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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1307984
審判番号 不服2015-1442  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-26 
確定日 2015-11-26 
事件の表示 特願2010-216192「宅配物荷受けシステム及び宅配ボックス装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月12日出願公開、特開2012- 71912〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成22年9月27日の出願であって、平成26年2月21日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して平成26年4月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年10月22日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年1月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。


第2 平成27年1月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年1月26日付けの手続補正を却下する。
[理由]
〔1〕本件補正の内容
平成27年1月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年4月28日に提出された手続補正書により補正された)下記の(A)に示す請求項1ないし7を、下記の(B)に示す請求項1ないし7と補正するものである。
(A)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし7
「 【請求項1】
宅配物を荷受するための宅配物荷受けシステムであって、多数の異なる公衆の場所に設置される不特定多数の人が利用可能な公衆利用の宅配ボックス装置と、管理サーバを備え、多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置と前記管理サーバを通信ネットワークを介して接続し、
前記管理サーバは、荷受認証情報作成部と、通信部と、これらを制御する制御部と、を備え、
宅配物の配達に先立って前記管理サーバから前記通信ネットワークを介して前記サーバに接続される荷受人端末装置に、宅配物の配達情報と多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置の情報を送信し、
前記管理サーバから前記荷受人端末装置に送信された多数の公衆利用の宅配ボックス装置の情報に基づいて、荷受人により指定された前記公衆利用の宅配ボックス装置の指定情報が前記荷受人端末装置から前記管理サーバに送信されることで宅配業者による配達先の前記公衆利用の宅配ボックス装置が決定され、
前記指定された前記公衆利用の宅配ボックス装置の宅配物収納部のうち前記宅配業者により宅配物が収納された前記宅配物収納部の番号が前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から前記管理サーバに送信され、
前記管理サーバは、宅配物を収納した前記宅配物収納部の前記番号を受信すると、前記荷受認証情報作成部で荷受認証情報を作成して前記荷受人端末装置に前記荷受認証情報と前記番号とを送信することを特徴とする宅配物荷受けシステム。
【請求項2】
前記荷受認証情報を前記公衆利用の宅配ボックス装置に設けた認証部で認証することで、前記公衆利用の宅配ボックス装置に宅配物が格納される個別の宅配物収納部の施錠装置を開錠すると共に、宅配物の荷受情報を前記公衆利用の宅配ボックス装置の通信部から前記管理サーバに送信することを特徴とする請求項1記載の宅配物荷受けシステム。
【請求項3】
多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置と前記荷受人端末装置と前記管理サーバと宅配業者端末装置を前記通信ネットワークを介して接続し、
宅配物の配達に先立って前記管理サーバから前記荷受人端末装置に、宅配物の配達情報と前記公衆利用の宅配ボックス装置の多数の設置場所情報を送信し、
送信された多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置の設置場所情報に基づいて荷受人により指定された指定配達場所情報を前記荷受人端末装置から前記管理サーバに送信し、
前記管理サーバから宅配業者端末装置に、指定配達場所情報を送信し、
指定配達場所情報で特定される指定配達場所に設置された前記公衆利用の宅配ボックス装置に備わる複数の宅配物収納部のうち、宅配業者により宅配物が格納される個別の宅配物収納部の情報を、前記管理サーバ又は前記宅配ボックス装置又は前記宅配業者端末装置から前記荷受人端末装置に送信することを特徴とする請求項2記載の宅配物荷受けシステム。
【請求項4】
宅配物を荷受するための宅配物荷受けシステムであって、多数の異なる公衆の場所に設置される不特定多数の人が利用可能な多数の公衆利用の宅配ボックス装置と、管理サーバを備え、多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置と前記管理サーバを通信ネットワークを介して接続し、
前記管理サーバは、荷受認証情報作成部と、通信部と、これらを制御する制御部と、を備え、
宅配物の配達に先立って前記管理サーバから前記通信ネットワークを介して前記サーバに接続される荷受人端末装置に、宅配物の配達情報と多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置の情報を送信し、
送信された多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置の情報及び荷受人のプライベートな受取先の中から荷受人により指定された配達先情報が前記荷受人端末装置から前記管理サーバに送信されることで宅配業者による配達先が決定され、
前記指定された前記公衆利用の宅配ボックス装置の宅配物収納部のうち前記宅配業者により宅配物が収納された前記宅配物収納部の番号が前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から前記管理サーバに送信され、前記管理サーバは、宅配物を収納した前記宅配物収納部の前記番号を受信すると、前記荷受認証情報作成部で荷受認証情報を作成して前記荷受人端末装置に前記荷受認証情報と前記番号とを送信することを特徴とする宅配物荷受けシステム。
【請求項5】
前記荷受認証情報を前記公衆利用の宅配ボックス装置に設けた認証部で認証することで、前記公衆利用の宅配ボックス装置に宅配物が格納される個別の宅配物収納部の施錠装置を開錠すると共に、宅配物の荷受情報を前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から前記管理サーバに送信することを特徴とする請求項4記載の宅配物荷受けシステム。
【請求項6】
多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置と前記荷受人端末装置と前記管理サーバと宅配業者端末装置を前記通信ネットワークを介して接続し、
宅配物の配達に先立って前記管理サーバから前記荷受人端末装置に、宅配物の配達情報と前記公衆利用の宅配ボックス装置の多数の設置場所情報を送信し、
送信された多数の前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置の設置場所情報及び荷受人のプライベートな受取先の中から荷受人により指定された配達先情報を前記荷受人端末装置から前記管理サーバに送信し、
前記管理サーバから前記宅配業者端末装置に指定された配達先情報を送信し、
前記荷受人により指定された配達先情報が、多数の前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置のうち任意の場所の前記公衆利用の宅配ボックス装置を配達先として指定される指定配達場所情報である場合、この指定配達場所情報で特定される指定配達場所に設置された前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置に備わる複数の宅配物収納部のうち、宅配業者により宅配物が格納される個別の前記宅配物収納部の情報を、前記管理サーバ又は前記宅配ボックス装置又は前記宅配業者端末装置から前記荷受人端末装置に送信することを特徴とする請求項5記載の宅配物荷受けシステム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに用いる宅配ボックス装置。」

