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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47J
管理番号 1307678
審判番号 不服2014-11700  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-19 
確定日 2015-11-09 
事件の表示 特願2012-516014号「飲料を調製するためのカプセル、装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 2日国際公開、WO2010/137958、平成24年12月 6日国内公表、特表2012-530531号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年12月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年6月17日、欧州特許庁、2009年6月17日、欧州特許庁、2009年6月17日、欧州特許庁、2009年6月17日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成25年7月4日付けで拒絶理由が通知され、同年12月11日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年2月6日付けで拒絶査定がされた。これに対し、同年6月19日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2 本願発明について
特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成25年12月11日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める(以下「本願発明」という。)。

「抽出可能な製品を用いて、消費するのに適した所定量の飲料を調製する装置であって、前記装置は、
交換可能なカプセル、及び
或る量の流体を少なくとも6バールの圧力下で前記交換可能なカプセルに供給する流体供給器と、交換可能なカプセルを保持する収容器とを有する器具、とを含み、
ここで、前記交換可能なカプセルは、
外周の第一壁、
前記外周の第一壁を第一端で閉じる第二壁、及び
前記外周の第一壁を前記第二壁と反対側の第二の開いた端で閉じる柔軟なシート状の穿孔された及び/又は多孔質の第三壁を有し、
ここで、第一壁、第二壁及び第三壁は前記抽出可能な製品を有する内部空間を囲んでいて、
ここで、前記第三壁は前記カプセルの軸方向の、前記カプセルの最も外側の境界を形成し、かつ、
前記第三壁はろ過紙又は不織のフィルタ物質を含み、
ここで、前記流体供給器は飲料を作るために第二壁を通して少なくとも6バールの圧力下で抽出可能な製品に流体を供給するように配置され、さらに、
ここで、前記収容器は支持面を有し、前記第三壁は、調製した飲料を前記カプセルから前記第三壁を通して、かつ前記支持面を通して流すために前記支持面に当接するように配置され、
前記支持面は、前記調製した飲料を前記カプセルからチャネル形状の溝を通して流すために、前記第三壁に面した側に前記チャネル形状の複数の溝を有し、且つ前記支持面は、前記チャネル形状の複数の溝の間に、使用中に前記第三壁が当接するリッジを有することを特徴とする、
飲料を調製する装置。」

第3 引用例
1 引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2003/96038号明細書(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)「[0026] A supply of a first flavor-containing materials 12a is placed above filter 15 in chamber 11, and a supply of a second flavor-containing materials 12b enclosed by filter 15a is placed above the first flavor-containing materials 12a in chamber 11. For a cartridge to make espresso drinks such as latte, cappuccino or mocha, the first materials 12a is soluble materials such as milk powder or granules, creamer, chocolate or other appropriate soluble solids and the second materials 12b is roasted coffee grounds. 」(当審仮訳:第1の香味含有材料12aの供給は、室11内のフィルタ15の上方に配置され、フィルタ15aで囲まれた第2の香味含有材料12bの供給は、室11内の第1の香味含有材料12aの上方に配置される。ラテ、カプチーノあるいはモカ等のエスプレッソ飲料を作るカートリッジのために、第1の材料12aは、ミルク粉末または顆粒、クリーマー、チョコレートまたは他の適切な可溶性固形物のような溶解可能材料であり、第2の材料12bは、焙煎されたコーヒーである。)

