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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1307982
審判番号 不服2014-26788  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-26 
確定日 2015-11-26 
事件の表示 特願2014- 35930「タッチパネルセンサ、タッチパネルセンサを作製するための積層体、および、タッチパネルセンサの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月29日出願公開、特開2014- 99211〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成21年12月1日(優先権主張平成21年3月31日)に出願された特願2009-273798号の分割出願(特願2011-072931号)の分割出願(特願2013-223715号)の一部を平成26年2月26日に新たな特許出願としたものであって、平成26年5月20日付けで拒絶理由が通知され、同年7月9日付けで手続補正がなされたが、同年9月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成26年12月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成26年12月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された

「【請求項1】
積層体をパターニングすることによって得られるタッチパネルセンサであって、
前記積層体は、
透明な基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の側の面上に設けられ、透光性および導電性を有する第1透明導電層と、
前記第1透明導電層上に設けられ、遮光性および導電性を有する第1被覆導電層と、を備え、
前記基材フィルムは、フィルム本体と、前記フィルム本体の一方の側の面上に設けられたインデックスマッチング膜と、を有し、
前記インデックスマッチング膜は、高屈折率膜および低屈折率膜を含み、
前記タッチパネルセンサは、
前記基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の側の面上に設けられ、前記第1透明導電層をパターニングすることによって得られた第1透明導電体と、
前記第1透明導電体の一部分上に設けられ、前記第1被覆導電層をパターニングすることによって得られた第1取出導電体と、を備え、
前記基材フィルムは、タッチ位置を検出され得る領域に対応するアクティブエリアと、前記アクティブエリアに隣接する非アクティブエリアと、を有し、
前記第1透明導電体は、前記アクティブエリアおよび前記非アクティブエリアの両方において、所定のパターンを有し、
前記第1取出導電体は、前記非アクティブエリアにおいて前記第1透明導電体上に設けられており、
前記インデックスマッチング膜の前記高屈折率膜および前記低屈折率膜は、前記第1透明導電体が設けられている領域と、前記第1透明導電体が設けられていない領域と、の間における光の反射率の差を抑制するよう構成されていることを特徴とするタッチパネルセンサ。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を

「【請求項1】
積層体をパターニングすることによって得られる静電容量方式のタッチパネルセンサであって、
前記積層体は、
透明な基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の側の面上に設けられ、透光性および導電性を有する第1透明導電層と、
前記第1透明導電層上に設けられ、遮光性および導電性を有する第1被覆導電層と、を備え、
前記基材フィルムは、フィルム本体と、前記フィルム本体の一方の側の面上に設けられたインデックスマッチング膜と、を有し、
前記インデックスマッチング膜は、高屈折率膜および低屈折率膜を含み、
前記タッチパネルセンサは、
前記基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の側の面上に設けられ、前記第1透明導電層をパターニングすることによって得られた第1透明導電体と、
前記第1透明導電体の一部分上に設けられ、前記第1被覆導電層をパターニングすることによって得られた第1取出導電体と、を備え、
前記基材フィルムは、タッチ位置を検出され得る領域に対応するアクティブエリアと、前記アクティブエリアに隣接する非アクティブエリアと、を有し、
前記第1透明導電体は、前記アクティブエリアおよび前記非アクティブエリアの両方において、所定のパターンを有し、
前記第1取出導電体は、前記非アクティブエリアにおいて前記第1透明導電体上に設けられており、
前記インデックスマッチング膜の前記高屈折率膜および前記低屈折率膜は、前記第1透明導電体が設けられている領域と、前記第1透明導電体が設けられていない領域と、の間における光の反射率の差を抑制するよう構成されていることを特徴とするタッチパネルセンサ。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正する補正事項を含むものである。(下線は補正事項を示している。)

2.補正の適否
(1)補正の目的要件
本件補正のうち上記補正事項は、本願発明の特許請求の範囲の請求項1に記載された「タッチパネルセンサ」を、「静電容量方式のタッチパネルセンサ」として限定したものであり、特許法第17条の2第5項第2号にいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものと認められ、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合している。
また、特許法17条の2第4項(シフト補正)の規定に違反するものでもない。

(2)独立特許要件

そこで、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下検討する。

ア.補正後の発明

上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で、「補正後の発明」として認定したとおりのものである。

