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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02D
管理番号 1307856
審判番号 不服2014-16751  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-22 
確定日 2015-11-18 
事件の表示 特願2009-215264「エンジン回転速度制御方法及びそれを実施する制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月31日出願公開、特開2011- 64130〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成21年9月17日の出願であって、平成25年4月17日付けで拒絶理由が通知され、同年6月14日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月29日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年11月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年5月21日付けで平成25年11月1日に提出した手続補正書でした明細書及び特許請求の範囲についての補正を却下する決定がされるとともに、同日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成26年8月22日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、同年10月2日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書(方式)が提出され、当審において平成27年6月9日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対し、同年8月10日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本件出願の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成27年8月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
エンジン回転速度制御装置により、検知しているエンジン回転速度に基づいて目標スロットル開度を決定しエンジンの吸気通路に配置したスロットルバルブの開閉用アクチュエータに駆動信号を出力することにより、スロットル開度を調整しながら前記エンジン回転速度が全ての運転条件において予め定めた制限速度を超えないようにリミット制御を実行するエンジン回転速度制御方法において、エンジン始動時の実際のエンジン回転速度と予め定めた目標エンジン回転速度とを比較して前記実際のエンジン回転速度が前記目標エンジン回転速度よりも大きい場合にそのときのアクセルペダル信号の値を記憶し、この記憶したアクセルペダル信号の値をベースとしてマップを用いずに所定の数式を用いて前記エンジン回転速度が制限速度内に収まるように前記目標スロットル開度を求め、この目標スロットル開度と前記所定の数式を用いて前記目標スロットル開度を求めた時点での前記アクセルペダル信号から入力された値を基にして求めた目標スロットル開度の値と比較して、小さい方を実際の目標スロットル開度とし、この実際の目標スロットル開度が前記目標スロットル開度となるように電子制御スロットルを制御してエンジン回転速度が目標(リミット)エンジン回転速度になるようにエンジンを制御する、ことを特徴とするエンジン回転速度制御方法。
【請求項2】
前記数式が、
【数1】

(但し、θ_(d)は目標スロットル開度、N_(d)は目標エンジン回転速度、Nはエンジン回転速度、eはエンジン回転速度の目標エンジン回転速度に対する誤差、APS_(hol)はリミット制御起動条件成立時のアクセルペダル信号から求められたスロットル開度、K_(1)?K_(3)は定数)である、ことを特徴とする請求項1に記載したエンジン回転速度制御方法。
【請求項3】
エンジン回転速度検出手段及び前記スロットルバルブの開閉用アクチュエータに接続され、前記エンジン回転速度に基づいて前記目標スロットル開度を決定して前記開閉用アクチュエータに駆動信号を出力することにより、前記スロットル開度を調整しながら前記エンジン回転速度が予め定めた制限速度を超さないように前記リミット制御を実行する制御装置であって、請求項1,2または3に記載したエンジン回転速度制御方法を実施するための制御プログラムを備えている、ことを特徴とする制御装置。」

第3 当審拒絶理由の理由1について
1 本願発明1
本願発明1は、上記第2の【請求項1】に記載されたとおりのものである。

2 刊行物
(1)-1 刊行物1の記載
本件出願前に頒布され、当審拒絶理由に引用された刊行物である特開2003-254144号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧縮天然ガス(CNG)等のガスを燃料として用いる、ガスエンジンの過回転防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、オットーサイクルエンジン(一般的な4サイクルエンジン)では、エンジンの過回転(オーバラン)を防止する手法として、エンジン回転数が許容回転数の上限に達すると、燃料カットを行なうような制御が行なわれている。このような燃料カットによるオーバランの防止では、エンジンの許容回転数が、常用回転域よりも十分に高い回転域にある場合には有効である。
【0003】また、ディーゼルエンジンでは、通常の運転においては吸気量が略一定であり、アクセルペダルの踏み込み量に応じて燃料噴射量を決定することで出力制御を行なっており、エンジンの過回転時にも、燃料噴射量を低減することで出力の抑制を行ない、エンジンの過回転(オーバラン)を防止している(従来技術1)。また、特許文献1には、気体燃料エンジンの回転を制限する技術として、メインスロットル弁と直列にサブスロットル弁を設け、このサブスロットル弁の開度を制御することで吸気流量を低減してエンジンの出力を低減させるようにした技術が開示されている(従来技術2)。
【0004】図12はその構成を示す模式図であり、エンジン回転速度検出手段によりエンジンの回転数が所定回転速度(例えば許容回転速度)を越えたことが検出されると、サブスロットル弁制御手段により、サブスロットル弁に連結されたアクチュエータ等の駆動手段の作動が制御されて吸気通路が絞られるように構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7-119527号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、圧縮天然ガス(CNG)等の気体燃料を用いる比較的大排気量(例えば4リットル以上)のガスエンジン(このようなガスエンジンもオットーサイクルエンジンである)では、一般的に図11に示すように、常用回転域と最大許容回転数との差が少ないので、最大許容回転数近傍での運転が比較的多い。このようなガスエンジンにおいて、エンジン回転数が許容回転数の上限となった時に、図10(a)に示すような従来技術1相当の燃料噴射量の低減や燃料カットを行なっても、この時のエンジン回転数と常用回転域(通常使用するエンジン回転域)とが近いため、図10(b)に示すようにエンジン回転数がハンチングしてしまいドライバビリティが悪化するという課題がある。
【0007】なお、ディーゼルエンジンも常用回転域と最大許容回転数との差が少ないが、燃料噴射量を低減することでエンジン出力自体が抑制されるので、エンジン回転数がハンチング等の現象が生じない。これに対して、オットーサイクルエンジンでは、吸気量を変更することでエンジン出力を変更しているため、エンジンの過回転時には、燃料噴射量だけを変更しても滑らかに出力を抑制することができず、エンジン回転数がハンチングしてしまうのである。
【0008】また、特許文献1に開示された技術では、吸気通路内にメインスロットル弁とサブスロットル弁との2つの弁機構を直列に設けなければならず、吸気通路、特にスロットル近傍が大型化してしまい、コスト増を招くという課題がある。また、スロットル近傍が大型化すると、スペース効率が悪化し、車両への搭載性が良くないという課題があった。
【0009】本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、ドライバビリティを悪化させることなく、エンジンの過回転を防止するようにした、ガスエンジンの過回転防止装置を提供することを目的とし、さらには、吸気通路のスロットル近傍の大型化やコスト増を招くことなくガスエンジンの過回転を防止するようにした、ガスエンジンの過回転防止装置を提供することを目的としている。」(段落【0001】ないし【0009】)

