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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B |
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管理番号 | 1308777 |
審判番号 | 不服2015-245 |
総通号数 | 194 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-01-06 |
確定日 | 2015-12-17 |
事件の表示 | 特願2011-133244号「ランプ駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月 7日出願公開、特開2013-4268号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 ・本願発明 本願は、平成23年6月15日の出願であって、平成26年9月30日付け(同年10月7日:発送日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年1月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 そして、本願の請求項1に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 ランプと、定電流源と、前記ランプの電極に放電を維持させるために必要な直流電圧を供給する電源回路と、前記ランプの電極に放電を開始させるためのトリガ電圧を印加するトリガ電圧発生部と、前記ランプの電極電圧を計測する電圧モニタ回路とを有し、放電開始前の前記ランプの電極に対し前記電源回路から直流電圧を供給した状態でトリガ電圧を印加することにより、前記ランプを点灯させるとともに放電を持続させるランプ駆動装置であって、 放電開始前と放電開始後との電極電圧の変化量の閾値Tを記憶する基準変化量記憶部と、放電開始前に計測された電極電圧のモニタ値Aを記憶する電極電圧記憶部と、放電開始後に計測された電極電圧のモニタ値Bと前記放電開始前の電極電圧のモニタ値Aとの差分(A-B)を算出する差分算出部と、前記差分(A-B)と前記閾値Tとを比較することにより点灯状態を判定する点灯判定部とを備えたことを特徴とするランプ駆動装置。」 2.引用文献及び引用発明 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-210780号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「重水素ランプ駆動回路」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与、以下同様。) ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、液体クロマトグラフ、分光光度計等の分析装置の検出器として使用され、試料中の被測定成分などによる紫外線吸光度を検出する紫外線吸収検出器に関し、特に、紫外線光源として用いられる、重水素あるいは水素を封入した重水素ランプの駆動回路に関する。」 イ.「【0012】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の重水素ランプ駆動回路の一実施例について図1を用いて説明する。図1において、1は重水素ランプ、2はトリガ電源部、3は主電源部、4はヒータ電源部である。トリガ電源部2は直流電圧源、スイッチS2 、抵抗r及びコンデンサCで、主電源部3は商用電源5、変圧器6、整流回路7、スイッチング定電圧電源8、定電流電源9によって、さらに、ヒータ電源部4はダイオードとコンデンサ及びスイッチS3 によって構成されている。また、整流回路7は4つのダイオードとコンデンサによって構成され、定電流電源9はトランジスタTr、抵抗Rd、演算増幅器A、抵抗R及び参照電圧源Vref によって構成されている。 【0013】次に、図1の重水素ランプ駆動回路の動作を説明する。 【0014】商用電源5の出力は変圧器6の一次コイルに印加され、二次コイルの一方の出力がヒータ電源4に入力され、変圧器6の二次コイルの他方の出力が整流回路7に入力され、この整流回路7の出力Vi がスイッチング定電圧電源8に供給されて、電源電圧変動の抑制された電圧Vsが出力される。 【0015】そして、主電源部3のスイッチS1 をオンにすると、スイッチング定電圧電源8の出力が定電流電源9に供給される。この状態で、トリガ電源部2とヒータ電源部4のスイッチS2 、S3 を切換え、トリガ電源部2のコンデンサCに抵抗rを介して 500? 600Vの電荷を充電するとともに、ヒータ電源部4から重水素ランプ1の陰極加熱用ヒータに通電して予熱を行う。 【0016】そして、重水素ランプ1の陰極が加熱され、充分に電子が放出された時点で、さらに、トリガ電源部2のスイッチS2 を切換え、コンデンサCに充電された電圧をトリガ電圧として重水素ランプ1の陽極に印加することにより、重水素ランプ1は初期放電を生じ、さらに主放電に移り、主電源部3の定電流電源9から電流が重水素ランプ1に供給される。 【0017】このとき、トランジスタTrを介して重水素ランプ1に供給される電流が抵抗Rdで電圧に変換され、演算増幅器Aで参照電圧Vref と比較される。