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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1308593
審判番号 不服2014-14118  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-18 
確定日 2015-12-16 
事件の表示 特願2012- 93035「命令の追跡中に作られるデータ・ストリームの大きさの削減」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月23日出願公開、特開2012-160200〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成19年5月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2006年5月30日(以下、「優先日」という。)、米国)を出願日とする特願2007-126789号の一部を平成24年4月16日に分割出願したものであって、
平成24年5月14日付けで審査請求がなされ、
平成25年8月12日付けで拒絶理由通知(平成25年8月16日発送)がなされ、
これに対して平成25年12月16日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが、
平成26年3月14日付けで上記平成25年8月12日付けの拒絶理由通知書に記載した理由1(特許法第29条第2項)によって拒絶査定(平成26年3月18日謄本発送・送達)がなされたものである。

これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許すべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として平成26年7月18日付けで審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ、
平成26年8月25日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告がなされ、
平成27年3月24日付けで上申書が提出された。


第2 平成26年7月18日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年7月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
平成26年7月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成25年12月16日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項23の記載

「 【請求項1】
データ・プロセッサが処理中のプログラムからの処理命令のストリームを監視するための追跡論理回路であって、前記追跡論理回路は、監視論理であって、
前記命令ストリーム内の前記命令の処理を検出し、
前記命令ストリーム内の前記命令のどれが条件付き直接分岐命令か、前記命令ストリーム内の前記命令のどれが条件付き間接分岐命令か、および前記命令ストリーム内の前記命令のどれが無条件間接分岐命令かを検出する、
監視論理を含み、
前記追跡論理回路は更に、圧縮論理であって、
前記条件付き直接分岐命令、前記条件付き間接分岐命令、および前記無条件間接分岐命令をマーカ命令に指定し、
マーカ命令毎に、前記マーカ命令を処理したときの前記データ・プロセッサの挙動を示す標識は出力し、処理したがマーカ命令でない命令に関するデータは出力しない、
圧縮論理を含み、
前記監視論理は更に、
例外事象を検出し、
前記圧縮論理は前記例外事象の検出に応じて、
前記例外事象を検出したことを示す例外標識を、前記例外事象が起こった前記プログラム内の場所を表すアドレスと共に出力する、
追跡論理回路。
【請求項2】
前記監視論理は更に前記命令ストリームのどれがデータ・メモリ転送命令かを検出し、前記圧縮論理は更に前記データ・メモリ転送命令をマーカ命令に指定する、請求項1記載の追跡論理回路。
【請求項3】
前記監視論理は更に前記命令ストリームのどれが条件付き命令かを検出し、前記圧縮論理は更に前記条件付き命令をマーカ命令に指定する、請求項1記載の追跡論理回路。
【請求項4】
前記圧縮論理は処理中の前記間接分岐命令を処理したことの検出に応じて前記命令の分岐先の表示を前記標識として出力する、
請求項1記載の追跡論理回路。
【請求項5】
前記監視論理は更にカウンタを含み、更に、
前記カウンタを用いて、各マーカ命令に続いて処理された非マーカ命令の数をカウントし、
例外事象を検出し、
前記圧縮論理は前記例外事象の検出に応じて、
前記例外事象を検出したことを示す例外標識を前記カウンタの値と共に出力する、
請求項1記載の追跡論理回路。
【請求項6】
前記カウンタの前記値が或る予め決められた値を超えたことに応じて、非マーカ命令の性質に関わらず、前記圧縮論理は前記カウンタの前記値が前記予め決められた値を超えた点に達した前記非マーカ命令をマーカ命令に指定した後、前記カウンタをリセットする、請求項5記載の追跡論理回路。
【請求項7】
前記監視論理は更に前記命令ストリームのどれが無条件直接分岐命令かを検出し、前記圧縮論理は更に前記無条件直接分岐命令をマーカ命令に指定する、請求項1記載の追跡論理回路。
【請求項8】
前記圧縮論理は前記諸標識を出力する前に前記標識データを圧縮して前記圧縮されたデータを出力する、請求項1記載の追跡論理回路。
【請求項9】
前記追跡論理回路は更に前記マーカ命令の少なくとも1つの挙動を前のマーカ命令の挙動から決定できるかどうか判断し、前記追跡論理回路は前記少なくとも1つのマーカ命令をマーカ命令でない命令に降格させる、請求項1記載の追跡論理回路。
【請求項10】
請求項1記載のプログラム命令の前記ストリームおよび追跡論理回路を処理するためのデータ・プロセッサを含むデータ処理装置。
【請求項11】
前記データ処理装置は更に、
前記マーカ命令の少なくとも1つの処理挙動の少なくとも1つの予測を与える予測論理、
を含み、
前記監視論理は、
前記少なくとも1つの予測が正しいかどうかを前記監視した挙動から判断し、
前記少なくとも1つのマーカ命令について前記少なくとも1つの予測が正しいかどうかについての表示を前記標識として出力する、
請求項10記載のデータ処理装置。
【請求項12】
前記予測論理は少なくとも1つの条件付き命令についての予測を与え、前記予測論理は前記条件付き命令の条件が真か偽かを予測し、前記少なくとも1つの条件付き命令の前記標識は、前記予測が正しい場合は予測正確表示を、また前記予測が正しくない場合は予測不正確表示を含む、請求項11記載のデータ処理装置。
【請求項13】
前記予測論理は前記データ処理装置の一部の前記挙動の対応する複数のステップに関する複数の予測を与え、前記追跡論理回路は前記複数の予測の少なくともいくつかが正しいかどうか判断して、前記複数の予測の少なくともいくつかに対応する複数の予測標識を作り、前記圧縮論理は前記複数の予測標識の前記少なくともいくつかを圧縮して圧縮データを作り、前記追跡論理回路は前記圧縮されたデータを出力する、請求項11記載のデータ処理装置。
【請求項14】
前記追跡論理回路は埋込み追跡マクロセルを含む、請求項11記載のデータ処理装置。
【請求項15】
前記データ処理装置は更にデータ記憶装置を含み、前記圧縮論理はデータを前記データ記憶装置に出力する、請求項10記載のデータ処理装置。
【請求項16】
データ・プロセッサを監視する追跡論理回路から出力されるデータ・ストリームを受ける診断装置であって、前記データ・ストリームは、マーカ命令を処理したときの前記データ・プロセッサの挙動を示す標識は含み、処理したがマーカ命令でない命令に関するデータは含まず、前記マーカ命令は条件付き直接分岐命令、条件付き間接分岐命令、および無条件間接分岐命令を含み、前記データ・ストリームは更に、例外事象を検出したことを示す例外標識と共に、前記例外事象が起こったプログラム内の場所を表すアドレスを有し、前記診断装置は圧縮解除論理およびデータ記憶装置を含み、前記データ記憶装置は前記データ・プロセッサが処理した前記プログラムの前記命令を記憶し、前記圧縮解除論理は前記データ・ストリームを受けて前記マーカ命令の前記標識、前記例外標識および前記記憶されたプログラムからプログラム・フローを決定する、診断装置。
【請求項17】
前記診断装置は更に、前記圧縮解除論理に送る前に前記データ・ストリームを受けて記憶するためのバッファを含む、請求項16記載の診断装置。
【請求項18】
前記データ・ストリームは更に例外事象標識およびカウンタ値を含み、前記カウンタ値は前のマーカ命令に続いて処理された命令の数を示し、前記診断装置は前記前のマーカ命令標識および前記カウンタ値から前記例外事象の位置を決定する、請求項16記載の診断装置。
【請求項19】
前記データ・ストリーム内の前記標識は予測標識を含み、前記予測標識は前記データ・プロセッサの一部の挙動に関して前記データ・プロセッサ内の論理が行った予測が正しいかどうかを示し、前記診断装置は、
前記データ・プロセッサの一部の前記挙動に関して予測を行い、前記予測は前記データ・プロセッサ内の前記論理が行う予測に対応し、
圧縮解除論理は前記予測および前記受けたデータ・ストリームから前記データ・プロセッサの実際の挙動を決定する、
ことを含む、
請求項16記載の診断装置。
【請求項20】
請求項10記載のデータ処理装置と請求項16記載の診断装置とを含むシステムであって、前記システムは前記プログラムおよび圧縮解除論理を記憶するためのプログラム・データ記憶装置を更に含み、前記圧縮解除論理は前記圧縮論理が出力したデータを受けて、前記マーカ命令の前記標識および前記記憶されたプログラムからプログラム・フローを決定する、システム。
【請求項21】
データ・プロセッサが処理中のプログラムからの処理命令のストリームを監視する方法であって、
前記命令ストリーム内の前記命令の処理を検出するステップと、
前記命令ストリーム内の前記命令のどれが条件付き直接分岐命令か、および前記命令ストリーム内の前記命令のどれが無条件間接分岐命令または条件付き間接分岐命令かを検出するステップと、
前記条件付き直接分岐命令、前記条件付き間接分岐命令、および前記無条件間接分岐命令とをマーカ命令に指定するステップと、
マーカ命令毎に、前記マーカ命令を処理したときの前記データ・プロセッサの挙動を示す標識は出力し、処理したがマーカ命令でない命令に関するデータは出力しないステップと、
