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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C10L
管理番号 1307670
審判番号 不服2013-14897  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-02 
確定日 2015-11-10 
事件の表示 特願2008-518054「ガソリンおよびエタノールに基づいた自動車燃料」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月28日国際公開、WO2006/137725、平成20年12月 4日国内公表、特表2008-544063〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、特許法第184条の3第1項の規定により、2006年 6月19日(パリ条約による優先権主張:2005年 6月21日(US)米国)の国際出願日にされたものとみなされる特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成20年 1月23日 翻訳文提出
平成20年 2月20日 手続補正書
平成21年 6月 4日 出願審査請求
平成24年 4月 2日付け 拒絶理由通知
平成24年10月10日 意見書・手続補正書
平成25年 3月28日付け 拒絶査定
平成25年 8月 2日 本件審判請求
同日 手続補正書
平成25年 8月29日 手続補正書(審判請求理由補充書)
平成25年 9月 4日付け 審査前置移管
平成25年10月30日付け 前置報告書
平成25年11月 1日付け 審査前置解除
平成25年12月10日付け 審尋
平成26年 5月 2日 回答書

第2 平成25年8月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否

I.補正の内容
本件補正では、特許請求の範囲につき下記の補正がされている。

1.補正前(平成24年10月10日付け手続補正後のもの)
「 【請求項1】
ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、10重量%超50重量%以下の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり1?10重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相にあり、該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するための添加物を要求しない特性を有する、自動車燃料。
【請求項2】
エタノールの量が10重量%超30重量%以下である、請求項1に従う自動車燃料。
【請求項3】
水0.02?3重量%を含有する、請求項1または2に従う自動車燃料。
【請求項4】
水0.05?3重量%を含有する、請求項1または2に従う自動車燃料。
【請求項5】
エタノール含有量10重量%超50重量%以下を有するガソリンを含む、分離した液層を有さない自動車燃料を製造するために、水1?10重量%を含有する含水エタノールを使用する方法。
【請求項6】
自動車燃料が水0.02?3重量パーセントを含有する、請求項5に従う方法。
【請求項7】
ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料の製造方法であって、該自動車燃料が、10重量%超50重量%以下の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり1?10重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相にある自動車燃料であって、分離した液相の発生を防止するための添加物を使用せず、水1?10重量%を含有する含水エタノールを使用する、製造方法。」
(以下、「旧請求項1」ないし「旧請求項7」という。)

2.補正後
「 【請求項1】
ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、10重量%超50重量%以下の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり1?10重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相にあり、該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するための添加物を含有しない特性を有する、自動車燃料。
【請求項2】
エタノールの量が10重量%超30重量%以下である、請求項1に従う自動車燃料。
【請求項3】
エタノール含有量10重量%超50重量%以下を有するガソリンを含む、分離した液層を有さない自動車燃料を製造するために、水1?10重量%を含有する含水エタノールを使用する方法。
【請求項4】
ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料の製造方法であって、該自動車燃料が、10重量%超50重量%以下の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり1?10重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相にある自動車燃料であって、分離した液相の発生を防止するための添加物を使用せず、水1?10重量%を含有する含水エタノールを使用する、製造方法。」
(以下、「新請求項1」ないし「新請求項4」という。)

II.補正事項に係る検討

1.新規事項の追加の有無
まず、本件補正に係る事項は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本願当初明細書」という。)の段落【0001】「添加物…を含まない」との記載によれば、本願当初明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項の規定を満たすものである。

2.補正の目的の適否
本件補正は、旧請求項3,4及び6を削除するとともに、旧請求項5,7を新請求項3,4とし、また旧請求項1において、「添加物を要求しない特性を有する」とあったのを、新請求項1において、「添加物を含有しない特性を有する」とし、「添加物を要求しない」の意味内容が「添加物を含有しない」である旨明確化するものである。
そうすると、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる改正前の(以下「平成18年改正前」という。)17条の2第4項第1号に掲げる「請求項の削除」及び同法同項第4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものといえる。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものであり、適法なものと認められる。

第3 本願に係る発明について
以上のとおり、本件補正は適法なものであるから、本願に係る発明は、平成25年 8月 2日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下の事項により特定されるものである。

「ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、10重量%超50重量%以下の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり1?10重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相にあり、該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するための添加物を含有しない特性を有する、自動車燃料。」

第4 原審の拒絶査定の概要
原審において、平成24年 4月 2日付け拒絶理由通知書で概略以下の内容を含む拒絶理由が通知され、当該拒絶理由が解消されていない点をもって下記の拒絶査定がなされた。

<拒絶理由通知>
「 理 由
1.(省略)

2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3. (省略)

4. (省略)

・・(中略)・・
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・・(中略)・・
・理由1、2:請求項1?9;引用文献1?5
引用文献1?5には、本願発明が記載されている。
・・(中略)・・
引 用 文 献 等 一 覧

1. FUEL,Vol.65, No.7,p.891-894 (1986).
(第891頁 左欄 第1段落, 第892頁 Figure 1b, 第893頁 右欄 第1段落,
Figure 2b, 第894頁 右欄 第3段落, Figure 3)
2. VTT PROCESSES,p.5-73 (2004).
(第5頁 第4段落, 第32頁 第2段落 Figure 13)
・・(後略)」

<拒絶査定>
「この出願については、平成24年 4月 2日付け拒絶理由通知書に記載した理由1?3によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考(引用文献等については引用文献等一覧参照)

