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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09C |
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管理番号 | 1307633 |
審判番号 | 不服2013-21453 |
総通号数 | 193 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-11-01 |
確定日 | 2015-11-11 |
事件の表示 | 特願2008-555709「薄いガラスの微小板をベースとする耐候安定性真珠光沢顔料およびそれを調製するためのプロセス」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月 7日国際公開、WO2007/098897、平成21年 7月30日国内公表、特表2009-527605〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年2月23日(パリ条約に基づく優先権主張2006年2月24日 ドイツ(DE))を国際出願日とする特許出願であって、平成24年3月13日付けの拒絶理由の通知に対し、同年9月27日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成25年6月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その請求と同時に特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたが、平成26年2月14日付けで前置報告がなされ、同年6月12日、同年11月3日、及び、同年11月30日に上申書が提出されたものである。 第2 補正の適否・本願発明 1 補正の適否 (1) 補正の内容 平成25年11月1日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、 本件補正前には、 「【請求項1】 高屈折の金属酸化物でコーティングされたガラスフレークをベースとし、そのトップの金属酸化物層の上に保護コートを有する耐候安定性真珠光沢顔料であって、 ガラスフレークが50nm?500nmの平均厚みを有し、それに対して、 A)1.8より高い屈折率nを有し、80%?100重量%のルチル含量を有するTiO_(2)を含む金属酸化物層、ならびにSiO_(2)の保護コートを適用するか、 または B)1.8より高い屈折率nを有し、80%?100重量%のルチル含量を有するTiO_(2)を含む金属酸化物層、ならびに酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムを含む第一の保護コーティングとSiO_(2)の第二の保護コーティングとを含む保護コートを適用し、そして A)またはB)における保護コート中のSiO_(2)層に有機化学的表面コーティングとして、少なくとも1個の官能性結合基を有する少なくとも1種のシランと、官能性結合基を含まない少なくとも1種のシランとを含む有機官能性シランが適用されていることを特徴とする、耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項2】 ガラスフレークが、60nm?350nmの平均厚みを示すことを特徴とする、請求項1に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項3】 SiO_(2)層が、焼成された酸化物層ではないことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項4】 SiO_(2)層が、1nm?50nmの平均厚みを有することを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項5】 SiO_(2)層が、真珠光沢顔料の全重量を基準にして、0.5%?10重量%のSiO_(2)を含むことを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項6】 有機化学的表面コーティングが、SiO_(2)で、または、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムならびにSiO_(2)でコーティングされた真珠光沢顔料の全重量を基準にして、0.1%?6重量%の量の1種または複数のシランを含むことを特徴とする、請求項1?5のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項7】 有機化学的表面コーティングが、AMMO(3-アミノプロピル-トリメトキシシラン)とGLYMO(3-グリシジルオキシプロピル-トリメトキシシラン)との混合物ではないことを特徴とする、請求項1?6のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項8】 有機化学的表面コーティングのために使用されるシランが、水に不溶性または難溶性のシランであることを特徴とする、請求項1?6のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項9】 有機化学的表面コーティングが、保護コートに共有結合的に結合されていることを特徴とする、請求項1?8のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項10】 少なくとも1個の官能性結合基が、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アミノ、シアネート、イソシアネート、エポキシ、ヒドロキシ、チオール、ウレイド、カルボキシル基、およびそれらを混合したものからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1?9のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項11】 少なくとも1個の官能性結合基を含むシランが、アミノシランであることを特徴とする、請求項1?10のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項12】 少なくとも1個の官能性結合基を含むシランが、モノマーであることを特徴とする、請求項1?10のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項13】 少なくとも1個の官能性結合基を有する少なくとも1種のシランが、50%以下の程度で前加水分解されたシランであることを特徴とする、1?10のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項14】 少なくとも1個の官能性結合基を有する少なくとも1種のシランが、前加水分解されていないシランであることを特徴とする、請求項13に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項15】 官能性結合基を含まない少なくとも1種のシランが、水に不溶性または難溶性のシランであることを特徴とする、請求項1?14のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項16】 官能性結合基を含まないシランが、アルキルシランであることを特徴とする、請求項15に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項17】 