イ.引用発明
(ア)引用例1
原査定の拒絶の理由において引用された、特開平4-160624号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「【特許請求の範囲】
(1)透明電極(11)を設けた透明でフレキシブルな2組のフィルム基板(10)を前記透明電極(11)を対面させて配置したタッチ入力シート(1)を表示パネル(2)上に積層配置してなるタッチ入力表示装置において、
前記フィルム基板(10)の端部に構成される前記透明電極(11)の引き出し端子列(112)の各端子上に金属膜(12)を形成したことを特徴とするタッチ入力表示装置。」(1頁左下欄5?13行)

b.「〔産業上の利用分野〕
本発明は透明なタッチ入力シートを用いたタッチ入力表示装置の改良に関する。
最近、ワープロやパソコンがますます普及するとともに、その小形・軽量化が強く求められており、簡易で信頼性の高い装置内接続技術などの開発が求められている。」(2頁左上欄8?14行)

c.「〔従来の技術〕
入カパネルや表示パネルには各種のものが使用されているが、たとえば、第5図は従来のタッチ入力表示装置の例を示す斜視図である。

・・・(中略)・・・

一般に、入力装置としてはキーボードが最も多く用いられているが、最近はタッチ入力装置も好んで使用されるようになってきた。
図中、1はタッチ入力シートて指タッチあるいはペンタッチの何れかで入力できるようになっている。タッチ入力シート1は、たとえば、ITO膜(In_(2)0_(3)-Sn0_(2))からなる抵抗膜を形成した厚さ125μmの2枚のフィルム基板10.たとえば、ポリエステルフィルムを両抵抗膜が対面するようにドットスペーサを挟んで重ねたもので、抵抗膜の抵抗値は、たとえば、300Ω/□程度である。
なお、一方のフィルム基板10上の抵抗膜の相対する、たとえば、X方向の2辺にX列電極端子か形成され、他方のフィルム基板10上の抵抗膜の相対する、たとえば、Y方向の2辺にはY列電極端子が形成されており、接続ケーブル15により制御回路基板3’の配線端子部30’に接続されている。31は駆動制御回路用のICなどの電子部品である。
いま、図示してない指先あるいは入力ペンてタッチ入力シートlの表面にタッチすると、両抵抗膜が接触し、たとえば、接触抵抗が数100Ω程度の導通状態となり、そのタッチ部の座標が制御回路基板3’の制御回路で検出され、必要に応じて図示した一点鎖線で囲まれた入力表示部上に表示される。なお、接触点の座標の検出、表示の動作の詳細は本発明に直接関係しないので省略する。
また、同様のITO膜を用い指あるいは導電性の材料からなるペンでタッチして、人体容量Cと人体抵抗Rで決まる電流変化から、入力面のタッチ位置を判定する、いわゆる、容量結合方式によるタッチ入力シートも広く使用されている。」(2頁左上欄15行?右下欄12行)

d.「〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、上記従来のタッチ入力表示装置においては、タッチ入力シートlのフィルム基板10の引き出し端子列は透明電極11、たとえば、ITO膜(In_(2)0_(3)-SnO_(2))からなるので、接続導電剤14、たとえば、異方性導電フィルムを介しての接続ケーブル15の配線端子列との接続による接続抵抗は大きくなり、とくに、最近の高密度配線を要する装置においては、時に、数MΩのレベルに達することかあって駆動用のIC31が高価になるばかりでなく、透明な引き出し端子列は見えにくいので、接続ケーブル端子列との位置合わせが困難になって組立て歩留りが低下するなどの問題があり、その解決が必要であった。」(3頁左上欄14行?右上欄8行)

e.「〔作用〕
本発明によれば、タッチ入力シート1のフィルム基板10の引き出し端子列112は、透明電極11の上に金属膜12が被覆して形成されているので、接続ケーブル15の配線端子列との接続による接続抵抗は極めて小さくなり駆動用のIC31は安価なものが使用でき。しかも、接続作業時にタッチ入力シート1の引き出し端子列112(112a)がよく見えるので、高密度配線端子列であっても接続作業は容易てあり、金属膜12の介在により接続強度が上かり信頼性も向上するのである。」(3頁左下欄9?19行)

f.「〔実施例〕
第1図は本発明の実施例を示す図である。
図中、112aは引き出し端子列で、フィルム基板10に形成された透明電極11の引き出し端子部の上に金属膜12、たとえば、厚さ300nmのCr、Cu、AlあるいはAuを端部から10mm程度の長さに被着して構成している。
なお、前記の諸図面で説明したものと同等の部分については同一符号を付し、かつ、同等部分についての説明は省略する。
このように構成したタッチ入力シート1と、ここには図示してない制御回路基板とを、同じく、図示してない接続ケーブルにより導電接続剤、たとえば、異方性導電フィルムを用いて接続したところ、接続する端子列がよく見えるので接続作業が容易で接続抵抗が非常に小さくなり、しかも、接続強度と信頼性も向上した。
第2図は本発明の他の実施例を示す図で、本実施例では引き出し端子列112(112b)の部分を延長して、図示してない制御回路基板の配線端子部への接続ケーブルとして使用するもので、従来のように別個の接続ケーブルを必要としないので部品点数を削減できるだけでなく、一方の接続部分を無くしているので装置全体の信頼性も向上する。」(3頁右下欄1行?4頁左上欄4行)

