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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1308180
審判番号 不服2015-4217  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-03 
確定日 2015-12-22 
事件の表示 特願2012-506199「選択されたユーザと視聴覚コンテントを共有する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月21日国際公開、WO2010/120972、平成24年10月11日国内公表、特表2012-524347、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2010年4月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年4月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月26日付けで拒絶理由通知がなされ、平成26年3月3日付けで手続補正がなされ、同年10月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年3月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年3月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否

1.補正の内容

本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1である
「ローカルネットワーク内で動作する視聴覚コンテントレシーバにて受信され記憶された視聴覚コンテントを共有する方法であって、
広域ネットワークを介して受信され、また、特定の視聴覚コンテントが前記視聴覚コンテントレシーバにて受信され、保存されたことを示す、前記視聴覚コンテントレシーバからのメッセージを、前記広域ネットワークでサーバとして動作する通信ノードにおいて受信することと、
前記通信ノードにて、選択されたユーザに対し、前記ローカルネットワーク内で動作する前記視聴覚コンテントレシーバから前記特定の視聴覚コンテントを視聴可能であることを、前記広域ネットワークを介して通知することと、
前記広域ネットワークで動作する前記通信ノードにて、前記選択されたユーザと関連する通信装置からの前記視聴覚コンテントのリクエストを受信した対応として、前記ローカルネットワーク内で動作する前記視聴覚コンテントレシーバと、前記選択されたユーザと関連していることで、前記通信接続により前記選択されたユーザへ提供されるよう前記視聴覚コンテントの送信が許可される前記通信装置との間の前記広域ネットワーク上での通信接続を容易化することと、を含む、視聴覚コンテントを共有する方法。」
を、
「ローカルネットワーク内で動作する視聴覚コンテントレシーバにて受信され記憶された視聴覚コンテントを共有する方法であって、
広域ネットワークを介して受信され、また、特定の視聴覚コンテントが前記視聴覚コンテントレシーバにて受信され、保存されたことを示す、前記視聴覚コンテントレシーバからのメッセージを、前記広域ネットワークでサーバとして動作する通信ノードにおいて受信することと、
前記通信ノードにて、選択されたユーザに対し、前記ローカルネットワーク内で動作する前記視聴覚コンテントレシーバから前記特定の視聴覚コンテントを視聴可能であることを、前記広域ネットワークを介して通知することと、
前記広域ネットワークで動作する前記通信ノードにて、前記選択されたユーザと関連する通信装置からの前記視聴覚コンテントのリクエストを受信した対応として、前記通信装置の前記視聴覚コンテントレシーバへのアクセスの制限の要否を判断し、判断に基づき、当該アクセスを制限するか、あるいは、前記ローカルネットワーク内で動作する前記視聴覚コンテントレシーバと、前記選択されたユーザと関連していることで、前記通信接続により前記選択されたユーザへ提供されるよう前記視聴覚コンテントの送信が許可される前記通信装置との間の前記広域ネットワーク上での通信接続を容易化するかのいずれかの処理を実行することと、を含む、視聴覚コンテントを共有する方法。」
とする補正(以下「補正事項1」という。)を含むものである。

2.補正の適否

本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記広域ネットワークで動作する前記通信ノードにて、前記選択されたユーザと関連する通信装置からの前記視聴覚コンテントのリクエストを受信した対応として、前記ローカルネットワーク内で動作する前記視聴覚コンテントレシーバと、前記選択されたユーザと関連していることで、前記通信接続により前記選択されたユーザへ提供されるよう前記視聴覚コンテントの送信が許可される前記通信装置との間の前記広域ネットワーク上での通信接続を容易化する」という事項について、「前記広域ネットワークで動作する前記通信ノードにて、前記選択されたユーザと関連する通信装置からの前記視聴覚コンテントのリクエストを受信した対応として、前記通信装置の前記視聴覚コンテントレシーバへのアクセスの制限の要否を判断し、判断に基づき、当該アクセスを制限するか、あるいは、前記ローカルネットワーク内で動作する前記視聴覚コンテントレシーバと、前記選択されたユーザと関連していることで、前記通信接続により前記選択されたユーザへ提供されるよう前記視聴覚コンテントの送信が許可される前記通信装置との間の前記広域ネットワーク上での通信接続を容易化するかのいずれかの処理を実行する」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-252325号公報(以下「引用文献1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0013】
会員端末装置200は、コンテンツ格納部201とデジタル放送受信機部202とを備えている。デジタル放送受信機部202は、デジタルテレビ放送を受信する機能を備える。この例では、会員端末装置200は、デジタル放送受信機部202で受信した放送番組コンテンツを、コンテンツ格納部201に格納して録画することができる。」