イ 「【0038】・・・(略)・・・
(b)第2実施形態の説明
次に、本発明の第2実施形態としてのガスエンジンの過回転防止装置について、図4?図9を用いて説明する。
【0039】この第2実施形態においても、上述の第1実施形態と同様にエンジン2はオットーサイクルエンジンであり、燃料に圧縮天然ガス(CNG)を用いるCNGエンジンとして構成されている。図4に示すように、圧縮天然ガスは、燃料タンク4に高圧状態で蓄えられるようになっており、燃料タンク内の高圧ガスは、燃料供給路10及びエンジン2の吸気通路22を通って、エンジン2の燃焼室内に供給されるようになっている。そして、燃焼室内に供給された燃料は点火プラグ21により点火され、その後排気通路23に排出されるようになっている。
【0040】燃料供給路10には、上流側から高圧用ガス遮断弁8,燃料圧力レギュレータ16及び燃料供給量制御装置(ガスバルブ)18が介装されている。このうち燃料圧力レギュレータ16には、燃料タンク内の高圧ガスの残圧を検出するための残圧センサ16Aが内蔵されており、ガスバルブ18には、ガス温度センサ18Aが内蔵されている。
【0041】そして、燃料タンク4内の高圧ガスは、この燃料圧力レギュレータ16により所定圧力に調整された後、ガスバルブ18を介して所定のタイミングで所定量だけガス噴射ノズル20から吸気通路22内に噴射されるようになっている。また、ガス噴射ノズル20の上流側には、エアクリーナ27及びエアフローセンサ24が設けられている。エアフローセンサ24は、吸入された空気量を検出するものであり、ここでは吸気通路22内に生じるカルマン渦の数を検出することで吸気流量を測定するカルマン渦式エアフローセンサが用いられている。
【0042】ところで、吸気通路22は、ガス噴射ノズル20の下流側においてメインスロットル26と、エアコントロールスロットル29との2方向に分岐しており、メインスロットル26には、アイドル回転状態変更調整手段としてのアイドルスピードコントロールバルブ(ISCV)28等が設けられている。アイドルスピードコントロールバルブ(ISCV)28は、ドライバがアクセルペダルから足を離してスロットルバルブ26Aを全閉にした場合に、エンジンストールを防止して安定したアイドル運転を行なえるようにするために設けられたものであって、このISCV28の開閉状態を制御することで、スロットルバルブ26Aをバイパスする吸気量を調整するようになっている。
【0043】なお、このISCV28は、ここでは所定の角度だけ段階的に回転するようなステップモータにより構成されており、ISCV28の開閉状態は、後述するコントローラ(制御手段)50からの制御信号に基づいて制御されるようになっている。また、メインスロットル26には、図5に示すようなスロットルポジションセンサ(TPS)61が設けられており、このTPS61によりスロットル弁26Aの開度が検出されるようになっている。
【0044】一方、エアコントロールスロットル29には、空燃比制御を行なうための吸入空気量制御バルブ(エアコントロールバルブ又はACV)30や、このACV30をバイパスするためのバイパスバルブ30Cが設けられている。このACV30には、バタフライ型のスロットル弁30Bが取り付けられており、ACV30の作動を制御することによりエアコントロールスロットル29内を流れる吸気の流量が調整されるようになっている。また、このACV30では、メインスロットル26のISCV28により確保される吸気量よりも大量の吸気を取り入れることができるようになっている。
【0045】また、エンジン2の排気通路23には、触媒25中の排気温度を検出する排気温度センサ15等が設けられている。また、排気通路23には、排気ブレーキ弁17も設けられており、ドライバがアクセルオフ等の減速操作を行なうと、この排気ブレーキ弁17により排気通路23が絞られるようになっている。
【0046】さらに、このエンジン2には、図示はしないが、シリンダヘッド部等から漏れた燃料ガスを吸気マニホールドに還流させるためのPCV(ポジティブクランクケースベンチレーション=Positive Crankcase Ventilation )バルブも設けられている。さて、ここで第2実施形態における本装置の要部について説明すると、このエンジン2にはエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ(エンジン回転数検出手段)3が設けられており、このエンジン回転数センサ3は、制御手段としてのコントローラ50に接続されている。
【0047】そして、コントローラ50では、このエンジン回転数センサ3からの情報に基づいて、エンジン2の過回転(オーバラン)を防止するようになっている。具体的には、この第2実施形態では、スロットル弁26Aを直接制御することによりエンジン2の出力制御を行ない、オーバランを防止するようになっているのである。
【0048】ここで、メインスロットル26に着目すると、図5に示すように、スロットル弁26Aは、アクセルレバー62を介してアクセルペダル63に接続されており、アクセルペダル63の踏み込み量に応じてスロットル弁26Aの開度が変化するようになっている。また、このスロットル弁26Aには、図5に示すように、スロットルレバー65を介してアクチュエータ64が連結されている。このアクチュエータ64は、エンジン2の負圧が作用する所定箇所にソレノイドバルブ(図示省略)を介して接続されており、このソレノイドバルブをデューティ制御することにより、制御室64bに所望の大きさの負圧を作用させ、ロッド64aを軸方向に駆動するようになっている。
【0049】例えば、この制御室64bに負圧が作用すると、リターンスプリング64cの付勢力に抗して、ロッド64aが図中上方に駆動されるようになっている。また、上記ソレノイドバルブをオフにすると、制御室64bに負圧が作用しなくなり、リターンスプリング64cの付勢力により、ロッド64aが図中下方に駆動されるようになっているのである。
【0050】また、ロッド64aの先端部(図中においては下端部)は、上述のスロットルレバー65の一端に接続されており、このスロットルレバー65の他端はスロットル弁26Aに接続されている。したがって、スロットル弁26Aは、アクセルペダル63及びアクチュエータ64の両方により駆動されることになるが、アクセルペダル63とアクチュエータ64とはそれぞれ独立して作動するようになっており、アクチュエータ64によりスロットル弁26Aが駆動されても、アクセルペダル63はスロットル弁26Aに連動しないようになっている。また、これと同様に、アクセルペダル63によりスロットル弁26Aが駆動されても、アクチュエータ64はスロットル弁26Aに連動しないようになっている。
【0051】一方、本装置の制御系について着目すると、図6に示すように、コントローラ50には、TPS61により検出されたスロットル開度TP0 と、エアフローセンサ24により検出された吸入空気量と、エンジン回転数センサ3により検出されたエンジン回転数Neとが入力されるようになっており、コントローラ50では、これらの情報に基づいてアクチュエータ64及びガス噴射ノズル20への制御信号を設定するようになっている。
【0052】すなわち、エンジン回転数センサ3により、エンジン2の回転数Neが所定回転数(例えば、エンジン2の最大出力発生回転数)N_(1 )に達したことが検出されると、コントローラ50により、アクチュエータ64が駆動され吸入空気量が減少するようになっている。さらに、エンジン回転数Neが所定回転数N_(1 )よりも高い所定回転数(例えば、許容回転数)N_(2) に達したことが検出されると、コントローラ50では、燃料噴射を強制的にカットして、オーバランを防止するようになっている。
【0053】ここで、電子式燃料噴射装置をそなえたエンジンでは、基本燃料噴射量は、コントローラ50により吸入空気量に比例して設定されるので、スロットル弁26Aを強制的に絞って吸入空気量を減少させることにより、燃料噴射量を減少させることができ、出力を緩やかに減少させることができるのである。このため、コントローラ50内では、以下のようにしてアクチュエータ64によるスロットル開度制御を行なうようになっている。まず、エンジン2の回転数Neが所定回転数N_(1 )以下であれば、スロットル弁26Aの開度制御は行なわれず、アクセルペダル63の踏み込み量に応じた開度となる。
【0054】また、エンジン回転数Neが所定回転数N_(1 )を越えたことが検出されると、下式により、スロットル開度目標値TP_(obj )が設定される。TP_(obj )=TP_(0) ×K_(Ne)上式において、TP_(0 )は実スロットル開度であり、K_(Ne)はエンジン回転数に応じて設定されるスロットル開度補正係数(補正ゲイン)である。図8はコントローラ50内に記憶された補正ゲインK_(Ne)のマップの一例であるが、このマップに示すように、補正ゲインK_(Ne)は、エンジン回転数Neに応じて設定されている。なお、目標スロットル開度TP_(obj )は、TPS61から実スロットル開度TP0に基づいてフィードバック制御される。
【0055】また、エンジン回転数Neが所定回転数N_(2 )を越えたことが検出されると、コントローラ50では燃料噴射停止信号が設定され、ガス噴射ノズル20からの燃料噴射が停止されるようになっている。ところで、図7は本装置におけるスロットル開度特性及びエンジン2の出力特性を示すものである。ここで、図7を用いて、スロットル開度及びエンジン出力の特性について簡単に説明する。まず、エンジン回転数Neが所定回転数N_(1 )を越えると、上述のスロットル開度制御によりスロットル開度が徐々に小さく設定され、エンジン2の出力も所定回転数N_(1 )を境に低下する。さらにエンジン回転数がN_(1 )よりも上昇してN_(2 )に達すると燃料噴射制御が実行され、出力が急激に低下するのである。
【0056】そして、このようにスロットル開度制御を行なうことで、急激な出力トルク変動を回避することができ、ドライバビリティを損なうことなく、確実にエンジン2のオーバランを防止することができるのである。本発明の第2実施形態としてのガスエンジンの過回転防止装置は、上述のように構成されているので、例えば図9に示すようなフローチャートにしたがって制御が実行される。
【0057】まず、ステップS1では、エンジン回転数センサ3からの検出情報に基づいて、エンジン回転数Neが所定回転数N_(1 )以下か否かを判定する。そして、エンジン回転数Neが所定回転数N_(1 )以下であればリターンし、所定回転数N_(1 )より大きければステップS2に進む。ステップS2では、コントローラ50内に設けられたマップ(図8参照)に基づいて、エンジン回転数Neに応じた補正ゲインK_(Ne)を設定するとともに、現在の実スロットル開度TP0 をTPS61から取り込んで、下式により目標スロットル開度TP_(obj )を設定する。
【0058】TP_(obj )=TP_(0) ×K_(Ne)
そして、このような目標スロットル開度TP_(obj )となるようにアクチュエータ64が駆動される。次に、ステップS3では、エンジン回転数Neが所定回転数N_(1 )よりも高い所定回転数N_(2 )以下であるか否かを判定し、エンジン回転数Neが所定回転数N_(2)以下であればリターンする。
【0059】一方、エンジン回転数Neが所定回転数N_(2) より大きければ、ステップS4に進み、燃料カットが実行された後リターンするのである。なお、エンジン回転数がN_(2) 以下の場合には、基本燃料噴射量はスロットル開度に応じて設定されるので、空燃比A/Fは略一定となる。このように第2実施形態によれば、エンジン回転数に応じて吸入空気量が制御されるので、エンジン回転数が所定回転数N_(1) を越えると滑らかにエンジン出力が抑制され、エンジン2のオーバランを確実に抑制することができる。
【0060】また、このようにスロットル開度制御を行なうことで、急激なトルク変動を回避することができ、ドライバビリティを損なうこともないという利点がある。また、エンジン回転数が所定回転数N_(1 )よりも高い所定回転数N_(2 )に達すると、燃料の噴射が停止されるので、確実にエンジン2を保護することができるという利点がある。
【0061】また、1つのスロットル弁26Aをアクセルペダル63とアクチュエータ64との両方に連結し、それぞれ独立してスロットル弁26Aを制御するように構成されているため、従来技術のようなサブスロットル弁を設ける必要がないという利点がある。すなわち、従来の技術では、アクセルペダルに連結されたメインスロットル弁と直列にサブスロットル弁を設け、このサブスロットル弁にアクチュエータを連結して、アクチュエータの作動を制御することでサブスロットル弁の開度を制御するような構成となっているが、このような構成では、スロットル弁を2つ設ける必要があり、スロットル全体の大型化やコスト増を招いてしまう問題があった。
【0062】これに対して、本発明のガスエンジンの過回転防止装置では、スロットル弁26Aが、従来のメインスロットル弁としての機能とサブスロットル弁としての機能とを兼ね備えているので、メインスロットル26の大型化やコスト増を招くこともない。また、上述のような構成によれば、サブスロットル弁を設けるような従来の技術に対して、スロットル部分の長さを抑制することができるのでメインスロットル部分の容積を小さくできる。この場合、燃料を噴射ノズル20から吸気通路22へ燃料(ガス)を噴射するようなガスエンジンでは、特にアクセル操作に対する応答性が向上し、空燃比制御も精度良く行なえるという利点がある。また、空燃比制御の精度向上にともない排気ガスの浄化性能も向上する利点がある。
【0063】なお、図8のマップに示すスロットル開度補正係数KNeの値は、その一例を示すものであり、必ずしもこのような値に限定されるものではない。」(段落【0038】ないし【0063】)

