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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1308289 |
審判番号 | 不服2015-798 |
総通号数 | 193 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-01-15 |
確定日 | 2015-12-01 |
事件の表示 | 特願2012-507659「発光ダイオードおよび発光ダイオードを製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月 4日国際公開、WO2010/124915、平成24年10月22日国内公表、特表2012-525690〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2010年3月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年4月28日、独国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成22年 3月25日 国際出願 平成25年 3月13日 手続補正書 平成25年12月17日 拒絶理由通知(平成26年 1月 6日発送) 平成26年 6月30日 意見書・手続補正書 平成26年 9月18日 拒絶査定(平成26年 9月22日送達) 平成27年 1月15日 本件審判請求 第2 本願発明について 1 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成26年6月30日付けの手続補正による特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 発光ダイオードであって、 ・半導体ボディ(1)を有しており、当該半導体ボディ(1)は、ビームを生成するために設けられている活性領域(11)を含んでおり、 ・担体(2)を有しており、当該担体(2)は、前記半導体ボディ(1)の上面(1a)で当該半導体ボディ(1)に固定されており、当該担体(2)はルミネセンス変換材料を含んでおり、 ・ミラー層(3)を有しており、当該ミラー層(3)は、前記上面(1a)に反している、前記半導体ボディ(1)の下面(1b)で当該半導体ボディ(1)に被着されており、 ・2つのコンタクト層(4a、4b)を有しており、当該2つのコンタクト層のうちの第1のコンタクト層(4a)は前記半導体ボディ(1)のn型ドーピング領域(13)と導電性接続されており、当該2つのコンタクト層のうちの第2のコンタクト層(4b)は前記半導体ボディ(1)のp型ドーピング領域(12)と導電性接続されている発光ダイオードであって、 少なくとも1つのチャネル(9)が前記担体(2)を貫通している、 ことを特徴とする発光ダイオード。」 2 引用文献1の記載事項、及び引用発明1 (1) 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-352085号公報(平成18年12月28日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図とともに、次の記載がある(当審注:下線は、当審が付与した。)。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、波長変換型の半導体発光デバイスに関する。」 イ 「【背景技術】 【0002】 発光ダイオード(LED)、共振空洞型発光ダイオード(RCLED)、垂直空洞型レーザダイオード(VCSEL)、及び、エッジ発光型レーザを含む半導体発光デバイスは、現在入手可能な最も効率的な光源の部類に入る。・・・」 ウ 「【0020】 図5及び図6は、蛍光体が蛍光体粉末でなくセラミック蛍光体である、本発明の実施形態を示す。セラミック蛍光体は、粉末の蛍光体を高圧下で蛍光体粒子の表面が軟化し溶融し始めるまで加熱することによって形成することができる。部分的に溶融した粒子は、互いに付着して剛性の粒子塊を形成する。等軸性又は等方性静圧力により加圧するステップ、及び前成形された“グリーン体”を真空焼結するステップが、多結晶セラミック層を形成するために必要となるであろう。