アルキルシランが、構造式(I)のアルキルシランを使用して適用されたアルキルシランであることを特徴とする、請求項16に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 R_((4-z))Si(X)_(z) (I) [式中、 Rは、置換または非置換で、直鎖状または分岐状の10?22個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、 Xは、ハロゲンおよび/またはアルコキシ基を表し、そして zは、1?3の整数である] 【請求項18】 官能性結合基を含まないシランが、構造式(II)を示すことを特徴とする、請求項15に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 (R^(1)-X-[A-Y]_(n)-B)_((4-z))Si(OR^(2))_(z) (II) [式中、 nは、1?100を表し、 zは、1?3の整数であり、 R^(1)は、ハロゲンによって置換されていてもよい、1?12個の炭素を含む直鎖状または分岐状のアルキル;6?12個の炭素を含むアリール;または、1?6個の炭素を含むアルキルおよび/またはハロゲンによって置換されていてもよい6?12個の炭素を含むアリールを表し、 R^(2)は、1?6個の炭素を含む直鎖状または分岐状のアルキルを表し、 AおよびBは、独立して、1?12個の炭素を含む直鎖状または分岐状のアルキレン;6?12個の炭素を含むアリーレン;または、1?6個の炭素を含むアルキルおよび/またくはハロゲンによって置換されていてもよい6?12個の炭素を含むアリーレンを含む2価の基を表し;そして XおよびYは、独立して、OまたはSを表す] 【請求項19】 R^(1)およびR^(2)が、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項18に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項20】 AおよびBが、独立して、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、2-ブチレン、1?6個の炭素を含むアルキルによって置換されていてもよいフェニレン、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項18または請求項19に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項21】 シランが、決められたnの値を有する純品の状態で存在していても、または、nが異なった値のものの混合物で存在していてもよいことを特徴とする、請求項18?20のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項22】 有機官能性シランが、それをSiO_(2)層に適用する前には、モノマー、オリゴマー、またはポリマーの形態で存在していることを特徴とする、請求項1?20のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項23】 有機官能性シランが、それをSiO_(2)層に適用する前には、モノマーの形態で存在していることを特徴とする、請求項22に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項24】 保護コートB中のセリウムの割合が、いずれも顔料の全重量を基準にして、0.05%?3.0重量%であることを特徴とする、請求項1?23のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項25】 保護コートB中のセリウムの割合が、いずれも顔料の全重量を基準にして、0.1%?1.0重量%であることを特徴とする、請求項24に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項26】 保護コートB中のセリウムの割合が、いずれも顔料の全重量を基準にして、0.2%?0.7重量%であることを特徴とする、請求項25に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項27】 ガラスフレークが、1層または複数の金属酸化物層を含むことを特徴とする、請求項1?26のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項28】 1層または複数の金属酸化物層が、1層または複数の酸化スズの層であることを特徴とする、請求項27に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項29】 ガラスフレークが、1層または複数の金属酸化物層を含み、1層または複数の金属酸化物層でコーティングされた微小板形状の基材が焼成されていることを特徴とする、請求項27に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項30】 請求項1?29のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料を調製するためのプロセスであって、以下の: (a)液相中で、1.8より高い屈折率を有する金属酸化物でコーティングされたガラスフレークの懸濁液を作る工程、 (b1)工程(a)において懸濁されたガラスフレークに、SiO_(2)の保護コートを適用する工程、 または (b2)工程(a)において懸濁されたガラスフレークに、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムの第一の保護コーティングならびにSiO_(2)の第二の保護コーティングを含む保護コートを適用する工程、 (c)工程(b1)または(b2)で製造されたSiO_(2)のトップの保護コーティングに、有機化学的表面コーティングを適用する工程、 を含むプロセス。 【請求項31】 工程(a)における液相が、有機溶媒を優越した量で含むことを特徴とする、請求項30に記載のプロセス。 【請求項32】 有機溶媒が、50重量%未満の水を含んだ有機溶媒であることを特徴とする、請求項31に記載のプロセス。 【請求項33】 有機溶媒に可溶性のセリウム化合物を使用して、工程(b2)において製造される酸化セリウムおよび/または水酸化セリウム層を、場合によっては塩基または酸を添加して、適用することを特徴とする、請求項30?32のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項34】 可溶性のセリウム化合物が、酢酸セリウム(III)、オクタン酸セリウム(III)、セリウム(III)アセチルアセトネート、硝酸セリウム(III)、塩化セリウム(III)、硝酸アンモニウムセリウム(IV)またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項33に記載のプロセス。 【請求項35】 工程(b1)または(b2)において、SiO_(2)層が、テトラアルコキシシランの添加および場合によっては水の添加で、コーティングされた顔料に適用されることを特徴とする、請求項30に記載のプロセス。 【請求項36】 テトラアルコキシシランが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項35に記載のプロセス。 