• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1307966
審判番号 不服2014-13896  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-17 
確定日 2015-11-26 
事件の表示 特願2010- 16025「赤外光反射板、合わせガラス用積層中間膜シート及びその製造方法、並びに合わせガラス」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月11日出願公開、特開2011-154215〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年1月27日の出願であって、平成25年12月11日付けの拒絶理由の通知に対し、平成26年2月12日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年4月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月17日に審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年7月17日提出の手続補正書によりなされた手続補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年7月17日提出の手続補正書によりなされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正は、本件補正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項6を独立形式で書き下したものである、
「基板、並びにコレステリック液晶相を固定してなる少なくとも4つの光反射層X1、X2、X3及びX4を有し、
光反射層X1及びX2は互いに隣接し、それぞれの反射中心波長がλ_(1)(nm)であり互いに等しく、且つ互いに逆方向の円偏光を反射し、その反射中心波長λ_(1)(nm)が、1010?1070nmの範囲にあり、
光反射層X3及びX4は互いに隣接し、それぞれの反射中心波長がλ_(2)(nm)であり互いに等しく、且つ互いに逆方向の円偏光を反射し、その反射中心波長λ_(2)(nm)が、1190?1290nmの範囲にあり、
前記少なくとも4つの光反射層X1、X2、X3及びX4の少なくとも1つの光反射層が、下層の光反射層の表面に塗布された液晶組成物をコレステリック液晶相とし、当該コレステリック液晶相を固定することで形成された層である赤外光反射板であって、
前記赤外光反射板の一方又は双方の表面に易接着層を有し、
前記易接着層、下塗り層、配向層、及び基板のうち少なくとも1つが、ポリビニルブチラール樹脂を含有する赤外光反射板。」
を、
「 【請求項1】
基板、コレステリック液晶相を固定してなる少なくとも4つの光反射層X1、X2、X3及びX4、並びに易接着層を有し、
光反射層X1及びX2は互いに隣接し、それぞれの反射中心波長がλ_(1)(nm)であり互いに等しく、且つ互いに逆方向の円偏光を反射し、その反射中心波長λ_(1)(nm)が、1010?1070nmの範囲にあり、
光反射層X3及びX4は互いに隣接し、それぞれの反射中心波長がλ_(2)(nm)であり互いに等しく、且つ互いに逆方向の円偏光を反射し、その反射中心波長λ_(2)(nm)が、1190?1290nmの範囲にあり、
前記少なくとも4つの光反射層X1、X2、X3及びX4の少なくとも1つの光反射層が、下層の光反射層の表面に塗布された液晶組成物をコレステリック液晶相とし、当該コレステリック液晶相を固定することで形成された層であり、
前記易接着層はポリビニルブチラール樹脂を含み、
前記易接着層がいずれか一方又は双方の表面にある赤外光反射板。」
へと補正することを含むものである(下線は、補正箇所を示すものとして、当審が付した。)。

(2)補正の目的
ア 上記(1)で摘記した事項に係る補正は、次の事項からなる。
(ア)「赤外光反射板」に「易接着層」が含まれることを明らかにする補正。
(イ)「ポリビニルブチラール樹脂」を含む対象を「易接着層、下塗り層、配向層、及び基板のうち少なくとも1つ」から「易接着層」に限定する補正。
(ウ)その他、本件補正前の従属形式による表現を、本件補正後の請求項1、すなわち、独立形式に表現したことに伴う補正。

イ 上記ア(ア)及び(ウ)の補正は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りようでない記載の釈明を目的としたものである。
上記ア(イ)の補正は、本件補正前の請求項に記載した発明特定事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。

ウ 本件補正は、新規事項を追加するものでない。

エ そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

2 独立特許要件の検討
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された国際公開第2009/153287号(以下「引用例」という。)には、次の記載がある。
ここで、原文を摘記するにあたっては、ウムラウト文字をae、ue、oeとして表記し、エスツェット文字をssとして表記する。
また、原文に加えて、対応する日本語文献である特表2011-525154号公報を参考にして作成した訳文(当該日本語文献の段落番号を参考までに併記する。)を括弧内に示す(下線を当審で付した。以下同じ。)。

(ア)a 「Beschreibung」(1頁3行)
(技術分野)

b 「Das Problem der Abschirmung von Waermestrahlung stellt sich insbesondere bei der Isolation von Wohn-, Buero- oder Industriebauten. Gebaeude mit grosszuegigen Fensterflaechen heizen sich insbesondere im Sommer und vor allem in suedlichen Regionen schnell soweit auf, dass sie mit erheblichem Energieaufwand durch Klimaanlagen gekuehlt werden muessen. Analoges gilt auch fuer Transportmittel, wie PKW, LKW, Busse, Zuege, Flugzeuge und dergleichen.」(1頁10行?15行。なお、行数は引用例付記の行番号に基づき示す(以下同じ)。)
(熱放射の遮蔽問題は、とりわけ、住宅、オフィスあるいは産業用建造物の場合に発生する。窓面積の大きい建物は、特に夏季、とりわけ南部地方では、相当なエネルギーを消費して空調装置によって冷やされない限り、すぐに昇温してしまう。交通輸送手段、例えば乗用車、トラック、バス、列車、航空機等についても同じことが当てはまる。)(段落【0002】)

c 「Gaengige Verfahren zur Waermeisolation (speziell zur Minimierung der Aufheizung), insbesondere zur Abschirmung von Waermestrahlung im Wellenlaengenbereich zwischen 800 nm und 2000 nm basieren auf der Absorption der Strahlung durch entsprechende Farbstoffe oder Pigmente. Die aufgenommene Energie wird jedoch durch Waermeleitung (Waermedissipation) zum grossen Teil an den zu isolierenden Gegenstand oder Raum abgegeben.」(1頁17行?22行)
(とりわけ800nm?2000nmの波長域の熱放射を遮蔽するための(特に昇温を最小限に抑止する)常用の断熱法は当該染料または顔料による熱放射の吸収を基礎としている。ただし、吸収されたエネルギーは伝熱(放熱)によって大半が、断熱される対象または空間に放出される。)(段落【0003】)