・理由1、2:請求項1?7;引用文献1?5
・・(中略)・・
出願人は、平成24年10月10日付け手続補正書において、請求項1?7に係る発明を、「10重量%超50重量%以下の量のエタノールを含む自動車燃料」に関する発明とする補正を行い、上記手続補正書と同日付けで提出された意見書において、『引用文献等には、「実質的に1相にあり、かつ、分離した液相の発生を防止するための添加物を要求しない自動車燃料」については、記載も示唆もされていない。』旨主張する。

確かに、引用文献等には、「実質的に1相にあり、かつ、分離した液相の発生を防止するための添加物を要求しない自動車燃料」について明記されていないが、エタノールの含有量が多い場合には、水の含有量が多くても均一の相として存在し得るから、上記事項が、引用文献等に記載されていなくても、本願請求項1や7において規定されている重量%のエタノール及び水を含む自動車燃料であれば、「実質的に1相にあり、かつ、分離した液相の発生を防止するための添加物を要求しない自動車燃料」といえる。
そして、引用文献1?5・・(中略)・・には、10重量%超50重量%以下の量のエタノール、及び該エタノールの重量当たり1?10重量%の間にある量(すなわち、自動車燃料の0.1?5重量%の量)の水を含有する(含有し得る)自動車燃料が記載されている。
なお、引用文献等の中には、エタノールが10vol%として記載されているものもあるが、エタノールの比重は約0.79であり、例えば、ガソリンのJIS規格の比重は0.783以下であるから、重量%に換算すると、エタノールは10重量%を超えることになる。

以上のことより、補正後の上記請求項に係る発明は、依然として、先の拒絶理由通知書において述べた・・(中略)・・理由2(特許法29条2項)・・(中略)・・を有するものである。

引 用 文 献 等 一 覧

1. FUEL,Vol.65, No.7,p.891-894 (1986).
(第891頁 左欄 第1段落, 第892頁 Figure 1b, 第893頁 右欄 第1段落,
Figure 2b, 第894頁 右欄 第3段落, Figure 3)
2. VTT PROCESSES,p.5-73 (2004).
(第5頁 第4段落, 第32頁 第2段落 Figure 13)
・・(後略)」

第4 当審の判断
当審は、
上記拒絶査定の理由2により、本願は、特許法第49条第2号に該当するから、拒絶すべきものである、
と判断する。以下詳述する。

1.刊行物に記載された事項
本審決で引用する刊行物は、以下のとおりである。
(1)刊行物1:FUEL,Vol.65, No.7,p.891-894 (1986).
(原査定における「引用文献1」)
上記刊行物1には、以下の事項が記載されている(なお、『』内は、当審による仮訳である。)。

(1a)
「Ternary phase diagrams for gasoline-water-alcohol mixtures

The ternary phase diagrams for gasoline-water-alcohol(where the alcohol is methanol,ethanol,1-propanol,1-butanol or a 'SASOL alcohol substitute')mixtures have been determined over the whole composition range at temperatures between 2℃ and 40℃.The result shows that the miscibility of water in these blends is strongly dependent on the type of alcohol present. Furthermore the tie-line results show the composition of the separated water-rich phase are also strongly dependent on the type of alcohol. It is believed that these results have a bearing on the carburettor corrosion problems experienced when using gasoline-SASOL alcohol substitute blends.」(891頁上段)
『ガソリン-水-アルコール混合物の三元相図

ガソリン-水-アルコール混合物の三元相図(ここでアルコールとは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノールまたはSASOL社の定めるアルコール代替物をいう)は、2℃?40℃における組成範囲全体にわたって決定される。この結果は、これらの混合物中の水の混和性が存在するアルコールの種類に強く依存することを示す。さらに、タイラインの結果は、分離した水の豊富な相の組成が同じくアルコールの種類に強く依存することを示す。これらの結果は、ガソリンとSASOL社の定めるアルコール代替物との混合物を使用する際に生じるキャブレター腐食の問題に関連していると考えられている。』

(1b)
「Gasoline-alcohol blends are becoming a common feature of many countries including Brazil (20vol% ethanol),Germany (3vol% methanol),South Africa(12vol%alcohol mixture)and parts of the USA(10vol% ethanol),In SouthAfrica the alcohol used is a product of the SASOL'oil from coal' Fischer Tropsch process and has the following composition:ethanol 67wt%,propanol 18wt% and 15wt% higher alcohols. More than half the cars in South Africa run on this blend and many have experienced problems including corrosion of carburettors, those carburettors containing dissimilar metals being particularly vulnerable.
The cause of the corrosion is believed to arise partly from the presence of water. This contamination arises from many sources including ground water which finds its way into garage storage tanks and the presence of the alcohol allows water to dissolve in the blend. In order to determine why the South African fuel blend appears to create more problems than blends used elsewhere, the water solubility of the different alcohol blends was investigated as a function of temperature and determinations were also made of the tie-lines for these mixtures.」(891頁左欄1?23行)
『ガソリン-アルコール混合物は、ブラジル(エタノール20vol%)、ドイツ(メタノール3vol%)、南アフリカ(アルコール混合物12vol%)、米国の一部(エタノール10vol%)など、多くの国々で共通の特徴となりつつある。南アフリカでは、使用されるアルコールはSASOL社の「石炭から石油」フィッシャー・トロプシュ法の産物であり、その組成はエタノール67wt%、プロパノール18wt%、高級アルコール15wt%である。南アフリカでは、半分以上の車がこの混合物を燃料にしており、その多くが、特に脆弱な異種金属を含むキャブレターの腐食などの問題を抱えている。
腐食の原因の一部は、水の存在にあると考えられている。このような異物混入は、車庫の貯蔵タンクにたどり着く地下水などの多くの水源に起因し、アルコールが存在するため水が混合物に溶けることができる。南アフリカの燃料混合物が他地域より多くの問題を作り出す理由を判断するために、温度に応じた様々なアルコール混合物の溶解度を調査した。また、これらの混合物のタイラインも判断材料となった。』

