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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1307652
審判番号 不服2014-14656  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-25 
確定日 2015-11-11 
事件の表示 特願2011- 28834「認証された無線装置トランザクションイベントデータを有した請求システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月28日出願公開、特開2011-147145〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯と本願発明
本願は、2004年6月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年6月30日、米国)を国際出願日とした特願2006-517697号の一部を平成23年2月14日に新たな特許出願とした出願であって、原審において平成23年3月16日付けで手続補正され、平成25年7月4日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月9日付けで手続補正されたが、同年3月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月25日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

本願の請求項1ないし63に係る発明は、平成26年1月9日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし63に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、特許請求の範囲の請求項43に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項43に記載された以下のとおりのものと認める。

「認証可能なトランザクションデータを収集して、無線ネットワークを介してトランザクションを行う無線装置に関して課金を発生するサーバにおいて、
1つまたは複数の無線装置から認証可能なトランザクションイベントデータを受信する手段と、
前記認証可能なトランザクションイベントデータを認証する手段と、
各トランザクションイベントが、そのトランザクションイベントを生じさせた特定の無線装置に課金可能であるように前記認証可能なトランザクションイベントデータをトランザクションイベント課金データに集約する手段と、
を具備し、
前記認証可能なトランザクションイベントデータは、前記無線ネットワークを介してコンピュータ装置と相互作用する前記特定の無線装置により開始された1つまたは複数の課金可能なトランザクションイベントにより生じ、前記特定の無線装置は、特定の課金可能なトランザクションイベントが前記特定の無線装置により発生されたことを検証するように構成された認証可能なトランザクションイベントデータを発生し、
各認証可能なトランザクションイベントデータは、前記課金可能なトランザクションイベントに関与する前記コンピュータ装置からの第1の鍵と、ここにおいて、前記第1の鍵は、前記課金可能なトランザクションイベントを識別する、
前記特定の無線装置からの第2の鍵と、ここにおいて、前記第2の鍵は、前記特定の無線装置を識別する、
無線サービスプロバイダ請求コンピュータを有する無線サービスプロバイダが前記無線ネットワークへの前記無線装置に関するアクセスを提供する、
前記認証可能なトランザクションイベントデータは前記第1及び第2の鍵を具備し、
前記コンピュータ装置は前記認証可能なトランザクションイベントデータを前記課金コンピュータ及び前記無線サービスプロバイダ請求コンピュータを含む、前記無線ネットワークと選択的通信状態にある任意の複数のコンピュータに送信する、
を含む、サーバ。」

第2 引用発明
原審の拒絶理由に引用された本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2002-251578(平成14年9月6日公開、以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、商品又はサービスの提供者と顧客との間の売買取引を処理するための売買取引処理方法、その購入処理方法、ネットワーク使用料課金方法、決済仲介処理方法、商品又はサービス提供方法及びそれらのシステムに係り、特に携帯電話網やPDA(Personal Digital Assistant)を用いたものに関する。」(4頁5欄)

ロ.「【0016】図1に、本発明の実施の形態における購入取引システムのブロック図を示す。
【0017】購入取引システムは、購入取引を行う携帯端末1(クライアント端末)と、携帯端末1をネットワーク6(例えば、インターネット等)へ通信接続するための第1のネットワーク接続システム3,第2のネットワーク接続システム3´と、インターネット6と、商品(デジタルコンテンツ等の無体物も含む、)又はサービスの注文を受ける提供者システム23,24と、購入者とネットワーク接続者又は提供者との間の決済を処理するための金融機関システム21と、電子証明書を発行・管理するための認証局システム22とを備える。
