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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1307695
審判番号 不服2014-11058  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-11 
確定日 2015-11-12 
事件の表示 特願2009-241465「芳香族ポリカーボネート樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成23年5月6日出願公開,特開2011-88951〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成21年10月20日を出願日とする特許出願であって,平成25年2月25日付けで拒絶理由が通知され,同年5月7日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲が補正され,平成26年2月26日付けで拒絶査定がなされ,同年6月11日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲及び明細書が補正されたので,特許法第162条所定の審査がされた結果,同年8月5日付けで同法第164条第3項の規定による報告がなされたものである。



第2 平成26年6月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
平成26年6月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
平成26年6月11日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,審判請求と同時にされた補正であり,平成25年5月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の内容について,
「(A)分岐率0.4mol%以上0.7mol%未満の分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して,(B)難燃剤(B成分)0.005?12重量部を含有し,かつフタルイミドを含有しない芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。」
を,
「(A)分岐率0.5mol%以上0.7mol%未満の分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して,(B)難燃剤(B成分)0.005?12重量部を含有し,かつフタルイミドを含有しない芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。」
とする,補正事項を含むものである。

2.本件補正の目的について
上記した特許請求の範囲についての本件補正は,本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項(以下,「発明特定事項」という。)である,芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)の分岐率の数値範囲について「0.4mol%以上0.7mol%未満」を「0.5mol%以上0.7mol%未満」に限定する補正事項を含むものであり,請求項1についてする本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決すべき課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件について
そこで,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)は,以下に記載のとおりである。

本願補正発明
「(A)分岐率0.5mol%以上0.7mol%未満の分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して,(B)難燃剤(B成分)0.005?12重量部を含有し,かつフタルイミドを含有しない芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。」

(2)刊行物及びその記載事項
刊行物A:特開2005-126478号公報
刊行物B:特開2007-31583号公報

ア 刊行物Aの記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物A(平成25年2月25日付け拒絶理由通知で引用した引用文献2。)には,以下の事項が記載されている。なお,下線は当審で付した(以下,同じ。)。

(ア)「【請求項1】
二価フェノール,分岐剤,一価フェノール類およびホスゲンの反応により得られる分岐状ポリカーボネート樹脂において,分岐剤含有率(分岐剤のモル数/二価フェノールのモル数×100)Xが0.1?0.7mol%であり,ポリスチレン換算重量分子量で(i)≧3.4×10^(4),(ii)1.0?3.4×10^(4),(iii)≦1.0×10^(4)の分子量範囲に3分割したとき,それぞれの分子量範囲における分岐状ポリカーボネート樹脂中の分岐剤濃度(mol%)が,下記式(1)および(2)を満足し,且つポリカーボネート樹脂中の全N量が0?20ppm,全Cl量が0?200ppmであることを特徴とする分岐状ポリカーボネート樹脂。
[(i)の分岐剤濃度] /[(iii)の分岐剤濃度]≧3 (1)
[(ii)の分岐剤濃度]/[(iii)の分岐剤濃度]≧1.5 (2)
」(特許請求の範囲請求項1)

(イ)「本発明における分岐状ポリカーボネート樹脂は,その分岐剤含有率Xが0.1?0.7mol%,好ましくは0.2?0.4mol%である。分岐剤含有率は二価フェノールの総モル数に対する分岐剤のモル数(分岐剤のモル数/二価フェノールの総モル数×100mol%で表す)を意味する。分岐剤含有率が0.1mol%未満であると,満足な分岐特性が得られず押出成形やブロー成形が困難になるので好ましくない。また,分岐剤含有量が0.7mol%を越えると,ポリマーが架橋し,ゲルが発生する可能性があり,ポリマーの耐衝撃性が低下するので好ましくない。」(段落0012)

(ウ)「上記(i)?(iii)それぞれの範囲の分岐状ポリカーボネート樹脂中の分岐剤濃度(モル%;二価フェノールに対する分岐剤の濃度)は,分取物の1H-NMR測定結果から求められる。」(段落0016)

(エ)「本発明の分岐状ポリカーボネート樹脂には,本発明の特性を損なわない範囲で,さらに酸化防止剤,離型剤(脂肪酸エステル等),耐候剤(紫外線吸収剤),核剤,滑剤,可塑剤,帯電防止剤,増白剤,抗菌剤,着色剤(顔料,染料等),充填剤,強化剤,他樹脂やゴム等の重合体,難燃剤等の改質改良剤を適宜添加して用いることができる。」(段落0033)