(2)「[0030] FIG. 4 shows a modified cartridge 10 that is similar to that in the FIG. 4 of the parent application Ser. No. 09/748,495 or to that in FIG. 2 of the present continuation-in-part application. The solubility promoter 80 is substantially identical to that of FIG. 2 . The chamber 11 comprises a top filter 101 , a bottom filter 102 , and a seam 104 formed between the top and bottom filters for sealing the solubility promoter 80 and the soluble solids 12 a. The bottom filter 102 has a bottom 103 , a substantially vertical side wall 100 and an open top end. The top filter 101 has a bottom 108 , an open top end 27 for receiving water and a substantially vertical side wall 106 . The vertical side wall 106 is adapted to fit into the open top end of bottom filter 102 and to seal to the upper part 105 of the side wall 100 of the bottom filter to form the vertical seam 104 . The top and bottom filters are preferably filter papers for their lower cost and excellent ability in maintaining a predetermined shape, although certain other types of filter may also work under proper manufacturing method. It is appreciated that the top and bottom filters can be non-permeable to water prior to brewing and be provided with filtration openings during the brewing process. A cartridge holder having a bottom support and a side wall configured to form a seal automatically with the side wall 100 of the cartridge is required to make a drink with this modified cartridge. Such a holder has been disclosed in the parent application Ser. No. 10/190,399, and will also be described in FIG. 10 of the present continuation-in-part application. 」(当審仮訳:図4は、修正されたカートリッジ10が示されおり、これは、親出願第09/748,495号の図4のもの、又は本一部継続出願の図2のものと同様である。溶解度促進剤(solubility promoter)80は、図2のものと実質的に同一である。室11は、頂部フィルタ101、底部フィルタ102、及び継ぎ目104を含み、継ぎ目104は、溶解促進剤80及び可溶性固形物12aを封止するために頂部及び底部のフィルタとの間に形成されたものである。底部フィルタ102は、底部103、実質的に垂直な側壁100及び開放した頂端部を有している。頂部フィルタ101は、底部108、水を受け入れるための開放頂端部27、及び実質的に垂直な側壁106を有している。垂直側壁106は、底部フィルタ102の開口した上端に嵌合するようになっており、縦方向の継ぎ目104を形成するために底部フィルタの側壁100の上部105に封止するようになっている。頂部及び底部フィルタは、低コストで、所定の形状を維持するのに優れた能力のあるフィルタ紙が好ましいが、適切な製造方法によるいくつかの他のタイプのフィルタであってもよい。頂部及び底部フィルタは、抽出する前は水に不浸透性であること、及び抽出プロセスの間は濾過開口部を設けることができることを理解されたい。カートリッジの側壁100で自動的にシールを形成するように構成された底部支持体及び側壁を有するカートリッジホルダは、この改良されたカートリッジで飲料を作るのに必要とされる。このようなホルダは、親出願第10/190,399号に開示され、本一部継続出願の図10に開示されている。)

(3)「[0035] FIG. 7 shows a modified cartridge 10 that is substantially the same as that of FIG. 6 of the present continuation-in-part application except that in this modified cartridge, the top filter 101 is a flat disc having a peripheral edge 91 and the side wall 100 of the bottom filter 102 has a horizontal part 92 sealed to the peripheral edge 91 to form a horizontal seam 90 . FIG. 8 shows a modified cartridge 10 that is also substantially the same as that of FIG. 6 of the present continuation-in-part application except that this modified cartridge does not contain a dryer 110 and the side wall 100 of the bottom filter 102 is slightly tapered. 」(当審仮訳:図7は、本一部継続出願の図6とほぼ同じ修正されたカートリッジ10を示しているが、この修正されたカートリッジでは、頂部フィルタ101は、周縁部91を有する平坦なディスクであり、底部フィルター102の側壁100は、周縁部91に封止される水平継ぎ目90を形成する水平部92が設けられている点で異なる。図8は、本一部継続出願の図6と実質的にほぼ同じ修正されたカートリッジ10を示しているが、この修正されたカートリッジ10は乾燥剤110を含まず、底部フィルタ102の側面100が僅かな先細りしている点で異なる。)