セラミック蛍光体の透光性は、即ち、それが生じる散乱量は、高度の不透明から高度の透明まで、加熱又は加圧条件、製造方法、使用する蛍光体粒子前駆体、及び蛍光体材料の適切な結晶格子を調節することによって制御することができる。蛍光体の他に、例えばセラミックの形成を促進するため、又はセラミックの屈折率を調節するために、アルミナのようなセラミック形成材料を含めることができる。 【0021】 ・・・ 【0024】 セラミック蛍光体は、核生成構造体58に、核生成構造体58とセラミック蛍光体の間の界面にある接合材56で、直接ウエーハ接合法により又は中間接合層(図5と図6には示されず)を通して、接合される。接合層が用いられる場合には、該接合層は、該接合層が適用されるIII-窒化物層の屈折率とセラミック蛍光体の屈折率の中間の屈折率とを持つように選択される。上記の高屈折率結合材料の多くが適切な接合層を作ることができる。 【0025】 図5に示される実施形態においては、p-コンタクト20は反射性とするか、又は付加的な反射鏡をコンタクト20に近接して設けて、すべての光放射がセラミック蛍光体へ向かうようにする。セラミック蛍光体から変換されずに漏れる活性領域からの放射量を制御するために、随意的に、反射鏡54、例えば分散型ブラッグ反射鏡をIII-窒化物デバイス層の反対側のセラミック蛍光体表面に加えることができる。例えば、活性領域がUV光を放射するデバイスにおいては、反射鏡54は完全に非変換光を除去できる。活性領域が青色光を放射するデバイスにおいては、反射鏡54は、所期の放射スペクトルを達成するために、セラミック蛍光体から漏れる非変換青色光を減衰させることができる。幾つかの実施形態においては、反射鏡54を省き、デバイス層とは反対側のセラミック蛍光体52の表面を粗面化し、テクスチャ加工し、又は光取り出しを改善するように形状加工することができる。さらに、セラミック蛍光体の透光性、即ち、それが生じる散乱量、は上記のように高度の不透明から高度の透明まで制御することができる。 【0026】 図5に示される実施形態は、図13に示されるようにパッケージ部品に接合することができる。そのようなデバイスは、2004年10月28日付けで提出された米国特許出願番号第10/977,294号、“Package-Integrated Thin Film LED”により詳しく記載されており、この特許出願は、引用によりここに取り入れられる。図13に示されるデバイスにおいては、光放射領域を含んだ半導体構造体130が、下記のように、セラミック蛍光体52に接合インタフェース56によって接合されている。コンタクト18及び20が半導体構造体130の上に形成され、それらは、パッケージ素子132に金属インターフェース134によって接合される。パッケージ素子132は、一般に半導体構造体130の横方向広がりを超えた横方向の広がりを有する。幾つかの実施形態においては、パッケージ素子132とセラミック蛍光体52の間に配置される全ての層は、100ミクロンより薄い厚さを有する。図13は、両方のコンタクト18及び20が半導体構造体の同じ側に形成されるフリップ・チップ配置でパッケージ素子132に取り付けられた半導体構造体130を示すが、代替の実施形態においては、コンタクト18が半導体構造体130の、コンタクト20とは反対の側面に形成されるようにセラミック蛍光体52の一部を除去することができる。」 エ 「【0029】 図5に示されるデバイスは、セラミック蛍光体52を成長基板として用いて、図7、図8、及び図9に示されるように製造することができる。・・・ 【0030】 ・・・ 【0033】 ・・・デバイス層を成長させた後、デバイスは通常の方法によって、例えばn型領域10の一部を露出させるためにエッチングし、次いでn型領域10及びp型領域12の上にコンタクトを形成することによって、図5及び図6に示されたデバイスのどちらかに加工される。セラミック蛍光体は、ウエーハを切り分ける前にエッチング又はラッピングなどの通常のプロセスによって除去又は薄くできる、キャリアを含んでもよい。」 オ 「【0034】 代替的に、図5及び図6に示されたデバイスは、図10及び図11に示されるように、成長基板上にデバイス層を成長させ、次いでデバイス層をホスト基板としてのセラミック蛍光体に接合することによって製造することもできる。