例外事象を検出するステップと、
前記例外事象を検出したことを示す例外標識を、前記例外事象が起こった前記プログラム内の場所を表すアドレスと共に出力するステップと、
を含む監視する方法。
【請求項22】
データ・プロセッサが処理中のプログラムを診断する方法であって、
データ・プロセッサを監視する追跡論理回路から出力されるデータ・ストリームを受け、前記データ・ストリームは、マーカ命令を処理中の前記データ・プロセッサの挙動を示す標識は含み、処理したがマーカ命令でない命令に関するデータは含まず、前記マーカ命令は条件付き命令および間接分岐命令を含み、前記データ・ストリームは更に、例外事象を検出したことを示す例外標識と共に、前記例外事象が起こったプログラム内の場所を表すアドレスを有し、
前記データ・プロセッサが処理中の前記プログラムの前記命令をデータ記憶装置内に記憶し、
前記マーカ命令の前記標識、前記例外標識および前記記憶されたプログラムから処理中の前記プログラムのプログラム・フローを決定する、
プログラムを診断する方法。
【請求項23】
データ・プロセッサ上で実行すると、該データ・プロセッサを制御して、該データ・プロセッサに、請求項21または22のいずれか1つに係る方法の各ステップを実行させるためのコンピュータ・プログラム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】
データ・プロセッサが処理中のプログラムからの処理命令のストリームを監視するための追跡論理であって、前記追跡論理は、監視論理であって、
前記命令ストリーム内の前記命令の処理を検出し、
前記命令ストリーム内の前記命令のどれが条件付き直接分岐命令か、前記命令ストリーム内の前記命令のどれが条件付き間接分岐命令か、および前記命令ストリーム内の前記命令のどれが無条件間接分岐命令かを検出する、
監視論理を含み、
前記追跡論理は更に、圧縮論理であって、
前記条件付き直接分岐命令、前記条件付き間接分岐命令、および前記無条件間接分岐命令をマーカ命令に指定し、前記プログラム内の少なくともいくつかの他の命令は、マーカ命令ではなく、
マーカ命令毎に、前記マーカ命令を処理したときの前記データ・プロセッサの挙動を示す標識は出力し、処理したがマーカ命令でない命令に関するデータは出力しない、
圧縮論理を含み、
前記監視論理は更に、
例外事象を検出し、
前記圧縮論理は前記例外事象の検出に応じて、
前記例外を検出したことを示す例外標識を、前記例外が起こった前記プログラム内の場所を表すアドレスと共に出力する、
追跡論理。
【請求項2】
前記監視論理は更に前記命令ストリームのどれが条件付き命令かを検出し、前記圧縮論理は更に前記条件付き命令をマーカ命令に指定する、請求項1記載の追跡論理。
【請求項3】
前記監視論理は更に前記命令ストリームのどれがデータ・メモリ転送命令かを検出し、前記圧縮論理は更に前記データ・メモリ転送命令をマーカ命令に指定する、請求項1記載の追跡論理。
【請求項4】
前記圧縮論理は処理中の前記間接分岐命令を処理したことの検出に応じて前記命令の分岐先の表示を前記標識として出力する、
請求項1記載の追跡論理。
【請求項5】
前記監視論理は更にカウンタを含み、更に、
前記カウンタを用いて、各マーカ命令に続いて処理された非マーカ命令の数をカウントし、
例外事象を検出し、
前記カウンタの値が或る予め決められた値を超えたことに応じて、前記非マーカ命令の性質に関わらず、前記圧縮論理は前記カウンタの値が前記予め決められた値を超えた点に達した前記非マーカ命令をマーカ命令に指定した後、前記カウンタをリセットする、請求項1記載の追跡論理。
【請求項6】
前記監視論理は更に前記命令ストリームのどれが無条件直接分岐命令かを検出し、前記圧縮論理は更に前記無条件直接分岐命令をマーカ命令に指定する、請求項1記載の追跡論理。
【請求項7】
前記圧縮論理は前記諸標識を出力する前に前記標識データを圧縮して前記圧縮されたデータを出力する、請求項1記載の追跡論理。
【請求項8】
前記追跡論理は更に前記マーカ命令の少なくとも1つの挙動を前のマーカ命令の挙動から決定できるかどうか判断し、前記追跡論理は前記少なくとも1つのマーカ命令をマーカ命令でない命令に降格させる、請求項1記載の追跡論理。
【請求項9】
請求項1記載のプログラム命令の前記ストリームおよび追跡論理を処理するためのデータ・プロセッサを含むデータ処理装置。
【請求項10】
前記データ処理装置は更に、
前記マーカ命令の少なくとも1つの処理挙動の少なくとも1つの予測を与える予測論理、
を含み、
前記監視論理は、
前記少なくとも1つの予測が正しいかどうかを前記監視した挙動から判断し、
前記少なくとも1つのマーカ命令について前記少なくとも1つの予測が正しいかどうかについての表示を前記標識として出力する、
請求項9記載のデータ処理装置。
【請求項11】
前記予測論理は少なくとも1つの条件付き命令についての予測を与え、前記予測論理は前記条件付き命令の条件が真か偽かを予測し、前記少なくとも1つの条件付き命令の前記標識は、前記予測が正しい場合は予測正確表示を、また前記予測が正しくない場合は予測不正確表示を含む、請求項10記載のデータ処理装置。
【請求項12】
前記予測論理は前記データ処理装置の前記部分の前記挙動の対応する複数のステップに関する複数の予測を与え、前記追跡論理は前記複数の予測の少なくともいくつかが正しいかどうか判断して前記複数の予測標識の対応する少なくともいくつかを作り、前記圧縮論理は前記複数の予測標識の前記少なくともいくつかを圧縮して圧縮データを作り、前記追跡論理は前記圧縮されたデータを出力する、請求項10記載のデータ処理装置。
【請求項13】
前記追跡論理は埋込み追跡マクロセルを含む、請求項10記載のデータ処理装置。
【請求項14】
前記データ処理装置は更にデータ記憶装置を含み、前記圧縮論理はデータを前記データ記憶装置に出力する、請求項9記載のデータ処理装置。
【請求項15】
データ・プロセッサを監視する追跡論理から出力されるデータ・ストリームを受ける診断装置であって、前記データ・ストリームは、マーカ命令を処理したときの前記データ・プロセッサの挙動を示す標識は含み、処理したがマーカ命令でない命令に関するデータは含まず、前記マーカ命令は条件付き直接分岐命令、条件付き間接分岐命令、および無条件間接分岐命令を含み、プログラム内の少なくともいくつかの他の命令は、マーカ命令ではなく、前記データ・ストリームは更に、例外を検出したことを示す例外標識と共に、前記例外が起こった前記プログラム内の場所を表すアドレスを有し、前記診断装置は圧縮解除論理およびデータ記憶装置を含み、前記データ記憶装置は前記データ・プロセッサが処理した前記プログラムの前記命令を記憶し、前記圧縮解除論理は前記データ・ストリームを受けて前記マーカ命令の前記標識、前記例外標識および前記記憶されたプログラムからプログラム・フローを決定する、診断装置。
【請求項16】
前記診断装置は更に、前記圧縮解除論理に送る前に前記データ・ストリームを受けて記憶するためのバッファを含む、請求項15記載の診断装置。
【請求項17】
前記データ・ストリームは更に例外事象標識およびカウンタ値を含み、前記カウンタ値は前記前のマーカ命令に続いて処理された命令の数を示し、前記診断装置は前記前のマーカ命令標識および前記カウンタ値から前記例外事象の位置を決定する、請求項15記載の診断装置。
【請求項18】
前記データ・ストリーム内の前記標識は予測標識を含み、前記予測標識は前記データ処理装置の一部の挙動に関して前記データ処理装置内の論理が行った予測が正しいかどうかを示し、前記診断装置は、
前記データ処理装置の前記部分の前記挙動に関して予測を行い、前記予測は前記データ処理装置内の前記論理が行う予測に対応し、
圧縮解除論理は前記予測および前記受けたデータ・ストリームから前記データ処理装置の実際の挙動を決定する、
ことを含む、
請求項15記載の診断装置。
【請求項19】
請求項9記載のデータ処理装置と請求項15記載の診断装置とを含むシステムであって、前記システムは前記プログラムおよび圧縮解除論理を記憶するためのプログラム・データ記憶装置を更に含み、前記圧縮解除論理は前記圧縮論理が出力したデータを受けて、前記マーカ命令の前記標識および前記記憶されたプログラムからプログラム・フローを決定する、システム。
【請求項20】
データ・プロセッサが処理中のプログラムからの処理命令のストリームを監視する方法であって、
前記命令ストリーム内の前記命令の処理を検出するステップと、
前記命令ストリーム内の前記命令のどれが条件付き直接分岐命令か、および前記命令ストリーム内の前記命令のどれが無条件間接分岐命令または条件付き間接分岐命令かを検出するステップと、
前記条件付き直接分岐命令、前記条件付き間接分岐命令、および前記無条件間接分岐命令とをマーカ命令に指定するステップであって、前記プログラム内の少なくともいくつかの他の命令は、マーカ命令ではない、前記指定するステップと、
マーカ命令毎に、前記マーカ命令を処理したときの前記データ・プロセッサの挙動を示す標識は出力し、処理したがマーカ命令でない命令に関するデータは出力しないステップと、
例外事象を検出するステップと、
前記例外を検出したことを示す例外標識を、前記例外が起こった前記プログラム内の場所を表すアドレスと共に出力するステップと、
を含む監視する方法。
【請求項21】
データ・プロセッサが処理中のプログラムを診断する方法であって、
データ・プロセッサを監視する追跡論理から出力されるデータ・ストリームを受け、前記データ・ストリームは、マーカ命令を処理中の前記データ・プロセッサの挙動を示す標識は含み、処理したがマーカ命令でない命令に関するデータは含まず、前記マーカ命令は条件付き直接分岐命令、条件付き間接分岐命令、および無条件間接分岐命令を含み、前記プログラム内の少なくともいくつかの他の命令は、マーカ命令ではなく、前記データ・ストリームは更に、例外を検出したことを示す例外標識と共に、前記例外が起こったプログラム内の場所を表すアドレスを有し、
前記データ・プロセッサが処理中の前記プログラムの前記命令をデータ記憶装置内に記憶し、
前記マーカ命令の前記標識、前記例外標識および前記記憶されたプログラムから処理中の前記プログラムのプログラム・フローを決定する、
プログラムを診断する方法。
【請求項22】
データ・プロセッサ上で実行すると、該データ・プロセッサを制御して、該データ・プロセッサに、請求項20または21のいずれか1つに係る方法の各ステップを実行させるためのコンピュータ・プログラム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正するものである。