この電圧が基準電圧Vref より大きい場合は、演算増幅器Aの出力は増加し、トランジスタTrのベース電流は減少して重水素ランプ1に供給される電流が減少する。逆に、抵抗Rdで変換された電圧が基準電圧Vref より小さい場合は、演算増幅器Aの出力は減少し、トランジスタTrのベース電流は増加して重水素ランプ1に供給される電流が増加する。したがって、重水素ランプ1には一定の電流が供給されるので、重水素ランプ1の発光強度は一定に保たれる。」 ウ.上記記載事項イ.の段落【0012】の「主電源部3は商用電源5、変圧器6、整流回路7、スイッチング定電圧電源8、定電流電源9によって、・・・構成されている。」との記載、及び同段落【0014】の「この整流回路7の出力Vi がスイッチング定電圧電源8に供給されて、電源電圧変動の抑制された電圧Vsが出力される。」との記載から、主電源部3は、商用電源5からの交流を整流回路7で直流に変換し、重水素ランプの電極に直流電圧を供給していることが理解でき、さらに、同段落【0016】の「充電された電圧をトリガ電圧として重水素ランプ1の陽極に印加することにより、重水素ランプ1は初期放電を生じ、さらに主放電に移り、主電源部3の定電流電源9から電流が重水素ランプ1に供給される。」との記載、及び同段落【0017】の「したがって、重水素ランプ1には一定の電流が供給されるので、重水素ランプ1の発光強度は一定に保たれる。」との記載を踏まえると、主電源部3は、重水素ランプ1の電極に放電を維持させるために必要な直流電圧を供給するものといえる。 エ.前述した段落【0014】の「この整流回路7の出力Vi がスイッチング定電圧電源8に供給されて、電源電圧変動の抑制された電圧Vsが出力される。」との記載、同段落【0015】の「スイッチング定電圧電源8の出力が定電流電源9に供給される。この状態で、・・・重水素ランプ1の陰極加熱用ヒータに通電して予熱を行う。」との記載、及び前述した段落【0016】の「充電された電圧をトリガ電圧として重水素ランプ1の陽極に印加することにより、重水素ランプ1は初期放電を生じ、さらに主放電に移り、主電源部3の定電流電源9から電流が重水素ランプ1に供給される。」との記載から、重水素ランプ駆動回路は、重水素ランプ1の電極に放電を開始させるためのトリガ電圧を印加するトリガ電源部2と、放電開始前の前記重水素ランプ1の電極に対し主電源部3から直流電圧を供給した状態でトリガ電圧を印加することにより、前記重水素ランプ1を点灯させるとともに放電を持続させているものといえる。 以上の記載事項、図示内容及び認定事項からみて、本願発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「重水素ランプ1と、定電流電源9と、前記重水素ランプ1の電極に放電を維持させるために必要な直流電圧を供給する主電源部3と、前記重水素ランプ1の電極に放電を開始させるためのトリガ電圧を印加するトリガ電源部2と、放電開始前の前記重水素ランプ1の電極に対し前記主電源部3から直流電圧を供給した状態でトリガ電圧を印加することにより、前記重水素ランプ1を点灯させるとともに放電を持続させる重水素ランプ駆動回路。」 (2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-266406号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面(特に【図2】を参照。)とともに次の事項が記載されている。 カ.「【請求項1】 投写型画像表示装置の放電灯を点灯させるための放電灯点灯装置であって、 矩形波状の駆動制御信号に応じてスイッチ素子を開閉することにより直流電圧から交流電圧を発生させ、前記放電灯に交流電流を供給するインバータ回路部と、 前記放電灯が点灯開始するために必要な高電圧を発生させるための高電圧発生回路部と、 前記高電圧発生回路部で発生する電圧を検出する電圧検出部と、 前記高電圧発生回路部に含まれる共振回路の共振電圧を制御するため前記インバータ回路部に駆動信号を送り、かつ、前記電圧が所定量低下したことを示す前記電圧検出部からの検出信号に基づき、前記放電灯の点灯判別信号を出力する点灯制御部と、 から構成される放電灯点灯装置。」 キ.「【0021】 放電灯点灯装置5は、点灯制御部3からインバータ回路部1へ駆動信号bが送られると、インバータ回路部1が交流電圧を放電灯6に印加し、高電圧発生回路部2が放電灯6内の電極間を絶縁破壊するために必要な高電圧V1を発生させ、時間t1にて電極間が絶縁破壊されると、放電灯6内の放電路が形成される。 【0022】 これによって、放電灯6に電流が流れることにより、放電灯6内の電圧は電圧V2まで低下する。」 ク.「【0027】 本実施の形態では、図1のように、点灯制御部3からインバータ回路部1への駆動信号bが送られると、高電圧発生回路部2により、放電灯6内の電極間が時間t1にて絶縁破壊されると、放電灯6内の放電路が形成され、電圧検出部4が電極間の絶縁破壊後に所定量低下した電圧V2を検出し、その電圧検出信号aにより点灯制御部3にて点灯判別を行う。」 3.対比 本願発明と引用発明を対比すると、その意味、機能または構造からみて、 後者の「重水素ランプ1」は前者の「ランプ」に相当し、以下同様に、「定電流電源9」は「定電流源」に、「主電源部3」は「電源回路」に、「トリガ電源部2」は「トリガ電圧発生部」に、「重水素ランプ駆動回路」は「ランプ駆動装置」に、それぞれ相当する。 