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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1308622 |
審判番号 | 不服2015-4801 |
総通号数 | 194 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-03-11 |
確定日 | 2016-01-12 |
事件の表示 | 特願2010-287317「加熱調理器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月12日出願公開、特開2012-133719、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年12月24日を出願日とする出願であって、平成26年4月21日付けで拒絶理由が通知され、同年7月2日付けで手続補正がされ、同年12月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年3月11日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がされたものである。 第2 平成27年3月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1.補正の内容 本件補正は、補正前の特許請求の範囲を、補正後の特許請求の範囲に変更する補正事項(以下、「補正事項1」という。)を含むものである。 そして、補正前の特許請求の範囲及び補正後の特許請求の範囲の各記載は、それぞれ、以下のとおりである。 なお、〈補正後の特許請求の範囲〉における下線は補正箇所を表している。 〈補正前の特許請求の範囲〉 「【請求項1】 表示画面に少なくとも1つのアイコン画像を表示すると共にタッチパネルを有する入力表示部と、 上記タッチパネルへのユーザーの指またはペン状物体の接触箇所が上記アイコン画像に対応する検出領域であるか否かを判断する位置判断部と、 上記接触箇所が上記アイコン画像に対応する検出領域であると上記位置判断部が判断した場合に、上記アイコン画像に対応する入力がなされたと判断する入力判断部と、 上記アイコン画像に対応する検出領域の初期設定を、予め定められている複数の領域の中から切り換え選択した一つの領域に設定する検出領域設定部と を備え、 上記予め定められている複数の領域は、アイコン画像と同じ領域,アイコン画像よりも広い領域およびアイコン画像よりも狭い領域の3種の領域であり、尚且つ、上記入力表示部によって複数の上記アイコン画像が表示されている場合には、上記アイコン画像に対応する検出領域の初期設定用の領域として、上記3種のうちの少なくとも2種の領域が設定されている ことを特徴とする入力表示装置。 【請求項2】 請求項1に記載の入力表示装置において、 上記入力表示部は、上記表示画面に複数のアイコン画像を表示し、 上記複数のアイコン画像の検出領域の検出感度を、各アイコン画像に応じて互いに異なる2段階以上の値に設定する検出感度設定部を備え、 上記検出感度設定部が設定する上記検出感度の値は、ユーザーの指またはペン状物体がアイコン画像を押す強さを表す値である ことを特徴とする入力表示装置。 【請求項3】 請求項1または2に記載の入力表示装置を備え、 上記入力表示装置において、 上記入力表示部が上記表示画面に表示するアイコン画像は、加熱を開始するためのアイコン画像と、加熱を停止するためのアイコン画像とを含み、 上記検出領域設定部は、上記加熱を開始するためのアイコン画像に対応する検出領域の初期設定を、当該アイコン画像よりも狭い領域に設定する一方、上記加熱を停止するためのアイコン画像に対応する検出領域の初期設定を、当該アイコン画像よりも広い領域に設定する ことを特徴とする加熱調理器。」 〈補正後の特許請求の範囲〉 「【請求項1】 表示画面に少なくとも1つのアイコン画像を表示すると共にタッチパネルを有する入力表示部と、 上記タッチパネルへのユーザーの指またはペン状物体の接触箇所が上記アイコン画像に対応する検出領域であるか否かを判断する位置判断部と、 上記接触箇所が上記アイコン画像に対応する検出領域であると上記位置判断部が判断した場合に、上記アイコン画像に対応する入力がなされたと判断する入力判断部と、 上記アイコン画像に対応する検出領域の初期設定を、予め定められている複数の領域の中から切り換え選択した一つの領域に設定する検出領域設定部と を備え、 