「【0017】
サーバ装置100は、すべての会員端末装置200のコンテンツ格納部201に格納されている放送番組コンテンツのデータを、当該コンテンツのデータを格納する会員端末装置との対応と共に記憶して管理するコンテンツ所在管理メモリ部102を備える。すなわち、コンテンツ所在管理メモリ部102には、少なくとも、放送番組コンテンツの識別情報と、前記放送番組コンテンツのそれぞれがコンテンツ格納部201に格納されている前記会員端末装置の識別情報との対応が記憶される。
【0018】
この実施形態では、会員端末装置200は、新たに放送番組コンテンツのデータをコンテンツ格納部201に格納したとき、また、コンテンツ格納部201から放送番組コンテンツのデータを削除したとき、そのことをサーバ装置100にネットワーク3を通じて通知する。サーバ装置100は、当該会員端末装置200からの通知に基づく会員端末装置200のコンテンツ格納部201の内容変化に対応して、コンテンツ所在管理メモリ部102の内容を更新するように構成されている。」

「【0022】
なお、この実施形態では、会員端末装置200のコンテンツ格納部201は、図2に示すように、共有利用エリアと、非共有利用エリアとに分割設定可能とされている。共有利用エリアは、コンテンツ管理会社1のサーバ装置100により管理される共有領域300内となるメモリエリアである。非共有利用エリアは、会員ユーザ2が個人的に自由に利用可能なメモリエリアであり、この非共有利用エリアは、コンテンツ管理会社1のサーバ装置100による管理領域である共有領域300からは除外されている。
【0023】
非共有利用エリアは、コンテンツ格納部201において、後述する会員端末装置200間でのコンテンツ交換などを行なう共有領域から除外されているため、著作権保護を必要とせず、会員ユーザが自由に使用できる領域とすることができ、便利である。
【0024】
以上のようにして、この実施形態では、サーバ装置100は、共有領域300内に在る複数個の会員端末装置200のコンテンツ格納部201に格納されている放送番組コンテンツのデータを管理している。このことを利用して、この実施形態では、サーバ装置100は、過去に放送された放送番組コンテンツのうち、共有領域300内の会員端末装置200のコンテンツ格納部201に保存されている放送番組コンテンツの一覧を、会員端末装置200を通して会員ユーザに示すことができる。
【0025】
そこで、会員ユーザは、この過去の放送番組コンテンツであって、共有領域300にある視聴可能な放送番組コンテンツを、サーバ装置に視聴要求(転送依頼)することにより、当該過去の放送番組コンテンツを視聴することが可能になる。この場合に、この実施形態では、サーバ装置100は、転送依頼された放送番組コンテンツのデータを、当該コンテンツデータを所有する会員端末装置200から吸い上げて、転送依頼してきた会員端末装置200に転送するのではなく、前記転送依頼された放送番組コンテンツを所有する会員端末装置200から、転送依頼を行なった会員端末装置200にP2P配信させるようにする。」

「【0043】
会員端末装置200Aは、コンテンツ管理会社1のサーバ装置100から提供される過去の放送番組コンテンツの一覧あるいは未来の放送番組コンテンツの一覧から転送を希望する、あるいは転送を予約する放送番組コンテンツを選択し、当該選択した放送番組コンテンツの転送配信依頼をネットワーク3を通じてサーバ装置100に送る。
【0044】
サーバ装置100は、この放送番組コンテンツの転送依頼を受け取ると、それが過去の放送番組コンテンツであるときには、次のようにする。
【0045】
すなわち、先ず、コンテンツ所在管理メモリ部102を検索して、転送依頼されたコンテンツがどの会員端末装置にあるかを検知する。転送依頼されたコンテンツを所有する端末が複数検知されたときには、例えばランダムに一つの会員端末装置が選択される。あるいは、データ品質の良いコンテンツデータを格納している会員端末装置が選択される。図3の例では、転送依頼されたコンテンツが会員端末装置200Bに在ったとする。なお、これに先立ち、会員端末装置200は、サーバ装置100に対して放送番組コンテンツの録画について報告をしており、サーバ装置100は、この報告に基づいてコンテンツ所在管理メモリ部102の記憶内容を更新している。
【0046】
次に、サーバ装置100は、転送依頼された放送番組コンテンツを所有する当該会員端末装置200Bに、転送依頼された放送番組コンテンツを、会員端末装置200Aに送るようにすることを指示内容とするコンテンツ配信送信指示制御信号を、ネットワーク3を通じて送る。
【0047】
このコンテンツ配信送信指示制御信号を受け取った会員端末装置200Bは、当該コンテンツ配信送信指示制御信号に基づき、自己のコンテンツ格納部201から転送依頼された放送番組コンテンツデータを読み出し、会員端末装置200Aに送信する。
【0048】
会員端末装置200Aは、会員端末装置200Bから送信されてきた転送依頼した放送番組コンテンツデータを受け取り、そのままストリーミング再生する、あるいは、自己のコンテンツ格納部201に格納し、ユーザの指示により読み出して再生する。」