【0018】携帯端末1は、ネットワーク接続者の契約者(商品又はサービスの購入を希望する顧客)によって使用される。顧客は、携帯端末1は提供者から、商品又はサービスを購入する。携帯端末1は、携帯電話機やPDA等の通信機能を備えた端末であるのが好ましい。尚、携帯端末1は、ネットワーク接続者との使用契約するものであればよく、固定電話やパーソナル・コンピュータであってもよい。つまり、携帯端末1は契約者端末である。
【0019】ネットワーク接続システム3は、ネットワーク接続者(例えば、電話会社やインターネットプロバイダ等)によって使用される。ネットワーク接続システム3は、PLMN4と、ネットワーク間のアクセスを可能にするためのゲートウェイ5と、携帯端末1のネットワークの使用料(例えば、通信時間や通信パケット量に応じた電話料金や基本料金等を含む。)を課金するためのネットワーク課金サーバ18と、契約者ごとにネットワーク使用料やその使用履歴を蓄積するデータベース19と、契約者ごとに商品又はサービスの代金(商品の配送料を含んでもよいし、含まなくてもよい。)やその取引履歴を蓄積するデータベース20とを備える。ネットワーク接続システム3´も同様である。
【0020】提供者システム23は、商品又はサービスを提供する提供者によって使用される。提供者は、個人であってもよいし。小売業者であってもよい。例えば、ネットオークションを利用する場合は、提供者は、個人である場合が多く、直販の場合は、提供者は、小売業者である場合が多い。本実施の形態では、提供者が小売業者である場合を説明する。よって、提供者システム23は、商品又はサービスを提供する小売業者によって使用される小売店サーバと、商品又はサービスの注文をした顧客ごとに請求書情報を蓄積する取引データベース30とを備える。提供者システム23は、さらに、顧客へ通知するための電子メールサーバを備えてもよい。提供者システム24も同様である。
【0021】尚、本発明の実施の形態を、ネットオークションに利用する場合は、さらに、オークションサーバが、ネットワーク6に接続される。このオークションサーバは、提供者の商品の内容(例えば、説明、価格、画像等)を携帯端末1へ提供する機能を備える。
【0022】携帯端末1は、第1のネットワーク接続システム3を通じて、ネットワーク6へ接続可能である。よって、携帯端末1は、ネットワーク接続者に対し、加入契約を予め締結するのが好ましい。ネットワーク接続者は、契約者に対し、ネットワーク上の識別情報(例えば、電話番号、電子メールアドレス)を付与する。ネットワーク接続者は、契約者の個人情報(例えば、氏名、住所等)と識別情報とを対応づけて記憶、管理する。
【0023】携帯端末1は、無線リンク2によって、第1のネットワーク接続システム3に通信接続可能である。ネットワーク接続システム3は、既存音声通信のほかにデータサービスも提供できるように調整されたPLMN4を含んでいる。データ通信のために、PLMN4は、ゲートウェイ5を通してネットワーク6に接続可能である。ネットワーク6が例えばWAP処理可能なGSMネットワークである場合、その場合ゲートウェイ5はWAPサーバになる。ネットワーク6はその他のネットワーク標準やプロトコル仕様に準拠していてもよく、本発明はいかなる特定のプロトコルや標準に制約されるものではない。第二のネットワーク接続システム3'は第一のネットワーク接続システム3と類似の方法でインターネット6に接続可能である。」(5頁8欄?6頁10欄)

ハ.「【0034】図3に、本発明の実施の形態における購入取引の処理フロー図を示す。
【0035】契約者(顧客)の操作に応じて、携帯端末1は、ネットワーク接続システム3及びネットワーク6を通じて、小売店サーバ16,17とのデータ通信を確立する(ステップ0)。例えば、このデータ通信はゲートウェイ5に関連付けられた小売店サーバ16,17電話番号やURL(Universal Resource Location)を用いて行う。このときネットワーク課金サーバ18は、通話開始時刻をデータベース19に記録するのが好ましい。小売店サーバ16,17は、商品又はサービスに関する情報(商品又はサービスの種類、価格、画像等)を、携帯端末1へ送信する。携帯端末1は、商品又はサービスに関する情報をディスプレイ12に表示する。契約者は、携帯端末1のディスプレイ12に表示されたブラウザを操作することによって、前記複数の小売店サーバによって提供される商品やサービスに関する情報を見ることができる。この例では契約者は、小売店サーバ16によって提供されるものを購入しようと決心したこととする。
【0036】携帯端末1は、通信確立後に、取引の開始をネットワーク課金サーバ18へ送信する(ステップ1)。ネットワーク課金サーバ18は、接続開始時刻をデータベース20に記録する(ステップ2)。但し、ステップ1及びステップ2はなくてもよい。
【0037】契約者は、ディスプレイ12に表示された商品又はサービスに関する情報を閲覧して、キーパッド11を操作して、希望する商品又はサービスを選択し、商品又はサービスに購入申込(注文依頼)を入力する。これは例えばキーパッド11を操作することによりブラウザに示されたリンクをたどることで実行される。携帯端末1は、契約者からの商品又はサービスの選択及び購入申込の入力を受けた場合に、商品又はサービスを特定し、注文情報を、小売店サーバ16へ送信する。
【0038】小売店サーバ16は、携帯端末1からの注文依頼を受信した場合に、注文された商品又はサービスに関する請求書情報を作成する。