2.補正の適否

2-1 特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第5項(目的要件)に関する検討
本件補正は、
(1)補正前の請求項1?10で請求された「追跡論理回路」を、「追跡論理」へと変更し、これに伴い、請求項1を引用しつつ請求対象をデータ処理装置とする請求項10?15、及び、請求対象を診断装置とする請求項16?19、並びに請求対象をシステムとする請求項20に含まれる「追跡論理回路」も「追跡論理」へと変更するもの
(2)補正前の請求項2を、補正により請求項3へ移動させ、同時に補正前の請求項3を、請求項2へ移動させるもの
(3)補正前の請求項5及び6を削除し、新たに補正前の請求項6から引用元の請求項5にあった以下の特定事項
「前記圧縮論理は前記例外事象の検出に応じて、
前記例外事象を検出したことを示す例外標識を前記カウンタの値と共に出力する、」
を省いたものを補正後の請求項5とし、補正後の請求項5に対して補正前の請求項7?9を補正後の請求項6?8として従属させるもの
(4)補正前の請求項1を引用する請求項10を、前記(3)の2つの請求項の削除、1つの請求項の新設に伴い、請求項の番号を請求項9へ繰り上げるとともに、以降の請求項も順次各々の番号を繰り上げるとしたもの
(5)前記(1)及び(4)に伴い、補正前の請求項1、16、22に対して、以下の事項
「前記プログラム内の少なくともいくつかの他の命令は、マーカ命令ではなく、」
を追加するもの
(6)前記(5)に伴い、補正前の請求項22(補正により請求項21へ繰り上げられている)の「マーカ命令」が含むとされた命令種別に関し、補正前は2種類(=「前記マーカ命令は条件付き命令および間接分岐命令を含み」)であったものを、補正により3種類(=「前記マーカ命令は条件付き直接分岐命令、条件付き間接分岐命令、および無条件間接分岐命令を含み」)へと変更するもの