ここで、上記記載を本願優先日前からの技術常識等に照らせば、以下のことがいえる。

ア.段落【0013】、【0017】から【0018】まで等の記載から、引用文献1の会員端末装置200は、デジタル放送受信機部で受信した放送番組コンテンツをコンテンツ格納部に格納し(【0013】)、新たに放送番組コンテンツのデータをコンテンツ格納部に格納したとき、そのことをサーバ装置100にネットワークを通じて通知するものである(【0018】)から、前記サーバ装置への前記通知は、特定の放送番組コンテンツが会員端末装置にて受信され、保存されたことを示すメッセージといえる。

イ.段落【0024】から【0025】まで等の記載から、引用文献1のサーバ装置100は、会員端末装置200から放送番組コンテンツを視聴要求(転送依頼)を受信すると、前記放送番組コンテンツを所有する会員端末装置から、転送依頼を行った会員端末装置にP2P配信させるようにするものである。

ウ.上記ア、イを踏まえると、引用文献1には、会員端末装置にて受信され記憶された放送番組コンテンツを共有する方法が記載されているといえる。

そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「会員端末装置にて受信され共有利用エリアに記憶された放送番組コンテンツを共有する方法であって、
特定の放送番組が前記会員端末装置にて受信され、保存されたことを示す、前記会員端末装置からのメッセージを、サーバ装置において受信することと、
前記サーバ装置にて、会員ユーザと関連する会員端末装置からの前記放送番組コンテンツの視聴要求(転送依頼)を受信した対応として、前記転送依頼された放送番組コンテンツを、前記転送依頼された放送番組コンテンツを所有する会員端末装置から、転送依頼を行った会員端末装置にP2P配信させるようにすることと、
を含む、放送番組コンテンツを共有する方法。」

原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-148796号公報(以下「引用文献2」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0082】
(1)「非公開」の場合
基本的には、親しい友人や家族などの特定のグループ間で利用される形態である。倶楽部登録者が、グループ、すなわち、倶楽部に属する会員端末装置200を限定(設定)する。倶楽部に属するとして設定された会員端末装置には、その旨がサーバ装置100から通知される。この通知は、当該倶楽部の倶楽部コンテンツが視聴可能になることの通知でもある。
【0083】
この実施形態では、非公開の場合には、倶楽部内で配布されるコンテンツ(以下、倶楽部コンテンツという)は、コンテンツ格納部201の非共有利用エリア201Pに置かれる。これは、コンテンツを共有領域に置く場合には、サーバ装置100の管理を受けることになるために、コンテンツの内容についても管理者のチェックがなされる必要が生じるが、それを避けるためである。
【0084】
もっとも、倶楽部コンテンツを共有領域(共有利用エリア201C)に書き込んで、サーバ装置100の管理の下に置くようにしても勿論よい。
【0085】
図5は、非公開の場合の倶楽部参加態様を説明するための図である。この図5の例は、倶楽部コンテンツはコンテンツ格納部201の非共有利用エリア201Pに格納する場合である。
【0086】
先ず、倶楽部を登録しようとする会員ユーザは、会員端末装置200からサーバ装置100に対してアクセスし、倶楽部登録要求をする。この倶楽部登録要求の際には、倶楽部名が指定されると共に、倶楽部に参加する会員端末装置(会員端末装置の識別情報)の指定などがなされ、倶楽部登録した会員端末装置の識別情報、指定された倶楽部名、倶楽部識別情報、指定された参加会員端末装置の識別情報が、サーバ装置100の倶楽部管理メモリ部105の非公開領域に記憶されて登録される。倶楽部識別情報は、例えばサーバ装置100が一意に付与する。」