(イ)a 「Gewuenschtenfalls koennen die Zusammensetzungen (a.1 ), (a.2), (a.3), (a.4) und (a.5) neben den bereits genannten Komponenten, die fuer das Reflexionsverhalten verant- wortlich sind, weitere Mischungsbestandteile enthalten, die vorzugsweise ausgewaehlt sind unter
・ wenigstens einer Komponente C, die ihrerseits ausgewaehlt ist unter
(C.1) Photoinitiatoren;
(C.2) Reaktivverduennern, welche photopolymerisierbare Gruppen enthalten;
(C.3) Verduennungsmitteln;
(C.4) Entschaeumern und Entlueftern;
(C.5) Gleit- und Verlaufsmitteln;
(C.6) thermisch haertenden und/oder strahlenhaetenden Hilfsmitteln;
(C.7) Substratnetzhilfsmitteln;
(C.8) Netz- und Dispergierhilfsmitteln;
(C.9) Hydrophobierungsmitteln;
(C.10) Haftvermittlern; und
(C.11) Hilfsmitteln zur Verbesserung der Kratzfestigkeit;
・ wenigstens einer Komponente D, die ihrerseits ausgewaehlt ist unter
(D.1) Farbstoffen; und
(D.2) Pigmenten;
・ wenigstens einer Komponente E, die ihrerseits ausgewaehlt ist unter Licht-, Hitze- und Oxidationsstabilisatoren; und
・ wenigstens einer Komponente F, die ihrerseits ausgewaehlt ist unter IR- absorbierenden Verbindungen.」(21頁13行?41行。)
(所望の場合、組成物(a.1)、(a.2)、(a.3)、(a.4)および(a.5)は、反射特性を決定する既述した成分のほかに、好ましくは、
・ 下記から選択された少なくとも1つの成分Cと、
(C.1)光重合開始剤;
(C.2)光重合性基を含んだ反応性希釈剤;
(C.3)希釈剤;
(C.4)除泡剤および脱気剤;
(C.5)滑剤および流動剤;
(C.6)熱硬化助剤および/または放射線硬化助剤;
(C.7)支持体湿潤助剤;
(C.8)湿潤助剤および分散助剤;
(C.9)疎水化剤;
(C.10)接着促進剤;および
(C.11)引掻き強度向上助剤
・ 下記から選択された少なくとも1つの成分Dと、
(D.1)染料;および
(D.2)顔料;
・ 光安定剤、熱安定剤および酸化安定剤から選択された少なくとも1つの成分Eと、
・ 赤外線吸収化合物から選択された少なくとも1つの成分Fと
から選択されたその他の混合成分を含んでいてよい。)(段落【0072】)

b 「Haftvermittler der Gruppe (C.10) dienen der Verbesserung der Haftung zweier in Kontakt stehender Grenzflaechen. Hieraus wird direkt ersichtlich, dass im Wesentlichen nur der Anteil des Haftvermittlers wirksam ist, welcher sich in der einen, der anderen oder in beiden Grenzflaechen befindet. Will man auf ein festes Substrat beispielsweise fluesige oder pastoese Druckfarben, Beschichtungs- oder Anstrichmittel aufbringen, so bedeutet dies in der Regel, dass man entweder letzteren die Haftvermittler direkt zusetzen oder das Substrat einer Vorbehandlung mit den Haftvermittlern unterziehen muss (auch als Primerung bezeichnet), d. h. dass man diesem Substrat geaenderte chemische und/oder physikalisch Oberflaecheneigenschaften verleiht.」(31頁27行?36行)
(グループ(C.10)の接着促進剤は接触している2つの界面の付着性の改善に用いられる。このことから、基本的に、一方の界面、他方の界面または双方の界面に存在する接着促進剤の部分のみが有効であることが直接判明する。固体支持体に、例えば液状またはペースト状の印刷インキ、コーティングまたは塗料を被着させようとする場合、これは一般に、後者に接着促進剤が直接加えられるか、または支持体が接着促進剤の下塗りによる予備処理に付されなければならない(プライミングとも称される)ことを意味しており、すなわち、この支持体に化学的および/または物理的表面特性の変化が付与されることを意味している。)(段落【0120】)

(ウ)a 「Wie eingangs erlaeutert, fuehrt die Selektivreflexion von zirkular polarisiertem Licht der chiral nematischen Phase dazu, dass maximal 50 % des mit der Reflexionswellenlaenge eingestrahlten Lichtes reflektiert werden. Der Rest geht ohne Wechselwirkung mit dem Medium hindurch. Um einen moeglichst hohen Reflexionsgrad zu erzielen, umfasst daher die erfindungsgemaesse Folie in einer bevorzugten Ausfuehrungsform wenigstens zwei fluessigkristalline Schichten in gehaerteter Form, die im Wellenlaengenbereich des Infrarot reflektieren, wobei die wenigstens zwei Schichten wenigstens ein Schichtenpaar bilden, in welchem zwei einen aehnlichen Wellenlaengenbereich des Infrarot reflektieren und sich die zwei Schichten dieses Schichtenpaares in ihrer Chiralitaet unterschieden. Vorzugsweise umfasst die erfindungsgemaesse Folie eine durch 2 teilbare Anzahl cholesterischer (= fluessigkristalliner) Schichten, wie z.B. 2, 4, 6, 8 oder 10 Schichten, wobei immer zwei Schichten ein Schichtenpaar bilden, in welchem diese Schichten zwar in einem aehnlichen Wellenlaengenbereich des Infrarot reflektieren, aber eine entgegengesetzte Chiralitaet aufweisen.」(43頁38行?44頁9行)
(冒頭に述べたように、キラル・ネマチック相の円偏光の選択的反射により、反射波長の入射光の最大50%が反射される。残りは媒体との相互作用なしに透過する。したがって、できるだけ高い反射率を達成するため、本発明によるシートは好ましい実施形態において、赤外線波長域で反射する硬化された形の少なくとも2つの液晶層を含んでおり、その際、これらの少なくとも2つの層は、類似の赤外線波長域を反射するとともに2層のキラリティーが相違する少なくとも1組の層の対を形成する。好ましくは本発明によるシートは、偶数個のコレステリック(=液晶)層、例えば2、4、6、8または10個の層を含み、その際、常に2つの層は、類似の赤外線波長域において反射するが、ただし逆のキラリティーを有する1対の層を形成する。)(段落【0152】)

b 「"Einen aehnlichen Wellenlaengenbereich des Infrarot reflektieren" bedeutet, dass die Ganghoehe der helikalen Ueberstrukturen in diesen Schichten im Wesentlichen gleich ist. "Im Wesentlichen gleich" bedeutet dabei, dass sich die Ganghoehen in den beiden Schichten um hoechstens 6%, bevorzugt um hoechstens 3% unterscheiden. Die Lagen der Maxima der beiden Reflexionsbanden unterscheiden sich um hoechstens 40 nm, bevorzugt um hoechstens 20 nm und insbesondere um hoechstens 10 nm.」(44頁11行?16行)
(「類似の赤外線波長域を反射する」とは、これらの層におけるらせん超構造のピッチが実質的に等しいことを意味している。この場合、「実質的に等しい」とは、双方の層におけるピッチがせいぜい6%、好ましくはせいぜい3%異なっているにすぎないことを意味している。双方の反射帯の極大の位置はせいぜい40nm、好ましくはせいぜい20nm、特にせいぜい10nm異なっているにすぎない。)(段落【0153】)

c 「Im Rahmen der vorliegenden Erfindung soll der Begriff "Schichtenpaar" nicht einschraenkend verstanden werden und soll insbesondere nicht bedingen, dass die zwei Schichten, die es bilden, benachbart sind. Die relative Lage solcher zweier Schichten innerhalb der Folie ist vielmehr im Wesentlichen unkritisch, und der Begriff Schichtenpaar bezeichnet nur die o.g. Bedingungen fuer ihre physikalischen Eigenschaften (im Wesentlichen gleiche Ganghoehe; entgegengesetzte Chiralitaet).」(44頁18行?23行)
(本発明の範囲において「層の対」という用語は限定的に理解されてはならず、特に、それを形成する2つの層は隣接していることを条件付けるものであってはならない。シート内部におけるこれら2つの層の相対的位置はむしろ基本的には重要ではなく、層の対という用語はそれらの物理的特性に関する上記の要件を表しているにすぎない(基本的に等しいピッチ;逆のキラリティー)。)(段落【0154】)