g.「第4図は本発明実施例の形成工程の例を示す図で、透明電極11の上に金属膜12を形成する具体的な方法の例を主な工程順に図示説明したものである。
工程(1):フィルム基板10、たとえば、厚さ125μmのポリエステルフィルムの上に、透明電極11として、たとえば、厚さ100nmのITO膜をスパッタ法で形成したあと、金属膜12として、たとえば、厚さ300nmのCr膜を連続してスパッタ法で形成する。
工程(2):上記処理基板の上にホトレジスト膜16を塗布乾燥する。
工程(3):上記処理基板に露光マスクを用いて巾300μm、ギャップ30μmのレジストパターン16’が残るように露光・エッチング処理を行う。
工程(4):上記処理基板を、たとえば、硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液で処理してCr膜をエッチング除去したあと、塩化第2鉄と塩酸の混合水溶液で処理してITO膜をエッチング除去する。
工程(5):上記処理基板を適当な溶剤で処理してレジストパターン16’を溶解除去する。
工程(6):上記処理基板の端部から、たとえば、10mm程度の巾でレジスト膜17を塗布して乾燥する。レジスト膜17の形成はスプレイコートでもよいし、全面に塗布したあと通常の露光・エッチング技術を用いて行ってもよい。
工程(7):上記処理基板を、同じく、硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液で処理してCr膜をエッチング除去する。
工程(8):上記処理基板を適当な溶剤で処理してレジスト膜17を溶解除去すれば、本発明のタッチ入力装置用のタッチ入力シートlの引き出し端子列112(112a)が形成される。
なお、上記引き出し端子列112を延長して接続ケーブルを兼ねるように構成した場合も同様にして作製することができる。また、上記実施例では金属膜12としてCr膜を用いたが、Al、Au、Cu、TiやAu/Ti、Au/Mo、Al/Cuなどの複合膜を用いてもよいことは言うまでもない。
以上述べた実施例は幾つかの例を示したものであり、本発明の趣旨に添うものである限り、使用する素材や構成、製造プロセスなどは適宜好ましいもの、あるいはその組み合わせを用いてもよいことは勿論である。」(4頁右上欄3?右下欄6行)

上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、

(a)上記b.によれば、引用利1には、タッチ入力シートが記載され、また、上記f.には、「なお、前記の諸図面で説明したものと同等の部分については同一符号を付し、かつ、同等部分についての説明は省略する。」と記載され、そして、上記c.には、タッチ入力シートは、指タッチあるいはペンタッチの何れかで入力できるようになっていることが記載されている。
したがって、引用例1には、指タッチあるいはペンタッチの何れかで入力できるようになっているタッチ入力シートが記載されているといえる。

(b)上記a.の記載によれば、タッチ入力シートは、透明電極(11)を設けた透明でフレキシブルな2組のフィルム基板(10)を前記透明電極(11)を対面させて配置したものである。

(c)上記a.、e.、f.、及び第1図の記載によれば、タッチ入力シート1の透明なフィルム基板10の引き出し端子列112は、透明電極11の一部の上に金属膜12が被覆して形成されている。

(d)上記g.、及び第4図の記載によれば、フィルム基板10上に、透明電極11として、厚さ100nmのITO膜をスパッタ法で形成し、金属膜12として、厚さ300nmのCr膜を連続してスパッタ法で形成した処理基板を、露光マスクを用いて引き出し端子列に対応したレジストパターンを形成しエッチング処理して、フィルム基板10に上記引き出し端子列112を形成している。
したがって、引用例1には、上記引き出し端子列は、フィルム基板上に、透明電極となるITO膜と、該ITO膜上に金属膜となるCr膜を配置した処理基板を、露光マスクによって端子列のパターンとなるように形成したことが記載されているといえる。

(e)第1図の記載によれば、フィルム基板10には「入力表示部」という領域が一点鎖線で区切られており、この領域がタッチ入力される領域と認められる。
また、第1図の記載によれば、引き出し端子列112は該「入力表示部」以外の領域に形成されている。
したがって、引用例1には、フィルム基板にはタッチ入力される領域である入力表示部があり、引き出し端子列は該入力表示部以外の領域に形成されていることが記載されているといえる。