そのような実施形態においては、p型領域が、活性領域及びn型領域の前に成長させられる。従って、n型又は非ドープ領域76が成長基板16上に直接成長させられる。この領域は、バッファ層又は核生成層などの随意の準備層、及び成長基板の剥離を促進するため或いは基板除去後のエピタキシャル層の薄層化のために予定される随意の剥離層を含んでもよい。P型領域12が次に成長させられ、活性領域14及びn型領域10がそれに続く。次にn型領域10の表面がセラミック蛍光体層52に、図10に示され、図7を参照して上述されたように、接合材56を通じて接合される。図10はn型領域10の表面に形成された接合材56を示しているが、セラミック蛍光体52に接合される半導体構造体の表面はp型、n型、又は非ドープ型であってよい。接合材56は透明でなくてはならない。接合層は、上記のように、接合を促進するために二つの接合表面の間に配置することができる。図11に示されるように、一旦成長基板16が除去されると、成長基板上に直接成長した領域を除去するためにエピタキシャル層がエッチングされ、p型領域12が露出する。p型領域12の表面は、より詳しくは、引用によりここに組み入れられる“分極反転型III-窒化物発光デバイス”、特許出願番号第[代理人整理番号LUM-04-10-02]に記載されているように、ホール密度を増加するため及びエッチングによって生じた損傷を修復するために、例えばp+材料78を再成長させる又はアンモニア雰囲気下でアニールすることによって、処理することができる。ウエーハは、次に、通常の方法によって図5及び図6のデバイスのいずれかに加工処理される。しかし、そのようなデバイスは、図5及び図6に示されている核生成層58を含まず、むしろ接合材56がセラミック蛍光体層52及びn型領域10の間に配置されたものとなる。」 カ 本発明の実施形態による蛍光体-変換型III-窒化物発光デバイスを図示する図5は、次のものである。 キ 図5に示されたデバイスの代替の製造方法を図示する図10は、次のものである。 ク 図5に示されたデバイスの代替の製造方法を図示する図11は、次のものである。 ケ パッケージ素子に接合された図5のデバイスを図示する図13は、次のものである。 (2) 引用発明1 ア 上記(1)エの【0033】の記載に照らして、上記(1)カの図5を見ると、n型領域10の上にコンタクト18が形成され、p型領域12の上にコンタクト20が形成されていることが見てとれる。 イ 上記(1)ウの【0026】の記載、上記(1)オの【0034】の記載及び上記(1)カの図5に照らして、上記(1)ケの図13を見ると、半導体構造体130は、p型領域12、活性領域14及びn型領域10からなるものであるといえる。 ウ 以上より、引用文献1には、図10及び図11に示されるように製造された、図5に示されたデバイスとして、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「n型又は非ドープ領域76が成長基板16上に直接成長させられ、 p型領域12が次に成長させられ、活性領域14及びn型領域10がそれに続き、 n型領域10の表面がセラミック蛍光体層52に、接合材56を通じて接合され、 成長基板16が除去され、成長基板上に直接成長した領域を除去するためにエピタキシャル層がエッチングされ、p型領域12が露出され、 半導体構造体130は、p型領域12、活性領域14及びn型領域10からなり、 n型領域10の上にコンタクト18が形成され、p型領域12の上にコンタクト20が形成され、 p-コンタクト20は反射性とするか、又は付加的な反射鏡をコンタクト20に近接して設けて、すべての光放射がセラミック蛍光体へ向かうようにし、 セラミック蛍光体は、粉末の蛍光体を高圧下で蛍光体粒子の表面が軟化し溶融し始めるまで加熱することによって形成することができ、 反射鏡54を省き、デバイス層とは反対側のセラミック蛍光体52の表面を粗面化し、テクスチャ加工し、又は光取り出しを改善するように形状加工することができ、 両方のコンタクト18及び20が半導体構造体130の同じ側に形成されるフリップ・チップ配置でパッケージ素子132に金属インターフェース134によって取り付けられ、 代替の実施形態においては、コンタクト18が半導体構造体130の、コンタクト20とは反対の側面に形成されるようにセラミック蛍光体52の一部を除去することができる、 発光ダイオード(LED)を含む波長変換型の半導体発光デバイス。」 