(B)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし7
「 【請求項1】
宅配物を荷受するための宅配物荷受けシステムであって、多数の異なる公衆の場所に設置される不特定多数の人が利用可能な公衆利用の宅配ボックス装置と、管理サーバを備え、多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置と前記管理サーバを通信ネットワークを介して接続し、
前記管理サーバは、荷受認証情報作成部と、通信部と、これらを制御する制御部と、を備え、
宅配物の配達に先立って前記管理サーバから前記通信ネットワークを介して前記サーバに接続される荷受人端末装置に、宅配物の配達情報と多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置の情報を送信し、
前記管理サーバから前記荷受人端末装置に送信された多数の公衆利用の宅配ボックス装置の情報に基づいて、荷受人により指定された前記公衆利用の宅配ボックス装置の指定情報が前記荷受人端末装置から前記管理サーバに送信されることで宅配業者による配達先の前記公衆利用の宅配ボックス装置が決定され、
前記指定された前記公衆利用の宅配ボックス装置の宅配物収納部のうち前記宅配業者により宅配物が収納された前記宅配物収納部の番号が前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から前記管理サーバに送信され、
前記管理サーバは、宅配物を収納した前記宅配物収納部の前記番号を受信すると、前記荷受認証情報作成部で荷受認証情報を作成して前記荷受人端末装置に前記荷受認証情報と前記番号とを送信するものであって、
前記宅配業者により宅配物が収納された前記宅配物収納部の番号が前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から前記管理サーバに送信される前においては、荷受人が配達を希望する前記荷受用宅配ボックス装置を変更できるようにすることを特徴とする宅配物荷受けシステム。
【請求項2】
前記荷受認証情報を前記公衆利用の宅配ボックス装置に設けた認証部で認証することで、前記公衆利用の宅配ボックス装置に宅配物が格納される個別の宅配物収納部の施錠装置を開錠すると共に、宅配物の荷受情報を前記公衆利用の宅配ボックス装置の通信部から前記管理サーバに送信することを特徴とする請求項1記載の宅配物荷受けシステム。
【請求項3】
多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置と前記荷受人端末装置と前記管理サーバと宅配業者端末装置を前記通信ネットワークを介して接続し、
宅配物の配達に先立って前記管理サーバから前記荷受人端末装置に、宅配物の配達情報と前記公衆利用の宅配ボックス装置の多数の設置場所情報を送信し、
送信された多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置の設置場所情報に基づいて荷受人により指定された指定配達場所情報を前記荷受人端末装置から前記管理サーバに送信し、
前記管理サーバから宅配業者端末装置に、指定配達場所情報を送信し、
指定配達場所情報で特定される指定配達場所に設置された前記公衆利用の宅配ボックス装置に備わる複数の宅配物収納部のうち、宅配業者により宅配物が格納される個別の宅配物収納部の情報を、前記管理サーバから前記荷受人端末装置に送信することを特徴とする請求項2記載の宅配物荷受けシステム。
【請求項4】
宅配物を荷受するための宅配物荷受けシステムであって、多数の異なる公衆の場所に設置される不特定多数の人が利用可能な多数の公衆利用の宅配ボックス装置と、管理サーバを備え、多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置と前記管理サーバを通信ネットワークを介して接続し、
前記管理サーバは、荷受認証情報作成部と、通信部と、これらを制御する制御部と、を備え、
宅配物の配達に先立って前記管理サーバから前記通信ネットワークを介して前記サーバに接続される荷受人端末装置に、宅配物の配達情報と多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置の情報を送信し、
送信された多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置の情報及び荷受人のプライベートな受取先の中から荷受人により指定された配達先情報が前記荷受人端末装置から前記管理サーバに送信されることで宅配業者による配達先が決定され、
前記指定された前記公衆利用の宅配ボックス装置の宅配物収納部のうち前記宅配業者により宅配物が収納された前記宅配物収納部の番号が前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から前記管理サーバに送信され、
前記管理サーバは、宅配物を収納した前記宅配物収納部の前記番号を受信すると、前記荷受認証情報作成部で荷受認証情報を作成して前記荷受人端末装置に前記荷受認証情報と前記番号とを送信するものであって、
前記宅配業者により宅配物が収納された前記宅配物収納部の番号が前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から前記管理サーバに送信される前においては、荷受人が配達を希望する前記荷受用宅配ボックス装置を変更できるようにすることを特徴とする宅配物荷受けシステム。
【請求項5】
前記荷受認証情報を前記公衆利用の宅配ボックス装置に設けた認証部で認証することで、前記公衆利用の宅配ボックス装置に宅配物が格納される個別の宅配物収納部の施錠装置を開錠すると共に、宅配物の荷受情報を前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から前記管理サーバに送信することを特徴とする請求項4記載の宅配物荷受けシステム。
【請求項6】
多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置と前記荷受人端末装置と前記管理サーバと宅配業者端末装置を前記通信ネットワークを介して接続し、
宅配物の配達に先立って前記管理サーバから前記荷受人端末装置に、宅配物の配達情報と前記公衆利用の宅配ボックス装置の多数の設置場所情報を送信し、
送信された多数の前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置の設置場所情報及び荷受人のプライベートな受取先の中から荷受人により指定された配達先情報を前記荷受人端末装置から前記管理サーバに送信し、
前記管理サーバから前記宅配業者端末装置に指定された配達先情報を送信し、
前記荷受人により指定された配達先情報が、多数の前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置のうち任意の場所の前記公衆利用の宅配ボックス装置を配達先として指定される指定配達場所情報である場合、この指定配達場所情報で特定される指定配達場所に設置された前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置に備わる複数の宅配物収納部のうち、宅配業者により宅配物が格納される個別の前記宅配物収納部の情報を、前記管理サーバから前記荷受人端末装置に送信することを特徴とする請求項5記載の宅配物荷受けシステム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに用いる宅配ボックス装置。」
(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付したものである。)

