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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1307718
審判番号 不服2015-1238  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-22 
確定日 2015-11-12 
事件の表示 特願2012-516347「高密度及び高帯域幅の光ファイバ装置及び関連機器並びに方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月23日国際公開、WO2010/148336、平成24年12月 6日国内公表、特表2012-530944〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2010年6月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年6月19日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年2月21日及び平成26年8月25日に手続補正がなされ、同年9月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年1月22日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。そして、その請求項に係る発明は、平成26年8月25日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次の事項により特定されるものである。

「光ファイバ装置であって、
複数の光ファイバコンポーネントを支持するシャーシと、
前記シャーシが設けられる機器ラックであって、前記機器ラックは1つ又は2つ以上のスペースを有し、1つのスペースは幅の寸法が58.42cm(23インチ)であり、4.45cm(1.75インチ)の高さ寸法が1-Uスペースであり、
前記複数の光ファイバコンポーネントは前記シャーシに設けられ、前記複数の光ファイバコンポーネントによって占められる領域が、前記1-Uスペース内の前記機器ラックの全領域の少なくとも50%に相当するよう構成され、
前記複数の光ファイバコンポーネントは前記シャーシに設けられ、少なくとも1つのシンプレックス光ファイバコンポーネント又はデュプレックス光ファイバコンポーネントの使用に基づいて、前記1‐Uスペースに少なくとも98個の光ファイバ接続部を提供するよう構成されている、
ことを特徴とする光ファイバ装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2009-115962号公報(以下「引用例」という。)には、図とともに次の記載がある(下線は、当審による。)。

ア 「【0001】
本発明は、構内外での光コネクタ接続に用いられる光コネクタ接続キットに関する。さらに詳述すると、本発明は、光コネクタ接続に用いられるアダプタモジュールを上下あるいは左右に多段に集積した高密度配線状態で光コネクタ接続を行う光コネクタ接続キットに関するものである。尚、本明細書において光ファイバとは、特に断りがない限り、光コネクタ接続される全ての光ファイバ、例えば光ファイバ心線や光ファィバコードなどを総称するものとして使用している。
【背景技術】
【0002】
現在の通信系統において用いられている光成端架や構内キャビネットにおいては、アダプタモジュールに各々接続された光ファイバのキンクなどを避けるため、光接続処理を行うトレイの下に1トレイ分(1ユニット分)の空間を使って光ファイバを引き回すだけのコード配線トレイを用意するようにしている。
【0003】
また、光配線盤においては、配線トレイの代わりに、上下の成端ユニット・成端箱の前方でかつ間に成端ユニットから引き出された光ファイバを載せる配線ダクトが備えられることもある(特許文献1)。この場合、光ファイバは、一旦下に垂らされてからラックの横に引き回すための配線ダクトに載せられ、ラックの横に引き回されてからラックの側方の引っかけ部に引っ掛けられて他の設備などに導くように設けられている。
【0004】
一方、近年の通信用光ケーブルの普及により、増大する光コネクタ接続に対処するため構内外での光コネクタ接続の高密度化が要求されている。例えば、光成端架や構内キャビネットなどにおける光接続処理においても、あるいは局内に配置された光分岐接続装置、光接続箱、光配線架などにおける光ファイバの分岐においても、光接続処理用の光コネクタの薄型化とアダプタモジュールの高密度化が求められている。このため、光接続処理用のアダプタモジュールと光コネクタとを薄型化してトレイなどの筐体に収納した薄板状のパッケージ・光接続箱とするだけでなく、それらを架台などに隙間無く多段に並べて配設することが望まれる。例えば、線路側光ファイバと伝送装置側光ファイバとを切替可能に接続する光配線盤などにおいては、配線箱を薄型化して光ファイバの配線の高密度化を達成しようとする場合には、多数のアダプタを隙間無く密に配列させたアダプタモジュールを2段以上重ねて配置する接続箱の採用や、あるいは接続箱を薄型にして密に多段に重ねることが考えられる。」