3 引用文献2の記載事項 (1) 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-297095号公報(平成16年10月21日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図とともに、次の記載がある(当審注:下線は、当審が付与した。)。 ア 「【背景技術】 ・・・ 【0005】 このため、上記したように、半導体層の表面から半導体層の一部を取り除き、一方の伝導型半導体層を露出させ、残った半導体層表面に他方の極の電極を形成することで、半導体層表面側に両方の電極を設け通電し、デバイスとして機能させていた。 【0006】 この構造では両極電極が同一面側に存在するため、遮光される部分の面積が大きく、光取り出し効率が悪い。そして、両極電極が同一面側に存在する所為でどうしても2回のワイヤボンディングが必要であるという問題があった。更に、フェースダウン実装する場合、チップの両極電極が、それに対向する基台の電極の位置と正確に合致しなければならず、この位置合わせが非常に精密で難しいという問題があった。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0010】 そこで、本発明は、光取り出し効率の向上を図ることを課題の1つとする。そして、1回のワイヤボンディングで済み、位置合わせの容易な実装が可能で、工数の低減につながるチップの作製を課題の1つとする。更に、工程数を削減し、基板の割れなどの発生を削減し、歩留まりの良い素子を提供することを課題の1つとしている。」 ウ 「【発明の効果】 ・・・ 【0019】 そして第2伝導型半導体層のみで基台との位置合わせを行えばよく、容易で且つ正確な実装が可能とすることができる。」 エ 「【0045】 次に、第2の実施形態について、第4図及び第5図を参照して説明する。第4図は素子1の底面図で、第1図と対応する。第5図は、第4図のV-Vに沿った断面図で、第2図と対応する。第1図及び第2図に示す第1の実施形態と同一構成要素には、同一の符号を付し、説明の重複を避けるために、ここではその説明を省略し、相違点を中心に説明する。 【0046】 素子1は、その上下方向に延びるn型コンタクト層13に達し、n型コンタクト層13を貫通しない縦穴20を備えていることを特徴としている。この縦穴20は、レーザ光を照射するレーザ加工によって直径30μm?100μmの円柱状、または円錐状に形成される。尚、縦穴20は、開口部並びに底部の直径が広く、中央部が窪んだ中すぼみ形状に形成しても良い。 【0047】 この実施の形態では直径50μmの縦穴20をレーザ加工により形成した。この縦穴20は、素子の上下方向の電気的な通路(電気的パス)として利用される。電気的パスを形成するために、縦穴20には、その内面を覆うように金属薄膜などの導電性材料30が形成される。導電性材料30は、細部に形成が容易なメッキよって形成するのが好ましいが、穴の外径が大きい場合やテーパー面が形成されている場合などには、金属の蒸着によって形成することもできる。縦穴20は、その内部を金属材料などの導電性材料によって充填することもできる。 【0048】 ・・・ 【0054】 n型コンタクト層13に接続された導電性材料30は、上述したように、n型コンタクト層13とオーミックコンタクトをとるに適した金属薄膜が用いられる。p型コンタクト層17には、これとオーミックコンタクトをとるための電極32を形成している。この電極32は、p型コンタクト層17の全面を覆うように形成している。この電極32は、p型コンタクト層17の一部のみを覆うように形成することもできる。この電極32は、素子1の発する光を反射する反射性の電極としている。 【0055】 ・・・ 【0057】 第4図及び第5図に示すように、基板11の半導体層4が形成された面とは反対の面には、電極33aが形成されている。この電極33aは、前記縦穴20に配置した導電性材料30aと電気的に接続される。この電極33aは、前記縦穴20に配置した導電性材料30と兼ねることもできる。この電極33aは所定厚さのパッド電極34aを兼ねている。