〔2〕本件補正の目的要件について
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明における発明特定事項である「管理サーバ」について、「前記宅配業者により宅配物が収納された前記宅配物収納部の番号が前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から前記管理サーバに送信される前においては、荷受人が配達を希望する前記荷受用宅配ボックス装置を変更できるようにする」という事項を追加し、管理サーバの機能を限定するものといえる。
よって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

〔3〕本願補正発明の独立特許要件について
1.本願補正発明
本願補正発明は、平成27年1月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、上記〔1〕(B)の【請求項1】に示したとおりのものである。

2.引用刊行物
(1)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である特開2002-251436号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
a)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の配達システムは、配達先として受取人の住所が指定されるので、送り主の側からすれば便利であるが、受取人の都合は一切考慮されていないのが実情である。配達される荷物の性質によっては自宅や会社の住所で受け取るよりも、所望の駅や各種施設で受け取った方が便利な場合がある。また、受取人によっては在宅している時間帯と配送時間帯とがずれているために、本人が希望する時間に荷物を受け取ることができない等の不都合がある。
【0005】本発明は、以上のような実情に鑑みて為されたものであり、配達先として受取人の住所を指定するのではなく、所定の場所に設置されている受取りボックスを指定できるようにすることにより、駅や各種施設等の受取人が希望する場所で荷物を受け取ることができる配達システム及び配達方法を提供することを目的とする。」(段落【0004】及び【0005】)

b)「【0020】図1は、本発明の一実施の形態に係る配達システムの概念図を示す。
【0021】図1に示す配達システムにおいて、送り主101は、ネットワーク100を介して荷物の配達を配達業者102に依頼する。荷物の配達を依頼する際、送り主101は、受取人105の情報も含めて配達業者102に通知する。配達される荷物は、一時的に集配センター103に持ち込まれ、保管される。
【0022】一方、受取人105は、配達業者102からネットワーク100を介して、受取人宛ての荷物がある旨の通知を受ける。この通知を受けた受取人105は、自分の都合に合わせて所望の場所に設定された荷物を収納可能な受取りボックス104を配達先として指定する。指定された受取りボックス104の情報は、ネットワーク100を介して配達業者102に通知される。
【0023】受取りボックス104の情報の通知を受けると、配達業者102は、集配センター103にあるその受取人宛ての荷物を指定された受取りボックス104に配送し、その受取りボックス104の中に収納する。荷物を受取りボックス104に収納すると、配達業者102は、受取人105の認証のために用いるデータを受取りボックス104に登録する一方、その認証のために用いるデータを受取人105にも通知する。
【0024】受取人105が受取りボックス104の中の荷物を取り出す場合には、その受取りボックス104まで行き、配達業者102から通知されたデータを用いて認証を行う。これにより、受取りボックス104内の荷物を取り出すことができる。
【0025】図2は、本実施の形態に係る配達システムの構成を示すブロック図である。
【0026】図2に示す配達システムにおいて、送り主端末201は、WEB機能を搭載し、そのWEB機能を用いて送り主101が荷物の配達依頼を行う端末である。受取人端末202は、配達業者102から受取人宛ての荷物がある旨の通知を受ける端末である。本実施の形態では、この受取人端末202が携帯電話で構成されるものとする。この携帯電話は、WEB機能を有すると共に電子メール通信機能を有するものとする。配達業者サーバ203は、WEBサーバ機能を搭載し、送り主端末201や受取人端末202等にホームページ画面を提供する。決済機構204は、送り主101から荷物の配達依頼を受けた場合に送り主101の銀行口座から利用料を引き落とす。受取りボックス104は、受取り人105から荷物の配達先として指定されるものであり、所定の駅や各種施設に設けられている。これらの構成がネットワーク100を介して接続され、本配達システムが構築されている。
【0027】図3は、本実施の形態に係る配達システムの受取りボックス104の構成を示すブロック図である。
【0028】図3に示すように、受取りボックス104は、ボックス部301とボックス管理部302とから構成される。ボックス部301は、複数のボックスで構成され、それぞれのボックスに番号が付されており、各ボックスは、荷物が収納できるようになっている。なお、収納される荷物の大きさに応じてボックスの大きさを複数設けることは、実施の形態として望ましい。ボックス管理部302は、ボックス部301の各ボックスの開閉及び各ボックス内の荷物の管理を行う。
【0029】ボックス管理部302において、通信制御部303は、ネットワーク100を介して配達業者サーバ203とデータ通信を行う。ここで、配達業者サーバ203と通信されるデータとしては、例えば、受取人の認証に用いるためのデータ(以下、「認証データ」という)である。
【0030】入力部304は、配達業者102の配送者がボックス部301に荷物を収納する場合にその荷物の識別番号(以下、「荷物ID番号」という)等を入力又は確認する場合に用いられる。また、入力部304は、受取人105がボックス部301内の荷物を取り出す場合に直接、認証を行う場合にも用いられる。
【0031】出力部305は、例えば、ディスプレイ等で構成され、受取りボックス104の操作案内等を表示する場合に用いられる。なお、操作案内等を表示する場合に音声データを出力することは実施の形態として望ましい。
【0032】ボックス開閉装置306は、後述するボックス管理装置の制御の下、ボックス部301のうち、指定されたボックスを開閉する。荷物センサ307は、ボックス部301のいずれかのボックスにおける荷物の収納及び取出しを検出するセンサである。
【0033】これらの通信制御部303?荷物センサ307がボックス管理装置308に接続されている。ボックス管理装置308は、受取りボックス104の全体の制御を行う。具体的には、ボックス管理装置308は、配送者からボックス部301に収納された荷物の管理を行う。荷物の管理には、配送者によって入力部304から入力された荷物ID番号及び受取人の携帯電話番号を用いる。なお、いずれのボックスに荷物が収納されたかは、荷物センサ307の検出結果に応じて判別される。
【0034】図4は、ボックス管理装置308がボックス内の荷物の有無を管理する荷物管理テーブルの一例を示す。図4に示す荷物管理テーブルにおいては、ボックス番号1及びボックス番号2のボックスに荷物が収納されている。ボックス番号1のボックスには、荷物ID番号「AAA123」、受取人105の携帯電話番号「○○○-○○○○-○○○○」と配送者から入力された荷物が収納されている。同様に、ボックス番号2のボックスには、荷物ID番号「BBB456」、受取人105の携帯電話番号「×××-××××-××××」と入力された荷物が収納されている。
【0035】また、ボックス管理装置308は、受取人105の認証を行い、ボックス開閉装置306を介してボックス部301の開閉を制御する。受取人105の認証には、通信制御部303を介して配達業者サーバ203から受信した受取人105の認証データと上述した荷物管理テーブルで管理される荷物に関するデータとを比較することで受取人105の認証を行う。すなわち、通信制御部303を介して配達業者サーバ203から受信した受取人105の認証データと荷物管理テーブルで管理される荷物に関するデータとが一致する場合に受取人が正規の受取人105であると判断し、該当するボックスを開くように制御する。
【0036】なお、受取人105が直接、入力部304を操作して認証を行う場合には、ボックス管理装置308は、受取人105によって入力部304から入力された認証データと上述した荷物管理テーブルで管理される荷物に関するデータとを比較することで受取人105の認証を行う。」(段落【0020】ないし【0036】)