(1)-2 刊行物1に記載された発明
上記(1)-1及び図面の記載を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されているといえる。

「コントローラ50によって、エンジン回転数Neに基づいてスロットル開度目標値TP_(obj)を設定し、エンジン2の吸気通路22に配置したスロットル26Aのアクチュエータ64を作動させ、スロットル開度制御により、エンジン回転数Neが所定回転数N_(1)を越えないように制御するエンジン2の過回転を防止する方法において、
エンジン回転時にエンジン回転数Neと所定回転数N_(1)とを比較して、エンジン回転数Neが所定回転数N_(1)を越えたことが検出されると、
現実の実スロットル開度TP_(o)をスロットルポジションセンサ61から取り込んで、
スロットル開度目標値TP_(obj) =実スロットル開度TP_(o) ×補正ゲインK_(Ne) を用いて、
エンジン回転数Neが所定回転数N_(1)を越えないようにスロットル開度目標値TP_(obj) を算出し、
スロットル開度制御を行うエンジン2の過回転を防止する方法。」

(2)-1 刊行物2の記載
本件出願前に頒布され、当審拒絶理由に引用された刊行物である特開昭59-206625号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の記載がある。

ア 「この発明はエンジンの電子制御燃料供給シスラム、更に詳細に言えば、種々の運転条件下において、エンジンの回転速度又は出力に対してガバナ作用をすることができる電子制御燃料供給システムに関する。
過度の損耗及びエンジン損傷の防止のためエンジンに従来使用されている制御装置は2つの一般的な形式のものがある。第一の形式のものは速度超過が検知されたときに火花を止めて点火栓が混合気を点火しないように操作し、他方第二の形式のものはエンジンに流入する燃料流を減少させ又は停止させるものである。これらの両方のエンジン制御の方法は共に2つの同様の問題点があった。即らこれらのエンジンは共に制御期間中には所望空燃比を維持することができなかった。前述の第一の形式の制御については、点火を遮断するために可燃混合気が燃焼しないでエンジンから放出される。このことは有害な潜在的に危険な混合気がエンジンの排気システムから放出される結果となる。炭化水素の放出量はしばしば極めて多量であって、混合気に偶発的に点火してバックファイアや火災を起す危険が潜在的に潜んでいる。第二の形式の制御に関しては、速度超過を検知して燃料流の遮断と減少が起ると、同様に重大な問題を引き起す。燃料の減少には比例して空気量減少が伴わないので空燃比が制御されていない状態となって、有害あるいは危険な放出物を発生させる。燃料を完全に遮断して放出物を減少させても、この方法では2つの別の問題が発生する。第一に燃料が完全に遮断されたとき、エンジンは出力を完全に失う。エンジン速度が落ちたとき、制御は再び燃料をオンにし、燃料のオン・オフが繰返されてエンジンは定常的に最小出力から最大出力へと循環する。その結果運転性は悪くなりエンジンと車両が潜在的な損傷を受けることとなる。燃料を遮断する方法の第二の問題は最小及び最大出力の間の過渡期間に空燃比が適正でなくなって非常に有害な放出物を発生するようになる。
運転者の指令が直接にスロットルにリンクされないでコンピュータ制御ユニットに与えられる電子エンジン制御システムにおいては、前述の制御の問題点はなおさら複雑となる。特に空気流量が修正された燃料指令信号を基準として計算し供給した燃料に合うように制御できる燃料噴射エンジン用のコンピュータ制御システムにおいては、この発明はこれらの問題を効果的に解決する。
エンジンを制御する問題の別の重要な観点は異なった色々な運転条件及び環境条件に対して最大許容速度限界をどう決めるかということである。1つの最大エンジン速度を選んでそれに固定してしまうこともできるかもしれないが、変化する異常な条件、例えば低温に対してそれを適用することは理想的であるとは言えないであろう。従って制御システムとしては、自動的に最大安全運転速度を選択して、それをエンジン及び環境条件が変化するまで保持することが好ましい。制御された速度が、そのとき現在決定されている最大許容エンジン回転速度を絶対越えないようにするシステムを与えることによっても、この発明はこの問題を解決する。
従ってこの発明の一般的な目的は、意図的であると否とに拘らず酷使によるエンジンの損傷の可能性を減少させるための燃料噴射エンジン用の改善された制御システムを提供することである。」(第2ページ左上欄第17行ないし右下欄第20行)