の6つの変更を内容とするものである。

前記(1)の補正は、上記「第1 手続の経緯」の具体的な変遷を参照すると、平成25年8月12日付けでなされた拒絶理由通知の理由2(特許法第36条第6項第2号)の(1)として、発明のカテゴリーを明りょうでなくする当初の記載である「追跡論理」の説示を受け、本件審判事件の請求人(以下、単に「請求人」と呼ぶ。)が、平成25年12月16日付け手続補正書による補正にて、「追跡論理回路」へと補正し、原審の拒絶査定では当該理由2の不備がなくなったとされた部分に含まれる箇所を、従前の記載へ戻す内容である。
このような補正は、元々当初の特許請求の範囲で用いられていた表記であるが故に、特許法第17条の2第3項、いわゆる新規事項の追加に当たらない補正ではあるものの、補正の目的を列挙した同法同条第5項各号のいずれの事項を目的としてしたものに該当する余地は無いことが明らかである。

また、前記(2)及び(4)の補正は、単なる請求項の番号の付け替え操作に当たり、同法同条第3項及び第5項の規定にかかわらず許容されるものである。

続いて、前記(3)の補正は、補正前の請求項6が備えるとする一部の発明特定事項を削除する補正であることから、同法同条第5項に列挙されたいずれの事項を目的とするものに該当しない。

最後に、前記(5)及び(6)の補正は、いずれの追加事項も、本件の当初明細書に記載済の事項であり、(5)は補正前に特段の定めが無く、任意とされていた「他の命令」の扱いを特定する内容であり、(6)も補正前に「マーカ命令」に含まれる対象数が2であったものを3へとすることによって、条件として一層厳しいものへと限定を加える内容となることから、同法同条第5項第2号でいう、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

よって、本件補正は、補正の目的要件に違反した内容である上記(1)及び(3)に係る補正を含むものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反したものである。

2-2 独立特許要件について
上記2-1に示したとおり、本件補正は補正の目的要件に違反した内容である上記(1)及び(3)に係る補正を含むものであるものの、上記(1)を手続き上の錯誤と仮に扱ったとして、本件補正後の請求項1についてする補正は、上記(5)の限定的減縮を目的とする補正事項を含むものとされる点を考慮し、該請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、念のために以下に検討する。

2-2-1 本件補正発明
本件補正発明は、上記1.の本件補正後の特許請求の範囲において【請求項1】として記載した次のものであり、その文中の「追跡論理」は誤記であると認められ、正しくは、「追跡論理回路」であるとして扱う。(文中に{}として付記した。)

<本件補正発明>
「 データ・プロセッサが処理中のプログラムからの処理命令のストリームを監視するための追跡論理{回路}であって、前記追跡論理{回路}は、監視論理であって、
前記命令ストリーム内の前記命令の処理を検出し、
前記命令ストリーム内の前記命令のどれが条件付き直接分岐命令か、前記命令ストリーム内の前記命令のどれが条件付き間接分岐命令か、および前記命令ストリーム内の前記命令のどれが無条件間接分岐命令かを検出する、
監視論理を含み、
前記追跡論理{回路}は更に、圧縮論理であって、
前記条件付き直接分岐命令、前記条件付き間接分岐命令、および前記無条件間接分岐命令をマーカ命令に指定し、前記プログラム内の少なくともいくつかの他の命令は、マーカ命令ではなく、
マーカ命令毎に、前記マーカ命令を処理したときの前記データ・プロセッサの挙動を示す標識は出力し、処理したがマーカ命令でない命令に関するデータは出力しない、
圧縮論理を含み、
前記監視論理は更に、
例外事象を検出し、
前記圧縮論理は前記例外事象の検出に応じて、
前記例外を検出したことを示す例外標識を、前記例外が起こった前記プログラム内の場所を表すアドレスと共に出力する、
追跡論理{回路}。」

2-2-2 先行技術

2-2-2-1 引用文献1及び引用発明
本願の優先日前に頒布され、原審の拒絶査定の理由である上記平成25年8月12日付けの拒絶理由通知において引用された、特開2005-196437号公報(平成17年7月21日公開、以下、「引用文献1」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(下線は、当審にて附加した。)

A 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム実行状態を外部で観測可能な情報処理装置(プロセッサ)及びそのプロセッサを用いた開発支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
「トレース情報出力機能」は、プロセッサのプログラム実行状態を、外部のホストコンピュータ上で動作しているデバッガに出力する機能である。システムが何らかの異常動作を検出した場合に、蓄積されたトレース情報を用いることによって、その時点から遡った実行履歴をシステム開発者が確認し、その原因を特定できるようにする。」

B 「【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の第1の実施例におけるプロセッサの構成を示すブロック図である。
CPU100は、直接分岐命令実行時の条件成立時には、直接分岐命令実行信号102と分岐命令実行時の条件成立信号104を同時に”1”にする。直接分岐命令実行時の条件不成立時には、直接分岐命令実行信号102が”1”であり、かつ、分岐命令実行時の条件成立信号104は”0”である。間接分岐命令実行時の条件成立時には、間接分岐命令実行信号103と分岐命令実行時の条件成立信号104を同時に”1”にする。間接分岐命令実行時の条件不成立時には、間接分岐命令実行信号103が”1”であり、かつ、分岐命令実行時の条件成立信号104は”0”である。割込みや例外を受理した時には、割込み実行信号105が”1”となり、直接分岐命令実行信号102、間接分岐命令実行信号103、分岐命令実行時の条件成立信号104の値は無視してもよい。
【0030】
トレースメッセージ/パケット制御ステートマシン(Type2)220は、CPU100からの直接分岐命令実行信号102、間接分岐命令実行信号103、条件分岐命令実行時の条件成立信号104、割込み実行信号105、分岐フラグカウンタ820からの分岐フラグカウンタ値821を受け取り、図2のトレースメッセージ/パケット制御ステートマシンのステート表に示すように、入力信号と内部状態からシーケンスを作り出し、MSEO[1:0]出力(Type2)221と、MDO[7:0]出力選択信号(Type2)222を生成する。MSEO[1:0]出力(Type2)221は、そのままトレース状態出力端子(MSEO[1:0])1010に出力される。
【0031】
分岐taken検出回路350は、CPU100からの直接分岐命令実行信号102、間接分岐命令実行信号103、条件分岐命令の条件成立信号104を入力とし、直接分岐命令実行信号102と条件分岐命令の条件成立信号104の論理積と、間接分岐命令実行信号103と条件分岐命令の条件成立信号104の論理積との2項の論理和をとったものであり、分岐が実行されることを意味する分岐taken信号351を出力する。
【0032】
分岐先アドレス更新検出回路310は、CPU100からの間接分岐命令実行信号103、条件分岐命令の条件成立信104、割込み実行信号105を入力とし、間接分岐命令実行信号103と条件分岐命令の条件成立信号104の論理積、並びに割込み実行信号105の3項の論理和をとったものであり、アドレス出力が必要な分岐が実行されたことを意味する分岐先アドレス更新信号311を出力する。
【0033】
分岐検出回路340は、CPU100からの直接分岐命令実行信号102、間接分岐命令実行信号103、割込み実行信105を入力とし、それらの論理和を、分岐実行信号341として出力する。」