イ 「【0023】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1?図7に本発明の光コネクタ接続キットをラック搭載型の接続箱に適用した実施の一形態を示す。この光コネクタ接続キットは、複数のアダプタを一列に配列したアダプタモジュールを少なくとも2段以上多段配列した状態で支持構造物に搭載して多数の光ファイバを光コネクタ接続可能とするものである。本実施形態の場合、アダプタモジュール2の前方(ラック26内の光接続箱1に向かって手前側)で横一列に並ぶアダプタ2aに接続された光ファイバ3が掛けられる棒状のファイバハンガー4と、このファイバハンガー4を上方に跳ね上げた状態で保持するための係止手段5とをトレイ6に備えている。
【0025】
接続箱1は、アダプタモジュール2並びにその他の必要な装備を搭載するトレイ6と、該トレイ6を摺動可能に支持する基体7と、該基体7をラック26に取り付けるための取付板8とから構成されている。」

ウ 「【0028】
トレイ6には、アダプタ2aを固定するアダプタ保持プレート13と、トレイ後方から導入された光ファイバ(図示省略)とアダプタに接続されるコネクタ付き光ファイバ(図示省略)とを融着させた光ファイバのスリーブ(図示省略)を固定するスリーブホルダー14と、アダプタ保持プレート13からスリーブホルダー14の上方を覆う一部開閉可能なカバー(図示省略)を支えるガイドプレート15と、収容する光ファイバを固定するクランプ17を備えると共に、ケーブルの余長部を収納する空間を適宜形成している。本実施形態のアダプタ保持プレート13は、50個ずつのデュプレックス型コネクタ27を横一列に上下に接続可能とする多数のアダプタ2aを装着するアダプタ挿入口13aを備えており、2組のアダプタモジュール2u,2dを上下に配置して合計100心の光ファイバの光接続を可能とするものである。尚、横一列に多数のアダプタ2aを配置して成る2段のアダプタモジュール2(2u,2d)は、図示していないが、基体7の後端のケーブル引き入れ/引き出し口から導入あるいは引き出される光ファイバと融着された光ファイバのコネクタが接続されている。」

エ 「【0041】
また、本実施形態では光成端架に適用した例を対象に説明したが、一列に配置されている複数のアダプタをトレイあるいはその他の筐体に搭載して薄板状のパッケージとして上下方向にあるいは左右方向に多数並べて配設するようにしたあらゆる光配線装置類において実施可能である。」

上記イないしエによれば、引用例には、
「アダプタモジュール2並びにその他の必要な装備を搭載するトレイ6と、該トレイ6を摺動可能に支持する基体7と、該基体7をラック26に取り付けるための取付板8を備え、基体7を取付板8によりラック26に取り付けた光配線装置であって、
トレイ6は、アダプタ2aを固定するアダプタ保持プレート13を備えており、
アダプタ保持プレート13は、50個ずつのデュプレックス型コネクタ27を横一列に上下に接続可能とする多数のアダプタ2aを装着するアダプタ挿入口13aを備えており、2組のアダプタモジュール2u,2dを上下に配置して合計100心の光ファイバの光接続を可能とするものである、
光配線装置。」(以下「引用発明」という。)
が記載されているものと認められる。

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「アダプタ2a」、「基体7」、「ラック26」及び「光配線装置」は、それぞれ、本願発明の「光ファイバコンポーネント」、「シャーシ」、「機器ラック」及び「光ファイバ装置」に相当する。
(2)引用発明の「ラック26」は、引用例の図7にみられるように、「基体7」を取り付けるための1つ以上のスペースを有しているものと認められるから、本願発明の「機器ラック」と同様に「1つ又は2つ以上のスペースを有」しているといえる。
(3)引用発明の「アダプタ2a」は、「トレイ6」が備える「アダプタ保持プレート13」に固定され、「トレイ6」は「基体7」に支持されているから、引用発明の「アダプタ2a」は、「基体7」に設けられているといえる。
したがって、引用発明の「アダプタ2a」は、本願発明の「光ファイバコンポーネント」と同様に「シャーシに設けられ」ているといえる。
また、引用発明の「アダプタ2a」は、「アダプタ保持プレート13」に固定されており、「アダプタ保持プレート13」は「基体7」の一部となっているから、引用発明において、「アダプタ2a」が占める領域は、「ラック26」が「基体7」を支持するためのスペース内の全領域の一部に相当するものと認められる。
よって、本願発明と引用発明は、「前記複数の光ファイバコンポーネントは前記シャーシに設けられ、前記複数の光ファイバコンポーネントによって占められる領域が、前記スペース内の前記機器ラックの全領域の一部に相当するよう構成され」ている点で一致する。
(4)引用発明において、「アダプタ保持プレート13は、50個ずつのデュプレックス型コネクタ27を横一列に上下に接続可能とする多数のアダプタ2aを装着するアダプタ挿入口13aを備えており、2組のアダプタモジュール2u,2dを上下に配置して合計100心の光ファイバの光接続を可能とするもの」であり、ここで、「アダプタ保持プレート13」は、「基体7」に設けられており、ラック26が基体7を支持するスペースの範囲内に位置しているものと認められるから、引用発明と本願発明は、「前記複数の光ファイバコンポーネントは前記シャーシに設けられ、少なくとも1つのシンプレックス光ファイバコンポーネント又はデュプレックス光ファイバコンポーネントの使用に基づいて、機器ラックが有するスペースに少なくとも98個の光ファイバ接続部を提供するよう構成されている」点で一致する。