c)「【0042】次に、受取人105の受取手順について説明する。図6は、本配達システムにおける、受取人105の受取手順を示すシーケンス図である。
【0043】上述したように、集配センターから集荷完了通知を受けて、送り主101の配達依頼が完了すると、配達業者サーバ203から受取人端末202に荷物情報が通知される(ST601)。ここで、荷物情報とは、受取人宛ての荷物がある旨を通知する情報をいう。
【0044】荷物情報は、例えば、受取人端末202である携帯電話に電子メールで通知される。この荷物情報は、配達業者サーバ202から提供される受取り場所選択画面にアクセスするためのURLを含んでいる。受取り場所選択画面のURLを選択することで、受取人105は、容易に配達業者が提供する受取り場所選択画面にアクセスすることができる。
【0045】図7は、配達業者サーバ202から提供される受取り場所選択画面を示す図である。
【0046】受取り場所選択画面には、図7(a)に示すように、受取人宛ての荷物がある旨が示されると共に、送り主101の名称が示されている。また、荷物の受取り場所を指定すべき旨が示されている。具体的には、まず、受取り場所のエリアを選択すべき旨が示され、エリアを選択すると、図7(b)に示すように、その選択されたエリアの具体的な受取り場所の一覧が受取人端末202に表示される。
【0047】さらに、この受取り場所の一覧から具体的な受取り場所が指定されると、荷物の受取りに必要な情報の入力を行う受取情報入力画面が受取人端末202に表示される。図8は、配達業者サーバ202から提供される受取情報入力画面を示す図である。
【0048】受取情報入力画面には、受取人105によって指定された受取り場所が示されると共に、受取り可能日時及び受取人の携帯電話の電話番号(以下、「携帯電話番号」という)を入力すべき欄が設けられている。また、受取情報入力画面には、受取人宛ての荷物の荷物ID番号が表示されている。この荷物ID番号及び受取人が入力した携帯電話番号は、受取人105が荷物を引き取る場合に必要となる認証データとして用いられる。
【0049】この受取情報入力画面に必要な情報を入力した後、受取人105が受取情報入力画面上の完了ボタンを選択することで、受取情報が受取人端末202から配達業者サーバ203に通知される(ST602)。
【0050】受取情報の通知を受けると、配達業者サーバ203から集配センター103に対して、荷物の配送が要請される(ST603)。配達業者サーバ203からの配送要請には、受取人105が指定した受取りボックス104が特定されている。
【0051】この配送要請を受けると、集配センター103は、指定された受取りボックス104に荷物の配送を行う。指定された受取りボックス104に荷物を配送し、受取りボックス104内に荷物を収納する際、配達業者102の配送者は、その受取りボックス104の入力部304からその荷物の荷物ID番号及び受取人の携帯電話番号を入力する。入力された荷物ID番号と携帯電話番号は、この受取りボックス104のボックス管理装置308の荷物管理テーブルで登録される。これらの情報が荷物管理テーブルに登録されると、受取りボックス104から配達業者サーバ203に荷物の配送完了が通知される(ST604)。なお、受取りボックス104への収納の配達業者サーバ203への通知は、配達業者の配送者が集配センター103の端末から配達業者サーバ203に通知するようにしてもよい。
【0052】集配センター103から荷物の配送完了の通知を受けると、配達業者サーバ203から受取人端末202に荷物の配達完了が通知される(ST605)。この配達完了の通知は、例えば、電子メールで通知される。この配達完了の通知は、受取人105が指定した受取ボックス104、受取り日時、受取人が入力した携帯電話番号及び荷物ID番号を確認することができるように、その内容を含んでいる。
【0053】そして、指定した受取り日時に受取人105が指定した受取りボックス104まで行き、受取人端末202から荷物の受取りを配達業者サーバ203に要求する(ST606)。具体的には、受取人端末202から荷物ID番号及び受取人の携帯電話番号(以下、この2つの情報を「受取情報」という)を入力して荷物の受取りを配達業者サーバ203に要求する。なお、配達完了を通知する際に受信した電子メールを配達業者サーバ203に転送するだけで、荷物の受取りを要求できるようにすることは、実施の形態として望ましい。
【0054】この受取り要求を受けると、配達業者サーバ203は、その受取情報に含まれる荷物ID番号に対応した受取りボックス104に対して、その受取情報を通知する(ST607)。
【0055】この受取情報が通知されると、受取りボックス104において、ボックス管理装置308は、この受取情報である荷物ID番号及び受取人105の携帯電話番号と、荷物管理テーブルに登録されたデータとを比較する。一致した場合には、受取人105が正規の受取人であると認証し、ボックス開閉装置306を制御して該当するボックスを開く。そして、受取人105は、開いたボックスから自分宛ての荷物を取り出す。
【0056】荷物が取り出されると、荷物センサ307は、荷物の取出しを検出する一方、その旨をボックス管理装置308に通知する。この通知を受けると、ボックス管理装置308は、通信制御部303を介して、受取人105により荷物が受け取られた旨を示す受取り完了を配達業者サーバ203に通知する(ST608)。この受取り完了通知を受けて、配達業者サーバ203は、荷物の受取り完了を認識する。荷物の受取り完了を認識した後、送り主にその旨を通知することは、実施の形態として望ましい。この場合には、送り主において荷物が配達されたか否かを認識できるので、配達システムとしての使用性が向上する。このようにして、本配達システムにおける受取人による荷物の受取りの手順が完了する。
【0057】このように本実施の形態に係る配達システムは、配達業者102が送り主101から荷物の配達依頼を受けて荷物を預かると、受取人105へその旨とその荷物を識別する荷物ID番号を通知する。一方、受取人105から受取りボックス104、受取り日時及び受取人の携帯電話番号を指定してもらう。そして、指定された受取りボックス104に荷物を入れる一方、荷物の受取りに必要な受取情報として荷物ID番号と携帯電話番号を受取りボックス104に登録する。受取人105は、自分で指定した受取りボックス104に直接又はネットワーク経由で荷物ID番号と携帯電話番号を入力することで荷物を受け取るようにしている。このように本配達システムによれば、配達先として受取人105の住所を指定するのではなく、所定の場所に設置されている受取りボックス104を指定できるようにすることにより、駅や各種施設等の受取人が希望する場所で荷物を受け取ることができる。
【0058】なお、本実施の形態では、荷物の配送者が荷物を配達した際、受取りボックス104に受取人105が荷物の受取りに必要な情報を登録するようにしている。しかし、これに限定されず、配達業者サーバ203からネットワーク100を介して指定された受取りボックス104に荷物の受取りに必要な情報を登録するようにしてもよい。このように変更した場合でも、本実施の形態と同様に、駅や各種施設等の受取人が希望する場所で荷物を受け取ることができる。
【0059】また、本実施の形態では、受取人105が配達業者サーバ203に受取り要求を行い、受取りボックス104内の荷物の受取りを要求している。しかし、これに限定されず、携帯電話である受取人端末205から受取りボックス104に直接、受取り要求を行うようにしても良い。このように変更した場合でも、本実施の形態と同様に、駅や各種施設等の受取人が希望する場所で荷物を受け取ることができる。
【0060】また、本実施の形態では、受取情報として荷物ID番号と受取人105の携帯電話番号を使用する場合について説明している。しかし、受取人105の携帯電話番号に限らず、受取人105毎に特有の番号等であれば、どのようなものであってもよい。例えば、携帯電話でなく通常の家庭に備え付けられた電話番号等であってもよい。」(段落【0042】ないし【0060】)