C 「【0034】
シーケンシャル命令実行カウンタ(Type2,3)530は、CPU100からの命令完了信号101をカウントイネーブルに入力し、前記分岐実行信号341によって同期クリアされる。シーケンシャル命令実行カウンタ(Type2,3)530のカウント値は、前記分岐実行信号341によって、シーケンシャル命令実行カウンタ値保持手段(Type2,3)540にロードされ、トレース情報の出力に備えられる。
【0035】
分岐先アドレス保持手段600は、前記分岐先アドレス更新信号311がアサートされたとき、CPU100からの分岐先アドレス110を入力し保持する。
【0036】
分岐フラグカウンタ820は、前記分岐実行信号341をカウントイネーブルに入力し、前記分岐先アドレス更新信号311で同期クリアされるカウンタである。分岐フラグカウンタ値821は、ステートマシン220に供給され、またその下位3ビットは、前記分岐先アドレス更新信号311がアサートされるタイミングまたは、図示されていないが、ステートマシン220がBST_HEADステートに遷移するタイミングで、分岐フラグカウンタ値保持手段830にロードされる。
【0037】
分岐フラグ用シフトレジスタ800は、前記分岐実行信号341をシフトイネーブルの信号に使い、分岐taken信号351をシフトインする。前記分岐先アドレス更新信号311がアサートされる時、分岐フラグ用シフトレジスタ800は同期クリアされるが、それ以前のフラグの値は、分岐フラグ保持手段810にロードされる。
【0038】
MDO[7:0]出力マルチプレクサ(Type2)720は、ヘッダー用固定値”0x38”出力回路430の出力と、ヘッダー用固定値”0x3a”出力回路450の出力と、シーケンシャル命令実行カウンタ値保持手段(Type2,3)540の出力と、分岐先アドレス保持手段600の出力を8ビット単位に分割した信号と、分岐フラグカウンタ値保持手段830の出力と分岐フラグ保持手段810の出力をマージして8ビット単位にアラインしなおした信号との、13グループの選択される信号として入力し、MDO[7:0]出力選択信号(Type2)222によって13グループの内の1つを選択して、MDO[7:0]出力信号(Type2)721として出力する。MD0[7:0]出力信号(Type2)721は、そのままトレースデータ出力端子(MDO[7:0])に出力される。」

D 「【0039】
図3には、図1のシステムが出力するトレースメッセージのIDであるTCODEの割り当てを示している。図4には、Program Trace, Branch Status Messageのメッセージフォーマットを、図5には、Program Trace, Branch Destination Address Messageのメッセージフォーマットを、図6には、Program Trace, Exception Messageのメッセージフォーマットを示している。それぞれ、ここでは説明していないトレース出力の基準クロックに同期してMDO[7:0]出力とMSEO[1:0]出力を変化させる。
【0040】
図2のトレースメッセージ/パケット制御ステートマシン(Type2)のステート表に示すように、直接分岐の条件成立(直接分岐命令実行信号102と分岐命令実行時の条件成立信号104を同時に”1”)時、かつ分岐フラグカウント値がフル(BFcount==31)の時には、IDLE状態→BST_HEAD状態→BST_NV状態→BST_BRF0→BST_BRF1→BST_BRF2→BST_BRF3→IDLE状態へと遷移し、MDO出力選択信号出力及びMSEO出力信号によって、図4のProgram Trace, Branch Status Messageのメッセージフォーマットに示すシーケンス出力が得られる。
【0041】
間接分岐命令の条件成立(間接分岐命令実行信号103と分岐命令実行時の条件成立信号104を同時に”1”)時、かつ分岐フラグカウント値がゼロ(BFcount==0)の時には、IDLE状態→BDA_HEAD状態→IND_UADR0状態→IND_UADR1状態→IND_UADR2状態→IND_UADR3状態→IDLE状態と遷移し、図5のProgram Trace, Branch Destination Address Messageのメッセージフォーマットに示すようなトレース出力が得られる。
【0042】
間接分岐命令の条件成立(間接分岐命令実行信号103と分岐命令実行時の条件成立信号104を同時に”1”)時、かつ分岐フラグカウント値がゼロでない(BFcount!=0)の時には、先にPTBSTメッセージを出力してから、PTBDAメッセージを出力するように制御される。
【0043】
割込み発生(割込み実行信号105が”1”)時、かつ分岐フラグカウント値がゼロ(BFcount==0)の時には、IDLE状態→EXC_HEAD状態→EXC_ICNT状態→IND_UADR0状態→IND_UADR1状態→IND_UADR2状態→IND_UADR3状態→IDLE状態と遷移し、図6のProgram Trace, Exception Messageのメッセージフォーマットに示すようなトレース出力が得られる。
【0044】
割込み発生(割込み実行信号105が”1”)時、かつ分岐フラグカウント値がゼロでない(BFcount!=0)の時には、先にPTBSTメッセージを出力してから、PTEXCメッセージを出力するように制御される。」

E
図1、図6、図8には、それぞれ、第1の実施例によるプロセッサの構成図、Program Trace, Exception Messageのメッセージフォーマットを示す図、ソースプログラムの例と実行順番を示す図が図示されると共に、特に図6中に図示されている、clock3,4,5,6時のMDO[7:0]とされる出力情報の「U-Addr」とされる4つの情報が、例外の発生時には出力として存在することが見てとれる。

F 「【0047】
プロセッサ1からのトレース状態信号1011、トレースデータ信号1021をトレース情報蓄積装置2が受け、トレースメモリ制御1210がトレースメモリ制御信号1211、トレースメモリ書込みデータ1212を制御することによって、トレースメモリ1230に対するメモリアクセスを制御し、トレース情報としてトレースメモリ1230に蓄積する。ホストコンピュータ3は、トレース情報蓄積装置2にトレースメモリ読み出し要求1301を出力し、トレースメモリ制御1210を介してトレースメモリにアクセスし、トレースメモリ出力1231を取得する。(これは従来例と全く同じである。)
次に、このように構成されたプロセッサ1からトレースデータを取得し、実行履歴を復元する様子を図8のプログラムを例にとりながら説明する。図8の0x50000000番地から実行した場合、(17)の間接分岐の出現までの分岐のtaken/not-takenがシフトレジスタに蓄積され、”PTBST NV=4,BR-FLAG=0b0111”が出力され、その後(17)の間接分岐がtakenであったため、”PTBDA U-ADDR=0x50000300”が出力される。同様に(20)の”ret”命令は間接分岐のtakenとみなされるので、”PTBDA U-ADDR=0x50000034”が出力される。このようにして取得されたトレース情報は図9のようになる。」