(1c)
「EXPERIMENTAL
Purification
The alcohols,methanol(UVASOL grade),ethanol(absolute),1-propanol(synthesis grade)and 1-butanol(UVASOL grade)were dried and distilled shortly before use. The method of Lund and Bjerrum^(1), which requires magnesium metal activated with iodine, was used to dry the methanol, ethanol and 1-propanol.The 1-butanol was dried with anhydrous calcium sulphate before distillation^(1).The gasoline(98 octane grade)did not contain any SASOL products and was used as supplied.The determination of the binodal curves were repeated two or three times over a period of 18 months and no perceptable difference could be found in the results.It was assumed therefore that the gasoline composition did not change over that period.」(891頁左欄24行?右欄2行)
『実験
精製
アルコールすなわちメタノール(UVASOL級)、エタノール(無水)、1-プロパノール(合成級)、および1-ブタノール(UVASOL級)は、使用の少し前に乾燥・蒸留させた。金属マグネシウムをヨウ素で付活させる必要のあるLund-Bjerrum法^(1)を用いて、メタノール、エタノールおよび1-プロパノールを乾燥させた。1-ブタノールは、蒸留^(1)前に無水硫酸カルシウムで乾燥させた。ガソリン(98オクタン級)は、SASOL社製品を含まず、供給されたままの状態で使用した。双節曲線の測定を18か月間にわたり2、3回繰り返した。その結果、知覚できる違いは発見されなかった。したがって、この期間中、ガソリンの組成に変化はなかったと考えられる。』

(1d)
「Method
Binodal curves and tie lines have been determined for the five systems of petrol-water mixtures containing (a)methanol,(b)ethanol,(c)1-propanol,(d)1-butanol and (e)a'SASOL blend' composed of etbanol (67wt%),1-propanol(18wt%)and 1-butanol(15wt%).Points on the binodal curves were determined at a fixed temperature by careful addition of water to a weighed mixture or gasoline and alcohol in a 100cm^(3) flask. The water was added using a weighed gas tight syringe which was fitted with a fine needle capable of dispensing a drop weighing less than 0.01g.The mass of water added was determined by difference. The flask was carefully shaken in a controlled^(2) waterbath and drops added until one drop of water caused the clear solution to become cloudy.
The results were checked by weighing exact quantities of gasoline, water and alcohol,(mixtures that corresponded to points on the binodal curve)into flasks which were sealed and evacuated at liquid nitrogen temperatures. The flasks were then shaken in a waterbath and the temperature slowly adjusted until phase separation occurred. The tie-lines were determined at 25.0℃ using a method which was adapted from that of Briggs and Comings^(3).Refractive index measurements were made of all equilibrium single phase mixtures (points on the binodal curve) mentioned above. The refractive index data were then plotted against the corresponding composition on the gasoline axis of the triangular graph.The two-dimensional plot, thus generated, served as a 'standard' curve for that particular ternary phase.Carefully chosen mixtures in the immiscible region were then made up by mass in bottles fitted with ground glassstoppers, After equilibrium had been established in the waterbath at 25.0℃and the two phases well separated the refractive index was determined for each of the two phases.The composition of these mixtures on the bimodal curve was then obtained by reference to the 'standard' curve. The resultant tie-line was checked to see that it did indeed pass through the composition of the overall mixture.
Because the fuel blends used in South Africa contained between 10 and 15 vol or wt% alcohol, detailed water miscibility measurements were obtained at various temperatures for blends in this composition range, In order to ensure uniformity of the blends, a 200g stock blend of each alcohol-gasoline mixture was made up. The miscibility measurements were carried out taking 20cm^(3) aliquots with different amounts of water using the syringe technique described above.」(891頁右欄3行?892頁右欄6行)
『方法
双節曲線およびタイラインは、石油と水の混合物の5つの系?(a)メタノール、(b)エタノール、(c)1-プロパノール、(d) 1-ブタノール、(e)SASOL社によるエタノール(67wt%)、1-プロパノール(18wt%)、1-ブタノール(15wt%)の混合物?について測定した。
100cm^(3)フラスコに入れた計量済みガソリン-アルコール混合物に慎重に水を加えながら、双節曲線上の点を固定温度で測定した。0.01g未満の水滴を投与できる微細針を備えた計量済みガスタイトシリンジで水を加えた。加えた水の質量は差によって決定した。フラスコは制御された^(2)水槽内で慎重に振盪させ、一滴の水によって透明溶液が濁るまで、水滴を加えた。
液体窒素温度で密閉された真空フラスコの中で、ガソリン、水およびアルコール(双節曲線上の各点に相当する混合物)を計量して結果を確認した。続いて、そのフラスコを水槽内で振盪させ、相分離が起こるまでゆっくりと温度を調整した。タイラインは、Briggs-Comings^(3)から抜粋した方法を用いて、25.0℃で測定した。前述した全ての単相の平衡混合物(双節曲線上の各点)について屈折率を測定した。次に、三角グラフのガソリン軸上の対応する組成に対して屈折率データを図示した。このように作成された二次元プロットは、特定の三元状態について「標準」曲線としての役割を果たした。続いて、慎重に選択した不混和領域の混合物を、スリガラス栓を備えたボトル内の質量で構成した。25.0℃の水槽内で平衡状態が確立し、二相が十分に分離してから、それぞれの相の屈折率を決定した。そして、「標準」曲線を参照して、双節曲線上のこれらの混合物の組成を得た。結果として得られたタイラインをチェックし、混合物全体の組成を実際に経たものであることを確認した。
南アフリカで使用される燃料混合物は10?15vol%(またはwt%)のアルコールを含むため、この組成範囲内に収まる混合物について様々な温度で詳細な水混和性の測定結果が得られた。混合物の均一性を確保するため、アルコール-ガソリン混合物200gずつのストックを作成した。前述したシリンジ技術を用いて、異なる水量で20cm^(3)アリコートを取り、混和性の測定を実施した。』