上記予め定められている複数の領域は、アイコン画像と同じ領域,アイコン画像よりも広い領域およびアイコン画像よりも狭い領域の3種の領域であり、尚且つ、上記入力表示部によって複数の上記アイコン画像が表示されている場合には、上記アイコン画像に対応する検出領域の初期設定用の領域として、上記3種のうちの少なくとも2種の領域が設定されている入力表示装置を備え、 上記入力表示装置の上記入力表示部が上記表示画面に表示するアイコン画像は、加熱を開始するための加熱開始アイコン画像と、加熱を停止するための加熱停止アイコン画像とを含み、 上記検出領域設定部は、上記加熱開始アイコン画像に対応する検出領域の初期設定を、上記加熱開始アイコン画像よりも狭い領域に設定する一方、上記加熱停止アイコン画像に対応する検出領域の初期設定を、上記加熱停止アイコン画像よりも広い領域に設定する ことを特徴とする加熱調理器。 【請求項2】 請求項1に記載の加熱調理器において、 上記入力表示部は、上記表示画面に複数のアイコン画像を表示し、 上記複数のアイコン画像の検出領域の検出感度を、各アイコン画像に応じて互いに異なる2段階以上の値に設定する検出感度設定部を備え、 上記検出感度設定部が設定する上記検出感度の値は、ユーザーの指またはペン状物体がアイコン画像を押す強さを表す値である ことを特徴とする加熱調理器。」 2.本件補正に対する判断 本件補正の内の補正事項1は、実質的に、補正前の特許請求の範囲の、請求項1または2を択一的に引用する請求項3のうち請求項1を引用する発明を補正後の特許請求の範囲の請求項1に、補正前の特許請求の範囲の請求項3のうち請求項2を引用する発明を補正後の特許請求の範囲の請求項2にしたものであるから、補正事項1は、補正前の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2を削除するものであり、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に違反するところはない。 3.むすび 以上のとおり本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。 第3 本願発明 本願の請求項1,2に係る発明は、平成27年3月11日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、上記〈補正後の特許請求の範囲〉の請求項1に記載したとおりである。 第4 原査定の理由の概要 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1 ・引用文献等 1 ・備考 引用文献1には、キー(本願発明における「アイコン画像」に相当する。)の押下有効領域(本願発明における「検出領域」に相当する。)の範囲を変更可能としたタッチパネル入力装置の発明が記載されている。すなわち、アイコン画像の領域と上記アイコン画像に対応する検出領域とを異ならせている。 したがって、引用文献1に記載の発明に基づいて、本願の請求項1に係る発明を構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。 ・請求項 2 ・引用文献等 1 ・備考 引用文献1(特に、段落【0010】、【図1】(a)を参照。)には、キーの領域を拡張した領域を上記キーに対応する押下有効領域とした構成が開示されている。 ・請求項 3 ・引用文献等 1 ・備考 引用文献1(特に、段落【0010】、【図1】(b)を参照。)には、キーの領域を狭めた領域を上記キーに対応する押下有効領域とした構成が開示されている。 ・請求項 7 ・引用文献等 1及び5 ・備考 タッチパネルを備えた加熱調理器は周知であり、例えば、引用文献5(特に、【0018】、【図4】を参照。)などに記載されている。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開平06-131094号公報 5.特開2001-000318号公報 ・請求項1について 引用文献1には、1つのキー(本願発明における「アイコン」に相当する。)を複数電極素子で構成し、キー選択に必要な電極素子数を、キー毎に任意に設定できるようにすることにより、隣接キーとの押下有効領域(本願発明における「検出領域」に相当する。)の重なり量、および隣接キーとの不感帯量を適宜設定可能としたタッチパネル入力装置の発明が記載されており(段落【0008】?【0009】)、キーの押下有効領域を、キー画像よりも広い領域、又は、キー画像よりも狭い領域とする構成(段落【0010】、【図1】)、キーの押下有効領域をキー画像と同じ領域とする技術(段落【0006】)が開示されている。 