(4)「[0037] FIG. 9 shows a brew station similar to that of FIG. 15 of the parent application Ser. No. 10/190,399 for making drinks with cartridges 10 of FIGS. 4 - 8 . The brew station comprises a brew head 64 having a water inlet 137 connected to a drink apparatus, a seal member 140 and a hydraulic press 77 , a brew container 124 having a chamber 149 for receiving cartridge 10 and a rim 141 for forming a watertight seal with seal member 140 , and a holder 128 having a chamber 120 for receiving the brew container and a dispensing spout 127 having an opening 125 for discharging the drink to a receptacle. The chamber 149 of the brew container has numerous protrusions 121 on its bottom for supporting the cartridge, a chamber 122 for collecting drink from the cartridge and an orifice 123 for converting the drink in the collection chamber into a high-speed drink jet. The drink jet injects into a pool of drink accumulated in chamber 120 of the holder and causes crema to be formed for the drink as taught by the applicant in U.S. Pat. No. 5,638,740 and Akkerman-Theunisse et al. in U.S. Pat. No. 6,119,582. 」(当審仮訳:図9は、図4 ? 8のカートリッジ10で飲料を製造するための親出願第10/190,399号公報の図15のものと同様の抽出ステーションを示す。抽出ステーションは、ドリンク装置に接続された給水口137を有する抽出ヘッド64、シール部材140、水圧プレス77、カートリッジ10を収容する室149及びシール部材140で水密にシールを形成するためのリム141を有する抽出容器124、並びに抽出容器を受け入れるための室120及び容器に飲料を排出する開口125を有する分配口127を有するホルダ128を備えている。抽出容器の室149は、カートリッジを支持するため、その底部に多数の凸部121、カートリッジからの飲料を集めるチャンバ122、及び収集チャンバ内の飲料を高速飲料ジェットに変えるためのオリフィス123を有している。飲料ジェットは、ホルダの室120内に蓄積された飲料のプールに注入する。そして、米国特許第5,638,740号の出願人及び特許文献6,119,582 のAkkerman-Theunisseらによって教示されているように、飲料に形成されるクレマの要因となる。)

(5)「[0038] The hydraulic press 77 comprises a press plate 79 receivable in the chamber 149 of brew container 124 , an expandable chamber 138 having an upper end 76 connected to the water inlet 137 and a bottom end 78 connected to the press plate, and a flow restriction valve 94 adapted to open the expandable chamber only when the pressure therein exceeds a predetermined value. Press plate 79 has a bottom surface for pressing against top filter 101 of cartridge 10 in brew container 124 to facilitate the interaction between the flavor-containing materials and water and a plurality of openings 79 for distributing the water to top filter 101 . The expandable chamber 138 comprises an outer cylinder 133 having an upper rim 134 for sealing to the brew head to receive water from water inlet 137 , an inner cylinder 130 slidingly received in the outer cylinder, and a seal gasket or ring 145 attached to the bottom end of the inner cylinder for sealing to the side wall of the chamber 149 of the brew container. The restriction valve 94 comprises a body 142 above the press plate 79 and attached to the inner cylinder 130 , a valve chamber 95 , a valve opening 96 , a seal ball 97 below the valve opening, a spring 98 for pushing the seal ball upwards to seal the valve opening and a keeper 99 for keeping the spring 99 in the valve chamber. The spring 98 is selected to cause the ball 97 to move down from valve opening 96 , thereby opening the valve, when the pressure in the expandable chamber 138 reaches above a predetermined value P 1 . A spring 132 has an upper end attached to the rim 134 of the outer cylinder and a lower end attached to the body 142 of restriction valve 94 for pulling inner cylinder 130 upwards into the outer cylinder 133 after the pressure in expandable chamber 138 is released. 」(当審仮訳:水圧プレス77は、抽出容器124の室149で受けるプレス板79、給水口137に接続された上端部76及びプレス板に接続された底端部78を有する拡張可能チャンバ138、並びに内部の圧力が所定の値を超えた場合にのみ、拡張可能チャンバを開くように動作する流量制限弁94を備えている。プレス板79は、香味含有材料と水との間の相互作用を容易にするために抽出容器124内のカートリッジ10の上部フィルタ101を押圧する底面及び上部フィルタ101に水を分配するための複数の開口部79を有している。拡張可能チャンバ138は、給水口137から水を受け入れ、抽出ヘッドにシールするための上縁134を有する外筒133、外筒内に摺動自在に受け入れられる内筒130、並びに抽出容器の室149の側壁にシールするために内筒の下端部に取り付けられた封止ガスケット又はリング145を備えている。流量制限弁94は、プレス板79の上方に本体142を備え、内筒130、弁室95、弁開口96、弁開口下方のシールボール97、弁開口をシールするため上方にシールボール97を付勢するためのバネ98、弁室にバネ99(当審注:「バネ98」の誤記である。)を保持するためのキーパ99を備えている。バネ98は、膨張可能チャンバ138内の圧力が所定値P1を超えたときに、ボール97がバルブ開口96から下方に移動させるように選択され、これにより、弁が開く。バネ132は、外筒のリム134に取り付けられた上端及び流量制限弁94の本体142に取り付けられた下端を有しており、それらは、拡張可能チャンバ138内の圧力が解放された後に、外筒133内で上方に内筒130を引くように作用する。)