「【0093】
会員端末装置200からの倶楽部登録が完了すると、サーバ装置100は、倶楽部に参加するとして指定された会員端末装置200に対して、倶楽部名、倶楽部識別情報等を伴って、倶楽部に登録されたことを通知する。前述したように、この通知は、当該倶楽部の倶楽部コンテンツが視聴可能になることの通知でもある。
【0094】
図5の例では、この通知を受けた会員端末装置200の会員ユーザに対しては、速やかに、倶楽部コンテンツを所持している他の会員端末装置200から、当該倶楽部コンテンツのデータが配信されるようにされる。つまり、前記通知を受けた会員端末装置は、倶楽部コンテンツの配信要求をサーバ装置に送らなくても、自動的に倶楽部コンテンツが配信されてくる。
【0095】
すなわち、サーバ装置100は、倶楽部に参加するとして指定された会員端末装置200に対して、倶楽部名、倶楽部識別情報等を伴って、倶楽部に登録されたことを通知をした後、当該倶楽部登録を行なった会員端末装置200に対して、その倶楽部コンテンツを、倶楽部コンテンツの配信要求してきた会員端末装置200に送るように指示制御する配信指示を送る。」

「【0421】
[変形例]
以上の説明では、会員端末装置は、コンテンツとして音楽および映像コンテンツを対象とするようにしたが、この発明の対象となるコンテンツは、音楽、映像コンテンツに限らず、放送番組コンテンツや、ゲーム、プログラム、小説(テキストデータ)などのコンテンツであってもよいことは言うまでもない。
【0422】
また、上述の実施形態では、コンテンツ提供会社からは専用端末装置を提供するようにしたが、会員ユーザが備えるパーソナルコンピュータなどを会員端末装置とすることもできる。その場合には、サーバ装置は、ダウンロードしたコンテンツを、そのダウンロード先である会員端末装置の識別情報と共に、コンテンツ所在管理メモリ部に記憶するようにすることができる。そして、共有領域のコンテンツは、当該ダウンロードしたコンテンツの範囲とすることにより、著作権保護の管理が容易となる。」

「【0428】
なお、非公開倶楽部においては、参加会員端末装置200に対しては、倶楽部通知とともに、倶楽部コンテンツの配信が自動的になされるようにしたが、倶楽部コンテンツの配信は自動配信ではなく、倶楽部通知を受けた会員端末装置200が、後に倶楽部コンテンツの要求をしたときに配信を実行するようにしても良い。」

そうすると、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。

ア.会員端末装置200が、その非共有利用エリアに格納された倶楽部コンテンツを特定の倶楽部内で利用可能とするために、サーバ装置100に対して倶楽部登録要求を行い、その際は、倶楽部名を指定すると共に、倶楽部に参加する会員端末装置(会員端末装置の識別情報)の指定などをすること(【0082】、【0086】等)

イ.会員端末装置200からの倶楽部登録が完了すると、サーバ装置100は、倶楽部に参加するとして指定された会員端末装置200に対して、倶楽部名、倶楽部識別情報等を伴って、倶楽部に登録されたことを通知すること、及び当該通知は当該倶楽部の倶楽部コンテンツが視聴可能になることの通知でもあること(【0093】等)

ウ.倶楽部通知を受けた会員端末装置200が、倶楽部コンテンツの要求をしたときに配信が実行されること(【0428】等)

(2)対比

本願補正発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明における「放送番組コンテンツ」「サーバ装置」「放送番組コンテンツの視聴要求(転送依頼)」はそれぞれ、本願補正発明における「視聴覚コンテント」「サーバとして動作する通信ノード」「視聴覚コンテントのリクエスト」に相当する。

イ.引用発明における、特定の放送番組が受信され保存されたことを示すメッセージをサーバ装置に送信する会員端末装置は、本願補正発明における「視聴覚コンテントレシーバ」に相当する。

ウ.引用発明における、放送番組コンテンツの視聴要求(転送依頼)をサーバ装置に送信する会員端末装置は、本願補正発明における「通信装置」に相当する。

エ.引用発明における「転送依頼された放送番組コンテンツを所有する会員端末装置から、転送依頼を行った会員端末装置にP2P配信させるようにすること」は、放送番組コンテンツを所有する会員端末装置と、転送依頼を行った会員端末装置との間の通信接続を制御して放送番組コンテンツの配信を容易にさせることであるから、本願補正発明における「前記視聴覚コンテントレシーバと、前記選択されたユーザと関連していることで、前記通信接続により前記選択されたユーザへ提供されるよう前記視聴覚コンテントの送信が許可される前記通信装置との間の通信接続を容易化する」ことに相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)