【請求項37】 工程(b1)または(b2)におけるSiO_(2)コーティング操作の間に、さらなる窒素含有塩基が添加されることを特徴とする、請求項30?36のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項38】 工程(c)において、SiO_(2)層を備えた顔料を、優越した量の有機溶媒を含む液相中に取り込み、次いで有機化学的手段によって表面をコーティングすることを特徴とする、請求項30?37のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項39】 工程(a)において、ガラスフレークを、水中、または水性が優越する媒体中に懸濁させ、 そして 工程(b1)または(b2)において、SiO_(2)層が、水ガラスのような水性ケイ酸塩溶液を用いて適用されることを特徴とする、請求項30?38のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項40】 有機溶媒が、酢酸エチル、アルコールたとえばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-メチルプロパノール、2-メトキシプロパノール、ブチルグリコール、またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項31?39のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項41】 コーティング、塗料、粉体ベースの塗料、印刷インキ、プラスチック材料、および化粧品の調製における、請求項1?29のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料の使用。 【請求項42】 耐候性自動車用ラッカー、さらには、粉体ベースの塗料、ならびに耐候性屋外用途および建築表面仕上げ用途のためのコーティングにおける、請求項1?29のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料の使用。 【請求項43】 請求項1?29のいずれか1項に記載の真珠光沢顔料を含むコーティングを用いて得られる、対象物。 【請求項44】 対象物が、車体または建築表面仕上げ要素であることを特徴とする、請求項43に記載の対象物。」 とあったものを、本件補正後は、 「【請求項1】 高屈折の金属酸化物でコーティングされたガラスフレークをベースとし、そのトップの金属酸化物層の上に保護コートを有する耐候安定性真珠光沢顔料であって、 ガラスフレークが50nm?500nmの平均厚みを有し、それに対して、 A)1.8より高い屈折率nを有し、80%?100重量%のルチル含量を有するTiO_(2)を含む金属酸化物層、ならびにSiO_(2)の保護コートを適用するか、 または B)1.8より高い屈折率nを有し、80%?100重量%のルチル含量を有するTiO_(2)を含む金属酸化物層、ならびに酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムを含む第一の保護コーティングとSiO_(2)の第二の保護コーティングとを含む保護コートを適用し、そして A)またはB)における保護コート中のSiO_(2)層に有機化学的表面コーティングとして、少なくとも1個の官能性結合基を有する少なくとも1種のシランと、官能性結合基を含まない少なくとも1種のシランとを含む有機官能性シランが適用されていて、かつ、SiO_(2)層が、焼成された酸化物層ではないことを特徴とする、耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項2】 ガラスフレークが、60nm?350nmの平均厚みを示すことを特徴とする、請求項1に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項3】 SiO_(2)層が、1nm?50nmの平均厚みを有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項4】 SiO_(2)層が、真珠光沢顔料の全重量を基準にして、0.5%?10重量%のSiO_(2)を含むことを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項5】 有機化学的表面コーティングが、SiO_(2)で、または、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムならびにSiO_(2)でコーティングされた真珠光沢顔料の全重量を基準にして、0.1%?6重量%の量の1種または複数のシランを含むことを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項6】 有機化学的表面コーティングが、AMMO(3-アミノプロピル-トリメトキシシラン)とGLYMO(3-グリシジルオキシプロピル-トリメトキシシラン)との混合物ではないことを特徴とする、請求項1?5のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項7】 有機化学的表面コーティングのために使用されるシランが、水に不溶性または難溶性のシランであることを特徴とする、請求項1?5のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項8】 有機化学的表面コーティングが、保護コートに共有結合的に結合されていることを特徴とする、請求項1?7のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項9】 少なくとも1個の官能性結合基が、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アミノ、シアネート、イソシアネート、エポキシ、ヒドロキシ、チオール、ウレイド、カルボキシル基、およびそれらを混合したものからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1?8のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項10】 少なくとも1個の官能性結合基を含むシランが、アミノシランであることを特徴とする、請求項1?9のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項11】 少なくとも1個の官能性結合基を含むシランが、モノマーであることを特徴とする、請求項1?9のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項12】 少なくとも1個の官能性結合基を有する少なくとも1種のシランが、50%以下の程度で前加水分解されたシランであることを特徴とする、請求項1?9のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項13】 少なくとも1個の官能性結合基を有する少なくとも1種のシランが、前加水分解されていないシランであることを特徴とする、請求項12に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項14】 官能性結合基を含まない少なくとも1種のシランが、水に不溶性または難溶性のシランであることを特徴とする、請求項1?13のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項15】 官能性結合基を含まないシランが、アルキルシランであることを特徴とする、請求項14に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項16】 