上記Aには、蓄積されたトレース情報を出力する「トレース情報出力機能」を有することで、プログラム実行状態を外部で観測可能な情報処理装置に関するものであると記載されている。

上記Bには、プロセッサの構成を図1で図示しつつ、図の要部が説明され、当該プロセッサを構成する「CPU100」は、以下の信号出力を行う旨記載されている。
・ 直接分岐命令である場合に“1”となる、直接分岐命令実行信号102
・ 分岐命令実行時の条件が成立した場合“1”となる、条件成立信号104
・ 間接分岐命令である場合に“1”となる、間接分岐命令実行信号103
・ 例外を受理した場合“1”となる、割り込み実行信号105
更に、分岐が実行されることを意味する分岐taken検出回路350が記載され、当該検出回路は、
・ 直接分岐命令実行信号102と条件分岐命令の条件成立信号104との論理積
・ 間接分岐命令実行信号103と条件成立信号104との論理積
をとり、上記2項の論理和をとったものを出力する旨記載されている。
加えて、分岐検出回路340が記載され、当該検出回路は、直接分岐命令実行信号102、間接分岐命令実行信号103、割り込み実行信号105の、3つの信号の論理和出力を分岐実行信号341として出力する旨記載されている。

すなわち、記載事項Aから、記載事項BにあるCPU100は、実行状態中のプログラムの種別が、直接分岐命令であったこと、分岐条件が成立したこと、間接分岐命令であったこと、例外を受理したこと、各々で、“1”出力となる、一種のプログラム検出を実行する機能を奏するものであり、
また、
記載事項Bにある分岐taken検出回路は、2つの論理積出力が、各々直接分岐命令でありかつ条件成立した場合と、間接分岐命令でありかつ条件成立した場合に、出力が得られるものであるから、この2つの論理積は、条件付き直接分岐命令と、条件付き間接分岐命令との各々に対して、条件が満たされた場合に出力する機能を奏するものであり、論理和は、この2種類のいずれかが検出された場合に出力を得る結果を生むものであると認められる。

上記Cには、保持されたシーケンシャル命令実行カウンタ値と、分岐先アドレス保持手段の出力値と、分岐フラグの値を含めてマージしたトレースデータ出力を生成する手段とされる、MDO[7:0]出力マルチプレクサが記載されている。
当該保持されたシーケンシャル命令実行カウンタ値は、上記Bの【0033】に記載された分岐実行信号341にてロードされる旨記載されており、分岐実行信号341は、分岐検出信号が発生した場合であっても、例外が発生した場合であっても、どちらでも出力がされる信号であるから、分岐検出時及び例外検出時にはそれまでのシーケンシャル命令実行数をロードにより保持した出力値を呈するものである。

上記Dには、図3、4、5、6を参照しつつ、情報処理装置が「トレースメッセージ」として出力するとした、Program Trace, Branch Status Message、Program Trace, Branch Destination Address Message、Program Trace, Exception Messageの各メッセージフォーマットが記載されるとともに、図3として前記各メッセージフォーマットの姿が図示されている。
また、参照図の図示内容として、背景技術の【0002】、【0006】、【0011】、【0014】の用語の説明を加味して理解を進めると、
図4ではMDO[7:0]出力項目に、6ビット情報と見てとれるTCODE[5:0]=0x38、5ビット及び8ビット並びに3ビットの分岐フラグ情報と見てとれるBR-FLAG[4:0]、BR-FLAG[12:5]、BR-FLAG[20:13]、BR-FLAG[28:21]、BR-FLAG[31:29]の存在、並びに、プロセッサのプログラム実行状態メッセージ表示を2ビットで表すとした、MSEO[1:0]出力フォーマットの形式が見てとれ、
図5では同様にTCODE[5:0]=0x3a、分岐先アドレス情報と見てとれる8ビットのU-Addr[7:0]、U-Addr[15:8]、U-Addr[23:16]、U-Addr[31:24]の存在、並びに、同様なMSEO出力の形式が見てとれ、
図6では同様に、例外メッセージに対応するTCODE[5:0]=0x3b、シーケンシャル命令実行数と見てとれるI-INT[7:0]、例外検出時の分岐先アドレス情報と見てとれる8ビットのU-Addr[7:0]、U-Addr[15:8]、U-Addr[23:16]、U-Addr[31:24]の存在、並びに、同様なMSEO出力の形式を、
それぞれ確認できることから、トレースメッセージとして出力がなされるのは、すべての命令種のうち、Program Trace, Branch Status Message、Program Trace, Branch Destination Address Message、Program Trace, Exception Messageの3通りに限られ、その際、プロセッサのプログラム実行状態メッセージも同時にMSEO出力として得られることが見てとれる。
また、上記Aの割込み実行信号の発生時に、例外の受理が含まれる点を念頭に置きつつ、上記Dの【0043】-【0044】を見ると、図6に示すトレース出力が得られることが明らかであり、図6に示されるとおり、どこまでプログラムが進んだのかを示すシーケンシャル命令実行数I-INT[7:0]を、出力に伴っていることが把握できる。

さらに、上記Fには、実行される命令が、サブルーチンのリターン命令であった場合(「(20)の”ret”命令」とされた箇所を参照)にも、間接分岐のtakenとみなし、PTBDAの出力、すなわち、間接分岐の条件成立と同様に扱われる旨の記載がある。

以上のことから、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(引用発明)
「蓄積されたトレース情報を出力する、トレース情報出力機能を有し、プログラム実行状態を外部で観測可能な情報処理装置であって、
前記情報処理装置は、実行状態中のプログラムの種別が、直接分岐命令であったこと、分岐条件が成立したこと、間接分岐命令であったこと、例外を受理したこと、各々で、“1”出力となる、一種のプログラム検出を実行する機能を奏するCPUと、
前記CPUからの出力信号が入力され、条件付き直接分岐命令と、条件付き間接分岐命令との各々に対し条件が満たされた場合、及び”ret”命令とされるみなし分岐takenの発生時、及び例外の場合に出力し、そうでない命令種、ないし、条件を満たさなかった場合には出力が得られないとする、論理回路で構成された分岐taken+例外検出回路と、
前記分岐taken+例外検出回路出力時に同期して保持されたシーケンシャル命令実行カウンタ値と、分岐先アドレス保持手段の出力値と、分岐フラグの値を含めてマージしたトレースデータ出力を生成する手段とされる、MDO[7:0]出力マルチプレクサとを含み、
前記MDO[7:0]出力マルチプレクサは、すべての命令種のうち、Program Trace, Branch Status Message、Program Trace, Branch Destination Address Message、Program Trace, Exception Messageの3通りに限ってトレースメッセージが出力され、出力時にはプロセッサのプログラム実行状態メッセージも同時にMSEO出力として得られるものである、
プログラム実行状態を外部で観測可能な情報処理装置。」

