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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1307337
審判番号 不服2014-13058  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-04 
確定日 2015-11-04 
事件の表示 特願2012-524821「ポリシおよび課金制御ルールまたはサービス品質ルールの変更失敗を処理する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月17日国際公開、WO2011/019773、平成25年 1月17日国内公表、特表2013-502162〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成22年(2010年)8月10日(優先権主張 2009年(平成21年)8月10日 米国,2010年(平成22年)8月9日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成25年6月10日付けで拒絶理由が通知され,平成26年2月4日付けで上申書の提出がなされ,同年2月24日付けで拒絶査定され,同年7月4日に拒絶査定不服審判に請求と同時に手続補正がなされたのである。

第2 補正却下の決定
[結論]
平成26年7月4日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正発明
(1) 補正の概要
平成26年7月4日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は,請求項1について,本件補正前の記載を次のように補正することを含むものである。(下線は請求人が付与。)

[本件補正前]
【請求項1】
ベアラ変更手順に少なくとも部分的に基づいてゲートウェイに1つまたは複数の変更されたポリシルールを提供することと、
前記ゲートウェイが前記1つまたは複数の変更されたポリシルールをインストールする前記ベアラ変更手順を成功裡に完了するかどうかを判定することと、
前記ゲートウェイが前記ベアラ変更手順を成功裡に完了するかどうかの前記判定に少なくとも部分的に基づいて前記1つまたは複数の変更されたポリシルールあるいは1つまたは複数の以前のポリシルールを利用することとを備える方法。

[本件補正後]
【請求項1】
ベアラ変更手順に少なくとも部分的に基づいてゲートウェイに1つまたは複数の変更されたポリシルールをポリシおよび課金ルール機能(PCRF)によって提供することと、
前記ゲートウェイが前記1つまたは複数の変更されたポリシルールをインストールして前記ベアラ変更手順を成功裡に完了するかどうかを前記PCRFによって判定することと、
前記ゲートウェイが前記ベアラ変更手順を失敗したことを示す前記判定に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の以前のポリシルールを前記PCRFによって利用することとを備える方法。

(2) 本件補正は,<1>「ポリシルール」を提供するもの,<2>「前記ベアラ変更手順を成功裡に完了するかどうか」を判定するもの,<3>「前記ベアラ変更手順を失敗したことを示す前記判定に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の以前のポリシルール」を利用するものが,いずれも「ポリシおよび課金ルール機能(PCRF)」であることを特定する補正を含むものである。
そして,該特定は,上記<1>における「提供」,上記<2>における「判定」,上記<3>における「利用」に限定を附すものであるといえる。
また,本件補正は,「記ゲートウェイが前記ベアラ変更手順を成功裡に完了するかどうかの前記判定」に対し「失敗したことを示す」との限定を附すものでもある。

以上のとおりであるから,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるといえる。
よって,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について検討する。

2.引用発明等
(1) 引用文献
原査定の理由に,「引用文献1」(以下「引用文献」と表記する。)として引用された文献は次のとおりである。
3GPP TS 23.203 V7.11.0(2009-06)

そして,該引用文献には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 7.4 IP-CAN Session Modification
7.4.1 IP-CAN Session Modification; GW(PCEF) initiated

This clause describes the signalling flow for the IP-CAN Session modification initiated by the GW(PCEF). These modifications include IP-CAN bearer establishment and termination as well as modification if the triggering conditions given to the PCEF are fulfilled. The AF may be involved. An example of the scenario is authorization of a session-based service for which an IP-CAN Session is also modified.
(42ページ)(下線は当審が付与。)
(当審訳
7.4 IP-CANセッション変更
7.4.1 IP-CANセッション変更;GW(PCEF)による開始
この節はGW(PCEF)によって開始されたIP-CANセッション変更のためのシグナリングフローを説明する。これらの変更は,PCEFに与えられたトリガ条件が満たされる場合,変更ばかりではなくIP-CANベアラの確立及び終了も含む。AFが必要とされ得る。シナリオの例は,セッションベースのサービスの許可である,そのサービスのため,IP-CANセッションも変更される。)


イ 1. Optionally, the AF provides/revokes service information to the PCRF due to AF session signalling. The AF may subscribe at this point to notification of bearer level events related to the service information.