d 「Wenn die erfindungsgemaesse Folie mehr als ein wie oben definiertes cholesterisches Schichtenpaar enthaelt, ist es bevorzugt, dass diese weiteren Schichtenpaare jeweils in einem anderen Wellenlaengenbereich des Infrarot reflektieren, d.h. alle Schichtenpaare Reflexionsmaxima mit jeweils anderen Wellenlaengen aufweisen. Dabei befinden sich jedoch alle Reflexionsmaxima im Infrarot und vorzugsweise in den oben als bevorzugt angegebenen IR-Bereichen.」(44頁25行?30行)
(本発明によるシートが上述したような1対以上のコレステリック層を含む場合、そうしたその他の層の対はそれぞれ異なった赤外線波長域において反射すること、つまり、すべての層の対はそれぞれ異なった波長の反射極大を有するのが好ましい。ただし、この場合、すべての反射極大は赤外線域内にあり、上記に好ましいとして述べた赤外線域内にあるのが好ましい。)(段落【0155】)

e 「Wenn die erfindungsgemaesse Folie Schichten mit unterschiedlichen Reflexionsmaxima enthaelt, so ist es bevorzugt, dass die Schichten relativ zueinander in der Reihenfolge zunehmender Wellenlaengen der Reflexionsmaxima aufgebaut sind, d.h. zuerst kommt die Schicht mit der kuerzesten Wellenlaenge des Reflexionsmaximums, dann diejenige mit der zweitkuerzesten Wellenlaenge des Reflexionsmaximums, etc. Enthaelt die Folie zwei oder mehr Schichtenpaare aus Schichten gleicher Ganghoehe, aber entgegengesetzter Chiralitaet und sind diese nicht benachbart, so ist die Folie vorzugsweise so aufgebaut, dass erst alle Schichten der einen Chiralitaet in der Reihenfolge zunehmender Wellenlaengen der Reflexionsmaxima und dann alle Schichten der anderen Chiralitaet ebenfalls in der Reihenfolge zunehmender Wellenlaengen der Reflexionsmaxima aufeinanderfolgen. Zur Veranschaulichung sind nachfolgend einige Beispiele fuer solchermassen bevorzugte Reihenfolgen aufgefuehrt, wobei optionale Schichten, wie Traegerfolie, Orientierungsschicht etc. nicht beruecksichtigt sind:」(45頁13行?25行)
(本発明によるシートが異なった反射極大を有する層を含む場合、それらの層は互いに相対的に反射極大の波長が順次増加してゆく順序で配されていること、つまり、先ず最も短い波長の反射極大を有する層、次いで、次に短い波長の反射極大を有する層等の順序で構成されているのが好ましい。シートが、同一のピッチただし逆のキラリティーを有する層からなる2つ以上の層の対を含んでいる場合、シートは先ず一方のキラリティーのすべての層が反射極大の波長が順次増加してゆく順序で、次いで、他方のキラリティーのすべての層が同じく反射極大の波長が順次増加してゆく順序で互いに重なるように構成されているのが好ましい。わかり易くするため、以下に、その種の好ましい順序の幾つかの例を示すが、その際、任意の層、例えば支持シート、配向層等は考慮されていない。)(段落【0157】)

f 「

」(45?46頁に記載された図のうち、45頁の図)
(当審注:訳添付は、これを要さないので省略する。)

g 「Dabei bedeutet RZPL-RS rechtszirkular polarisiertes Licht reflektierende Schicht und LZPL-RS linkszirkular polarisiertes Licht reflektierende Schicht; λ_(R)1 ist die kuerzeste Wellenlaenge des Reflexionsmaximums, λ_(R)2 ist die zweitkuerzeste und λ_(R)3 die drittkuerzeste Wellenlaenge des Reflexionsmaximums. 」(46頁38行?41行)
(ここで、RZPL-RSは右円偏光反射層、LZPL-RSは左円偏光反射層を意味しており、λ_(R)1は反射極大の最も短い波長であり、λ_(R)2は反射極大の二番目に短い波長であり、λ_(R)3は反射極大の三番目に短い波長である。)(段落【0160】)

(エ)a 「Wenn die erfindungsgemaesse Folie eine Traegerfolie enthaelt, ist die fluessigkristalline Schicht mit der kuerzesten Wellenlaenge des Reflexionsmaximums der Traegerfolie vorzugsweise am naechsten.」(49頁8行?10行)
(本発明によるシートが支持シートを含む場合、反射極大の最も短い波長を有する液晶層が支持シートの直近に位置しているのが好ましい。)(段落【0167】)

b 「Die erfindungsgemaesse Folie umfasst optional wenigstens eine Traegerfolie. In einer bevorzugten Ausfuehrungsform umfasst sie eine Traegerfolie. Die Traegerfolie kann dabei einseitig oder beidseitig mit den uebrigen Schichten beschichtet sein. Bezueglich des Begriffteils "Folie" wird auf die vorstehenden Ausfuehrungen Bezug genommen. Der Begriffteil "Traeger" bedingt, dass die Traegerfolie nicht nur selbsttragend ist, sondern auch die uebrigen Schichten tragen kann, ohne zu reissen.」(49頁12行?17行)
(本発明によるシートは、場合により少なくとも1つの支持シートを含んでいる。好ましい実施形態において、本発明によるシートは支持シートを含んでいる。その際、支持シートは片側または両側がその他の層でコーティングされていてよい。「シート」という用語については、上記の記述を参照されたい。「支持」という用語は、支持シートは自己支持性を有するだけでなく、引裂なしにその他の層も担持し得ることを条件としている。)(段落【0168】)

c 「Geeignete Materialien, aus denen die Traegerfolie aufgebaut ist, umfassen Polyethylenterephthalat, Polyethylennaphthalat, Polyvinylbutyral, Polyvinylchlorid, Weichpolyvinylchlorid, Polymethylmethacrylat, Poly(ethylen-co-vinylacetat), Polycarbonat, CeIIuIo- setriacetat, Polyethersulfon, Polyester, Polyamid, Polyolefine und Acrylharze. Bevorzugt sind hierunter Polyethylenterephthalat, Polyvinylbutyral, Polyvinylchlorid, Weichpolyvinylchlorid und Polymethylmethacrylat.」(49頁19行?24行)
(支持シートを構成する好適な材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルクロリド、軟質ポリビニルクロリド、ポリメチルメタクリレート、ポリ(エチレン-コ-ビニルアセテート)、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンおよびアクリル樹脂を含んでいる。このうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルクロリド、軟質ポリビニルクロリドおよびポリメチルメタクリレートが好ましい。)(段落【0169】)