(1e)
『…


Figure 1 The binodal curves and tie-lines for gasoline-water-alcohol ternary systems:a,methanol;b,ethanol;c,1-propanol;d,1-butanol;e,SASOL substitute」(892頁)
『…
図1 ガソリン-水-アルコール三成分系の双節曲線とタイライン:a.メタノール、b.エタノール、c.1-プロパノール、d.1-ブタノール、e.SASOL社の定める代替物』

(1f)
「RESULTS
The compositions of the points on the binodal curves for the four systems at 25.0℃ are shown in figure 1. The effect of temperature on the binodal curves can be seen in Figure 2 where data at 2℃ and 40℃ have been graphed. The results of the tie-line determinations at 25.0℃ are also given in Figure 1.The effect of temperature on the solubility of water in the 10% and 20% alcohol-gasoline blends is shown in Figure 3.
The precision of the coexistence curves and the tie-lines is estimated to be within 0.5wt% and that of the detailed solubility measurements to be better than 0.1wt%.


Figure 2 The binodal curves for gasoline-water-alcohol ternary systems at:(i),2℃ and(ii) 40℃ a,methanol:b,ethanol;c,1-propanol:d,1-butanol;e,SASOL substitute

Figure 3 The effect of temperature on the solubility of water in 10 and 20wt% mixtures of alcohol in gasoline:a,methanol;b,ethanol;c.1-propanol;d,1-butanol;e,SASOL substitute」(893頁左欄1行?894頁左欄下から9行)
『結果
四成分系の25.0℃における双節曲線上の各点の組成を図1に示す。双節曲線に温度が与える影響は、2℃および40℃におけるデータをグラフ化した図2に示す。
25.0℃におけるタイラインの測定結果も同様に図1に示す。10%および20%のアルコール-ガソリン混合物中の水の溶解度に温度が与える影響は、図3に示す。
共存曲線およびタイラインの精度は0.5wt%以内、詳細な溶解度測定の精度は0.1wt%より高いと推定される。


図2 ガソリン-水-アルコール三成分系の双節曲線とタイライン:(i)2℃、(ii)40℃、a.メタノール、b.エタノール、c.1-プロパノール、d.1-ブタノール、e.SASOL社の定める代替物

図3 10%および20%のアルコール-ガソリン混合物中の水の溶解度に温度が与える影響: a.メタノール、b.エタノール、c.1-プロパノール、d.1-ブタノール、e.SASOL社の定める代替物』

(1g)
「DISCUSSION
Figures 1-3 show that the type of alcohol in the blend has a significant effect on the solubility of water.The power of the alcohol in the blend,to dissolve water increases in the following order:methanol,1-butanol,ethanol and 1-propanol. The solubility of water in the alcohol blends increases with increasing temperature(Figures 2 and 3). The effect of a mixture of alcohols dissolved in the gasoline does not have a significant synergistic effect on the solubility properties of the blends as can be seen in Figures1-3.

It is believed that corrosion is brought about in the following way.Water dissolves in the fuel blend (possibly at the garage storage tank) and the more propanol in the blend the greater will be the amount held in solution. This fuel,so long as it remains a single phase mixture, should cause little corrosion problems as the overall water content is low-probably less than 2wt%. However if this fuel is left to stand in a hot carburettor,gasoline evaporates resulting in the overall composition falling below the coexistence curve and phase splitting takes place. The greater the percentage of 1-propanol and higher alcohols present, the higher will be the concentration of water in the water rich layer. It is proposed that it is this water layer that could be responsible for the corrosion in South African alcohol blended gasoline.」(894頁左欄下から8行?右欄37行)
『考察
図1?3は、混合物中のアルコールの種類が水の溶解度に大きな影響を及ぼすことを示している。混合物中のアルコールが水を溶解する力は、メタノール、1-ブタノール、エタノール、1-プロパノールの順に大きくなる。アルコール混合物中の水の溶解度は温度上昇に伴い増大する(図2、3)。

腐食は次のように起こると考えられている。水は燃料混合物中に溶解され(おそらく車庫の貯蔵タンクで)、混合物に対するプロパノールの割合が増すにつれて溶液に含まれる量が増える。この燃料は、単相混合物である限り、全体の含水率が低いため(おそらく2wt%未満)、腐食の問題をほとんど起こさないはずである。しかし、この燃料を高温のキャブレター内に放置すると、ガソリンが蒸発し、その結果、全体の組成が共存曲線を下回り相分離が発生する。1-プロパノールおよび存在する高級アルコールの割合が増えるにつれ、水の豊富な層の水分濃度が高くなる。南アフリカにおけるアルコール混合ガソリンの腐食の原因はこの水層である可能性があると提唱されている。』