NOTE 1: For the PCRF to generate the applicable events, the PCRF instructs the PCEF to report events related to the corresponding PCC rules. Such events are not shown in this sequence diagram.

2. The PCRF stores the service information and responds with the Acknowledgement to the AF.

3. The GW(PCEF) makes an internal decision or receives a request for IP-CAN Bearer establishment, modification or termination.

4. The PCEF determines that the PCC interaction is required and sends the PCC Rules request to the PCRF. If there is a limitation or termination of the transmission resources for a PCC Rule, the PCEF reports this to the PCRF.

5. The PCRF correlates the request for PCC Rules with the IP-CAN session and service information available at the PCEF.

6. The PCRF may need to report to the AF an event related to the transmission resources and/or if the AF requested it at initial authorisation.

7. The AF acknowledges the event report and/or responds with the requested information.

8. The PCRF makes the authorization and policy decision.

9. The PCRF sends the decision(s) to the PCEF. The GW(PCEF) enforces the decision.

10. If online charging is applicable, the PCEF may request credit for new charging keys from and/or shall issue final reports and return remaining credit for charging keys no longer active to the OCS.

11. If OCS was contacted, the OCS provides the credit information to the PCEF, and/or acknowledges the credit report.

12. The GW(PCEF) acknowledges or rejects any IP-CAN bearer signalling received in step 3.
The IP-CAN bearer establishment or modification is accepted if at least one PCC rule is active for the IP-CAN bearer and in case of online charging credit was not denied by the OCS. Otherwise, the IP-CAN bearer establishment or modification is rejected.
An IP-CAN bearer termination is always acknowledged by the GW(PCEF).
An IP CAN bearer modification not upgrading the QoS and not providing traffic mapping information is always acknowledged by the GW (PCEF).

13. In case of a GW(PCEF) internal decision the GW(PCEF) initiates any IP-CAN bearer signalling required for completion of the IP-CAN Session modification.

14. The GW(PCEF) sends a Provision Ack (accept or reject of the PCC rule operation(s)) to inform the PCRF about the outcome of the GW(PCEF) actions related to the decision(s) received in step 9.
If the AF requested it, the PCRF notifies the AF related bearer level events (e.g. transmission resources are established/released/lost).

NOTE 2: Based on the outcome reported in this step the AF performs the appropriate action, e.g. starting charging or terminating the AF session.

16. The AF acknowledges the notification from the PCRF.
(43?44ページ)
(当審訳
1.必要に応じて,AFは,AFセッションシグナリングが原因で,PCRFにサービス情報の提供/取消しをする。AFは,サービス情報に関連するベアラレベルのイベントの通知に,この時点で同意する。

注1:適用できるイベントを生成するべきPCRFのため,PCRFは,対応するPCC規則に関連するイベントを報告するためにPCEFに指示する。このようなイベントは,このシーケンス図には示されていない。

2.PCRFは,サービス情報を格納し,AFに確認応答で応答する。

3.GW(PCEF)は,内部決定を行うか,IP-CANベアラの確立,変更又は終了の要求を受信する。

4.PCEFは,PCC相互作用が必要であると判断し,そして,PCRFにPCCルール要求を送信する。PCCルールの制限又は伝送リソースの終了がある場合,PCEFはPCRFにこれを報告する。

5.PCRFは,PCEFで利用可能なIP-CANセッション及びサービス情報とPCCルールの要求とを関連付ける。

6.PCRFは,送信リソースに関連するイベントを,及び/又はAFが最初の許可でそれを要求したか否かを,AFに報告する必要があるかもしれない。

7.AFは,イベントレポートに確認応答し,及び/又は要求された情報で応答する。

8.PCRFは,許可及びポリシー決定を行う。

9.PCRFは,PCEFに決定を送信する。GW(PCEF)は,決定を実施する。

10.オンライン課金が適用できる場合,PCEFは,(OCS)から新しい課金キーのクレジットを要求する,及び/又は最終報告書を発行しなければならない,そして,OCSに,もはやアクティブでない課金キーの残りのクレジットを返す。