2-2-2-2 他の引用文献及びその技術的事項
本願の優先日前に頒布され、原審の拒絶査定の理由である上記平成25年8月12日付けの拒絶理由通知において引用された、特開2005-70951号公報(平成17年3月17日公開、以下、「引用文献2」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。

<引用文献2の技術的事項>
G 「【0022】
このバックトレース回路22には、図3に示すように、CPUコア21の命令セットのうち、バックトレース回路22がモニタする(分岐元アドレス値を記憶する)分岐命令の種類を予め設定した条件設定レジスタ51が備えられている。尚、分岐命令はプログラム分岐を発生させる命令であって、この分岐命令には、条件分岐命令、無条件分岐命令、コール命令、リターン命令が含まれる。」


また、本願の優先日前に頒布され、原審の拒絶査定の理由である上記平成25年8月12日付けの拒絶理由通知において引用された、特開2003-85000号公報(平成15年3月20日公開、以下、「引用文献3」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。

<引用文献3の技術的事項>
H 「【0092】実行命令アドレスは、命令実行開始信号と同時に生成され、CPU部61が実行を開始した命令のアドレスを32ビットで示すものである。この実行命令アドレスは、次の命令の実行を開始するまで、最後に実行した命令のアドレス値を保持する。CPU部61は、割込みからの戻り先命令や例外を引き起こした命令の特定、またはPC相対ジャンプのアドレス計算などのために、EステージまたはAステージにおいて実行中の命令を指し示す命令アドレス値を保持している。したがって、命令実行情報生成部65は命令実行開始信号のアサート時において、この実行命令アドレスを容易に出力することができる。」


2-2-3 対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「プログラム実行状態を」「観測可能な情報処理装置」は、プログラムの実行主体が一般的にはデータ・プロセッサであること、及び、プログラムが通常複数の処理命令を所定の順序で実行する、一連の流れ(=ストリーム)で進行すること、を各々考えると、本件補正発明の「データ・プロセッサが処理中のプログラムからの処理命令のストリームを監視するための追跡」「回路」に相当する。
同様に、引用発明の「実行状態中のプログラムの種別が、直接分岐命令であったこと、分岐条件が成立したこと、間接分岐命令であったこと、例外を受理したこと、各々で、“1”出力となる、一種のプログラム検出を実行する機能を奏するCPU」は、本件補正発明の「監視論理」と、「前記命令ストリーム内の前記命令の処理を検出し、
前記命令ストリーム内の前記命令のどれが条件付き直接分岐命令か、前記命令ストリーム内の前記命令のどれが条件付き間接分岐命令か」「を検出す」る点で共通する。
また、
引用発明の「分岐taken+例外検出回路」が行うとした「前記CPUからの出力信号が入力され、条件付き直接分岐命令と、条件付き間接分岐命令との各々に対し条件が満たされた場合、」「に出力し、そうでない命令種、ないし、条件を満たさなかった場合には出力が得られないとする」処理機能は、所定の命令にマーカを指定しているとみることができることから、引用発明の「分岐taken+例外検出回路」と、本件補正発明の「監視論理」とは、「前記条件付き直接分岐命令、前記条件付き間接分岐命令」「をマーカ命令に指定し、前記プログラム内の少なくともいくつかの他の命令は、マーカ命令ではな」いとする点で共通する。
さらに、
引用発明の「すべての命令種のうち、Program Trace, Branch Status Message、Program Trace, Branch Destination Address Message、Program Trace, Exception Messageの3通りに限ってトレースメッセージが出力され、出力時にはプロセッサのプログラム実行状態メッセージも同時にMSEO出力として得られるものであり」とされる「前記MDO[7:0]出力マルチプレクサ」は、「Program Trace, Branch Status Message」が、直接分岐命令の条件成立時のメッセージとされ、「Program Trace, Branch Destination Address Message」が間接分岐命令の条件成立時のメッセージとされかつ無条件間接分岐にも使用されること、「Program Trace, Exception Message」が割り込み発生時のメッセージとされかつ例外の受理時にも使用されることを総合すれば、本件補正発明で「マーカ」との指定対象となっている命令種と一致した命令を指定していることとなる。加えて引用発明のマルチプレクサからの出力は、各命令毎に出されるものではなく、図10に図示されているとおり命令数に対して限られた少数のメッセージが出力されるものでもある。また、引用発明の「トレースメッセージ」は「データ・プロセッサの挙動を示す標識」とみることが出来る。
以上を総合すると、引用発明の「すべての命令種のうち、Program Trace, Branch Status Message、Program Trace, Branch Destination Address Message、Program Trace, Exception Messageの3通りに限ってトレースメッセージが出力され、出力時にはプロセッサのプログラム実行状態メッセージも同時にMSEO出力として得られるものであり」とされる「前記MDO[7:0]出力マルチプレクサ」は、本件補正発明の「マーカ命令毎に、前記マーカ命令を処理したときの前記データ・プロセッサの挙動を示す標識は出力し、処理したがマーカ命令でない命令に関するデータは出力しない、圧縮論理」に相当する。
加えて、
引用発明の「前記情報処理装置」が行う、「例外の受理時にも、例外メッセージに対応するTCODE[5:0]=0x3b」を「出力」するとした点は、当該「TCODE」が「Program Trace, Exception Message」、すなわち例外を表すメッセージの標識になっている関係上、本件補正発明の「例外事象を検出し、前記圧縮論理は前記例外事象の検出に応じて、前記例外を検出したことを示す例外標識を、」「出力する」に相当する。

以上から、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

「 データ・プロセッサが処理中のプログラムからの処理命令のストリームを監視するための追跡{回路}であって、前記追跡{回路}は、
前記命令ストリーム内の前記命令の処理を検出し、
前記命令ストリーム内の前記命令のどれが条件付き直接分岐命令か、前記命令ストリーム内の前記命令のどれが条件付き間接分岐命令か、を検出する、
監視論理を含み、
前記追跡{回路}は更に、
前記条件付き直接分岐命令、前記条件付き間接分岐命令をマーカ命令に指定し、前記プログラム内の少なくともいくつかの他の命令は、マーカ命令ではなく、
マーカ命令毎に、前記マーカ命令を処理したときの前記データ・プロセッサの挙動を示す標識は出力し、処理したがマーカ命令でない命令に関するデータは出力しない、
圧縮論理であり、
前記監視論理は更に、
例外事象を検出し、
前記圧縮論理は前記例外事象の検出に応じて、
前記例外を検出したことを示す例外標識を出力する、
追跡論理{回路}。」