(2)刊行物2:VTT PROCESSES,p.5-73 (2004).
(原査定における「引用文献2」)

上記刊行物2には、以下の事項が記載されている。

(2a)
「 Alcohols are liquid fuels, which mean good energy density, easy re-fuelling and storage.
Basically the same kind of distribution system as for conventional fuels can be used. However, in the case of gasoline/ethanol blends the distribution system needs special attention to avoid problems caused by water, as blends are very sensitive to moisture. Fuel properties of ethanol are in many respects similar to gasoline. Ethanol up to some 10% can be blended with gasoline and used without modifications in ordinary spark-ignition engines. There is not much experience on the concentrations exceeding 10% with normal cars. The cars running on high-concentration blends (25%) in Brazil are, if not modified, at least recalibrated.」(5頁22?30行)
『アルコールは、優良なエネルギー密度と、容易な再給油および貯蔵を意味する液体燃料である。基本的には従来の燃料向け配給システムと同じ種類のシステムを使用できる。ただし、ガソリン/エタノール混合物の場合、混合物は湿気に非常に敏感であるため、水によって引き起こされる問題を回避するよう配給システムに特別な注意が必要である。エタノールの燃料特性は、多くの点でガソリンに類似する。エタノールは約10%までガソリンと混和し、通常のスパーク点火エンジンを改造することなく使用することができる。通常の車の場合、10%を超える濃度に関しては先例が少ない。高濃度混合物(25%)でブラジルを走行する車は、改造されていなくても、少なくとも再調整されている。』

(2b)
「4. 1. 3 Storage and handling

There is a lot of data on storage and stability of ethanol and ethanol blends. This section covers mainly the issues that relate to low-concentration ethanol blends with gasoline.

Alcohols are liquid fuels, which mean good energy density, easy re-fuelling and storage.
Practically no changes are needed in current distribution systems. However, in the case of gasoline/ethanol blends the distribution system needs special attention to avoid problems caused by water, as blends are very sensitive to moisture. In practice, e.g. in U.S., the ethanol is blended into the gasoline at a product terminal just before it is delivered to retail or end-user due to water-solubility of ethanol. [Williams] has transported ethanol via pipelines, which is the cheapest method. However, they pointed out that e.g. the following actions should be taken: frequent dewatering of mainlines, closed floater storage tanks to prevent rainwater ingestion, commitment to dry storage tanks, inline corrosion monitoring, filtration system, ethanol quality oversight program,materials compatibility review, updated safety documentation & frequent dewatering of mainlines.」(31頁下から32行?下から18行)
『4.1.3 貯蔵および取扱い

エタノールおよびエタノール混合物の貯蔵と安定性に関しては、多くのデータが存在する。本項は、主に低濃度エタノールとガソリンの混合物に関連した問題について述べる。

アルコールは、優良なエネルギー密度と、容易な再給油および貯蔵を意味する液体燃料である。実用的には現在の配給システムを変更する必要はない。ただし、ガソリン/エタノール混合物の場合、混合物は湿気に非常に敏感であるため、水によって引き起こされる問題を回避するよう配給システムに特別な注意が必要である。実際には、例えば、米国ではエタノールの水溶性に鑑み、小売りまたはエンドユーザーに配給する前に生産ターミナルでガソリンにエタノールを配合する。[Williams]はパイプラインを介してエタノールを輸送した。これは最も安価な方法である。しかし、彼らは、次の事項を実施するべきであると指摘した:メインラインからの頻繁な脱水、フローター貯蔵タンク閉鎖による雨水収集防止、貯蔵タンクの乾燥の義務付け、インライン腐食モニタリング、ろ過システム、エタノール品質監視プログラム、材料の互換性評価、安全管理文書の更新とメインラインからの頻繁な脱水。』

(2c)
「Ethanol blends are sensitive to handling and storage practices due to the possibility of phase separation in the case of too high amount of water present. The amount of water that can be absorbed by low-concentration gasoline/ethanol blends without phase separation varies from 0.3 to 0.5%, depending on temperature, aromatics and ethanol content. The higher the ethanol content, the greater the amount of water absorbed by the fuel without phase separation. Ethanol is water-soluble and hygroscopic,and thus it carries moisture into the fuel system. In general it is important to ensure that water contamination does not occur in the distribution and storage with ethanol blends. In terms of storage and stability,more studies are needed.

Ethanol miscibility can be shown with a ternary phase diagram (Figure 13), The shaded region indicates the phase separated range. The mixture is in a single phase in all combinations of water and gasoline when the share of ethanol is over 70%. Point A indicates a mixture with 15% ethanol and 85% gasoline. If water is added, the composition changes as indicated by the arrow. Once the composition reaches that indicated by the end of the arrow, the single phase will split into two phases with the compositions indicated by points A ’and B’. For smaller fractions of ethanol, much smaller quantities of water are required to cause phase separation. For instance, ASTM D4806 states that with a water concentration of 0.5% E10 will separate [Powers 2001]



Figure 13. Ternary phase diagram for gasoline-ethanol-water system at 25 ℃Axes
indicate percent of total mass. (Powers 2001, adapted from de Oliveira 1997).