11.OCSが接触された場合,OCSは,PCEFにクレジット情報を提供する,及び/又はクレジット報告に確認応答する。

12.GW(PCEF)は,ステップ3で受信したすべてのIP-CANシグナリングベアラを確認応答するか又は拒否する。
少なくとも一つのPCCルールは,IP-CANベアラのためアクティブである場合,IP-CANベアラの確立又は修正は認められている,そして,オンライン課金の場合にクレジットはOCSによって拒否されていなかった。それ以外の場合,IP-CANベアラの確立や修正は拒否される。
IPは-CANベアラの終端は常にGW(PCEF)によって確認される。
IPベアラCANの修正,QoSをアップグレードしない,及びトラフィックのマッピング情報を提供していない修正は,常にGW(PCEF)によって確認応答される。

13.GW(PCEF)内部決定の場合,GW(PCEF)は,IP-CANセッション修正を完了するために必要な任意のIP-CANベアラシグナリングを開始する。

14.GW(PCEF)は,ステップ9で受信した判断に関連するGW(PCEF)動作の結果についてPCRFに通知するために,提供確認応答(PCCルール操作の受入又は拒否)を送信する。
AFがそれを要求した場合,PCRFは,ベアラのレベルのイベント(例えば,伝送リソースが確立された/解放された/失われた)に関連するAFに通知する。

注2:このステップで報告された結果に基づいて,AFは,適切なアクションを実行する,例えば,課金の開始,あるいはAFセッションの終了。

16.AFは,PCRFからの通知に確認応答する。)

ウ Figure 7.4には,「9. Policy and Charging Rules Provision」(当審訳 9.ポリシー及び課金ルール提供)との記載がある。

(2) 以上によれば,引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

GW(PCEF)により開始されるIP-CANセッション変更において,
PCEFは,PCC相互作用が必要であると判断し,そして,PCRFにPCCルール要求を送信する。PCCルールの制限又は伝送リソースの終了がある場合,PCEFはPCRFにこれを報告し,
PCRFは,PCEFで利用可能なIP-CANセッション及びサービス情報とPCCルールの要求とを関連付け,
PCRFは,送信リソースに関連するイベントを,及び/又はAFが最初の許可でそれを要求したか否かを,AFに報告する必要があるかもしれない。
AFは,イベントレポートに確認応答し,及び/又は要求された情報で応答し,
PCRFは,許可及びポリシー決定を行い,
PCRFは,PCEFに決定を送信し,GW(PCEF)は,決定を実施し,
GW(PCEF)は,上記決定を実施するステップで受信した決定に関連するGW(PCEF)動作の結果についてPCRFに通知するために,提供確認応答(PCCルール操作の受入又は拒否)を送信し,
AFがそれを要求した場合,PCRFは,ベアラのレベルのイベント(例えば,伝送リソースが確立された/解放された/失われた)に関連するAFに通知する
方法。

3.対比<はじめに>
引用文献の「3 Definitions, symbols and abbreviations」の「3.1 Definitions」(9ページ以降)及び「3.3 Abbreviations」(10ページ)には,次の記載がある。

・「3.1 Definitions」(「3.1 定義」)において
IP-CAN Bearer:An IP transmission path of defined capacity, delay and bit error rate, etc. See TS 21.905 [8] for the definition of bearer.
(当審訳
IP-CANベアラ: 定義された容量,遅延,ビット誤り率などのIP伝送路。ベアラの定義についてはTS21.905[8]を参照。)
(当審注 TS21.905 V9.2.0(2009-06)には,「Bearer: A information transmission path of defined capacity, delay and bit error rate, etc.」(当審訳 ベアラ:定義された容量,遅延,ビット誤り率等の情報伝送路)と記載されている。)