アルキルシランが、構造式(I)のアルキルシランを使用して適用されたアルキルシランであることを特徴とする、請求項15に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 R_((4-z))Si(X)_(z) (I) [式中、 Rは、置換または非置換で、直鎖状または分岐状の10?22個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、 Xは、ハロゲンおよび/またはアルコキシ基を表し、そして zは、1?3の整数である] 【請求項17】 官能性結合基を含まないシランが、構造式(II)を示すことを特徴とする、請求項14に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 (R^(1)-X-[A-Y]_(n)-B)_((4-z))Si(OR^(2))_(z) (II) [式中、 nは、1?100を表し、 zは、1?3の整数であり、 R^(1)は、ハロゲンによって置換されていてもよい、1?12個の炭素を含む直鎖状または分岐状のアルキル;6?12個の炭素を含むアリール;または、1?6個の炭素を含むアルキルおよび/またはハロゲンによって置換されていてもよい6?12個の炭素を含むアリールを表し、 R^(2)は、1?6個の炭素を含む直鎖状または分岐状のアルキルを表し、 AおよびBは、独立して、1?12個の炭素を含む直鎖状または分岐状のアルキレン;6?12個の炭素を含むアリーレン;または、1?6個の炭素を含むアルキルおよび/またくはハロゲンによって置換されていてもよい6?12個の炭素を含むアリーレンを含む2価の基を表し;そして XおよびYは、独立して、OまたはSを表す] 【請求項18】 R^(1)およびR^(2)が、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項17に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項19】 AおよびBが、独立して、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、2-ブチレン、1?6個の炭素を含むアルキルによって置換されていてもよいフェニレン、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項17または請求項18に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項20】 シランが、決められたnの値を有する純品の状態で存在していても、または、nが異なった値のものの混合物で存在していてもよいことを特徴とする、請求項17?19のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項21】 有機官能性シランが、それをSiO_(2)層に適用する前には、モノマー、オリゴマー、またはポリマーの形態で存在していることを特徴とする、請求項1?19のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項22】 有機官能性シランが、それをSiO_(2)層に適用する前には、モノマーの形態で存在していることを特徴とする、請求項21に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項23】 保護コートB中のセリウムの割合が、いずれも顔料の全重量を基準にして、0.05%?3.0重量%であることを特徴とする、請求項1?22のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項24】 保護コートB中のセリウムの割合が、いずれも顔料の全重量を基準にして、0.1%?1.0重量%であることを特徴とする、請求項23に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項25】 保護コートB中のセリウムの割合が、いずれも顔料の全重量を基準にして、0.2%?0.7重量%であることを特徴とする、請求項24に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項26】 ガラスフレークが、1層または複数の金属酸化物層を含むことを特徴とする、請求項1?25のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項27】 1層または複数の金属酸化物層が、1層または複数の酸化スズの層であることを特徴とする、請求項26に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項28】 ガラスフレークが、1層または複数の金属酸化物層を含み、1層または複数の金属酸化物層でコーティングされた微小板形状の基材が焼成されていることを特徴とする、請求項26に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。 【請求項29】 請求項1?28のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料を調製するためのプロセスであって、以下の: (a)液相中で、1.8より高い屈折率を有する金属酸化物でコーティングされたガラスフレークの懸濁液を作る工程、 (b1)工程(a)において懸濁されたガラスフレークに、SiO_(2)の保護コートを適用する工程、 または (b2)工程(a)において懸濁されたガラスフレークに、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムの第一の保護コーティングならびにSiO_(2)の第二の保護コーティングを含む保護コートを適用する工程、 (c)工程(b1)または(b2)で製造されたSiO_(2)のトップの保護コーティングに、有機化学的表面コーティングを適用する工程、 を含むプロセス。 【請求項30】 工程(a)における液相が、有機溶媒を優越した量で含むことを特徴とする、請求項29に記載のプロセス。 【請求項31】 有機溶媒が、50重量%未満の水を含んだ有機溶媒であることを特徴とする、請求項30に記載のプロセス。 【請求項32】 有機溶媒に可溶性のセリウム化合物を使用して、工程(b2)において製造される酸化セリウムおよび/または水酸化セリウム層を、場合によっては塩基または酸を添加して、適用することを特徴とする、請求項29?31のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項33】 可溶性のセリウム化合物が、酢酸セリウム(III)、オクタン酸セリウム(III)、セリウム(III)アセチルアセトネート、硝酸セリウム(III)、塩化セリウム(III)、硝酸アンモニウムセリウム(IV)またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項32に記載のプロセス。 【請求項34】 工程(b1)または(b2)において、SiO_(2)層が、テトラアルコキシシランの添加および場合によっては水の添加で、コーティングされた顔料に適用されることを特徴とする、請求項29に記載のプロセス。 【請求項35】 テトラアルコキシシランが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項34に記載のプロセス。 