(オ)a 「In einer weiteren bevorzugten Ausfuehrungsform umfasst die erfindungsgemaesse Folie wenigstens eine Schicht, die IR-Strahlung absorbiert.」(51頁38行?39行)
(さらに別の好ましい実施形態において、本発明によるシートは少なくとも1つの保護層、接着層および/または剥離層を含んでいる。)(段落【0185】)

b 「Geeignete Klebeschichten werden beispielsweise durch die Verwendung der oben beschriebenen Haftvermittler hergestellt. Die Klebeschicht bildet vorzugsweise eine der aeusseren Schichten der erfindungsgemaessen Folie. Wenn die erfindungsgemaesse Folie eine Klebeschicht umfasst, so ist diese vorzugsweise noch mit einer Releaseschicht versehen, um ein unerwuenschtes Verkleben der Folie zu verhindern, und bildet somit eine der zweitaeussersten Schichten der erfindungsgemaessen Folie.」(52頁14行?19行)
「好適な接着層は、例えば、上述した接着促進剤の使用によって作り出される。接着層は好ましくは、本発明によるシートの外側層の1つを形成する。本発明によるシートが接着層を含んでいる場合、該層は、シートの望ましくない付着を防止するため、さらに剥離層を具えているのが好ましく、こうして、本発明によるシートの外から二番目の層の1つを形成する。)(段落【0188】)

(カ)a 「Die erfindungsgemaesse Folie kann durch uebliche Verfahren des Standes der Technik zur Herstellung beschichteter Folien hergestellt werden. Dazu wird in der Regel eine Traegerfolie bereitgestellt und mit den gewuenschten Schichten in der gewuenschten Reihenfolge versehen. Die fluessigkristallinen Schichten koennen dabei nach jedem Auftragen gehaertet werden oder auch nass in nass mit den weiteren Schichten beschichtet werden. Bevorzugt ist es jedoch, jede fluessigkristalline Schicht nach dem Aufbringen zumindest teilweise zu haerten, bevor die naechste Schicht aufgebracht wird. Es ist auch moeglich, zwei Traegerfolien getrennt zu beschichten und sie dann zu verkleben. Von dieser verklebten Folie kann dann gewuenschtenfalls eine oder beide Traegerfolien abgeloest werden und die Folienseiten koennen mit weiteren Schichten beschichtet und/oder mit weiteren Folien verklebt werden, bis die gewuenschte Folienzusammensetzung erreicht ist. Wenn die erfindungsgemaesse Folie keine Traegerfolie enthalten soll, wird diese nach erfolgter Beschichtung/Verklebung entfernt.」(52頁21行?33行)
(本発明によるシートは、コーティングされたシートを製造するための従来の技術による通例の方法によって製造することが可能である。そのため、一般に、支持シートが準備されて、所望の層が所望の順序で被着される。その際、液晶層はそれぞれの層が被着されるたびに硬化されるか、またはウェット・オン・ウェットでその他の層をコーティングすることも可能である。ただし、いずれの液晶層も被着後に、すぐ次の層が被着される前に、少なくとも部分的に硬化されるのが好ましい。また、2つの支持シートを別々にコーティングして、その後に両者を接着することも可能である。この場合、この接着されたシートのうち、所望であれば一方または双方の支持シートを剥がし、所望のシート組成が達成されるまで、シート側をその他の層でコーティングしかつ/またはその他のシートと接着することが可能である。本発明によるシートが支持シートを含まないようにするには、コーティング/接着が行われた後に支持シートが取り除かれる。)(段落【0189】)

b 「Die Zusammensetzungen (a.1 ), (a.2), (a.3), (a.4) oder (a.5) sowie optional (f.1 ), (f.2), (f.3), (f.4) oder (f.5) werden in der Regel in Form einer Loesung oder einer waessrigen Suspension oder Emulsion eingesetzt. Ihr Aufbringen erfolgt in der Regel mittels ueblicher Verfahren, beispielsweise mittels Verfahren, die ausgewaehlt sind unter Luft-Rakel-Beschichtung, Rakelbeschichtung, Luftmesserbeschichtung, Quetschbeschichtung, Impraegnierbeschichtung, Umkehrwalzenbeschichtung, Transferwalzenbeschichtung, Gravurbeschichtung, "Kiss-Coating", Giessbeschichtung, Spraybeschichtung, Spinbeschichtung oder Druckverfahren, wie Hoch-, Tief-, Flexo-, Offset-, InkJet-, Buch-, Tampon-, Heisssiegel- oder Sieb-Druckverfahren.」(54頁16行?24行)
(組成物(a.1)、(a.2)、(a.3)、(a.4)または(a.5)ならびに場合により、(f.1)、(f.2)、(f.3)、(f.4)または(f.5)は一般に、溶液または水性懸濁液または乳濁液の形で使用される。これらの被着は一般に、通例の方法、例えばエアドクターコーティング、ドクターコーティング、エアナイフコーティング、スキージーコーティング、含浸コーティング、リバースロールコーティング、トランスファーロールコーティング、エッチングコーティング、「キスコーティング」、射出コーティング、吹付けコーティング、スピンコーティングまたは印刷法、例えば凸版-、凹版-、フレキソ-、オフセット-、インクジェット-、活版-、タンポン-、ヒートシール-またはスクリーン印刷法から選択された方法によって行われる。)(段落【0194】)

c 「Die Orientierung der cholesterischen Schicht erfolgt in der Regel spontan waehrend des Auftragungsvorgangs; sie kann aber auch in einem nachgeschalteten Schritt erfolgen. In diesem Fall erfolgt die Orientierung mittels der bekannten Methoden, z. B. der Wechselwirkung der Fluessigkristallphase mit Orientierungsschichten, dem Anlegen elektrischer oder magnetischer Felder oder dem mechanischen Rakeln der Fluessigkristallschichten. Vorzugsweise erfolgt die Orientierung jedoch spontan unter Einwirkung der beim Auftragen wirkenden Scherkraefte.」(54頁26行?32行)
(コレステリック層の配向は一般に被着プロセスの間に自然に行われるが、後置されたステップで行うことも可能である。この場合、配向は公知の方法、例えば液晶相と配向層との相互作用、電場または磁場の印加または液晶層の機械式塗布によって行われる。ただし、配向は被着時に作用するせん断力の作用下で自然に行われるのが好ましい。)(段落【0195】)

d 「Anschliessend kann die aufgebrachte cholesterische Schicht mittels ueblicher Verfahren, beispielsweise mit Heissluft, getrocknet werden.」(54頁34行?35行)
(続いて、被着されたコレステリック層は、通例の方法、例えば熱風で乾燥させることができる。)(段落【0196】)

e 「Die Polymerisation der cholesterischen Schicht kann thermisch, durch Elektronenstrahl oder vorzugsweise photochemisch erfolgen.」(54頁37行?38行)
(コレステリック層の重合は熱的、あるいは、電子線または好ましくは光化学的に行うことができる。)(段落【0197】)