IP-CAN Session:The association between a UE and a PDN identifier (for GPRS, APN). The association is identified by a UE IP address together with a UE identity information, if available. An IP-CAN session incorporates one or more IP-CAN bearers. Support for multiple IP-CAN bearers per IP-CAN session is IP-CAN specific. An IP-CAN session exists as long as the UE IP address is established and announced to the IP network.
(当審訳
IP-CANセッション: (GPRS,APNに対する)UEとPDN識別子との間の関連。その関連は,利用可能な場合,UEの識別情報とともにUEのIPアドレスによって識別される。IP-CANセッションは,一つ以上のIP-CANベアラを組み込む。IP-CANセッションごとに複数のIP-CANベアラのサポートは,IP-CAN固有のものである。IP-CANセッションは,UEのIPアドレスが確立され,IPネットワークへ通知される限り存在する。)

PCC Rule:A set of information enabling the detection of a service data flow and providing parameters for policy control and/or charging control.
(当審訳
PCCルール: サービスデータフローの検出を可能にし,そして,ポリシー制御及び/又は課金制御のためのパラメータを提供する情報のセット。)

・「3.3 Abbreviations」(3.3 略語)において

AF Application Function
(アプリケーション機能)
PCC Policy and Charging Control
(ポリシー及び課金制御)
OCS Online Charging System
(オンライン課金システム)
PCEF Policy and Charging Enforcement Function
(ポリシー及び課金施行機能)
IP-CAN IP Connectivity Access Network
(IP接続アクセスネットワーク)
<対比>
以上を踏まえ,本件補正発明と引用発明を比較すると次のことがいえる。

(1) 本件補正発明における「ゲートウェイ」は引用発明における「GW(PCEF)」に相当する。

(2)ア 引用発明は,「IP-CANセッション変更」を前提としたものである。
このことは,「IP-CANセッション」に組み込まれた「IP-CANベアラ」の変更を,引用発明が前提とした発明であるといえることを示している。
そして,引用発明には,「IP-CANセッション変更」の手順が開示されていることは明白である。
これらのことは,引用発明には,「IP-CANベアラ」の変更の手順が開示されているといえることを示している。

イ 引用文献における「Figure 7.4」における記載を参酌すれば,引用発明において,「PCRF」が「PCEF」に「決定」を送信する際,「ポリシー及び課金ルール提供」も「送信」されていることは明らかである。
ここで,「ポリシー及び課金ルール提供」が,「IP-CANセッション変更」のための「ポリシールール」の提供,「課金ルール」の提供を意味することは明らかである。
また,上記「送信」が「IP-CANセッション変更」のために行われることは明白である。
このことを換言すると,「決定」の送信は「IP-CANセッション変更」に基づくものであるといえ,さらに該「決定」の送信が「IP-CANセッション変更」に「少なくとも部分的」に基づいていることは当然である。
また,上記のように「IP-CANセッション変更」のため提供される「ポリシールール」が「1つまたは複数」であることは当然である。

ウ 上記ア及びイより,引用発明には,「IP-CANベアラ」の変更の手順に基づいて「GW(PCEF)」に「ポリシー及び課金ルール提供をポリシーおよび課金ルール機能によって提供されること」が開示されているといえることを示している。
そうすると,本件補正発明と引用発明は,「ベアラ変更手順に少なくとも部分的に基づいてゲートウェイに1つまたは複数のポリシールールをポリシ及び課金ルール機能によって提供する」点で共通する構成を有しているといえる。