【0039】図4に、本発明の実施の形態における請求書情報の構成図を示す。
【0040】小売店サーバ16が、請求書情報を作成する。請求書情報は、例えば、取引の金額情報23、取引を識別するためのアルファベットや数字数桁からなる取引ID24、取引の日時情報25、小売業者を識別するための小売店ID26を含む。請求書情報は、さらに、小売店サーバ16に対応する小売業者の電子署名27を含むのが好ましい。小売店サーバ16は、課金サーバ18から領収書を受け取った後は、ネットワーク接続システム3がわかるので、請求書情報はネットワーク接続システム3を識別するためのネットワーク接続者IDを含んでもよい。電子署名27は、請求書情報に非対称的なハッシュ関数を作用させ、ハッシュ値を得、そのハッシュ値に、小売店サーバ16に対応する小売業者の秘密鍵によって署名されることによって生成される。即ち、ハッシュ値を秘密鍵によって暗号化される。電子署名27は、秘密鍵に対応する公開鍵とハッシュ関数を用いてチェックすることが可能である。このチェックは、ネットワーク接続システム3で行うのが好ましい。秘密鍵に対応して公開鍵が存在し、秘密鍵によって暗号化されたデータは、公開鍵によって復号化できる。
【0041】小売店サーバ16は、請求書情報を、ネットワーク6を通じて、携帯端末1へ送信する。携帯端末1は、請求書情報を受信し、ディスプレイ12へ表示する(ステップ5)。契約者は、請求書情報を閲覧し、意図した購入に対応しているかどうか確認する。契約者が請求書情報を確認すると、あらかじめ定められた携帯端末1上のキーパッド11のキーを指示する。携帯端末1は、契約者からの請求書確認済の指示を受けた場合に、請求書情報を、ネットワーク課金サーバ18へ送信する(ステップ7)。つまり、請求書情報は、契約者が注文した商品又はサービスの種類や金額情報の確認の意義もある。
【0042】ネットワーク課金サーバ18は、請求書情報の小売店IDを抽出し、小売店サーバ16を特定し、小売店サーバ16と関連づけられた公開鍵を、認証局システム22へ要求する。認証局システム22は、小売店サーバ16と関連づけられた公開鍵を抽出し、ネットワーク課金サーバ18へ送信する。ネットワーク課金サーバ18は、直接的または間接的に認証局システム22から公開鍵を受信し、この公開鍵を用いて請求書情報の正当性をチェックする(ステップ8)。例えば、ネットワーク課金サーバ18は、携帯端末1から受信された請求書情報を、公開鍵を用いて復号化する。一方、ネットワーク課金サーバ18は、小売店サーバ16から受信された請求書情報に、ハッシュ関数を作用させ、ハッシュ値を得る。ネットワーク課金サーバ18は、復号化された請求書情報の値と、ハッシュ値とを比較し、両者の値が一致した場合に、携帯端末1から受信された請求書情報を正当であると判定し、両者の値が一致しない場合に、携帯端末1から受信された請求書情報を不正であると判定する。
【0043】そして、請求書情報が正当であると判定された場合は、ネットワーク課金サーバ18は、請求書情報に基づいて、取引情報を作成し、データベース20に携帯端末1の契約者情報に関連づけて、取引情報を格納する(ステップ9)。取引情報は、決済を行うために利用される。このようにして、取引情報は、将来ネットワーク課金サーバ18によって、契約者へ発行する領収書を作成するためのデータベース20に格納される。ネットワーク課金サーバ18は、請求書情報に対応する領収書情報を作成する(ステップ10)。一方、携帯端末1から受信された請求書情報が不正である場合は、ネットワーク課金サーバ18は、取引情報を作成しない。尚、取引情報の詳細は、図8で説明する。」(7頁12欄?8頁14欄)

ニ.「【0055】図8に、本発明の実施の形態におけるネットワーク課金サーバのデータベースに保持されるデータの構造図を示す。データベース20は、行37-40の各行に取引毎のデータが格納しており。それぞれ小売店サーバ16,17の小売店ID26、契約者ID41(これは契約電話番号すなわちMSISDNでもよい)、取引ID24、金額23、取引日付25などを含む。データベース20は、さらにステップ2、16で記録される取引開始時刻、取引終了時刻を格納していてもよい。
【0056】個々の契約者は定期的(例えば一月毎)に請求書を受け取る。請求書は、電子的なデータで、携帯端末1へ送信されもよいし、紙で、契約者へ郵送されてもよい。その請求書には、ネットワーク使用料、即ち、データベース19に格納されている音声、データ通信の通話料と、データベース20に格納されている小売店サーバ16、17などから送られてきた請求書に対応する取引金額を含む。従って、ネットワーク接続者が、ネットワーク使用料と併せて、小売業者の取引金額を、購入者(契約者)へ請求する。尚、決済は、金融機関システム21で行うのが好ましい。ネットワーク使用料と取引金額とは、1つの請求書に含まれてもよいし、別項の請求書に含まれてもよい。これによって、契約者は、小売業者からの購入金額を小売業者へ支払う必要がなく、ネットワーク使用料と併せて、小売業者からの購入金額を、ネットワーク接続者に支払えばよい。ネットワーク接続者が、契約者から支払いを受ける前に、契約者の購入金額を小売店へ支払う場合は、ネットワーク接続者が、契約者の購入金額を肩代わりすることとなる。一方、ネットワーク接続者が、契約者から支払いを受けた後に、契約者の購入金額を小売店へ支払ってもよい。
【0057】図9に、本発明の実施の形態におけるネットワーク課金サーバによって契約者個々人に請求書を送るときの処理フロー図を示す。