2 引用例に記載された発明の認定
上記記載事項及び図4、8?10の記載を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「カートリッジ10で飲料を製造するための抽出ステーションであって、前記抽出ステーションは、
ドリンク装置に接続された給水口137を有する抽出ヘッド64、シール部材140、水圧プレス77、カートリッジ10を収容する室149及びシール部材140で水密にシールを形成するためのリム141を有する抽出容器124、並びに抽出容器を受け入れるための室120及び容器に飲料を排出する開口125を有する分配口127を有するホルダ128を備え、
カートリッジ10の室11は、頂部フィルタ101、底部フィルタ102、及び継ぎ目104を含み、継ぎ目104は、溶解促進剤80及び可溶性固形物12aを封止するために頂部及び底部のフィルタとの間に形成され、底部フィルタ102は、底部103、実質的に垂直な側壁100及び開放した頂端部を有し、
頂部フィルタ101は、底部108、水を受け入れるための開放頂端部27、及び実質的に垂直な側壁106を有し、
垂直側壁106は、底部フィルタ102の開口した上端に嵌合するようになっており、縦方向の継ぎ目104を形成するために底部フィルタの側壁100の上部105に封止するようになっており、
頂部及び底部フィルタは、フィルタ紙であり、
水圧プレス77は、抽出容器124の室149で受けるプレス板79、給水口137に接続された上端部76及びプレス板に接続された底端部78を有する拡張可能チャンバ138、並びに内部の圧力が所定の値を超えた場合にのみ、拡張可能チャンバを開くように動作する流量制限弁94を備え、
プレス板79は、香味含有材料と水との間の相互作用を容易にするために抽出容器124内のカートリッジ10の上部フィルタ101を押圧する底面及び上部フィルタ101に水を分配するための複数の開口部79を有し、
抽出容器の室149は、カートリッジを支持するため、その底部に多数の凸部121、カートリッジからの飲料を集めるチャンバ122、及び収集チャンバ内の飲料を高速飲料ジェットに変えるためのオリフィス123を有する、
抽出ステーション及びドリンク装置。」

第4 本願発明と引用発明の対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「飲料を製造するための抽出ステーション」及び「ドリンク装置」は、その機能及び構造から、本願発明の「飲料を調製する装置」に相当し、以下同様に、「カートリッジ10」は「交換可能なカプセル」に、「ドリンク装置」は「流体供給器」に、「室149」は「収容器」に、「側壁100」は「第一壁」に、「頂部フィルタ101」は「第二壁」に、「底部103」は「第三壁」に、「フィルタ紙」は「ろ過紙」に相当する。

(2)引用発明の「カートリッジ10で飲料を製造するための抽出ステーション」は、上記摘記事項(1)を参酌すると、カートリッジ10内の焙煎されたコーヒーから飲料を抽出し、ラテ、カプチーノあるいはモカ等のエスプレッソ飲料を製造するものであり、カートリッジを用いていることから消費するのに適した所定量の飲料を調整することは明らかであり、本願発明の「抽出可能な製品を用いて、消費するのに適した所定量の飲料を調製する装置」に相当する。

(3)引用発明の「ドリンク装置に接続された給水口137を有する抽出ヘッド64」、「水圧プレス77、」「カートリッジ10を収容する室149」「を有する抽出容器124」を備え、「水圧プレス77は、抽出容器124の室149で受けるプレス板79、給水口137に接続された上端部76及びプレス板に接続された底端部78を有する拡張可能チャンバ138、並びに内部の圧力が所定の値を超えた場合にのみ、拡張可能チャンバを開くように動作する流量制限弁94を備え、プレス板79は、香味含有材料と水との間の相互作用を容易にするために抽出容器124内のカートリッジ10の上部フィルタ101を押圧する底面及び上部フィルタ101に水を分配するための複数の開口部79を有」するものは、所定量の水がドリンク装置から吸水口、水圧プレス77を通ってカートリッジ10に供給されるものであるから、本願発明の「或る量の流体を」「前記交換可能なカプセルに供給する流体供給器と、交換可能なカプセルを保持する収容器とを有する器具」に相当する。