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること
a)上記(1)a)及びb)並びに図1及び2の記載(特に、段落【0005】、【0021】ないし【0024】及び【0026】並びに図1及び2の記載)によれば、引用刊行物には、配達される荷物を受取するための配達システムであって、多数の駅や各種施設等に設置される不特定多数の人が利用可能な公衆利用の受取ボックス104と、配達業者サーバ203を備え、多数の公衆利用の受取ボックス104と配達業者サーバ203をネットワーク100を介して接続したものが示されていることが分かる。

b)上記(1)b)及びc)並びに図1ないし3、6及び8の記載(特に、段落【0023】、【0026】、【0029】、【0035】及び【0042】ないし【0056】並びに図2、6及び8の記載)によれば、配達業者サーバ203は、認証データの作成部と、通信部と、これらを制御する制御部と、を備えることが分かる。
ここで、配達業者サーバ203は、受取人の認証データを受取ボックス304のボックス管理装置308に送信しており(段落【0035】を参照。)、また、認証データである荷物ID番号が表示される受取情報入力画面を受取人端末202に提供している(段落【0047】及び【0048】並びに図8を参照。)ことから、配達業者サーバ203が、認証データの作成部と、通信部と、これらを制御する制御部とを備えることは明らかである。
また、配達業者サーバは、受取ボックス304のボックス管理装置308や受取人端末202と各種の情報を通信している(段落【0042】ないし【0056】及び図6を参照。)ことから、通信部と、これを制御する制御部を有することも明らかである。