【0058】小売店サーバ16は、取引ステータスフラグ36を、「決済中」に更新する。ネットワーク課金サーバ18のCPUによって、任意の契約者を選択する(ステップ19)。ネットワーク課金サーバ18は、対応する契約者ID41をキーに、所定期間(例えば1ヶ月)の間の取引情報を、データベース20から検索する(ステップ20)。また、ネットワーク課金サーバ18は、契約者ID41をキーに、所定期間(例えば1ヶ月)の間の通信情報を、データベース19から検索する(ステップ21)。ネットワーク課金サーバ18は、取引情報(商品又はサービスの代金)と通信情報(ネットワーク使用料)とを合計し、請求書を作成する(ステップ22)。ネットワーク課金サーバ18は、取引情報の変わりに、請求書情報や領収書情報を用いてもよい。例えば、ネットワーク課金サーバ18は、取引情報に基づいて所定期間内の取引に係る合計金額を算出し、通信情報に基づいて所定期間内の通信に係る合計金額を算出し、取引情報の合計金額と通信情報の合計金額とを合計して、請求金額とする。作成された請求書は、印刷される。尚、請求書は、ネットワークの使用料やネットワークの使用履歴、商品やサービスの代金や商品やサービスの取引履歴を含むのが好ましい。ネットワーク接続者は、請求書を、契約者の住所へ郵送する。尚、ネットワーク接続システム3が、電子的な請求書を作成し、携帯端末1へ送信してもよい。上述のようにネットワーク課金サーバ18はPLMN4のHLRに接続されていてもよく、その場合契約者の請求書送付先住所はHLRから得られる。」(9頁16欄?10頁17欄)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の【0017】における「購入取引システムは、購入取引を行う携帯端末1(クライアント端末)と、携帯端末1をネットワーク6(例えば、インターネット等)へ通信接続するための第1のネットワーク接続システム3、・・・インターネット6と、商品(デジタルコンテンツ等の無体物も含む、)又はサービスの注文を受ける提供者システム23,24と、・・・を備える。」との記載、同ロ.の【0019】における「ネットワーク接続システム3は、ネットワーク接続者(例えば、電話会社やインターネットプロバイダ等)によって使用される。・・・携帯端末1のネットワークの使用料(例えば、通信時間や通信パケット量に応じた電話料金や基本料金等を含む。)を課金するためのネットワーク課金サーバ18と、・・・を備える。」との記載、同ロ.の【0020】における「提供者システム23は、商品又はサービスを提供する小売業者によって使用される小売店サーバと、・・・を備える。」との記載、及び図1によれば、引用例の購入取引システムは、購入取引を行う携帯端末(1)と、ネットワーク接続システム(3)と、提供者システム(23)とを備え、ネットワーク接続システム(3)は、ネットワーク課金サーバ(18)を備え、提供者システム(23)は、小売店サーバ(16)を備えている。
また、上記ハ.の【0041】における「小売店サーバ16は、請求書情報を、ネットワーク6を通じて、携帯端末1へ送信する。携帯端末1は、請求書情報を受信し、・・・携帯端末1は、契約者からの請求書確認済の指示を受けた場合に、請求書情報を、ネットワーク課金サーバ18へ送信する(ステップ7)。」との記載、及び図3における、前述のネットワーク課金サーバ(18)に着目すれば、引用例のネットワーク課金サーバ(18)は、携帯端末(1)が、請求書情報をネットワーク課金サーバ(18)へ送信しているから、ネットワーク課金サーバ(18)からみれば、請求書情報を受信しているということができる。そして、ネットワーク課金サーバ(18)は、請求書情報を受信している以上、携帯端末(1)から請求書情報を受信する受信手段を備えていることは明らかである。ここで、上記ロ.の【0019】における「携帯端末1のネットワークの使用料(例えば、通信時間や通信パケット量に応じた電話料金や基本料金等を含む。)を課金するためのネットワーク課金サーバ18」との記載、同ロ.の【0023】における「携帯端末1は、無線リンク2によって、第1のネットワーク接続システム3に通信接続可能である。」との記載によれば、ネットワーク課金サーバ(18)は、携帯端末(1)のネットワークの使用料を課金しているから、無線リンク(2)を介して購入取引を行う携帯端末(1)に関して課金を発生させているということができる。
また、上記ハ.の【0042】における「ネットワーク課金サーバ18は、請求書情報の小売店IDを抽出し、小売店サーバ16を特定し、小売店サーバ16と関連づけられた公開鍵を、認証局システム22へ要求する。認証局システム22は、小売店サーバ16と関連づけられた公開鍵を抽出し、ネットワーク課金サーバ18へ送信する。ネットワーク課金サーバ18は、直接的または間接的に認証局システム22から公開鍵を受信し、この公開鍵を用いて請求書情報の正当性をチェックする(ステップ8)。」との記載、及び図3によれば、ネットワーク課金サーバ(18)は、携帯端末(1)から受信された請求書情報の正当性をチェックしている以上、請求書情報の正当性をチェックするチェック手段を備えることは明らかである。