(キ)a 「Ein weiterer Gegenstand der Erfindung ist Verwendung der erfindungsgemaessen Folie oder der erfindungsgemaessen Zusammensetzung fuer das Waermemanagement von Bauten und Transportmitteln.」(58頁6行?8行)
(本発明のさらなる対象は、建造物および輸送手段の熱管理のために本発明によるシートまたは本発明による組成物を使用することである。)(段落【0216】)

b 「Unter "Waermemanagement" versteht man in diesem Zusammenhang das Abschirmen von Bauten und Transportmitteln gegenueber Waermestrahlung.」(58頁10行?11行)
(ここで「熱管理」とは、熱放射からの建造物および輸送手段の遮蔽として理解される。)(段落【0217】)

c 「Unter Bauten werden Gebaeude und Gebaeudeteile sowie alle Arten von bauwerklichen Konstruktionen verstanden, beispielsweise Privat-, Buero- und Industriegebaeude, Daeeher, Fenster, Aussenwaende, Dachkuppeln solcher Gebaeude, nicht an ein Gebaeude gebundene Daecher oder Waende, z.B. Stadionwaende und -daecher, Passarellendaecher und -waende, Waende und Daecher von ueberdachten Wegen und Durchgaengen, Waende und Daecher von Unterstaenden, z.B. in Haltestellen oder Bahnhoefen und dergleichen. Bei den Transportmitteln handelt es sich um alle moeglichen Verkehrsmittel und Teile davon, die gegen Waermeeinfluss isoliert werden sollen, wie Personenkraftwagen (Autos) und Teile davon, insbesondere Heck-, Front- und Seitenfenster (Glas), Dach, Schiebedach (Glas oder Metall), Motorhaube (Metall), Lastkraftwagen und Teile davon (wie auch bei PKW), Zuege, Flugzeuge, Schiffe und dergleichen. Auch die Verwendung der erfindungsgemaessen Folie oder der erfindungsgemaessen Zusammensetzung fuer das Waermemanagement von Helmen, z.B. Motorradhelmen, ist Gegenstand der Erfindung.」(58頁13行?25行)
(建造物とは建物および建物部分ならびにあらゆる種類の建造構造物として理解され、例えば、私的建物、オフィスおよび産業用建物、この種の建物の屋根、窓、外壁、ドーム、建物と結びついていない屋根または壁、例えば競技場の屋根または壁、跨線橋の屋根および壁、アーケードおよび通路の屋根および壁、例えば停留所または駅の壁および屋根等である。輸送手段とは、熱の影響が遮断されると考えられ得るあらゆる交通手段および、それらの部分、例えば乗用車(自動車)および、それらの部分、特にリアウィンドウ、フロントウィンドウおよびサイドウィンドウ(ガラス)、ルーフ、スライディングルーフ(ガラスまたは金属)、エンジンフード(金属)、トラックおよびそれらの部分(乗用車の場合と同様)、列車、航空機、船舶等である。ヘルメット、例えば二輪車用ヘルメットの熱管理のための本発明によるシートまたは本発明による組成物の使用も本発明の対象である。)(段落【0218】)

(ク)a 「Beispiele

1.) Formulierungen
Es wurden folgende Formulierungen hergestellt:

Alle Formulierungen enthielten Cyclopentanon und Methylisobutylketon in einem Gewichtsverhaeltnis von 8:2 als Loesungsmittel. Ausserdem enthielten sie 0,05 Gew.-% Tego Rad 2100 als Verlaufshilfsmittel und 1 Gew.-% Lucirin TPO als Photonitiator, jeweils bezogen auf die Gesamtmenge (=100%) an nematischen und chiralen Verbindungen.

Formulierung A (rechtsverdrillend):
Verbindung der Formel l.b
Verbindung der Formel IV.a in einer Menge von 3,1 Gew.-%, bezogen auf das Gewicht der Verbindung l.b

Formulierung B (rechtsverdrillend):
Verbindung der Formel l.b
Verbindung der Formel IV.a in einer Menge von 2,6 Gew.-%, bezogen auf das Gewicht der Verbindung l.b

Formulierung C (rechtsverdrillend):
Verbindung der Formel l.b
Verbindung der Formel IV.a in einer Menge von 2,0 Gew.-%, bezogen auf das Gewicht der Verbindung l.b

Formulierung D (linksverdrillend):
Verbindung der Formel l.b
Verbindung der Formel IV.c in einer Menge von 8,1 Gew.-%, bezogen auf das Gewicht der Verbindung l.b

Formulierung E (linksverdrillend):
Verbindung der Formel l.b
Verbindung der Formel IV.c in einer Menge von 6,7 Gew.-%, bezogen auf das Gewicht der Verbindung l.b

Formulierung F (linksverdrillend):
Verbindung der Formel l.b
Verbindung der Formel IV.c in einer Menge von 5,0 Gew.-%, bezogen auf das Gewicht der Verbindung l.b

Formulierung G (rechtsverdrillend):
Verbindung der Formel l.a
Verbindung der Formel IV.a in einer Menge von 2,8 Gew.-%, bezogen auf das Gewicht der Verbindung l.a

Formulierung H (linksverdrillend):
Verbindung der Formel l.a
Verbindung der Formel IV.c in einer Menge von 10,7 Gew.-%, bezogen auf das Gewicht der Verbindung l.a

Formulierung I (rechtsverdrillend):
Verbindung der Formel l.b
Verbindung der Formel IV.a in einer Menge von 5,48 Gew.-%, bezogen auf das Gewicht der Verbindung l.b

Formulierung J (rechtsverdrillend):
Verbindung der Formel l.b
Verbindung der Formel IV.a in einer Menge von 4,68 Gew.-%, bezogen auf das Gewicht der Verbindung l.b

Formulierung K (linksverdrillend):
Verbindung der Formel l.b
Verbindung der Formel IV.c in einer Menge von 13,32 Gew.-%, bezogen auf das Gewicht der Verbindung l.b

Formulierung L (linksverdrillend):
Verbindung der Formel l.b
Verbindung der Formel IV.c in einer Menge von 11 ,38 Gew.-%, bezogen auf das Gewicht der Verbindung l.b」(58頁30行?60頁15行)
(実施例
1.)配合物
以下の配合物が製造された:
すべての配合物は溶剤として8:2の質量比でシクロペンタノンとメチルイソブチルケトンを含んでいた。配合物は、その他に、それぞれネマチックおよびキラル化合物の総量(=100%)に対して、流動剤として0.05質量%のTegoRad2100、光重合開始剤として1質量%のLucirinTPOを含んでいた。
配合物A(右旋性):
式I.bの化合物
化合物I.bの質量に対して、3.1質量%の量の式IV.aの化合物
配合物B(右旋性):
式I.bの化合物
化合物I.bの質量に対して、2.6質量%の量の式IV.aの化合物
配合物C(右旋性):
式I.bの化合物
化合物I.bの質量に対して、2.0質量%の量の式IV.aの化合物
配合物D(左旋性):
式I.bの化合物
化合物I.bの質量に対して、8.1質量%の量の式IV.cの化合物
配合物E(左旋性):
式I.bの化合物
化合物I.bの質量に対して、6.7質量%の量の式IV.cの化合物
配合物F(左旋性):
式I.bの化合物
化合物I.bの質量に対して、5.0質量%の量の式IV.cの化合物
配合物G(右旋性):
式I.aの化合物
化合物I.aの質量に対して、2.8質量%の量の式IV.aの化合物
配合物H(左旋性):
式I.aの化合物
化合物I.aの質量に対して、10.7質量%の量の式IV.cの化合物
配合物I(右旋性):
式I.bの化合物
化合物I.bの質量に対して、5.48質量%の量の式IV.aの化合物
配合物J(右旋性):
式I.bの化合物
化合物I.bの質量に対して、4.68質量%の量の式IV.aの化合物
配合物K(左旋性):
式I.bの化合物
化合物I.bの質量に対して、13.32質量%の量の式IV.cの化合物
配合物L(左旋性):
式I.bの化合物
化合物I.bの質量に対して、11.38質量%の量の式IV.cの化合物)(段落【0220】)