(4)引用発明の「カートリッジ10」が「頂部フィルタ101、底部フィルタ102、及び継ぎ目104を含み、継ぎ目104は、溶解促進剤80及び可溶性固形物12aを封止するために頂部及び底部のフィルタとの間に形成され、底部フィルタ102は、底部103、実質的に垂直な側壁100及び開放した頂端部を有し、」「頂部及び底部フィルタは、フィルタ紙であ」ることは、底部フィルタ102の実質的に垂直な側壁100が外周となり、側壁100の一端を頂部フィルタ101が閉じ、他端を底部フィルタ102の底部103が閉じているといえ、底部フィルタ102はフィルタ紙で形成されているから、多孔質の柔軟なシートであるといえる。
したがって、引用発明の「カートリッジ10」が「頂部フィルタ101、底部フィルタ102、及び継ぎ目104を含み、継ぎ目104は、溶解促進剤80及び可溶性固形物12aを封止するために頂部及び底部のフィルタとの間に形成され、底部フィルタ102は、底部103、実質的に垂直な側壁100及び開放した頂端部を有し、」「頂部及び底部フィルタは、フィルタ紙であ」ることと、本願発明の「前記交換可能なカプセルは、外周の第一壁、前記外周の第一壁を第一端で閉じる第二壁、及び前記外周の第一壁を前記第二壁と反対側の第二の開いた端で閉じる柔軟なシート状の穿孔された及び/又は多孔質の第三壁を有し、」「前記第三壁はろ過紙又は不織のフィルタ物質を含」むこととは、「前記交換可能なカプセルは、外周の第一壁、前記外周の第一壁を第一端で閉じる第二壁、及び前記外周の第一壁を前記第二壁と反対側の第二の端で閉じる柔軟なシート状の穿孔された及び/又は多孔質の第三壁を有し、」「前記第三壁はろ過紙又は不織のフィルタ物質を含」むことの限りで共通する。

(5)引用発明の「カートリッジ10」が、「底部103、実質的に垂直な側壁100および開放した頂端部を有」する「底部フィルタ102」と「底部フィルタ102の開口した上端に嵌合する」「垂直な側壁106」を有する「頂部フィルタ101」とで「可溶性固形物12a」を「封止」していることは、抽出される「可溶性固形物12a」を「底部フィルタ102」と「頂部フィルタ101」とからなる空間の内部に「封止」しており、「底部フィルタ102」の「底部103」がカートリッジ10における側壁106の軸方向の外郭を形成しているといえるから、本願発明の「第一壁、第二壁及び第三壁は前記抽出可能な製品を有する内部空間を囲んでいて、」「前記第三壁は前記カプセルの軸方向の、前記カプセルの最も外側の境界を形成」することに相当する。

(6)引用発明の「ドリンク装置に接続された給水口137」、「水圧プレス77は、抽出容器124の室149で受けるプレス板79、給水口137に接続された上端部76及びプレス板に接続された底端部78を有する拡張可能チャンバ138、並びに内部の圧力が所定の値を超えた場合にのみ、拡張可能チャンバを開くように動作する流量制限弁94を備え、プレス板79は、香味含有材料と水との間の相互作用を容易にするために抽出容器124内のカートリッジ10の上部フィルタ101を押圧する底面及び上部フィルタ101に水を分配するための複数の開口部79を有」することは、ドリンク装置に接続された給水口137からの水が、複数の開口部79から上部フィルタ101に分配され、香味含有材料と水との間の相互作用を容易にするものであるから、本願発明の「前記流体供給器は飲料を作るために第二壁を通して」「抽出可能な製品に流体を供給するように配置され」ることに相当する。