また、上記ニ.の【0058】における「ネットワーク課金サーバ18のCPUによって、任意の契約者を選択する(ステップ19)。ネットワーク課金サーバ18は、対応する契約者ID41をキーに、所定期間(例えば1ヶ月)の間の取引情報を、データベース20から検索する(ステップ20)。また、ネットワーク課金サーバ18は、契約者ID41をキーに、所定期間(例えば1ヶ月)の間の通信情報を、データベース19から検索する(ステップ21)。ネットワーク課金サーバ18は、取引情報(商品又はサービスの代金)と通信情報(ネットワーク使用料)とを合計し、請求書を作成する(ステップ22)。」との記載、及び図8によれば、ネットワーク課金サーバ(18)は、契約者(ID41)(すなわち、契約電話番号)をキーに、所定期間の間の取引情報(すなわち、請求書情報)を、データベース(20)から、所定期間の間の通信情報を、データベース(19)から検索し、取引情報(商品又はサービスの代金)と通信情報(ネットワーク使用料)とを合計して、請求書を作成しているから、ネットワーク課金サーバ(18)は、商品又はサービスの注文が、その商品又はサービスの注文を生じさせた携帯端末(1)に課金可能であるように請求書情報を通信情報と合計する合計手段を備えているということができる。
また、上記ハ.の【0037】における「契約者は、ディスプレイ12に表示された商品又はサービスに関する情報を閲覧して、キーパッド11を操作して、希望する商品又はサービスを選択し、商品又はサービスに購入申込(注文依頼)を入力する。・・・携帯端末1は、契約者からの商品又はサービスの選択及び購入申込の入力を受けた場合に、商品又はサービスを特定し、注文情報を、小売店サーバ16へ送信する。」(ステップ3)との記載、同ハ.の【0038】における「小売店サーバ16は、携帯端末1からの注文依頼を受信した場合に、注文された商品又はサービスに関する請求書情報を作成する。」との記載、及び図3によれば、前述の請求書情報は、無線リンク(2)を介して小売店サーバ(16)と購入取引をする携帯端末(1)により開始された商品又はサービスの注文により生じることは明らかである。
また、上記ハ.の【0040】における「小売店サーバ16が、請求書情報を作成する。請求書情報は、例えば、取引の金額情報23、取引を識別するためのアルファベットや数字数桁からなる取引ID24、取引の日時情報25、小売業者を識別するための小売店ID26を含む。請求書情報は、さらに、小売店サーバ16に対応する小売業者の電子署名27を含むのが好ましい。」との記載、上記ロ.の【0022】における「携帯端末1は、ネットワーク接続者に対し、加入契約を予め締結するのが好ましい。ネットワーク接続者は、契約者に対し、ネットワーク上の識別情報(例えば、電話番号、電子メールアドレス)を付与する。」との記載によれば、前述の売店サーバ(16)は、注文された商品又はサービスに関する請求書情報を作成しており、また、請求書情報である以上、商品又はサービスを注文した携帯端末(1)の識別情報が付されていることは明らかであるから、前述の売店サーバ(16)は、商品又はサービスの注文が携帯端末(1)により依頼されたことが分かる請求書情報を作成しているということができる。
また、上記ハ.の【0040】における「請求書情報は、例えば、取引の金額情報23、取引を識別するためのアルファベットや数字数桁からなる取引ID24、取引の日時情報25、小売業者を識別するための小売店ID26を含む。請求書情報は、さらに、小売店サーバ16に対応する小売業者の電子署名27を含むのが好ましい。」との記載、及び図4によれば、前述の請求書情報は、前述の商品又はサービスの注文に関与する小売店サーバ(16)からの電子署名(27)を有している。
また、上記ロ.の【0022】における「携帯端末1は、第1のネットワーク接続システム3を通じて、ネットワーク6へ接続可能である。よって、携帯端末1は、ネットワーク接続者に対し、加入契約を予め締結するのが好ましい。ネットワーク接続者は、契約者に対し、ネットワーク上の識別情報(例えば、電話番号、電子メールアドレス)を付与する。」との記載によれば、前述の携帯端末(1)は、識別情報を有している。
また、上記ロ.の【0019】における「ネットワーク接続システム3は、ネットワーク接続者(例えば、電話会社やインターネットプロバイダ等)によって使用される。」との記載、同ロ.の【0023】における「携帯端末1は、無線リンク2によって、第1のネットワーク接続システム3に通信接続可能である。」との記載によれば、ネットワーク接続システム(3)が、ネットワーク接続者によって使用される以上、ネットワーク接続者は、前述の無線リンク(2)への携帯端末(1)に関するアクセスを提供しているということができる。
また、上記ハ.の【0041】における「小売店サーバ16は、請求書情報を、ネットワーク6を通じて、携帯端末1へ送信する。携帯端末1は、請求書情報を受信し」との記載によれば、前述の請求書情報は、携帯端末(1)へ送信し受信される以上、携帯端末(1)は識別情報を有することは明らかであり、そして、前述のとおり、請求書情報は、電子署名(27)を有するから、請求書情報は、電子署名(27)及び識別情報を備えているということができる。
また、上記ハ.の【0041】における「小売店サーバ16は、請求書情報を、ネットワーク6を通じて、携帯端末1へ送信する。携帯端末1は、請求書情報を受信し、・・・携帯端末1は、契約者からの請求書確認済の指示を受けた場合に、請求書情報を、ネットワーク課金サーバ18へ送信する(ステップ7)。」との記載、及び図3によれば、前述の小売店サーバ(16)は、請求書情報をネットワーク課金サーバ(18)に送信しているということができる。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「請求書情報を受信して、無線リンク(2)を介して購入取引を行う携帯端末(1)に関して課金を発生するネットワーク課金サーバ(18)において、