したがって、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。

「指タッチあるいはペンタッチの何れかで入力できるようになっているタッチ入力シートであって、
上記タッチ入力シートは、透明電極を設けた透明でフレキシブルな2組のフィルム基板を前記透明電極を対面させて配置したものであり、
上記タッチ入力シートの透明な前記フィルム基板の引き出し端子列は、前記透明電極の一部の上に金属膜が被覆して形成されており、
上記引き出し端子列は、フィルム基板上に、前記透明電極となるITO膜と、該ITO膜上に前記金属膜となるCr膜を配置した処理基板を、露光マスクによって端子列のパターンとなるように形成したものであり、
上記フィルム基板にはタッチ入力される領域である入力表示部があり、
上記引き出し端子列は前記入力表示部以外の領域に形成されている、
タッチ入力シート。」

(イ)引用例2
原査定の拒絶の理由において引用された、特許第4055019号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「【技術分野】
【0001】
本発明は、透明面状体及び透明タッチスイッチに関する。」(3頁40?42行)

b.「【背景技術】
【0002】
入力位置を検出するための透明タッチスイッチの構成は、従来から種々検討されているが、一例として静電容量式の透明タッチスイッチが知られている。例えば、特許文献1に開示された透明タッチスイッチは、それぞれ所定のパターン形状を有する透明導電膜を備えた一対の透明面状体の間に誘電体層が介在されて構成されており、指などが操作面に触れると、人体を介して接地されることによる静電容量の変化を利用して、タッチ位置を検出することができる。
【0003】
この透明タッチスイッチは、液晶表示装置やCRTなどの表面に装着して用いられるが、透明面状体に形成された透明導電膜のパターン形状が目立ってしまい、視認性の低下を招いていた。」(3頁43行?4頁4行)

