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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1308221
審判番号 不服2014-14643  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-25 
確定日 2015-12-02 
事件の表示 特願2011-527965号「無線送電のためのトランスミッタ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年3月25日国際公開、WO2010/033727、平成24年2月2日国内公表、特表2012-503469号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年9月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年9月17日、9月20日、2009年1月24日、6月19日、9月16日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年3月18日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成26年7月25日に本件審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされ、平成26年11月28日付けで上申書が提出されたものである。

第2 平成26年7月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年7月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の【請求項1】は、
「【請求項1】
無線電力トランスミッタは以下を具備すること:
共鳴タンク(resonant tank)として構成された送信アンテナ、前記送信アンテナは、第1のインダクタと並列に結合された第1のキャパシタを含む;
前記送信アンテナと直列に結合された第2のインダクタ;
前記第2のインダクタと前記送信アンテナに直列に結合された第2のキャパシタ;
前記送信アンテナを駆動するように構成されたドライバ、前記ドライバは、前記第2のインダクタと前記第2のキャパシタとを備え、
前記第2のインダクタと前記第1のキャパシタは、負荷マッチングおよび/または前記ドライバまたは前記送信アンテナによって生成された信号のフィルタリング、を提供するように構成されたフィルタを定義する。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ドライバ」について、「ドライバは、前記第2のインダクタと前記第2のキャパシタとを備え、
前記第2のインダクタと前記第1のキャパシタは、負荷マッチングおよび/または前記ドライバまたは前記送信アンテナによって生成された信号のフィルタリング、を提供するように構成されたフィルタを定義する。」と、限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-26741号公報(以下「刊行物1」という。)には、非接触ICカード読取/書込装置に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】
非接触ICカードとのデータ通信を行う非接触ICカード読取/書込装置において、非接触ICカードに電磁誘導により電力と送信信号を供給し、前記非接触ICカードからの受信信号を負荷変動により取得するループアンテナと、前記ループアンテナを所望の第一の周波数に共振させるための第一の共振回路部と、前記第一の共振回路部を介し、前記ループアンテナに電力と送信データを供給する無線送信部を設け、さらに、前記ループアンテナにカップリングコンデンサにて接続された、所望の第二の周波数に共振した第二の共振回路部を介して、前記ループアンテナからの受信信号を取得する無線受信部を設け、前記無線送信部及び前記無線受信部をそれぞれCPUに接続した構成を有し、前記無線送信部は高周波除去用のローパスフィルタとE級アンプと変調器が直列に接続されたことを特徴とする非接触ICカード読取/書込装置。」
(イ)「【0026】
図1において、20は非接触ICカード読取/書込装置であり、以下、省略して、読取/書込装置と言うこともある。また、30は非接触ICカードを示す。更に、1は無線送信部、2は無線受信部、3はループアンテナ、4は第一の共振回路、5は第二の共振回路、6はトランス、7は信号発生器、8は変調器、12はCPU、13はアンテナコイル、14はICチップをそれぞれ示している。」
(ウ)「【0027】
図1に示すように、ループアンテナ3を所望の第一の周波数に共振させるための第一の共振回路4と、第一の共振回路4を介しループアンテナ3に電力と送信データを供給する無線送信部1を設け、さらにループアンテナ3にカップリングコンデンサC0にて接続された、所望の第二の周波数に共振した第二の共振回路5を介して、ループアンテナ3からの受信信号を取得する無線受信部2を設け、無線送信部1及び無線受信部2をそれぞれCPU12に接続した構成を有し、無線送信部1は変調器8、E級アンプ9、ロードネットワーク10、ローパスフィルタ11が直列に接続されている。」
(エ)「【0028】
図1において、送信データ伝送の場合は、CPU12からの送信データを変調器8で変調し、E級アンプ9で増幅し、ロードネットワーク10及びローパスフィルタ11を経て、高周波を除去し、図1に示すC41、C42、L31からなる第一の共振回路4を介して、ループアンテナ3から送信する。また、電力伝送のみの場合は、信号発生器7からの搬送波を無変調のままで送信する。この読取/書込装置20から非接触ICカード30への送信は、電磁結合によりループアンテナ3が生成する磁束が非接触ICカード30のアンテナコイル13と鎖交し、誘起電圧を励起することにより行われる。」
(オ)「【0032】
更に、このE級アンプ9の動作について説明する。FET1のゲート端子には信号発生器7から発生された搬送波周波数の送信信号が入力されており、信号がディジタル信号であるため、FET1は搬送波周波数にてスイッチング動作を行う。変調器8にて変調された送信信号が入力されると、FET1のドレイン端子では送信信号を電源電圧の振幅まで増幅する。但し、この波形は理想的には矩形波となっているため(実際は立ち上がりと立下り時間が0でないため、矩形波ではない)、余分な高周波を含んでおり、ロードネットワーク10を所望の特性に定めることにより、矩形波の立ち上がりと立下りを鈍らせて取り出し、正弦波に近い波形に整形する。この増幅方式をスイッチング増幅と言い、非常に効率の良い増幅器を得ることができる。」
(カ)「【0034】
前述した通り、スイッチング動作をしただけでは、出力は矩形波となり、不要成分が多く生成される。そこで、ロードネットワーク10ではL2とC2で構成される直列共振回路で構成され、共振周波数を搬送波の周波数に調整することにより、矩形波ではなく正弦波として出力を取り出すことが可能となる。」
(キ)「【0040】
次に、ローパスフィルタ11について詳しく説明する。ローパスフィルタ11の詳細において、C3は第三のコンデンサ、L3は第三のコイル、C4は第四のコンデンサ、L4は第四のコイル、C5は第五のコンデンサ、L5は第五のコイルを示しており、ローパスフィルタ11の入力端とグランドとの間に第三のコンデンサC3と第三のコイルL3を直列に接続、さらに入力端には第四のコイルL4が接続し、第四のコイルL4の他端は第五のコイルL5が接続され、第五のコイルL5の他端はローパスフィルタ11の出力端となっており、第四のコイルL4と第五のコイルL5の間には一端がグランドと接続された第四のコンデンサC4が接続され、第五のコイルL5の他端には一端がグランドと接続された第五のコンデンサC5が接続されている。」
(ク)「【0041】
動作の説明であるが、E級アンプ9で送信信号を増幅し、ロードネットワーク10で波形整形された後、L4、C4、L5、C5にて構成されるローパスフィルタ11にて不要な高周波を除去する。さらに、C3とL3で構成される直列共振回路の共振周波数を搬送波の定倍の周波数にすることにより、増幅器で必ず発生する定倍の高調波を除去することができ、不要輻射に優れた非接触ICカード読取/書込装置を実現する。」
(ケ)「【0042】
また、ループアンテナ3とアンテナコイル13をそれぞれトランスと見たてた場合、非接触ICカードが通信できる時は通常疎結合状態になっている時が多く、疎結合状態時に発生するリアクタンスをC3とL3で構成される直列共振回路を所望の特性にあわせることで、このリアクタンスを打ち消すことができ、ループアンテナ3から抵抗成分のみが見えるようになり、安定動作補償ができる。」
(コ)図1には、第二のコイルL2、第二のコンデンサC2、第四のコイルL4、第五のコイルL5、コンデンサC42、ループアンテナ3は直列に接続されたものとして記載されている。