(5)以上のことから、両者は、
「光ファイバ装置であって、
複数の光ファイバコンポーネントを支持するシャーシと、
前記シャーシが設けられる機器ラックであって、前記機器ラックは1つ又は2つ以上のスペースを有し、
前記複数の光ファイバコンポーネントは前記シャーシに設けられ、前記複数の光ファイバコンポーネントによって占められる領域が、前記スペース内の前記機器ラックの全領域の一部に相当するよう構成され、
前記複数の光ファイバコンポーネントは前記シャーシに設けられ、少なくとも1つのシンプレックス光ファイバコンポーネント又はデュプレックス光ファイバコンポーネントの使用に基づいて、前記機器ラックが有するスペースに少なくとも98個の光ファイバ接続部を提供するよう構成されている、
光ファイバ装置。」の点で一致する。

(6)一方、両者は、次の点で相違する。
本願発明では、機器ラックのスペースについて、「1つのスペースは幅の寸法が58.42cm(23インチ)であり、4.45cm(1.75インチ)の高さ寸法が1-Uスペース」であるとされており、また、「前記複数の光ファイバコンポーネントによって占められる領域が、前記1-Uスペース内の前記機器ラックの全領域の少なくとも50%に相当するよう構成され」ているのに対し、引用発明では、ラック26が基体7を支持するスペースが上記のような「1-Uスペース」であるか不明であり、また、「アダプタ2a」によって占められる領域がそのようなものであるか不明な点(以下「相違点」という。)。

4.判断
上記相違点につき検討する。
引用発明において、ラック26が基体7を支持するスペースとして、その幅寸法及び高さ寸法をどの程度のものとするかは、当業者が適宜に決定すべき設計的事項であって、幅の寸法を58.42cm(23インチ)、高さ寸法を4.45cm(1.75インチ)とする1-Uスペースを採用することに格別の困難性は認められない。
しかるところ、引用例の【0004】には、「近年の通信用光ケーブルの普及により、増大する光コネクタ接続に対処するため構内外での光コネクタ接続の高密度化が要求されている。…光ファイバの配線の高密度化を達成しようとする場合には、多数のアダプタを隙間無く密に配列させたアダプタモジュールを2段以上重ねて配置する接続箱の採用や、あるいは接続箱を薄型にして密に多段に重ねることが考えられる。」と記載され、高密度化を達成するための手段として、「多数のアダプタを隙間無く密に配列させ」ることが示唆されていることに鑑みれば、引用発明においても高密度化の要求に応えるべく、「アダプタ2a」を隙間なく密に配列させ、その結果、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることに格別の困難性は認められない。

5.むすび
以上のとおりであって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-18 
結審通知日 2015-06-22 
審決日 2015-07-03 
出願番号 特願2012-516347(P2012-516347)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 英一  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 吉野 公夫
山口 裕之
発明の名称 高密度及び高帯域幅の光ファイバ装置及び関連機器並びに方法  
代理人 井野 砂里  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 弟子丸 健  
代理人 辻居 幸一  
代理人 松下 満  

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