(3) 引用発明において,「提供確認応答」(「Provisin Ack」)が「PCCルール操作の受入又は拒否」を示す応答であることは明白である。
ここで,該「提供確認応答」は,上記(2)に述べた「決定」を受信した「GW(PCEF)」において実施し,その実施による「GW(PCEF)動作の結果」を「PCRF」に通知するものである。
このことは,「決定」を「受入られるか否か」あるいは「拒否するか否か」を「PCRF」によって判定することを示しているといえる。
つまり,該「提供確認応答」は「IP-CANセッション変更」が行えるか否か,換言すれば,該「提供確認応答」は「IP-CANセッション変更」の手順が成功裏に完了するか否かを,「PCRF」によって判定するために通知されるものであるといえることを示している。
そして,「GW(PCEF)」において,「PCEF」が「Policy and Charging Enforcement Function(ポリシー及び課金施行機能)」を意味することは明白であるのだから,「決定」とともに「送信」された「ポリシールール」及び「課金ルール」(上記(2)のイ参照。)が,該「GW(PCEF)」において実施されるといえることは当然である。
これらのことは,上記(2)に述べたことも踏まえれば,引用発明には,「GW(PCEF)」が「ポリシールール」及び「課金ルール」を実行して「IP-CANセッション変更」の手順が提供された「ポリシー及び課金ルール」が受入られるか否かを「PCRF」によって判定すること,つまり,「GW(PCEF)」が1つまたは複数のポリシールールを実行して「IP-CANセッション変更」の手順を成功裏に完了するか否かを「PCRF」によって判定することが,開示されているといえることを示している。
そうすると,引用発明と本件補正発明は,「前記ゲートウェイが前記1つまたは複数のポリシルールを実行してベアラ変更手順を成功裡に完了するかどうかをPCRFによって判定する」構成を有する点で共通するといえいる。

(4) 以上から,本件補正発明と引用発明は,次の点で一致し,相違するといえる。

[一致点]
ベアラ変更手順に少なくとも部分的に基づいてゲートウェイに1つまたは複数のポリシルールをポリシおよび課金ルール機能(PCRF)によって提供することと、
前記ゲートウェイが前記1つまたは複数のポリシルールを実行して前記ベアラ変更手順を成功裡に完了するかどうかを前記PCRFによって判定することと
を備える方法。

[相違点]<相違点1> 本件補正発明において,ポリシおよび課金ルール機能(PCRF)によってゲートウェイに提供される「ポリシールール」が「変更された」ものであるのに対し,引用発明においては「変更された」ものであるかが定かではない点。
<相違点2> 上記相違点1の相違により,本件補正発明において実行される「ポリシールール」が「変更された」ものであるかが定かでなく,さらに,該「実行」が本件補正発明では「インストール」であるのに対して引用発明における「実行」にはそのような特定がない点。
<相違点3> 本件補正発明は,「ゲートウェイがベアラ変更手順を失敗したことを示す判定に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の以前のポリシルールをPCRFによって利用する」構成を有するのに対して,引用発明には,<1>ベアラ変更手順を判定し,その判定が「失敗したこと」を示すとの特定も,<2>また,その「失敗したこと」を示す判定に基づいてPCRFによって利用するのが「以前のポリシルール」との特定もない点。

4.検討

(1) 相違点1及び2について
引用発明における「ポリシールール」は,「IP-CANセッション変更」のために,「ポリシー及び課金ルール機能(PCRF)」によって「GW(PCEF)」に提供され,該「GW(PCEF)」が実行するものである。
このことは,上記「ポリシールール」が,「IP-CANセッション変更」に必要なものであること示している。
つまり,該「ポリシールール」は,「変更に必要なポリシールール」といえることを示している。
そうすると,上記のような「変更に必要なポリシールール」として,「PCRF」から「GW(PCEF)」に,<1>「現在のポリシールール」に対して,変更に必要な「新たなポリシールール」のみを提供するか,あるいは,<2>「現在のポリーシールール」に「新たなポリシールール」を加えたり「不要なポリシールール」を除いたりした「変更されたポリシールール」を提供することで,「IP-CANセッション変更」を行うことになるといえる。
以上によると,引用発明において,「IP-CANセッション変更」に基づいて「GW(PCEF)」に「PCRF(ポリシー及び課金ルール機能)」によって提供される「ポリシールール」を,「変更に必要な新たなポリシールールのみ」とするか,「現在のポリシールール」を変更した「変更されたポリシールール」とするかは,当業者が適宜決めうる設計的事項であったといわざるを得ない。