The effects of water on an engine differ significantly depending on whether the water is in gasoline or in a separate phase. A small amount of water solution in a homogeneous ethanol/gasoline blend has no adverse effect. If phase separation occurs and ethanol/water phase is drawn into the engine it will stall. Phase separation can occur in a vehicle's tank if, for example, a quarter of a tank of ethanol blend is supplemented by three-quarters of a tank of petrol at refill, causing the concentration of ethanol in the blend to fall. In this situation, the presence of water normally contained within the ethanol blend may be sufficient to precipitate phase separation.」(31頁下から4行?32頁末行)
『エタノール混合物は、存在する水の量があまりに多いと相分離の可能性があるため、取扱いおよび貯蓄の実施に敏感である。低濃度ガソリン/エタノール混合物によって相分離せず吸収できる水の量は、温度、芳香族化合物およびエタノール含有量に応じて、0.3?0.5%の間である。エタノール含有量が増えるにつれ、相分離せず燃料によって吸収される水量も増す。エタノールは水溶性と吸湿性があるため、燃料システムに湿気を持ち込む。一般的に、エタノール混合物の配給中および貯蔵中に水が汚染されないようにすることが重要である。貯蔵と安定性の面でより多くの研究が必要である。

三元相図でエタノールの混和性を示す(図13)。灰色の領域は相分離範囲を示す。混合物は、エタノールの割合が70%を超える場合、水とガソリンのすべての組み合わせにおいて単相の状態にある。点Aは、エタノール15%とガソリン85%の混合物を示している。水を追加すると、矢印で示すように組成が変化する。組成が矢印の端の部分に達すると、単相は点A’とB’の示す組成で2相に分割されるであろう。エタノールの量がわずかであるとき、極めて少量の水で相分離を発生させる必要がある。たとえば、ASTM D4806は、E10が濃度0.5%の水で分離すると述べている[Powers 2001]。

図13 25℃におけるガソリン-エタノール-水系の三元相図。軸は総質量の割合を示す。(Powers 2001、de Oliveira 1997から抜粋)

水がエンジンに与える影響は、水がガソリン中にあるか分離相にあるかによって大幅に異なる。均一のエタノール/ガソリン混合物中の水溶液が少量であれば、不利な影響を一切与えない。相分離が発生しエタノール/水相がエンジンに入った場合、エンストが起こるであろう。例えば、タンクの四分の一のエタノール混合物をガソリンのタンクの四分の三で補充する場合、車のタンクで相分離が発生する可能性がある。その結果、混合物中のエタノールの濃度が低下する。この状況では、通常エタノール混合物に含まれる水の存在は相分離を促進させるのに十分な場合がある。』

2.本願発明についての検討

(1)刊行物に記載された発明
ア 刊行物1の「ガソリン-アルコール混合物は、ブラジル(エタノール20vol%)…多くの国々で共通の特徴となりつつある」(摘示1b)からみて、ブラジルにおける「ガソリン-アルコール混合物」は「ガソリン-エタノール20vol%混合物」といえ、また「腐食の原因の一部は、水の存在にあると考えられている。このような異物混入は、車庫の貯蔵タンクにたどり着く地下水などの多くの水源に起因し、アルコールが存在するため水が混合物に溶けることができる。」(摘示1b)からみて、「ガソリン、エタノールおよび水を含む混合物であって、ガソリン-水-エタノール20vol%混合物」と解するのが自然である。
したがって、刊行物1の(摘示1b)には、「ガソリン-水-エタノール20vol%混合物」が記載されているといえる。

イ 摘示(1d)の「南アフリカで使用される燃料混合物は10?15vol%(またはwt%)のアルコールを含むため、この組成範囲内に収まる混合物について様々な温度で詳細な水混和性の測定結果が得られた。混合物の均一性を確保するため、アルコール-ガソリン混合物200gずつのストックを作成した。前述したシリンジ技術を用いて、異なる水量で20cm^(3)アリコートを取り、混和性の測定を実施した。」からみて、上記アの「ガソリン-水-エタノール20vol%混合物」は、前記「混合物」を「均一性燃料混合物」と言い換えることができるから、「ガソリン-水-エタノール20vol%均一性燃料混合物」といえる(下線は審決で付した。以下同じ。)。

ウ 上記イからみて、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。

「ガソリン-水-エタノール20vol%の均一性燃料混合物。」
に係る発明(以下、「引用発明」という。)

(2)対比・検討
ア 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明における「ガソリン」、「エタノール」、「水」及び「均一性」は、それぞれ、本願発明における「ガソリン」、「エタノール」、「水」及び「実質的に1相」に相当する
(イ)引用発明における「燃料混合物」と本願発明における「自動車燃料」とは「燃料混合物」である点で一致する。
(ウ)引用発明における「燃料混合物」は、ガソリン-水-エタノール20vol%の均一性のものであり、「『ガソリン、エタノールおよび水を含』み、『20体積%の量のエタノールを含有し、実質的に1相にあり』」といえ、本願発明における「自動車燃料」とは、「『ガソリン、エタノールおよび水を含』み、『特定の量のエタノールを含有し、実質的に1相にあ』」る点で一致する。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)からみて、本願発明と引用発明とは、
「ガソリン、エタノールおよび水を含む燃料混合物であって、特定量のエタノールを含有し、実質的に1相にある、燃料混合物」
の点で一致し、下記の点で相違する。

相違点:本願発明は、「10重量%超50重量%以下の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり1?10重量%の間にある量の水を含有し、該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するための添加物を含有しない特性を有する、自動車燃料」であるに対して、引用発明は、そのようなものであるか明らかでない点。

