦gの範囲に制限して、f≦x≦gの奥行き情報の範囲をもつ3次元映像表示器に表示することにより、後方に表示されるべき第1の映像信号による第1の映像の表示より第2の映像信号による第2の映像の表示を前面に表示するようにしている。
そして、引用例1には、上記「3.引用例」の(1)のイ.及びオ.及び図8、図9に記載のように、前記第1の映像信号をテレビ番組等の「立体映像」に、第2の映像信号をチャンネルを表す数字が示された球体等の「立体操作画像」とすることが記載されている。

一方、引用例2には上記「3.引用例」(2)に記載したように、
「立体テレビジョン情報、立体画像情報及び立体文字情報の3種類の情報を立体表示するマルチメディア情報受信装置。」
という引用発明2が記載されている。すなわち、マルチメディア情報受信装置において、「立体テレビジョン情報」、「立体画像情報」及び「立体文字情報」の3種類の情報を立体表示する技術が開示されている。
ここで、引用発明2の「マルチメディア情報受信装置」は、引用発明1の「3次元映像表示器」に相当し、また、引用発明2の「立体画像情報」、「立体テレビジョン情報」は、それぞれ引用発明1の「第1の映像情報」、「第2の映像情報」に相当する。

引用発明1において、引用発明2の技術を適用して、第1及び第2の映像信号に加えて引用発明2記載の『立体文字情報』のような第3の映像信号、すなわち本願発明1の「追加の情報」を3次元映像表示器に表示させることは当業者が容易に想到し得ることであって、「追加の情報」を表示するにあたり、上述した引用発明1に記載された課題から、第1及び第2の映像信号及び追加の情報が互いにめり込んだような形の表示とならないようにそれぞれの奥行き情報をオーバーラップしない範囲に制限すること、すなわち、相違点(1)の構成「前記3Dディスプレイ上で追加の情報を表示するために、前記3Dディスプレイの奥行きレンジ中で、前記第1のサブレンジ及び前記第2のサブレンジとオーバーラップしない第3のサブレンジを決定する」処理を引用発明1に有するようにすることは、当業者が適宜為し得ることにすぎない。
したがって、相違点(1)は格別なものでない。

次に、相違点(2)について検討する。
引用例1の段落【0025】、【0026】の記載、図5、図6の記載によれば、引用発明1において、第1の映像信号の奥行き情報は、チャンネル切り替え等の比較的短期間において発生する第2の映像信号の存在によりf≦x1<hの範囲に制限されると認められるから、第2の映像信号がない場合に第1の映像信号の奥行き情報を制限のないf≦x≦gの範囲の奥行き情報とする、すなわち本願発明の「ディスプレイの奥行きレンジに適合させる」ことは自明な処理にすぎず、当業者であれば、上記相違点(1)で検討したように、引用発明1の3次元映像表示器に引用発明2の「立体文字情報」のような「追加の情報」を表示させるにあたり、第2の映像情報及び「追加の情報」が表示されない期間、すなわち、本願発明の「第2の画像情報及び前記追加の情報がレンダリングされるべきではない期間」を検出して、第1の映像信号の奥行き情報の範囲を制限のない奥行き情報の範囲とすることを容易に為し得るものである。
したがって相違点(2)も格別なものでない。

このように上記各相違点は格別なものでない。そして、本願発明の作用効果は、引用発明1、2から当業者が予測し得る範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-15 
結審通知日 2015-06-16 
審決日 2015-06-29 
出願番号 特願2009-529815(P2009-529815)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村松 貴士  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 藤井 浩
渡辺 努
発明の名称 メニューディスプレイ  
代理人 矢ヶ部 喜行  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 津軽 進  

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