この第2の実施形態では、第4図に示すように、前記縦穴20を塞ぐように、パッド電極34aを配置し、遮光領域の削減を図っているが、後述する第19図に示すものと同様に、縦穴20と離れた位置にパッド電極34aを配置することもできる。パッド電極34aの面積は、縦穴20の入口の面積よりも大きく設定されている。パッド電極34aは、ワイヤボンド接続に利用される。 【0058】 ・・・ 【0062】 第8図は、前記発光素子1を備える発光装置を示している。発光素子1は、基板11を光取出面とするために、基板11が上に位置するように上下反転され、第1のリード電極100上に配置される。素子1の電極32は導電性材料101によって第1のリード電極100に電気的に接続される。基板11側のパッド電極34aと第2のリード電極103は金線104などのワイヤボンド線よって電気的に接続される。 【0063】 第2のリード電極100、103間に所定の電圧または電流を供給すると、第1リード電極100、導電材料101、電極32、半導体層4、導電性材料30a、電極33a(34a)、ワイヤボンド線104、第2リード電極103の経路が形成され、活性層15から光が取り出される。したがって、電流経路に電界が集中する個所が少ない構造となり、静電耐圧を高めることができる。」 オ 本発明の第2の実施形態にかかる化合物半導体発光素子を有する表示器の断面図を示す図8は、次のものである。 (2) 引用文献2に記載された技術事項 ア 上記(1)エの【0046】、【0047】、【0057】の記載に照らして、上記(1)オの図8を見ると、縦穴20が基板11を貫通していることが見てとれる。 イ 以上より、引用文献2には、次の技術事項が記載されている。 「従来、半導体層表面側に両方の電極を設け通電し、デバイスとして機能させていたところ、フェースダウン実装する場合、チップの両極電極が、それに対向する基台の電極の位置と正確に合致しなければならず、この位置合わせが非常に精密で難しいという問題があったことに鑑み、 位置合わせの容易な実装が可能なチップの作製を課題とし、 第2伝導型半導体層のみで基台との位置合わせを行えばよく、容易で且つ正確な実装を可能にするための発光素子であって、 発光素子1は、その上下方向に延びるn型コンタクト層13に達し、n型コンタクト層13を貫通しない縦穴20を備え、 縦穴20は基板11を貫通しており、 この縦穴20は、発光素子1の上下方向の電気的な通路(電気的パス)として利用され、 電気的パスを形成するために、縦穴20は、その内部を金属材料などの導電性材料30aによって充填することもでき、 基板11の半導体層4が形成された面とは反対の面には、電極33aが形成され、 この電極33aは、縦穴20に配置した導電性材料30aと電気的に接続され、 この電極33aは所定厚さのパッド電極34aを兼ねており、 n型コンタクト層13に接続された導電性材料30aは、n型コンタクト層13とオーミックコンタクトをとるに適した金属薄膜が用いられ、 p型コンタクト層17には、これとオーミックコンタクトをとるための電極32が形成され、 発光素子1は、基板11を光取出面とするために、基板11が上に位置するように上下反転され、第1のリード電極100上に配置され、 発光素子1の電極32は導電性材料101によって第1のリード電極100に電気的に接続され、 基板11側のパッド電極34aと第2のリード電極103は金線104などのワイヤボンド線よって電気的に接続され、 第2のリード電極100、103間に所定の電圧または電流を供給すると、第1リード電極100、導電材料101、電極32、半導体層4、導電性材料30a、電極33a(34a)、ワイヤボンド線104、第2リード電極103の経路が形成され、活性層15から光が取り出される、 発光素子1。」 4 対比 (1) 本願発明と引用発明1を対比する。 ア 引用発明1の「発光ダイオード(LED)を含む・・・半導体発光デバイス」は、本願発明の「発光ダイオード」に相当する。 イ 引用発明1の「p型領域12、活性領域14及びn型領域10」からなる「半導体構造体130」を有しており、「半導体構造体130」は「活性領域14」を含んでいることと、 本願発明の「半導体ボディ(1)を有しており、当該半導体ボディ(1)は、ビームを生成するために設けられている活性領域(11)を含んで」いることを対比する。 引用発明1の「半導体構造体130」は、本願発明の「半導体ボディ(1)」に相当する。 