イ 検討
(ア)刊行物1の「南アフリカで使用される燃料混合物は10?15vol%(またはwt%)のアルコールを含むため、この組成範囲内に収まる混合物について様々な温度で詳細な水混和性の測定結果が得られた。混合物の均一性を確保するため、アルコール-ガソリン混合物200gずつのストックを作成した。前述したシリンジ技術を用いて、異なる水量で20cm^(3)アリコートを取り、混和性の測定を実施した。」(摘示(1d))からみて、刊行物1において、「vol%」と「wt%」とは同等に扱われている。
(イ)摘示(2c)の「三元相図でエタノールの混和性を示す(図13)。灰色の領域は相分離範囲を示す」及び「水がエンジンに与える影響は、水がガソリン中にあるか分離相にあるかによって大幅に異なる。均一のエタノール/ガソリン混合物中の水溶液が少量であれば、不利な影響を一切与えない。相分離が発生しエタノール/水相がエンジンに入った場合、エンストが起こるであろう。」からみて、刊行物2には、ガソリン-水-エタノール混合物において、相分離を発生したものは自動車燃料として使用できないことは明らかであって、該混合物のうち、均一性のものを「自動車燃料」として使用することが記載されている。
(ウ)引用発明において、上記(ア)及び(イ)からみて、引用発明の「ガソリン-水-エタノール20vol%」及び「燃料混合物」を、それぞれ、「ガソリン-水-エタノール20wt%」及び「自動車燃料」とし、「ガソリン-水-エタノール20wt%の均一性自動車燃料。」(以下、「容易想到発明」という)となすことは、当業者が刊行物1に記載された事項及び刊行物2に記載された事項に基づいて容易になし得たことである。
また本願発明の奏する効果は、当業者が引用発明の奏する効果、刊行物1に記載された事項の奏する効果及び刊行物2に記載された事項の奏する効果から予測できた程度のものである。

(エ)本願発明と容易想到発明との対比・判断
a 容易想到発明における「自動車燃料の含有する水の重量%」について
(a)上記刊行物1には、摘示(1f)の「『図3の20%blend』における『b』直線」からみて、2℃,25℃,40℃の双節曲線上におけるガソリン-水-エタノール20wt%混合物の含有する水の重量は、それぞれ、1.35wt%,1.7wt%,1.9wt%であることが見て取れる。
そうすると、摘示(1e)の「図1b」、摘示(1f)の「図2b(i)」及び「図2b(ii)」におけるガソリン-水-エタノール混合物の三元相図からみて、2℃,25℃,40℃におけるガソリン-水-エタノール20wt%均一性混合物は、それぞれ、0wt%超1.35wt%の間、0wt%超1.7wt%の間,0wt%超1.9wt%の間にある量の水を含有するといえる。
(b)上記(a)からみて、容易想到発明は、以下の(i)?(iii)といえる。
(i)「2℃において、ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、10重量%以上20重量%以下の量のエタノール、最小0重量%超、最大1.35重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相である、自動車燃料」
(ii)「25℃において、ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、10重量%以上20重量%以下の量のエタノール、最小0重量%超、最大1.7重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相である、自動車燃料」
(iii)「40℃において、ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、10重量%以上20重量%以下の量のエタノール、最小0重量%超、最大1.9重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相である、自動車燃料」

b 容易想到発明における「エタノールの重量当たりの含有する水の重量%」について
(a)上記a(b)(i)の「2℃において、…自動車燃料」について
「エタノールの重量当たりの含有する水の重量%」は、その最小が0重量%を超え、
また「20重量%」エタノールの場合、その最大が(1.35重量%/20重量%)×100重量%=6.75重量%といえ、
上記a(b)(i)の「2℃において、…自動車燃料」は「該エタノールの重量当たり0重量%超6.75重量%の間にある量の水を含有し」たものといえる。

(b)上記a(b)(ii)の「25℃において、…自動車燃料」について
「エタノールの重量当たりの含有する水の重量%」は、その最小が0重量%を超え、
また「20重量%」エタノールの場合、その最大が(1.7重量%/20重量%)×100重量%=8.5重量%といえ、
上記a(b)(ii)の「25℃において、…自動車燃料」は「該エタノールの重量当たり0重量%超8.5重量%の間にある量の水を含有し」たものといえる。

(c)上記a(b)(iii)の「40℃において、…自動車燃料」について
「エタノールの重量当たりの含有する水の重量%」は、その最小が0重量%を超え、
また「20重量%」エタノールの場合、(1.9重量%/20重量%)×100重量%=9.5重量%といえ、
上記a(b)(iii)の「40℃において、…自動車燃料」は「該エタノールの重量当たり0重量%超9.5重量%の間にある量の水を含有し」たものといえる。

c 摘示(1e)の「図1b」、摘示(1f)の「図2b(i)」及び「図2b(ii)」におけるガソリン-水-エタノール混合物の三元相図からみて、引用発明は、ガソリン、水及びエタノール以外の成分を含むものとは認められないから、「該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するための添加物を含有しない特性を有する」ものであって、上記a(b)(i)?(iii)は以下の(i')?(iii')と言い換えることができ、容易想到発明は、以下の(i’)?(iii’)といえる。
(i')「2℃において、ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、20重量%の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり0重量%超6.75重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相であり、該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するための添加物を含有しない特性を有する、自動車燃料。」
(ii')「25℃において、ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、10重量%以上20重量%以下の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり0重量%超8.5重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相であり、該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するための添加物を含有しない特性を有する、自動車燃料。」
(iii')「40℃において、ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、10重量%以上20重量%以下の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり0重量%超9.5重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相であり、該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するための添加物を含有しない特性を有する、自動車燃料。」

d 相違点に係る検討
上記相違点について検討すると、本願発明と容易想到発明とは、「エタノールの量」につき、2℃,25℃及び40℃において、「20重量%」の点で一致し、また「エタノールの重量当たりの含有する水の重量%」につき、2℃,25℃及び40℃において、それぞれ、「1?6.75重量%の間にある」,「1?8.5重量%の間にある」及び「1?9.5重量%の間にある」の点で一致するから、両者は、
(i'')「2℃において、ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、20重量%の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり1?6.75重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相であり、該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するための添加物を含有しない特性を有する、自動車燃料」
(ii'')「25℃において、ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、20重量%の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり1?8.5重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相であり、該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するための添加物を含有しない特性を有する、自動車燃料」
(iii'')「40℃において、ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、20重量%の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり1?9.5重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相であり、該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するための添加物を含有しない特性を有する、自動車燃料」
の点で一致し、実質的に相違するところはない。