図1のループアンテナ3の入力側は短絡されている様に図示されているが、当該記載は誤記であり、従来技術を表す【図4】【図5】と同様に入力側は短絡されていないものと認められる。
そして、図1には、ループアンテナ3が、第一の共振回路部4を示す破線の内側に記載されているので、第一の共振回路部4は、ループアンテナ3を含むものといえる。
また、ループアンテナ3の横にL31と記載されており、該L31は、ループアンテナ3に付随するインダクタを表すものと解される。
そうすると、図1には、第一の共振回路部は、コンデンサC42とループアンテナ3に付随するインダクタL31からなる直列回路と並列に結合されたコンデンサC41を含むものが記載されているといえる。

そうすると、図1に記載された非接触ICカード読取/書込装置に着目すれば、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「非接触ICカードに電磁誘導により電力と送信信号を供給する非接触ICカード読取/書込装置であって、
ループアンテナ3を含む第一の共振回路部4と、
変調器8、E級アンプ9、ロードネットワーク10、ローパスフィルタ11が直列に接続されている無線送信部1と、
を具備し、
前記第一の共振回路部は、コンデンサC42とループアンテナ3に付随するインダクタL31からなる直列回路と並列に結合されたコンデンサC41を含み、
前記ロードネットワーク10は、第二のコイルL2と第二のコンデンサC2で構成される直列共振回路で構成され、ロードネットワーク10を所望の特性に定めることにより、矩形波の立ち上がりと立下りを鈍らせて取り出し、正弦波に近い波形に整形し、
前記ローパスフィルタ11は、入力端とグランドとの間に第三のコンデンサC3と第三のコイルL3を直列に接続、さらに入力端には第四のコイルL4が接続し、第四のコイルL4の他端は第五のコイルL5が接続され、第五のコイルL5の他端はローパスフィルタ11の出力端となっており、第四のコイルL4と第五のコイルL5の間には一端がグランドと接続された第四のコンデンサC4が接続され、第五のコイルL5の他端には一端がグランドと接続された第五のコンデンサC5が接続されており、
第四のコイルL4、第四のコンデンサC4、第五のコイルL5、第五のコンデンサC5にて構成されるローパスフィルタ11にて不要な高周波を除去し、さらに、C3とL3で構成される直列共振回路の共振周波数を搬送波の定倍の周波数にすることにより、増幅器で必ず発生する定倍の高調波を除去することができ、
第二のコイルL2、第二のコンデンサC2、第四のコイルL4、第五のコイルL5、コンデンサC42、ループアンテナ3は直列に接続されている
非接触ICカード読取/書込装置。」