b 「2.) Herstellung von Folien - Einzellagen

Eine Polyethylenterephthalatfolie (Traegerfolie) wurde jeweils mit den o.g. Formulierungen mittels einer Gravure Roll beschichtet (Filmdicke ca. 4 μm), in einem Trockenkanal bei 100, 115 und 2x120 ℃ (Formulierungen A bis F und I bis L) bzw. 4x90 ℃ (Formulierungen G und H) getrocknet und mittels UV-Licht (451 mW/cm^(2) ) gehaertet.」(60頁18行?23行)
(2.)シートの製造-単層
ポリエチレンテレフタレートシート(支持シート)は、グラビアロールにより、それぞれ上記配合物にてコーティングされ(フィルム厚さ、約4μm)、乾燥路において100、115および2×120℃(配合物A?FおよびI?L)ないし4×90℃(配合物GおよびH)にて乾燥され、紫外光(451mW/cm^(2))によって硬化された。)(段落【0221】)

c 「Die Reflexionsmaxima der Folien A und D lagen bei 1020 nm, diejenigen der Folien B und E bei 1230 nm, diejenigen der Folien C und F bei 1590 nm, diejenigen der Folien G und H bei 930 nm, diejenigen der Folien I und K bei 600 nm und diejenigen der Folien J und L bei 700 nm.」(60頁25行?28行)
(シートAおよびDの反射極大は1020nmに位置し、シートBおよびEの反射極大は1230nm、シートCおよびFの反射極大は1590nm、シートGおよびHの反射極大は930nm、シートIおよびKの反射極大は600nm、シートJおよびLの反射極大は700nmにそれぞれ位置している。)(段落【0222】)

d 「3.) Herstellung von Folien - Mehrlagen

Die mehrlagigen Folien wurden durch Verkleben der Einzellagen, Delaminieren der obersten Traegerfolie usw. erhalten. Es wurden mehrlagige Folien auf Basis folgender Formulierung in der angegebenen Schichtenfolge hergestellt:

Folie I:
G - A - B - H - A - B

Folie II:
A - B - C - D - E - F

Folie III:
G- A- B- C- H- D- E- F

Folie IV:
I - A- B- C- D- E- F

Folie V:
K- A- B- C- D- E- F」(60頁30行?61頁7行)
(3.)シートの製造-多層
多層シートは、単層の接着、最上位の支持シートの剥離等によって得られた。多層シートは以下の配合物をベースとして以下に記載の層順序にて製造された:
シートI:
G-A-B-H-A-B
シートII:
A-B-C-D-E-F
シートIII:
G-A-B-C-H-D-E-F
シートIV:
I-A-B-C-D-E-F
シートV:
K-A-B-C-D-E-F)(段落【0223】)

(ケ)a 「Patentansprueche」(62頁1行)
(特許請求の範囲)

b 「1. Waermeisolierende Folie, umfassend
(a) wenigstens eine fluessigkristalline Schicht in gehaerteter Form, die im Wellenlaengenbereich des Infrarot reflektiert und die erhaeltlich ist durch Haertung
(a.1) einer Zusammensetzung enthaltend wenigstens ein achirales nematisches polymerisierbares Monomer und wenigstens ein chirales polymerisierbares Monomer; oder
(a.2) einer Zusammensetzung enthaltend wenigstens ein cholesterisches polymerisierbares Monomer; oder
(a.3) einer Zusammensetzung enthaltend wenigstens ein cholesterisches vernetzbares Polymer; oder
(a.4) einer Zusammensetzung enthaltend wenigstens ein cholesterisches Polymer in einem polymerisierbaren Verduennungsmittel; oder
(a.5) einem Gemisch wenigstens zwei dieser Zusammensetzungen;
(b) optional wenigstens eine Traegerfolie;
(c) optional wenigstens eine Orientierungsschicht, die mit wenigstens einer fluessigkristallinen Schicht in Kontakt steht;
(d) optional wenigstens eine λ/2-Folie;
(e) optional wenigstens eine Klebeschicht, Schutzschicht und/oder Releaseschicht.」(62頁3行?21行)
(1.断熱シートであって、
(a)赤外線波長域で反射し、かつ以下の
(a.1)少なくとも1つのアキラルネマチック重合性モノマーと少なくとも1つのキラル重合性モノマーとを含んだ組成物;または
(a.2)少なくとも1つのコレステリック重合性モノマーを含んだ組成物;または
(a.3)少なくとも1つのコレステリック架橋性ポリマーを含んだ組成物;または
(a.4)重合性希釈剤中少なくとも1つのコレステリックポリマーを含んだ組成物;または
(a.5)これらの組成物のうち少なくとも2つの組成物の混合物;
の硬化によって得られる、硬化された形の少なくとも1つの液晶層と、
(b)場合により少なくとも1つの支持シート;
(c)場合により少なくとも1つの液晶層と接触する少なくとも1つの配向層;
(d)場合により少なくとも1つのλ/2波長シート;
(e)場合により少なくとも1つの接着層、保護層および/または剥離層と
を含む断熱シート。)(【請求項1】)

c 「15. Waermeisolierende Folie nach einem der vorhergehenden Ansprueche, umfassend wenigstens zwei fluessigkristalline Schichten in gehaerteter Form, die im Wellenlaengenbereich des Infrarot reflektieren, wobei die wenigstens zwei Schichten wenigstens ein Schichtenpaar umfassen, wobei die zwei Schichten in diesem Schichtenpaar einen aehnlichen Wellenlaengenbereich des Infrarot reflektieren und sich die zwei Schichten dieses Schichtenpaares in ihrer Chiralitaet unterschieden.」(68頁13行?18行)
(15.赤外線波長域で反射する硬化された形の少なくとも2つの液晶層を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の断熱シートであって、少なくとも前記2つの層は少なくとも1組の層の対を含み、この層の対の2層は類似の赤外線波長域を反射すると共に、この層の対の2層はそれらのキラリティーが相違している断熱シート。)(【請求項15】)

d 「17. Waermeisolierende Folie nach einem der Ansprueche 15 oder 16, umfassend wenigstens zwei Schichtenpaare, wobei die zwei Schichten in diesen Schichtenpaaren einen aehnlichen Wellenlaengenbereich des Infrarot reflektieren, aber sich in ihrer Chiralitaet unterschieden und wobei die Schichten in den verschiedenen Schichtenpaaren in jeweils unterschiedlichen Wellenlaengenbereichen des Infrarot reflektieren.」(68頁25行?30行)
(17.少なくとも2組の層の対を含む、請求項15または16のいずれか1項に記載の断熱シートであって、これらの層の対の2つの層は類似の赤外線波長域を反射するが、それらのキラリティーは相違し、異なった層の対の層はそれぞれ異なった赤外線波長域で反射する断熱シート。)(【請求項17】)

e 「26. Waermeisolierende Folie nach einem der vorhergehenden Ansprueche, umfassend ausserdem wenigstens eine Schutzschicht, Klebeschicht und/oder Releaseschicht.」(69頁36行?38行)
(少なくとも1つの保護層、接着層および/または剥離層を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の断熱シート。)(【請求項26】)

f 「34. Verwendung von Folien gemaess einem der Ansprueche 1 bis 26 oder der Zusammensetzung nach Anspruch 31 fuer das Waermemanagement von Bauten und Transportmitteln.」(71頁40行?42行)
(34.請求項1から26までのいずれか1項に記載のシート、または請求項31に記載の組成物を、建造物および輸送手段の熱管理のために用いる使用。)(【請求項34】)