【請求項36】 工程(b1)または(b2)におけるSiO_(2)コーティング操作の間に、さらなる窒素含有塩基が添加されることを特徴とする、請求項29?35のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項37】 工程(c)において、SiO_(2)層を備えた顔料を、優越した量の有機溶媒を含む液相中に取り込み、次いで有機化学的手段によって表面をコーティングすることを特徴とする、請求項29?36のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項38】 工程(a)において、ガラスフレークを、水中、または水性が優越する媒体中に懸濁させ、 そして 工程(b1)または(b2)において、SiO_(2)層が、水ガラスのような水性ケイ酸塩溶液を用いて適用されることを特徴とする、請求項29?37のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項39】 有機溶媒が、酢酸エチル、アルコールたとえばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-メチルプロパノール、2-メトキシプロパノール、ブチルグリコール、またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項30?38のいずれか1項に記載のプロセス。 【請求項40】 コーティング、塗料、粉体ベースの塗料、印刷インキ、プラスチック材料、および化粧品の調製における、請求項1?28のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料の使用。 【請求項41】 耐候性自動車用ラッカー、さらには、粉体ベースの塗料、ならびに耐候性屋外用途および建築表面仕上げ用途のためのコーティングにおける、請求項1?28のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料の使用。 【請求項42】 請求項1?28のいずれか1項に記載の真珠光沢顔料を含むコーティングを用いて得られる、対象物。 【請求項43】 対象物が、車体または建築表面仕上げ要素であることを特徴とする、請求項42に記載の対象物。」 と補正するものである。(なお、下線は、補正箇所を示す。) そして、本件補正は、具体的には、以下の補正事項アからなるものである。 ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を削除し、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項3を独立形式とし、「SiO_(2)層が、焼成された酸化物層ではないこと」との記載を「かつ、SiO_(2)層が、焼成された酸化物層ではないこと」とし、本件補正後の請求項1とするとともに、本件補正前の請求項4?44において、引用する他の請求項が順に「請求項1?3」、「請求項1?4」、「請求項1?5」、「請求項1?6」、「請求項1?6」、「請求項1?8」、「請求項1?9」、「請求項1?10」、「請求項1?10」、「1?10(当審注:「請求項1?10」の誤記と認定する。)」、「請求項13」、「請求項1?14」、「請求項15」、「請求項16」、「請求項15」、「請求項18」、「請求項18または請求項19」、「請求項18?20」、「請求項1?20」、「請求項22」、「請求項1?23」、「請求項24」、「請求項25」、「請求項1?26」、「請求項27」、「請求項27」、「請求項1?29」、「請求項30」、「請求項31」、「請求項30?32」、「請求項33」、「請求項30」、「請求項35」、「請求項30?36」、「請求項30?37」、「請求項30?38」、「請求項31?39」、「請求項1?29」、「請求項1?29」、「請求項1?29」、「請求項43」であったところを、補正後の請求項3?43において、順に「請求項1または請求項2」、「請求項1?3」、「請求項1?4」、「請求項1?5」、「請求項1?5」、「請求項1?7」、「請求項1?8」、「請求項1?9」、「請求項1?9」、「請求項1?9」、「請求項12」、「請求項1?13」、「請求項14」、「請求項15」、「請求項14」、「請求項17」、「請求項17または請求項18」、「請求項17?19」、「請求項1?19」、「請求項21」、「請求項1?22」、「請求項23」、「請求項24」、「請求項1?25」、「請求項26」、「請求項26」、「請求項1?28」、「請求項29」、「請求項30」、「請求項29?31」、「請求項32」、「請求項29」、「請求項34」、「請求項29?35」、「請求項29?36」、「請求項29?37」、「請求項30?38」、「請求項1?28」、「請求項1?28」、「請求項1?28」、「請求項42」とするものである。 (2) 補正の目的 本件補正の補正事項アは、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を削除するとともに、当該請求項の削除に伴い、他の請求項の引用請求項を整理したものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。 したがって、本件補正は適法になされたものである。 2 本願発明 上記1(2)のとおり、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものであるから、本願の請求項1?43に係る発明は、平成25年11月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?43にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 高屈折の金属酸化物でコーティングされたガラスフレークをベースとし、そのトップの金属酸化物層の上に保護コートを有する耐候安定性真珠光沢顔料であって、 ガラスフレークが50nm?500nmの平均厚みを有し、それに対して、 A)1.8より高い屈折率nを有し、80%?100重量%のルチル含量を有するTiO_(2)を含む金属酸化物層、ならびにSiO_(2)の保護コートを適用するか、 または B)1.8より高い屈折率nを有し、80%?100重量%のルチル含量を有するTiO_(2)を含む金属酸化物層、ならびに酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムを含む第一の保護コーティングとSiO_(2)の第二の保護コーティングとを含む保護コートを適用し、そして A)またはB)における保護コート中のSiO_(2)層に有機化学的表面コーティングとして、少なくとも1個の官能性結合基を有する少なくとも1種のシランと、官能性結合基を含まない少なくとも1種のシランとを含む有機官能性シランが適用されていて、かつ、SiO_(2)層が、焼成された酸化物層ではないことを特徴とする、耐候安定性真珠光沢顔料。」 第3 刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明 (なお、下線の一部は当審が付与した。以下同じ。) 1 引用例1に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である、特開2001-323217号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。 A 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 光沢顔料を含む光沢性粉体塗料組成物において、前記光沢顔料が、フレーク状ガラスの表面を前記フレーク状ガラスよりも高い屈折率を有する金属酸化物で被覆してなる鱗片状粒子であることを特徴とする光沢性粉体塗料組成物。 