c)上記(1)b)及びc)並びに図6及び7の記載(特に、段落【0022】及び【0043】ないし【0046】並びに図7の記載)によれば、配達される荷物を受取するための配達システムにおいて、配達される荷物の配達に先立って配達業者サーバ203からネットワーク100を介して配達業者サーバ203に接続される受取人端末202に、配達される荷物の荷物情報と多数の公衆利用の受取ボックス104の情報を送信することが分かる。

d)上記(1))b)及びc)並びに図6及び8の記載(特に、段落【0022】及び【0047】ないし【0050】並びに図8の記載)によれば、配達される荷物を受取するための配達システムにおいて、配達業者サーバ203から受取人端末202に送信された多数の公衆利用の受取ボックス104の情報に基づいて、受取人により指定された公衆利用の受取ボックス104の指定情報が受取人端末202から配達業者サーバ203に送信されることで配達業者による配達先の公衆利用の受取ボックス104が決定されることが分かる。

e)上記(1)b)及びc)並びに図6の記載(特に、段落【0028】及び【0051】並びに図6の記載)によれば、配達される荷物を受取するための配達システムにおいて、指定された公衆利用の受取ボックス104の複数のボックスのうちいずれかのボックスへ配達業者の配送者により配達される荷物が収納されて配送が完了すると、荷物の配送完了の通知が公衆利用の受取ボックス104から配達業者サーバ203に送信されることが分かる。

f)上記(1)b)及びc)並びに図6の記載(特に、段落【0023】、【0052】及び【0053】並びに図6の記載)によれば、配達される荷物を受取するための配達システムにおいて、配達業者サーバ203は、荷物の配送完了の通知を受信すると、認証データの作成部で作成された認証データを含む荷物の配達完了の通知を受取人端末202に送信することが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)を総合して、本願補正発明の表現に倣って整理すると、引用刊行物には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「配達される荷物を受取するための配達システムであって、多数の駅や各種施設等に設置される不特定多数の人が利用可能な公衆利用の受取ボックス104と、配達業者サーバ203を備え、多数の公衆利用の受取ボックス104と配達業者サーバ203をネットワーク100を介して接続し、
配達業者サーバ203は、認証データの作成部と、通信部と、これらを制御する制御部と、を備え、
配達される荷物の配達に先立って配達業者サーバ203からネットワーク100を介して配達業者サーバ203に接続される受取人端末202に、配達される荷物の荷物情報と多数の公衆利用の受取ボックス104の情報を送信し、
配達業者サーバ203から受取人端末202に送信された多数の公衆利用の受取ボックス104の情報に基づいて、受取人により指定された公衆利用の受取ボックス104の指定情報が受取人端末202から配達業者サーバ203に送信されることで配達業者による配達先の公衆利用の受取ボックス104が決定され、
指定された公衆利用の受取ボックス104の複数のボックスのうちいずれかのボックスへ配達業者の配送者により配達される荷物が収納されて配送が完了すると、荷物の配送完了の通知が公衆利用の受取ボックス104から配達業者サーバ203に送信され、
配達業者サーバ203は、荷物の配送完了の通知を受信すると、認証データの作成部で作成された認証データを含む荷物の配達完了の通知を受取人端末202に送信する配達システム。」

3.対比
本願補正発明(以下、「前者」ともいう。)と引用発明(以下、「後者」ともいう。)とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者における「配達される荷物」は、前者における「宅配物」に相当し、以下同様に、「受取」は「荷受」に、「多数の駅や各種施設等」は「多数の異なる公衆の場所」に、「公衆利用の受取ボックス104」は「公衆利用の宅配ボックス装置」又は「公衆利用の荷受用宅配ボックス装置」に、「配達業者サーバ203」は「管理サーバ」に、「ネットワーク100」は「通信ネットワーク」に、「通信部」は「通信部」に、「制御部」は「制御部」に、「受取人端末202」は「荷受人端末装置」に、「受取人」は「荷受人」に、「配達業者」は「宅配業者」に、「ボックス」は「宅配物収納部」に、それぞれ相当する。

・後者における「配達システム」は、配達される荷物を受取するためのものであるから、前者における「宅配物荷受けシステム」に相当する。

・後者における「認証データ」は、引用刊行物の段落【0029】、【0030】、【0048】及び【0053】ないし【0055】の記載によれば、受取人の認証に用いるためのデータであって、受取人が公衆利用の受取ボックス104から配達される荷物を引き取る場合に必要な受取情報であり、荷受人としての認証を行うための情報といえるから、前者における「荷受認証情報」に相当し、後者における「認証データの作成部」は、前者における「荷受認証情報作成部」に相当する。

・後者における「配達される荷物の荷物情報」は、引用刊行物の段落【0042】の記載によれば、受取人宛の荷物がある旨を通知する情報であり、荷受人宛に配達する宅配物があるという情報といえるから、前者における「宅配物の配達情報」に相当する。

・後者における「公衆利用の受取ボックス104の情報」は、引用刊行物の段落【0042】ないし【0046】の記載によれば、受取り場所の一覧の情報であり、公衆利用の荷受用宅配ボックス装置の設置場所情報といえるから、前者における「公衆利用の宅配ボックス装置の情報」に相当する。
そして、後者における「公衆利用の受取ボックス104の指定情報」は、前者における「公衆利用の宅配ボックス装置の指定情報」に相当する。