イ 「この発明の他の目的は最大許容速度以下のエンジン速度を与えるために発生される修正された燃料指令信号の結果として供給される燃料に合うように空気流を制御できるコンピュータ制御エンジン用の制御システムを提供することである。
この発明の他の目的は、エンジン速度が自動的に変化する燃料流量と空気流量によって制御されて空燃比を一定に維持し、制御期間中に有害放出物がなく円滑なエンジン出力が維持される燃料噴射エンジン用の改善された制御システムを提供することである。
この発明の更に他の目的は、現存のエンジン条件に対する許容最大エンジン速度が先ず最初に自動的に確かめられ、同様にそのような許容最大速度を維持するのに必要な燃料流量が確かめられ、後者即ら最大許容速度を維持するために必要な燃料流量は運転者の指令する燃料流量の方がこれよりも高いときにのみ使用されるようになっているエンジン用制御システムを提供することを目的とする。
この発明の更に他の目的は燃料流量に比例する空気流量を自動的に制御する一方、所望燃料流量に相当する運転者の指令信号を利用し、かつ自動的に許容最大エンジン速度を決定して受けた運転者指令信号の大きさに関係なく運転者指令信号が許容最大エンジン速度を越えることを防ぐエンジン制御装置を持った自動エンジン制御装置を提供することである。」(第3ページ左上欄第1行ないし右上欄第8行)

ウ 「この発明の原理は燃料噴射式エンジンの制御上の問題を解決することに適用でき、燃料指令信号が運転者のアクゼルペダル操作によって発生してコンピュータに供給される。エンジンに導かれる吸気通路内部にはアクチュエータに接続されている回動可能のスロットルバルブがあり、このアクチュエータによって動かされてエンジンに供給される空気量を決定する。吸気通路内部には1つ又はそれ以上の燃料噴射装置が取付けられていてコンピュータ出力によって制御される。スロットルバルブの上流側及び下流側に位置する圧力センサはコンピュータに入力信号を供給してスロットルアクチュエータをそして空気流量を制御する。スロットルアクチュエータのコンピュータ制御は所望の最適空燃比を与えるために必要な正確な空気流量に基礎を置いている。
この発明によれば、上述のようなコンピュータ制御システムを備えた燃料噴射式エンジンの制御は許容最大エンジン速度は何如なる値であるべきかを先ず自動的に確定することによって達成される。この上限速度値は多くの変数の関数であり、その変数はエンジン温度、吸気マニホールド負圧、エンジンオイル温度あるいはトランスミッションの機械的状態を含むがこれに限定されるものではない。この制御システムでは、この最大速度限度は1つ又はそれ以上の上記変数を測定し、データをエンジン制御コンピュータに供給することによって決定され、かつ常に更新される。コンピュータ内部には関連する許容最大エンジン速度に対する予め定められたエンジンパラメータの1次又は2次元の配列又はテーブルが貯えられている。従ってエンジンパラメータ入力を受けるとエンジンを支配している条件に対する正確な許容最大エンジン速度をあらわす適当な出力をコンピュータが供給する。コンピュータ内部には又決定された許容最大エンジン速度を受けて、それを実際の現在のエンジン速度と比較して誤差信号を出す制御部分がある。この誤差信号はガバナサーボに供給されて許容最大エンジン速度を成就するのにどの位の燃料流量(SQF)が必要であるかを決定する。このガバナサーボ出力が運転者の燃料指令と比較される。もし後者即ち運転者の燃料指令がガバナサーボ出力よりも小さければ制御は必要でなく、運転者の燃料指令信号が適当な空気流量を決定するのに使われる。しかしながら運転者指令がガバナサーボ出力より大きいならば後者即ちガバナサーボ出力が空気流量を決定し、それによってエンジン速度を制御するのに使われる。運転者が燃料指令をガバナサーボ出力よりも小さい点まで減少させるとき、運転者指令信号は再び通常の運転方法でエンジン速度を制御するのに使われる。
この発明の他の目的、利益及び特徴は以下添付図面を以て示された1つの実施例の詳細な説明から明らかになる。」(第3ページ右上欄第9行ないし第4ページ左上欄第2行)