c.「【0076】
図9は、本発明に係る透明タッチスイッチの第2実施形態を示す概略断面図である。この透明タッチスイッチ101は、静電容量式のタッチスイッチであり、透明基板11にアンダーコート層13を介して透明導電膜12が形成された第1の透明面状体1と、透明基板21にアンダーコート層23を介して透明導電膜22が形成された第2の透明面状体2とを備えている。第1の透明面状体1と第2の透明面状体2とは、それぞれの透明導電膜12,22が対向するようにして、粘着層15を介して貼着されている。
【0077】
透明基板11,21は、基材層111,211の表裏面にハードコート層112,112;212,212を備えて構成されている。基材層111,211は、透明性が高い材料からなることが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネイト(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアクリル(PAC)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂、シロキサン架橋型アクリルシリコン樹脂などの可撓性フィルムやこれら2種以上の積層体、或いは、ガラス板などを挙げることができる。基材層111,211の厚みは、20?500μm程度が好ましく、ハードコート層112,212の厚みは、3?5μm程度が好ましい。基材層111,211は、剛性を付与するために支持体を貼着してもよい。
【0078】
ハードコート層112,212は、耐久性及びアンダーコート層13,23の密着性を高めるために、基材層111,211の表裏面に設けることが好ましいが、いずれか一方であってもよく、更には、ハードコート層112,212を全く設けずに透明基板11,21を構成することも可能である。
【0079】
アンダーコート層13,23は、それぞれ低屈折率層13a,23aと、低屈折率層13a,23aよりも光屈折率が高い高屈折率層13b,23bとの積層体から構成されており、低屈折率層13a,23a側に透明導電膜12,22が形成されるように配置され、透明性を向上させている。
【0080】
アンダーコート層13,23の積層体を構成する各層の材料としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化錫などを例示することができ、好ましい組み合わせとして、酸化錫-酸化ハフニウム系、酸化珪素-酸化錫系、酸化亜鉛-酸化錫系、酸化錫-酸化チタン系などを挙げることができる。視認性向上の観点から特に好ましいのは、低屈折率層13a,23aが酸化珪素(SiOn、n=1.7?2.0)からなり、高屈折率層13b,23bがシリコン錫酸化物(silicon-tin oxide)からなる組み合わせである。アンダーコート層13,23は、スパッタリング法、抵抗蒸着法、電子ビーム蒸着法などにより形成することができる。
【0081】
後述する本発明者らのシミュレーション結果によれば、高屈折率層13b,23bの厚みは、低屈折率層13a,23aの厚みよりも小さいことが好ましく、これによって、アンダーコート層13,23の表面に形成した透明導電膜12,22のパターン形状を目立ちにくくして、視認性を高めることができる。高屈折率層13b,23bの厚みは、10?25nmであることが好ましく、この場合において、低屈折率層13a,23aの厚みは、25?45nmであることが好ましい。
【0082】
透明導電膜12,22の材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、
カリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛や、酸化亜鉛-酸化錫系、酸化インジウム-酸化錫系、酸化亜鉛-酸化インジウム-酸化マグネシウム系などの金属酸化物を例示することができ、これら2種以上を複合して形成してもよい。透明導電膜12,22の形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などのPVD法や、CVD法、塗工法、印刷法などを例示することができる。
【0083】
透明導電膜12,22は、上述の第1実施形態と同様に図2及び図3に示すように、平行に延びる複数の帯状導電部12a,22aの集合体としてそれぞれ形成されており、各透明導電膜12,22の帯状導電部12a,22aは、互いに直交するように配置されている。透明導電膜12,22は、導電性インクなどからなる引き廻し回路(図示せず)を介して外部の駆動回路(図示せず)に接続される。透明導電膜12,22のパターン形状は、本実施形態のものに限定されず、指などの接触ポイントを検出可能である限り、任意の形状とすることが可能である。例えば、図4及び図5に示すように、透明導電膜12,22を、複数の菱形状導電部12b,22bが直線状に連結された構成とし、各透明導電膜12,22における菱形状導電部12b,22bの連結方向が互いに直交し、且つ、平面視において上下の菱形状導電部12b,22bが重なり合わないように配置してもよい。
【0084】
透明導電膜12,22のパターニングは、透明基板11,21にアンダーコート層13,23を介してそれぞれ形成された透明導電膜12,22の表面に、所望のパターン形状を有するマスク部を形成して露出部分を酸液などでエッチング除去した後、アルカリ液などによりマスク部を溶解させて、行うことができる。このように透明導電膜12,22のパターニングをエッチングにより行う方法は、不要な透明導電膜12,22は除去できる一方、アンダーコート層13,23は全て残存させることができる。但し、パターニングの方法はこれに限定されるものではなく、他の公知の方法で行ってもよい。
【0085】
透明導電膜12,22の厚みは、通常10?50nm程度である。透明導電膜12,22のパターン形状を目立ちにくくして視認性を向上させる観点からは、透明導電膜12,22の厚みはできる限り小さいことが好ましいが、薄くなりすぎると膜の良好な結晶性や必要な耐久性・耐候性を得ることが困難になることから、好ましくは10?25nm程度である。
【0086】
第1の透明面状体1と第2の透明面状体2との貼着は、空気層が介在しないように、粘着層15を全体に介在させて行うことが好ましい。粘着層15は、エポキシ系やアクリル系など、一般的な透明接着剤を用いることができ、ノルボルネン系樹脂の透明性フィルムからなる芯材を含むものであってもよい。粘着層15の厚みは、通常25?75μmであり、屈折率は、1.4?1.6である。」(12頁3行?13頁37行)