携帯端末(1)から請求書情報を受信する受信手段と、
前記請求書情報の正当性をチェックするチェック手段と、
商品又はサービスの注文が、その商品又はサービスの注文を生じさせた携帯端末(1)に課金可能であるように前記請求書情報を通信情報と合計する合計手段と、
を具備し、
前記請求書情報は、前記無線リンク(2)を介して小売店サーバ(16)と購入取引をする前記携帯端末(1)により開始された商品又はサービスの注文により生じ、売店サーバ(16)は、商品又はサービスの注文が携帯端末(1)により依頼されたことが分かる請求書情報を作成し、
前記請求書情報は、前記商品又はサービスの注文に関与する前記小売店サーバ(16)からの電子署名(27)と、ここにおいて、前記電子署名(27)は、前記商品又はサービスの注文を識別する、
前記携帯端末(1)からの識別情報と、ここにおいて、前記識別情報は、前記携帯端末(1)を識別する、
ネットワーク接続者が前記無線リンク(2)への前記携帯端末(1)に関するアクセスを提供する、
前記請求情報は前記電子署名(27)及び識別情報を具備し
前記小売店サーバ(16)は、前記請求書情報を前記ネットワーク課金サーバ(18)に送信する、
を含む、ネットワーク課金サーバ(18)。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a.上記引用例の上記ハ.の【0042】における「ネットワーク課金サーバ18は、・・・小売店サーバ16と関連づけられた公開鍵を、認証局システム22へ要求する。認証局システム22は、小売店サーバ16と関連づけられた公開鍵を抽出し、ネットワーク課金サーバ18へ送信する。ネットワーク課金サーバ18は、直接的または間接的に認証局システム22から公開鍵を受信し、この公開鍵を用いて請求書情報の正当性をチェックする(ステップ8)。」との記載、及び図3によれば、引用発明の「請求書情報」は、公開鍵を用いて正当性を認証可能な商品又はサービスの注文(すなわち、イベント)の購入取引(transaction)に係るデータであるから、「認証可能なトランザクションイベントデータ」ということができる。
b.引用発明の「受信」は、請求書情報を受信して収集するから、「収集」ということができる。
c.引用発明の「無線リンク(2)」、「携帯端末(1)」、「受信手段」及び「正当性をチェックするチェック手段」は、本願発明の「無線ネットワーク」、「無線装置」、「受信する手段」及び「認証する手段」にそれぞれ相当する。
d.引用発明の「通信情報と合計する合計手段」は、請求書情報を通信情報と合計するから、「トランザクションイベント課金データに集約する手段」ということができる。
e.引用発明の「小売店サーバ(16)」は、「コンピュータ装置」ということができる。
f.引用発明の「売店サーバ(16)は、商品又はサービスの注文が携帯端末(1)により依頼されたことが分かる請求書情報を作成し」と、本願発明の「前記特定の無線装置は、特定の課金可能なトランザクションイベントが前記特定の無線装置により発生されたことを検証するように構成された認証可能なトランザクションイベントデータを発生し」とは、上記a.の対比を考慮すると、後述する相違点を除いて、「特定の装置は、特定の課金可能なトランザクションイベントが特定の無線装置により発生されたことを検証するように構成された認証可能なトランザクションイベントデータを発生し」という点で一致する。
g.引用発明の「購入取引」は、携帯端末(1)と小売店サーバ(16)とが商品又はサービスを注文して購入する相互作用をするから、「相互作用」ということができる。
h.本願明細書段落【0023】における「ダウンロード可能なアプリケーションは少なくともデータとして販売者キーを含んでいる、そして方法として「認証されたトランザクションイベントオブジェクト」および「販売者キーとデジタル署名を送信する」を含む。そして、無線装置ダウンロードインターフェース72はデータとしてデジタル署名または、暗号鍵または技術的に知られている他の固有データのような他の識別データを含み、「デジタル署名を送信する」ための方法を含む。・・・ダウンロード可能なアプリケーション70はトランザクションイベントオブジェクトデータ74を作成し、販売者キーおよびデジタル署名と一緒にトランザクションイベントデータオブジェクト74を投入し、それにより、トランザクションイベントデータオブジェクト74はアプリケーションの販売者と購入する無線装置の固有データで認証することができる。」との記載によれば、本願発明の「鍵」は、「販売者キー、デジタル署名、固有データ」を含むものである。したがって、引用発明の「電子署名(27)」及び「識別情報」は、本願発明の「鍵」と差異はない。そして、引用発明の「電子署名(27)」及び「識別情報」を、それぞれ「第1の鍵」及び「第2の鍵」と称することは任意である。
i.引用発明の「ネットワーク接続者」と、本願発明の「無線サービスプロバイダ」とは、後述する相違点を除いて、「電気通信事業者」という点で一致する。