そうすると、両者は本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。 [一致点] 「ランプと、定電流源と、前記ランプの電極に放電を維持させるために必要な直流電圧を供給する電源回路と、前記ランプの電極に放電を開始させるためのトリガ電圧を印加するトリガ電圧発生部とを有し、放電開始前の前記ランプの電極に対し前記電源回路から直流電圧を供給した状態でトリガ電圧を印加することにより、前記ランプを点灯させるとともに放電を持続させるランプ駆動装置。」 そして、両者は次の点で相違する。 [相違点] 本願発明は、「前記ランプの電極電圧を計測する電圧モニタ回路とを有」するとともに、「放電開始前と放電開始後との電極電圧の変化量の閾値Tを記憶する基準変化量記憶部と、放電開始前に計測された電極電圧のモニタ値Aを記憶する電極電圧記憶部と、放電開始後に計測された電極電圧のモニタ値Bと前記放電開始前の電極電圧のモニタ値Aとの差分(A-B)を算出する差分算出部と、前記差分(A-B)と前記閾値Tとを比較することにより点灯状態を判定する点灯判定部とを備え」ているのに対し、 引用発明は、かかる「電圧モニタ回路」及び「点灯判定部」を備えていない点。 4.判断 (1)相違点の検討 ア.放電ランプにおいて点灯判別を行うことは、上記引用文献2の記載事項カ.に記載されているほか、特開平5-67496号公報(特に明細書の段落【0016】を参照。)、特開平5-144577号公報(特に明細書の段落【0023】を参照。)に示されているように、従来周知の技術であるから、引用発明において、放電ランプである重水素ランプ1の点灯判別を行う動機付けは十分にあるといえる。 イ.引用文献2には、上記記載事項カ.ないしク.を総合すると「放電灯点灯装置において、放電灯が点灯開始するために必要な高電圧を発生させるための高電圧発生回路部と、前記高電圧発生回路部で発生する電圧を検出する電圧検出部とを有し、前記電圧が所定量低下したことを示す前記電圧検出部からの検出信号に基づき、前記放電灯の点灯判別信号を出力すること」が記載されている。(以下、「引用文献2に記載されている事項」という。) ここで、引用文献2には、「高電圧発生回路部で発生する電圧を検出する電圧検出部」を有することが記載されているところ、引用文献2の記載事項キ.(段落【0021】)の「インバータ回路部1が交流電圧を放電灯6に印加し、高電圧発生回路部2が放電灯6内の電極間を絶縁破壊するために必要な高電圧V1を発生させ」との記載、及び記載事項ク.の「絶縁破壊されると、放電灯6内の放電路が形成され、電圧検出部4が電極間の絶縁破壊後に所定量低下した電圧V2」との記載から、引用文献2に記載されている事項の「放電灯が点灯開始するために必要な高電圧」は放電開始前の電圧V1であり、「電圧が所定量低下したことを示す電圧検出部からの検出信号」が出力されるときの電圧は、放電開始後の電圧V2といえる。加えて、「所定量」とは、引用文献2において、点灯状態を判別するための基準値といえる。そして、引用文献2の【図2】に示されるように、放電開始前の電圧V1から放電後に所定量低下した電圧V2を電圧検出部により検出することにより点灯を判別しているといえる。 電圧が放電後に所定量低下したことを判別する際には、放電開始前の電圧V1から該所定量を減じた電圧V2を計測するか、V1-V2の演算をして、その値が所定量になることを検出するかは、制御システム、若しくは制御回路を構築する際の設計的事項であり、どちらの方式を用いるかは、当業者が適宜に選択し得ることである。そして、後者を選択した場合に、放電開始前に計測された電圧V1を記憶する電圧記憶部と、放電開始後に計測された電圧V2と前記放電開始前の電圧V1との差分(V1-V2)を算出する差分算出部と、前記差分(V1-V2)と所定量とを比較することにより点灯状態を判定する点灯判定部を構成することは当業者であれば適宜になし得ることである。 よって、引用発明の重水素ランプ駆動回路において、引用文献2に記載されている事項を参考にして、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)作用効果について 本願発明の作用効果は、引用発明、引用文献2に記載されている事項、及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別ではない。 (3)まとめ したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載されている事項、及び周知技術に基いて容易に発明できたものである。 5.むすび 以上総合すると、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、引用文献2に記載されている事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-10-13 |
結審通知日 | 2015-10-20 |
審決日 | 2015-11-02 |
出願番号 | 特願2011-133244(P2011-133244) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 三島木 英宏 |
特許庁審判長 |
和田 雄二 |
特許庁審判官 |
櫻田 正紀 島田 信一 |
発明の名称 | ランプ駆動装置 |
代理人 | 喜多 俊文 |
代理人 | 江口 裕之 |