ここで、引用文献1に記載の発明において、複数のキーそれぞれの押下有効領域をどのように初期設定しておくかは、当業者が適宜設計し得る事項に過ぎず、複数のキーのそれぞれの押下有効領域の初期設定を、引用文献1に開示されている、キー画像よりも広い領域、キー画像よりも狭い領域、及び、キー画像と同じ領域の3種のうち少なくとも2種の領域を選択して設定することに、困難性はない。 したがって、引用文献1に記載の発明に基づいて、本願発明を構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。 第5 当審の判断 1.本願発明1について (1)引用例、周知例1の記載事項と引用例記載の発明 原査定で引用された本願出願日前に頒布された、特開平6-131094号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 a)「【請求項1】 マトリックス状に配置されたディジタルスイッチ素子よりなるタッチパネル入力装置において、1つのキーを少なくとも縦方向、または横方向に細分化した複数個の電極素子群で構成し、キーを構成する一部の複数個の電極素子が同時に選択された時に、該キーが選択されたものと判定することを特徴としたタッチパネル入力装置。 【請求項2】 マトリックス状に配置されたディジタルスイッチ素子よりなるタッチパネル入力装置において、1つのキーを構成する複数からなる電極素子群、及び該キーが選択されたと判定するに必要な同時選択電極素子の個数を、各キー毎に任意に設定できるようにしたことを特徴としたタッチパネル入力装置。」(【請求項1】?【請求項2】の記載。下線は当審で付与。以下、同様。) b)「【0009】 【作用】この発明においては、1つのキーを複数電極素子で構成し、キーの構成、及び該キー選択に必要な電極素子数を、任意に設定できるようにすることにより隣接キーとの押下有効領域の重なり量、および隣接キーとの不感帯量を適宜設定可能とするものである。また、ページ切換によってキーの大きさ、配列などのキー入力操作に関する物理環境が変更された時に、自動的に各キー毎に、該キーを構成する複数の電極素子群、及び該キーが選択されたと判断するに必要な同時ONの電極素子数を設定できるようにする。加えて、一連のキー操作を通したキー入力回数と、隣接キーと同時押下した回数を各々計測する手段を備え、予め設定された定数との閾値に関する演算を行い、その結果に基づいて押下有効領域を自動的に制御するようにする。 【0010】 【実施例】 実施例1.以下に、この発明の一実施例を図について説明する。図1において、1はキー、8はキーAの押下有効領域であり、図1(a)は、押下有効領域がL1の幅でその隣接キーと重なっていることを示し、図1(b)はL2の幅で隣接キーとの間に不感帯(押下無効)領域を有していることを示している。図2は、1つのキーをさらに縦方向に2本の電極に、横方向に3本の電極に細分割した例であり、例えば、キーAは(A11,A12,A21,A22,A31,A32)の6個の電極群より構成されていることを示している。1はキーであり、9は操作者による指先の押下有効領域であり、判かりやすくするために縦方向の相対位置のみ示したが、実際はキーA、及びキーE上に位置しているものである。ここで、9aはキーAを有効とする最も上方の位置を、また9bは最も下方の位置を示し、その区間においてAキーがどこでも有効であることを示している。10は1つのキーを縦、横に分割した電極であり、検出の最小単位である。 【0011】次に発明の動作について説明する。 《有効領域を隣接キーと重ねる場合》ここでは、縦方向に隣接したキーAとキーB、及びキーAとキーDの境界付近における押下動作時の処理について述べる。この場合、Aを通る横方向電極線において、少なくとも3本のうち2本が同時にONとなった場合にキーAは選択されるものとする。即ち、A1nとA2n(n=1,2)が同時にONとなった時、もしくはA2nとA3n(n=1,2)が同時にONとなった時に検出回路4,5にてキーAが選択されたと判定する。指の押下領域の縦方向の位置関係では、9aから9bがキーAを選択できる領域範囲に相当する。何故ならば、9aの位置では、キーAを構成する電極A1nとA2n(n=1,2)が同時にONとなり、キーBを構成している電極B3n(n=1,2)もONとなるが、B2n(n=1,2)がONとならないため、結局キーAのみが選択されることになる。同様に、9bの位置においては、キーAを構成する電極A2nとA3n(n=1,2)が同時ONとなり、キーDを構成している電極D1n(n=1,2)もONとなるが、D2n(n=1,2)がONとならないため、結局キーDは選択されず、キーAのみが選択されることになる。