また、引用発明1の「活性領域14」は、ビームを生成するために設けられている領域であるから、本願発明の「ビームを生成するために設けられている活性領域(11)」に相当する。 してみれば、両者は相当関係にある。 ウ 引用発明1の「セラミック蛍光体層52」を有しており、「n型領域10の表面がセラミック蛍光体層52に、接合材56を通じて接合され」ており、「セラミック蛍光体は、粉末の蛍光体を高圧下で蛍光体粒子の表面が軟化し溶融し始めるまで加熱することによって形成することができ」ることと、 本願発明の「担体(2)を有しており、当該担体(2)は、前記半導体ボディ(1)の上面(1a)で当該半導体ボディ(1)に固定されており、当該担体(2)はルミネセンス変換材料を含んで」いることを対比する。 引用発明1の「セラミック蛍光体層52」は、成長基板16を除去した後の半導体構造体130を保持しているから、本願発明の「担体(2)」に相当する。 また、引用発明1の「n型領域10の表面がセラミック蛍光体層52に、接合材56を通じて接合され」ていることと、本願発明の「担体(2)」が、「前記半導体ボディ(1)の上面(1a)で当該半導体ボディ(1)に固定されて」いることとは、相当関係にある。 さらに、引用発明1の「蛍光体」は、本願発明の「ルミネセンス変換材料」に相当する。 してみれば、両者は相当関係にある。 エ 引用発明1の「付加的な反射鏡」を有し、「付加的な反射鏡をコンタクト20に近接して設け」たこと、 本願発明の「ミラー層(3)を有しており、当該ミラー層(3)は、前記上面(1a)に反している、前記半導体ボディ(1)の下面(1b)で当該半導体ボディ(1)に被着されて」いることとを対比する。 引用発明1の「付加的な反射鏡」は、本願発明の「ミラー層(3)」に相当する。 してみれば、両者は「ミラー層(3)を有し」ている点で一致する。 オ 引用発明1の「コンタクト18」と「コンタクト20」とを有し、「n型領域10の上にコンタクト18が形成され、p型領域12の上にコンタクト20が形成され」ていることと、 本願発明の「2つのコンタクト層(4a、4b)を有しており、当該2つのコンタクト層のうちの第1のコンタクト層(4a)は前記半導体ボディ(1)のn型ドーピング領域(13)と導電性接続されており、当該2つのコンタクト層のうちの第2のコンタクト層(4b)は前記半導体ボディ(1)のp型ドーピング領域(12)と導電性接続されている」こととを対比する。 引用発明1の「コンタクト18」と「コンタクト20」は、本願発明の「2つのコンタクト層(4a、4b)」に相当する。 また、引用発明1の「n型領域10」及び「p型領域12」は、本願発明の「半導体ボディ(1)のn型ドーピング領域(13)」及び「半導体ボディ(1)のp型ドーピング領域(12)」にそれぞれ相当する。 そして、引用発明1の「コンタクト18」は、「n型領域10の上に・・・形成され」、n型領域10と導電性接続されているから、本願発明の「半導体ボディ(1)のn型ドーピング領域(13)と導電性接続されて」いる「2つのコンタクト層のうちの第1のコンタクト層(4a)」に相当する。 同様に、引用発明1の「コンタクト20」は、「p型領域12の上に・・・形成され」、p型領域12と導電性接続されているから、本願発明の「半導体ボディ(1)のp型ドーピング領域(12)と導電性接続されている」「2つのコンタクト層のうちの第2のコンタクト層(4b)」に相当する。 してみれば、両者は相当関係にある。 (2) 以上より、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 一致点: 「発光ダイオードであって、 ・半導体ボディ(1)を有しており、当該半導体ボディ(1)は、ビームを生成するために設けられている活性領域(11)を含んでおり、 ・担体(2)を有しており、当該担体(2)は、前記半導体ボディ(1)の上面(1a)で当該半導体ボディ(1)に固定されており、当該担体(2)はルミネセンス変換材料を含んでおり、 ・ミラー層(3)を有しており、 ・2つのコンタクト層(4a、4b)を有しており、当該2つのコンタクト層のうちの第1のコンタクト層(4a)は前記半導体ボディ(1)のn型ドーピング領域(13)と導電性接続されており、当該2つのコンタクト層のうちの第2のコンタクト層(4b)は前記半導体ボディ(1)のp型ドーピング領域(12)と導電性接続されている、 発光ダイオード。」 