d.「【0102】
(試験1)
まず、透明導電膜の最適な厚みを検討するため、透明基板にアンダーコート層を介さずに直接透明導電膜を形成した構成において、透明導電膜が形成された部分と、透明導電膜が形成されていない部分との反射率(%)の差を、シミュレーションにより求めた。
【0103】
透明基板は、PETフィルムからなる基材層(厚み:188μm、屈折率:1.65)の表裏面にハードコート層(各厚み:5μm、屈折率:1.52)が形成されたものとし、透明導電膜は、ITO膜(屈折率:1.95)とした。また、透明基板における透明導電膜側には、アクリル系樹脂からなる粘着層(厚み:25μm、屈折率:1.52)を形成した。反射率の算出は、サイバネットシステム(株)製薄膜設計ソフトウェア(OPTAS-FILM)を用いて行った(ただし、PET層等での吸収は無いものと仮定して計算している)。この構成において、透明導電膜の厚みをパラメータとして算出した反射率(%)の差を図14に示す。
【0104】
透明導電膜のパターン形状の目立ちにくさは、透明導電膜が形成された部分と形成されていない部分との反射率差と相関性を有しており、可視領域全体(波長:約400?800nm)における反射率差の絶対値及び変化率が小さいほど、パターン形状が目立ちにくく、視認性を良好にすることができる。図14に示すように、反射率差の絶対値及び変化率は、いずれも透明導電膜の厚みが薄くなるほど小さくなっており、視認性の観点からは透明導電膜の厚みを小さくするほど良いことがわかる。但し、透明導電膜の結晶性や耐久性・耐候性を高めるためには、ある程度の厚みが必要になることから、透明導電膜の厚みは、10?25nmが好ましく、約15nmとするのが最適である。
【0105】
(試験2)
次に、透明基板と透明導電膜との間にアンダーコート層が形成された構成(図9参照)において、アンダーコート層を構成する低屈折率層及び高屈折率層の最適厚みを検討した。透明基板の厚み・屈折率及び透明導電膜の屈折率は、試験1と同様とし、透明導電膜の厚みは、試験1の結果から15nmとした。また、透明導電膜の表面側には粘着層を形成し、この粘着層の厚み及び屈折率も、試験1と同様とした。アンダーコート層は、屈折率が1.43の酸化珪素からなる低屈折率層と、屈折率が1.7のシリコン錫酸化物からなる高屈折率層との積層体とした。
【0106】
この構成において、まず、低屈折率層の厚みを30nmに設定し、高屈折率層の厚みをパラメータとして、透明導電膜が形成されていない部分との反射率の差を、シミュレーションにより求めた。この結果を図15に示す。
【0107】
図15に示すように、高屈折率層の厚みが0の場合(即ち、高屈折率層が存在しない場合)には、可視領域の低波長側(約400?500nm)において反射率差の絶対値及び変化率が大きくなっており、良好な視認性が得られていない。これに対し、高屈折率層の厚みが10?20nmの場合には、可視領域の全体において反射率差の絶対値及び変化率
がいずれも小さく、良好な視認性が得られている。高屈折率層の厚みが、低屈折率層の厚みである30nmよりも大きくなると、反射率差の絶対値及び変化率は再び増加する傾向にあり、視認性が悪化する傾向にある。
【0108】
次に、高屈折率層の厚みを15nmに設定し、低屈折率層の厚みをパラメータとして、透明導電膜が形成されていない部分との反射率の差を、シミュレーションにより求めた。この結果を図16に示す。
【0109】
図16に示すように、低高屈折率層の厚みが0の場合(即ち、低屈折率層が存在しない場合)には、可視領域の低波長側(約400?500nm)において反射率差の絶対値及び変化率が大きくなっており、良好な視認性が得られていない。これに対し、低屈折率層の厚みが大きくなるにつれて、反射率差の絶対値及び変化率は小さくなる傾向にあり、低屈折率層の厚みが、高屈折率層の厚みである15nmよりも大きくなると、反射率差の絶対値及び変化率はいずれも十分小さくなり、良好な視認性が得られている。低屈折率層の厚みが、50nmになると、反射率差の絶対値は小さい一方で、可視領域の低波長側における反射率差の変化率が大きくなり、視認性が徐々に悪化する傾向にある。
【0110】
このようなシミュレーション結果から、アンダーコート層における高屈折率層の厚みは、低屈折率層の厚みよりも小さいことが好ましいことがわかった。より具体的には、高屈折率層の厚みは、10?25nmであることが好ましく、この場合において、低屈折率層の厚みは、25?45nmであることが好ましい。
【0111】
このシミュレーション結果に基づき、高屈折率層の厚みを15nm、低屈折率層の厚みを35nmとして実際に透明面状体を試作したところ、導電層のパターン形状を視認することができず良好な視認性が得られており、上記シミュレーション結果の有効性を確認した。
【0112】
(試験3)
試験2で求めたアンダーコート層における低屈折率層及び高屈折率層の好ましい厚みは、アンダーコート層以外の他の層の厚みなどが変化しても、ほぼ同様の傾向にある。例えば、試験2において透明導電膜の厚みが大きくなると、低屈折率層及び高屈折率層の好ましい厚みの数値範囲はほとんど変化しないが、好ましい条件から外れた場合の視認性の悪化がより顕著となる。一例として、試験2の構成(低屈折率層の厚み:30nm)において、透明導電膜の厚みを15nmから20nmに変えた場合に、高屈折率層の厚みをパラメータとした反射率差を図17に示す。
【0113】
また、透明基板において基材層の表裏面に形成したハードコート層の一方又は双方を設けない構成の場合には、アンダーコート層における高屈折率層及び低屈折率層の好ましい厚み範囲は、試験2における数値範囲よりも拡がる傾向にあり、例えば、高屈折率層を設けずに低屈折率層のみからアンダーコート層を構成した場合でも、ある程度の視認性を得ることができる。
」(16頁10行?17頁41行)


上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用例2には、次の技術(以下、「引用例2記載の技術」という。)が記載されていると認められる。