【請求項2】 前記フレーク状ガラスは0.1?7μmの平均厚みおよび5?250μmの平均粒径を有するものであり、前記金属酸化物の被覆はルチル型二酸化チタンよりなり0.03?0.8μmの厚みを有するものである請求項1に記載の光沢性粉体塗料組成物。 【請求項3】 前記光沢顔料が、前記金属酸化物の被覆の上に保護膜を有する請求項1または2に記載の光沢性粉体塗料組成物。 【請求項4】 前記保護膜は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン・アルキッド樹脂、酸化珪素、ならびに酸化珪素を主成分とし酸化アルミニウムおよび/または酸化セリウムを含む金属酸化物組成物からなる群より選ばれた少なくとも1種からなり、0.0?0.1μmの厚みを有する請求項3に記載の光沢性粉体塗料組成物。」 B 「【0010】この金属酸化物の屈折率は、基材のガラスの屈折率に比べ高いものであることが必要であり、両者の屈折率の差は0.6以上であることが好ましく0.8以上であることが更に好ましい。金属酸化物の屈折率が高いことによって、顔料粒子面からの全反射が生じ易く、より強い光輝感が得られるからである。例えば、フレーク状ガラスのガラス材料の屈折率は、通常1.5?1.6程度であり、屈折率が約2.5のアナターゼ型二酸化チタン、約2.7のルチル型二酸化チタンなどを金属酸化物の被覆膜として用いれば、前記の全反射による強い光輝感が得られる。・・・」 C 「【0012】金属酸化物被覆フレーク状ガラスは、所定のフレーク状ガラスの表面にゾルゲル法、または液相法により金属水酸化物を被覆した後、加熱処理を施すことによって金属水酸化物を脱水させて金属酸化物とすることにより製造される。例えば、ゾルゲル法による方法では、フレーク状ガラスをアルコール溶剤に分散させ、ここにチタン(IV)テトラブトキシテトラマーおよび水を順次加え、これを加熱することによりフレーク基体表面に所定厚みのチタニア水和物を被覆させる。これを450℃で加熱することによりアナターゼ型二酸化チタンを主成分とする層が形成され、真珠光沢の反射干渉色を示す。また液層法による方法では、例えば、Cガラスの組成を有するフレーク上ガラスを酸性水溶液中に分散させた後、pHを調整しながらTiCl_(4)水溶液を注加し、所定の干渉色に達したら反応を終了し、濾過水洗してから所定の温度、例えば600℃で加熱焼成し、ルチル型二酸化チタン被覆フレーク状ガラスを得ることができる。」 D 「【0016】更に、光沢顔料と塗膜樹脂成分との接着性を増加させるために、必要に応じて光沢顔料の高屈折率金属酸化物被覆の表面または上記保護膜表面をカップリング剤などの表面処理剤で処理しても良い。このような耐久性向上を図るためなどの手段として、例えば、特開昭62?91567号公報、特開平7?268241号公報および米国特許5436077号公報に記載の保護膜やカップリング剤などの表面処理剤を利用することができる。」 E 「【0035】[実施例3]実施例1において使用した光沢顔料(「メタシャインRCFSX-1040RC(9549)」)を除いた他は、実施例1と同様にして粉体塗料を得、その粉体塗料へシリカ保護膜付ルチル型二酸化チタン被覆フレーク状ガラス(平均厚み1.5μm、平均粒径34.0μm、ルチル型二酸化チタン被覆厚み0.2μm、シリカ保護膜厚み50nm未満、フレーク状ガラスの組成 Cガラス、日本板硝子(株)製、「メタシャインRCFSX-1040RC(0509)」)3部を加え、ドライブレンダーにより均一混合させて、最終の粉体塗料を得た。・・・ 【0036】光沢顔料であるシリカ保護膜付ルチル型二酸化チタン被覆フレーク状ガラスは、次のようにして製造することができる。すなわち、水1000mlに実施例1で得られたルチル型二酸化チタン被覆フレーク状ガラス80gを加え懸濁し攪拌しながら75℃まで昇温した。このスラリー液に水酸化ナトリウム水溶液を加えpH値を9.3に調整せてから(当審注:「調整してから」の誤記と認める。)珪酸ナトリウム液6.6gを10重量%濃度水溶液にして約1時間を要し注加した。この間において、スラリー液のpH値は、3重量%濃度塩酸水溶液を用いて9.3に維持した。この珪酸ナトリウム水溶液の全量を注加後、75℃にて30分間攪拌を続けた。反応終了後、スラリー液を濾過し、得られた固体生成物を水で洗浄してから130℃にて12時間乾燥して、シリカ保護膜付ルチル型二酸化チタン被覆フレーク状ガラスを得た。」 2 引用例1に記載された発明 上記1のA?Eの記載から、引用例1には、次の技術的事項が記載されている。 F 引用例1に記載された技術は、高い屈折率を有する金属酸化物で被覆されたフレーク状ガラスを基材とし、そのトップの金属酸化物の被覆膜の上に保護膜を有する真珠光沢顔料に関するものである(上記1のA?C)。 G フレーク状ガラスは、0.1?7μm、すなわち、100nm?7000nmの平均厚みを有している(上記1のA)。 H 該金属酸化物の被覆膜は、約2.7の屈折率を有するルチル型二酸化チタンを含み、ならびに、酸化珪素(シリカ)の保護膜を適用している(上記1のA、B、E)。 I 該真珠光沢顔料と塗膜樹脂成分との接着性を増加させるために、該保護膜中の酸化珪素(シリカ)に表面処理剤として、カップリング剤が適用されている(上記1のD)。 J 該酸化珪素(シリカ)の保護膜は、水1000mlにルチル型二酸化チタン被覆フレーク状ガラスを加え懸濁し攪拌しながら75℃まで昇温し、このスラリー液に水酸化ナトリウム水溶液を加えpH値を9.3に調整してから珪酸ナトリウム液6.6gを10重量%濃度水溶液にして約1時間を要し注加し、この珪酸ナトリウム水溶液の全量を注加後、75℃にて30分間攪拌を続け、反応終了後、スラリー液を濾過し、得られた固体生成物を水で洗浄してから130℃にて12時間乾燥して得られることから、「焼成された酸化物層ではない」といえる。 上記2のF?Jより、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「高い屈折率を有する金属酸化物で被覆されたフレーク状ガラスを基材とし、そのトップの金属酸化物の被覆膜の上に保護膜を有する真珠光沢顔料であって、 フレーク状ガラスが100nm?7000nmの平均厚みを有し、それに対して、 約2.7の屈折率を有する、ルチル型二酸化チタンを含む金属酸化物の被覆膜、ならびに酸化珪素(シリカ)の保護膜を適用し、そして 保護膜中の酸化珪素(シリカ)層に表面処理剤として、カップリング剤が適用されていて、かつ、酸化珪素(シリカ)の保護膜が、焼成された酸化物層ではない真珠光沢顔料。」 3 引用例4に記載された事項 同じく引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である、特表2000-502401号公報(以下、「引用例4」という。)には、以下の記載がある。 A 「【特許請求の範囲】 1.金属酸化物で被覆された薄片基質と、金属酸化物最上層上に位置し、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタニウム、酸化ジルコニウムからなる群からの少なくとも二つの酸化物及び/又はその組み合わせ酸化物と水系オリゴメリックシラン系とからなる表層とをベースとする、修飾された真珠光沢顔料。 ・・・ 3.