イ 刊行物Bの記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物B(平成25年2月25日付け拒絶理由通知で引用した引用文献3。)には,以下の事項が記載されている。

(オ)「【請求項1】
(A)一般式(1)で表される化合物から誘導される分岐構造を有する分岐率が0.1?2.5モル%である分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部
【化1】

[式中Rは水素原子または炭素原子数1?10のアルキル基を表す。]
(B)分子中にSi-H基および芳香族基を含有するシリコーン化合物であって,(1)Si-H基含有量(Si-H量)が0.1?1.2mol/100g,(2)下記一般式(2)で示される芳香族基含有量(芳香族基量)が10?70重量%,および(3)平均重合度が3?150であるシリコーン化合物(B成分)2?7重量部
【化2】

(式(2)中,Xはそれぞれ独立にOH基,ヘテロ原子含有官能基を有しても良い炭素数1?20の炭化水素基を表す。nは0?5の整数を表わす。さらに式(2)中においてnが2以上の場合はそれぞれ互いに異なる種類のXを取ることができる。)および
(C)有機金属塩化合物(C成分)0.02?0.2重量部
よりなる難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。」(特許請求の範囲請求項1)

(カ)「<A成分>
本発明における分岐構造を有する分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂は,分岐率Xが0.1?2.5モル%である。好ましくは0.1?0.7mol%,より好ましくは0.1?0.4mol%である。分岐率Xは樹脂全体に含まれる製造に用いた二価フェノール由来の構造単位の総モル数に対する分岐剤由来の構造単位のモル数(分岐剤由来の構造単位のモル数/二価フェノール由来の構造単位の総モル数×100mol%で表す)を意味する。分岐率が0.1mol%未満であると,満足な分岐特性が得られず溶融張力が低すぎて,組成物に関する難燃性,とくにドリップ防止性が発現しにくくなり,さらに,押出成形やブロー成形が困難になるので好ましくない。また,分岐率が高いとポリマーが架橋し,ゲルが発生し,ポリマーの耐衝撃性が低下する。なお,かかる割合については1H-NMR測定により算出することが可能である。」(段落0023)

(キ)「<B成分>
本発明の樹脂組成物において,難燃剤として使用されるシリコーン化合物(B成分)は特定のSi-H結合を有するシリコーン化合物である。・・・
・・・
前記B成分のシリコーン化合物は,樹脂成分(A成分)100重量部に対して2?7重量部,より好ましくは3?6重量部配合される。」(段落0062?0080)

(ク)「<C成分>
・・・
C成分として使用されるアルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩としては,従来ポリカーボネート樹脂を難燃化するのに使用されている各種の金属塩が使用可能であるが,特に有機スルホン酸の金属塩,硫酸エステルの金属塩,リン酸部分エステルの金属塩,芳香族系イミドの金属塩を挙げることができる。
・・・
本発明の樹脂組成物に配合されるC成分は樹脂成分(A成分)100重量部に対して,0.02?0.2重量部,好ましくは0.05?0.18重量部,より好ましくは0.07?0.12重量部の範囲が適当である。
このC成分の配合により,難燃性をより向上させることができ,殊にドリップ防止性が改良されるが,添加量が多すぎると本発明の特徴である透明性が損なわれるだけでなく,場合によっては成形時に樹脂が分解して逆に難燃性が低下する方向となる。
添加量が少なすぎると難燃性が不十分となり本発明の目的である難燃性が発揮されない。」(段落0083?0109)

(ケ)「本発明の樹脂組成物には,成形品に種々の機能の付与や特性改善のために,それ自体知られた添加物を少割合配合することができる。これら添加物は本発明の目的を損なわない限り,通常の配合量である。
かかる添加剤としては,B成分以外の難燃剤(リン酸エステル,赤リン,金属水和物系など),ドリップ防止剤(フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーなど),熱安定剤,紫外線吸収剤,光安定剤,離型剤,滑剤,摺動剤(PTFE粒子など),着色剤(カーボンブラック,酸化チタンなどの顔料,染料),光拡散剤(アクリル架橋粒子,シリコン架橋粒子,極薄ガラスフレーク,炭酸カルシウム粒子など),蛍光増白剤,蓄光顔料,蛍光染料,帯電防止剤,流動改質剤,結晶核剤,無機および有機の抗菌剤,光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン,微粒子酸化亜鉛など),グラフトゴムに代表される衝撃改質剤,赤外線吸収剤またはフォトクロミック剤が挙げられる。」(段落0116?0117)