「透明電極膜を備えた透明基板からなる静電容量式のタッチスイッチにおいて、透明基板の透明電極膜が形成される側の面上に、高屈折率層および低屈折率層を含むアンダーコート層を設け、該アンダーコート層を介して透明電極膜が形成されることで、該アンダーコート層の前記高屈折率層および前記低屈折率層によって、透明基板の透明電極膜が設けられている領域と、透明電極膜が設けられていない領域と、の間における光の反射率の差を抑制すること。」

ウ.対比・判断

補正後の発明と引用発明1とを対比する。

a.引用発明1の「処理基板」は「フィルム基板上に、前記透明電極となるITO膜と、該ITO膜上に前記金属膜となるCr膜を配置した」ものであるから積層体といえ、「フィルム基板」は透明なものであり、また、「ITO膜」は「透明電極」となるものであるから透明であり導電性を有するものであり、さらに、「Cr膜」のCrが遮光性があり導電性あることは技術常識あるから、引用発明1の「フィルム基板」、「ITO膜」及び「Cr膜」は、補正後の発明の「基材フィルム」、「第1透明導電層」、及び「第1被覆導電層」に相当する。
以上を踏まえると、引用発明1の「処理基板」は、補正後の発明の「透明な基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の側の面上に設けられ、透光性および導電性を有する第1透明導電層と、前記第1透明導電層上に設けられ、透光性および導電性を有する第1被覆導電層と、を備え」という構成を有する「積層体」に相当する。

b.また、引用発明1の「タッチ入力シート」は「指タッチあるいはペンタッチの何れかで入力できる」ものであり、また、該「タッチ入力シート」の「引き出し端子列」は、前記「処理基板」を「露光マスクによって端子列のパターンとなるように形成した」ものであり、「処理基板」をパターニングしたものといえ、引用発明1の「タッチ入力シート」と、補正後の発明の「積層体をパターニングすることによって得られる静電容量方式のタッチパネルセンサ」とは、「積層体をパターニングすることによって得られるタッチパネルセンサ」で共通する。

c.引用発明1の「フィルム基板」の「入力表示部」は、「タッチ入力される領域」でありタッチを検出され得る領域といえ、また、該領域に対して「アクティブエリア」と称し、「タッチ入力される領域」に隣接されるタッチ入力されない領域に対して「非アクティブエリア」と称することは任意であるから、引用発明1の「フィルム基板」は、補正後の発明の「基材フィルムは、タッチ位置を検出され得る領域に対応するアクティブエリアと、前記アクティブエリアに隣接する非アクティブエリアと、を有し」に相当する構成を有しているといえる。

d.さらに、引用発明1の「タッチ入力シート」の「引き出し端子列」は、「フィルム基板」と「透明電極となるITO膜」と「金属膜となるCr膜」とからなる「処理基板」をパターニングし、「入力表示部以外の領域に」「透明電極の一部の上に金属膜が被覆して形成されて」いるものであるから、「透明電極となるITO膜」及び「金属膜となるCr膜」は「入力表示部以外の領域」においてはパターニングされ、「透明電極」、及び「金属膜」となっているといえ、引用発明1の「透明電極」と、補正後の発明の「 第1透明導電体」は、「透明導電体は、前記非アクティブエリアに、所定のパターンを有し」という構成を有する点で共通し、また、引用発明1の「金属膜」は、補正後の発明の「前記非アクティブエリアにおいて前記透明導電体上に設けられ」という構成を有する「第1取出導電体」に相当する。
そして、引用発明1の「タッチ入力シート」と、補正後の発明の「前記基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の側の面上に設けられ、前記第1透明導電層をパターニングすることによって得られた第1透明導電体と、前記第1透明導電体の一部分上に設けられ、前記第1被覆導電層をパターニングすることによって得られた第1取出導電体と、を備え」という構成を有する「タッチパネルセンサ」は、「前記基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の側の面上に設けられ、前記第1透明導電層をパターニングすることによって得られた透明導電体と、前記透明導電体の一部分上に設けられ、前記第1被覆導電層をパターニングすることによって得られた第1取出導電体と、を備え」という構成を有する「タッチパネルセンサ」である点で共通する。

したがって、補正後の発明と引用発明1とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)