・後者における「荷物の配送完了の通知」は、指定された公衆利用の受取ボックス104の複数のボックスのうちいずれかのボックスへ配達業者の配送者により配達される荷物が収納されて配送が完了すると、公衆利用の受取ボックス104から配達業者サーバ203に送信されるものであり、指定された公衆利用の受取ボックス104の複数のボックスのうちいずれかのボックスへ配達業者の配送者により配達される荷物が収納されたことを示す情報といえるから、前者における「前記指定された前記公衆利用の宅配ボックス装置の宅配物収納部のうち前記宅配業者により宅配物が収納された前記宅配物収納部の番号」に、「指定された公衆利用の宅配ボックス装置の宅配物収納部へ宅配業者により宅配物が収納されたことに関する所定の収納情報」という限りにおいて相当する。
そうすると、後者における「指定された公衆利用の受取ボックス104の複数のボックスのうちいずれかのボックスへ配達業者の配送者により配達される荷物が収納されて配送が完了すると、荷物の配送完了の通知が公衆利用の受取ボックス104から配達業者サーバ203に送信され」ることは、前者における「前記指定された前記公衆利用の宅配ボックス装置の宅配物収納部のうち前記宅配業者により宅配物が収納された前記宅配物収納部の番号が前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から前記管理サーバに送信され」ることに、「指定された公衆利用の宅配ボックス装置の宅配物収納部へ宅配業者により宅配物が収納されたことに関する所定の収納情報が公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から管理サーバに送信され」るという限りにおいて相当する。

・後者における「認証データの作成部で作成された認証データを含む荷物の配達完了の通知」は、認証データの作成部で作成された認証データと、指定された公衆利用の受取ボックス104の複数のボックスのうちいずれかのボックスへ配達業者の配送者により配達される荷物が収納されたことを示す情報を含むものといえるから、前者における「前記荷受認証情報と前記番号」に、「荷受認証情報作成部で作成された荷受認証情報と所定の収納情報」という限りにおいて相当する。
そうすると、後者における「配達業者サーバ203は、荷物の配送完了の通知を受信すると、認証データの作成部で作成された認証データを含む荷物の配達完了の通知を受取人端末202に送信する」は、前者における「前記管理サーバは、宅配物を収納した前記宅配物収納部の前記番号を受信すると、前記荷受認証情報作成部で荷受認証情報を作成して前記荷受人端末装置に前記荷受認証情報と前記番号とを送信する」に、「管理サーバは、所定の収納情報を受信すると、荷受人端末装置に荷受認証情報作成部で作成された荷受認証情報と所定の収納情報とを送信する」という限りにおいて、相当する。

したがって、両者は、
「宅配物を荷受するための宅配物荷受けシステムであって、多数の異なる公衆の場所に設置される不特定多数の人が利用可能な公衆利用の宅配ボックス装置と、管理サーバを備え、多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置と前記管理サーバを通信ネットワークを介して接続し、
前記管理サーバは、荷受認証情報作成部と、通信部と、これらを制御する制御部と、を備え、
宅配物の配達に先立って前記管理サーバから前記通信ネットワークを介して前記サーバに接続される荷受人端末装置に、宅配物の配達情報と多数の前記公衆利用の宅配ボックス装置の情報を送信し、
前記管理サーバから前記荷受人端末装置に送信された多数の公衆利用の宅配ボックス装置の情報に基づいて、荷受人により指定された前記公衆利用の宅配ボックス装置の指定情報が前記荷受人端末装置から前記管理サーバに送信されることで宅配業者による配達先の前記公衆利用の宅配ボックス装置が決定され、
前記指定された前記公衆利用の宅配ボックス装置の宅配物収納部へ前記宅配業者により宅配物が収納されたことに関する所定の収納情報が前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から前記管理サーバに送信され、
前記管理サーバは、前記所定の収納情報を受信すると、前記荷受人端末装置に前記荷受認証情報作成部で作成された荷受認証情報と前記所定の収納情報とを送信する宅配物荷受けシステム。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
指定された公衆利用の宅配ボックス装置の宅配物収納部へ宅配業者により宅配物が収納されたことに関する所定の収納情報が前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から管理サーバに送信され、前記管理サーバは、前記所定の収納情報を受信すると、荷受人端末装置に荷受認証情報作成部で作成された荷受認証情報と前記所定の収納情報とを送信することに関し、本願補正発明においては、「前記指定された前記公衆利用の宅配ボックス装置の宅配物収納部のうち前記宅配業者により宅配物が収納された前記宅配物収納部の番号が前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から前記管理サーバに送信され、前記管理サーバは、宅配物を収納した前記宅配物収納部の前記番号を受信すると、前記荷受認証情報作成部で荷受認証情報を作成して前記荷受人端末装置に前記荷受認証情報と前記番号とを送信する」ようにされているのに対して、引用発明においては、「指定された公衆利用の受取ボックス104の複数のボックスのうちいずれかのボックスへ配達業者の配送者により配達される荷物が収納されて配送が完了すると、荷物の配送完了の通知が公衆利用の受取ボックス104から配達業者サーバ203に送信され、配達業者サーバ203は、荷物の配送完了の通知を受信すると、認証データの作成部で作成された認証データを含む荷物の配達完了の通知を受取人端末202に送信する」ようにされている点(以下、「相違点1」という。)。

[相違点2]
本願補正発明においては、「前記宅配業者により宅配物が収納された前記宅配物収納部の番号が前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から前記管理サーバに送信される前においては、荷受人が配達を希望する前記荷受用宅配ボックス装置を変更できるようにする」のに対して、引用発明においては、そのような構成を有しているか否か明らかでない点(以下、「相違点2」という。)。