「視聴覚コンテントレシーバにて受信され記憶された視聴覚コンテントを共有する方法であって、
特定の視聴覚コンテントが前記視聴覚コンテントレシーバにて受信され、保存されたことを示す、前記視聴覚コンテントレシーバからのメッセージを、サーバとして動作する通信ノードにおいて受信することと、
前記通信ノードにて、ユーザと関連する通信装置からの前記視聴覚コンテントのリクエストを受信した対応として、前記視聴覚コンテントレシーバと、前記ユーザと関連していることで、前記通信接続により前記選択されたユーザへ提供されるよう前記視聴覚コンテントの送信が許可される前記通信装置との間の前記広域ネットワーク上での通信接続を容易化することと、を含む、視聴覚コンテントを共有する方法。」

(相違点)

ア.本願補正発明は、視聴覚コンテントレシーバがローカルネットワークにおいて動作し、サーバとして動作する通信ノードは広域ネットワークにおいて動作するものであるのに対し、引用発明は、会員端末装置がローカルネットワークにおいて動作し、サーバ装置が広域ネットワークにおいて動作するものとはされていない点

イ.本願補正発明は、通信ノードにて、選択されたユーザに対し、前記ローカルネットワーク内で動作する前記視聴覚コンテントレシーバから前記特定の視聴覚コンテントを視聴可能であることを、前記広域ネットワークを介して通知するものであるのに対し、引用発明は、サーバ装置がそのような動作をするものとはされていない点

ウ.本願補正発明は、ユーザと関連する通信装置からの前記視聴覚コンテントのリクエストを受信した対応として、前記通信装置の前記視聴覚コンテントレシーバへのアクセスの制限の要否を判断し、判断に基づき、当該アクセスを制限するか、あるいは、視聴覚コンテントレシーバと、通信装置との間の通信接続を容易化するかのいずれかの処理を実行すものであるのに対し、引用発明は、ユーザと関連する通信装置からの前記視聴覚コンテントのリクエストを受信した対応として、視聴覚コンテントレシーバと、通信装置との間の通信接続を容易化するものとしかされていない点

(3)判断

上記相違点イについて検討する。

引用発明は、会員端末装置間で放送番組コンテンツを共有するために、受信した放送番組コンテンツを会員端末装置の公開利用エリアに格納するものである。
一方、引用発明2記載の技術的事項は、倶楽部コンテンツを特定のグループ内で利用可能とするために、当該倶楽部コンテンツを非公開利用エリアに格納するものであり、引用文献2記載の技術的事項を、引用発明の、公開利用エリアに格納する放送番組コンテンツの処理に適用することが当業者にとって容易であるとはいえない。

また、仮に、引用発明2記載の技術的事項を、引用発明の、公開利用エリアに格納する放送番組コンテンツの処理に適用することが当業者にとって容易であったとしても、引用発明2記載の技術的事項は、サーバ装置が、倶楽部に参加するものとして指定された会員端末装置に対して倶楽部に登録されたこと及び当該倶楽部のコンテンツが視聴可能になることを通知するものであって、倶楽部内の会員端末装置が受信して格納した特定の放送番組コンテンツが視聴可能であることを通知するものではない。
したがって、引用発明に、引用文献2記載の技術的事項を適用したとしても、相違点イに係る本願補正発明の構成のように、通信ノード(サーバ装置)が、視聴覚コンテントレシーバ(会員端末装置)に格納された特定の視聴覚コンテントを視聴可能であることを通知するという構成を採用することが、当業者にとって容易であるとはいえない。

したがって、その余の相違点についての検討をするまでもなく、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
ほかに、本願補正発明を特許出願の際独立して特許を受けることができないものというべき理由を発見しない。
よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3.むすび

本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明

本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1-20に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-12-07 
出願番号 特願2012-506199(P2012-506199)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 575- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 秀和  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 玉木 宏治
山澤 宏
発明の名称 選択されたユーザと視聴覚コンテントを共有する方法  
代理人 大菅 義之  
代理人 野村 泰久  

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