「積層体をパターニングすることによって得られるタッチパネルセンサであって、
前記積層体は、
透明な基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の側の面上に設けられ、透光性および導電性を有する第1透明導電層と、
前記第1透明導電層上に設けられ、遮光性および導電性を有する第1被覆導電層と、を備え、
前記基材フィルムは、フィルム本体を有し、
前記タッチパネルセンサは、
前記基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の側の面上に設けられ、前記透明導電層をパターニングすることによって得られた透明導電体と、
前記透明導電体の一部分上に設けられ、前記第1被覆導電層をパターニングすることによって得られた第1取出導電体と、を備え、
前記基材フィルムは、タッチ位置を検出され得る領域に対応するアクティブエリアと、前記アクティブエリアに隣接する非アクティブエリアと、を有し、
前記透明導電体は、前記非アクティブエリアに、所定のパターンを有し、
前記第1取出導電体は、前記非アクティブエリアにおいて前記透明導電体上に設けられている、
タッチパネルセンサ。」


(相違点1)上記タッチパネルが、補正後の発明では、静電容量方式のタッチパネルセンサであるのに対して、引用発明1では、タッチ入力シートが静電容量方式とは特定されていない点。

(相違点2)上記基材フィルムが、補正後の発明では、前記フィルム本体の一方の側の面上に設けられたインデックスマッチング膜を有し、インデックスマッチング膜は、高屈折率膜および低屈折率膜を含み、 インデックスマッチング膜の前記高屈折率膜および前記低屈折率膜は、前記第1透明導電体が設けられている領域と、前記第1透明導電体が設けられていない領域と、の間における光の反射率の差を抑制するよう構成されているのに対して、引用発明1では、フィルム基板はインデックスマッチング膜を有していない点。

(相違点3)前記透明導電体が、補正後の発明では、前記アクティブエリアおよび前記非アクティブエリアの両方において、所定のパターンを有しているのに対して、引用発明1では、透明電極は前記非アクティブエリアに所定のパターンを有しているが、前記アクティブエリアに所定のパターンを有しているとは限らない(引用例1には、透明電極がアクティブエリア(タッチ入力される領域)に所定のパターンを有していることの記載がない。)点。

以下、上記各相違点について検討する。

(相違点1)について
引用例1の記載(公報3頁左上欄14行?右上欄8行)によれば、引用発明1のものは、タッチ入力シートの引き出し端子列が透明なITO膜で形成されることで見えにくいことを課題とするものであり、透明なITO膜を用いて引き出し端子列が形成されるタッチ入力シートであれば、タッチ入力シートの方式にかかわらず適用が可能であることは明らかである。
一方、静電容量方式のタッチパネルセンサであって「透明なITO膜を用いて引き出し端子列が形成されるタッチ入力シート」に該当するもの自体は本願出願前に周知であり(引用例2の背景技術の欄に記載されている透明タッチスイッチもこれに該当する。)、引用発明1のタッチ入力シートを該周知の静電容量方式のものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2)、(相違点3)について
上記(相違点1)についての欄で言及した、周知の「静電容量方式のタッチパネルセンサであって透明なITO膜を用いて引き出し端子列が形成されるタッチ入力シート」としては、引用例2の背景技術の欄の記載からも明らかなように、「透明電極がアクティブエリア(タッチ入力されるエリア)にも所定のパターンを有しているもの」が広く知られており、引用発明1のタッチ入力シートをそのような「透明電極がアクティブエリア(タッチ入力されるエリア)にも所定のパターンを有しているもの」にできない理由はない。
したがって、引用発明1におけるタッチ入力シートを、上記(相違点1)についての欄で述べたところに従って静電容量方式とするにあたり、「透明電極がアクティブエリア(タッチ入力されるエリア)にも所定のパターンを有しているもの」とすることも、当業者が容易になし得たことである。
そして、そのようにする場合には、引用例2の背景技術の欄に記載されるような「基材フィルムの透明導電体が設けられている領域のパターンが目立ってしまう」という課題が当然に生じるから、そこに上記引用例2記載の技術を採用することは当業者が容易に推考し得たことである。
以上のことは、引用発明1において相違点2、3に係る補正後の発明の構成を採用することが、当業者にとって容易であったことを意味している。


3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである


第3.本願発明について

1.本願発明

平成26年12月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。


2.引用発明

引用発明等は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ.引用発明」の項で「引用発明として」認定したとおりである。


3.対比・判断

そこで、本願発明と引用発明1を対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ.対比・判断」の項で検討したとおり、上記引用例1に記載された発明及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明することができたものである。


4.むすび

以上のとおり、本願発明は、上記1引用例に記載された発明及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものと認められるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-29 
結審通知日 2015-10-02 
審決日 2015-10-15 
出願番号 特願2014-35930(P2014-35930)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 山澤 宏
山田 正文
発明の名称 タッチパネルセンサ、タッチパネルセンサを作製するための積層体、および、タッチパネルセンサの製造方法  
代理人 永井 浩之  
代理人 岡村 和郎  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 堀田 幸裕  

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