エ 「図面を参照して、第1図はエンジン12用の制御システムを略図で示したもので、この発明に従うエンジン速度の制御機能を折込んである。示されている実施例では燃料先行型電子制御式エンジン制御システムであるが、ここで開示されている発明はスロットルバルブが直接アクセルペダルに機械的に連結されず、スロットルアクチュエータが電子的あるいはコンピュータによって制御されるエンジン制御システムであれば他の形式にも適用することができる。
図に示されている通り、このエンジンは吸気マニホールドを備え、その内部には回動自在に可動スロットルバルブ16が取付けられている。スロットルバルブの角度位置はステッピングモータのようなスロットルアクチュエータ18によって制御される。スロットルバルブの位置を決めるためのアクチュエータ18への指令あるいは制御信号はエンジン制御ユニット20、具体的に言えば予めプログラムされているデジタルコンピュータから発生する。示されている通りエンジン制御ユニット20は、許容最大速度決定部分20a、速度制御部分20b及び燃料・空気制御部分20cを備えている。エンジン用の燃料は数字22で示されている1つ又はそれ以上のインジェクタによって供給される。そのインジェクタは、空気と燃料がエンジンの各シリンダに入る前に混合するような方法で吸気マニホールドに取付けられている。インジェクタへの燃料は燃料タンク26からポンプ24を経て供給される。インジェクタ22はエンジン制御ユニット20からリード線28を経て指令信号を受け、指令信号はインジェクタを調節し適正な量の燃料をマニホールド内の空気流中に分配させる。各シリンダ内燃焼のために供給される正確な量の燃料はエンジン制御ユニット20の燃料・空気制御部分20cから発生し、リード線28を経て送られる方形波パルス信号によって決定される。理想的な空燃比を与えるために供給されなければならない適正な量の空気はコンピュータによって決定され、コンピュータは適当な制御信号をスロットルアクチュエータ18に供給し、それによってスロットルバルブを動かして適正な空気流量を与える。吸気マニホールド内の空気流量は上流及び下流の圧力センサ30及び32によって常に測定され、このセンサはエンジン制御ユニット20の燃料・空気制御部分20cにデータを送る。尚、空気量の測定方式についてはこれ以外の公知のエアフロセンサを使用できることは言うまでもない。エンジン排気管36内の適当な酸素センサ34は適正な空気流量を計算するために使用されるコンピュータに他の入力信号を供給する。特定の燃料流量に対する適正な空気流量をコンピュータが決定する正確な方法は本件出願人の出願にかかる特開昭57-91343号などに詳細に示されている。
この示されている燃料先行形式のシステムでは、エンジンの速度及び従って運転者が所望する燃料流量は、アクセルペダル38の操作によって制御される。ペダルの正確な位置は適当なペダル位置信号をエンジン制御ユニットに送るエンコーダ40又は他の形式の位置インディケータによって決定される。運転者がペダルを動かすことによって安全速度を超過することがないように、制御ユニット20は速度制御部分20bを備えていて、この発明に従って自動的に燃料指令信号を制限する。
速度制御部分に関して使用される許容最大速度は固定値として設計要素に基づいて予め選定される。しかしながら異なったエンジン運転条件に対しては許容最大速度限界は変化し、この発明はこれを考慮に入れてエンジン制御ユニット20の20aの部分によってそれを決定できるようにしている。例えば許容最大速度はエンジン温度で変化する。低温エンジンは高温エンジンよりも低い速度でオーバースピードダメージを起す可能性がある。従って許容最大速度はエンジン温度の上昇と共に増加すべきである。同様にもしエンジンの温度が高すぎるとエンジンの潤滑は破壊することがあるので、エンジン温度が異常に高温のときは許容最大速度は低くすべきである。
他のエンジン運転パラメータも許容最大エンジン速度に影響を与える。例えばエンジン高負荷条件で容易に損傷されうる。そしてこの場合には許容最大エンジン速度は水温とエンジン負荷の関数となる。大体の負荷を測定する1つの変数はマニホールド負圧である。
エンジンを適正に管理する場合の他の要素は、ある高速度にどの程度の時間保たれるかに基づいて許容最大エンジン速度を変化させることである。なぜならは、多くのエンジンはそのレッドゾーン即ち設計された速度限界を越えて短期間運転するように設計されているからである。しかしながらレッドゾーン付近での持続運転によってエンジン内部の温度が急激に上昇して油膜が薄くなる。従って許容最大エンジン速度はエンジンがある高速回転をしている時間の関数とすることが望ましい。例えばエンジンは瞬間的に6000r.p.m.に到達することができるようになっていても、運転燃料指令が6000r.p.m.での運転を持続したならば、ガバナが働いてエンジンへの燃料を減少させて、予めセットした時間(例えば3秒)後にエンジン速度が6000r.p.m.から4500r.p.m.に減速される。これはあとで示すようにエンジンが4500r.p.m.を越えたときスタートするサンプルタイムを使って行うことができる。タイマが働いている間は許容最大エンジン速度は6000r.p.m.である。タイマの設定時間が過ぎると許容最大エンジン速度は4500r.p.m.に下がる。
種々異なったエンジン状況下におけるガバナ機能を有する制御に使用するため、許容最大エンジン速度色々なエンジン状態を検知するセンサから入力が供給されるエンジン制御システムの内部で確定される。コンピュータメモリの内部には色々のエンジンパラメータを特定の許容最大速度に関係づける1つ又はそれ以上の配列が準備されている。例えば、もし温度の基準だけが使用されることになっているならば、許容最大速度と温度との関係を示す1次元の表が準備される。もし2つ又はそれ以上のエンジン変数が使用されることになっているならば、例えば温度とマニホールド負圧など、コンピュータメモリの内部には2次元又はそれ以上の配列が準備され、2つ又はそれ以上の変数からの入力は予め定めた関連した最大速度値を発生する。
従って第1図に示すように、エンジン排気管に設けてある前記の酸素センサ34及び排気温度センサ42からの入力がエンジン制御ユニットに供給される。後者はエンジン負荷の他のインディケータとして使用することができる。エンジンの実際の温度を供給するセンサ44及びエンジン油圧を供給する他のセンサは追加の入力をエンジン制御ユニットに供給する。上述のセンサはアナログ信号を供給するから、従ってコンピュータ内部で使用される前にアナログ・デジタル変換器を通って処理される。
エンジンの出力軸48はトランスミッション50に連結される。速度センサ52はエンジンの出力軸に接続されている。そしてトランスミッションの内部には適当な位置センサ54があってトランスミッションの操作レバー56がギヤ位置の“IN”にあるか“ニュートラル”にあるかを示す信号を供給する。操作レバー56がギヤ位置“IN”に動かされると、センサ52からの実際のエンジン速度は貯えられている予め定めた速度値と比較され、その値以上であるとトランスミッションは入らない。もし実際の速度がトランスミッションの速度限界より小さいと、トランスミッションの内部にある適当なアクチュエータ又はレリーズバルブに接続されているリード線58を経てトランスミッションは正常に作用することができる。操作レバーが動かされるときもし実際の速度の方が大きければ、エンジン速度が貯えられている最大限界速度以上に落ちるまでトランスミッションは正常に使用できるようにならない。
今、エンジンが運転されていて、上記のセンサが定常的にエンジン状態の情報をエンジン制御ユニット20に供給している。そして許容最大速度決定部分20a内部でこの情報がコンピュータメモリ内の許容最大速度に関する色々な配列又はテーブルに加えられる。このエンジン状態の情報からコンピュータは内部で許容最大速度値を発生し、これがエンジン制御ユニットの速度制御部分20bに供給される。」(第4ページ左上欄第3行ないし第6ページ左上欄第1行)

オ 「第2図には、エンジン制御ユニット20の速度制御部分20bがブロック図で示されている。ここでは加算ゲート60が、前述したように現在の運転条件に基づく許容最大エンジン速度を指示するエンジン状態部分20aから入力を受ける。このゲート又は、リード線62を経て実際のエンジン速度に相当する信号を受ける。この後者の信号はデジタル信号であって、適当なセンサ48(例えばエンジン出力軸上の)からリード線62の途中にある制御利得回路64を経て供給される。上述の2つの入力の結果として加算ゲート60によって発生した誤差信号はガバナサーボ68に供給され、これは例えば通常の比例積分導関数PIDサーボ回路であって、許容最大エンジン速度を達成するために必要な燃料量と同等なSQF出力を発生するようにプログラムされている。この出力信号SQFはセレクタゲート70に供給されるが、セレクタゲートは又アクセルペダルから運転者の燃料指令信号(VQF)をも受ける。セレクタ内部では、第3図のフローチャートで示されているように運転者燃料指令信号がガバナサーボからのSQF出力と比較される(ステップ101)。もし運転者の燃料指令がガバナサーボからくる出力よりも小さいならば、そのときは制御は必要でなく運転者の燃料指令が使用される(ステップ103)。しかしながら、もし運転者の燃料指令が制御出力より大きいならば、そのときは、運転者の燃料指令を使うとエンジンが速度超過となるので、ガバナサーボからくる出力が使用される(ステップ102)。ある時点では運転者燃料指令を制御出力より小さいところまで下げるであろう。このときは運転者燃料指令が再び使用されて運転者がエンジン速度を再び制御する。
以上の記述から明らかな如く、このエンジンガバナシステムは一般に2段階に使われる。先ず第一は色々のエンジンパラメータ入力を利用してエンジンの許容最大速度を決めて貯え、そして常時更新する。第二にはこの最大速度に達するために必要な燃料流量を決めて、これを燃料指令信号QFと瞬間的に比較し、受入れられるべき燃料流量信号のみが選択されてコンピュータの燃料空気論理に供給され、ここで適合する適正な空気流量が決定される。従って最大限度以下にガバナ制御された速度では適正空燃比が正確に達成され、最大エンジン出力及び効率が可能となり、未燃焼燃料又は有害な放出物は発生しない。」(第6ページ左上欄第2行ないし左下欄第6行)

(2)-2 上記(2)-1から分かること
上記(2)-1 アの「エンジンを制御する問題の別の重要な観点は異なった色々な運転条件及び環境条件に対して最大許容速度限界をどう決めるかということである。1つの最大エンジン速度を選んでそれに固定してしまうこともできるかもしれないが、変化する異常な条件、例えば低温に対してそれを適用することは理想的であるとは言えないであろう。」の記載によれば、最大エンジン速度は、理想的ではないものの1つに固定することが可能であり、理想的には運転条件に応じて変更するものであることが分かる。