(3)刊行物Aに記載された発明
上記(2)ア(ア)及び(エ)で摘記したところを総合すると,刊行物Aには以下の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているといえる。

「二価フェノール,分岐剤,一価フェノール類およびホスゲンの反応により得られる分岐状ポリカーボネート樹脂であって,分岐剤含有率(分岐剤のモル数/二価フェノールのモル数×100)Xが0.1?0.7mol%であり,ポリスチレン換算重量分子量で(i)≧3.4×10^(4),(ii)1.0?3.4×10^(4),(iii)≦1.0×10^(4)の分子量範囲に3分割したとき,それぞれの分子量範囲における分岐状ポリカーボネート樹脂中の分岐剤濃度(mol%)が,下記式(1)および(2)を満足し,且つポリカーボネート樹脂中の全N量が0?20ppm,全Cl量が0?200ppmである分岐状ポリカーボネート樹脂及び難燃剤を含有してなる分岐状ポリカーボネート樹脂組成物。
[(i)の分岐剤濃度] /[(iii)の分岐剤濃度]≧3 (1)
[(ii)の分岐剤濃度]/[(iii)の分岐剤濃度]≧1.5 (2)


(4)本願補正発明と刊行物発明との対比・判断
刊行物発明における「分岐状ポリカーボネート樹脂」は,「二価フェノール,分岐剤,一価フェノール類およびホスゲンの反応により得られる」ことから,本願補正発明における「分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂」に相当する。
そして,刊行物発明における「分岐剤含有率」は,(ウ)で摘記したところと本願の明細書の段落0018の記載とを対比すれば,本願補正発明における「分岐率」に相当する。
そして,刊行物発明における「分岐状ポリカーボネート樹脂組成物」は,フタルイミドを含有しないものであることは明らかである。
また,刊行物発明における「ポリスチレン換算重量分子量で(i)≧3.4×10^(4),(ii)1.0?3.4×10^(4),(iii)≦1.0×10^(4)の分子量範囲に3分割したとき,それぞれの分子量範囲における分岐状ポリカーボネート樹脂中の分岐剤濃度(mol%)が,下記式(1)および(2)を満足し,且つポリカーボネート樹脂中の全N量が0?20ppm,全Cl量が0?200ppmである」との特定事項は,本願補正発明において除外するものではないから,この点は相違点ではない。

以上をまとめると,本願補正発明と刊行物発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
(A)分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して,(B)難燃剤(B成分)を含有し,かつフタルイミドを含有しない芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。

〔相違点1〕
芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐率(分岐剤含有率)について,本願補正発明では「0.5mol%以上0.7mol%未満」と特定しているのに対し,刊行物発明では「0.1?0.7mol%」と特定している点,すなわち,数値範囲の下限値が異なる点。

〔相違点2〕
難燃剤の配合量について,本願補正発明では「芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して,(B)難燃剤(B成分)0.005?12重量部」と特定しているのに対し,刊行物発明ではそのような特定がない点。

