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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1307325
審判番号 不服2014-7141  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-17 
確定日 2015-11-04 
事件の表示 特願2009-545873「ポリマー状アニオン/カチオン」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月24日国際公開、WO2008/087031、平成22年 5月20日国内公表、特表2010-517253〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2008年(平成20年)1月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年1月17日、独国)を国際出願日とする出願であって、平成25年1月30日付けで拒絶理由が通知され、同年5月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月9日付けで拒絶査定がなされたところ、これを不服として平成26年4月17日に審判請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。


2 補正の適否について
平成26年4月17日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成25年5月2日提出の手続補正書による手続補正によって補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲について補正しようとするものであるところ、請求項1に係る本件補正は、本件補正前の請求項1を削除するとともに、本件補正前の請求項3(当該請求項3は、請求項1の記載と、請求項1の記載を引用する請求項2の記載とを引用している。)を独立形式の記載に改めて、新たな請求項1とするものであるから、特許法17条の2第5項1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。
したがって、請求項1に係る本件補正は適法になされたものである。


3 本願発明
前記2のとおり、請求項1に係る本件補正は適法になされたものであり、本願の請求項1?36に係る発明は、平成26年4月17日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?36に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「(i)陽極、
(ii)陰極、及び
(iii)陽極と陰極の間に配置され、陽極と陰極と直接的に或いは間接的に接触し、静電気力により互いに相互作用する少なくとも一つの荷電したエミッターと、反対の極性に荷電したポリマーマトリックスを含むエミッター層を含む発光素子であって、
前記エミッターが、燐光金属錯体、クラスター、金属-錯体結合体及び/又は蛍光有機分子を含むことを特徴とする発光素子。」
(以下「本願発明」という。)


4 刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由において引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である、特表2004-531850号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様)

ア 「【0001】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、ルミネセント金属錯体がそれに結合したポリマー材料に関する。本発明はまた、電荷を有する複数の第1タイプ官能基を有する少なくとも1つのポリマーと、反対の電荷を有する少なくとも1つの金属錯体とを含むポリマー-金属錯体塩に関する。本発明はさらに、その活性層がそのようなポリマー材料を含む電子デバイスに関する。」

イ 「【0093】
IV.ポリマー-金属錯体塩
前駆体金属化合物を官能基化ポリマーに結合する別のルートは、ポリマー-金属錯体塩を形成するために、イオン結合の形成によるものである。ポリマー-金属錯体塩は、それぞれの相当する金属錯体対イオンに対する官能基化ポリマーのイオン形を含む。官能基化ポリマーのイオン形は、負に帯電しているまたは正に帯電している第1タイプ官能基を有することができる。負に帯電した第1タイプ官能基の例には、カルボキシレート、フルホナート、エノラート、アルコキシド、およびアミドが含まれる。正に帯電した第1タイプ官能基の例には、アルキル、アリールまたは両方であることができる置換基を有するアンモニウム基が含まれる。そのような第1タイプ官能基はまた、ピリジニウムのような、任意の正に帯電したN-含有複素環基から選択することもできる。官能基化ポリマーは、形成されたように帯電することができる、または帯電することができる中性形であることができる。
【0094】
相当する金属錯体対イオンは、少なくとも1つの金属陽イオンと、帯電していても帯電していなくてもよい配位子とを含む。金属上の電荷が配位子の全負電荷を超える場合、その時錯体は陽イオンであろう。その時それは、負に帯電したポリマーに対する対イオンとして働くことができる。金属錯体陽イオンの例には、M(ジイミノ)_(3)^(2+)(ここで、Mは、+2酸化状態の7?11族遷移金属である。)Ln(η^(8)-C_(8)H_(8))(HMPA)_(3)]^(+)(ここで、C_(8)H_(8)は1,3,5、7-シクロオクタテトラエンであり、HMPAはヘキサメチルホスホルアミドである。)が含まれる。配位子の全負電荷が金属の正電荷よりも大きい場合、その時錯体は陰イオンであろう。その時それは、正に帯電したポリマーに対する対イオンとして働くことができる。金属錯体陰イオンの例には、エノラート、カルボキシレート、スルホナート、アルコキシドおよびアミドのような、4つの負の配位子を有するランタニド+3金属の錯体が含まれる。
【0095】
ポリマー-金属錯体塩の形成は、ランタニドジオナート化合物について、位下の反応式5に例示される。
【0096】
【化20】

【0097】
この方法論は、以前にモノマーアミンについて、例えば、Melby,L.R.;Rose,N.J.;Abramson,E.;Caris,J.C.J.Chem.Soc.1964,5117に報告された。
【0098】
好ましい金属錯体塩は、ランタニド金属のテトラキス(エノラート)錯体の塩、Ru(bipy)_(3)^(2+)、Os(bipy)_(3)^(+2)、Tb(terpy)_(3)^(+3)、Pt_(2)(POP)_(4)^(4-)であり、ここで、bipyはビピリジン、POPは亜リン酸の無水物(HO)_(2)P-O-P(OH)_(2)である。」