(2)-3 刊行物2に記載された発明
上記(2)-1及び(2)-2並びに図面の記載を総合すると、刊行物2には次の発明(以下、「刊行物2に記載された発明」という。)が記載されているといえる。

「エンジン制御ユニット20によって、速度センサ52によって検出された実際のエンジン速度に基づいて各シリンダ内燃焼のために供給される燃料流量を決定し、吸気マニホールドに取付けられたインジェクタ22に燃料指令を出力することにより、燃料流量を調整してエンジン速度が種々の運転条件下において、1つに固定された又は運転条件に応じて変更される許容最大エンジン速度を越えることを防ぐ、エンジンの回転速度に対してガバナ作用をする方法において、
エンジンが運転されているときに、アクセルペダル38からの燃料指令信号VQFによって制御されたエンジン速度と許容最大エンジン速度から、通常の比例積分導関数PIDサーボ回路であるガバナサーボ68において許容最大エンジン速度を達成するために必要な燃料量とするための燃料指令出力信号SQFを出力し、燃料指令出力信号SQFと燃料指令信号VQFの値を比較して、小さい方を燃料指令信号QFとし、燃料指令信号QFを使用してエンジンを制御する、エンジンの回転速度に対してガバナ作用をする方法。」

3 当審の判断
(1)対比・判断1
本願発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明における「コントローラ50」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願発明1における「エンジン回転速度制御装置」に相当し、以下同様に、「エンジン回転数Ne」は「検知しているエンジン回転速度」、「エンジン回転速度」及び「実際のエンジン回転速度」に、「スロットル開度目標値TP_(obj)」は「目標スロットル開度」に、「設定し」は「決定し」に、「エンジン2」は「エンジン」に、「吸気通路22」は「吸気通路」に、「スロットル26A」は「スロットルバルブ」に、「アクチュエータ64」は「開閉用アクチュエータ」に、「アクチュエータ64に作動させ」は「開閉用アクチュエータに駆動信号を出力することにより]に、「スロットル開度制御により」は「スロットル開度を調整しながら」に、「所定回転数N_(1)」は「予め定めた制限速度」及び「予め定めた目標エンジン回転速度」に、「越えないように制御する」は「超えないようにリミット制御を実行する」に、「エンジン2の過回転を防止する方法」は「エンジン回転速度制御方法」に、「エンジン回転数Neが所定回転数N_(1)を越えたことが検出されると」は「実際のエンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも大きい場合に]に、「エンジン回転数Neが所定回転数N_(1)を越えたことが検出されると、現実の実スロットル開度TP_(o)をスロットルポジションセンサ61から取り込んで」は「実際のエンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも大きい場合に、そのときのアクセルペダル信号の値を記憶し」に、「スロットル開度目標値TP_(obj) =実スロットル開度TP_(o) ×補正ゲインK_(Ne) を用いて」は「この記憶したアクセルペダル信号の値をベースとして所定の数式を用いて」に、「エンジン回転数Neが所定回転数N_(1)を越えないようにスロットル開度目標値TP_(obj) を算出し」は「エンジン回転速度が制限速度内に収まるように目標スロットル開度を求め」に、それぞれ相当する。
また、刊行物1に記載された発明における「エンジン回転時」は、平成26年10月2日に提出された手続補正書(方式)において、「尚、前記補正発明では、「・・・エンジン始動時の実際のエンジン回転速度と予め定めた目標エンジン回転速度とを比較して前記実際のエンジン回転速度が前記目標エンジン回転速度よりも大きい場合にそのときのアクセルペダル信号の値を記憶し、・・・」と記載したが、前記「エンジン始動時の」とは「エンジンが始動(稼働)しているとき」という意味(願書に添付した明細書の段落〔0021〕、他、本願発明がエンジン運転中の回転を制御する発明である旨の記載参照)であり、不明瞭な記載になっていますが、補正発明は「始動時」に限って適用されるものではありません。」と説明されていることから、本願発明1の「エンジン始動時」に相当する。

そうすると、本願発明1と刊行物1に記載された発明とは、
「エンジン回転速度制御装置により、検知しているエンジン回転速度に基づいて目標スロットル開度を決定しエンジンの吸気通路に配置したスロットルバルブの開閉用アクチュエータに駆動信号を出力することにより、スロットル開度を調整しながらエンジン回転速度が予め定めた制限速度を超えないようにリミット制御を実行するエンジン回転速度制御方法において、エンジン始動時の実際のエンジン回転速度と予め定めた目標エンジン回転速度とを比較して実際のエンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも大きい場合にそのときのアクセルペダル信号の値を記憶し、この記憶したアクセルペダル信号の値をベースとして所定の数式を用いてエンジン回転速度が制限速度内に収まるように目標スロットル開度を求めるエンジン回転速度制御方法。」の点で一致し、次の点で相違する。

本願発明1においては、「全ての運転条件において」予め定めた制限速度を超えないようにリミット制御を行うものであって、エンジン始動時の実際のエンジン回転速度と予め定めた目標エンジン回転速度とを比較して実際のエンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも大きい場合のアクセルペダル信号の値を記憶し、この記憶したアクセルペダル信号の値をベースとして所定の数式を用いてエンジン回転速度が制限速度内に収まるように目標スロットル開度を求める際に、「マップを用いずに」所定の数式を用いるものであり、「この目標スロットル開度と所定の数式を用いて目標スロットル開度を求めた時点でのアクセルペダル信号から入力された値を基にして求めた目標スロットル開度の値と比較して、小さい方を実際の目標スロットル開度とし、この実際の目標スロットル開度が目標スロットル開度となるように電子制御スロットルを制御してエンジン回転速度が目標(リミット)エンジン回転速度になるようにエンジンを制御する」のに対し、刊行物1に記載された発明においては、そのようなものであるか不明である点(以下、「相違点1」という。)。

上記相違点1について検討する。
刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とは、いずれもエンジン制御の技術分野に属するものであり、しかも、エンジンの過回転を防止するという課題を解決するための発明であって、検出したエンジン回転数と上限のエンジン回転数とを比較し、検出したエンジン回転数が上限のエンジン回転数を越える場合には、上限のエンジン回転数を越えないように制御を行うことで課題を解決する点で、軌を一にするものである。

ここで、刊行物2に記載された発明は、「全ての運転条件において」1つに固定された又は運転条件に応じて変更される許容最大エンジン速度を越えることを防ぐものであり、必要な燃料量を求める際に「マップを用いずに」所定の数式である比例積分導関数を用いるものであり、アクセルペダル38からの燃料指令信号VQFによって制御されたエンジン速度と許容最大エンジン速度から、通常の比例積分導関数PIDサーボ回路であるガバナサーボ68において許容最大エンジン速度を達成するために必要な燃料量とするための燃料指令出力信号SQFを出力し、燃料指令出力信号SQFと燃料指令信号VQFの値を比較して、小さい方を燃料指令信号QFとし、燃料指令信号QFを使用してエンジンを制御するものである。