上記相違点について検討する。

〔相違点1〕について
本願補正発明では,芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐率という相違点1に係る構成を有することの技術的意義について,本願明細書に「分岐率が低いと,満足な分岐特性が得られず溶融張力が低すぎて,組成物に関する難燃性,とくにドリップ防止性が発現しにくくなり,さらに,押出成形やブロー成形が困難になるので好ましくない。一方,分岐率が高いとポリマーが架橋し,ゲルが発生し,ポリマーの耐衝撃性が低下する。」(段落0019)と記載されていることから,その下限値については,難燃性,ドリップ防止性,押出成形性やブロー成形性を考慮し,その上限値については,ゲルの発生,耐衝撃性を考慮したものであるといえる。
一方,刊行物発明が分岐状ポリカーボネート樹脂の分岐剤含有率という相違点1に係る構成を有することの技術的意義について,刊行物Aには「分岐剤含有率が0.1mol%未満であると,満足な分岐特性が得られず押出成形やブロー成形が困難になるので好ましくない。また,分岐剤含有量が0.7mol%を越えると,ポリマーが架橋し,ゲルが発生する可能性があり,ポリマーの耐衝撃性が低下するので好ましくない。」(上記(2)ア(イ))と記載されており,その上限値については,ゲルの発生,耐衝撃性を考慮したものであるといえる。他方で,その下限値については,押出成形性やブロー成形性を考慮し,との記載がされているにとどまり,本願補正発明と同様の意義を有する旨の記載はない。
ところで,刊行物Bには,本願補正発明と同様に,分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐率に関し,「分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂は,分岐率Xが0.1?2.5モル%である。好ましくは0.1?0.7mol%,より好ましくは0.1?0.4mol%である。・・・分岐率が0.1mol%未満であると,満足な分岐特性が得られず溶融張力が低すぎて,組成物に関する難燃性,とくにドリップ防止性が発現しにくくなり,さらに,押出成形やブロー成形が困難になるので好ましくない。また,分岐率が高いとポリマーが架橋し,ゲルが発生し,ポリマーの耐衝撃性が低下する。」(上記(2)ア(カ))と記載されている。
そうすると,刊行物Bに接した当業者であれば,刊行物発明について,その分岐剤含有率が0.1mol%未満であると,押出成形やブロー成形が困難になるのみならず,難燃性,とくにドリップ防止性が発現しにくくなるものと理解・解釈するといえる。
したがって,刊行物発明において,分岐状ポリカーボネート樹脂の分岐剤含有率に関し,その数値範囲の下限値を,難燃性,ドリップ防止性,押出成形性やブロー成形性を考慮し,「0.1?0.7mol%」の範囲内から「0.5mol%」を設定することは,当業者であれば容易になし得ることである。また,その効果も格段優れたものとはいえない。

〔相違点2〕について
刊行物発明において,要求される樹脂組成物の難燃化の程度を考慮して,配合する難燃剤の配合量を調節することは,当業者において当然に考慮することであるといえる。
そして,刊行物Bの摘示(キ)?(ケ)をも参酌すれば,刊行物発明における難燃剤の配合量を「分岐状ポリカーボネート樹脂100重量部に対して,難燃剤0.005?12重量部」と特定することは,当業者であれば容易になし得ることである。
また,その効果について検討しても,配合量が少なすぎれば十分な難燃性が得られないことは当然のことであって,配合量が多すぎれば十分な機械物性が得られないことは当業者が予測し得ることにすぎない。

よって,本願補正発明は,刊行物発明と刊行物Bに記載された事項に基いて,その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)まとめ
したがって,本願補正発明は,刊行物発明と刊行物Bに記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができない。よって,本件補正は特許法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?7に係る発明は,平成25年5月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。

本願発明
「(A)分岐率0.4mol%以上0.7mol%未満の分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して,(B)難燃剤(B成分)0.005?12重量部を含有し,かつフタルイミドを含有しない芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。」

2.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は,
「本願発明は,その出願前に日本国内において頒布された下記刊行物に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物A:特開2005-126478号公報
刊行物B:特開2007-31583号公報」
というものを含むものである。

3.当審の判断
(1)刊行物の記載事項
刊行物A及びBには,前記第2 3(2)ア及びイに記載した事項が記載されている。

(2)刊行物に記載された発明
刊行物Aには,前記第2 3(3)で認定した刊行物発明が記載されているといえる。

(3)本願発明と刊行物発明との対比・判断
本願補正発明は,本願発明において,芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)の分岐率の数値範囲に関して「0.4mol%以上0.7mol%未満」なる事項を「0.5mol%以上0.7mol%未満」に限定したものである。
そうすると,第2 3.で述べたとおり,本願補正発明が,刊行物発明と刊行物Bに記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明もまた刊行物発明と刊行物Bに記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。



第4 むすび
以上のとおり,本願発明,すなわち,平成25年5月7日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,刊行物A及びBに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
原査定の理由は妥当なものである。
したがって,他の請求項に係る発明について更に検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-31 
結審通知日 2015-09-01 
審決日 2015-09-25 
出願番号 特願2009-241465(P2009-241465)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C08L)
P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 行令阪野 誠司  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 小野寺 務
前田 寛之
発明の名称 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物  
代理人 為山 太郎  

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