その結果、キーAの押下有効領域は、図2に示すように、該キーの周囲に、L1だけ重なり部分をもった広い領域となる。同様にして、キーB、キーDの押下有効領域も、該キーの周囲にL1だけの重なりをもった広い領域となる。 【0012】《隣接キーとの間に不感帯を設定する場合》この場合、キーEを通る横方向の電極線3本が同時にONとなった場合にのみ該キーは選択されるものとする。即ち、E1n,E2n,E3n(n=1,2)が同時にONの場合に、キーEが選択されたと判定する。この場合、指の押下有効領域は図2の9cから9dの範囲となる。何故ならば、この範囲を外れるとE1n,E2n,E3n(n=1,2)を同時にONとする条件が成立しなくなるためで、その結果、図2に示すように、上下に隣接するキー間に不感帯(押下無効)領域L2を有した、元のキーE自身の大きさより狭くなった領域が、キーEに対する押下有効領域として割り付けられることになる。」(【0009】?【0012】の記載。) c)「【0018】 【発明の効果】以上のようにこの発明によれば、キーの押下有効領域を、キー配置、キーの大きさ、及びキーが選択されたと判定するに必要な同時選択電極素子数の条件により変更可能としたので、操作性の良い入力装置が実現できる。また、ページ毎に表示内容の配置が異なるなどして入力操作環境が随時変更になっても、最適な押下有効領域を得ることができ、また、誤操作の割合を随時計測し、必要に応じて、有効領域の範囲を自動的に変更するので、操作者に合った入力環境を実現できるという効果がある。」(【0018】の記載。) してみると、引用例には以下の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されている。 「マトリックス状に配置されたディジタルスイッチ素子よりなるタッチパネル入力装置において、1つのキーを少なくとも縦方向、または横方向に細分化した複数個の電極素子群で構成し、キーを構成する一部の複数個の電極素子が同時に選択された時に、該キーが選択されたものと判定するものであり、 キーの構成、及び該キー選択に必要な電極素子数を、任意に設定できるようにすることにより隣接キーとの押下有効領域の重なり量、および隣接キーとの不感帯量を適宜設定可能とし、 また、ページ切換によってキーの大きさ、配列などのキー入力操作に関する物理環境が変更された時に、自動的に各キー毎に、該キーを構成する複数の電極素子群、及び該キーが選択されたと判断するに必要な同時ONの電極素子数を設定できるようにしたものであり、 押下有効領域は隣接キーと重なるように、また、隣接キーとの間に不感帯(押下無効)領域を有するように設定可能であり、 指の押下領域の位置では、電極素子が同時にONとなるものであり、 キーの押下有効領域を、キー配置、キーの大きさ、及びキーが選択されたと判定するに必要な同時選択電極素子数の条件により変更可能とした、 タッチパネル入力装置。」 原査定で引用された本願出願日前に頒布された、特開2001-318号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 d)「【0010】 【実施例】(実施例1)本発明のネットワーク加熱調理器の実施例1を図1及び図2を用いて説明する。図1は本実施例のネットワーク加熱調理器の外観構成を示し、図2はシステム構成を示しいる。図1において、1は加熱調理器である電子レンジ本体、2は電子レンジ本体1の前面に食材の出し入れ口として設けたドアパネル、3は前記ドアパネルに内蔵し一体化し液晶モニタで構成した表示手段、4は電子レンジ本体1やテレビの操作、インターネットなどのネットワークへのアクセスを行う為に設けた操作手段、5は前記液晶モニタに映したテレビ放送の映像を表示しているテレビ画面部、6は液晶モニタの一部に表示している電子レンジの制御情報表示部、また7はインターネットや情報を配信するサーバーからの情報を表示する受信データ表示部である。また8は電子レンジ本体1に接続され、電子レンジより外部へアクセスする電話回線などのネットワーク網、9は前記ネットワーク網8に接続され、電子レンジにデータを配信するサービス業者のサーバー、10はテレビ放送を受信するためのアンテナである。」(【0010】の記載。) e)「【0018】また、操作手段4を電子レンジ本体1に設けているが、図4のように表示手段3上にタッチパネル15を設け、操作を行う状況ごとに入力表示を変更して構成することで、より操作性が良好になる。 【0019】またタッチパネル15及び電子レンジ本体1に付属する操作手段4を併用するように設けてもよいことは言うまでもない。」(【0018】?