(コ)上記(ウ)fの図の左の例は、同gの記載に照らしてみると、λ_(R)1で反射極大を示す右円偏光反射層、λ_(R)1で反射極大を示す左円偏光反射層、λ_(R)2で反射極大を示す右円偏光反射層、λ_(R)2で反射極大を示す左円偏光反射層、λ_(R)3で反射極大を示す右円偏光反射層、λ_(R)3で反射極大を示す左円偏光反射層が、これら以外の円偏光反射層を含まずに、この順に配置され、λ_(R)1が最も短い波長であり、λ_(R)2が二番目に短い波長であり、λ_(R)3が三番目に短い波長である態様であると認められる。

(サ)上記(カ)bの記載からみて、液晶層が塗布により被着されることが記載されていると認められる。

イ 上記アの各記載によれば、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「断熱シートであって、
(a)赤外線波長域で反射し、かつ以下の
(a.1)少なくとも1つのアキラルネマチック重合性モノマーと少なくとも1つのキラル重合性モノマーとを含んだ組成物;または
(a.2)少なくとも1つのコレステリック重合性モノマーを含んだ組成物;または
(a.3)少なくとも1つのコレステリック架橋性ポリマーを含んだ組成物;または
(a.4)重合性希釈剤中少なくとも1つのコレステリックポリマーを含んだ組成物;または
(a.5)これらの組成物のうち少なくとも2つの組成物の混合物;
の硬化によって得られる、硬化された形の少なくとも1つの液晶層と、
(b)少なくとも1つの支持シート;
(e)少なくとも1つの接着層と
を含む断熱シートであり、
赤外線波長域で反射する硬化された形の少なくとも2つの液晶層を含み、少なくとも前記2つの層は少なくとも1組の層の対を含み、この層の対の2層は類似の赤外線波長域を反射すると共に、この層の対の2層はそれらのキラリティーが相違しており、
少なくとも2組の層の対を含み、これらの層の対の2つの層は類似の赤外線波長域を反射するが、それらのキラリティーは相違し、異なった層の対の層はそれぞれ異なった赤外線波長域で反射するものであって、
「類似の赤外線波長域を反射する」とは、これらの層におけるらせん超構造のピッチが実質的に等しいことを意味しており、
λ_(R)1で反射極大を示す右円偏光反射層、λ_(R)1で反射極大を示す左円偏光反射層、λ_(R)2で反射極大を示す右円偏光反射層、λ_(R)2で反射極大を示す左円偏光反射層、λ_(R)3で反射極大を示す右円偏光反射層、λ_(R)3で反射極大を示す左円偏光反射層が、これら以外の円偏光反射層を含まずに、この順に配置され、λ_(R)1が最も短い波長であり、λ_(R)2が二番目に短い波長であり、λ_(R)3が三番目に短い波長であり、
支持シートが準備されて、所望の層が所望の順序で被着され、その際、液晶層はそれぞれの層が被着されるたびに硬化されることによって製造され、ここで、液晶層は塗布により被着され、
接着層は、例えば、接着促進剤の使用によって作り出されるものであって、シートの外側層の1つを形成する、
断熱シート。」

(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを以下に対比する。
(ア)引用発明の「支持シート」は、本願補正発明の「基板」に相当する。

(イ)引用発明の「赤外線波長域で反射し、かつ以下の
(a.1)少なくとも1つのアキラルネマチック重合性モノマーと少なくとも1つのキラル重合性モノマーとを含んだ組成物;または
(a.2)少なくとも1つのコレステリック重合性モノマーを含んだ組成物;または
(a.3)少なくとも1つのコレステリック架橋性ポリマーを含んだ組成物;または
(a.4)重合性希釈剤中少なくとも1つのコレステリックポリマーを含んだ組成物;または
(a.5)これらの組成物のうち少なくとも2つの組成物の混合物;
の硬化によって得られる、硬化された形の少なくとも1つの液晶層」は、本願補正発明の「コレステリック液晶相を固定してなる」「光反射層」に相当する。

(ウ)引用発明は、「λ_(R)1で反射極大を示す右円偏光反射層、λ_(R)1で反射極大を示す左円偏光反射層、λ_(R)2で反射極大を示す右円偏光反射層、λ_(R)2で反射極大を示す左円偏光反射層、λ_(R)3で反射極大を示す右円偏光反射層、λ_(R)3で反射極大を示す左円偏光反射層が」「この順に配置され」ているから、上記(イ)に照らすと、本願補正発明の「少なくとも4つの」「光反射層」との特定事項を満たしている。
そして、引用発明の「λ_(R)1で反射極大を示す右円偏光反射層」、「λ_(R)1で反射極大を示す左円偏光反射層」、「λ_(R)2で反射極大を示す右円偏光反射層」及び「λ_(R)2で反射極大を示す左円偏光反射層」が、それぞれ、本願補正発明の「光反射層X1」、「光反射層」「X2」、「光反射層」「X3」及び「光反射層」「X4」に相当する。
また、引用発明の「λ_(R)1で反射極大を示す右円偏光反射層」及び「λ_(R)1で反射極大を示す左円偏光反射層」は、本願補正発明の「それぞれの反射中心波長がλ_(1)(nm)であり互いに等しく」との特定事項を満たし、引用発明の「λ_(R)2で反射極大を示す右円偏光反射層」及び「λ_(R)2で反射極大を示す左円偏光反射層」は、本願補正発明の「それぞれの反射中心波長がλ_(2)(nm)であり互いに等しく」との特定事項を満たしている。
さらに、引用発明の「『λ_(R)1で反射極大を示す右円偏光反射層』及び『λ_(R)1で反射極大を示す左円偏光反射層』」と「『λ_(R)2で反射極大を示す右円偏光反射層』及び『λ_(R)2で反射極大を示す左円偏光反射層』」とは、いずれも、本願補正発明の「互いに逆方向の円偏光を反射し」との特定事項を満たしている。

(エ)引用発明の「λ_(R)1で反射極大を示す右円偏光反射層」(本願補正発明の「光反射層X1」に相当。)及び「λ_(R)1で反射極大を示す左円偏光反射層」(本願補正発明の「光反射層」「X2」に相当。)は、「これら以外の円偏光反射層を含まずに、この順に配置され」ているとともに、「支持シートが準備されて、所望の層が所望の順序で被着され、その際、液晶層はそれぞれの層が被着されるたびに硬化されることによって製造され、ここで、液晶層は塗布により被着され」ることにより製造されるから、引用発明は、本願補正発明の「光反射層X1及びX2は互いに隣接し」との特定事項を満たしている。