3.本願補正発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(ア)引用発明の「非接触ICカード読取/書込装置」は、「非接触ICカードに電磁誘導により電力・・を供給」するものであるので、本願補正発明の「無線電力トランスミッタ」に相当する。
(イ)「共振」は、電気工学の分野で「共鳴」を表す意味で用いられている表現であるので、引用発明の「ループアンテナ3を含む第一の共振回路部4」は、本願補正発明の「共鳴タンク(resonant tank)として構成された送信アンテナ」に相当し、以下同様に、
「ループアンテナ3に付随するインダクタL31」は「第1のインダクタ」に、
「無線送信部1」は「送信アンテナを駆動するように構成されたドライバ」に相当する。
(ウ)引用発明の第一の共振回路部4に含まれる「コンデンサC41」は、「コンデンサC42とループアンテナ3に付随するインダクタL31からなる直列回路と並列に結合された」ものであるので、その構成は、本願補正発明の「送信アンテナは、第1のインダクタと並列に結合された第1のキャパシタを含む」構成に相当する。
(エ)本願補正発明の「送信アンテナと直列に結合された第2のインダクタ」は「第2のインダクタと前記第1のキャパシタは、負荷マッチングおよび/または前記ドライバまたは前記送信アンテナによって生成された信号のフィルタリング、を提供するように構成されたフィルタを定義する」ものであるので、フィルタを構成するインダクタである。
それに対して、引用発明の「第四のコイルL4」、「第五のコイルL5」も「第四のコイルL4、第四のコンデンサC4、第五のコイルL5、第五のコンデンサC5にて構成されるローパスフィルタ11にて不要な高周波を除去」するフィルタを構成するものであって、フィルタを構成するインダクタといえるものである。
そして、引用発明の「第四のコイルL4」、「第五のコイルL5」は、「ループアンテナ3」に「直列に接続されている」ものであるので、引用発明の「第四のコイルL4」、「第五のコイルL5」と、本願補正発明の「送信アンテナと直列に結合された第2のインダクタ」とは、「送信アンテナと直列に結合されたフィルタを構成するインダクタ」で共通する。
(オ)引用発明の「第二のコンデンサC2」は、「第四のコイルL4、第五のコイルL5」「ループアンテナ3」に「直列に接続されている」ものであるので、引用発明の「第二のコンデンサC2」と、本願補正発明の「第2のインダクタと前記送信アンテナに直列に結合された第2のキャパシタ」とは、「フィルタを構成するインダクタと送信アンテナに直列に結合された第2のキャパシタ」で共通する。
(カ)引用発明の「無線送信部1」(本願補正発明の「ドライバ」に相当するもの)の「変調器8、E級アンプ9、ロードネットワーク10、ローパスフィルタ11が直列に接続され」た構成は、その「ロードネットワーク10」が「第二のコイルL2と第二のコンデンサC2で構成される直列共振回路で構成され」、その「ローパスフィルタ11」が「入力端には第四のコイルL4が接続し、第四のコイルL4の他端は第五のコイルL5が接続され、第五のコイルL5の他端はローパスフィルタ11の出力端」となったものであるので、当該構成と、本願補正発明の「ドライバは、前記第2のインダクタと前記第2のキャパシタとを備え」た構成とは、「ドライバは、フィルタを構成するインダクタと第2のキャパシタとを備え」た構成で共通する。