(相違点)
<相違点1>
全体を総称する「追跡論理回路」に関し、本件補正発明では、その回路構成を「論理回路」としているのに対して、引用発明を総称する呼称は「装置」とされ、互いの呼称が不一致とされる点。
<相違点2>
追跡論理回路に含まれる「監視論理」が検出するとした命令種別等に関し、本件補正発明では、「条件付き直接分岐命令」、「条件付き間接分岐命令」、「例外事象」に加え、「無条件間接分岐命令」を検出しているのに対して、引用発明は「”ret”命令とされるみなし分岐takenの発生」を検出対象としているものの、これが「無条件間接分岐命令」とどのような関係にあるのか直接の言及がない点。
<相違点3>
例外事象の検出時の処理として、本件補正発明は、「前記例外が起こった前記プログラム内の場所を表すアドレス」を「共に出力する」としているのに対して、引用発明では例外標識に相当する「Program Trace, Exception Message」、すなわち例外を表すメッセージと共に出力される情報が、「例外受理時までのシーケンシャル命令実行数I-INT[7:0]」であるとしている点。

2-2-4 判断

上記相違点1ないし3について検討する。

(相違点1について)
回路は、装置が採り得る形態の一つに属するものであり、加えて言うと、引用発明の装置にしても、引用文献1の図1に図示されるとおり、その一部を論理素子の組合せによる回路で構成してもいるので、係る相違点1は、単なる呼称上の形式的な相違に過ぎず、両者に実質的な相違は無いと言える。

(相違点2について)
本件補正発明がマーカ命令に指定するとした、「無条件間接分岐命令」が如何なる態様を指すものなのかを、本件明細書ないし図面の説明箇所を参照することで確認する。

本件明細書の段落【0078】?【0084】には、命令処理が図7の実例を用いて説明されている。
これによると、図7A中の第5列の「マーカ」とされた箇所が、本件補正発明で「監視論理」が実行した結果を示しており、Y(cc)は条件付き命令によるマーカ指定の抽出がなされた命令を示し、Y(ib)が間接分岐命令によるマーカ指定の抽出がなされた命令である。
そして、特に段落【0084】に記載された「上に示した実施の形態では、マーカ命令に指定されるのは条件付き命令と無条件間接分岐命令だけであるが」を参考にすると、図7A中の順序27にある命令ストリームとされる
LDR pc,[pc,#20]
は、本件補正発明で言う「無条件間接分岐命令」に該当する命令種に含まれることとなる。
この無条件間接分岐命令の一種とされたARMプロセッサ用アセンブラ命令であるLDRは、プログラムカウンタ(pc)を指定レジスタとするレジスタロード命令として知られている。また、この命令の指定内容は、【0081】に「このマーカ命令に応じて、ETMはこの間接分岐の行先(この場合はアドレス0x1000)を符号化する別の分岐パケットを生成する。」と記載されており、命令の結果としてアドレス0x1000への移動(ジャンプ)命令と見てとれる。
そうすると、上記相違点2に係る本件補正発明の特定事項は、
“ストリーム監視に用いられる命令ストリーム追跡のマーカ種別として、相対移動式の移動命令をマーカ種別として選択肢に加えること”
となり、係る事項の容易想到性を検討することに帰着する。
ところで、引用発明では、本件補正発明でいうところのマーカ命令への指定がなされる対象として、サブルーチンのリターン命令が加わっているとされているが、当該リターン命令は、サブルーチン処理の終了に伴い、コールされたプログラム実行箇所に戻るという実行内容の性質から考えると、無条件間接分岐の命令種に属する。
また、プログラム処理を追跡する技術分野において、当該リターン命令を、トレースすべき命令種の一種として扱うことは引用文献2のGに摘記したとおり技術常識である。
とすれば、係る相違点2は、引用発明でも同様に検出され、かつ、他の引用文献2を技術常識として考えると、マーカ命令としての指定の扱いが行われているというべきであり、実質的な相違を形成するものではなく、当業者が容易に想到し得たものと言える。

(相違点3について)
ところで、本件補正発明や引用発明と同じ技術分野であって、プログラム実行時に例外が発生した際に、例外事象の検出時の処理として「前記例外が起こった前記プログラム内の場所を表すアドレス」を「共に出力する」処理を講じるとした本件補正発明と同様の内容を示す公知文献として、上記2-2-2-2のHに摘記したとおり、引用文献3が存在する。
とすれば、引用発明に対し、必要に応じて例外が起こったプログラム内の場所をアドレスとして出力する公知技術を適用することに、特段の困難性はないと言え、当業者が容易になし得たものと認められる。

上記で検討したごとく、各相違点はいずれも格別のものではなく、そして、各相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び公知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2-2-5 小結
以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び公知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。


3. 補正却下むすび

以上のとおり、本件補正は、上記2-1のとおり、特許法第17条の2第5項の規定に違反してなされたものであり、同法第53条第1項の規定により却下すべきものであり、さらに上記2-2のとおり、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定にも違反し、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によっても却下すべきものである。


よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1. 本願発明の認定
平成26年7月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件補正後の請求項1に対応する本件補正前の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年12月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

(本願発明)
「 データ・プロセッサが処理中のプログラムからの処理命令のストリームを監視するための追跡論理回路であって、前記追跡論理回路は、監視論理であって、
前記命令ストリーム内の前記命令の処理を検出し、
前記命令ストリーム内の前記命令のどれが条件付き直接分岐命令か、前記命令ストリーム内の前記命令のどれが条件付き間接分岐命令か、および前記命令ストリーム内の前記命令のどれが無条件間接分岐命令かを検出する、
監視論理を含み、
前記追跡論理回路は更に、圧縮論理であって、
前記条件付き直接分岐命令、前記条件付き間接分岐命令、および前記無条件間接分岐命令をマーカ命令に指定し、
マーカ命令毎に、前記マーカ命令を処理したときの前記データ・プロセッサの挙動を示す標識は出力し、処理したがマーカ命令でない命令に関するデータは出力しない、
圧縮論理を含み、
前記監視論理は更に、
例外事象を検出し、
前記圧縮論理は前記例外事象の検出に応じて、
前記例外事象を検出したことを示す例外標識を、前記例外事象が起こった前記プログラム内の場所を表すアドレスと共に出力する、
追跡論理回路。」

2. 先行技術・引用発明の認定
上記「第2 平成26年7月18日付けの手続補正についての補正却下の決定」の2-2で示したとおり、本件出願の優先日前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定において引用された上記引用文献1ないし3には上記技術的事項が記載されている。
そして、上記引用文献には上記「第2 平成26年7月18日付けの手続補正についての補正却下の決定」の2-2-2-1で認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。

3. 対比・判断
上記第2.の2で検討した本件補正発明は、実質的には本願発明に対し上記第2.の2-1で述べた限定的減縮をしたものと認められるから、本願発明は、上記本件補正発明から当該限定的減縮により限定される要件を無くしたものに相当すると認められる。
そして、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の要件を付加したものに相当する上記本件補正発明は、上記第2.の2-2に記載したとおり、引用発明及び公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明も同様の理由により、引用発明及び公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4. むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願に係る優先日前に日本国内又は外国において頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び公知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項についての検討をするまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-13 
結審通知日 2015-07-14 
審決日 2015-08-06 
出願番号 特願2012-93035(P2012-93035)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 多胡 滋  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 西村 泰英
田中 秀人
発明の名称 命令の追跡中に作られるデータ・ストリームの大きさの削減  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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