j.引用発明の「前記小売店サーバ(16)は、前記請求書情報を前記ネットワーク課金サーバ(18)に送信する」と、本願発明の「前記コンピュータ装置は前記認証可能なトランザクションイベントデータを前記課金コンピュータ及び前記無線サービスプロバイダ請求コンピュータを含む、前記無線ネットワークと選択的通信状態にある任意の複数のコンピュータに送信する」とは、引用発明の「ネットワーク課金サーバ(18)」が、無線リンク(2)(無線ネットワーク)と選択的通信状態にある任意のコンピュータといえるから、後述する相違点を除いて、「前記コンピュータ装置は前記認証可能なトランザクションイベントデータを前記課金コンピュータを含む、前記前記無線ネットワークと選択的通信状態にある任意のコンピュータに送信する」という点で一致する。
k.引用発明の「ネットワーク課金サーバ(18)」は、「サーバ」ということができる。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「認証可能なトランザクションデータを収集して、無線ネットワークを介してトランザクションを行う無線装置に関して課金を発生するサーバにおいて、
1つまたは複数の無線装置から認証可能なトランザクションイベントデータを受信する手段と、
前記認証可能なトランザクションイベントデータを認証する手段と、
各トランザクションイベントが、そのトランザクションイベントを生じさせた特定の無線装置に課金可能であるように前記認証可能なトランザクションイベントデータをトランザクションイベント課金データに集約する手段と、
を具備し、
前記認証可能なトランザクションイベントデータは、前記無線ネットワークを介してコンピュータ装置と相互作用する前記特定の無線装置により開始された1つまたは複数の課金可能なトランザクションイベントにより生じ、特定の装置は、特定の課金可能なトランザクションイベントが特定の無線装置により発生されたことを検証するように構成された認証可能なトランザクションイベントデータを発生し、
各認証可能なトランザクションイベントデータは、前記課金可能なトランザクションイベントに関与する前記コンピュータ装置からの第1の鍵と、ここにおいて、前記第1の鍵は、前記課金可能なトランザクションイベントを識別する、
前記特定の無線装置からの第2の鍵と、ここにおいて、前記第2の鍵は、前記特定の無線装置を識別する、
電気通信事業者が前記無線ネットワークへの前記無線装置に関するアクセスを提供する、
前記認証可能なトランザクションイベントデータは前記第1及び第2の鍵を具備し、
前記コンピュータ装置は前記認証可能なトランザクションイベントデータを前記課金コンピュータを含む、前記無線ネットワークと選択的通信状態にある任意のコンピュータに送信する、
を含む、サーバ。」

<相違点1>
「特定の装置は、特定の課金可能なトランザクションイベントが特定の無線装置により発生されたことを検証するように構成された認証可能なトランザクションイベントデータを発生し」に関し、
本願発明は、「前記特定の無線装置は」、特定の課金可能なトランザクションイベントが「前記」特定の無線装置により発生されたことを検証するように構成された認証可能なトランザクションイベントデータを発生するのに対し、引用発明は、商品又はサービスの注文が携帯端末(1)により依頼されたことが分かる請求書情報を作成するものの、「売店サーバ(16)」が作成し、「前記特定の無線装置は」発生しない点。

<相違点2>
「電気通信事業者」に関し、
本願発明は、「無線サービスプロバイダ請求コンピュータを有する無線サービスプロバイダ」であるのに対し、引用発明は、ネットワーク接続者であるものの、「無線サービスプロバイダ請求コンピュータ」を有しておらず、「無線サービスプロバイダ」であるか明らかでない点。

<相違点3>
「前記コンピュータ装置は前記認証可能なトランザクションイベントデータを前記課金コンピュータを含む、前記前記無線ネットワークと選択的通信状態にある任意のコンピュータに送信する」に関し、
本願発明は、「前記コンピュータ装置は前記認証可能なトランザクションイベントデータを前記課金コンピュータ及び前記無線サービスプロバイダ請求コンピュータを含む、前記無線ネットワークと選択的通信状態にある任意の複数のコンピュータに送信する」のに対し、引用発明は、前記小売店サーバ(16)は、前記請求書情報を前記ネットワーク課金サーバ(18)に送信するものの、「前記無線サービスプロバイダ請求コンピュータ」を含む、無線ネットワークと選択的通信状態にある任意の「複数の」コンピュータに送信していない点。

第4 判断
そこで、まず、上記相違点1について検討する。
本願発明は、いわゆるサブコンビネーション発明であり、上記相違点1は、サーバの発明において、サーバ自体が備える手段でなく、サーバの発明を直接特定しない構成(すなわち、「特定の無線装置」の構成)に関するものである。
ここで、発明特定事項としての発明を直接特定しない記載と、引用発明特定事項とに記載上・表現上の相違が生じているが、その相違が、サブコンビネーション発明の構成や動作内容と、引用発明の構成や動作内容との間に実質的な差異をもたらさないか否か検討する。
本願発明は、「前記特定の無線装置は、特定の課金可能なトランザクションイベントが前記特定の無線装置により発生されたことを検証するように構成された認証可能なトランザクションイベントデータを発生し」これに関連して、本願発明の「サーバ」は、「1つまたは複数の無線装置から認証可能なトランザクションイベントデータを受信する手段と、前記認証可能なトランザクションイベントデータを認証する手段と」を具備している。