そうすると、上限のエンジン回転数を越えないようにするための制御に関し、刊行物1に記載された発明は、スロットル開度を操作するものであるのに対して、刊行物2に記載された発明は、燃料流量を操作するものである点で、具体的に操作する操作量が異なるものであるが、上述のとおり、技術分野、解決しようとする課題及びその課題を解決するための発明特定事項の基本的な部分において共通するものである。そして、刊行物2に記載された発明は、燃料流量を操作することによってエンジン回転数を制御するものであるところ、上記2(2)-1 イの記載から分かるように、積極的に操作する燃料流量に比例するように空気流量も付随して制御するものである。
一方、エンジン回転数を制御するために、スロットル開度を調整して空気流量を制御することは、本件出願前において周知の技術(例として、実願昭63-22597号(実開平1-125836号)のマイクロフィルム[明細書第2ページ第1行ないし第5ページ第13行及び第1図]及び実願昭55-182663号(実開昭57-107828号)のマイクロフィルム[明細書第1ページ第14行ないし第6ページ第7行及び第1図]を参照。以下、「周知技術」という。)であるから、刊行物1に記載された発明において、刊行物2に記載された発明の燃料流量に関する操作をスロットル開度の操作に置き換えて採用することは、当業者であれば容易に想到できたことである。

そして、刊行物1に記載された発明において、刊行物2に記載された発明を採用する際に、必要な値を記憶するようにすること及び適切なタイミングにおける検出値を使用することは、当業者が普通に行う事項にすぎないから、「実際のエンジン回転速度と予め定めた目標エンジン回転速度とを比較して実際のエンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも大きい場合にそのときのアクセルペダル信号の値を記憶」すること及び「この目標スロットル開度と所定の数式を用いて目標スロットル開度を求めた時点でのアクセルペダル信号から入力された値」を基にして目標スロットル開度を求めるように構成して、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。

なお、本願発明1は「エンジン回転速度が全ての運転条件において予め定めた制限速度を超えないようにリミット制御を実行する」ものであるから、「予め定めた制限速度」が「運転条件」によって変化するものも含むものであるが、仮に、平成27年8月10日に提出された意見書に記載された「エンジンの種々の条件は問わずに全ての運転域において例えば所定のアクセルペダルの踏み込みによって所定の目標エンジン回転が行えるようにするもの」と特定されたものであるとしても、刊行物2に記載された発明は、「エンジン速度が種々の運転条件下において、1つに固定された・・・(略)・・・許容最大エンジン速度を越えることを防ぐ」ものであるから、この点について、刊行物2に記載された発明と本願発明1とは差異がないものである。

そして、本願発明1は、全体としてみても、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された発明及び周知技術から予想される以上の格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願発明1は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)対比・判断2
本願発明1と刊行物2に記載された発明とを対比すると、刊行物2に記載された発明における「エンジン制御ユニット20」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願発明1における「エンジン回転速度制御装置」に相当し、以下同様に、「速度センサ52によって検出された実際のエンジン速度」は「検知しているエンジン回転速度」に、「エンジン速度」は「エンジン回転速度」に、「エンジン速度が種々の運転条件下において、1つに固定された又は運転条件に応じて変更される許容最大エンジン速度を越えることを防ぐ」は「エンジン回転速度が全ての運転条件において制限速度を超えないようにリミット制御を実行する」に、「エンジンの回転速度に対してガバナ作用をする方法」は「エンジン回転速度制御方法」に、それぞれ相当する。
また、刊行物2に記載された発明における「エンジンが運転されているときに」は、平成26年10月2日に提出された手続補正書(方式)において、「尚、前記補正発明では、「・・・エンジン始動時の実際のエンジン回転速度と予め定めた目標エンジン回転速度とを比較して前記実際のエンジン回転速度が前記目標エンジン回転速度よりも大きい場合にそのときのアクセルペダル信号の値を記憶し、・・・」と記載したが、前記「エンジン始動時の」とは「エンジンが始動(稼働)しているとき」という意味(願書に添付した明細書の段落〔0021〕、他、本願発明がエンジン運転中の回転を制御する発明である旨の記載参照)であり、不明瞭な記載になっていますが、補正発明は「始動時」に限って適用されるものではありません。」と説明されていることから、本願発明1の「エンジン始動時」に相当する。
さらに、刊行物2に記載された発明における「速度センサ52によって検出された実際のエンジン速度に基づいて各シリンダ内燃焼のために供給される燃料流量を決定し、吸気マニホールドに取付けられたインジェクタ22に燃料指令を出力することにより、燃料流量を調整して」及び「アクセルペダル38からの燃料指令信号VQFによって制御されたエンジン速度と許容最大エンジン速度から、通常の比例積分導関数PIDサーボ回路であるガバナサーボ68において許容最大エンジン速度を達成するために必要な燃料量とするための燃料指令出力信号SQFを出力し、燃料指令出力信号SQFと燃料指令信号VQFの値を比較して、小さい方を燃料指令信号QFとし、燃料指令信号QFを使用してエンジンを制御する」は、
「検知しているエンジン回転速度に基づいて制御偏差を決定し操作部に制御偏差を出力することにより、操作量を調整しながら」及び「実際のエンジン回転速度と予め定めた目標エンジン回転速度とを比較して実際のエンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも大きい場合にそのときのアクセルペダル信号の値をベースとしてマップを用いずに所定の数式を用いてエンジン回転速度が制限速度内に収まるように制御偏差1を求め、アクセルペダル信号から入力された値を基にして求めた制御偏差2と比較して、小さい方を実際の制御偏差とし、この実際の制御偏差が制御偏差となるように操作部を操作してエンジン回転速度が目標エンジン回転速度になるようにエンジンを制御する」という限りにおいて、
本願発明1における「検知しているエンジン回転速度に基づいて目標スロットル開度を決定しエンジンの吸気通路に配置したスロットルバルブの開閉用アクチュエータに駆動信号を出力することにより、スロットル開度を調整しながら」及び「実際のエンジン回転速度と予め定めた目標エンジン回転速度とを比較して実際のエンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも大きい場合にそのときのアクセルペダル信号の値を記憶し、この記憶したアクセルペダル信号の値をベースとしてマップを用いずに所定の数式を用いてエンジン回転速度が制限速度内に収まるように目標スロットル開度を求め、この目標スロットル開度と所定の数式を用いて目標スロットル開度を求めた時点でのアクセルペダル信号から入力された値を基にして求めた目標スロットル開度の値と比較して、小さい方を実際の目標スロットル開度とし、この実際の目標スロットル開度が目標スロットル開度となるように電子制御スロットルを制御してエンジン回転速度が目標(リミット)エンジン回転速度になるようにエンジンを制御する」に相当する。

そうすると、本願発明1と刊行物2に記載された発明とは、
「エンジン回転速度制御装置により、検知しているエンジン回転速度に基づいて制御偏差を決定し操作部に制御偏差を出力することにより、操作量を調整しながらエンジン回転速度が予め定めた制限速度を超えないようにリミット制御を実行するエンジン回転速度制御方法において、エンジン始動時の実際のエンジン回転速度と予め定めた目標エンジン回転速度とを比較して実際のエンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも大きい場合にそのときのアクセルペダル信号の値をベースとしてマップを用いずに所定の数式を用いてエンジン回転速度が制限速度内に収まるように制御偏差1を求め、アクセルペダル信号から入力された値を基にして求めた制御偏差2と比較して、小さい方を実際の制御偏差とし、この実際の制御偏差が制御偏差となるように操作部を操作してエンジン回転速度が目標エンジン回転速度になるようにエンジンを制御するエンジン回転速度制御方法。」の点で一致し、次の点で相違する。