オリゴメリックシラン系が、- 一般式Iの水溶性アミノアルキルアルコキシシランに、 R-Si(R^(1))_(V)(OR^(1*))_(3-V) (I)、 一般式IIaの非水溶性アルキルトリアルコキシシラン、 R^(2)-Si(OR^(1**))_(3) (IIa)、 及び/又は一般式IIIの非水溶性ジアルキルジアルコキシシラン、 AA’-Si(OR^(1***))_(2) (III)、 及び/又は一般式II及びIIIの非水溶性アルキルトリアルコキシシランの混合物を加え、上記式中、 Rはアミノ有機官能基、 R^(1)、R^(1*)、R^(1**)、R^(1***)はメチル、エチル基、 R^(2)は炭素を1から8個持つ直鎖状又は環状あるいは側鎖を持つアルキル基、 Aは炭素を1から3個持つ直鎖又は側鎖を持つアルキル基、 A′は炭素を1から3個持つ直鎖又は側鎖を持つアルキル基で0≦y≦1である。 - 該混合物に水を加え、 - 反応混合物のpHを1から8の間に調整し、 - すでに存在している及び/又は反応中に生成するアルコールを除去する、 ことによって得られることを特徴とする、請求項1と請求項2に記載の真珠光沢顔料。」 B 「使用される基質は、例えばマイカ、カオリンガラスなとの薄片材料と、その上に被覆される1又は2以上の金属酸化物層からなる顔料である。金属酸化物層は例えば、二酸化チタン、酸化鉄(III)、酸化クロム、二酸化ジルコニウム、二酸化スズ、二酸化亜鉛、又はこれらの混合物からなる。」(第12頁下から第11行?第8行) C 「オリゴメリックシラン系の有機官能基の機能は、水系コーティング系のポリマーへの結合を形成することである。そのオリゴメリック系は、互いに異なる複数の官能基が付与されているので、その顔料は異なる水系コーティング系に利用することができる。それにメタクリル基とアミノ基を付与することは、例えば、その顔料がポリマーとしてポリエステルを含んだ水系コーティング系のためと、ポリマーであるポリウレタンを含む水系コーティング系のために用いることが可能であることを意味する。」(第13頁下から第7行?末行) D 「第二の態様においては、新規顔料は第一段階で基質の金属酸化物層上に酸化アルミニウムの0.1から10重量%、好ましくは0.5から3重量%(Al_(2)O_(3)換算で)を沈殿することにより生成する。これはpH7から9において、40℃から80℃で2時間基本顔料に1から35%の濃度の希釈した塩化アルミニウム溶液を水性懸濁液中に調製することにより行われる。pHは水酸化ナトリウム溶液を同時に加えることで一定に維持する。 続いて、酸化アルミニウム水和物の沈殿と同じ条件下で行われる第二段階では、 希釈したケイ素酸ナトリウム水溶液を加えることにより二酸化ケイ素水和物が基本顔料に基づいて、0.1から10重量%、好ましくは0.5から3重量%の量で酸化アルミニウム水和物層上に沈着する。pHは塩酸を同時に加えることにより、7から9以内の範囲に一定に保つ。 そして第三段階で、20から60%のオリゴメリックシラン系の水溶液が、40℃から8O℃で10分から2時間、好ましくは30から90分顔料懸濁液中に調製される。調製された量は基本顔料に基づいて2から12重量%である。顔料は続いて反応液から分離され、洗浄により脱塩し、80℃から180℃、好ましくは120℃から160℃で乾燥される。 」(第14頁下から第5行?第15頁第12行) E 「付加的な態様として、オリゴメリックシラン系は、1又は2以上のモノメリックシランに置き換えるか追加することができる。これらのモノメリックシランには、 アルキルトリアルコキシシラン(特にメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン)又はジアルキルジアルコキシシラン(特にジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシラン)又は・・・、又はそれらの混合物が可能である。」(第16頁第2行?下から第9行) 4 引用例4に記載された技術的事項 上記3のA?Eの記載から、引用例4には、次の技術的事項が記載されている。 「真珠光沢顔料において、二酸化チタンを含む金属酸化物で被覆されたガラスの薄片を基質とし、そのトップの金属酸化物層の上に酸化アルミニウムの層を形成し、さらに、その酸化アルミニウムの層の上に二酸化ケイ素の層を適用し、二酸化ケイ素の層に有機化学的コーティングとして、アミノ有機官能基を有する一般式Iの水溶性アミノアルキルアルコキシシラン〔R-Si(R^(1))_(V)(OR^(1*))_(3-V) (I)〕を適用することにより、水系コーティング系のポリマーへの結合を形成するものであり、有機化学的コーティングとして、さらに、付加的な態様として、アルキルトリアルコキシシラン等のモノメリックシランを追加適用する技術。」 第4 対比・判断 1 本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比する。 A 引用発明の「高い屈折率」、「被覆された」、「フレーク状ガラス」、「基材」、「保護膜」、「酸化珪素(シリカ)」、「保護膜」、「表面処理剤」は、それぞれ本願発明の「高屈折」、「コーティングされた」、「ガラスフレーク」、「ベース」、「保護コート」、「SiO_(2)」、「保護コート」、「表面コーティング」に相当する。 B 引用発明の「金属酸化物の被覆膜」は、約2.7の屈折率を有する、ルチル型二酸化チタンを含むことから、屈折率は1.8より高く、かつ、100重量%のルチル顔料を有するものであり、本願発明の「A)1.8より高い屈折率nを有し、80%?100重量%のルチル含量を有するTiO_(2)を含む金属酸化物層」に相当し、つまるところ、引用発明の「金属酸化物の被覆膜、ならびに酸化珪素(シリカ)の保護膜を適用し、」は、本願発明の「A)1.8より高い屈折率nを有し、80%?100重量%のルチル含量を有するTiO_(2)を含む金属酸化物層、ならびにSiO_(2)の保護コートを適用するか、 または B)1.8より高い屈折率nを有し、80%?100重量%のルチル含量を有するTiO_(2)を含む金属酸化物層、ならびに酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムを含む第一の保護コーティングとSiO_(2)の第二の保護コーティングとを含む保護コートを適用し、」に相当する。 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次の通りである。 【一致点】 「高屈折の金属酸化物でコーティングされたガラスフレークをベースとし、そのトップの金属酸化物層の上に保護コートを有する真珠光沢顔料であって、 ガラスフレークが所定の値の範囲の平均厚みを有し、それに対して、 A)1.8より高い屈折率nを有し、80%?100重量%のルチル含量を有するTiO_(2)を含む金属酸化物層、ならびにSiO_(2)の保護コートを適用するか、 または B)1.8より高い屈折率nを有し、80%?100重量%のルチル含量を有するTiO_(2)を含む金属酸化物層、ならびに酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムを含む第一の保護コーティングとSiO_(2)の第二の保護コーティングとを含む保護コートを適用し、そして A)またはB)における保護コート中のSiO_(2)層に表面コーティングが適用されていて、かつ、SiO_(2)層が、焼成された酸化物層ではない、真珠光沢顔料。」 【相違点1】 真珠光沢顔料について、本願発明では「耐候安定性」であるのに対して、引用発明は、そのような明確な特定をしていない点。 【相違点2】 ガラスフレークの平均厚みについて、本願発明では「50nm?500nm」であるのに対し、引用発明では「100nm?7000nm」である点。 【相違点3】 表面コーティングについて、本願発明では「有機化学的」であり、かつ、「少なくとも1個の官能性結合基を有する少なくとも1種のシランと、官能性結合基を含まない少なくとも1種のシランとを含む有機官能性シランが適用されてい」るのに対して、引用発明は、そのような明確な特定をしていない点。 