(2)両発明の一致点
「無線電力トランスミッタは以下を具備すること:
共鳴タンク(resonant tank)として構成された送信アンテナ、前記送信アンテナは、第1のインダクタと並列に結合された第1のキャパシタを含む;
前記送信アンテナと直列に結合されたフィルタを構成するインダクタ;
前記フィルタを構成するのインダクタと前記送信アンテナに直列に結合された第2のキャパシタ;
前記送信アンテナを駆動するように構成されたドライバ、前記ドライバは、前記フィルタを構成するインダクタと前記第2のキャパシタとを備える。」

(3)両発明の相違点
相違点1:フィルタを構成するインダクタが、本願補正発明「第2のインダクタ」であるのに対して、引用発明は、「第四のコイルL4」、「第五のコイルL5」の2つである点。
相違点2:本願補正発明は「前記第2のインダクタと前記第1のキャパシタは、負荷マッチングおよび/または前記ドライバまたは前記送信アンテナによって生成された信号のフィルタリング、を提供するように構成されたフィルタを定義する」ものであるのに対して、引用発明は「第四のコイルL4、第四のコンデンサC4、第五のコイルL5、第五のコンデンサC5にて構成」される「ローパスフィルタ11にて不要な高周波を除去する」ものであって、第五のコンデンサC5と並列接続の関係となる「コンデンサC41」(本願補正発明の「第1のキャパシタ」に相当するもの)がフィルタを定義するものであるか否かは不明である点。

4.容易想到性の検討
(1)相違点1について
一般にローパスフィルタは、1つのLとCとで構成される1段のLCフィルタを基本構成とし、急峻な遮断特性を所望する時に、部品数の増加と引き換えに多段とするものであることは、回路設計を行う者において広く知られたことである。
引用発明のローパスフィルタ11は「第四のコイルL4、第四のコンデンサC4、第五のコイルL5、第五のコンデンサC5にて構成される」LCフィルタ2段で構成されるものであるが、引用発明を含めて電子回路一般に部品数低減は、コスト減少につながり望ましいことと認識されているものでるので、引用発明のローパスフィルタ11を、ローパスフィルタの基本構成である1段のLCフィルタとして、高周波を除去の程度と引き換えに部品数を低減して、本願補正発明の相違点1の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
引用発明のローパスフィルタ11は「不要な高周波を除去する」ものであって、本願補正発明の「ドライバまたは前記送信アンテナによって生成された信号のフィルタリング、を提供するように構成されたフィルタ」に相当するものである。
引用発明のローパスフィルタ11は「第四のコイルL4、第四のコンデンサC4、第五のコイルL5、第五のコンデンサC5にて構成」されるものであって、基本的にはローパスフィルタを構成するコイルのインダクタンスとコンデンサの容量によって特性が定まるものであるが、非接触ICカード読取/書込装置全体としてみると、第五のコンデンサC5には、コンデンサC41(本願補正発明の「第1のキャパシタ」に相当するもの)が並列接続される回路構成となっており、当該コンデンサC41の容量も、第五のコンデンサC5の容量と加算されて実際のフィルタの特性が決まること、すなわちコンデンサC41もフィルタを定義するものとなっていることは、回路設計者が普通に認識し得る技術常識である。
そうすると、相違点2は回路設計者が普通に認識し得る技術常識を記載したにすぎず、実質的な相違点ではない。

(3)総合判断
本願補正発明の作用効果は、引用発明、及び上記当業者に周知の事項から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、及び上記当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明、及び上記当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願の請求項1に係る発明
平成26年7月25日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?15に係る発明は、平成25年3月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
無線電力トランスミッタは以下を具備すること:
共鳴タンク(resonant tank)として構成された送信アンテナ、前記送信アンテナは、
第1のインダクタと並列に結合された第1のキャパシタを含む;
前記送信アンテナと直列に結合された第2のインダクタ;
前記第2のインダクタと前記送信アンテナに直列に結合された第2のキャパシタ;
前記送信アンテナを駆動するように構成されたドライバ、前記ドライバは、前記第2の
キャパシタと直列に結合される。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明の構成を全て含むとともに、本願発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明が、前記「第2」の「3.」?「4.」に記載したとおり、引用発明、及び上記当業者に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明、及び上記当業者に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-03 
結審通知日 2015-07-07 
審決日 2015-07-23 
出願番号 特願2011-527965(P2011-527965)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02J)
P 1 8・ 121- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智康  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 中川 真一
矢島 伸一
発明の名称 無線送電のためのトランスミッタ  
代理人 砂川 克  
代理人 福原 淑弘  
代理人 野河 信久  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 佐藤 立志  
代理人 井上 正  
代理人 岡田 貴志  
代理人 堀内 美保子  

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