(7)引用発明の「抽出容器の室149は、使用中にカートリッジを支持するため、その底部に多数の凸部121、カートリッジからの飲料を集めるチャンバ122、及び収集チャンバ内の飲料を高速飲料ジェットに変えるためのオリフィス123を有する」ことは、抽出容器の室149の底部がカートリッジの底部103を支持しており、また、多数の凸部121の間には、当然に多数の凸部121間の凹部が存在するから、カートリッジからの抽出された飲料は、カートリッジの底部103を通って、多数の凸部121間の凹部を流れ、チャンバ22に供給されるものである。
そうすると、カートリッジの底部103は、抽出された飲料を底部103を通って、室149の底部を通って流れるように室149の底部に当接配置されているといえる。また、室149の底部は抽出した飲料をカートリッジから凸部121間の凹部を通して流す多数の凸部121を有しているといえ、カートリッジの底部103と凸部121とは、使用中に当接しているものである。
したがって、引用発明の「抽出容器の室149は、使用中にカートリッジを支持するためその底部に多数の凸部121、カートリッジからの飲料を集めるチャンバ122、及び収集チャンバ内の飲料を高速飲料ジェットに変えるためのオリフィス123を有する」ことと、本願発明の「前記収容器は支持面を有し、前記第三壁は、調製した飲料を前記カプセルから前記第三壁を通して、かつ前記支持面を通して流すために前記支持面に当接するように配置され、前記支持面は、前記調製した飲料を前記カプセルからチャネル形状の溝を通して流すために、前記第三壁に面した側に前記チャネル形状の複数の溝を有し、且つ前記支持面は、前記チャネル形状の複数の溝の間に、使用中に前記第三壁が当接するリッジを有すること」とは、「前記収容器は支持面を有し、前記第三壁は、調製した飲料を前記カプセルから前記第三壁を通して、かつ前記支持面を通して流すために前記支持面に当接するように配置され、前記支持面は、前記調製した飲料を前記カプセルから凸部間の凹部を通して流すために、前記第三壁に面した側に前記凸部間の凹部を有し、且つ前記支持面は、前記凸部間の凹部の間に、使用中に前記第三壁が当接する凸部を有すること」の限りで共通する。

2 一致点及び相違点
したがって、両者は、

「抽出可能な製品を用いて、消費するのに適した所定量の飲料を調製する装置であって、前記装置は、
交換可能なカプセル、及び
或る量の流体を前記交換可能なカプセルに供給する流体供給器と、交換可能なカプセルを保持する収容器とを有する器具、とを含み、
ここで、前記交換可能なカプセルは、
外周の第一壁、
前記外周の第一壁を第一端で閉じる第二壁、及び
前記外周の第一壁を前記第二壁と反対側の第二の端で閉じる柔軟なシート状の穿孔された及び/又は多孔質の第三壁を有し、
ここで、第一壁、第二壁及び第三壁は前記抽出可能な製品を有する内部空間を囲んでいて、
ここで、前記第三壁は前記カプセルの軸方向の、前記カプセルの最も外側の境界を形成し、かつ、
前記第三壁はろ過紙又は不織のフィルタ物質を含み、
ここで、前記流体供給器は飲料を作るために第二壁を通して抽出可能な製品に流体を供給するように配置され、さらに、
ここで、前記収容器は支持面を有し、前記第三壁は、調製した飲料を前記カプセルから前記第三壁を通して、かつ前記支持面を通して流すために前記支持面に当接するように配置され、
前記支持面は、前記調製した飲料を前記カプセルから凸部間の凹部を通して流すために、前記第三壁に面した側に前記凸部間の凹部を有し、且つ前記支持面は、前記凸部間の凹部の間に、使用中に前記第三壁が当接する凸部を有する、
飲料を調製する装置。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
流体供給器からカプセルの第二壁を通して抽出可能な製品に供給する流体が、本願発明では、少なくとも6バールの圧力下で供給するものであるのに対し、引用発明では、圧力が特定されていない点。

<相違点2>
本願発明では、第三壁が外周の第一壁を第二壁と反対側の第二の開いた端で閉じるものであるのに対し、引用発明では、底部103が、実質的に垂直な側壁100とで底部フィルタ102を形成している点。