ウ 「【0099】
V.デバイス
本発明の電子デバイスは、光ルミネセントおよび/またはエレクトロルミネセント特性を示すのに有用である。それらは、位下でさらに論じられる発光ダイオード、フォトダイオード、光検出器において、およびゼログラフィー用途でのような光伝導体として、使用することができる。
【0100】
発光ダイオードは、LEDと言われ、または活性材料が有機的である場合にはOLEDと言われる。上で述べられたように、OLEDは一般に、有機活性層が2つの電気的接触層の間に挟まれている構造を有する。好ましい実施態様において有機活性層は、発光層に加えて、少なくとも電子輸送層を含む。OLEDは多くの場合、追加の正孔輸送と電子輸送層とを有する。典型的な構造は図1に示される。デバイス100は、アノード層110とカソード層150とを有する。正孔輸送材料を含む層120がアノードに隣接している。電子輸送材料を含む任意の層140がカソードに隣接している。正孔輸送層と電子輸送層またはカソードとの間に発光層130がある。図1で最もよく分かるように電圧が印可された場合、電子および正孔は、矢印で示された方向に移動する。電子および正孔は発光層で結合して、ときには励起子と呼ばれる励起状態を形成する。光子160が発せられるのは励起子からである。励起子はまた、非放射プロセスによっても減衰することができる。これは失活として知られている。
【0101】
本発明のポリマー-金属錯体および本発明のポリマー-金属錯体塩は、OLEDの発光層中の活性材料として特に有用である。ポリマー-金属錯体またはポリマー-金属錯体塩と共に追加材料が発光層に存在することができる。例えば、蛍光染料が発光の色を変えるために存在してもよい。幾つかの場合には、電荷輸送を促進する材料を添加することが望ましい。その材料は、正孔輸送材料、電子輸送材料または良好な輸送特性を有する他の発光材料であることができる。ここに、正孔輸送材料は、比較的高い効率と小さな損失とで、アノードから正電荷を受け取り、それを材料の厚さを通して移動させることができる材料と定義される。電子輸送材料は、比較的高い効率と小さな損失とで、カソードから負電荷を受け取り、それを材料の厚さを通して移動させることができる材料と定義される。幾つかの材料は、電子および正孔の両方を輸送することができ、使用するのにより柔軟である。」

エ 上記ア?ウから、引用文献1には、以下の発明が記載されている。

「アノード層とカソード層とを有し、正孔輸送材料を含む層がアノードに隣接しており、電子輸送材料を含む任意の層がカソードに隣接しており、正孔輸送層と電子輸送層またはカソードとの間に発光層がある、電子デバイスであって、
ポリマー-金属錯体塩は、発光層中の活性材料であり、
上記ポリマー-金属錯体塩は、イオン結合の形成により形成されたものであって、金属錯体対イオンと、官能基化ポリマーのイオン形を含み、
上記官能基化ポリマーのイオン形は、負に帯電しているまたは正に帯電している第1タイプ官能基を有しており、
上記金属錯体対イオンは、少なくとも1つの金属陽イオンと、帯電していても帯電していなくてもよい配位子とを含んでおり、
金属上の電荷が配位子の全負電荷を超える場合、金属錯体対イオンは陽イオンであり、負に帯電したポリマーに対する対イオンとして働き、
配位子の全負電荷が金属の正電荷よりも大きい場合、金属錯体対イオンは陰イオンであり、正に帯電したポリマーに対する対イオンとして働く、
電子デバイス。」
(以下「引用発明1」という。)


5 対比
(1)引用発明1の「アノード層」及び「カソード層」はそれぞれ、本願発明1の「陽極」及び「陰極」に相当する。
(2)引用発明1は、「正孔輸送材料を含む層がアノードに隣接しており、電子輸送材料を含む任意の層がカソードに隣接しており、正孔輸送層と電子輸送層またはカソードとの間に発光層がある」から、
引用発明1の「発光層」は、本願発明の「『陽極と陰極の間に配置され、陽極と陰極と直接的に或いは間接的に接触』する『エミッター層』」に相当する。
(3)引用発明1の「金属錯体対イオン」は、「発光層中の活性材料」であるから、本願発明の「『少なくとも一つの荷電したエミッター』及び『エミッターが、燐光金属錯体、クラスター、金属-錯体結合体及び/又は蛍光有機分子を含む』」に相当する。
(4)引用発明1の「金属上の電荷が配位子の全負電荷を超える場合、金属錯体対イオンは陽イオンであり、負に帯電したポリマーに対する対イオンとして働き、配位子の全負電荷が金属の正電荷よりも大きい場合、金属錯体対イオンは陰イオンであり、正に帯電したポリマーに対する対イオンとして働く」ことは、本願発明の「静電気力により互いに相互作用する少なくとも一つの荷電したエミッターと、反対の極性に荷電したポリマーマトリックス」に相当する。
(5)引用発明1の「電子デバイス」は発光層を有するから、本願発明の「発光素子」に相当する。
(6)上記(1)ないし(5)から、本願発明と引用発明1とは、
「(i)陽極、
(ii)陰極、及び
(iii)陽極と陰極の間に配置され、陽極と陰極と直接的に或いは間接的に接触し、静電気力により互いに相互作用する少なくとも一つの荷電したエミッターと、反対の極性に荷電したポリマーマトリックスを含むエミッター層を含む発光素子であって、
前記エミッターが、燐光金属錯体、クラスター、金属-錯体結合体及び/又は蛍光有機分子を含むことを特徴とする発光素子。」
である点で一致し、相違するところはない。


6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-26 
結審通知日 2015-06-02 
審決日 2015-06-19 
出願番号 特願2009-545873(P2009-545873)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 越河 勉  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 西村 仁志
大瀧 真理
発明の名称 ポリマー状アニオン/カチオン  
代理人 砂川 克  
代理人 福原 淑弘  
代理人 堀内 美保子  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 岡田 貴志  
代理人 佐藤 立志  
代理人 河野 直樹  
代理人 峰 隆司  
代理人 野河 信久  
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