2 相違点についての検討 以下、各相違点について検討する。 (1) 【相違点1】について 本願明細書の発明の詳細な説明の「【0028】 光触媒的活性が減じられ、光堅牢度が向上し、市販の着色コーティングシステムと最適化された適合性を有する本発明の真珠光沢顔料を、以後においては「耐候安定性がある」と呼ぶこととする。」との記載によれば、本願発明における「耐候安定性」とは、「光触媒的活性が減じられ」ることと、「着色コーティングシステムと最適化された適合性を有する」ことと認められるが、引用発明においても、光触媒的活性を有する二酸化チタン(TiO_(2))の層に対して酸化珪素(シリカ)(SiO_(2))の保護膜で覆うことによって光触媒的活性が減じられているといえ、また、引用発明においても、当該酸化珪素(シリカ)(SiO_(2))の保護膜に対してさらに表面処理剤によって処理することで、塗膜樹脂成分との接着性を向上させていることから、着色コーティングシステムと最適化された適合性を有しているといえる。そうすると、引用発明に係る真珠光沢顔料も「耐候安定性」であるといえるから、【相違点1】は、実質的なものではない。 (2) 【相違点2】について ガラスフレークの平均厚みについて、両者は「100nm?500nm」の範囲で重複しており、例えば、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である、特表2005-502738号公報には、「【0021】 好ましいガラスフレークは1μm未満、好ましくは0.8μm未満の厚みを有している。特に厚み0.5μm以下のガラスフレークが好ましい。」と、また、同じく国際公開第02/090448号公報には、「Preferred glass flakes have an average particle size in the range of 5-150 μm and a thickness of 0.1-0.5 μm, preferably of 0.1-0.3 μm.」(第4頁第14?15行;当審訳「好ましいガラスフレークの平均粒子径は5?150μmの範囲であり、厚さが0.1?0.5μm(100nm?500nm)、好ましくは0.1?0.3μm(100nm?300nm)である。」)とそれぞれ記載されており、また、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、300nmの実施例しかなく、比較例でも同じ平均厚みであり、下限値である「50nm」や上限値である「500nm」に対する臨界的意義があるとは認められないこともあり、本願発明のように、ガラスフレークの平均厚みを「50nm?500nm」とすることは、当業者にとっては試行錯誤を通じて適宜最適化を図ったものであると認められる。 よって、【相違点2】は、当業者が容易になし得るものである。 (3) 【相違点3】について 引用例4には、上記2(2)のとおり、真珠光沢顔料において、水系コーティング系のポリマーへの結合を形成するために、最上層にある二酸化ケイ素(SiO_(2))に対して、「少なくとも1個の官能性結合基を有する少なくとも1種のシラン」であるアミノ有機官能基を有する一般式Iの水溶性アミノアルキルアルコキシシラン〔R-Si(R^(1))_(V)(OR^(1*))_(3-V) (I)〕を有機化学的コーティングとして適用すること、さらに、「官能性結合基を含まない少なくとも1種のシラン」であるアルキルトリアルコキシシラン等のモノメリックシランを追加適用することが記載されている。 引用発明と引用例4に記載された技術的事項は、いずれも、着色コーティングシステムとの結合性を最適化するために、表面コーティングを適用する点で共通するものであるから、引用発明の表面処理剤において、引用例4に記載された発明である「少なくとも1個の官能性結合基を有する少なくとも1種のシランと、官能性結合基を含まない少なくとも1種のシランとを含む有機官能性シラン」からなる有機化学的コーティングを採用し、着色コーティングシステムとの結合性を最適化ができるように構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。 なお、本願明細書の発明の詳細な説明において、「【0081】 この種のシラン(当審注:「官能性結合基を含まない少なくとも1種のシラン」のこと。)は、顔料表面の強い疎水化を作り出す。このことは、今度は、そのようにしてコーティングされた真珠光沢顔料を着色コーティングの最上部に上げる傾向につがなる(当審注:「つながる」の誤記と認める。)。微小板形状の効果顔料の場合においては、この種の挙動を「リーフィング」と呼んでいる。」と記載されており、「官能性結合基を含まない少なくとも1種のシラン」によって「リーフィング」という挙動を有する効果を奏する旨述べているが、このようなことは、例えば、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である、特開平7-62151号公報に、「【0007】 【課題を解決するための手段】驚くべきことに、改良された相溶性を達成する目的をもってシラン類で被覆された真珠光沢顔料はフィルム形成樹脂および流し込み樹脂中で顕著なリーフィング挙動を示すことを見出した。この処方物では、リーフィングは表面での顔料の配向を顕著に改良させ、その結果真珠光沢は増大する。 【0008】従って、本発明は本質的にフィルム形成樹脂または流し込み樹脂からなる処方物に関し、その特徴とするところは式Iのシラン類の1種以上でコーティングした真珠光沢顔料を含有していることである。 【0009】 SiR^(1) R^(2) R^(3) R^(4) I 式中R^(1) および/またはR^(2) は1-30個の炭素原子を有するアルキルであり、そのなかで1あるいは2個の非隣接のCH_(2) 基は-CH=CH-、-O-、-CO-、-COO-あるいは-OCO-で置換していてもよく、残りの基R^(1-4 )は互いに独立してハロゲンあるいは1-20個の炭素原子を有するアルコキシであり、そのなかで1あるいは2個の非隣接のCH_(2) 基は-CH=CH-、-O-、-CO-、-COO-あるいは-OCO-で置換していてもよい。」と記載されているように、周知の技術的事項に過ぎない。 よって、【相違点3】は、当業者が容易になし得るものである。 そして、本願発明による上記【相違点1】?【相違点3】に係る効果も、引用発明、引用例4に記載された技術的事項及び周知の技術的事項から当業者が予測し得たものであって、格別のものとはいえない。 3 小括 よって、本願発明は、引用発明、引用例4に記載された技術的事項及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-06-12 |
結審通知日 | 2015-06-16 |
審決日 | 2015-06-29 |
出願番号 | 特願2008-555709(P2008-555709) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C09C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福永 千尋、福井 美穂 |
特許庁審判長 |
山田 靖 |
特許庁審判官 |
國島 明弘 日比野 隆治 |
発明の名称 | 薄いガラスの微小板をベースとする耐候安定性真珠光沢顔料およびそれを調製するためのプロセス |
代理人 | 阿部 伸一 |
代理人 | 清水 善廣 |
代理人 | 辻田 幸史 |