(オ)引用発明の「λ_(R)2で反射極大を示す右円偏光反射層」(本願補正発明の「光反射層」「X3」に相当。)及び「λ_(R)2で反射極大を示す左円偏光反射層」(本願補正発明の「光反射層」「X4」に相当。)についても、上記(エ)と同様の議論ができるから、引用発明は、本願補正発明の「光反射層X3及びX4は互いに隣接し」との特定事項とを満たしている。

(カ)引用発明の「赤外線反射域で反射する」「液晶層を含」む「断熱シート」は、本願補正発明の「赤外光反射板」に相当する。

(キ)引用発明の「接着促進剤の使用によって作り出されるものであって、シートの外側層の1つを形成する」「接着層」と、本願補正発明の「赤外光反射板」の「いずれか一方又は双方の表面にある」「易接着層」とは、「赤外光反射板」の「いずれか一方」「の表面にある」「所定の層」である点で一致する。

イ 上記アによれば、本願補正発明と引用発明とは、
「基板、コレステリック液晶相を固定してなる少なくとも4つの光反射層X1、X2、X3及びX4、並びに所定の層を有し、
光反射層X1及びX2は互いに隣接し、それぞれの反射中心波長がλ_(1)(nm)であり互いに等しく、且つ互いに逆方向の円偏光を反射し、
光反射層X3及びX4は互いに隣接し、それぞれの反射中心波長がλ_(2)(nm)であり互いに等しく、且つ互いに逆方向の円偏光を反射し、
前記所定の層がいずれか一方の表面にある赤外光反射板。」
である点で一致し、次の点で相違、または、一応相違する。

[相違点1]
「光反射層X1及びX2」並びに「光反射層X3及びX4」について、本願補正発明では、「前記少なくとも4つの光反射層X1、X2、X3及びX4の少なくとも1つの光反射層が、下層の光反射層の表面に塗布された液晶組成物をコレステリック液晶相とし、当該コレステリック液晶相を固定することで形成された層であ」るとされているのに対し、引用発明ではそうであるのか明らかでない点。

[相違点2]
「反射中心波長」である「λ_(1)(nm)」及び「λ_(2)(nm)」について、本願補正発明では、「λ_(1)(nm)が、1010?1070nmの範囲にあり」、「λ_(2)(nm)が、1190?1290nmの範囲にあ」るとされているのに対し、引用発明ではそのように特定されていない点。

[相違点3]
「赤外光反射板」の「いずれか一方の表面にある」「所定の層」について、本願補正発明は、「易接着層」であり、「ポリビニルブチラール樹脂を含」むものであるのに対し、引用発明では「易接着層」であるとは特定されておらず、材料がそうなっていない点。

(4)相違点の判断
ア 上記各相違点について検討する。
a [相違点1]について
(a)引用発明は、「支持シートが準備されて、所望の層が所望の順序で被着され、その際、液晶層はそれぞれの層が被着されるたびに硬化されることによって製造され、ここで、液晶層は塗布により被着され」るものであり、また、各液晶層間に配向層を設けることが記載されていないから、当業者であれば、互いに直接接している2つの液晶層がある態様を把握できるものと認められる。
この認定は、多層コレステリックフィルムを調整する際に、一波長のコレステリック層をコートすると共に重合化し、次にこれの上に直接、例えば異なる波長の第二のコレステリック層をコートし、重合化することは周知である(例えば、特開2001-100045号公報の段落【0011】を参照。)ことからも裏付けられる。
そうすると、引用発明は、本願補正発明の「前記少なくとも4つの光反射層X1、X2、X3及びX4の少なくとも1つの光反射層が、下層の光反射層の表面に塗布された液晶組成物をコレステリック液晶相とし、当該コレステリック液晶相を固定することで形成された層であ」るとの態様を備えているということができる。
したがって、[相違点1]は実質的なものとはいえない。

(b)仮に、[相違点1]が実質的なものであったとしても、引用発明において、上記(a)で示した周知技術を採用して、[相違点1]の構成となすことは当業者が適宜なし得たことである。

b [相違点2]について
引用例の実施例(上記(2)ア(ク))には、反射極大の波長として、1020nm及び1230nmが開示されている(同c)。
また、いずれにせよ、引用発明の「断熱シート」(本願補正発明の「赤外光反射板」に該当。)は、太陽からの熱放射を遮蔽するためのものであると認められる(上記(2)ア(ア)b・c)から、引用発明の「反射極大を示す」波長である「λ_(R)1」及び「λ_(R)2」が、太陽光のエネルギースペクトルに基づいて設定されるべきことが明らかである。
そうすると、引用発明の「λ_(R)1」及び「λ_(R)2」として、[相違点2]のようにすることに格別の困難性はない。

c [相違点3]について
(a)引用発明の「所定の層」に相当する構成である「接着層」は、「接着促進剤の使用によって作り出されるものであ」るから、本願補正発明の「易接着層」に実質的に相当すると解することができる。
また、引用発明の「接着促進剤」は、接触している2つの界面の付着性の改善に用いられることとされており、さらに、支持体が接着促進剤の下塗りによる予備処理に付されることも想定されている(上記(2)ア(イ)b)から、その意味でも、引用発明の上記「接着層」は、本願補正発明の「易接着層」に相当するといえるし、いずれにせよ、「易接着層」とすることに格別の困難性はない。

(b)引用発明を実施するに当たっては、「接着促進剤の使用によって作り出されるものであって、シートの外側層の1つを形成する」「接着層」の材料を、接着される対象に応じて選択すべきことが明らかである。
そして、引用例には、引用発明に係る「断熱シート」(本願補正発明の「赤外光反射板」に該当。)が、建物の窓や自動車のウィンドウに使用できることが記載されている(上記(2)ア(キ)c)から、「断熱シート」の上記「接着層」の接着される対象としてガラスが想定されていることも明らかである。
他方、ガラスとの接着性が優れた材料としてポリビニルブチラール樹脂は周知である(例えば、特開2007-76186号公報の段落【0068】・【0075】、特開2007-153691号公報の段落【0012】を参照。)。
そうすると、引用発明の「接着促進剤の使用によって作り出されるものであって、シートの外側層の1つを形成する」「接着層」の材料として、ポリビニルブチラールを選択することは当業者が適宜なし得たことである。

(c)上記(a)及び(b)によれば、[相違点3]は格別のものとはいえない。

イ 本願補正発明の作用効果は、引用発明、引用例に記載された事項及び上記各周知技術に比して格別のものとはいえない。

ウ 以上によれば、本願補正発明は、引用発明、引用例に記載された事項及び上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)小括
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1?19に係る発明は、平成26年2月12日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?19により特定されるものであるところ、その請求項1を引用する請求項3を引用する請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1に記載したとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、「易接着層」に係る全ての特定事項を省いたものに実質的に相当する。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに実質的に相当する本願補正発明が、上記第2の[理由]2(3)・(4)のとおり、引用発明、引用例に記載された事項及び上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用例に記載された事項及び上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-25 
結審通知日 2015-09-29 
審決日 2015-10-13 
出願番号 特願2010-16025(P2010-16025)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 574- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 慎平本田 博幸西岡 貴央野尻 悠平  
特許庁審判長 西村 仁志
特許庁審判官 清水 康司
山村 浩
発明の名称 赤外光反射板、合わせガラス用積層中間膜シート及びその製造方法、並びに合わせガラス  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