ウ 検討のまとめ
したがって、本願発明は、当業者が、刊行物1に記載された発明、刊行物1に記載された事項及び刊行物2に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

エ 審判請求人の主張について
なお、審判請求人は、平成25年8月29日付け手続補正書(方式)(審判請求理由補充書)において、上記引用発明との対比につき、
「(イ)拒絶査定は第1頁備考欄第9?15行目に「確かに、引用文献等には、「実質的に1相にあり、かつ、分離した液相の発生を防止するための添加物を要求しない自動車燃料」について明記されていないが、エタノールの含有量が多い場合には、水の含有量が多くても均一の相として存在し得るから、上記事項が、引用文献等に記載されていなくても、本願請求項1や7において規定されている重量%のエタノール及び水を含む自動車燃料であれば、「実質的に1相にあり、かつ、分離した液相の発生を防止するための添加物を要求しない自動車燃料」といえる」(下線付加)と記載しています。…しかし上記拒絶査定には上記下線で示す主張の根拠が記載されておらず裏付けがありません。上記拒絶査定の主張は、本願発明の詳細な説明に記載された内容を考慮した上で論理付けされたものであり、後知恵に過ぎません。」
と主張する。
しかるに、摘示(1e)の「図1b」、摘示(1f)の「図2b(i)」及び「図2b(ii)」におけるガソリン-水-エタノール混合物の三元相図からみて、上記下線で示す主張(審査官)の根拠は明らかであるから、請求人の上記主張は当を得ないものである。

3.当審の判断のまとめ
以上のとおり、本願発明は、当業者が、刊行物1に記載された発明、刊行物1に記載された事項及び刊行物2に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではない。

4.付記
請求人は、平成26年 5月 2日付けの回答書において、補正案を提示しているので、念のため、この補正案について以下検討する。
(1)上記補正案における請求項1に係る発明(以下、「補正案発明」という。)は、次のとおりのものである。

「ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、10重量%超50重量%以下の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり1?10重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相にあり、該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するための添加物を含有せず、無色透明である特性を有する、自動車燃料。」

(2)補正案発明は、本願発明において「『自動車燃料』が『無色透明である特性を有する』」との事項を備えている。

(3)対比・検討
上記2.(2)イ(ウ)で述べたと同様の理由により、引用発明の「ガソリン-水-エタノール20vol%」及び「燃料」を、それぞれ、「ガソリン-水-エタノール20wt%」及び「自動車燃料」とし、容易想到発明となすことは、当業者が刊行物1に記載された事項及び刊行物2に記載された事項に基づいて容易になし得たことである。
また補正案発明の奏する効果は、当業者が引用発明の奏する効果、刊行物1に記載された事項の奏する効果及び刊行物2に記載された事項の奏する効果から予測できた程度のものである。
そして容易想到発明は、ガソリン-水-エタノール20wt%の均一性自動車燃料であるから、ガソリン、水及びエタノールからなる均一性混合物といえ、ガソリン、水及びエタノールはいずれも無色透明であることが当業者に自明であるから、当該均一性混合物は「無色透明である特性を有する」といえ、容易想到発明は「無色透明である特性を有する」ものといえる。
そうすると、補正案発明と容易想到発明とは、「無色透明である特性を有する」点で一致し、また上記2.(2)イ(エ)dで述べたと同様の理由により、
(i''')「2℃において、ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、20重量%の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり1?6.75重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相であり、該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するための添加物を含有せず、無色透明である特性を有する、自動車燃料」
(ii''')「25℃において、ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、20重量%の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり1?8.5重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相であり、該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するための添加物を含有せず、無色透明である特性を有する、自動車燃料」
(iii''')「40℃において、ガソリン、エタノールおよび水を含む自動車燃料であって、20重量%の量のエタノール、および該エタノールの重量当たり1?9.5重量%の間にある量の水を含有し、実質的に1相であり、該表示された量のガソリン及び含水エタノールからなる組成が、分離した液相の発生を防止するため添加物を含有せず、無色透明である特性を有する、自動車燃料」
の点で一致し、実質的に相違するところはない。

(4)検討のまとめ
よって、補正案発明は、本願発明と同様の理由により、当業者が、刊行物1に記載された発明、刊行物1に記載された事項及び刊行物2に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、請求人が提示した上記補正案は、採用することができない。


第5 むすび
したがって、本願は、他の請求項に係る各発明につき検討するまでもなく、特許法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-15 
結審通知日 2015-06-22 
審決日 2015-06-30 
出願番号 特願2008-518054(P2008-518054)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小久保 敦規  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 菅野 芳男
日比野 隆治
発明の名称 ガソリンおよびエタノールに基づいた自動車燃料  
代理人 村上 博司  
代理人 松井 光夫  
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