「検知しているエンジン回転速度に基づいて制御偏差を決定し操作部に制御偏差を出力することにより、操作量を調整しながら」及び「実際のエンジン回転速度と予め定めた目標エンジン回転速度とを比較して実際のエンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも大きい場合にそのときのアクセルペダル信号の値をベースとしてマップを用いずに所定の数式を用いてエンジン回転速度が制限速度内に収まるように制御偏差1を求め、アクセルペダル信号から入力された値を基にして求めた制御偏差2と比較して、小さい方を実際の制御偏差とし、この実際の制御偏差が制御偏差となるように操作部を操作してエンジン回転速度が目標エンジン回転速度になるようにエンジンを制御する」に関し、
本願発明1においては「検知しているエンジン回転速度に基づいて目標スロットル開度を決定しエンジンの吸気通路に配置したスロットルバルブの開閉用アクチュエータに駆動信号を出力することにより、スロットル開度を調整しながら」及び「実際のエンジン回転速度と予め定めた目標エンジン回転速度とを比較して実際のエンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも大きい場合にそのときのアクセルペダル信号の値を記憶し、この記憶したアクセルペダル信号の値をベースとしてマップを用いずに所定の数式を用いてエンジン回転速度が制限速度内に収まるように目標スロットル開度を求め、この目標スロットル開度と所定の数式を用いて目標スロットル開度を求めた時点でのアクセルペダル信号から入力された値を基にして求めた目標スロットル開度の値と比較して、小さい方を実際の目標スロットル開度とし、この実際の目標スロットル開度が目標スロットル開度となるように電子制御スロットルを制御してエンジン回転速度が目標(リミット)エンジン回転速度になるようにエンジンを制御する」のに対し、
刊行物2に記載された発明においては「速度センサ52によって検出された実際のエンジン速度に基づいて各シリンダ内燃焼のために供給される燃料流量を決定し、吸気マニホールドに取付けられたインジェクタ22に燃料指令を出力することにより、燃料流量を調整して」及び「アクセルペダル38からの燃料指令信号VQFによって制御されたエンジン速度と許容最大エンジン速度から、通常の比例積分導関数PIDサーボ回路であるガバナサーボ68において許容最大エンジン速度を達成するために必要な燃料量とするための燃料指令出力信号SQFを出力し、燃料指令出力信号SQFと燃料指令信号VQFの値を比較して、小さい方を燃料指令信号QFとし、燃料指令信号QFを使用してエンジンを制御する」点(以下、「相違点2」という。)。

上記相違点2について検討すると、本願発明1及び刊行物2に記載された発明は、ともにエンジンを制御対象としてエンジン回転速度を制御することを目的とするものである一方、操作部並びに操作部の入力及び出力である制御偏差及び操作量が相違することから、相違点2は操作部が相違することに起因する相違点であるといえる。
そこで、上記相違点2を操作部に着目して言い換えると、操作部、制御偏差及び操作量が、本願発明1においては、それぞれスロットル、目標スロットル開度及びスロットル開度によって操作される量、すなわち、空気流量であるのに対し、刊行物2に記載された発明においては、インジェクタ22、燃料指令信号及び燃料流量であるといえる。
ここで、刊行物2に記載された発明は、上記2(2)-1 イの記載から分かるように、積極的に操作するのは燃料流量であるところ、その燃料流量に比例するように空気流量も付随して制御するものである。
一方、エンジン回転数を制御するために、スロットル開度を調整して空気流量を操作することは、本件出願前において周知の技術(例として、上記刊行物1[段落【0001】ないし【0009】及び【0038】ないし【0063】並びに図4ないし図9を参照。]、実願昭63-22597号(実開平1-125836号)のマイクロフィルム[明細書第2ページ第1行ないし第5ページ第13行及び第1図]及び実願昭55-182663号(実開昭57-107828号)のマイクロフィルム[明細書第1ページ第14行ないし第6ページ第7行及び第1図]を参照。以下、「刊行物1にみられる周知技術」という。)であるから、刊行物2に記載された発明において、上記刊行物1にみられる周知技術を適用し、積極的に操作する操作量を、インジェクタ22で調整される燃料流量に代えて、スロットル開度の調整による空気流量にすること、並びに、それに伴って、刊行物2に記載された発明における操作部であるインジェクタ22及び制御偏差である燃料指令信号に代えて、それぞれスロットル及び目標スロットル開度にすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。
すなわち、詳述すると、刊行物2に記載された発明において、上記刊行物1にみられる周知技術を適用し、「速度センサ52によって検出された実際のエンジン速度に基づいて各シリンダ内燃焼のために供給される燃料流量を決定し、吸気マニホールドに取付けられたインジェクタ22に燃料指令を出力することにより、燃料流量を調整して」に代えて「検知しているエンジン回転速度に基づいて目標スロットル開度を決定しエンジンの吸気通路に配置したスロットルバルブの開閉用アクチュエータに駆動信号を出力することにより、スロットル開度を調整しながら」とし、「アクセルペダル38からの燃料指令信号VQFによって制御されたエンジン速度と許容最大エンジン速度から、通常の比例積分導関数PIDサーボ回路であるガバナサーボ68において許容最大エンジン速度を達成するために必要な燃料量とするための燃料指令出力信号SQFを出力し、燃料指令出力信号SQFと燃料指令信号VQFの値を比較して、小さい方を燃料指令信号QFとし、燃料指令信号QFを使用してエンジンを制御する」に代えて「実際のエンジン回転速度と予め定めた目標エンジン回転速度とを比較して実際のエンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも大きい場合にそのときのアクセルペダル信号の値をベースとしてマップを用いずに所定の数式を用いてエンジン回転速度が制限速度内に収まるように目標スロットル開度を求め、アクセルペダル信号から入力された値を基にして求めた目標スロットル開度の値と比較して、小さい方を実際の目標スロットル開度とし、この実際の目標スロットル開度が目標スロットル開度となるように電子制御スロットルを制御してエンジン回転速度が目標(リミット)エンジン回転速度になるようにエンジンを制御する」にすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。

そして、刊行物2に記載された発明において、必要な値を記憶するようにすること及び適切なタイミングにおける検出値を使用することは、当業者が普通に行う事項にすぎないから、「実際のエンジン回転速度と予め定めた目標エンジン回転速度とを比較して実際のエンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも大きい場合にそのときのアクセルペダル信号の値を記憶」すること及び「この目標スロットル開度と所定の数式を用いて目標スロットル開度を求めた時点でのアクセルペダル信号から入力された値」を基にして目標スロットル開度を求めるように構成して、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。

そして、本願発明1は、全体としてみても、刊行物2に記載された発明及び刊行物1にみられる周知技術から予想される以上の格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願発明1は、刊行物2に記載された発明及び刊行物1にみられる周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 まとめ
上記3(1)又は3(2)のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 当審拒絶理由の理由3について
当審拒絶理由で通知した理由3は以下のとおりである。
「<理由3>
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



<理由3>
1 請求項2においては、「N_(d)は目標エンジン回転速度、Nはエンジン回転速度」と特定されているが、「N_(d)」及び「N」が請求項2で用いられていないため、特定する意味が不明であり、明確でない。

2 請求項3は、請求項3自身を引用しているため、発明の範囲が明確でない。」

これに対し、平成27年8月10日に意見書及び手続補正書が提出され、本願発明2及び本願発明3は、上記第2の【請求項2】及び【請求項3】に記載されたとおりのものであるところ、平成26年8月22日に提出された手続補正により補正された請求項2及び3から実質的に補正されておらず、意見書において上記理由3に対する実質的な意見も記載されていないので、依然として理由3として指摘した不備の点は解消していない。
そして、この拒絶理由は妥当なものと認められるので、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび
上記第3のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本件出願は拒絶すべきものである。
また、上記第4のとおり、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-18 
結審通知日 2015-09-24 
審決日 2015-10-07 
出願番号 特願2009-215264(P2009-215264)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (F02D)
P 1 8・ 121- WZ (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺川 ゆりか本庄 亮太郎小川 恭司  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 金澤 俊郎
佐々木 訓
発明の名称 エンジン回転速度制御方法及びそれを実施する制御装置  
代理人 橋本 京子  
代理人 橋本 克彦  
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