【0019】の記載。) (2)対比 本願発明1と引用例記載の発明とを対比する。 ア.引用例記載の発明の「キー」は、ページ切換によって大きさ、配列などが変更されるものであるから、「表示画面」に表示される「アイコン画像」といい得るものであり、引用例記載の発明の「タッチパネル入力装置」が、本願発明1の「表示画面に少なくとも1つのアイコン画像を表示すると共にタッチパネルを有する入力表示部」に相当する構成を有することは明らかである。 イ.引用例記載の発明の「キーの押下有効領域」は、本願発明1の「アイコン画像に対応する検出領域」に相当する。 また、引用例記載の発明の「キーの押下有効領域」は、「キーを構成する複数の電極素子群、及び該キーが選択されたと判断するに必要な同時ONの電極素子数」により「隣接キーとの押下有効領域の重なり量、および隣接キーとの不感帯量を適宜設定」されるものであり、「電極素子」は「指の押下領域の位置」でONとなるものであるから、「キーの押下有効領域」は、「指による押下によりキーが選択されたと判断される領域」といい得るものであり、引用例記載の発明の「タッチパネル入力装置」が、本願発明1の「上記タッチパネルへのユーザーの指またはペン状物体の接触箇所が上記アイコン画像に対応する検出領域であるか否かを判断する位置判断部」及び「上記接触箇所が上記アイコン画像に対応する検出領域であると上記位置判断部が判断した場合に、上記アイコン画像に対応する入力がなされたと判断する入力判断部」に相当する構成を有することは明らかである。 ウ.引用例記載の発明の「キーの押下有効領域」は、「隣接キーと重なるように」また「隣接キーとの間に不感帯(押下無効)領域を有するように」大きさを設定可能であるから、引用例記載の発明の「タッチパネル入力装置」は、本願発明の「上記アイコン画像に対応する検出領域の初期設定を、予め定められている複数の領域の中から切り換え選択した一つの領域に設定する検出領域設定部」に相当する構成を有するといえる。 エ.引用例記載の発明の「キーの押下有効領域」は、「有効領域」を「隣接キーと重なるように」また「隣接キーとの間に不感帯(押下無効)領域を有するように」大きさを設定可能であり、また、「キーの押下有効領域」は「各キー毎に設定される」ものであるから、引用例記載の発明の「タッチパネル入力装置」は、本願発明1の「上記予め定められている複数の領域は、アイコン画像と同じ領域,アイコン画像よりも広い領域およびアイコン画像よりも狭い領域の3種の領域であり、尚且つ、上記入力表示部によって複数の上記アイコン画像が表示されている場合には、上記アイコン画像に対応する検出領域の初期設定用の領域として、上記3種のうちの少なくとも2種の領域が設定されている入力表示装置」と、「上記予め定められている複数の領域は、アイコン画像よりも広い領域およびアイコン画像よりも狭い領域であり、尚且つ、上記入力表示部によって複数の上記アイコン画像が表示されている場合には、上記アイコン画像に対応する検出領域の初期設定用の領域が設定されている入力表示装置」である点で共通するといえる。 したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。 〈一致点〉 「表示画面に少なくとも1つのアイコン画像を表示すると共にタッチパネルを有する入力表示部と、 上記タッチパネルへのユーザーの指またはペン状物体の接触箇所が上記アイコン画像に対応する検出領域であるか否かを判断する位置判断部と、 上記接触箇所が上記アイコン画像に対応する検出領域であると上記位置判断部が判断した場合に、上記アイコン画像に対応する入力がなされたと判断する入力判断部と、 上記アイコン画像に対応する検出領域の初期設定を、予め定められている複数の領域の中から切り換え選択した一つの領域に設定する検出領域設定部と を備え、 上記予め定められている複数の領域は、アイコン画像よりも広い領域およびアイコン画像よりも狭い領域であり、尚且つ、上記入力表示部によって複数の上記アイコン画像が表示されている場合には、上記アイコン画像に対応する検出領域の初期設定用の領域が設定されている入力表示装置。」 〈相違点1〉 本願発明1の「検出領域」は、「アイコン画像と同じ領域」であるものを含む「3種類の領域」であり、「複数の上記アイコン画像が表示されている場合には、」「初期設定用の領域として、」「3種のうちの少なくとも2種の領域が設定」されるものであるのに対し、引用例記載の発明の「キーの押下有効領域」は、「隣接キーと重なるように」また「隣接キーとの間に不感帯(押下無効)領域を有するように」大きさを設定可能であり、「各キー毎に設定される」ものであるが、予め定められている複数の領域を「アイコン画像と同じ領域」を含む3種の領域とし、複数のアイコン画像が表示されている場合には、初期設定用の領域として「3種のうちの少なくとも2種の領域が設定されている」ものではない点。 