<相違点3>
支持面が、本願発明では、調製した飲料をカプセルからチャネル形状の溝を通して流すために、第三壁に面した側にチャネル形状の複数の溝を有し、且つチャネル形状の複数の溝の間に、使用中に第三壁が当接するリッジを有するのに対し、引用発明は、凸部と凸部間の凹部を有する点。

3 当審の判断
(1)相違点の検討
上記相違点について以下検討する。

<相違点1について>
エスプレッソ飲料において、コーヒーの抽出に用いる流体の圧力として少なくとも6バールの圧力を用いることは、本願の優先権主張日前に周知(例えば、拒絶査定で例示された国際公開第2007/131559号(請求項1、4、図1等)参照。)である。
そして、引用発明の飲料を調整する装置において、引用例の摘示(1)にはエスプレッソ飲料を製造することが記載されていることから、エスプレッソ飲料の抽出に用いるのに周知である少なくとも6バールの圧力を用いることは当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
引用例の図7には、頂部フィルタ101の周縁部91が、底部フィルタ102の側壁100の開いた端の水平部92で封止することが記載されている(引用例の摘示(3)参照。)。
引用発明は、底部103と側壁100とで底部フィルタ102を一体で形成しているところ、底部フィルタ102の底部103と側部100とを単に別部材で形成するに際し、上記引用例の図7の構造を参酌して、上記相違点2に係る本願発明とすることは、当業者が設計上適宜なし得ることである。

<相違点3について>
本願発明の「リッジ」と「チャネル形状の溝」に関して、本願明細書の段落【0060】には、「図2bの実施例では、支持面10は複数の互いに直交して配向された溝32を有している。この実施例では、リッジ34は溝間の「島」によって形成されている。この実施例では、その島は、ほぼ正方形であるが、他の形状、例えば、長方形の、円形の、三角形の、細長い又は粒子状のようなものも可能である。この実施例では、リッジ34は、使用中に第二の開いた端22を覆う第三壁20の表面領域の部分と一致する支持面10の約25%の部分を構成する。この実施例では、第三壁20は、第二の開いた端22を覆う第三壁20の表面領域の部分の約25%を覆うリッジ34によって支持される。従って、第三壁20は効果的に支持され、流体がカプセル2に圧力をかけられて供給されるときに、第三壁は裂けたり又は破裂しないことになる。」と記載されており、リッジの形状は粒子状のような「島」も含むことが記載されている。
そうすると、引用発明の凸部はリッジといえ、凸部間の凹部は溝といえるから、相違点3は実質的な相違点ではない。
したがって、引用発明は、上記相違点3に係る本願発明の構成を有している。

なお、仮に、リッジが一般的な「尾根」を意味するものとしても、コーヒーの抽出に用いられるフィルタを支持する面が抽出されたコーヒー飲料の流れる溝と溝間の尾根で形成されることは、本願の優先権主張日前に周知(例えば、特表2007-530107号公報(【0094】?【0102】、図9等)のリッジ131、特表2008-509720号公報(【0021】、図3、4等)の溝12参照。)であるから、引用発明の支持面に、作用が同じである前記溝と溝間の尾根からなる周知の事項を適用し、本願発明の上記相違点3に係る事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)本願発明の奏する作用効果
そして、その効果は、引用発明、前記周知の事項から当業者が予測しうる範囲のものであって、格別なものでない。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、及び前記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 審判請求書の補正案について
なお、審判請求書の平成26年8月13日の手続補正書における補正案について検討するに、引用発明の底部フィルタ102も、その使用形態から、使用中に裂けたり、又は破損しないようにすることは当然のことであるから、引用発明において「使用中に、前記第三壁が前記リッジに接触して裂けたり、又は破裂したりしないように、前記リッジと前記第三壁は互いに適合され」ることは、当業者が容易に想到し得たことである。


第5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-03 
結審通知日 2015-06-10 
審決日 2015-06-25 
出願番号 特願2012-516014(P2012-516014)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 佳孝  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 小野 孝朗
佐々木 正章
発明の名称 飲料を調製するためのカプセル、装置及び方法  
代理人 松井 光夫  
代理人 村上 博司  

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