相違点1: 「ミラー層(3)」が、本願発明では、「前記上面(1a)に反している、前記半導体ボディ(1)の下面(1b)で当該半導体ボディ(1)に被着されて」いるのに対し、 引用発明1では、そのような面で被着されているのか否か明らかでない点。 相違点2: 本願発明は、「少なくとも1つのチャネル(9)が前記担体(2)を貫通している」のに対し、 引用発明1は、そのようなものではない点。 5 判断 以下、相違点について検討する。 (1) 相違点1について検討する。 引用発明1の「付加的な反射鏡」は、「コンタクト20に近接して設けて」もよいものであるから、引用発明1の「付加的な反射鏡」を、「コンタクト20に近接し」た「半導体構造体130」の下面に設けて、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が適宜なしうることである。 (2) 相違点2について検討する。 ア 本願の発明の詳細な説明の【0024】によると、本願発明の「チャネル」は、「コンタクト層の少なくとも1つから、半導体ボディ内におよび/または半導体ボディへと・・・設けられ」るとともに、「導電性材料によって充填され」、「この導電性材料を介して、半導体ボディが電気的に接触接続可能」とするためのものである。 イ しかるところ、上記3(2)イによれば、引用文献2には、「半導体層表面側に両方の電極を設け・・・フェースダウン実装する場合、チップの両極電極が、それに対向する基台の電極の位置と正確に合致しなければならず、この位置合わせが非常に精密で難しいという問題があったことに鑑み」、「光取出面」の「基板11」に、該「基板11を貫通」する「縦穴20」を設け、「縦穴20・・・の内部を・・・導電性材料30aによって充填」し、「基板11の半導体層4が形成された面とは反対の面に・・・電極33a」を形成し、該「電極33a」を「導電性材料30aと電気的に接続」することによって、「電極32、半導体層4、導電性材料30a、電極33a・・・の経路が形成され」、「容易で且つ正確な実装を可能にする」ことが記載されている。 ウ そして、引用発明1の「半導体発光デバイス」は、「両方のコンタクト18及び20が半導体構造体の同じ側に形成されるフリップ・チップ配置でパッケージ素子132に・・・取り付けられ」るものであるところ、上記イの引用文献2の記載に照らせば、このような半導体発光デバイスは、半導体発光デバイスの両極電極を、それに対向する基台の電極の位置と正確に合致しなければならず、この位置合わせが非常に精密で難しいという問題を抱えるものであることは明らかである。 また、引用発明1の「半導体発光デバイス」は、「コンタクト18が半導体構造体130の、コンタクト20とは反対の側面に形成されるようにセラミック蛍光体52の一部を除去することができる」ものでもある。 エ してみれば、引用発明1において、対向する「パッケージ素子132」の「金属インターフェース134」との位置合わせを容易にするために、「セラミック蛍光体52の一部を除去」して、引用文献2に記載のような「縦穴20」を形成し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易になしうることである。 6 小括 以上によれば、本願発明は、当業者が引用発明1及び引用文献2の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものである。 7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-07-03 |
結審通知日 | 2015-07-06 |
審決日 | 2015-07-17 |
出願番号 | 特願2012-507659(P2012-507659) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 秀樹 |
特許庁審判長 |
吉野 公夫 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 山口 裕之 |
発明の名称 | 発光ダイオードおよび発光ダイオードを製造する方法 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 星 公弘 |