また、本願発明段落【0029】における「図7は、無線ネットワーク14からトランザクションイベントデータ74を受信し、認証し、記憶し、要求に応じてトランザクションイベント請求データを無線サービスプロバイダー請求コンピューター41に送信する請求コンピューター30上で実行するプロセスまたはサブプロセスの一実施形態を図解するフローチャートである。判断118で示すように、トランザクションイベントデータ74が1つ以上の無線装置12、18、20、22から受信されたかどうかの判断を介してプロセスが入力される。判断112において、トランザクションイベントデータ74が受信されたなら、ステップ114において示すようにトランザクションイベントデータ74が受信され認証される。一実施形態において、認証は、無線装置12、18、20、22の販売者キーおよびデジタル署名の検証から生じる。・・・判断118においてトランザクション請求データを送信するための要求が受信されなかったなら、プロセスは判断112に戻り、待ち状態に入り、トランザクションデータおよびトランザクションデータ送信要求がなされたかどうかを絶えず決定している。」との記載、及び図7によれば、請求コンピューター(30)は、トランザクションイベントデータ(74)が受信されたならば(ステップ112、YES)、トランザクションイベントデータ(74)が受信し認証する(ステップ114)ものである。
一方、引用発明は、「売店サーバ(16)は、商品又はサービスの注文が携帯端末(1)により依頼されたことが分かる請求書情報を作成し」これに関連して、引用発明の「ネットワーク課金サーバ(18)」は、「携帯端末(1)から請求書情報を受信する受信手段と、前記請求書情報の正当性をチェックするチェック手段と」を具備するものである。
また、引用発明の動作内容は、上記「第2 引用発明」の項における上記ハ.の【0041】、【0042】の上記記載のとおりである。
そして、本願発明の発明特定事項である「前記特定の無線装置は、特定の課金可能なトランザクションイベントが前記特定の無線装置により発生されたことを検証するように構成された認証可能なトランザクションイベントデータを発生し」との構成は、本願発明の「1つまたは複数の無線装置から認証可能なトランザクションイベントデータを受信する手段」及び「前記認証可能なトランザクションイベントデータを認証する手段」が、「特定の課金可能なトランザクションイベントが特定の無線装置により発生されたことを検証するように構成された認証可能なトランザクションイベントデータ」を受信し認証しさえすれば、「サーバ」は「サーバ」の目的とする機能を達成するものである。
してみれば、「前記特定の無線装置」が「認証可能なトランザクションイベントデータ」を発生することは、特定の無線装置がどのようなものであるかについて特定する一方で、「サーバ」の機能を何ら特定していない。したがって、「前記特定の無線装置」が「認証可能なトランザクションイベントデータ」を発生する点は、サブコンビネーションの発明である「サーバ」を特定するための意味を有していない。
そうすると、発明特定事項としての発明を直接特定しない記載と、引用発明特定事項とに記載上・表現上の相違が生じているが、その相違は、サブコンビネーション発明の構成や動作内容と、引用発明の構成や動作内容との間に実質的な差異をもたらさないということができる。
したがって、上記相違点1は実質的なものとはいえない。

次に、上記相違点2及び3について検討する。
電気通信事業者において、サービスプロバイダが、課金コンピュータと、サービスプロバイダ請求コンピュータとを有することは、例えば、原審の拒絶理由で引用された特開2002-312685号公報(段落【0011】、【0032】、図1)にみられるように周知の技術である。
そうすると、上記周知技術に接した当業者であれば、引用発明の「ネットワーク接続者」に適用して、本願発明のように「無線サービスプロバイダ請求コンピュータを有する無線サービスプロバイダ」とすること(相違点2)は、容易に想到し得ることである。その際、本願発明のように「前記コンピュータ装置は前記認証可能なトランザクションイベントデータを前記課金コンピュータ及び前記無線サービスプロバイダ請求コンピュータを含む、前記無線ネットワークと選択的通信状態にある任意の複数のコンピュータに送信する」ことは当然のこと(相違点3)である。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-11 
結審通知日 2015-06-16 
審決日 2015-06-29 
出願番号 特願2011-28834(P2011-28834)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 賢司  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 萩原 義則
山本 章裕
発明の名称 認証された無線装置トランザクションイベントデータを有した請求システム  
代理人 岡田 貴志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 佐藤 立志  
代理人 福原 淑弘  
代理人 井上 正  
代理人 峰 隆司  
代理人 砂川 克  
代理人 野河 信久  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 河野 直樹  

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