また,引用発明における「ポリシールール」は「GW(PCEF)」で実行されるものであるのだから,該「ポリシールール」は「GW(PCEF)」を動作させるための命令であると解される。
このことは,該「ポリシールール」がいわゆる「ソフトウェア」といいうることを示している。
そうすると,該「ポリシールール」を「GW(PCEF)」に提供し,実行することができるようにすることは,「ポリシールール」を「ソフトウェア」として提供し,「GW(PCEF)」で実行できるようにすることを示している。
このように,「ソフトウェア」を提供し,実行するために,「GW(PCEF)」が「ソフトウェア」つまり「ポリシールール」を「インストール」するようにすることは,当業者が容易に想到し得たものであるといわざるを得ない。
よって,引用発明において,相違点1及び2のように構成することは当業者が容易に想到し得たものであるといえる。

以上のとおりであるから,引用発明に基づいて,相違点1及び2のように構成することは当業者が容易に想到し得たものである。

(2) 相違点3について
引用発明においける「提供確認応答」は,「GW(PCEF)」が「決定」を実行した結果を,「受入」又は「拒否」を示す応答として,「PCRF」に通知するものである。
ここで,上記(1)の検討を踏まえると,「提供確認応答」が<1>「受入」を示す場合は,「GW(PCEF)」における「インストール」も「実行」も異常なく行えたこと示す場合であると解され,一方<2>「拒否」を示す場合は,「GW(PCEF)」における「インストール」又は「実行」のいずれか又は両方に「異常があった」こと,つまり「失敗した」ことを示す場合であると解される。
そして,上記<2>のような「失敗」があった場合,「IP-CANセッション変更」の手順を中止しようとすることは,当業者ならば,当然に予定することである。
そのような「中止」をした際,該「変更」をしようとする前の「以前のポリシールール」に基づく状態にすることは,当業者が容易に想起しうる事項にすぎない。
したがって,引用発明において,「GW(PCEF)」が「IP-CANセッション変更」の手順を「失敗した」ことを示す判定に基づいて「以前のポリシールール」を「PCRF」によっても利用するようにすることは,当業者が適宜なしえたものであるといえる。

よって,相違点3のように構成することは,引用発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

5.まとめ
以上のとおりであるから,引用発明に基づいて,本件補正発明のように構成することは,当業者が容易になしえたものである。
そして,本件補正発明のように構成したことによる効果も格別なものではなく,当業者が引用発明から,予測できる範囲のものである。

よって,本件補正発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明

上記「第2」のとおり,平成26年7月4日付け手続補正を却下された。
したがって,本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年4月10日付けの国際出願翻訳文提出書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2」の「1.」の「(1)補正の概要」における[本件補正前]参照。)により特定されるとおりのものである。

第4 当審の判断

1.引用発明
引用文献及びその記載事項,並びに引用発明は,上記「第2」の「2.」の「(1)引用文献」に記載のとおりである。

2.検討

本願発明は,本件補正発明に附された限定を省いたものである。
そうすると,本願発明を特定する事項を全て含み,更に限定を附したものに相当する本件補正発明が,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたのであるから,本願発明も,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

よって,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび

上記のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,他の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-03 
結審通知日 2015-06-09 
審決日 2015-06-22 
出願番号 特願2012-524821(P2012-524821)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古市 徹  
特許庁審判長 佐藤 聡史
特許庁審判官 近藤 聡
久松 和之
発明の名称 ポリシおよび課金制御ルールまたはサービス品質ルールの変更失敗を処理する方法および装置  
代理人 堀内 美保子  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井上 正  
代理人 野河 信久  
代理人 佐藤 立志  
代理人 井関 守三  
代理人 福原 淑弘  
代理人 峰 隆司  
代理人 砂川 克  
代理人 岡田 貴志  
代理人 河野 直樹  

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