〈相違点2〉 本願発明1は、「入力表示装置」を備える「加熱調理器」であり、「上記入力表示装置の上記入力表示部が上記表示画面に表示するアイコン画像は、加熱を開始するための加熱開始アイコン画像と、加熱を停止するための加熱停止アイコン画像とを含み、 上記検出領域設定部は、上記加熱開始アイコン画像に対応する検出領域の初期設定を、上記加熱開始アイコン画像よりも狭い領域に設定する一方、上記加熱停止アイコン画像に対応する検出領域の初期設定を、上記加熱停止アイコン画像よりも広い領域に設定する」という構成(以下、「構成A」という。)を有するものであるのに対し、引用例記載の発明は、「加熱調理器」ではなく、上記構成Aを有するものでもない点。 (3)判断 〈相違点2についての判断〉 周知例の上で摘記した箇所には、加熱調理器である電子レンジにタッチパネルを設けることが記載され、また、特開2005-265216号公報(以下、「周知例2」という。)の【0041】?【0045】及び図16には、マイクロ波加熱装置にタッチパネルを設け、枠及び「スタート」「とりけし」の文字を表示させ、枠内をタッチ操作することが、“テクニカル・レポート Vol.29 環境時代を支えるクオリティ、シャープの最先端デバイス”,日経エレクトロニクス,日本,日経BP社,2010年11月29日,第1044号,p.50-53(以下、「周知例3」という。)には、ウォーターオーブンにタッチパネルを搭載することがそれぞれ記載されているように、「加熱調理器」に「タッチパネル」を設け、加熱開始・加熱停止操作のためのアイコンを表示することは、本願出願前周知技術であったものと認められる。 しかしながら、上記各周知例には、加熱開始アイコン画像に対応する検出領域、加熱停止アイコン画像に対応する検出領域をどのような大きさに設定するかについては記載されていない。 よって、上記各周知例の記載事項からは、周知例に、「熱開始アイコン画像に対応する検出領域の初期設定を、上記加熱開始アイコン画像よりも狭い領域に設定する一方、上記加熱停止アイコン画像に対応する検出領域の初期設定を、上記加熱停止アイコン画像よりも広い領域に設定する」構成(以下、「構成B」という。)が、記載または示唆されているとはいえない。 周知例には、他に構成Bを示すあるいは示唆する記載はない。 また、仮に、上記周知技術において、加熱開始アイコン画像に対応する検出領域を小さく、加熱停止アイコン画像に対応する検出領域を大きくすることが、誤操作の防止や、緊急時の操作性を向上するために有用であることが当業者に明らかであるとしても、同様の効果を得るための構成としては、例えば、検出領域をアイコン画像と同じ領域とすると共に、加熱開始アイコン画像を小さく、加熱停止アイコン画像を大きくするといった、構成B以外の構成が想起されるのが普通であって、引用発明のものを上記周知技術に適用する場合において構成Bとすることが、引用例に接した当業者にとって容易であったとはいえない。 したがって、上記周知技術を考慮しても、引用例記載の発明において相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用例記載の発明及び上記各周知例に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 2.本願発明2について 本願発明2は本願発明1に従属するものであるから、上記「1.本願発明1について」にて述べたのと同様の理由により、引用例記載の発明及び上記各周知例に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1,2は、引用例記載の発明及び上記各周知例に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶するべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2015-12-21 |
出願番号 | 特願2010-287317(P2010-287317) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岩橋 龍太郎 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
山田 正文 稲葉 和生 |
発明の名称 | 加熱調理器 |
代理人 | 田中 光雄 |
代理人 | 山崎 宏 |
代理人 | 磯江 悦子 |
代理人 | 山崎 敏行 |