4.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1について]
宅配ボックス装置を用いて宅配物を荷受けするための宅配物荷受けシステムにおいて、宅配業者により宅配物が宅配ボックス装置の宅配物収納部に収納されると、宅配ボックス装置の宅配物収納部のうち宅配業者により宅配物が収納された宅配物収納部の番号が宅配ボックス装置から管理サーバに送信され、管理サーバは、宅配物を収納した宅配物収納部の番号を受信すると、荷受人端末装置に宅配物が収納された宅配物収納部の番号を送信することは、本件出願前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。必要であれば、特開2002-207810号公報(特に、段落【0072】ないし【0078】及び図1)、特開2002-17554号公報(特に、段落【0009】ないし【0017】及び図1)、特開2001-175555号公報(特に、段落【0040】ないし【0049】及び図5)及び特開2003-20832号公報(特に、段落【0125】ないし【0132】及び図7)を参照。)であり、引用発明において、公衆利用の受取ボックス104にはボックスが複数設けられるところ、ボックスへのアクセスを容易にして配達される荷物の受取りを円滑にすることは、当然に考慮されることであるから、引用発明に周知技術1を適用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、宅配ボックス装置を用いて宅配物を荷受けするための宅配物荷受けシステムにおいて、宅配業者により宅配物が宅配ボックス装置の宅配物収納部に収納されると、管理サーバは、荷受認証情報作成部で荷受認証情報を作成し、荷受認証情報を荷受人端末装置に送信することは、本件出願前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。必要であれば、特開2001-175555号公報(特に、段落【0040】ないし【0049】及び図5)及び特開2003-20832号公報(特に、段落【0125】ないし【0132】及び図7)を参照。)であり、引用発明において、配達業者サーバ203(管理サーバ)が、荷物の配送完了の通知を受信すると、認証データの作成部(荷受認証情報作成部)で作成された認証データ(荷受認証情報)を含む荷物の配達完了の通知を受取人端末202(荷受人端末装置)に送信する際に、認証データの作成部で認証データをどのタイミングで作成するかは任意設計事項といえるから、引用発明に周知技術2を適用することは、当業者が適宜なし得ることである。
そうすると、引用発明において、周知技術1及び2を適用し、指定された公衆利用の受取ボックス104(公衆利用の宅配ボックス装置)のボックス(宅配物収納部)のうち配達業者(宅配業者)により配達される荷物(宅配物)が収納されたボックスの番号を含む荷物の配送完了の通知が公衆利用の受取ボックス104から配達業者サーバ203(管理サーバ)に送信され、配達業者サーバ203は、配達される荷物を収納したボックスの番号を含む荷物の配送完了の通知を受信すると、認証データの作成部(荷受認証情報作成部)で認証データ(荷受認証情報)を作成して受取人端末202(荷受人端末装置)に認証データと配達される荷物が収納されたボックスの番号とを含む荷物の配達完了の通知を送信するようにし、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点2について]
荷物の配達業務において、配達される荷物の配達が完了するまでの間は、荷受人により配達先を変更できることは、本件出願前に商慣習として知られていることである(以下、「既知の商慣習」という。必要であれば、特開2002-137813号公報(特に、段落【0025】及び図2)を参照。)。
また、宅配ボックス装置を用いて宅配物を荷受けするための宅配物荷受けシステムにおいて、荷受人により配達先の宅配ボックス装置を変更できるようにすることは、本件出願前に周知の技術(以下、「周知技術3」という。必要であれば、特開2004-26496号公報(特に、段落【0009】及び【0053】ないし【0056】並びに図5)及び特開2007-1722号公報(特に、段落【0022】及び【0025】並びに図1及び図3)を参照。)である。
そうすると、引用発明において、既知の商慣習を考慮して、周知技術3を適用することにより、配達業者(宅配業者)により配達される荷物(宅配物)が収納されたボックス(宅配物収納部)の番号が公衆利用の受取ボックス104(公衆利用の荷受用宅配ボックス装置)から配達業者サーバ203(管理サーバ)に送信される前においては、受取人(荷受人)が配達を希望する公衆利用の受取ボックス104を変更できるようにし、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明は、全体としてみても、引用発明、周知技術1ないし3及び既知の商慣習から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願補正発明は、引用発明、周知技術1ないし3及び既知の商慣習に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

〔4〕むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。


第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成26年4月28日に提出された手続補正書により補正された(本件出願の願書に最初に添付された)特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、前記第2[理由]〔1〕(A)の【請求項1】に示したとおりのものである。

2.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項、並びに、引用発明は、前記第2[理由]〔3〕2.(1)ないし(3)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]〔3〕で検討した本願補正発明において、発明特定事項である「管理サーバ」について、「前記宅配業者により宅配物が収納された前記宅配物収納部の番号が前記公衆利用の荷受用宅配ボックス装置から前記管理サーバに送信される前においては、荷受人が配達を希望する前記荷受用宅配ボックス装置を変更できるようにする」という機能を限定する事項を削除したものに相当する。
そして、本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、上記第2[理由]〔3〕に記載したとおり、引用発明、周知技術1ないし3及び既知の商慣習に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は実質的に、上記第2[理由]〔3〕3.対比で示した相違点1の点でのみ相違するのであるから、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-28 
結審通知日 2015-09-29 
審決日 2015-10-13 
出願番号 特願2010-216192(P2010-216192)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
P 1 8・ 575- Z (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土井 伸次大谷 光司大野 明良  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 槙原 進
金澤 俊郎
発明の名称 宅配物荷受けシステム及び宅配ボックス装置  
代理人 西川 惠清  
代理人 木村 豊  
代理人 水尻 勝久  
代理人 北出 英敏  

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